結論
日本ロジスティクスファンドは、2005 年に上場した日本初の物流 REIT だ。首都圏の国道 16 号の内側に物件の 6 割強が集まり、三井物産を中心とする運用会社が運営する。筆者の結論は、やや割高である。
強みは含み益と財務だ。物件の鑑定評価額は帳簿価額を 1,600 億円以上上回り、含み益率は J-REIT の最高水準にある。鑑定で見た借入の比率は 29% と軽い。投資口の値段は NAV の 8 割ほどで、会社は自己投資口の買い入れを繰り返している。
それでも割高に傾くのは、古い物件の更新費と金利の前提からだ。平均 0.90% の借入は 3.6 年でほぼ全部が 3% 台の新しい金利に替わる。年の利払いは 30 億円ほど増え、純利益の 3 割弱が消える。
もうひとつ、分配金には物件の売却益が含まれる。売却益を除く分配は、見かけより 2 割ほど薄い。今の値段は、金利が低いままという前提の値段だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、含み益の厚さと資本の使い方は魅力がある。帳簿の安い物件を時価で売って益を出し、投資口を NAV より安く買い戻す。この二つが続く限り、1 口の価値は増える。
ただ、値段には安全域が足りない。今の分配は売却益と積立金の取り崩しで底上げされており、それらを除くと分配は 2 割ほど薄い。築の古い物件は更新費がかさみ、金利が 3% 台になれば純利益は 3 割弱減る。
好材料は、運用会社の報酬が NOI と 1 口あたりの FFO に連動することだ。投資主と運用会社の利害はそろいやすい。スポンサーの出資の厚さは確かめられなかったが、買い入れの実績がそれを補う。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 1 割ほど下回る。差は小さいが、安全域とは言えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、首都圏を中心とする物流施設を、通販・小売・物流会社に貸す賃料だ。2026 年 7 月期の半年で賃貸事業の収益は約 102 億円、経費を引いた NOI は約 83 億円だった。年にならすと NOI は 166 億円で、帳簿価額に対する利回りは 6.5% と高い。物件が古く、帳簿が償却で小さいからだ。
物件は国道 16 号の内側が 64% を占め、都心に近い。大型の新築に比べて古いが、湾岸の立地は借り手に選ばれやすい。稼働率は期中平均で 96.7% と、新しい物流 REIT より低い。会社は、空きを残して賃料を上げる運営を採っているからだ。
契約は定期借家が中心で、実質の残りは 3.5 年。満了のたびに賃料を市場へ合わせ直す。直近の増額は平均 7.4% だった。物価に連動する条項を入れた契約も増やしている。借り手が自ら床を返しやすい短い契約が多い点は、強みでもあり弱みでもある。
成長の道具は三つある。自ら物件を建て替える再開発、パートナーと土地から開発する協同開発、含み益の大きい物件を売って益を還元する資産入れ替えだ。
優良さと弱いところ
物件の質は、立地で稼ぐタイプだ。新築ではないが、国道 16 号の内側で供給が少なく、借り手の入れ替えが利く。含み益率の高さがそれを裏づける。
資本の使い方は上手い。売却は鑑定を 3 割強上回る価格で成立した例がある。売って得た資金は、交換の特例を使って新しい物件の取得へ回し、税の支払いを先に延ばす。物件を入れ替えるたびに、帳簿は小さく、時価は大きくなる。
自己投資口の買い入れは、2024 年から 4 回続いた。投資口が NAV を下回る間は、物件を買うより 1 口の価値が増える。増資は 2022 年 2 月の 1 回だけだ。
弱みは築の古さだ。古い物件は、設備の更新と建て替えの費用が膨らむ。今の資本的支出は軽いが、建築費は物価より速く上がる。稼働を下げて賃料を上げる運営も、景気が悪い時には空きが戻らない危うさを持つ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流施設の需要は、通販の拡大と在庫を持つ倉庫の自動化で長く伸びてきた。ただ 2024〜26 年は首都圏の湾岸で大量の新築が重なり、空室が上がった。建築費の高騰で、2027 年の新築は細る見通しだ。
供給が細ると、立地の良い既存の施設は賃料を上げやすい。JLF の増額改定は直近で 7% 台にあり、この動きに乗っている。ただ 2028 年以降に新築が戻れば、上げ幅は縮む。筆者は、中立で賃料は名目年 2% と見る。物価 3% に届かないのは、供給の波が賃料を抑えるからだ。
物流 REIT は、スポンサーの開発物件を買う成長が主流だ。JLF は違い、自前の再開発と協同開発で物件を作る。取得の利回りが高いのが強みで、協同開発の平均 NOI 利回りは 5.5% を超える。
金利の 10 年は、物流不動産の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、期待キャップは 4.25% まで上がる。JLF は今の鑑定の NCF 利回りが 3.7% と低い。この差が、物件の価値を鑑定より下げる。10 年後のキャップが鑑定の水準に戻らない限り、含み益は縮む。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、自己投資口の買い入れと、売却益を使った資産入れ替えだ。直近の期も投資口を消却し、次の期にも 2 万口あまりを買う予定でいる。公募増資は、1 口の分配金と NAV の成長に役立つ時に限ると明言している。
分配は、減価償却の 6 割を上限とする利益超過分配の枠を持つが、今は使っていない。買換特例の圧縮積立金を取り崩して分配に回す形が続く。借入は鑑定で 29% と軽く、格付けは JCR の AA、R&I の AA-。借入余力は 160〜360 億円とされる。借入先は大手銀行が中心で、借り換えに不安はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
含み益が厚く、財務が堅い。物件の鑑定は帳簿を 1,600 億円以上上回り、鑑定で見た借入の比率は 29% と J-REIT の平均より低い。固定金利の比率は 89% で、金利の上昇はゆっくり効く。借入余力が大きく、機動的に物件を買える。物件を売った益で再投資する余地もある。
賃料の増額が続く。国道 16 号の内側は供給が細く、増額は直近で 7% 台に乗った。物価連動の条項も増えている。稼働を 98% 台へ戻せれば、1 口の収益はさらに増える。
資本の回し方に実績がある。鑑定を 3 割強上回る価格で売り、その資金を高い利回りの物件に振り向ける。協同開発の NOI 利回りは 5.5% を超える。NAV を 2 割下回る投資口を買い戻すだけでも、1 口の価値は増える。
格付けは AA で、借り換えの上乗せも小さい。10 年金利が 2% 台で止まれば、見方は大きく変わる。投資口が NAV を回復すれば、公募増資で外から物件を買い、1 口の価値を増やす選択肢も戻る。
慎重な見方
金利の 10 年は避けられない。平均 0.90% の借入が 3.4% に替われば、年の利払いは 30 億円ほど増え、純利益の 3 割弱が消える。鑑定の NCF 利回りは 3.7% と、10 年国債 3% では低すぎる。キャップが 4.25% に上がれば、物件の価値は 1 割強下がる。
築が古い。更新と建て替えの費用は、建築費の上昇で物価より速く膨らむ。今の資本的支出は軽いが、10 年後は倍になる。稼働を下げて賃料を上げる運営は、景気の悪い時に空きが戻らない。
分配は見かけより薄い。売却益と積立金の取り崩しを除くと、年の分配は 107 億円だ。売却益を出せる含み益の大きい物件は、いずれ尽きる。
運用報酬は NOI の 11% で、スポンサーの出資の厚さも確かめられなかった。2028 年以降に新築が戻れば、賃料の上げ幅は縮む。物件の売却で益を出す戦略も、取引市場の利回りが上がれば成り立たなくなる。金利が高止まりすれば、買い入れの原資の借入も重くなる。
どちらに重みを置いたか
含み益と財務の面で強気に分があるが、築の古さと金利の前提は動かせない。中立は今の値段を 1 割強下回る。スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% に置いた。楽観側は合わせて 32%、中立は 40% を置いた。筆者は、割高の度合いは小さく、値段が下がれば魅力が出る位置にあると見る。含み益の厚さが、その差を小さくしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 113,198 円3,108 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 36,858 円1,012 億円)。 今の値に割り戻すと 76,859 円2,110 億円、今との差 −12.4%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.1%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 177,284 円4,868 億円 | 44,722 円1,228 億円 | +153.1% | +9.7% | 22,201 円610 億円 |
| やや楽観 | 22% | 146,839 円4,032 億円 | 41,335 円1,135 億円 | +114.6% | +7.9% | 41,398 円1,137 億円 |
| 中立 | 40% | 114,317 円3,139 億円 | 37,875 円1,040 億円 | +73.5% | +5.7% | 60,877 円1,672 億円 |
| やや悲観 | 18% | 72,764 円1,998 億円 | 31,720 円871 億円 | +19.1% | +1.8% | 18,807 円516 億円 |
| 悲観 | 10% | 43,411 円1,192 億円 | 24,327 円668 億円 | −22.8% | −2.5% | 6,774 円186 億円 |
| 加重平均 | 100% | 113,198 円3,108 億円 | 36,858 円1,012 億円 | +71.1% | +5.5% | 150,057 円4,120 億円 |
今の株価時価総額 87,700 円2,408 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.1% を下回るほど割高。
楽観 10% 供給の細りで賃料が物価並みに上がる 利益 125 億円 · PBR 3.5 倍 · 株価時価総額 177,284 円4,868 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.1% で済む。2027 年の供給の細りが賃料を押し上げ、満了のたびに増額が続く。賃料は年 3% で上がり、稼働は 98.5% まで戻る。
経費は物価並みに増えるが、NOI は 10 年で 4 割強伸びる。純利益は今より 1 割ほど増える。協同開発と再開発で物件を入れ替え、利回りの高い物件の比率が上がる。借入は返済が進み、金利の上昇の影響をさらに和らげる。
物件の利回りは 3.6% まで下がり、物件の価値は鑑定を上回る。借入が軽いので、投資主の取り分は今の値段を大きく上回る。
- 物流施設の賃貸:数量 2,528(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 11.0%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 279 億円・営業利益 189 億円。稼働 98%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 228 − 資本的支出 17) ÷ キャップ 3.60% − 純負債 1000 = 4868 億円。キャップは物流の下限 3.5% に近い 3.6%。
確率:2027 年の供給の細りと強い増額が続き、金利も 3% 以下で収まる筋書き。含み益と借入の軽さを考え 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.25% 利益 108 億円 · PBR 2.9 倍 · 株価時価総額 146,839 円4,032 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.25% になる。賃料は満了のたびに年 2.5% で上がり、稼働は 97.5% を保つ。再開発の物件が追加の収益を生み、古い物件の更新費の増加を一部まかなう。
利払いは年 39 億円ほどまで増え、純利益はほぼ今の水準にとどまる。売却益を使った資産入れ替えが続き、投資口の買い入れで 1 口の価値が増える。資本的支出は築が進むにつれ年 18 億円まで増える。
物件の利回りは 3.85% に上がる。物件の価値は鑑定よりやや低いが、軽い借入のおかげで投資主の取り分は今の値段を上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 2,503(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 263 億円・営業利益 173 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 212 − 資本的支出 18) ÷ キャップ 3.85% − 純負債 1015 = 4032 億円。キャップは物流の中立 4.25% より 0.4% 低い 3.85%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 40% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 91 億円 · PBR 2.3 倍 · 株価時価総額 114,317 円3,139 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年ほどで 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の約 10 億円から 41 億円へ増える。賃料は年 2% で上がり、稼働は 96.5% を保つ。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 2 割弱しか伸びない。減価償却は取得原価のままで、更新を積んだ分だけ少し増える。純利益は今の 2 割弱減り、分配は売却益を除いて今の 1 割ほど減る。資本的支出は築の進行で年 20 億円に倍増する。
物件の利回りは 4.25% に上がり、物件の価値は鑑定より 25% ほど低い。借入が軽いので、投資主の取り分は今の自己資本を大きく上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 2,477(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.0%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 248 億円・営業利益 157 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 197 − 資本的支出 20) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 1030 = 3139 億円。キャップは物流の中立 4.25%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.75%)。今の鑑定の利回り約 3.7% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 40%。
やや悲観 18% 供給が戻り、稼働と賃料が頭打ちになる 利益 62 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 72,764 円1,998 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.65% になる。2028 年以降に新築が戻り、賃料は年 1% しか伸びず、稼働は 94.5% に落ちる。築の古い物件の更新費が増え、資本的支出は年 24 億円になる。
利払いは年 44 億円になり、純利益は今の 4 割ほど減る。売却益の還元は止まり、分配は純利益の水準になる。投資口の買い入れも手控え、借入の返済に現金を回す。空室の手当てのため、フリーレントなどの費用も増える。
物件の利回りは 4.75% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本とほぼ同じ水準まで縮む。
- 物流施設の賃貸:数量 2,426(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.1%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 220 億円・営業利益 129 億円。稼働 94%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 169 − 資本的支出 24) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 1060 = 1998 億円。キャップは中立 +0.5%。借入は軽いが、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:2028 年以降の新築の戻りで稼働が下がり、借り換えが重くなる筋書き。18% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 27 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 43,411 円1,192 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.3% になる。不況で通販と物流会社が床を返し、稼働は 88% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。NOI は 2 割強減る。
純利益は今の 4 分の 1 に細り、分配はほぼ純利益の水準になる。資本的支出を絞り、借入の返済と空室の手当てに現金を回す。物件の利回りは 5% に上がり、物件の価値は鑑定の 6 割ほどになる。
借入が軽いので、物件の価値は借入を上回って残るが、投資主の取り分は今の自己資本を下回る。清算されない限り、施設を売って NAV を受け取ることはできない。
- 物流施設の賃貸:数量 2,259(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 186 億円・営業利益 99 億円。稼働 88%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 137 − 資本的支出 20) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 1150 = 1192 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流施設の賃貸
首都圏の国道 16 号の内側を中心とする物流施設を、通販・小売・物流会社に定期借家で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.2%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 2,482 | 8.2% | 204 | 130 |
| 10 年後 中立 | 2,477 | 10.0% | 248 | 157 |
取り方:2026 年 7 月期の半期の不動産賃貸事業収益 102.0 億円を 2 倍して年額 203.9 億円。帳簿価額 2,567 億円(貸借対照表の賃貸等不動産)× 期中平均稼働 96.7% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は賃貸事業収益 − 償却を除く賃貸事業費用で年 166.1 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 36.4 億円を引いた額。売却益は除く。中立の価格が 1.22 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、定期借家の更新が数年ごとで、2028 年以降の新築の戻りで転嫁が物価の 2/3 にとどまると見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 0.90% の借入が 3.4% へ借り換わると、年の利払いは 30 億円ほど増え、今の純利益の 3 割弱が消える。固定の比率は 89% と高いが、残りは 3.6 年で、10 年でほぼ全部が新しい金利になる。
築の古い物件の更新費
今の資本的支出は年 10 億円と軽いが、築が進めば倍になる。建築費の上昇で、更新費は物価より速く増える。
稼働を下げて賃料を上げる運営
稼働率は期中平均で 96.7% と低めに運営している。景気が悪いと、空きが戻らず増額の機会を失う。
売却益に頼る分配
直近の分配は売却益 11 億円と積立金の取り崩しを含む。売却益を除く分配は年 107 億円。含み益の大きい物件は、いずれ尽きる。
物流施設の利回りの上昇
今の鑑定の NCF 利回りは 3.7% で、10 年国債 3% との差が小さい。利回りが 1 ポイント上がると、施設の価値は 2 割強下がる。
スポンサーの出資の薄さ
運用会社の株主は三井物産 70%、三井住友信託銀行 20%、ケネディクス 10% だが、投資口そのものの出資比率は確かめられなかった。運用報酬は NOI の 11%。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、やや楽観に近づく。今の値段は適正の範囲に入る。
- 満了時の増額が 2028 年以降も 5% 超を保つ
- NOI の伸びが物価に近づき、楽観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得を続ける
- NAV 割れの値段で 1 口の価値を増やす使い方で、スポンサーの点数を下げる。
- 稼働率が 98% 台へ戻る
- 賃料と稼働の両方が伸び、中立の NOI を上げる。
見ておくもの
- 満了時の賃料増額率と期中平均稼働率
- 平均調達金利と固定比率
- 自己投資口の取得と消却の額
- 資本的支出と建て替えの計画
- 協同開発の NOI 利回り
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回り 3.7% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.1% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.61% を足した 8.11%。事業は傾いていないので extra は置かない。