結論
ユナイテッド・アーバン投資法人は、丸紅グループが運用する総合型の J-REIT だ。商業施設が取得価格の 30%、オフィスが 28%、ホテルが 24%を占める。143 物件で、鑑定評価額は 9,149 億円。筆者の結論は、今の値段はやや割高ということだ。10 年の価値は、今の時価総額を 26% 下回る。
強みは、資産の入れ替えが機敏なことと、含み益の厚さだ。3 年で 600 億円超の物件を売り、築 4 年ほどの物件を買い足して、直近の分配は過去最高になった。含み益は 2,141 億円で、簿価の 31% ある。
弱みは三つある。ひとつは、平均築年数が 27 年と古く、資本的支出が嵩むこと。ふたつめは、借入の平均金利が 0.91% と低く、2 年で 3 割が満期を迎えること。みっつめは、ホテルが 24% と大きく、需要の振れを受けることだ。
今の値段は NAV の 0.83 倍だが、NAV は低い金利の上の鑑定だ。スポンサーの点数は 2.7 で、悲観の確率は基本のままにした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この投資法人は、分散した賃貸資産を持ち、入れ替えで築年を若返らせる、手を動かす運用者だ。堀と呼べるほどの強みはないが、増資と自己投資口の取得を使い分ける姿勢には筋が通っている。
問題は、今の低い金利を前提にした利益だ。借入の平均金利は 0.91% で、3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 32 億円から 114 億円に増える。純利益は 2 割ほど削られる。
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.8% だ。キャップが 4.68% まで上がれば、物件の価値は鑑定を 2 割弱下回る。含み益 2,141 億円は、その分だけ薄くなる。
今の値段は NAV の 0.83 倍で、安く見える。だが NAV は低い金利の上の鑑定で、筆者は割安の根拠にしない。10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 3 割弱下回る。
築 27 年の物件が多く、資本的支出が重いのも、割安とは見ない理由だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、商業施設・オフィス・ホテル・住居・その他の賃料だ。投資法人は建物と土地を持ち、テナントに貸して賃料を受け取る。直近 1 年の賃貸事業収益は 560 億円で、そこから償却を除く費用を引いた NOI(賃貸の稼ぎ)は 401 億円だった。
物件は 143 ある。取得価格の内訳は、商業施設が 30%、オフィスが 28%、ホテルが 24%、住居が 7%、その他(物流 14 物件とヘルスケアなど)が 11%。東京都心 6 区が 21%、首都圏全体で 57%、大阪圏が 20%。上位 5 物件で 17% と、分散が効いている。
ホテルは 24 物件・約 6,900 室で、フルサービス型が約半分、宿泊特化型が残り半分。賃料は固定賃料に、ホテルの売上に連動する歩合賃料を足す形が多く、訪日客の増減が収入に響く。稼働率は全体で約 99% だ。
毎期、資産の入れ替えを行う。2027 年 11 月期までに累計 624 億円を売る見込みで、売却益は分配に回す。2025 年 12 月には、233 億円の公募増資を行った。
運用会社の運用報酬は年 46 億円で、NOI の 11% だ。
優良さと弱いところ
物件の質は、分散の広さに強みがあり、築年の古さが弱みだ。商業・オフィス・ホテルに加えて、物流とヘルスケアまで広げ、1 つの用途の不調を薄められる。ただし平均築年数は 26.8 年と古く、設備の更新が続く。
強みは三つある。ひとつめは、入れ替えの実績だ。取得した 733 億円の物件は平均築 15 年、売った 624 億円の物件は平均築 26 年で、築年が若返っている。ふたつめは、含み益が 2,141 億円あり、鑑定評価額が簿価の 1.3 倍あること。みっつめは、格付けが JCR の AA で、借入余力があること。
弱みも三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎの低さ。NOI から資本的支出を引くと 3.8% で、10 年国債が 3% の世界では物件の価値を保ちにくい。ふたつめは、旗艦のロワジールホテル&スパタワー那覇に約 80 億円を投じる改装だ。みっつめは、運用報酬が NOI の 11% と重いことだ。
なお、直近 1 年の NOI には、原状回復の一時収入が約 15 億円入っている。これは続かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
商業は、立地と業態で差が出る。UUR の商業は、家電量販店や食料品を主とする生活密着型が多く、賃料は歩合の一部を除いて固定に近い。オフィスは、東京都心の空室率が 3% 前後に締まり、賃料が上がっている。ただし UUR は大阪・名古屋・首都圏の中小型を含み、築年が古い。ホテルは、訪日客が 2026 年上半期に 2,108 万人と勢いが続き、客室単価は物価に追随する。ただし固定費が重く、需要が落ちると利益が大きく減る。
業種の表では、オフィスの期待キャップが 4.25%、住宅が 3.75%、商業とホテルが 5.0%。UUR のオフィスは地方と築古を含むので 4.5% に置いた。評価額の比(商業 27%、オフィス 32%、ホテル 22%、住居 7%、その他 12%)で加重すると、中立のキャップは 4.68% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引くと 3.8% で、表より低い。これは 10 年金利が 2% 前後の世界の値段で、3% に上がれば表に近づく。
賃料の伸びは、商業が年 1.5%、オフィスとその他が年 2.0%、ホテルが年 2.25%、住居が年 2.5% で、加重した中立は年 2.0%。経費は物価で年 3% 伸びるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
資本政策と M&A
借入は 3,390 億円で、有利子負債を鑑定評価額で割った比率(LTV)は 37.0%。総資産に対しては 44.4% だ。固定金利の比率は 77.1%、平均金利は 0.91%、平均の残りは 3.3 年。
2028 年 5 月期までの 2 年に、約 1,050 億円(31%)の満期が来る。2026 年 5 月期の新規の借入金利は 1.56% で、今の平均より 0.65 ポイント高い。会社は、借入期間を 3〜5 年に短くし、変動金利も使って、利払いを抑える。
増資は、2025 年 12 月に 233 億円を行った。発行価格は NAV の 0.98 倍で、NAV 割れの増資だったが、分配と NAV はそのあと増えた。会社は、NAV 倍率が 0.8 倍台前半なら自己投資口の取得を検討する方針で、50 億円の取得も行った。
運用報酬は年 46 億円で、NOI の 11%。丸紅リアルエステートマネジメント(運用会社)の持分は投資口の 1.0% と小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産の入れ替えが機敏だ。3 年で 600 億円超を売り、売却益を分配に回して、1 口の分配は過去最高の水準になった。売った物件は平均築 26 年、買った物件は平均築 15 年と、築年が若返っている。
含み益は 2,141 億円で、含み益率は 31%。2026 年 6 月に買った 5 物件は、鑑定評価額を 18% 下回る価格で、含み益がすぐ増えた。
資本政策が柔軟だ。NAV 倍率が高い時は、分配と NAV が増える増資を使い、低い時は自己投資口を取る。2025 年 12 月の 233 億円の増資のあとも、分配と NAV は増えた。
借入余力がある。総資産 LTV が 1% 上がるごとに、143 億円の借入ができる。格付けは AA。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% で伸び、キャップが 4.2% に下がり、時価総額は 8,102 億円と今の 1.7 倍になる。
ホテルは 24 物件・約 6,900 室を持ち、訪日客の増加がそのまま歩合賃料に乗る。固定賃料が下支えするので、需要が崩れない限り収入の底は堅い。
慎重な見方
鑑定評価額に対する稼ぎが低い。賃料から改修費を引くと 3.8% で、10 年国債が 3% の世界では、キャップが 4.68% まで上がる。物件の価値は鑑定を 2 割弱下回り、含み益 2,141 億円は薄くなる。
借入 3,390 億円の平均金利は 0.91%。3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 3 倍以上になる。2 年で 31% の約 1,050 億円が満期を迎える。固定金利の比率は 77% と、他の同業より低い。
平均築年数は 27 年と古い。設備の更新が続き、旗艦ホテルの改装に 80 億円を使う。ホテルは取得価格の 24% を占め、需要が落ちると、固定費の重さで収入が大きく減る。
直近の NOI は、原状回復の一時収入で約 15 億円かさ上げされている。
やや悲観の筋書きでは、賃料の伸びが年 1% にとどまり、時価総額は 3,459 億円と今の 7 割になる。悲観では、投資主の取り分は 1,150 億円まで減る。
どちらに重みを置いたか
資産の入れ替えの機敏さ、含み益の厚さ、増資と自己投資口を使い分ける資本政策には、はっきりした根拠がある。ただ、鑑定評価額に対する稼ぎは低く、築年の古さが資本的支出を押し上げ、借り換えで利払いが 3 倍以上に増える。中立の価値は今の時価総額を 3 割弱下回った。筆者は、NAV に対する安さは値段に入っているが、金利の正常化は入っていないと見る。スポンサーの点数は 2.7 で、悲観の確率は基本のままにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/05 期)
確率で加重した株価時価総額 162,080 円5,186 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 65,319 円2,090 億円)。 今の値に割り戻すと 112,829 円3,610 億円、今との差 −25.2%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 287,512 円9,200 億円 | 79,628 円2,548 億円 | +143.5% | +9.3% | 36,714 円1,175 億円 |
| やや楽観 | 22% | 209,227 円6,695 億円 | 73,972 円2,367 億円 | +87.8% | +6.5% | 62,304 円1,994 億円 |
| 中立 | 38% | 163,382 円5,228 億円 | 68,159 円2,181 億円 | +53.5% | +4.4% | 87,986 円2,815 億円 |
| やや悲観 | 20% | 108,098 円3,459 億円 | 56,877 円1,820 億円 | +9.4% | +0.9% | 32,995 円1,056 億円 |
| 悲観 | 10% | 35,939 円1,150 億円 | 38,064 円1,218 億円 | −50.9% | −6.9% | 7,400 円237 億円 |
| 加重平均 | 100% | 162,080 円5,186 億円 | 65,319 円2,090 億円 | +50.8% | +4.2% | 227,399 円7,276 億円 |
今の株価時価総額 150,800 円4,825 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 3% で伸び、キャップが今の 3.82% のまま 利益 266 億円 · PBR 2.4 倍 · 株価時価総額 287,512 円9,200 億円
オフィスは空室が締まり、ホテルは訪日客で歩合賃料が伸び、商業も更新で上がる。賃料は年 3% で伸び、稼働は 99% を保つ。
借り換えは 3.3% で済む。年の利払いは 110 億円と今の 3 倍強になる。それでも NOI は 401 億円から 539 億円へ 34% 増え、純利益は 266 億円と今より 1 割ほど増える。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.82% のまま変わらない。時価総額は 9,200 億円と今の 1.9 倍になる。
築 27 年の物件の更新費は膨らむが、入れ替えで築年を若返らせて抑える。
増資と自己投資口の取得を使い分け、1 口の分配を守りながら含み益を積み上げる。
- 商業・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 6,938(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.8%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 753 億円・営業利益 444 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 539 − 資本的支出 75) ÷ キャップ 3.82% − 純負債 2944 = 9200 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.82% で、今の値付けが 10 年続く所(複合の下限 3.25% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:オフィスとホテルの賃料増額が続き、金利が落ち着く筋書き。総合型は用途の分散で上振れの幅が大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.35% 利益 230 億円 · PBR 1.8 倍 · 株価時価総額 209,227 円6,695 億円
ホテルとオフィスの増額が数年続き、その後は物価並みに落ち着く。賃料は年 2.5% で伸び、稼働の係数は 0.985 になる。借り換えは 3.35% で、年の利払いは 112 億円になる。
NOI は 500 億円と 25% 増え、純利益は 230 億円と今をわずかに下回る。資本的支出は年 75 億円と今の 1.5 倍に増える。
物件の利回りは 4.4% に上がる。時価総額は 6,695 億円で、今の 1.4 倍になる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。
- 商業・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 6,903(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 10.3%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 713 億円・営業利益 407 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 500 − 資本的支出 75) ÷ キャップ 4.40% − 純負債 2954 = 6695 億円。キャップは中立 4.68% より 0.28% 低い 4.4% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 賃料は物価に負け、利払いが 3.5 倍になる 利益 193 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 163,382 円5,228 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は数年で 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の 32 億円から 114 億円へ増える。賃料は年 2.0% で伸び、稼働の係数は 0.975 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 401 億円から 459 億円へ 14% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 239 億円から 193 億円へ 2 割減る。
物件の利回りは 4.68% に上がる。資本的支出は年 75 億円と、今の 1.5 倍に増える。
時価総額は 5,228 億円で、今を 1 割弱上回る。10 年の長さに割り引くと、今の値段を 3 割弱下回る。
- 商業・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 6,833(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.8%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 672 億円・営業利益 369 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 459 − 資本的支出 75) ÷ キャップ 4.68% − 純負債 2969 = 5228 億円。キャップは業種の表を評価額の比で加重した 4.68% (商業 5.0%、オフィス 4.5%、ホテル 5.0% など)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.8%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%(スポンサーの点数が 2.7 で、悲観の確率は基本のまま 10%)。
やや悲観 20% 賃料の伸びが止まり、金利が高めに落ち着く 利益 120 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 108,098 円3,459 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.6% になる。地方のオフィスと商業は賃料が伸びず、ホテルの歩合賃料は細り、賃料は 10 年で年 1.0% の伸びにとどまる。稼働の係数は 0.96 に落ちる。
経費は物価で伸び、NOI は 386 億円と今の 4% 減る。年の利払いは 120 億円で、純利益は 120 億円と今の半分に縮む。資本的支出は年 70 億円に抑える。
物件の利回りは 4.93% に上がる。時価総額は 3,459 億円で、今の 7 割になる。
借入は 3〜5 年で組み替え続けるため、金利の高止まりがそのまま利益に響く。
- 商業・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 6,728(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.9%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 600 億円・営業利益 298 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 386 − 資本的支出 70) ÷ キャップ 4.93% − 純負債 2954 = 3459 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の頭打ちと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が縮む。
確率:オフィスの需要の弱さとホテルの需要の鈍化で賃料が伸びず、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 10% 賃料の下落とホテルの失速、金利の上振れ 利益 −10 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 35,939 円1,150 億円
不況でオフィスの空室が増え、ホテルの需要が落ち込む。賃料は年 1% ずつ縮み、稼働の係数は 0.92 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.25% になる。年の利払いは 140 億円で、NOI は 267 億円と今の 3 分の 2 に減る。純利益は 10 億円の赤字となり、分配は止まる。資本的支出は 55 億円に絞る。
物件の価値は借入と預り敷金を引くと小さくなり、投資主の取り分は 1,150 億円まで減る。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
築年の古い物件の更新を先送りすれば、稼働がさらに落ちる。
- 商業・オフィス・ホテル等の賃貸:数量 6,447(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.3%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値)→ 売上 471 億円・営業利益 182 億円。稼働 92%・賃料 年 -1.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 267 − 資本的支出 55) ÷ キャップ 5.18% − 純負債 2945 = 1150 億円。キャップは中立 +0.5%。賃料の下落と稼働の低下で NOI が 4 割以上減り、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 2.7 なので、悲観の確率は基本の 10%。オフィスの空室とホテルの需要の落ち込みが同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
商業・オフィス・ホテル等の賃貸
商業・オフィス・ホテル・住居・その他の 143 物件を、定期借家でテナントに貸す。ホテルは固定賃料に歩合賃料を足す形が多い。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 8.1%)。賃料の増額と、歩合賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/05 | 6,938 | 8.1% | 560 | 324 |
| 10 年後 中立 | 6,833 | 9.8% | 672 | 369 |
取り方:過去 1 年(2025 年 11 月期+2026 年 5 月期)の賃貸事業収益 560 億円(売却益を除く)を数量・価格に分けた。簿価 7,008 億円 × 稼働率 99% が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用 159 億円を引いて 401 億円、セグメントの利益は減価償却 78 億円を引いた額。2026 年 5 月期には原状回復などの一時収入が約 14 億円あり、収入を押し上げている。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、商業の固定賃料が多く、増額は契約更新に限られるため(業種ノート)。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.8%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 4.68% まで上がると、物件の価値が 2 割弱縮み、含み益 2,141 億円が薄くなる。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 0.91%。3.4% 前後へ上がると、年の利払いは 32 億円から 100 億円台へ増える。2028 年 5 月期までに約 1,050 億円(31%)の満期が来る。固定金利の比率は 77% にとどまる。
築古物件の資本的支出
平均築年数は 26.8 年。直近 1 年の資本的支出は 51 億円で、減価償却の 3 分の 2。旗艦ホテルの改装に約 80 億円を投じる。
ホテルの歩合賃料
ホテルは取得価格の 24%。固定賃料に歩合賃料を足す形が多く、需要が落ちると、固定費の重さで収入が大きく減る。
運用報酬とスポンサーの出資
運用報酬は NOI の 11% で、10% を超える。運用会社の持分は投資口の 1.0% と小さい。
一時収入の剥落
直近 1 年の NOI には、原状回復などの一時収入が約 15 億円入っている。これが落ちると、NOI は 4% ほど減る。
今後の分かれ目
- オフィスとホテルの賃料の増額が想定を上回り、年 4% 以上伸びる
- NOI が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割高の度合いが縮む。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- ホテルの歩合賃料が、2 期続けて前年を下回る
- ホテルの需要の頭打ちが確かめられ、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで再び公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。分配と NAV が減れば、スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- NAV 倍率が 0.8 倍台前半に下がり、自己投資口の取得が進む
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- オフィス・ホテル・商業の賃料増減率(入替・更新・歩合)
- 借り換えの金利と 2028 年 5 月期までの満期
- 資本的支出と、減価償却との比
- 資産の入れ替えの実績と、売却益の還元
- 自己投資口の取得と増資の判断
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは用途ごとの表を評価額の比で加重した 4.68% で、今の NCF 利回り 3.8% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.27% を足した 8.77%。用途の分散は cycle に反映したので extra は置かない。