結論
ヘルスケア&メディカル投資法人は、有料老人ホームや病院の底地など、ヘルスケア施設に特化した J-REIT だ。2026 年 9 月の公募増資と取得を終えると、物件は 70、取得価格は 1,065 億円、鑑定評価額は 1,197 億円になる。値段は、この増資後の姿で測る。筆者の結論は、今の値段はやや割高ということだ。価値の計算は、今の時価総額を 19% ほど下回る。
強みは、賃料が全額固定で、契約の平均の残りが 9.8 年と長いこと。三大都市圏の比率は 83% で、含み益は約 160 億円ある。今の値段は NAV の 7 割弱にある。
弱みは三つある。ひとつは、賃料が長期固定のため、物価が上がっても賃料はほとんど上がらないこと。ふたつめは、借入 557 億円の平均金利が 1.5% 前後と低く、借り換えのたびに利払いが 2 倍以上に膨らむこと。みっつめは、今回取得した物件に入居率が 7 割台の施設があり、オペレーターの負担が重いことだ。
2026 年 8 月の増資は、NAV の 7 割弱の値段で行われた。スポンサーの出資は 3 社が 1.1% ずつで、増資の希薄化は既存の投資主が負う。
増資と取得が直前に起きたため、今の数字は増資後の見込み(筆者の推定を含む)に直した。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、ヘルスケア施設は、需要は確かだが、稼ぎはオペレーターの経営に左右される。賃料が固定なのは安心でもあり、物価に取り残される理由でもある。堀は、オペレーターとの長期契約にある。
増資後の分配は、今の値段に対し 5.7% の利回りだ。借入の平均金利は 1.5% 前後と低く、これが分配を支えている。借り換えが 3.6% 前後に進むと、年の利払いは 10 億円から 22 億円に増える。
さらに、賃料は物価に連動しない。経費は物価で伸び、NOI の伸びは賃料より遅い。キャップが 4.5% 台まで上がると、物件の価値は 10 年かけて鑑定を下回る。
NAV は物件の鑑定が高い今の姿で、清算されない限り投資主の手には入らない。今の値段は NAV の 7 割弱だが、筆者は割安の根拠にしない。
10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 2 割ほど下回る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、ヘルスケア施設の賃料だ。投資法人が持つのは建物と土地で、オペレーター(介護事業者)に貸して賃料を受け取る。賃料は 100% 固定で、契約の平均の残りは 9.8 年だ。
2026 年 7 月期は、57 物件で営業収益 26.6 億円、営業利益 13.4 億円、当期純利益 10.2 億円だった。稼働率は 100% を保った。契約が長期で固定のため、収入は毎期ほぼ同じ水準で動く。
物件の中心は有料老人ホームで、74% を占める。サービス付き高齢者向け住宅が 8%、病院などが 5% だ。オペレーターは 17 社に分かれ、最大のグリーンライフでも 18% にとどまる。次に SOMPO ケア(13%)、川島コーポレーション(9%)が続く。
2026 年 9 月に、14 物件を 217 億円で取得した。東京都新宿区の病院の底地、首都圏の有料老人ホームなどだ。資金は、公募増資 90 億円ほどと、借入 111 億円で賄った。一方、品川区の有料老人ホーム 1 物件は、2026 年 12 月に 22 億円で売り、3.4 億円の売却益を出す。
増資後の姿で、年の賃貸収入は 65 億円、NOI(賃料から費用を引いた稼ぎ)は 58 億円、簿価 1,037 億円に対する利回りは 5.6% になる。筆者がこの数字を、2027 年 7 月期の予想の年換算から組んだ。
優良さと弱いところ
物件の質は、築年と立地が平均的だ。増資後の平均築年数は 19 年で、三大都市圏が 83%、首都圏が 52%。高齢者が増える首都圏の比率が上がった。病院の底地は、建物の傷みを借り手が負うので、資本的支出が要らない。
強みは三つある。ひとつめは、賃料が全額固定で、契約が長いこと。ふたつめは、オペレーターが 17 社に分散すること。みっつめは、取得を鑑定評価額より 12% 安い値段で行い、含み益を積んだことだ。
弱みも三つある。ひとつは、賃料が固定のため、人件費や物価の上昇を賃料に移せないこと。ふたつめは、今回取得した物件の一部で、入居率が 68〜79% と低いこと。入居率が上がらないと、オペレーターが賃料の減額を求めてくる恐れがある。みっつめは、有料老人ホームは用途が特殊で、オペレーターが撤退すると次の借り手が見つかりにくいことだ。
一方、介護報酬は 2026 年度に 2% 引き上げられ、オペレーターの収入は追い風を受けた。ただし、介護職員の人件費の上昇も大きく、利益の改善は物件ごとにばらつく。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ヘルスケア施設の需要は、高齢者の増加で長期に伸びる。75 歳以上の人口は 2045 年にかけて増え、特に首都圏の伸びが大きい。有料老人ホームの供給は、65 歳以上人口の 2% ほどにとどまり、政府は高齢期の住まいを 2035 年までに 150 万戸へ増やす目標を掲げる。
報酬の面では、2026 年度に診療報酬が 2.22%、介護報酬が 2.03% 引き上げられた。賃上げの原資が中心で、オペレーターの収益が大きく改善するわけではない。人手不足と人件費の上昇が、経営の最大の重しだ。
賃料は、オペレーターとの長期の固定契約が基本で、物価にほとんど連動しない。賃料の改定は、契約の更新期に限られる。この投資法人では、主要な契約の 41% が 5 年以内に更新期を迎える。
業種の表では、ヘルスケアの期待キャップは 4.5%、下限は 3.75%、NOI の名目の伸びは 1.5% だ。賃料が固定でほとんど転嫁しないので、ここでは賃料の伸びを中立で年 1.0% とやや低く置いた。
病院の底地のように建物の修繕を借り手が負う形は、資本的支出が小さい。一方で、オペレーターの経営が傾くと、物件の価値が下がる点は、ほかの用途にない特徴だ。
資本政策と M&A
増資前の 2026 年 7 月末で、借入は 466 億円。総資産に対する比率は 52.6%、鑑定評価額に対する比率は 48% だった。固定金利の比率は 76%、平均金利は 1.12%、平均の残りは 2.5 年で、JCR の格付は A+。
2026 年 9 月に、増資で 90 億円ほどを調達し、借入を 111 億円増やした。1 か月 TIBOR に 0.25〜0.35% を足す、変動金利が中心だ。増資と売却による返済を終えると、借入は 557 億円、鑑定評価額に対する比率は 46.5% になる。
満期は、2027 年 1 月期に約 79 億円、2028 年 1 月期に 60.5 億円、2028 年 7 月期に 72.5 億円だ。2 年以内の満期は全体の 45% で、借り換えのたびに金利が上がる。
今回の増資は、1 口の NAV の 68% の値段で行われた。上場から 4 回目で、既存の投資主の NAV は 2% ほど薄まる。一方、取得は鑑定評価額の 87% で行い、含み益を 31.5 億円積んだ。
運用報酬は、半期に 2.9 億円ほどで、NOI の 1 割弱。利益超過分配は、減価償却費の 20% ほどを毎期上乗せしてきた。2026 年 8 月に、上限を 30% へ引き上げる方針に変えた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料が全額固定で、契約の平均の残りは 9.8 年ある。稼働率は 100% を保ち、オペレーターは 17 社に分かれ、1 社の不調が全体を壊しにくい。
高齢者の人口は 2050 年にかけて増え、首都圏の需要は特に大きい。今回の取得で首都圏の比率が 52% に上がった。
取得は鑑定評価額より 12% 安い値段で、含み益を 31.5 億円積んだ。含み益の総額は約 160 億円、NAV の 7 割弱という値段は、増資のハードルを高くするが、既存の投資主には安全域になる。
契約の更新期には、賃料の増額と、変動賃料の導入を進める方針だ。主要契約の 41% が 5 年以内に更新期を迎え、物件ごとの交渉で増額を狙う。
スポンサーは、三井住友銀行・シップヘルスケア・東急不動産・NEC キャピタル・京阪神ビルディングの 5 社で、物件の情報と資金の両面で支える。楽観の筋書きでは、時価総額は 970 億円に達する。
慎重な見方
賃料が全額固定のため、物価が上がっても賃料はほとんど上がらない。経費は物価で伸び、NOI の伸びは賃料より遅い。
借入 557 億円の平均金利は 1.5% 前後で、3.6% 前後へ借り換わると、年の利払いは倍以上になる。2 年以内に全体の 45% が満期を迎える。変動金利が中心で、金利の上昇がすぐ利払いに響く。
今回取得した物件には、入居率が 68〜79% の施設が混じる。入居が増えないと、オペレーターが賃料の減額を求めてくる。
2026 年 8 月の増資は、NAV の 68% の値段で行われた。取得は含み益を積んだが、既存の投資主の NAV は 2% ほど薄まった。
悲観の筋書きでは、オペレーターの撤退と賃料の減額で、NOI が 22% 落ちる。純利益は赤字に沈み、時価総額は 193 億円と、今の 5 割に満たない。
有料老人ホームは用途が特殊で、次の借り手が見つかりにくく、物件の価値が下がる恐れがある。
どちらに重みを置いたか
賃料が全額固定で契約が長く、含み益があることは、確かな強みだ。一方で、物価に連動しない賃料と、借り換えによる利払いの倍増が、投資主の取り分を削る。中立の価値は今の時価総額を 19% ほど下回り、やや割高の範囲にある。スポンサーの点数は 3.3 で、悲観の確率を 5 ポイント上げた。筆者は、NAV 割れの値段で増資を重ねる姿勢が、値段に十分入っていないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 125,002 円571 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 38,166 円174 億円)。 今の値に割り戻すと 75,201 円344 億円、今との差 −18.3%、 期待の年率 +5.9%(資本コスト 9.4%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 212,216 円970 億円 | 48,788 円223 億円 | +183.7% | +11.0% | 26,100 円119 億円 |
| やや楽観 | 22% | 168,898 円772 億円 | 44,850 円205 億円 | +132.3% | +8.8% | 47,024 円215 億円 |
| 中立 | 33% | 133,237 円609 億円 | 40,474 円185 億円 | +88.8% | +6.6% | 57,325 円262 億円 |
| やや悲観 | 20% | 81,605 円373 億円 | 30,629 円140 億円 | +22.0% | +2.0% | 22,447 円103 億円 |
| 悲観 | 15% | 42,224 円193 億円 | 26,254 円120 億円 | −25.6% | −2.9% | 10,272 円47 億円 |
| 加重平均 | 100% | 125,002 円571 億円 | 38,166 円174 億円 | +77.4% | +5.9% | 163,168 円746 億円 |
今の株価時価総額 92,000 円421 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.4% を下回るほど割高。
楽観 10% 契約の更新期に賃料を上げ、年 1.8% で増える 利益 20 億円 · PBR 2.0 倍 · 株価時価総額 212,216 円970 億円
更新期を迎える契約で、賃料の増額が通る。変動賃料を入れた物件も増え、賃料は年 1.8% で伸び、稼働の係数は 1.00 を保つ。
借り換えは 3.4% で済み、年の利払いは 20 億円と今の 2 倍になる。それでも NOI は 58 億円から 68 億円へ 18% 増え、純利益は 20 億円と今の 15% 減にとどまる。
物件の利回りは 4.0% に下がる。時価総額は 970 億円と、今の 2 倍を超える。
増資は NAV を上回る値段で行われ、希薄化は小さい。スポンサーのパイプラインから、鑑定を下回る値段の取得も進む。
- ヘルスケア施設の賃貸:数量 1,037(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.3%)。賃料の改定と、オペレーターの減額・撤退を合わせた値)→ 売上 78 億円・営業利益 52 億円。稼働 100%・賃料 年 +1.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 68 − 資本的支出 6) ÷ キャップ 4.00% − 純負債 565 = 970 億円。キャップは中立 4.55% から 0.5% 下げた 4.0% (ヘルスケアの下限 3.75% には届かない)。
確率:契約の更新と変動賃料の導入が進み、賃料が年 1.8% 伸びる筋書き。賃料が固定の用途なので、楽観でも伸びは小さい。10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 1.4% で伸び、借り換えは 3.5% 利益 17 億円 · PBR 1.6 倍 · 株価時価総額 168,898 円772 億円
介護報酬の引き上げが続き、オペレーターの収益が改善する。更新期の賃料交渉が通り、賃料は年 1.4% で伸びる。稼働の係数は 0.995 になる。借り換えは 3.5% で、年の利払いは 21 億円になる。
NOI は 65 億円と 12% 増えるが、利払いの増加で純利益は 17 億円と今の 3 割減になる。資本的支出は年 6.8 億円と、今の 2 倍近くに増える。
物件の利回りは 4.3% に上がる。時価総額は 772 億円で、今の 1.8 倍ほどになる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は目減りする。
- ヘルスケア施設の賃貸:数量 1,032(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.2%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.3%)。賃料の改定と、オペレーターの減額・撤退を合わせた値)→ 売上 75 億円・営業利益 48 億円。稼働 100%・賃料 年 +1.4%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 64 − 資本的支出 7) ÷ キャップ 4.30% − 純負債 570 = 772 億円。キャップは中立 4.55% より 0.25% 低い 4.3% (賃料の改定が通る筋書き)。
確率:中立より賃料の改定が通りやすく、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 33% 賃料は固定のまま、利払いが 2 倍になる 利益 13 億円 · PBR 1.3 倍 · 株価時価総額 133,237 円609 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 4 年ほどで 3.6% へ借り換わる。年の利払いは今の 10 億円から 22 億円へ増える。賃料は更新期の改定だけで、年 1.0% で伸び、稼働の係数は 0.985 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 58 億円から 61 億円へ 6% 増えるにとどまる。利払いの増加を吸収できず、純利益は今の 24 億円から 13 億円へ半分に減る。
物件の利回りは 4.55% に上がる。資本的支出は、築 30 年に向かう建物の修繕で、年 7 億円と今の 2 倍になる。
時価総額は 609 億円で、今の 1.4 倍ほどになる。ただし 10 年の長さに割り引くと、今の値段を 2 割ほど下回る。
- ヘルスケア施設の賃貸:数量 1,021(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.9%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.3%)。賃料の改定と、オペレーターの減額・撤退を合わせた値)→ 売上 71 億円・営業利益 44 億円。稼働 98%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 61 − 資本的支出 7) ÷ キャップ 4.55% − 純負債 575 = 609 億円。キャップは業種ノートの表 4.55%(今の NCF 利回り 4.5%(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った)以上)。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 1.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 33%(スポンサーの点数 3.3 で悲観に 5 ポイント回した)。
やや悲観 20% 賃料の改定が通らず、金利が高めに落ち着く 利益 4 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 81,605 円373 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.9% になる。賃料は 10 年で今と同じ水準にとどまり、入居率の低い施設では減額が出る。稼働の係数は 0.97 に落ちる。
NOI は 53 億円と今の 8% 減。年の利払いは 23 億円で、純利益は 4 億円と今の 2 割に縮む。資本的支出は年 7.2 億円で、修繕が重くなる。
物件の利回りは 4.8% に上がる。時価総額は 373 億円と、今の 9 割にとどまる。
スポンサーは 3 社が 1.1% ずつで、増資は NAV 割れで行われる恐れがある。借り換えと増資の両方で、1 口の取り分が削られる。
- ヘルスケア施設の賃貸:数量 1,006(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.3%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.3%)。賃料の改定と、オペレーターの減額・撤退を合わせた値)→ 売上 63 億円・営業利益 37 億円。稼働 97%・賃料 年 +0.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 53 − 資本的支出 7) ÷ キャップ 4.80% − 純負債 585 = 373 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の据え置きと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:更新期の増額が通らず、入居率の低い施設が賃料の減額を求め、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 15% オペレーターの撤退と金利の上振れ 利益 −7 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 42,224 円193 億円
人件費の上昇でオペレーターの収益が悪化し、入居率の低い施設で減額や撤退が出る。賃料は年 1% ずつ縮み、稼働の係数も 0.93 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.5% になる。年の利払いは 27 億円で、NOI は 45 億円と今の 22% 減る。純利益は赤字に沈み、分配は出せなくなる。資本的支出は 5 億円に絞る。
物件の利回りは 5.05% に上がる。時価総額は 193 億円と、今の 5 割に満たない。
用途が特殊なため、撤退した施設の次の借り手が見つからず、物件の価値の下げが大きくなる。
- ヘルスケア施設の賃貸:数量 964(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.7%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.3%)。賃料の改定と、オペレーターの減額・撤退を合わせた値)→ 売上 55 億円・営業利益 29 億円。稼働 93%・賃料 年 -1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 45 − 資本的支出 5) ÷ キャップ 5.05% − 純負債 595 = 193 億円。キャップは中立 +0.5%。賃料の減額と利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が縮む。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3.3 なので、悲観の確率を基本の 10% から 5 ポイント上げて 15%。賃料が固定でも、オペレーターの経営が傾けば減額や撤退が起きる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ヘルスケア施設の賃貸
有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、病院の底地など 70 物件を、長期固定の賃料でオペレーター 17 社に貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸収入の比(今 6.3%)。賃料の改定と、オペレーターの減額・撤退を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 1,037 | 6.3% | 65 | 43 |
| 10 年後 中立 | 1,021 | 6.9% | 71 | 44 |
取り方:2026 年 9 月の増資と取得(14 物件 217 億円)と、12 月の売却(1 物件)を織り込んだ増資後の姿で測った。2027 年 7 月期の予想(営業収益 32.6 億円、減価償却を除く賃貸費用 3.8 億円)を年に直し、年の賃貸収入 65 億円、NOI 58 億円とした。簿価 1,037 億円 × 係数 1.00 が数量、収入 ÷ 数量が価格。セグメントの利益は減価償却 14.5 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.10 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、賃料が長期固定で、改定は更新期に限られるため(業種ノート)。
リスクと懸念
賃料が物価に連動しない
賃料は全額が長期固定で、改定は更新期に限られる。経費は物価で伸びるため、NOI の伸びは賃料より遅く、物価に負け続ける。
借り換えによる利払いの増加
増資後の借入は 557 億円で、平均金利は 1.5% 前後。3.6% 前後へ上がると、年の利払いは 10 億円から 22 億円まで増える。2 年以内の満期は全体の 45%。
オペレーターの経営と入居率
今回取得した物件に、入居率が 68〜79% の施設がある。人件費の上昇で経営が傾けば、賃料の減額や撤退が起きる。
NAV 割れの増資による希薄化
2026 年 8 月の増資は、NAV の 68% の値段で行われた。1 口の NAV が 2% ほど薄まった。今後も外部成長のため、NAV 割れの増資が続く恐れがある。
用途の特殊さ
有料老人ホームや病院は、撤退後の次の借り手が見つかりにくい。築 19 年の建物が、築 30 年に向かう間の修繕も重い。
増資直後で数字を組み直している
2026 年 9 月の増資・取得・売却を織り込んだ増資後の数字は、筆者の推定を含む。現金の水準と借入の金利は、次の決算で確かめる。
今後の分かれ目
- 更新期を迎えた契約で、賃料の増額や変動賃料の導入が通る
- 賃料の伸びが上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は適正に近づく。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- 入居率の低い施設で、オペレーターが賃料の減額を求める
- 悲観側の確率を上げる。賃料が固定の用途は、減額が分配に直接響く。
- NAV 割れで公募増資を重ねる
- 1 口の NAV が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- スポンサーが投資口の買い増しを行う
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- 更新期の契約の賃料交渉の結果
- 今回取得した物件の入居率の推移
- 借り換えの金利と 2028 年 7 月期までの満期
- 利益超過分配の水準と、資本的支出の実績
- NAV に対する増資の値段と、スポンサーの出資比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップはヘルスケアの業種ノートの表 4.5% を、今の NCF 利回り 4.5%(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った)以上の 4.55% に置いた。増資後の数字は筆者の推定を含む。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.91% を足した 9.41%。オペレーターの経営の波は、値決め力と寿命に入れたので extra は置かない。