結論
CREロジスティクスファンドは、物流専業のシーアールイー(CRE)が開発した「ロジスクエア」21 物件を持つ REIT だ。取得価格の合計は 1,572 億円で、首都圏と関西圏が 98% を占める。筆者の結論は、適正の範囲にあるということである。価値の計算は今の値段より 2% ほど高く、差は誤差の内にある。
強みは物件の新しさと、自己投資口の取得を続ける姿勢だ。平均築年は 7.9 年と浅く、稼働は期末で 98.1%。投資口は NAV を 3 割以上下回っており、2024 年以降 4 回に分けて合計 17,000 口あまりを買って消却した。1 口の価値を増やす使い方で、筆者は評価する。
弱みは借入の期間だ。平均の残りは 2.3 年しかなく、借入の 41% が 2 年以内に借り換わる。平均金利は 1.15% で、10 年たてばほぼ全部が 3% 台に替わる。年の利払いは 10 億円から 25 億円まで増える見通しだ。
もうひとつの弱みは、最大の物件である狭山日高の空室だ。稼働は 8 割にとどまり、残りの 6 割持分の売却にも着手した。今の分配は売却益で底上げされており、売却益を除くと 1 口の分配は公表より 1 割強薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、築の浅い首都圏の物件と、自己投資口の取得を続ける姿勢は評価できる。NAV を 3 割下回る値段で買い戻すのは、1 口の価値を増やす堅実な使い方だ。
ただ、値段に安全域はない。今の分配は売却益で底上げされている。売却益を除いた純利益は年 38 億円だ。借入の 41% が 2 年内に借り換わり、10 年金利 3% の世界では平均金利が 1.15% から 3.4% に上がる。利払いだけで年 15 億円ほど増える。
好材料は賃料の改定と空室の埋め戻しだ。狭山日高の 2 区画が埋まり、更新のたびに増額が続けば、NOI の伸びは物価並みに近づく。一方で、複数テナント型の物件は、退去が出るたびに稼働が動く。
10 年の分配と 10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段をわずかに上回る程度になる。割安とは言えない。筆者が見るのは、狭山日高の埋め戻しと、2 年内の借り換えの金利だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、物流施設を物流会社・メーカー・小売に貸す賃料だ。2026 年 6 月期の半年で営業収益(売却益を除く)は約 45 億円、償却を除く費用を引いた NOI は約 36 億円。年にならすと NOI は 73 億円で、帳簿価額 1,499 億円に対する利回りは 4.8% になる。経費が収入の 2 割弱と軽く、賃料の伸びがほぼそのまま NOI に乗る。
物件は 21 か所で、埼玉を中心とする首都圏が大半を占め、関西圏と合わせて 98% になる。物件のほぼ全部が CRE の開発した「ロジスクエア」だ。ひとつの物件に複数のテナントが入る汎用型の施設が多く、最大の狭山日高は 8 社が入る。期末の稼働率は 98.1%、期中の平均は 97.8%。
契約は定期借家で、平均の契約期間は 7.2 年。ただ残りの期間は 2.6 年と短く、更新の機会は早く来る。2025 年以降の新しい契約には物価連動の条項を入れ始めた。賃料は更新のたびに増額の合意を進めている。
成長の道具は、CRE の開発物件を優先して買う権利だ。足元は外部成長より入れ替えと自己投資口の取得を優先している。2026 年 1 月に厚木の底地を取得し、狭山日高の持分 40% を売った。残りの 60% の売却にも着手している。
優良さと弱いところ
物件の質は物流 REIT の中で中位だ。築が浅く立地も首都圏が中心だが、1 物件に複数のテナントが入る形が多く、1 社の退去で空室が出やすい。実際、狭山日高では 2 区画が空き、全体の稼働を押し下げた。
強みは三つある。一つめは自己投資口の取得を積極的に進めていること。二つめは投資主の取り分を増やす姿勢で、売却益を分配と買い戻しに回す方針を示している。三つめは CRE の出資で、5.09% を保有し、3% 以上を持ち続ける約束がある。
弱みも三つある。ひとつは、物件がほぼ全部 CRE の開発物件で、買う値段の交渉がスポンサー寄りになりやすいこと。ふたつめは、運用報酬が総資産・利益・取得額・売却益に連動し、NOI の 11.5% と軽くないこと。みっつめは、借入の残りが 2.3 年と短く、2 年内の返済が 41% に達することだ。
資本的支出は年 2 億円と軽い。築が浅いからだが、築 10 年を過ぎれば増える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流施設の需要は、通販の拡大と在庫を持つ倉庫の自動化で長く伸びてきた。ただ 2022〜23 年は、首都圏で大量の新築が重なり、空室が上がった。2024 年から供給は減り、空室率はピークを越えた。建築費の高騰で新築の供給は細り続ける見通しだ。
供給が細ると、新しい施設の賃料は高くなり、既存の施設の賃料もそれに寄る。ただ、この REIT のような 1 物件に複数のテナントが入る汎用型の施設は、大型の専用施設ほど賃料の上がり方が強くない。筆者は、中立で賃料は名目年 2% と見る。物価の 3% に届かないのは、供給の波が賃料を抑えるからだ。
物流施設の取引市場では、スポンサーと REIT の取引が多い。REIT の投資口が NAV を下回る間は、外から物件を買う成長は進みにくい。自己投資口の取得か、物件の入れ替えが先になる。この REIT の動きも、その形だ。
金利の 10 年は、物流不動産の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、物流の期待キャップは 4.25% まで上がる。今の鑑定の NCF 利回りは 3.8% だ。この差が、物件の価値を鑑定より下げる。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、自己投資口の取得と物件の入れ替えだ。2024 年 12 月から 2026 年 6 月まで 4 回、合計 17,370 口を消却し、買った額は約 26 億円に上る。NAV を下回る値段で買い戻す使い方で、1 口の価値を増やす。
増資は、2021 年 9 月と 2023 年 4〜5 月の 2 回だ。会社は、どちらの増資でも 1 口当たりの NAV と分配金が増えたと説明する。直近 3 年は増資をしていない。
借入は総資産の 44.7%、鑑定ベースでは 37.7% だ。平均の金利は 1.15% と上昇中で、固定の比率は 80.3%。残りの期間が 2.3 年と短く、借り換えの機会が早く来る。運用の上限は総資産 50%、鑑定 42〜43% と決めている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
NAV に対する割引が大きい。投資口は NAV を 3 割以上下回り、4 回の買い戻しで 1 口の価値が増えている。さらに、狭山日高の持分売却で入る約 120 億円は、自己投資口の取得か借入の返済に回す方針だ。値段が戻れば、買い戻しの効果は大きい。
物件が新しく、立地が良い。平均築年は 7.9 年、首都圏と関西圏が 98%。資本的支出は軽く、減価償却の一部を利益超過分配に回せる。含み益は 356 億円あり、鑑定評価額は簿価を 24% 上回る。
賃料の改定が効き始めた。2026 年 12 月期と 2027 年 6 月期に更新を迎える契約は、増額の合意を進めている。2025 年以降の契約には物価連動の条項が入り始めた。供給が細る 2027 年以降は、空室の埋め戻しも進みやすい。
借入の貸し手は大手行と政策投資銀行で、格付けは JCR の AA−。鑑定ベースの借入比率は 37.7% で、金利が上がっても投資主の取り分は大きく残る。
慎重な見方
借り換えが早い。借入の 41% が 2 年内に満期を迎え、平均の残りは 2.3 年しかない。平均 1.15% の金利が 3.4% に替われば、年の利払いは 10 億円から 25 億円へ増える。会社の予想でも、金利は 2027 年 6 月期に 1.67% まで上がる。
狭山日高の空室が重い。稼働は 8 割にとどまり、7 月からは別の区画にも空きが出た。複数のテナントが入る物件は、1 社の退去で稼働が動く。残りの契約期間は平均 2.6 年と短く、更新で賃料が下がるリスクもある。
今の分配は見かけより厚い。売却益と利益超過分配を足して、売却益を除いた純利益より 1 割強上に出ている。運用報酬は総資産・利益・取得額・売却益に連動し、NOI の 11.5%。物件はほぼ全部が CRE の開発で、買う値段の交渉は不利になりやすい。
CRE の出資は 5.09% と薄い。同じ船に乗る度合いは弱く、時価総額が小さいぶん、売買の出来高も細い。金利が上振れすれば、買い戻しの原資も細る。
どちらに重みを置いたか
物件の新しさと買い戻しの姿勢で強気に分があるが、借り換えの早さと空室が重い。中立は今の値段とほぼ同じになった。スポンサーの点数は 3 を下回ったので、悲観の確率は 10% に据えた。楽観側は合わせて 32%、中立は 38% を置いた。筆者は、適正の範囲にあり、値段が 1 割下がれば魅力が出る位置にあると見る。NAV を 3 割下回る点は、清算されない限り受け取れないので、割安の根拠にはしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 200,603 円1,224 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 60,842 円371 億円)。 今の値に割り戻すと 131,521 円803 億円、今との差 +3.6%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 330,313 円2,016 億円 | 76,844 円469 億円 | +220.8% | +12.4% | 40,716 円249 億円 |
| やや楽観 | 22% | 271,329 円1,656 億円 | 70,290 円429 億円 | +169.2% | +10.4% | 75,156 円459 億円 |
| 中立 | 38% | 205,463 円1,254 億円 | 63,408 円387 億円 | +111.9% | +7.8% | 102,171 円624 億円 |
| やや悲観 | 20% | 123,048 円751 億円 | 50,301 円307 億円 | +36.6% | +3.2% | 34,670 円212 億円 |
| 悲観 | 10% | 51,939 円317 億円 | 35,391 円216 億円 | −31.2% | −3.7% | 8,733 円53 億円 |
| 加重平均 | 100% | 200,603 円1,224 億円 | 60,842 円371 億円 | +106.0% | +7.5% | 261,445 円1,596 億円 |
今の株価時価総額 126,900 円775 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 10% 供給の細りで賃料が物価並みに上がる 利益 49 億円 · PBR 2.6 倍 · 株価時価総額 330,313 円2,016 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、借り換えは 3.1% で済む。2027 年の供給の細りが賃料を押し上げ、更新のたびに増額が続く。賃料は年 3% で上がり、稼働は 99% を保つ。
経費は物価並みに増えるが軽く、NOI は 10 年で 3 割強伸びる。純利益は今から 3 割ほど増える。自己投資口の取得で 1 口の価値が増え、この筋書きでは規模を据え置いて質を上げる。
物件の利回りは 3.6% まで下がり、物件の価値は鑑定を上回る。借入は軽くないが、投資主の取り分は今の値段を大きく上回る。
- 物流施設の賃貸:数量 1,484(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.3%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 123 億円・営業利益 83 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 98 − 資本的支出 2) ÷ キャップ 3.60% − 純負債 650 = 2016 億円。キャップは物流の下限 3.5% に近い 3.6%。
確率:2027 年の供給の細りと強い改定が続き、金利も 3% 以下で収まる筋書き。空室の埋め戻しが進み、買い戻しも続くので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.25% 利益 41 億円 · PBR 2.1 倍 · 株価時価総額 271,329 円1,656 億円
金利はやや低めに落ち着き、借り換えは 3.25% になる。供給の波は残るが、賃料は更新ごとに年 2.5% で上がる。稼働は 98.5% を保つ。
利払いは年 24 億円ほどまで増えるが、NOI の伸びが吸収し、純利益は今の 1 割弱増える。売却益の上乗せは終わり、その後の分配は純利益に利益超過分配を足した水準になる。資本的支出は築が進むにつれ年 3 億円まで増える。
物件の利回りは 3.85% に上がる。物件の価値は鑑定よりやや高く、借入があっても投資主の取り分は今の値段を上回って残る。狭山日高の空室が埋まり、更新のたびに増額が続くことが、この筋書きの前提になる。
- 物流施設の賃貸:数量 1,476(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 116 億円・営業利益 77 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 92 − 資本的支出 3) ÷ キャップ 3.85% − 純負債 665 = 1656 億円。キャップは物流の中立 4.25% より 0.4% 低い 3.85%(賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 34 億円 · PBR 1.6 倍 · 株価時価総額 205,463 円1,254 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 2〜4 年のうちに 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の約 10 億円から 25 億円へ増える。賃料は年 2% で上がり、稼働は 97.5% へ少し下がる。
経費は物価並みに増えるので、NOI は 10 年で 2 割弱しか伸びない。減価償却は取得原価のままで、修繕を積んだ分だけ少し増える。純利益は今の 1 割ほど減り、分配は売却益の上乗せが終わったあと、今の水準から 1 割弱下がる。
物件の利回りは 4.25% に上がり、物件の価値は鑑定より 1 割ほど低い。借入があるぶん、投資主の取り分は物件の価値の変動に敏感で、今の自己資本を上回って残る。
- 物流施設の賃貸:数量 1,461(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 110 億円・営業利益 70 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 85 − 資本的支出 3) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 680 = 1254 億円。キャップは物流の中立 4.25%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.75%)。今の鑑定の利回り約 3.8% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 38%。
やや悲観 20% 供給が戻り、稼働と賃料が頭打ちになる 利益 20 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 123,048 円751 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.65% になる。2028 年以降に新築が戻り、賃料は年 1% しか伸びず、稼働は 95.5% に落ちる。複数テナント型の物件は退去の影響を受けやすい。築が進み、資本的支出は年 4 億円に増える。
利払いは年 27 億円になり、純利益は今の半分ほどに細る。利益超過分配は止まり、分配は純利益だけになる。借入の返済に現金を回し、新しい物件は買えない。更新時の増額は止まり、改定は据え置きに近い水準になる。
物件の利回りは 4.75% に上がる。物件の価値から借入を引くと、投資主の取り分は今の自己資本とほぼ同じ水準まで縮む。
- 物流施設の賃貸:数量 1,431(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 97 億円・営業利益 57 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 73 − 資本的支出 4) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 705 = 751 億円。キャップは中立 +0.5%。借入があるぶん、物件の価値が下がると投資主の取り分は大きく縮む。
確率:2028 年以降の新築の戻りで稼働が下がり、借り換えが重くなる筋書き。20% とした。
悲観 10% 金利の上振れと不況で稼働が落ちる 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 51,939 円317 億円
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.3% になる。不況で物流会社と小売が床を返し、稼働は 88% へ落ちる。賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。NOI は 2 割減る。
利払いは年 32 億円になり、純利益はほぼ消える。分配は純利益の水準まで下がり、利益超過分配も止める。資本的支出を絞り、借入の返済と空室の手当てに現金を回す。物件の利回りは 5% に上がり、物件の価値は鑑定の 6 割ほどになる。
物件の価値は借入を上回って残るが、投資主の取り分は今の自己資本の半分以下だ。清算されない限り、施設を売って NAV を受け取ることはできない。
- 物流施設の賃貸:数量 1,319(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.2%(稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 81 億円・営業利益 43 億円。稼働 88%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 58 − 資本的支出 3) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 780 = 317 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 3 を下回ったので、悲観の確率は基本の 10% のまま。金利の上振れと不況が重なる筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流施設の賃貸
首都圏・関西圏を中心とする物流施設「ロジスクエア」を、物流会社・メーカー・小売に定期借家で貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する営業収益の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,470 | 6.2% | 91 | 57 |
| 10 年後 中立 | 1,461 | 7.5% | 110 | 70 |
取り方:2026 年 6 月期の半期の営業収益 45.3 億円(売却益 3.2 億円を除く賃貸事業収入と付随収入)を 2 倍して年額 90.5 億円。帳簿価額 1,499 億円(貸借対照表の賃貸等不動産)× 期末の稼働 98.1% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 72.7 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 15.3 億円を引いた額。中立の価格が 1.22 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、定期借家の更新が数年ごとで、2028 年以降の新築の戻りで転嫁が物価の 2/3 にとどまると見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利と早さ
借入の 41% が 2 年内に満期を迎え、平均の残りは 2.3 年。平均 1.15% の借入が 3.4% へ借り換わると、年の利払いは 15 億円ほど増え、今の純利益の 4 割が消える。会社の予想でも 2027 年 6 月期の平均金利は 1.67%。
狭山日高の空室
最大の物件で稼働は 8 割にとどまる。7 月から別の区画にも空きが出た。複数テナント型で、1 社の退去が稼働に響く。残り 60% 持分の売却は、買い手と値段が決まっていない。
売却益に頼る分配
直近の 1 口の分配には売却益の 14% ほどが含まれる。売却益を除くと分配は公表より 1 割強薄い。売却益が終われば、分配は純利益に利益超過分配を足した水準へ戻る。
短い契約の残り
平均の残りの契約期間は 2.6 年。更新で増額の合意を進めているが、供給が戻る 2028 年以降は、更新で賃料が下がる可能性もある。
物流施設の利回りの上昇
今の鑑定の NCF 利回りは 3.8% で、10 年国債 3% との差が小さい。利回りが 1 ポイント上がると、施設の価値は 2 割強下がる。
スポンサー開発物件への偏り
物件のほぼ全部が CRE の開発で、買う値段の交渉はスポンサーに寄る。CRE の出資は 5.09%。運用報酬は NOI の 11.5% と軽くない。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、やや楽観に近づく。今の値段は割安の側に入る。
- 狭山日高の空室が埋まり、稼働が 99% に戻る
- NOI が増え、楽観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 狭山日高の持分売却益で自己投資口の取得を続ける
- NAV 割れの値段で 1 口の価値を増やす使い方で、スポンサーの点数を下げる。
- 売却益の上乗せが終わり、1 口の分配が公表より 1 割強下がる
- 分配の見かけの低下で投資口が売られても、価値の数字は動かない。
見ておくもの
- 狭山日高の稼働率と売却
- 平均調達金利と 2 年内の返済額
- 更新時の賃料改定率
- CRE の出資比率と取得の利回り
- 自己投資口の取得と NAV 割れの幅
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回り 3.8% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.77% を足した 8.27%。事業は傾いていないので extra は置かない。