結論
MIRARTH不動産投資法人(旧タカラレーベン不動産投資法人)は、住宅を軸に、オフィス・商業・ホテルを持つ総合型の J-REIT だ。2026 年 3 月の公募増資後は 85 物件、取得価格で 1,930 億円。住宅が約 36%、オフィスが約 27%、商業が約 20%、ホテルが約 16%。メインスポンサーは総合デベロッパーの MIRARTH ホールディングスだ。
筆者の結論は、今の値段は適正というものだ。10 年後の物件の売値を、用途の表を物件の価格で加重した 4.41% の利回りで見ると、10 年後の価値と配当を今に引き直した額は 775 億円。今の時価総額 775 億円と同じ水準で、差はほぼない。
追い風はある。投資口は 1 口 NAV の 0.72 倍まで売られ、分配の利回りは 7% を超える。住宅は需給が引き締まり、更新・入替の増額が続く。平均築年数は 18 年と若く、平均稼働率は 98.9%。ホテルは固定賃料が中心で安定している。
ただ、借入は重い。増資後の有利子負債は 1,046 億円で、鑑定評価額で割ると 50.2%。2 年内に 4 割強が満期になる。借り換えで利払いは年 18 億円から 38 億円に増える。NAV を割る増資も続いている。
それでも、鑑定の利回りが比較的高く、住宅の比率が大きいので、中立のキャップ 4.41% は今の NCF 利回り 4.13% に近い。割安と割高が相殺し、適正に落ちる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この法人は「築浅の住宅を軸に、スポンサーの開発物件を取り込んで広げる」型だ。成長のために増資を繰り返す点は、既存の投資主にとって重い。ただし、安全域がどこにあるかを見極める必要がある。
NAV の 0.72 倍は割安に見える。含み益は 114 億円と小さく、NAV の大半は簿価でできている。一方、借入は鑑定の 50.2% と重く、鑑定が 1 割下がるだけで LTV は 56% に近づく。
借り換えで利払いは年 18 億円から 38 億円に増える。純利益は 51 億円から 49 億円へ、10 年かけてわずかに減る。分配の余裕は薄いが、住宅と築浅の強みが NOI の伸びを支える。
10 年の分配と 10 年後の売値を今に引き直すと、今の値段との差はほとんどなく、適正だ。筆者は、借入の重さが安全域を削る一方、割安さがそれを補うと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は賃料だ。2026 年 3 月の増資で取得した 7 物件を通期で寄与させた姿(2026 年 8 月期と 2027 年 2 月期の予想を合わせた年額)で見ると、賃貸事業収益は約 115 億円。そこから運営費を引いた NOI(純収益)は 95 億円になる。物件の売却益は繰り返せる収益ではないので除いて見る。
資産は 85 物件、取得価格で 1,930 億円。住宅が約 36%、オフィスが約 27%、商業施設が約 20%、ホテルが約 16%。東京・名古屋・大阪・福岡の四大経済圏が 83%。住宅は築浅が多く、築 5 年未満が 36%、20 年以上は 20% にとどまる。オフィスは中規模ビルが中心で、稼働率は 100% に近い。
ホテルは固定賃料が中心。ドーミーイン、東横INN、アパホテルなどで、運営者が賃料を払う。一部に変動賃料がある。商業施設は郊外型のロードサイドや、ヤマダ電機、アピタなどの長期の賃貸借が基本だ。
2026 年 3 月に、住宅 3 物件・オフィス 2 物件・商業 1 物件・ホテル 1 物件の計 174 億円を取得し、公募増資と借入でまかなった。同じ時期に築年の古い住宅 2 物件を売った。
資本的支出は直近 1 年で約 9 億円と、減価償却の約 16 億円を下回る。
優良さと弱いところ
この法人の優良さは、住宅を軸にしたポートフォリオと、スポンサーの開発力にある。MIRARTH ホールディングスが開発する築浅の住宅を取得でき、平均築年数は 18 年と若い。住宅は需給が引き締まり、更新・入替で増額が続く。
強みの一つ目は、分配の厚みだ。分配金は予想で投資口価格に対する利回りが 7% を超える。二つ目は、含み益 114 億円。三つ目は、資産運用報酬が低く、半期で 3 億円ほどと NOI の 6% 程度にとどまること。
弱みは三つある。一つ目は、借入が鑑定評価額の 50.2% と重く、平均金利は 1.34% と低いが、残存は 2.2 年と短いこと。二つ目は、増資が頻繁で、NAV を割る価格(NAV の約 78%)で行っていること。三つ目は、取得の約半分がスポンサー経由であること。
筆者は、事業の質を「並」と見る。住宅は堅いが、借入の重さと増資の頻度が質を押し下げる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅賃貸は、東京 23 区を中心とした転入超過と、外国人労働者の増加で、需給が引き締まっている。更新・入替での増額は続いているが、地方の住宅は人口減少の影響を受ける。この法人の住宅は、四大経済圏が中心で築浅。
オフィスは、中規模ビルの需給が引き締まり、賃料は上昇基調。商業は郊外型の長期賃貸借で、固定賃料が基本。ホテルは固定賃料の物件が中心で、運営者の収益に左右される部分は小さい。
業種の表では、キャップレート(NCF ÷ 物件価値の利回り)は住宅 3.75%、オフィス 4.25%(地方は 4.75%)、商業 5.0%、ホテル 5.0%。この法人は住宅 36%、オフィス 27%(地方を含み平均 4.5%)、商業 20%、ホテル 16% なので、加重すると 4.41% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割ると 4.13%。J-REIT 全体では、上場の値段から逆算したキャップレートの中央は 4.2% 前後。この法人は NAV の 0.72 倍で、逆算の利回りは NCF ベースで 4.8% 前後と、中央をやや上回る。
資本政策と M&A
増資後の借入は 1,046 億円。総資産に対する比率(LTV)は 49.7%、鑑定評価額で割ると 50.2% だ。平均金利は 1.34%(2026 年 2 月末)、平均残存は 2.2 年。格付けは JCR が A+、R&I が A。
弱点は満期の近さだ。2026 年 2 月末の借入では、1 年内に 223 億円、2 年内に累計 427 億円(約 45%)が期限を迎える。今の金利は 1% 台前半で、借り換えで 3% 台に上がる。2027 年 2 月期の予想では、半期の支払利息は 9.3 億円。
投資口は、2026 年 3 月に公募増資と第三者割当で 102,418 口(11.2%)増やし、約 87 億円を調達した。公募の発行価額は NAV の約 78%。2024 年 9 月にも公募増資を行った。
運用報酬は半期で 2.8 億円。取得報酬は取得価格の 1.0%。MIRARTH ホールディングスは投資口の 1.5% を保有し、2025 年 8 月からは本資産運用会社とグループの役職員による持投資口会が買付を行っている。分配は内部留保(6.4 億円を積み増し)を使って維持する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
投資口は NAV の 0.72 倍まで売られた。分配の利回りは 7% を超える。住宅は需給が引き締まり、更新・入替での増額が続く。平均築年数は 18 年と若く、稼働率は 98.9%。
スポンサーの MIRARTH ホールディングスは、築浅の住宅や商業を開発し、この法人に優先して売る。2026 年 3 月の取得も、このパイプラインで住宅 3 物件と商業 1 物件を確保した。
分配の予想は据え置きで、内部留保を積み増す余裕もある。取得報酬は取得価格の 1.0% と標準的で、運用報酬は軽い。役職員の持投資口会が買付を始め、利益の向きが揃ってきた。
ホテルは固定賃料が中心で、運営者の収益が落ちても賃料が直接は減らない。商業も長期の賃貸借が基本だ。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% 伸び、キャップは今の鑑定の NCF 利回り 4.13% で止まる。時価総額は 1,813 億円と今の 2.3 倍になる。
慎重な見方
借入が重い。増資後で鑑定評価額の 50.2%、総資産の 49.7%。2 年内に約 45% が満期になる。今の平均金利は 1.34% で、市場の 3.4% に借り換えると、利払いは年 18 億円から 38 億円に増える。純利益は縮み、分配の余裕は薄い。
NAV を割る増資が続いている。2026 年 3 月の公募は NAV の約 78% の価格で、既存の投資主の取り分を薄めた。NAV の 0.72 倍という割安は、このような増資が続くと、一度の増資で縮む。
取得の約半分がスポンサー経由で、値付けを比べにくい。含み益は 114 億円と小さく、今の NOI でキャップが 4.41% に上がれば、物件の価値は鑑定の 2,082 億円から 1,950 億円ほどに下がる。LTV が高いので、この程度の下げでも純資産が削られる。
資本的支出は直近で減価償却を下回る。住宅の専有部の更新が続けば、後で膨らむ。建築費は物価より速く上がる。
悲観の筋書きでは、稼働が 93% に下がり、借り換えが 4.4% になる。純利益は 7 億円まで縮み、時価総額は 292 億円まで縮む。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実を言っている。割安さ(NAV の 0.72 倍)と、借入の重さ・増資の頻度が、ちょうど相殺している。スポンサーの点数は 3.5 と 3 を上回るので、悲観の確率を 10% から 15% に上げた。それでも中立のキャップ 4.41% が今の NCF 利回り 4.13% に近く、価値は今の時価総額と同程度に落ちる。筆者は、ほぼ適正と見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 110,525 円1,120 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 48,064 円487 億円)。 今の値に割り戻すと 76,512 円775 億円、今との差 +1.7%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 9.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 178,931 円1,813 億円 | 60,006 円608 億円 | +217.7% | +12.3% | 19,115 円194 億円 |
| やや楽観 | 20% | 164,621 円1,668 億円 | 55,466 円562 億円 | +192.7% | +11.3% | 44,017 円446 億円 |
| 中立 | 37% | 119,617 円1,212 億円 | 51,123 円518 億円 | +127.0% | +8.5% | 63,174 円640 億円 |
| やや悲観 | 20% | 73,527 円745 億円 | 43,326 円439 億円 | +55.4% | +4.5% | 23,371 円237 億円 |
| 悲観 | 15% | 28,819 円292 億円 | 30,595 円310 億円 | −21.0% | −2.3% | 8,912 円90 億円 |
| 加重平均 | 100% | 110,525 円1,120 億円 | 48,064 円487 億円 | +110.9% | +7.7% | 158,589 円1,607 億円 |
今の株価時価総額 75,200 円762 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 住宅の増額が進み、キャップは今の鑑定の利回りが続く 利益 67 億円 · PBR 1.9 倍 · 株価時価総額 178,931 円1,813 億円
東京 23 区と四大経済圏で住宅の転入超過が続き、更新・入替の増額が積み上がる。オフィスも増額が続き、賃料は年 3% の伸びになる。稼働は 99% に近づく。
借り換えは A 格のおかげで 3.2% で収まり、年の利払いは 36 億円。NOI は 95 億円から 127 億円へ 35% 増え、純利益は 67 億円と今を上回る。
不動産の売買市場は低金利の値付けを続け、キャップは 4.13% のままだ。物件の価値が 2,800 億円に達し、時価総額は 1,813 億円と今の 2.3 倍になる。
スポンサーの開発物件の取り込みも続く。ただし、その分は計算に入れていない。
- 住宅・オフィス・商業・ホテルの賃貸:数量 1,948(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 154 億円・営業利益 111 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 127 − 資本的支出 11) ÷ キャップ 4.13% − 純負債 1000 = 1813 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引き、鑑定評価額で割った 4.13%)。今の値付けが 10 年続く筋書きで、楽観はここまで下げてよい。
確率:住宅の需給が引き締まり続け、キャップが今の鑑定の NCF 利回り 4.13% のまま 10 年続く筋書き。基本どおり 8% とした。
やや楽観 20% 賃料は年 2.5%、キャップは 4.0% まで下がる 利益 58 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 164,621 円1,668 億円
住宅の更新・入替の増額が続き、オフィスと商業も伸びる。賃料は年 2.5% の伸びで、稼働率は 98.5% を保つ。
借り換えは 3.3%。年の利払いは 37 億円に増えるが、NOI は 119 億円と 26% 増え、純利益は 58 億円で今を上回る。
売買市場は、住宅の下限に近い 4.0% で値付けする。物件の価値は 2,680 億円ほどで、純負債 1,010 億円を引くと、時価総額は 1,668 億円。
ただし、郊外型の商業や築古のオフィスは鑑定の値上がりが小さい。全体のキャップは住宅の下限を割れず、地方の物件は値上がりしにくい。借入が重いので、鑑定の上昇は純資産の増加に直結するが、増資を続ける限り、1 口あたりの伸びは鈍る。
- 住宅・オフィス・商業・ホテルの賃貸:数量 1,939(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 146 億円・営業利益 103 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 119 − 資本的支出 12) ÷ キャップ 4.00% − 純負債 1010 = 1668 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り(4.13%)より低い 4.0%。住宅の下限に近い値付けが続く前提。
確率:賃料が物価の 8 割ほど追随し、キャップが 4.0% まで下がる筋書き。ありうる上振れとして 20% とした。
中立 37% 賃料は年 2% で伸び、キャップが 4.41% に上がる 利益 49 億円 · PBR 1.2 倍 · 株価時価総額 119,617 円1,212 億円
借入の約半分が 2 年内に借り換わり、金利は市場の 3.4% に近づく。年の利払いは 18 億円から 38 億円に増える。稼働率は 98% に下がる。
賃料は年 2% で伸びる。住宅とオフィスの増額が、商業・ホテルの固定賃料の鈍さを補う。経費は物価で年 3%。NOI は 95 億円から 111 億円へ、10 年で 18% 伸びる。そこから資本的支出 13 億円が出る。
減価償却は 16.5 億円、運用報酬などは 8.5 億円。純利益は 51 億円から 49 億円へ、わずかに減る。分配は、内部留保の取り崩しがなくなり、今よりやや下がる。
物件の売値は、キャップ 4.41% で 2,230 億円ほど。そこから純負債 1,020 億円を引くと、時価総額は 1,212 億円になる。
- 住宅・オフィス・商業・ホテルの賃貸:数量 1,929(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.2%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 138 億円・営業利益 95 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 111 − 資本的支出 13) ÷ キャップ 4.41% − 純負債 1020 = 1212 億円。キャップは業種の表を取得価格で加重した 4.41%(住宅 3.75%、オフィス 4.5%、商業・ホテル 5.0%)。今の NCF 利回り(4.13%)より高い。
確率:10 年金利が 3% 前後に落ち着き、賃料は年 2% で伸びる筋書き。最も起こりやすい。スポンサーの点数 3.5 のため、悲観の確率を基本の 10% から 15% に上げ、中立は 37% とした。
やや悲観 20% 地方・郊外の需要が弱まり、キャップが 4.66% に上がる 利益 33 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 73,527 円745 億円
地方の住宅の入居が鈍り、郊外型の商業の一部が減額を求める。賃料の伸びは年 1% にとどまる。稼働率も 97% に下がる。
借り換えは 3.6%。年の利払いは 40 億円。NOI は 97 億円と今と同じ水準で、純利益は 33 億円に縮む。
分配は借入の返済を優先して絞り、内部留保も使い切る。含み益は縮み、投資口価格は純資産を下回ったまま戻らない。増資も NAV を割る価格でしかできず、投資主の取り分は薄まる。
キャップは 4.66% に上がる。物件の価値は 1,790 億円ほどで、純負債 1,040 億円を引くと、時価総額は 745 億円だ。
- 住宅・オフィス・商業・ホテルの賃貸:数量 1,909(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.5%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 124 億円・営業利益 81 億円。稼働 97%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 97 − 資本的支出 14) ÷ キャップ 4.66% − 純負債 1040 = 745 億円。キャップは中立 4.41% に 0.25 ポイント上乗せして 4.66% (金利の上振れと、地方・郊外の売り)。
確率:地方都市の住宅と郊外型の商業が弱まり、売却も難しくなる筋書き。借り換えの上乗せも重なる。20% とした。
悲観 15% 需要の崩れと金利上昇で、物件の価値が借入に近づく 利益 7 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 28,819 円292 億円
地方の住宅と郊外の商業で退去が続き、ホテルの運営者の収益も落ちる。全体の稼働率は 93% に下がり、賃料は年 0.3% 下がる。
借り換えは 4.4% になり、年の利払いは 48 億円。NOI は 79 億円と今の 8 割強まで減り、純利益は 7 億円に縮む。
LTV が高いので、物件の価値が 1 割下がるだけで純資産は大きく削られる。分配は大きく減り、増資もできず、借入の返済を優先して物件を売る。
キャップは 4.91% まで上がり、物件の価値は 1,380 億円ほど。純負債 1,090 億円を引くと、時価総額は 292 億円にとどまる。
- 住宅・オフィス・商業・ホテルの賃貸:数量 1,830(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.7%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 105 億円・営業利益 63 億円。稼働 93%・賃料 年 -0.3%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 79 − 資本的支出 11) ÷ キャップ 4.91% − 純負債 1090 = 292 億円。キャップは中立 4.41% に 0.50 ポイント上乗せして 4.91%。物件の価値が純負債に近づき、時価総額は自己資本の 3 割以下になる。
確率:スポンサーの点数 3.5 は 3 以上なので、悲観の確率を基本の 10% から 15% に上げた。住宅・商業の弱まりと借り換え金利の上昇が同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅・オフィス・商業・ホテルの賃貸
国内 85 物件を持ち、住宅(36%)、オフィス(27%)、商業施設(20%)、ホテル(16%)から賃料を受ける。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 1,946 | 5.9% | 115 | 78 |
| 10 年後 中立 | 1,929 | 7.2% | 138 | 95 |
取り方:2026 年 3 月の増資で取得した 7 物件を通期で寄与させた姿で組んだ。年の賃貸事業収益は、2026 年 8 月期と 2027 年 2 月期の予想の営業収益を合わせた 115 億円。売却益は繰り返せないので除く。数量は増資後の帳簿価額 1,968 億円(鑑定 2,082 億円−含み益 114 億円)に稼働率 98.9% を掛けた規模、価格は収入 ÷ 数量。NOI は運営費 20 億円を引いて 95 億円、セグメントの利益は減価償却 16 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、商業・ホテルの固定賃料が物価に連動しにくいため(業種ノート)。
リスクと懸念
借入の重さと借り換え
増資後で鑑定評価額の 50.2%、総資産の 49.7%。2 年内に約 45% が満期になる。1% 台前半から 3.4% 前後に借り換えると、年の利払いは 18 億円から 38 億円になる。
NAV を割る増資
2026 年 3 月の公募は NAV の約 78% の価格。2024 年 9 月にも公募増資があり、頻度が高い。投資口価格が NAV を下回る間に増資すると、既存の投資主の取り分が薄まる。
スポンサー経由の取得
取得の約半分がスポンサーグループ経由。値付けを比べにくく、利益相反の余地が残る。
LTV の高さによる純資産の削れ
鑑定評価額が 1 割下がると、LTV は 56% に近づく。含み益は 114 億円と小さく、下げの余裕が薄い。
資本的支出の低さ
直近 1 年で約 9 億円と、減価償却の約 16 億円を下回る。住宅の専有部の更新が続けば後で膨らむ。建築費は物価より速く上がる。
地方・郊外の需要
地方都市の住宅と郊外型の商業は、人口減少と EC の影響を受ける。四大経済圏の比率は 83% だが、残りの 17% は弱い。
今後の分かれ目
- 10 年国債の利回りが 2% 台前半へ戻り、借り換えが 2.5% 前後で済む
- 利払いの増加が小さくなり、純利益が 60 億円近くを保つ。楽観側の確率を上げる。
- 住宅の更新・入替の増額が年 3% 近くまで広がる
- NOI の伸びが年 3% に近づく。中立の見方を上げる。
- 地方の住宅と郊外の商業で稼働率が 95% を下回る
- NOI の減りが想定より早まる。慎重側の確率を上げる。
- NAV 割れでさらに公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 増資を止め、売却で借入を返して LTV を 45% 台に下げる
- 借金の上乗せが下がり、k が下がる。中立の見方を上げる。
見ておくもの
- 住宅の更新・入替時の賃料増減率
- 借り換えの金利と、2 年内の満期
- NAV と投資口価格の差、増資の頻度
- 資本的支出と減価償却の比
- スポンサー経由の取得の割合
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や NAV 倍率から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、純負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を取得価格で加重した 4.41% で、今の鑑定の NCF 利回り 4.13% より高い。NAV(含み益)は床に使っていない。基本の資本的支出は、直近 1 年が約 9 億円と低いため、今の 1.5 倍の 13 億円に置いた。増資後の姿は、公式の開示から筆者が組み直した(現金は推定)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.75% を足して 9.25%。用途の分散は cycle に入れたので extra は置かない。