結論
GLP 投資法人は、最新鋭の大型物流施設を中心に 88 棟、取得価格で 9,000 億円を超える資産を持つ、物流 REIT だ。稼働は 99.0%、契約の満期ごとの賃料増額は 10% を超える。物流施設は経費率が低く、賃料の伸びがそのまま利益に近づく。筆者の結論は、まだ割高である。今の値段は、鑑定の利回りが 3% 台という低金利の評価と、10% 超の増額改定の勢いを、そのまま長く続ける値段だからだ。
スポンサーグループは、物流不動産の開発・運営で世界有数のアレスだ。開発した最新鋭の施設を優先して取得でき、2026 年 8 月にも 3 棟を鑑定より 7.7% 安く買った。この強みは本物である。一方で、運用報酬は NOI の 15% ほどと重く、取得や売却にも報酬がかかる。
借入は約 4,400 億円で、LTV は帳簿で 48.1%、鑑定で 36.9%。平均金利は 1.06% と低いが、10 年金利が 3% に落ち着けば、借入の金利は 3.4% 前後になり、年の利払いは今の 3 倍になる。
自己投資口は、NAV の約 14% 安で 60 億円を買って消却し、新たに 100 億円の枠も作った。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、物件の質、スポンサーの開発力、資本の使い方のいずれも合格点だ。NAV 割れの投資口を自ら買って消し、売却では鑑定を上回る値段を取る。オーナーとして付き合いたい運営である。
ただ、投資主が受け取るのは、賃料から利払いを引いた残りだけだ。借入は 4,400 億円で、平均 1.06% の金利が 3% 台前半へ変わる。年の利払いは 51 億円から 157 億円へ増え、賃料の増額でもすべては埋まらない。10 年の分配と 10 年後のビルの価値を合わせても、今の値段の 3分の2 ほどの価値にしかならない。
運用報酬が NOI の 15% と重いことも、投資主の取り分を削る。値段が NAV の 0.7 倍まで下がり、物流施設の利回りが 4.5% を超える水準まで来れば、魅力的な持ち物になる。今はまだそこにない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。物流施設を荷主や物流会社に貸し、賃料から経費と利払いを引いた残りを投資主に配る。2026 年 8 月期(半期)の賃貸事業収入は約 261 億円、そこから経費を引いた NOI は約 210 億円だった。2026 年 8 月に買った 3 棟が通年で寄与する 2027 年 2 月期の予想から年に直すと、NOI は 434 億円になる。
物件は 88 棟、取得価格で 9,060 億円。首都圏の湾岸・圏央道と、近畿圏、中部、九州などに広がる。含み益は 3,338 億円、含み益率は 39.3% と大きい。賃貸借の契約期間の平均は短く、CPI 連動の条項を入れた分を含めた実質の残りの期間は 3.0 年。満期ごとに市場賃料に寄るため、増額の機会が頻繁に来る。2026 年 8 月期の契約満期での増額率は 10.1%、2027 年 2 月期は 14〜16% を見込む。
借入は 4,376 億円(借入金 3,840 億円、投資法人債 536 億円)。All-in の調達コストは 1.06%、平均の借入年限は 7.2 年、固定の比率は 83.4%。格付けは JCR の AA。
運用会社は GLP ジャパン・アドバイザーズ。スポンサーのアレスの物流プラットフォームから、開発物件の優先交渉権(8 棟)を持つ。
優良さと弱いところ
物件の質は国内で最上位の物流施設だ。大型で築が浅く、高い天井・ランプウェイなど借り手に選ばれる仕様を備える。稼働は 99.0% と高く、賃料増額も市場を牽引する。ただ、首都圏の湾岸と圏央道では 2024〜26 年の大量供給で空室が 8〜10% あり、賃料を自分で決める力は市況の範囲だ。
資本の使い方は誠実な部分が多い。2025 年から NAV の約 14% 安で自己投資口を 3 回、合計 60 億円買って消却した。物件の売却では鑑定を上回る値段を取り、含み益を分配に回している。利益超過分配は、減価償却の 30% から 40% へ引き上げた。
弱いのは報酬だ。運用報酬は半期で約 33 億円、NOI の 15% ほどになる。取得価格と売却価格に連動する報酬もあり、取り引きが増えるほど運用会社の取り分が増える。
借入の重さは中程度で、純負債は NOI から報酬を引いた額の約 11 倍。同じ物流の中では重い方である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流施設の市場は、首都圏の湾岸・圏央道で 2024〜26 年の大量供給による空室が 8〜10% ある。供給は 2027 年に細る(52 万㎡)が、2028 年に戻る(147 万㎡)。筆者は中立の賃料の伸びを名目で年 2% と置く。物価の 3 分の 2 に当たる伸びだ。経費率が 23% と低く、NOI は賃料にほぼ連れて伸びる。
この REIT の賃料増額は、市場より大きい。契約の満期で 10% 超、CPI 連動で 7% 台と、物価を上回る増額が続いている。ただ、これは過去の賃料が市場賃料より低かった分の戻りで、永く続く伸びではない。市場賃料との差が埋まれば、伸びは物価の 3 分の 2 に落ち着く。
いちばん大きいのは金利だ。10 年国債が 3% の世界で、不動産に求める利回りを 6%、NOI の長い伸びを 1.75% とすれば、物流施設は 4.25% 前後に落ち着く。この REIT の鑑定の利回りは 3% 台で、含み益 3,338 億円はこの低い利回りに支えられている。
建物が新しいので今の資本的支出は小さいが、築 20 年に向けて倍になる。物流施設は、金利の上昇と利回りの上昇が同時に効きやすい用途でもある。
資本政策と M&A
利益のほぼ全部を配るのが REIT の決まりだ。成長の道は、増資で物件を買うか、物件を入れ替えるかのどちらかになる。この投資法人は、2023 年 5 月の第 11 回公募増資を最後に増資をせず、売却で得た資金で取得と自己投資口の買い入れを行っている。
2026 年 8 月は、スポンサーが開発した 3 棟(茨木、広島、常総)を 407 億円で取得した。NOI の利回りは 4.2% で、鑑定の評価を 7.7% 下回る価格だった。一方、2026 年 3 月期から 8 月期には 176 億円の物件を鑑定より高く売り、73 億円の売却益を出している。売却益は 2027 年 2 月期に 29 億円、8 月期に 26 億円を見込む。筆者は、この売却益を通常の分配には数えず、一度きりの上乗せとして別に扱った。
自己投資口は、NAV の 0.9 倍を下回る水準で最大 100 億円を買う枠を新たに設けた。取得は借入金で賄う面もあり、LTV の上昇に注意が要る。
利益超過分配は、減価償却の 40% を継続して行う。会計の利益を超えて配る分は、資本の払い戻しだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料の増額は市場を牽引している。契約の満期で 10.1% の増額、次の半期は 14〜16% を見込む。CPI 連動の条項で 7% 台の増額もあり、賃料は物価を上回って伸びる。契約期間が短い分、増額の機会が頻繁に来て、実質の残りの期間は 3.0 年だ。
スポンサーのアレスは、世界第 3 位の物流不動産の開発・運営規模を持つ。優先交渉権のある最新鋭の 8 棟が控え、成長の道筋が見える。2026 年 8 月にも 3 棟を鑑定より 7.7% 安く買った。
資本政策も強い。NAV の約 14% 安で自己投資口を買って消却し、含み益 3,338 億円を売却益として分配に回す。投資口の値段は NAV の 8 割台で、NAV に近づくだけで大きく報われる。
金利が 3% まで上がるとも限らない。固定の比率は 83% あり、AA の格付けで調達の信用も厚い。
建物が新しく、修繕費は当面小さい。
賃料の増額は過去の賃料が市場より低かった分の戻りでもあり、物流施設の需要は電子商取引と自動化の投資で底堅い。スポンサーの開発した最新鋭の施設は借り手に選ばれ、稼働を保ちやすい。借入の期間は平均 7.2 年と長く、返済期限の分散も効いている。
慎重な見方
低金利が作った値段だ。鑑定の利回りは 3% 台、10 年国債が 3% の世界ではほとんど差が無い。利回りが 4% 台前半に上がれば、物件の価値は 1 割台半ば下がり、借入が重いので投資主の取り分はその倍近い速さで減る。LTV は帳簿で 48%、鑑定で 37% だ。
利払いも重い。平均 1.06% の借入が 3% 台前半に変われば、年の利払いは 3 倍になる。2027 年だけで 518 億円の借入が返済期限を迎える。
首都圏の湾岸は供給過剰で、空室が 8〜10% ある。2028 年に新規供給が戻れば、賃料の増額は止まりうる。契約期間が短い分、賃料が下がる時は早い。
運用報酬は NOI の 15% と重く、取得や売却にも報酬がかかる。取り引きが増えるほど運用会社の取り分が増える。
分配金は売却益と利益超過分配を含む。売却益を除く分配は 1 割以上少なく、利益超過分配は資本の払い戻しにすぎない。
どちらに重みを置いたか
強気にも言い分はあるが、勝負を決めるのは金利と借入の重さだ。10 年金利 3% を前提にする以上、利払いと物件の利回りの上昇は避けられない。物流施設の質とスポンサーの力は高く評価でき、悲観の確率は厚くしすぎなかった。中立を 37% に置き、悲観側を合わせて 35% とした。楽観は金利が今のまま止まる筋書きで 8%。筆者は、この REIT の物件と運営を認める。ただ結論は変わらず、割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 130,966 円6,226 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 47,452 円2,256 億円)。 今の値に割り戻すと 92,532 円4,399 億円、今との差 −27.3%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 8.1%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 239,553 円1.14 兆円 | 59,152 円2,812 億円 | +134.6% | +8.9% | 23,896 円1,136 億円 |
| やや楽観 | 20% | 172,534 円8,202 億円 | 54,945 円2,612 億円 | +78.7% | +6.0% | 45,496 円2,163 億円 |
| 中立 | 37% | 136,542 円6,491 億円 | 50,696 円2,410 億円 | +47.1% | +3.9% | 69,278 円3,293 億円 |
| やや悲観 | 22% | 90,306 円4,293 億円 | 42,029 円1,998 億円 | +4.0% | +0.4% | 29,114 円1,384 億円 |
| 悲観 | 13% | 53,136 円2,526 億円 | 28,671 円1,363 億円 | −35.7% | −4.3% | 10,635 円506 億円 |
| 加重平均 | 100% | 130,966 円6,226 億円 | 47,452 円2,256 億円 | +40.2% | +3.4% | 178,418 円8,482 億円 |
今の株価時価総額 127,300 円6,052 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.1% を下回るほど割高。
楽観 8% 金利が止まり、物流の賃料が長く伸びる 利益 249 億円 · PBR 2.9 倍 · 株価時価総額 239,553 円1.14 兆円
物流の需要が強く、契約の満期での増額が続く。賃料は物価並みの年 3% で上がり、稼働は 99% を保つ。NOI は 10 年で 3 割台半ば伸びる。
借り換えの金利は AA の格付けで 3.2% にとどまる。不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.44% のまま変わらない。時価総額は 1 兆 1,388 億円と今の 1.8 倍になる。売却益と利益超過分配も続き、投資主の取り分は今の値段を上回る。
筆者はこの筋書きを、前提の金利から外れる分だけ低く見る。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びがそれを上回り、償却を引いた後の利益も毎年増えていく。自己投資口の買い入れも続き、1 口あたりの価値が積み上がる。
- 物流施設の賃貸:数量 8,409(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.5%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.4%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 718 億円・営業利益 481 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 583 − 資本的支出 50) ÷ キャップ 3.44% − 純負債 4100 = 11388 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.44% で、今の値付けが 10 年続く所(物流の下限 3.5% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:10 年金利が今の 3% 前後で止まり、物価を上回る増額が長く続く筋書き。前提の金利から外れるので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料は物価に近く伸び、利回りの上昇は小さい 利益 210 億円 · PBR 2.1 倍 · 株価時価総額 172,534 円8,202 億円
供給過剰が早く解消し、賃料は年 2.5% で上がる。稼働は 98.5% を保つ。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びが上回り、NOI は 10 年で 3 割弱伸びる。
借入は 3.3% 前後へ借り換わり、利払いは今の 3 倍になる。純利益は今の 9 割ほどになる。物件の利回りは 4.0% に上がり、物件の価値は今の鑑定を大きく下回る。
増額改定による押し上げは続くが、物価の上昇には追いつかない。自己投資口の買い入れは続くが、金利が上がるほど余力は細る。
含み益の売却による分配の上乗せもあるが、通常の利益には数えない。
- 物流施設の賃貸:数量 8,367(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.1%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.4%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 680 億円・営業利益 444 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 545 − 資本的支出 52) ÷ キャップ 4.00% − 純負債 4130 = 8202 億円。キャップは中立 4.25% から 0.25% 下げた。
確率:増額改定が進み、物件の利回りの上昇が小さい筋書き。20%。
中立 37% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 170 億円 · PBR 1.7 倍 · 株価時価総額 136,542 円6,491 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 5〜7 年で 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の 51 億円から 157 億円へ増える。賃料は年 2% で上がるが、供給の戻りで稼働は 97.5% へ少し下がる。経費は物価並みの 3% で増え、NOI は 10 年で 1 割台半ば伸びる。
減価償却は昔の取得原価のままなので、会計の利益は利払いの増加ほどは減らない。それでも純利益は今の 4 分の 3 に細る。修繕と更新の費用は築年とともに今の 2 倍に膨らみ、償却の半分を超える。
物件の利回りは 4.25% に上がり、物件の価値は今の鑑定より 4 割近く低い。負債は減らず、投資主の取り分は今の自己資本の 1.7 倍ほどになる。NAV 割れで増資はせず、規模は据え置きだ。
- 物流施設の賃貸:数量 8,282(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.7%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.4%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 641 億円・営業利益 406 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 506 − 資本的支出 54) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 4150 = 6491 億円。キャップは物流の中立 4.25%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.75%)。今の鑑定の利回り 3.8% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 37%。
やや悲観 22% 供給過多で賃料が伸びず、利回りが上がる 利益 88 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 90,306 円4,293 億円
2028 年に新規供給が戻り、湾岸の空室が長引く。契約の満期での増額は止まり、平均の賃料は年 1% しか上がらず、稼働は 95.5% へ落ちる。経費は物価で増え、NOI は今より 1 割増えるにとどまる。
借入は 3.75% へ借り換わり、純利益は今の 4 割まで細る。分配は大きく減る。物件の利回りは 4.5% へ上がり、物件の価値は今の鑑定の 5 割台に下がる。
スポンサーが物件を引き取る支えはありうるが、その値段が投資主に有利とは限らない。
物流の需要そのものは底堅く、稼働の落ち込みは 95% 台にとどまる。ただ増額の止まった賃料と、倍以上に膨らんだ利払いが重なり、分配は今の水準を保てない。自己投資口の買い入れも止まり、NAV との差は開いたままになる。
- 物流施設の賃貸:数量 8,112(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.0%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.4%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 569 億円・営業利益 336 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 434 − 資本的支出 52) ÷ キャップ 4.50% − 純負債 4200 = 4293 億円。キャップは中立 +0.25%。
確率:2028 年以降の物流施設の新規供給の戻りで、増額が止まる筋書き。22%。
悲観 13% 金利の上振れと不況が重なり、物件の価値が下がる 利益 −14 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 53,136 円2,526 億円
金利は 3% を超えて上がり、不動産の売りが重なる。借り換えの金利は 4.4% に上がり、利払いは今の 4 倍になる。不況と供給過剰で荷主は床を減らし、稼働は 88%、賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。経費を年 2% に抑えても、NOI は今より小さくなる。
純利益はゼロを割り込み、分配は止まる。利益超過分配も止めて、残した現金で借入を少しずつ返す。物件の利回りは 4.75% へ上がり、物件の価値は負債を 6 割ほど上回る程度にまで縮む。
投資主に残るのは、市況が戻れば取り戻せる見込みの分だけだ。清算されない限り、ビルを売って NAV を受け取ることはできない。
- 物流施設の賃貸:数量 7,475(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.4%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.4%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 475 億円・営業利益 256 億円。稼働 88%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 352 − 資本的支出 40) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 4050 = 2526 億円。キャップは中立 +0.5%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:リーマン級の不況と金利の上振れが重なる筋書き。物流は契約が短く、賃料が早く下がる。13% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流施設の賃貸
首都圏と近畿・中部・九州の大型物流施設 88 棟を、荷主や物流会社に貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.4%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2027/02予想 | 8,409 | 6.4% | 534 | 343 |
| 10 年後 中立 | 8,282 | 7.7% | 641 | 406 |
取り方:2027 年 2 月期の会社予想(2026 年 8 月の取得 3 棟が通年で寄与する最初の半期)を 2 倍して年額の賃貸事業収入 534 億円(売却益を除く)、NOI 434 億円と置いた。帳簿価額 8,494 億円(鑑定 11,832 億円 − 含み益 3,338 億円)× 稼働 99.0% で数量、収入 ÷ 数量で価格。セグメントの利益は NOI から減価償却 91 億円を引いた額。中立の価格が物価の 1.34 倍に届かないのは、増額が過去の賃料の戻りで、長くは続かず、物価の 3 分の 2 に落ち着くと見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 1.06% の借入が 3% 台前半へ借り換わると、年の利払いは 100 億円ほど増える。今の年の利益の 4 割を超える。2027 年だけで 518 億円の借入が返済期限を迎える。
物件の利回りの上昇
鑑定の利回りは 3% 台と低く、10 年国債 3% の世界では保てない。利回りが 1 ポイント上がると物件の価値は 2 割台半ば下がり、LTV は帳簿で 6 割に近づく。
物流施設の供給
首都圏の湾岸は 2024〜26 年の大量供給で空室が 8〜10% ある。2028 年に供給が戻れば、賃料の増額が止まりうる。契約期間が短く、賃料が下がる時は早い。
運用報酬の重さ
運用報酬は NOI の 15% ほどで、取得や売却にも報酬がかかる。取り引きが増えるほど運用会社の取り分が増え、投資主の取り分が削られる。
売却益と利益超過分配への依存
分配金は売却益と、減価償却の 40% の利益超過分配を含む。売却益を除く分配は 1 割以上少なく、利益超過分配は資本の払い戻しにすぎない。
修繕の費用
建築費は物価より速く上がる。築 20 年に向けて資本的支出は今の 2 倍になり、償却の半分を超える。足りなければ借入が増える。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- 物件の利回りの上昇は小さく、借り換えの金利も 2.5% 前後にとどまる。中立よりやや楽観に近づき、割高の度合いは縮む。
- 契約の満期での増額が 10% を超え続ける
- NOI の伸びが利払いの増加を上回り、楽観の筋書きに近づく。
- NAV 割れのまま公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。これまでの方針の転換で、スポンサーの点数を大きく上げる。
- 自己投資口の買い入れを増やす
- NAV との差が縮まり、資本の使い方の評価を上げる。ただし借入で賄うなら金利の重さが増す。
- 湾岸の空室が 10% を超えて長引く
- 賃料の増額が止まり、やや悲観に近づく。
見ておくもの
- 平均調達金利と固定金利の比率
- 契約の満期での増額率と CPI 連動の増額
- 継続鑑定の利回り(キャップレート)
- 自己投資口の買い入れと NAV との差
- 簿価 LTV
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回りより高い。NAV 割れ(今は NAV の約 8 割)を割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.1% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.56% を足した 8.06%。事業は傾いていないので extra は置かない。