結論
いちごオフィスは、東京都心と首都圏、大阪・名古屋・福岡・札幌のオフィスビル 87 棟を持つ REIT だ。1 棟は 20 億から 30 億円台の中小型が中心で、稼働は 97.3%。筆者の結論は割高である。今の値段は、低金利を前提にした鑑定の評価と、毎期の売却益で支えられた分配を、そのまま 10 年先へ延ばした値段だからだ。
この REIT の持ち味は、スポンサーのいちごが「心築」と呼ぶ改修と、売却の巧みさにある。入居しやすく直したビルを、帳簿価額の 1.6〜2.8 倍で売り、その益を分配に回してきた。分配金の 2 割から半分近くは、売却益である。ただ売る物件には限りがあり、益は通常の利益には数えない。
借入は約 1,270 億円。LTV は帳簿で 51.6%、鑑定で 43.9% と、オフィス REIT の中で重い。平均金利は 1.16% で、3 年ほどで大半が借り換わる。10 年金利が 3% に落ち着けば、年の利払いは今の 3 倍近くになり、利益は半分以下に細る。
スポンサーの筆頭投資主向けの第三者割当は 2024 年に一度あり、NAV の 8 割強の値段だった。一方で自己投資口の買い入れも続けている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、物件を磨いて高く売る運営力は評価できる。含み益を上回る売却益を、毎期のように出している。自己投資口の買い入れも、NAV 割れの値段を活かした確実な使い道だ。
ただ、投資主が受け取るのは、賃料から資本的支出と利払いを引いた残りだけだ。毎期の改修費は NOI の 3 分の 1 に達し、借入は 1,270 億円。平均 1.16% の金利が 3% 台後半へ変わると、年の利払いは 15 億円ほどから 52 億円へ増える。10 年の分配と 10 年後のビルの価値を合わせても、今の値段の 4 割ほどの価値にしかならない。
売却益は魅力だが、売る物件は有限で、売れば賃料も消える。含み益 677 億円は、鑑定の利回りが低いうちの数字だ。ビルの利回りが 5% に近づけば、この含み益は消える。今の値段は、その安全域を見込んでいない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。企業にビルを貸し、賃料から経費と利払いを引いた残りを投資主に配る。2026 年 4 月期(半年)の賃貸事業収入は約 82 億円、そこから経費を引いた NOI、つまり物件の正味の賃料は約 59 億円だった。年額にすると、収入が 164 億円、NOI が 119 億円になる。
物件は 87 棟、取得価格で 2,225 億円、帳簿価額で 2,211 億円。鑑定評価は 2,888 億円、含み益は 677 億円ある。東京都心 6 区が帳簿の半分、首都圏が 2 割、大阪・名古屋・福岡・札幌などの主要都市が 2 割弱で、1 棟 30 億円以上は半分ほどにとどまる。テナントは 1,036 件と分散し、上位 10 社でも賃料の 12% だ。
賃料は入れ替えで上がる。改修した部屋に新しい借り手が入ると、増額が取れる。この REIT は、その改修費を資本的支出として毎期 20 億円ほど使う。うち半分が賃料を上げるための改修、半分は設備の更新だ。NOI の 3 分の 1 が毎年ビルに戻る計算で、分配できる現金は見かけより少ない。
借入は 1,266 億円。平均金利は 1.16%、固定の比率は 81.7%、残りの期間は 3.3 年。格付けは JCR の A プラスで、大型オフィス REIT の AA より一段低い。
優良さと弱いところ
物件の質は中程度だ。都心 6 区の比率は高いが、1 棟が小さく、築の古いビルも多い。稼働は 97.3% と高く、改修で賃料を上げる力は本物だ。ただ、小さなビルの賃料は市況で決まり、自分で値段を決める力は無い。
資本の使い方は、巧みさと危うさが混じる。2024 年 5 月には、スポンサーの筆頭投資主に NAV の 8 割強の値段で第三者割当をした。投資主の価値は薄まったが、同じ時期に物件の売却益も出し、NAV は 6 期連続で上がっている。その後は自己投資口の買い入れを 2 期続け、増資はしていない。
売却は鮮やかだ。2026 年 4 月期から 10 月期に 5 棟を売り、帳簿価額の 1.7 倍から 2.8 倍で手放す。含み益を上回る益を出せる運営力は、他の REIT にない強みである。
弱いのは報酬と借入だ。運用報酬は NOI の 12% で、同じ用途の中でも高く、利益に連動する成功報酬も乗る。LTV は帳簿で 51.6%、純負債は NOI から報酬を引いた額の約 11 倍と重い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京のオフィス市場は、空室率が低く、賃料は上昇基調にある。この REIT の増額改定も続いている。ただ、大型の新築は 2027 年以降も続き、働く場所は分散する。筆者は中立の賃料の伸びを、物価の 3 分の 2、名目で年 2% 前後と置く。中小型ビルは、新しい大型ビルに借り手を奪われやすく、地方の主要都市は伸びがさらに低い。経費は物価で増えるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
いちばん大きいのは金利だ。この REIT の鑑定の利回りは 4% 前後で、含み益 677 億円は、この低い利回りに支えられている。10 年国債が 3% の世界で、不動産に求める利回りを 6%、NOI の長い伸びを 1.25% とすれば、小さく築の古いビルは 4.75% 前後に落ち着く。大型の都心ビルより高い利回りが要る。
中小型ビルは、売却の買い手が個人投資家や事業会社に広がる点で、大型より流動性が高い。ただ、これは売れる値段が高いという意味ではなく、金利が上がれば買い手の利回りも上がる。
オフィスは、金利の上昇と利回りの上昇が同時に効きやすい用途である。
資本政策と M&A
利益のほぼ全部を配るのが REIT の決まりだ。成長の道は、増資で物件を買うか、物件を入れ替えるかのどちらかになる。この投資法人は、2024 年の第三者割当を最後に増資を止め、入れ替えと自己投資口の買い入れに絞っている。
入れ替えは速い。2026 年 4 月期にいちご・みらい信金ビルを売り、立川公園通りビルと船橋ビルを 56 億円で取得した。10 月期にはさらに 4 棟を 142 億円で売り、売却益は 59 億円に上る。益のうち 1 億円は積立に回し、残りは全て分配する。筆者は、この売却益を通常の分配には数えず、一度きりの上乗せとして別に扱った。
自己投資口は、2 期続けて 26 億円を買って消却した。NAV の 8 割台で買うのは確実な使い道だ。
取得はスポンサーのパイプラインに頼る。813 億円、18 棟が候補にあるが、LTV は帳簿で 51.6% と、借り増しの余地は乏しい。売却で戻した資金を再投資できるかが、次の鍵になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
いちごの心築は本物だ。改修への投資は賃料の増加で 20% 以上の利回りを生み、鑑定の評価も上がる。5 年で売却した物件は、帳簿の 1.6〜2.4 倍で売れた。含み益は 677 億円あり、売却で毎期分配に益を回せる。
東京のオフィスは空室が低く、増額改定の流れは続く。稼働は 97% を超え、NAV は 6 期連続で上がっている。自己投資口の買い入れも続き、値段が NAV に近づくだけで大きく報われる。
中小型ビルは、大型ほど新築の供給に押されにくい。借り手は 1,036 件に分散し、1 社の退去で大きく崩れない。スポンサーのパイプラインは 813 億円あり、買い手と売り手の両方の道がある。
金利が 3% まで上がるとも限らない。固定の比率は 81.7% あり、返済の期限も分散している。
こうした運営の力が賃料と売却益を押し上げ続ければ、分配は守られる。
売却で戻した資金を、築の浅い物件や改修の効く物件へ振り向ける入れ替えが進めば、稼ぐ力は保たれ、売却益の分配も続く。
慎重な見方
低金利が作った値段だ。鑑定の利回りは 4% 前後、10 年国債が 3% の世界ではほとんど差が無い。利回りが 4% 台後半に上がれば、ビルの価値は 2 割台半ば下がり、借入が重いので投資主の取り分はその倍以上の速さで減る。LTV は帳簿で 51.6% と高く、鑑定の利回りが上がるとこの余裕は消える。
利払いも重い。平均 1.16% の借入が 3% 台後半に変われば、年の利払いは 3 倍を超える。残りの期間は 3.3 年と短く、格付けも A プラスなので、借り換えの上乗せも大きい。
改修費は NOI の 3 分の 1 を占める。賃料を上げるための投資が、賃料の伸びに見合わなくなれば、分配できる現金は急に細る。
分配金は売却益を含む。売却益を除く分配は 3 割ほど少なく、売る物件は有限で、売った分の賃料も消える。
さらに、スポンサーの筆頭投資主への第三者割当や、運用報酬が NOI の 12% と高い点は、投資主の取り分を薄める。
どちらに重みを置いたか
強気にも言い分はあるが、勝負を決めるのは金利と借入の重さだ。10 年金利 3% を前提にする以上、利払いとビルの利回りの上昇は避けられない。スポンサーの点数が 3 に達するので、悲観の確率は厚くした。中立を 34% に置き、悲観側を合わせて 38% とした。楽観は金利が今のまま止まる筋書きで 8%。筆者は、この REIT の物件を磨く腕は認める。ただ結論は変わらず、割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 36,523 円552 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 37,106 円561 億円)。 今の値に割り戻すと 38,067 円576 億円、今との差 −56.4%、 期待の年率 −1.7%(資本コスト 9.6%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 180,189 円2,725 億円 | 48,932 円740 億円 | +162.5% | +10.1% | 18,330 円277 億円 |
| やや楽観 | 20% | 60,107 円909 億円 | 44,303 円670 億円 | +19.6% | +1.8% | 20,882 円316 億円 |
| 中立 | 34% | 28,500 円431 億円 | 39,542 円598 億円 | −22.1% | −2.5% | 23,134 円350 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,322 円20 億円 | 31,740 円480 億円 | −62.1% | −9.3% | 7,274 円110 億円 |
| 悲観 | 16% | 661 円10 億円 | 24,400 円369 億円 | −71.3% | −11.7% | 4,010 円61 億円 |
| 加重平均 | 100% | 36,523 円552 億円 | 37,106 円561 億円 | −15.7% | −1.7% | 73,629 円1,114 億円 |
今の株価時価総額 87,300 円1,320 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.6% を下回るほど割高。
楽観 8% 金利が止まり、改修と増額改定が続く 利益 74 億円 · PBR 2.8 倍 · 株価時価総額 180,189 円2,725 億円
東京の本社需要が強く、改修した部屋の増額が続く。賃料は物価並みの年 3% で上がり、稼働は 98.5% を保つ。NOI は 10 年で 3 割台半ば伸びる。
借り換えの金利は A プラスの格付けで 3.4% にとどまる。不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 2.74% のまま変わらない。時価総額は 2,725 億円と今の 2.0 倍になる。売却益の分配も続き、投資主の取り分は今の値段を上回る。
筆者はこの筋書きを、前提の金利から外れる分だけ低く見る。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びがそれを上回り、償却を引いた後の利益も毎年増えていく。自己投資口の買い入れも続き、1 口あたりの価値が積み上がる。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,178(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.2%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 222 億円・営業利益 139 億円。稼働 98%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 162 − 資本的支出 50) ÷ キャップ 2.74% − 純負債 1370 = 2725 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 2.74% で、今の値付けが 10 年続く所(オフィスの下限 3.5% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:10 年金利が今の 3% 前後で止まり、増額改定が長く続く筋書き。前提の金利から外れるので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料は物価に近く伸び、利回りの上昇は小さい 利益 60 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 60,107 円909 億円
空室は低いまま推移し、賃料は年 2.5% で上がる。稼働は 98% を保つ。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びが上回り、NOI は 10 年で 2 割台半ば伸びる。
借入は 3.6% 前後へ借り換わり、利払いは今の 3 倍になる。純利益は今より 1 割ほど減る。ビルの利回りは 4.35% に上がり、ビルの価値は今の鑑定を大きく下回る。
改修による増額は続くが、物価の上昇には追いつかない。自己投資口の買い入れは続くが、金利が上がるほど余力は細る。
含み益の売却による分配の上乗せもあるが、通常の利益には数えない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,167(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.7%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 211 億円・営業利益 128 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 151 − 資本的支出 51) ÷ キャップ 4.35% − 純負債 1380 = 909 億円。キャップは中立 4.75% から 0.4% 下げた。
確率:増額改定が進み、ビルの利回りの上昇が小さい筋書き。20%。
中立 34% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 46 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 28,500 円431 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3〜4 年で 3.8% へ借り換わる。年の利払いは今の 15 億円から 52 億円へ増える。賃料は年 2% で上がるが、新築の供給で稼働は 97% へ少し下がる。経費は物価並みの 3% で増え、NOI は 10 年で 1 割台半ばしか伸びない。
減価償却は昔の取得原価のままなので、会計の利益は利払いの増加ほどは減らない。それでも純利益は今より 3 割近く細る。修繕と更新の費用は築年とともに 1.3 倍に膨らみ、償却を大きく上回る。
ビルの利回りは 4.75% に上がり、ビルの価値は今の鑑定より 4 割近く低い。負債は減らず、投資主の取り分は今の自己資本の半分ほどになる。NAV 割れで増資はせず、規模は据え置きだ。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,145(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.3%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 199 億円・営業利益 116 億円。稼働 97%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 138 − 資本的支出 52) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 1390 = 431 億円。キャップは小さく築の古いオフィスの中立 4.75%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.25%)。今の鑑定の利回り 4.0% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 34%。
やや悲観 22% 供給過多で賃料が伸びず、利回りが上がる 利益 22 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 1,322 円20 億円
大型の新築ビルが続き、テナントは新しいビルへ移る。中小型と地方のビルは賃料の改定で増額が取れず、平均の賃料は年 1% しか上がらず、稼働は 95% へ落ちる。経費は物価で増え、NOI は今より 2% 減る。
借入は 4.1% へ借り換わり、純利益は今の 3 分の 1 まで細る。分配は大きく減る。ビルの利回りは 5.0% へ上がり、ビルの価値は負債に迫る。LTV は 6 割に近づき、格付けの引き下げで借り換えの上乗せが増える。
スポンサーが物件を引き取る支えはありうるが、その値段が投資主に有利とは限らない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,100(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.4%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 176 億円・営業利益 94 億円。稼働 95%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 116 − 資本的支出 48) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 1410 = 20 億円。キャップは中立 +0.25%。
確率:2027 年以降の大型供給と在宅の定着で、中小型ビルから借り手が離れる筋書き。22%。
悲観 16% 金利の上振れと不況が重なり、物件の価値が負債を下回る 利益 −1 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 661 円10 億円
金利は 3% を超えて上がり、不動産の売りが重なる。借り換えの金利は 4.8% に上がり、利払いは今の 4 倍になる。不況で企業は床を減らし、稼働は 92%、賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。経費を年 2% に抑えても、NOI は 15% 減る。
純利益はほぼゼロになり、分配は止まる。配らずに残した現金で借入を少しずつ返す。ビルの利回りは 5.25% へ上がり、物件の価値は負債を下回る。投資主に残るのは、市況が戻れば取り戻せる見込みの分だけだ。清算されない限り、ビルを売って NAV を受け取ることはできない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,034(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.6%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 155 億円・営業利益 79 億円。稼働 92%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 100 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 5.25% − 純負債 1350 = 10 億円。キャップは中立 +0.5%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:リーマン級の不況と金利の上振れが重なる筋書き。借入の重さとスポンサーの点数を考え 16% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィスビルの賃貸
東京都心・首都圏と主要都市の中小型オフィス 87 棟を、1,036 件のテナントに貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 7.6%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 2,151 | 7.6% | 164 | 99 |
| 10 年後 中立 | 2,145 | 9.3% | 199 | 116 |
取り方:2026 年 4 月期の半期の賃貸事業収入 82 億円(売却益を除く)を 2 倍して年額 164 億円。帳簿価額 2,211 億円 × 期末の稼働 97.3% で数量、収入 ÷ 数量で価格。セグメントの利益は NOI 119 億円から減価償却 20 億円を引いた額。中立の価格が物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料が契約の更新ごとに遅れて上がり、物価の 3 分の 2 しか転嫁しないと見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 1.16% の借入が 3% 台後半へ借り換わると、年の利払いは 35 億円ほど増える。今の年の利益の半分を超える。残りの期間は 3.3 年と短く、格付けは A プラスだ。
ビルの利回りの上昇
鑑定の利回りは 4% 前後と低く、10 年国債 3% の世界では保てない。利回りが 1 ポイント上がるとビルの価値は 2 割台半ば下がり、LTV は帳簿で 6 割に近づく。
改修費の重さ
資本的支出は毎期 20 億円ほどで、NOI の 3 分の 1。賃料の伸びが改修費に見合わなくなれば、分配できる現金が細る。
売却益への依存
分配金は売却益を含む。売却益を除く分配は 3 割ほど少なく、売った物件の賃料は消える。売る物件には限りがある。
スポンサーとの関係
2024 年にスポンサーの筆頭投資主へ NAV の 8 割強で第三者割当をした。運用報酬は NOI の 12% と高く、取得はスポンサーのパイプラインに頼る。
地方・築古ビルの空室
大阪・名古屋・福岡・札幌など主要都市のビルと築の古い中小型ビルは、景気の悪化で空室が増えやすい。賃料の下落は都心より大きい。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- ビルの利回りの上昇は小さく、借り換えの金利も 2.5% 前後にとどまる。中立よりやや楽観に近づき、割高の度合いは縮む。
- 売却益を除いた分配が増える
- 賃料の増額が経費と利払いを上回った証拠になる。楽観の筋書きに近づく。
- NAV 割れのまま公募増資や第三者割当を行う
- 1 口の価値が薄まる。2024 年に続く場合は、スポンサーの点数を大きく上げる。
- 自己投資口の買い入れを増やす
- NAV との差が縮まり、資本の使い方の評価を上げる。ただし借入で賄うなら金利の重さが増す。
- 格付けが A プラスを下回る
- 借り換えの上乗せが増え、やや悲観に近づく。
見ておくもの
- 平均調達金利と固定金利の比率
- 売却益を除いた巡航の分配
- 継続鑑定の利回り(キャップレート)
- 資本的支出の水準と賃料の増額
- 簿価 LTV
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回りより高い。NAV 割れ(今は NAV の約 8 割)を割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.10% を足した 9.60%。事業は傾いていないので extra は置かない。