結論
三井不動産アコモデーションファンドは、東京 23 区を中心に 141 物件、取得価格で 3,500 億円ほどの賃貸住宅を持つ J-REIT だ。運用会社は三井不動産の 100% 子会社である。筆者の結論は、適正の範囲にあるということだ。価値の計算は今の値段を 5% ほど下回るが、差は誤差の内に収まる。
強みは立地と財務の質だ。賃貸住宅の 9 割が東京 23 区にあり、稼働は 97.6% と高い。入居者が替わる時の賃料は 15.6% 上がった。鑑定ベースの借入比率は 32% で、格付けは R&I の AA− である。含み益は 1,926 億円と、簿価の 6 割に達する。
弱みは二つある。ひとつは、帳簿ベースの借入比率が 51% と高く、買い増しの余力が小さいことだ。もうひとつは、平均 0.72% という今の調達金利が、借り換えのたびに 3% 台へ切り上がることである。
投資口は NAV を 2 割近く下回る。ただ NAV は清算されない限り手にできない。筆者は割安の根拠にしない。賃料の伸びが利払いの増加をどこまで吸収するかが、見立ての分かれ目だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、東京の単身向け住宅という事業は持ち続けられる。立地が強く、需要は景気に左右されにくい。借入も鑑定ベースでは軽い。
ただ、今の値段に安全域は薄い。今の分配には売却益が混じり、売却益を除く純利益は年 119 億円ほどだ。借入の平均金利 0.72% が 3% 台へ上がると、年の利払いは 12 億円から 58 億円まで増える。
救いは賃料だ。入替え時の増額が続き、NOI が 10 年で 24% 伸びれば、利払いの増加を大半は吸収する。中立でも純利益は今の 1 割減にとどまる。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 5% 下回る。割高とも割安とも言えない。値段が 1 割下がれば、筆者は買ってよい水準と見る。
経営の資本の使い方は、堅実な部類に入る。NAV 割れの局面で増資をせず、築古を売って築浅を買い、売却益は一部を内部留保して分配をならしている。ただし規模を追う報酬の形は残る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、賃貸住宅の賃料だ。2026 年 2 月期の半年で賃貸事業収入は 133 億円、償却を除く費用を引いた NOI は 99.5 億円だった。年にならすと NOI は 199 億円で、帳簿価額 3,146 億円に対する利回りは 6.3% になる。経費率は 25% で、賃料の伸びがほぼそのまま NOI に乗る。
物件の中心は、東京 23 区のシングル・コンパクト向けの「パークアクシス」「パークキューブ」だ。いずれも三井不動産グループが開発したブランドで、賃貸住宅の取得価格の 9 割を占める。賃貸住宅の平均築年は 19.1 年。築 20 年以上が 3 割強あり、築が進んだ物件も多い。ほかに寮・社宅、サービスアパートメント、宿泊施設などのホスピタリティ施設が少しある。
契約は 2 年の普通借家で、入替えの時に市場の賃料へ合わせ直す。当期の入替え時の賃料は 15.6% 上がり、更新時は 1.9% の上昇だった。会社は専有部の改装も進め、増額の幅を広げている。
外部成長は小さい。当期の取得は 2 物件 26 億円にとどまり、売却益は内部留保して分配をならす。取得の余力は、借入比率 55% まで約 260 億円である。
優良さと弱いところ
物件の質は、住宅 REIT の中で上位にある。東京 23 区が 9 割で、地方は札幌・仙台・名古屋・福岡などの中核都市に限る。シングル・コンパクトが戸数の 8 割を超え、需要の厚い単身世帯に寄っている。
強みは三つある。一つめは入替え時の賃料の強さだ。東京の住宅は人の入れ替わりのたびに市場の賃料へ寄せられる。二つめは含み益の厚さで、簿価に対して 6 割ある。三つめは、三井不動産グループがパークアクシスを開発し続け、物件情報を優先して受けられる点である。
弱みも三つある。ひとつは、築 20 年以上が 3 割強あり、資本的支出が償却の 6 割近くまで膨らんでいること。ふたつめは、運用報酬が NOI の 11% 超と重いこと。報酬は賃料収入の 5%、分配可能額に連動する部分、取得と売却の際の 1% からなる。みっつめは、三井不動産レジデンシャルの出資が 3.9% と薄く、同じ船に乗る度合いが弱いことだ。
分配には売却益が混じる。売却益を除いた純利益は年 119 億円ほどで、これが実力である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
賃貸住宅の需要は、賃金の上昇と東京圏への単身者の流入で堅い。新築は建築費の高騰で供給が細り、首都圏の賃料は入替えのたびに上がる。当期の入替え時の賃料は 15.6% 上がり、東京 23 区の稼働は高止まりしている。
住宅は、2 年の更新で賃料が市場に追随する。オフィスや物流のように長い契約に縛られない。そのぶん賃料は上がるのも下がるのも早い。筆者は、中立で賃料は名目年 2.5% と見る。物価の 3% に届かないのは、更新時の増額が小さく、入替えの増額は入れ替わる割合に左右されるからだ。
住宅は景気の波が小さい。稼働は 96〜97% で動きが小さく、悲観でも 90% までと見る。ただ、10 年国債が 3% の世界では、住宅の期待キャップは 3.75% に上がる。今の鑑定の利回りは 3.5% 台で、この差が物件の価値を鑑定より下げる。
金利の上昇は、利回りの低い住宅に強く効く。この投資法人の今の平均金利は 0.72% で、借り換えのたびに 3% 台へ上がる。賃料の伸びで吸収できるかが焦点になる。人口は東京 23 区で横ばい、政令指定都市は減る地域がある。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、物件の入れ替えと売却益の内部留保だ。古い物件を売って築浅の東京 23 区の物件を買い、平均築年を下げる。売却益は全額を分配せず、一部を内部留保して分配をならす。当期の内部留保は 3 億円ほどだ。
増資は 2020 年の公募が最後で、直近 5 年は行っていない。投資口は NAV を 2 割近く下回るので、今は増資で規模を追う局面にない。
借入は、総資産の 51.3%、鑑定ベースで 32.4% である。長期の固定が 88% を占め、平均の残りは 4.0 年。今の平均金利は 0.72% と低く、当期に調達した新規の借入は 1〜2% 台だった。格付けは R&I の AA− で安定的である。
報酬は、賃料収入の 5% と、分配可能額に連動する部分、取得と売却の 1% からなる。スポンサーからの取得は 0.5% に下がる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
東京の住宅の強さは本物だ。入替え時の賃料は 15.6% 上がり、稼働は 97.6% と高い。賃料は 2 年で市場に追随するので、物価が上がればその分が収入に早く表れる。
財務の質も良い。鑑定ベースの借入比率は 32% で、格付けは AA−。長期の固定が 88% を占め、平均の残りは 4.0 年ある。借り換えは 25 年ほどに分散し、1 度に重い満期は来ない。含み益は 1,926 億円と厚い。
投資口は NAV を 2 割近く下回る。三井不動産グループは物件を開発し続け、情報を優先して受けられる。当期は築浅の東京 23 区の物件を買い、築古の物件を売って、平均築年を下げている。
金利が上がっても、NOI の伸びが利払いの増加を大半吸収する。中立でも純利益は今の 9 割を保つ。
運用会社は三井不動産の 100% 子会社で、同じグループの開発会社から築浅の物件の情報を優先して受けられる。売却益を内部留保して分配をならす運用も、投資主には安心材料になる。
慎重な見方
金利の上昇は住宅に厳しい。今の平均金利は 0.72% と低く、借り換えのたびに 3% 台へ上がる。年の利払いは 12 億円から 58 億円に増え、今の純利益の 4 割が消える。
帳簿ベースの借入比率が 51% と高い。余力は 260 億円ほどで、成長には増資か売却が要る。投資口が NAV を下回る間は、増資で 1 口の価値が薄まる。
分配は見かけより厚い。売却益と内部留保が混じり、純利益だけなら年 119 億円だ。売却益が減る来期の予想では、純利益が 1 割落ちる。
築 20 年以上が 3 割強あり、資本的支出は償却の 6 割近くに達する。建築費は物価より速く上がる。運用報酬は NOI の 11% を超え、三井不動産レジデンシャルの出資は 3.9% と薄い。
賃料の追随が早いことは、景気が悪くなれば下がるのも早いということだ。不況で入替えが増え、増額が止まれば、稼働と賃料が同時に落ちる。借入の金利は上がり、売却益も出にくくなる。
どちらに重みを置いたか
強気には、立地と財務の質という確かな言い分がある。ただ、金利の上昇と資本的支出の重さも現実だ。中立は今の値段をわずかに下回った。スポンサーの点数は 3 を下回ったので、悲観の確率は 10% に据えた。楽観側は合わせて 32%、中立は 38% を置いた。筆者は、強さが値段にほぼ入っていると見る。適正の範囲の中ほどだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 156,735 円3,946 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 43,415 円1,093 億円)。 今の値に割り戻すと 104,193 円2,623 億円、今との差 −4.3%、 期待の年率 +6.3%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 234,690 円5,908 億円 | 52,833 円1,330 億円 | +164.0% | +10.2% | 28,752 円724 億円 |
| やや楽観 | 22% | 199,574 円5,024 億円 | 49,059 円1,235 億円 | +128.3% | +8.6% | 54,699 円1,377 億円 |
| 中立 | 38% | 168,232 円4,235 億円 | 45,246 円1,139 億円 | +96.0% | +7.0% | 81,121 円2,042 億円 |
| やや悲観 | 20% | 101,177 円2,547 億円 | 37,380 円941 億円 | +27.2% | +2.4% | 27,712 円698 億円 |
| 悲観 | 10% | 51,959 円1,308 億円 | 26,695 円672 億円 | −27.8% | −3.2% | 7,865 円198 億円 |
| 加重平均 | 100% | 156,735 円3,946 億円 | 43,415 円1,093 億円 | +83.8% | +6.3% | 200,150 円5,039 億円 |
今の株価時価総額 108,900 円2,741 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 入替え賃料の増額が続き、金利も 3% 以下 利益 147 億円 · PBR 3.9 倍 · 株価時価総額 234,690 円5,908 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.1% で済む。入替えの増額が続き、賃料は年 3.5% で上がる。稼働は 97.5% を保つ。
経費は物価並みに増えるが軽く、NOI は 10 年で 4 割強伸びる。純利益は今から 2 割ほど増える。三井不動産グループの築浅物件を取り込み、規模は据え置いたまま平均築年を下げる。増資は行わない。
物件の利回りは 3.45% まで下がり、物件の価値は鑑定に近づく。賃料の追随が早い住宅では、物価の上昇がそのまま収入に表れる。投資主の取り分は今の値段を大きく上回る。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 3,068(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 12.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.7%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 375 億円・営業利益 242 億円。稼働 98%・賃料 年 +3.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 285 − 資本的支出 30) ÷ キャップ 3.45% − 純負債 1480 = 5908 億円。キャップは住宅の下限 3.25% に近い 3.45%。
確率:入替えの増額が続き、金利も 3% 以下で収まる筋書き。住宅は賃料の追随が早く、鑑定ベースの借入も軽いので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 3% で伸び、借り換えは 3.25% 利益 128 億円 · PBR 3.3 倍 · 株価時価総額 199,574 円5,024 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.25% になる。賃料は入替えごとに年 3% で上がる。稼働は 97% を保つ。
利払いは年 57 億円ほどまで増えるが、NOI の伸びが吸収し、純利益は今のほぼ 1 割増になる。資本的支出は築が進むにつれ年 31 億円に増え、専有部の改装に回る。入替えの増額が工事費を回収する形が続く。
物件の利回りは 3.6% に上がる。物件の価値は鑑定をやや下回り、投資主の取り分は今の値段を上回って残る。
分配は売却益の内部留保が細るぶん、今の水準を保つのがやっとである。投資口の値段が NAV に近づくまで増資はしない。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 3,052(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 11.7%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.7%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 356 億円・営業利益 223 億円。稼働 97%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 265 − 資本的支出 31) ÷ キャップ 3.60% − 純負債 1485 = 5024 億円。キャップは住宅の中立 3.75% より 0.15% 低い 3.6%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 109 億円 · PBR 2.8 倍 · 株価時価総額 168,232 円4,235 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年のうちに 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の約 12 億円から 58 億円へ増える。賃料は年 2.5% で上がり、稼働は 96.5% を保つ。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 24% ほど伸びる。減価償却は取得原価のままで、改装を積んだ分だけ増える。純利益は今の 1 割減に収まり、売却益の内部留保が細るぶん、分配は今の水準からやや下がる。
物件の利回りは 3.75% に上がり、物件の価値は鑑定より 2 割ほど低い。借入があるぶん、投資主の取り分は物件の価値の変動に敏感だ。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 3,036(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 11.1%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.7%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 337 億円・営業利益 205 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 247 − 資本的支出 32) ÷ キャップ 3.75% − 純負債 1490 = 4235 億円。キャップは住宅の中立 3.75%(要求利回り 5.75% − NOI の伸び 2.0%)。今の鑑定の利回り約 3.5% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 5 分の 6 で上がる筋書き。最もありうるので 38%。
やや悲観 20% 金利が高めに落ち着き、賃料が頭打ちになる 利益 69 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 101,177 円2,547 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.65% になる。入替えの増額が縮み、賃料は年 1.5% しか伸びず、稼働は 94% に落ちる。地方の物件は人口の減少で空室が増える。築が進み、資本的支出は年 34 億円に増える。
利払いは年 64 億円になり、純利益は今の 6 割ほどに細る。売却益の内部留保は終わり、分配は純利益だけになる。借入の返済に現金を回し、新しい物件は買えない。
物件の利回りは 4.25% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本を 7 割ほど上回る水準まで縮む。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 2,958(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.1%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.7%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 298 億円・営業利益 166 億円。稼働 94%・賃料 年 +1.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 207 − 資本的支出 34) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 1530 = 2547 億円。キャップは中立 +0.5%。借入があるぶん、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:金利が高めに落ち着き、入替えの増額が縮む筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 16 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 51,959 円1,308 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.3% になる。不況で入居者が減り、稼働は 90% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。NOI は 2 割ほど減る。
利払いは年 75 億円になり、純利益はほぼ消える。分配は純利益の水準まで下がる。資本的支出を絞り、借入の返済と空室の手当てに現金を回す。物件の利回りは 4.5% に上がり、物件の価値は鑑定の 6 割ほどになる。
物件の価値は借入を上回って残るが、投資主の取り分は今の自己資本とほぼ同じ水準に縮む。清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
- 賃貸住宅の賃貸:数量 2,832(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.7%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 246 億円・営業利益 120 億円。稼働 90%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 160 − 資本的支出 30) ÷ キャップ 4.50% − 純負債 1570 = 1308 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸住宅の賃貸
東京 23 区を中心とする賃貸住宅 141 物件(13,702 戸)を、主に単身・小家族向けに 2 年の普通借家で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 8.7%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 3,071 | 8.7% | 266 | 162 |
| 10 年後 中立 | 3,036 | 11.1% | 337 | 205 |
取り方:2026 年 2 月期の半期の賃貸事業収入 133.1 億円(売却益を除く)を 2 倍して年額 266.3 億円。帳簿価額 3,146 億円(貸借対照表の有形固定資産)× 期中の平均稼働 97.6% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 199.1 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 37.5 億円を引いた額。中立の価格が 1.28 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、更新時の増額が小さく、入替え時の増額は入居者の入れ替わる割合に左右され、転嫁が物価の 5/6 にとどまると見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
今の平均金利は 0.72% で、当期に調達した新規の借入は 1〜2% 台だった。10 年金利 3% の世界で 3.4% へ借り換わると、年の利払いは 12 億円から 58 億円まで増え、今の純利益の 4 割が消える。
帳簿ベースの借入比率
総資産に対する借入比率は 51.3% と高く、上限 55% までの余力は 260 億円ほど。鑑定ベースでは 32% と軽いが、物件の価値が下がると余力は急に細る。成長には増資か売却が要る。
資本的支出の重さ
資本的支出は半期で 10.5 億円と、減価償却の 56% に達する。築 20 年以上が 3 割強あり、建築費は物価より速く上がる。専有部の改装は賃料の増額で回収する前提である。
分配に混じる売却益
今の分配には売却益が混じる。売却益を除く純利益は年 119 億円ほどで、来期の予想は純利益が 1 割ほど落ちる。見かけの減配で投資口が売られる場面はありうる。
住宅の利回りの上昇
今の鑑定の NCF 利回りは 3.5% 台と低く、10 年国債 3% との差が小さい。利回りが 1 ポイント上がると、物件の価値は 2 割強下がる。
スポンサーの出資の薄さ
三井不動産レジデンシャルの出資は 3.9% と薄い。運用報酬は NOI の 11% 超で、取得と売却の際にも 1% の報酬がかかる。規模を追う動機が働きやすい。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、やや楽観に近づく。今の値段は割安の側に入る。
- 入替え時の賃料の増額が 10% を割る
- NOI の伸びが物価を下回り、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得を始める
- NAV 割れの値段で 1 口の価値を増やす使い方で、スポンサーの点数を下げる。
- 売却益の内部留保が尽き、分配が純利益の水準へ下がる
- 見かけの低下で投資口が売られても、価値の数字は動かない。
見ておくもの
- 入替え時の賃料の増額率と稼働率
- 新規調達の金利と平均金利の推移
- 資本的支出の償却に対する割合
- 三井不動産グループからの取得と出資の動き
- 東京 23 区の賃貸住宅の供給
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回り 3.5% 台より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.25% を足した 7.75%。事業は傾いていないので extra は置かない。