結論
アクティビア・プロパティーズ投資法人は、東急不動産が運用する J-REIT だ。東京オフィスが取得価格の 52%、都市型商業施設が 29%、残りの 19% がアクティビア・アカウント(地方・郊外の商業とオフィス)。46 物件で資産は 5,421 億円、鑑定評価額は 6,618 億円。筆者の結論は、今の値段は割高ということだ。10 年の価値は、今の時価総額を 4 割強下回る。
強みは、立地とスポンサーの支えだ。都心 6 区が 69%、取得の 82% が東急不動産ルート。オフィスの賃料は 4 分の 3 の契約で増額し、賃料ギャップは 23% あって、まだ上げ余地がある。
弱みは三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎが 3.0% と低いこと。ふたつめは、有利子負債 2,647 億円を簿価で見る LTV が 47.1% と高く、取得が続けば一時 47.8% に上がること。みっつめは、借入の平均金利が 0.88% と低く、借り換えで利払いが 3 倍以上に増えることだ。
今の値段は NAV の 0.75 倍で安く見えるが、NAV は低い金利の上の鑑定で、割安の根拠にしない。スポンサーの点数は 2.6 で、悲観の確率は基本のままにした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この投資法人は、渋谷・表参道を中心とした都心の商業とオフィスに絞って持つ、質を選んだ運用者だ。スポンサーの開発物件を取り込む力があり、含み益も積み上がっている。堀と呼べるほどの強みはないが、立地の選別には筋が通っている。
問題は、今の低い金利を前提にした利益と、鑑定の利回りの低さだ。借入の平均金利は 0.88% で、3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 25 億円から 95 億円に増える。純利益は 143 億円から 100 億円へ 3 割ほど削られる。
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.0% だ。キャップが 4.56% まで上がれば、物件の価値は鑑定を 3 割以上下回る。含み益 1,253 億円は、その分だけ消える。
今の値段は NAV の 0.75 倍で安く見える。だが NAV は低い金利の上の鑑定で、筆者は割安の根拠にしない。10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 4 割強下回る。
簿価の LTV が 47% と高いのも、金利の上昇に弱い点だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、東京の商業施設とオフィスの賃料だ。投資法人は建物と土地を持ち、テナントに貸して賃料を受け取る。直近 1 年の賃貸事業収益は 326 億円で、そこから償却を除く費用を引いた NOI(賃貸の稼ぎ)は 227 億円だった。
物件は 46 ある。カテゴリーは、東京オフィスが 52%、都市型商業施設が 29%、アクティビア・アカウントが 19%。エリアは都心 6 区が 69%、三大都市圏が 27%、その他 3%。上位は東急プラザ表参道「オモカド」(450 億円)、汐留ビルディング、恵比寿プライムスクエアなど。
都市型商業施設は、渋谷・表参道・原宿・心斎橋などの駅近の物件が中心で、駅から 1 分以内が約 5 割。業種は物販が 40%、サービス 28%、ホテル 21%、飲食 9%。賃料は固定に、売上に連動する歩合賃料を足す形が多い。
オフィスは、渋谷・恵比寿・品川・新橋の駅近が中心で、都心 6 区が 99%。入居業種はサービス業 40%、製造業 14%、卸・小売 12%。
物件の入れ替えは、2029 年 5 月期までに簿価 500 億円ほどを売る計画で、想定の売却益は 100 億円以上。直近は神戸旧居留地 25 番館の準共有持分 24%を売り、15 億円の売却益を出した。運用報酬は年 24 億円で、NOI の約 11% になる。
優良さと弱いところ
物件の質は、立地の良さが強みで、築年と取得の値段が弱みだ。都心 6 区が 69%、駅から 5 分以内がほとんどで、稼働率は 98.4%。賃料ギャップ(今の賃料と市場の賃料の差)は 23% あり、オフィスは 75% の契約で増額が通った。
強みは三つある。ひとつめは、含み益が 1,253 億円あり、鑑定評価額が簿価の 1.23 倍あること。ふたつめは、渋谷の物件の質で、渋谷の A-FLAG は Google の旗艦店が入り、鑑定評価額は前期より 68 億円増えた。みっつめは、スポンサーの開発物件を取り込む力で、取得の 82% が東急不動産ルートだ。
弱みも三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎの低さ。NOI から改修費を引くと 3.0% で、キャップが上がれば物件の価値が大きく縮む。ふたつめは、平均築年数が 23.8 年で、築 20 年超が 44% あること。みっつめは、LTV が簿価で 47.1% と高く、取得を続けるほど借入が重くなることだ。
物件別の鑑定では、直接還元利回りが 2.6% から 3.6% に並ぶ。低い金利の上の値段で、金利が上がればこの利回りが先に動く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オフィスは、東京都心の空室率が 3% 前後に締まり、賃料は上げ局面にある。ただし大型の新築供給が 2027 年以降も続き、在宅の定着で床の需要は実質で横ばいと見る。賃料は契約の更新で遅れて上がり、物価の 3 分の 2 ほどしか転嫁しない。
商業は、訪日客と物販の回復で都心の路面が強い。ただし歩合賃料は売上に連動し、不況で先に落ちる。ホテルは、訪日客で客室単価が伸びるが、需要が崩れると変動賃料が最も深く落ちる。
業種の表では、都心の大型オフィスの期待キャップが 4.25%、地方・築古が 4.75%、商業とホテルが 5.0%。この投資法人は、東京オフィスが 52%、商業が約 37%(都市型 29%+アクティビア・アカウントの商業 8%)、地方・郊外のオフィスが約 11% なので、中立のキャップは 4.56% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から改修費を引いて鑑定評価額で割ると 3.0% で、表より 1.5 ポイントほど低い。これは 10 年金利が 2% 前後の世界の値段で、3% に上がれば表に近づく。
賃料の伸びは、オフィスが年 2.0%、商業が年 1.5%、ホテルが年 2.25% で、加重した中立は年 2.0%。経費は物価で年 3% 伸びるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
資本政策と M&A
借入は 2,647 億円。有利子負債を鑑定評価額で割った LTV は 38.5%、簿価では 47.1%。簿価の LTV は 40〜50% の想定レンジの上寄りで、取得が続けば 2026 年 11 月期に一時 47.8% まで上がる見込みだ。平均金利は 0.88%、平均の残りは 3.8 年。変動金利の比率は 30% 程度を上限に置く。
2028 年 5 月期までの 2 年に、約 680 億円(26%)の満期が来る。2026 年 5 月期の借り換えでは、固定が 7.1 年・2.705%、変動が 4.8 年・T+0.217% で、平均金利は 0.690% から 1.886% へ 1.2 ポイント上がった。
増資は、直近 5 年で 1 回(2021 年 9 月)。それ以降は物件の入れ替えと借入で資金を賄う。自己投資口の取得は、資料に実績が載る。
運用報酬は、前期末総資産の 0.25%(上限 0.3%)と、分配金に NOI を掛けた項に分かれ、年 24 億円で NOI の約 11%。東急不動産は投資口の 12.7% を持つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
立地が良い。都心 6 区が 69%、駅から 5 分以内がほとんどで、渋谷の A-FLAG は Google の旗艦店の出店が決まり、鑑定評価額は前期より 68 億円増えた。賃料ギャップは 23% あり、オフィスの増額は 75% の契約で通った。
含み益は 1,253 億円で、含み益率は 23%。物件の入れ替えは、2029 年 5 月期までに簿価 500 億円ほどを売り、売却益 100 億円以上を分配に回す計画で、直近も神戸旧居留地 25 番館の売却で 15 億円の益を出した。
スポンサーの支えがある。東急不動産は投資口の 12.7% を持ち、取得の 82% がスポンサールートで、開発物件を取り込める。借入は格付けが JCR の AA で、コミットメントラインが 210 億円、取得余力は約 325 億円ある。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% で伸び、キャップが 4.08% に下がり、時価総額は 3,712 億円と今の 1.25 倍になる。
渋谷の再開発と訪日客で、商業の歩合賃料が伸びる余地も大きい。
慎重な見方
鑑定評価額に対する稼ぎが低い。NOI から改修費を引くと 3.0% で、10 年国債が 3% の世界では、キャップが 4.56% まで上がる。物件の価値は鑑定を 3 割以上下回り、含み益 1,253 億円は消える。
借入 2,647 億円の平均金利は 0.88%。3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 25 億円から 95 億円へ 3.8 倍になる。約 680 億円が 2 年で満期を迎える。純利益は 143 億円から 100 億円へ減る。
簿価の LTV は 47.1% と高く、取得が続けば 47.8% に上がる。LTV が高いまま金利が上がると、増資か物件の売却で借入を減らす圧力がかかる。
やや悲観の筋書きでは、賃料の伸びが年 1% にとどまり、稼働が 96% に落ち、時価総額は 987 億円と今の 3 分の 1 になる。悲観では、物件の価値が借入と預り敷金を下回り、投資主の取り分はほとんど残らない。
どちらに重みを置いたか
渋谷・表参道を中心とした立地、厚い含み益、スポンサーの開発物件を取り込む力には、はっきりした根拠がある。ただ、鑑定評価額に対する稼ぎは 3.0% と低く、簿価の LTV は 47% と高い。借り換えで利払いは 3 倍以上に増え、キャップも上がる。中立の価値は今の時価総額を 4 割強下回った。筆者は、NAV に対する安さは値段に入っているが、金利の正常化は入っていないと見る。スポンサーの点数は 2.6 で、悲観の確率は基本のままにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 95,002 円2,257 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 49,074 円1,166 億円)。 今の値に割り戻すと 74,279 円1,765 億円、今との差 −39.9%、 期待の年率 +1.5%(資本コスト 8.6%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 256,397 円6,092 億円 | 60,396 円1,435 億円 | +156.3% | +9.9% | 31,679 円753 億円 |
| やや楽観 | 22% | 120,749 円2,869 億円 | 55,682 円1,323 億円 | +42.7% | +3.6% | 38,815 円922 億円 |
| 中立 | 38% | 89,099 円2,117 億円 | 51,263 円1,218 億円 | +13.6% | +1.3% | 53,338 円1,267 億円 |
| やや悲観 | 20% | 41,540 円987 億円 | 41,456 円985 億円 | −32.9% | −3.9% | 16,599 円394 億円 |
| 悲観 | 10% | 6,313 円150 億円 | 30,135 円716 億円 | −70.5% | −11.5% | 3,645 円87 億円 |
| 加重平均 | 100% | 95,002 円2,257 億円 | 49,074 円1,166 億円 | +16.6% | +1.5% | 144,076 円3,423 億円 |
今の株価時価総額 123,600 円2,937 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.6% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 3% で伸び、キャップが今の 2.98% のまま 利益 144 億円 · PBR 2.3 倍 · 株価時価総額 256,397 円6,092 億円
賃料ギャップ 23% が更新で埋まり、オフィスの増額と商業の歩合賃料が重なる。賃料は年 3% で伸び、稼働は 99% を保つ。
借り換えは 3.3% で済む。年の利払いは 92 億円と今の 3.7 倍になる。それでも NOI は 227 億円から 308 億円へ 36% 増え、純利益は 144 億円と今とほぼ同じになる。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 2.98% のまま変わらない。時価総額は 6,092 億円と今の 2.1 倍になる。
物件の入れ替えで売却益 100 億円以上を出し、分配の下支えに使う。
簿価の LTV は取得の都度 47% 台まで上がるが、含み益の積み上がりで鑑定の LTV は 40% を下回り続ける。
- 東京の商業施設・オフィス賃貸:数量 5,311(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.3%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.2%)。賃料の増額と、歩合賃料・水道光熱費収入の増減を合わせた値)→ 売上 441 億円・営業利益 268 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 308 − 資本的支出 45) ÷ キャップ 2.98% − 純負債 2730 = 6092 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 2.98% で、今の値付けが 10 年続く所(複合の下限 3.25% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:渋谷・表参道の賃料増額と歩合賃料の伸びが続き、金利が落ち着く筋書き。都心集中で上振れの幅が大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.35% 利益 122 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 120,749 円2,869 億円
賃料の増額が数年続き、その後は物価並みに落ち着く。賃料は年 2.5% で伸び、稼働の係数は 0.985 になる。借り換えは 3.35% で、年の利払いは 93 億円になる。
NOI は 285 億円と 25% 増え、純利益は 122 億円と今の 85% になる。資本的支出は年 44 億円と今の 1.5 倍に増える。
物件の利回りは 4.3% に上がる。時価総額は 2,869 億円で、今の 97% になる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。
渋谷・表参道の物件は稼働が高いまま保たれ、物件の入れ替えの売却益が分配を支えるが、利払いの増加を打ち消すほどではない。
- 東京の商業施設・オフィス賃貸:数量 5,285(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.2%)。賃料の増額と、歩合賃料・水道光熱費収入の増減を合わせた値)→ 売上 418 億円・営業利益 246 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 285 − 資本的支出 44) ÷ キャップ 4.30% − 純負債 2730 = 2869 億円。キャップは中立 4.56% より 0.26% 低い 4.3% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 賃料は物価に負け、利払いが 3.8 倍になる 利益 100 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 89,099 円2,117 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は数年で 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の 25 億円から 95 億円へ増える。賃料は年 2.0% で伸び、稼働の係数は 0.98 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 227 億円から 263 億円へ 16% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 143 億円から 100 億円へ 3 割減る。
物件の利回りは 4.56% に上がる。資本的支出は年 42 億円と、今の 1.4 倍に増える。
時価総額は 2,117 億円で、今を 3 割弱下回る。10 年の長さに割り引くと、今の値段を 4 割強下回る。
- 東京の商業施設・オフィス賃貸:数量 5,258(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.2%)。賃料の増額と、歩合賃料・水道光熱費収入の増減を合わせた値)→ 売上 396 億円・営業利益 225 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 263 − 資本的支出 42) ÷ キャップ 4.56% − 純負債 2725 = 2117 億円。キャップは業種の表を NOI の比で加重した 4.56% (東京オフィス 4.25%、商業・ホテル 5.0%、郊外オフィス 4.5%)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.0%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%(スポンサーの点数が 2.6 で、悲観の確率は基本のまま 10%)。
やや悲観 20% 賃料の伸びが止まり、金利が高めに落ち着く 利益 54 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 41,540 円987 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.6% になる。大型の新築供給と在宅勤務の浸透で空室が増え、商業の歩合賃料は細り、賃料は 10 年で年 1.0% の伸びにとどまる。稼働の係数は 0.96 に落ちる。
経費は物価で伸び、NOI は 218 億円と今の 4% 減る。年の利払いは 100 億円で、純利益は 54 億円と今の 4 割弱に縮む。資本的支出は年 40 億円に抑える。
物件の利回りは 4.81% に上がる。時価総額は 987 億円で、今の 3 分の 1 になる。
簿価の LTV が高いまま金利が上がるため、借入の返済の負担が早く効く。
- 東京の商業施設・オフィス賃貸:数量 5,150(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.2%)。賃料の増額と、歩合賃料・水道光熱費収入の増減を合わせた値)→ 売上 352 億円・営業利益 181 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 218 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 4.81% − 純負債 2720 = 987 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の頭打ちと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:オフィスの需要の弱さと商業の歩合の鈍化で賃料が伸びず、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 10% 賃料の下落と稼働の低下、金利の上振れ 利益 −35 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 6,313 円150 億円
不況でオフィスの空室が増え、商業の歩合賃料が落ち込む。賃料は年 1% ずつ縮み、稼働の係数は 0.92 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.25% になる。年の利払いは 123 億円で、NOI は 149 億円と今の 3 分の 2 に減る。純利益は 35 億円の赤字となり、分配は止まる。資本的支出は 34 億円に絞る。
物件の価値は、借入と預り敷金を引くと計算上マイナスになり、投資主の取り分は残らない。再建や増資で持ちこたえる余地を見て、時価総額は 150 億円を置いた。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
スポンサーの支援や、物件の売却で借入を減らす道は残るが、この筋書きでは頼らない。
- 東京の商業施設・オフィス賃貸:数量 4,936(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.6%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.2%)。賃料の増額と、歩合賃料・水道光熱費収入の増減を合わせた値)→ 売上 276 億円・営業利益 113 億円。稼働 92%・賃料 年 -1.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 149 − 資本的支出 34) ÷ キャップ 5.06% − 純負債 2872 = 150 億円。キャップは中立 +0.5%。賃料の下落と稼働の低下で NOI が 4 割減り、物件の価値から借入を引いた額が消える。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 2.6 なので、悲観の確率は基本の 10%。不況でオフィスの空室と商業の歩合の落ち込みが同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
東京の商業施設・オフィス賃貸
東京オフィス 52%、都市型商業施設 29%、アクティビア・アカウント 19% の 46 物件を、定期借家などでテナントに貸す。商業は固定賃料に歩合賃料を足す形が多い。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.2%)。賃料の増額と、歩合賃料・水道光熱費収入の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 5,279 | 6.2% | 326 | 194 |
| 10 年後 中立 | 5,258 | 7.5% | 396 | 225 |
取り方:過去 1 年(2025 年 11 月期+2026 年 5 月期)の賃貸事業収益 326 億円(売却益 15 億円を除く)を数量・価格に分けた。簿価 5,365 億円 × 稼働率 98.4% が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用 99 億円を引いて 227 億円、セグメントの利益は減価償却 33 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料の転嫁が契約の更新で遅れ、物価の 3 分の 2 ほどしか通らないため(業種ノート)。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.0%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 4.56% まで上がると、物件の価値が 3 割以上縮み、含み益 1,253 億円が消える。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 0.88%。3.4% 前後へ上がると、年の利払いは 25 億円から 95 億円へ増える。2028 年 5 月期までに約 680 億円(26%)の満期が来る。
簿価 LTV の高さ
簿価の LTV は 47.1%。2026 年 11 月期は取得のため一時 47.8% に上がる見込み。50% までの取得余力は約 325 億円。
オフィスと商業の景気感応
東京オフィスが 52%、商業が約 37%。不況で空室と歩合賃料が同時に落ちる。大型の新築供給は 2027 年以降も続く。
スポンサー依存の取得
取得の 82% が東急不動産ルート。取得価格が鑑定評価額を上回っていないかは、取得の都度見る必要がある。
売却益への依存
分配は物件の入れ替えの売却益で支える。売れる物件が減ると、分配の伸びが鈍る。
今後の分かれ目
- オフィスの賃料の増額が想定を上回り、年 4% 以上伸びる
- NOI が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割高の度合いが縮む。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- 商業の歩合賃料が 2 期続けて前年を下回る
- 訪日客と物販の頭打ちが確かめられ、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。分配と NAV が減れば、スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 簿価の LTV が 50% に近づく
- 取得の余力が尽きて増資か売却が要り、同じ船の点と報酬の形を見直す。
見ておくもの
- オフィスの増額割合・増額率と賃料ギャップ
- 商業の歩合賃料と訪日客
- 借り換えの金利と 2028 年 5 月期までの満期
- 簿価 LTV と取得・売却の実績
- スポンサー(東急不動産)からの取得の値段と、増資・自己投資口の判断
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは用途ごとの表を NOI の比で加重した 4.56% で、今の NCF 利回り 3.0% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.6% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.07% を足した 8.57%。商業とオフィスの偏りは cycle に反映したので extra は置かない。