結論
ラサールロジポートは、世界的な不動産会社ジョーンズ ラング ラサール系のラサールが運用する物流 REIT だ。首都圏と近畿圏の大型でテナントが多い物流施設を持つ。筆者の結論は、やや割高である。
目を引くのは資本の使い方だ。会社は、含み益の大きい物件を鑑定より高く売り、その資金で自己投資口を NAV の 9 割ほどで買い戻している。2024 年以降の売却は累計約 490 億円、買い戻しは約 310 億円に上る。1 口の価値を増やす王道の手法で、筆者は高く評価する。
それでも割高に傾くのは、金利の前提を動かせないからだ。平均 0.89% の借入は 3.6 年でほぼ全部が新しい金利に替わる。変動金利を使う方針でも、年の利払いは 40 億円ほど増え、純利益の 4 割近くが消える。
もうひとつ、直近の分配金は売却益で厚くなっている。売却益を除くと分配は 2 割ほど薄い。今の値段は、金利が低いままという前提の値段だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、経営の資本の使い方は魅力がある。高く売って安く買い戻す。この単純な手順が、1 口の価値を増やす。経営陣が投資主の側に立っている証拠だ。
ただ、値段には安全域が足りない。今の分配は、売却益の還元で底上げされている。売却を続けるほど物件が減り、NOI の元が縮む。変動金利への切り替えは、金利が上がる局面では利払いを速く増やす。
好材料は、投資口がまだ NAV を下回っていることだ。買い入れは、NAV の 9 割という安い値段で続いている。この差が埋まらない限り、会社は買い入れを続ける。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段の 8 割ほどにしかならない。割高の度合いは小さくない。筆者が持ち続けたいと思う水準は、投資口が NAV を 1 割以上下回り、買い入れが続く値段だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、大型の物流施設を通販・小売・物流会社に貸す賃料だ。2026 年 2 月期の半年で賃貸事業の収益は約 112 億円、経費を引いた NOI は約 90 億円だった。年にならすと NOI は 180 億円で、帳簿価額に対する利回りは 5.1% になる。
物件は ロジポートの名で知られる大型の複数テナント型が柱で、川崎の東扇島、京都、大阪湾岸、堺などに集まる。テナントは 172 社と分散し、一社が床を返しても全体への打撃は小さい。期中の平均稼働率は 98.7% だ。
契約は定期借家が中心で、更改のたびに賃料を市場へ合わせ直す。直近の増額は平均 6.9% で、過去の平均を上回った。過去の改定率は 6〜15% の間にある。ただ 2026 年 8 月期と 27 年 2 月期は更改の面積が全体の 15% と少なく、増額の効果は小さい。
成長の道具は、物件の入れ替え、自己投資口の買い入れ、自前の開発だ。第 3 号の開発案件は仙台で竣工し、神戸では冷凍冷蔵倉庫の開発へ出資した。いずれも安定稼働したあとの取得も狙う、間接投資の形をとる。
優良さと弱いところ
物件の質は、物流 REIT の中でも上位だ。大型の複数テナント型は、設備が新しく、自動化にも対応する。テナントが多く、稼働率も高い。賃料の増額が続いているのは、立地と質の裏づけだ。
資本の使い方は最良の部類に入る。含み益の大きい物件を鑑定より高い値段で売り、売却益 80 億円は全額を投資主に還元した。売った資金を自己投資口に回し、NAV の 9 割で買い戻した。物件を買うより 1 口の価値が増えるからだ。
増資は、2021 年と 2023 年の公募の 2 回で、どちらも NAV の近辺か上の値段だった。投資主の取り分を削る増資は、少なくとも直近では無い。
弱みは三つある。運用報酬が取得額や NOI に連動し、NOI の 18% と重いこと。スポンサーの出資が 3% に届かないこと。売却を続けると、規模が縮み、NOI の元が減ること。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流施設の需要は、通販の拡大と在庫を持つ倉庫の自動化で長く伸びてきた。ただ 2024〜26 年は首都圏の湾岸で大量の新築が重なり、空室が上がった。建築費の高騰で 2027 年の新築は細る見通しだ。
供給が細ると、新しい大型施設の賃料は高くなり、既存の施設の賃料もそれに寄る。ラサールの増額改定は直近で 6〜15% にある。ただ 2028 年以降に新築が戻れば、上げ幅は縮む。筆者は、中立で賃料は名目年 2% と見る。物価 3% に届かないのは、供給の波が賃料を抑えるからだ。
取引市場では、物流施設の売りが続いている。ラサールは、鑑定を上回る値段で売れる今のうちに、売って買い戻す手を打った。この手は、市場の利回りが上がれば成り立たなくなる。売れる間が、限られた時間だということだ。買い手の側では、海外の資金が物流施設に入り続けているが、金利の上昇で買い手の数は減りうる。
金利の 10 年は、物流不動産の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、期待キャップは 4.25% まで上がる。今の鑑定の NCF 利回りは 3.7% で、この差が物件の価値を鑑定より下げる。
資本政策と M&A
資本政策は、売却と自己投資口の買い入れを組にした形だ。直近は愛西と刈谷の物流センターなどを追加で売り、買い入れの上限を 118 億円へ増やした。累計の買い入れは 310 億円、発行済み投資口の 12% 近くに達する。
借入は、鑑定を加味した比率で 36%、総資産に対しては 44% だ。借入余力は直接使わず、新しい借入は変動金利で組む方針を採る。固定の比率は 86% と高いが、返済のたびに変動へ切り替える。会社は、5 年固定の金利が 2028 年に 2.2% と見るが、筆者の前提はそれより高い。借入先は大手銀行が中心で、借り換えそのものの不安は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資本の使い方が突出している。含み益のある物件を鑑定より高く売り、売却益 80 億円を全額還元し、NAV の 9 割で自己投資口を買い戻す。買い戻しの累計は 310 億円で、発行済み口数の 1 割を超える。1 口の価値は NAV 比で見て確実に増える。投資主の取り分を削る増資は、直近ではしていない。
物件の質が高い。172 のテナントに分散し、稼働は 98.7%。直近の増額は 6.9% で、賃料の上昇余地を測る賃料ギャップは多くの物件で数%から 1 割を超える。2027 年は新築が細り、更改の面積が戻れば増額が効く。
借入は鑑定ベースで 4 割に届かず、固定の比率が 86%。売却資金で返済すれば、さらに軽くなる。売却益と買い戻しの組み合わせが続く限り、10 年金利が上がっても 1 口の価値は守られる。開発から安定稼働後に取得する間接投資も、利回りを上乗せする手段になる。会社は、物件を縮めても 1 口あたりの分配金とNAV を伸ばせると示した。
慎重な見方
金利の 10 年は避けられない。平均 0.89% の借入が変動金利を軸に 3% 台へ替われば、年の利払いは 40 億円ほど増え、純利益の 4 割近くが消える。鑑定の NCF 利回りは 3.7% と、10 年国債 3% では低すぎる。キャップが 4.25% に上がれば、物件の価値は 1 割強下がる。
売却と買い戻しは、売れる間だけの手だ。市場の利回りが上がれば、鑑定を上回る売却は難しくなる。売るほど物件が減り、NOI の元も縮む。分配金のうち売却益の部分は、いずれ消える。
運用報酬は NOI の 18% と重く、取得額に連動する部分もある。スポンサーの出資は 3% に届かず、同じ船に乗る度合いは弱い。2028 年以降に新築が戻れば、賃料の上げ幅は縮む。冷凍冷蔵倉庫のような特殊な開発は、貸し手が限られ、空きが出ると埋まりにくい。変動金利の比率を上げる方針は、金利が速く上がる局面では裏目に出る。物件を売って小さくなる会社は、規模の利益も失っていく。借入先との関係や格付けにも、規模の縮小は効く。
どちらに重みを置いたか
資本の使い方と物件の質で強気に分があるが、金利の前提は動かせない。中立は今の値段を 2 割ほど下回る。スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% に置いた。楽観側は合わせて 32%、中立は 38% を置いた。筆者は、経営陣の資本の使い方は高く評価するが、それでも今の値段には安全域が無いと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 155,453 円2,700 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 55,870 円970 億円)。 今の値に割り戻すと 110,198 円1,914 億円、今との差 −20.2%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 261,400 円4,540 億円 | 68,689 円1,193 億円 | +139.0% | +9.1% | 33,009 円573 億円 |
| やや楽観 | 22% | 210,501 円3,656 億円 | 62,932 円1,093 億円 | +98.0% | +7.1% | 60,155 円1,045 億円 |
| 中立 | 38% | 159,776 円2,775 億円 | 58,441 円1,015 億円 | +58.0% | +4.7% | 82,922 円1,440 億円 |
| やや悲観 | 20% | 91,317 円1,586 億円 | 47,674 円828 億円 | +0.6% | +0.1% | 27,798 円483 億円 |
| 悲観 | 10% | 40,246 円699 億円 | 34,143 円593 億円 | −46.1% | −6.0% | 7,439 円129 億円 |
| 加重平均 | 100% | 155,453 円2,700 億円 | 55,870 円970 億円 | +53.0% | +4.3% | 211,324 円3,670 億円 |
今の株価時価総額 138,100 円2,399 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 供給の細りで賃料が物価並みに上がる 利益 119 億円 · PBR 2.3 倍 · 株価時価総額 261,400 円4,540 億円
10 年金利は 3% 前後で落ち着き、借り換えは変動金利を軸に 3.0% で済む。2027 年の供給の細りが賃料を押し上げ、更改のたびに増額が続く。賃料は年 3% で上がり、稼働は 99% を保つ。
経費は物価並みに増えるが、NOI は 10 年で 3 割台半ばまで伸びる。純利益は今から 2 割近く増える。自己投資口の買い入れと売却益の還元で、1 口の価値はさらに増える。開発案件の利益も加わる。
物件の利回りは 3.6% まで下がり、物件の価値は鑑定を上回る。借入が軽いので、投資主の取り分は今の値段を大きく上回る。
- 物流施設の賃貸:数量 3,468(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.5%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 303 億円・営業利益 211 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 242 − 資本的支出 24) ÷ キャップ 3.60% − 純負債 1530 = 4540 億円。キャップは物流の下限 3.5% に近い 3.6%。
確率:2027 年の供給の細りと強い増額が続き、金利も 3% 前後で収まる筋書き。10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.1% 利益 100 億円 · PBR 1.9 倍 · 株価時価総額 210,501 円3,656 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.1% になる。賃料は更改のたびに年 2.5% で上がり、稼働は 98% を保つ。第 3 号開発の仙台の物件が追加の収益を生む。更改の面積が戻る期には、増額がまとめて効く。
利払いは年 55 億円ほどまで増え、純利益はほぼ今の水準にとどまる。売却益を使った自己投資口の買い入れが 1 口の価値を支える。資本的支出は築が進むにつれ年 25 億円まで増える。
物件の利回りは 3.85% に上がる。物件の価値は鑑定よりやや低いが、軽い借入のおかげで投資主の取り分は今の値段を上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 3,433(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.3%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.5%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 285 億円・営業利益 192 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 225 − 資本的支出 25) ÷ キャップ 3.85% − 純負債 1545 = 3656 億円。キャップは物流の中立 4.25% より 0.4% 低い 3.85%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 85 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 159,776 円2,775 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は変動と固定の組み合わせで平均 3.2% に替わる。年の利払いは今の約 15 億円から 56 億円へ増える。賃料は年 2% で上がり、稼働は 97.5% へ少し下がる。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 2 割弱しか伸びない。減価償却は取得原価のままで、修繕を積んだ分だけ少し増える。純利益は今の 15% 減、分配は売却益を除いて今の 1 割ほど減る。資本的支出は築の進行で年 26 億円に増える。
物件の利回りは 4.25% に上がり、物件の価値は鑑定より 2 割弱低い。借入が軽いので、投資主の取り分は今の自己資本を上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 3,415(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.5%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 270 億円・営業利益 177 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 210 − 資本的支出 26) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 1560 = 2775 億円。キャップは物流の中立 4.25%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.75%)。今の鑑定の利回り約 3.7% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 38%。
やや悲観 20% 供給が戻り、稼働と賃料が頭打ちになる 利益 53 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 91,317 円1,586 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.5% になる。2028 年以降に新築が戻り、賃料は年 1% しか伸びず、稼働は 95.5% に落ちる。築が進み、資本的支出は年 29 億円になる。
利払いは年 61 億円になり、純利益は今の半分ほどに細る。売却益の還元は止まり、自己投資口の買い入れも、NAV との差が縮んで手控える。空室の手当てに、フリーレントなどの費用も増える。分配は純利益の水準になる。
物件の利回りは 4.75% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本の 8 割ほどに縮む。
- 物流施設の賃貸:数量 3,345(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.5%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 240 億円・営業利益 147 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 179 − 資本的支出 29) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 1590 = 1586 億円。キャップは中立 +0.5%。借入は軽いが、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:2028 年以降の新築の戻りで稼働が下がり、借り換えが重くなる筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 10 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 40,246 円699 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.3% になる。不況で通販と物流会社が床を返し、稼働は 88% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。NOI は 2 割ほど減る。
純利益はほぼゼロに沈み、分配は内部の積立と売却益で数期もつだけだ。変動金利の比率が高く、利払いの増加が速い。資本的支出を絞り、借入の返済と空室の手当てに現金を回す。物件の利回りは 5% に上がり、物件の価値は鑑定の 6 割ほどになる。
借入が軽いので、物件の価値は借入を上回って残るが、投資主の取り分は今の自己資本の 3 分の 1 ほどだ。清算されない限り、施設を売って NAV を受け取ることはできない。
- 物流施設の賃貸:数量 3,083(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.5%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 200 億円・営業利益 112 億円。稼働 88%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 143 − 資本的支出 24) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 1680 = 699 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流施設の賃貸
首都圏・近畿圏を中心とする大型の複数テナント型の物流施設を、通販・小売・物流会社に定期借家で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.5%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 3,457 | 6.5% | 224 | 150 |
| 10 年後 中立 | 3,415 | 7.9% | 270 | 177 |
取り方:2026 年 2 月期の半期の不動産賃貸事業収益 112.2 億円を 2 倍して年額 224.4 億円。帳簿価額 3,503 億円(貸借対照表の賃貸等不動産)× 稼働 98.7% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は賃貸事業収益 − 償却を除く賃貸事業費用で年 179.8 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 29.9 億円を引いた額。売却益は除く。決算後の物件売却と買い戻しは、売却益と買い戻し益が相殺するとみて反映しない。中立の価格が 1.22 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、定期借家の更新が数年ごとで、2028 年以降の新築の戻りで転嫁が物価の 2/3 にとどまると見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 0.89% の借入が 3% 台に替わると、年の利払いは 40 億円ほど増え、今の純利益の 4 割近くが消える。新しい借入は変動金利を軸にするので、金利が速く上がる局面では効きも速い。
売れる間だけの売却
鑑定を上回る値段で売り、売却益を還元する手は、取引市場の利回りが上がれば成り立たなくなる。売るほど物件が減り、NOI の元が縮む。
更改面積の少ない期
2026 年 8 月期と 27 年 2 月期は更改の面積が全体の約 15% と少なく、増額の効果が小さい。分配の予想は 27 年 2 月期に売却益の剥落で今の 8 割強まで下がる。
物流施設の利回りの上昇
今の鑑定の NCF 利回りは 3.7% で、10 年国債 3% との差が小さい。利回りが 1 ポイント上がると、施設の価値は 2 割強下がる。
運用報酬の重さ
運用報酬は取得額や NOI に連動する部分があり、NOI の 18% に達する。スポンサーの出資は 3% に届かない。
供給の波
建築費の高騰で 2027 年の新築は細るが、2028 年以降に戻る。空室が上がれば、更改での増額が止まる。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、やや楽観に近づく。今の値段は適正の範囲に入る。
- 投資口が NAV を回復し、買い入れを終える
- 1 口の価値を増やす手段が減る。公募増資で外から買う成長が戻るなら、増資の値段 ÷ NAV を見る。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 更改時の増額が 2028 年以降も 5% 超を保つ
- NOI の伸びが物価に近づき、楽観側の確率を上げる。
- 売却が鑑定を下回る値段に変わる
- 資本の使い方の優位が崩れ、中立の確率を下げる。
見ておくもの
- 更改時の賃料増額率と期中平均稼働率
- 平均調達金利と変動金利の比率
- 売却の値段 ÷ 鑑定評価額と自己投資口の買付価格 ÷ NAV
- スポンサーの出資比率
- 首都圏・近畿圏の物流施設の新築供給
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回り 3.7% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.48% を足した 7.98%。事業は傾いていないので extra は置かない。