結論
KDX 不動産投資法人は、ケネディクスをスポンサーとする総合型の J-REIT だ。2023 年にオフィス・住宅・商業の 3 つの投資法人が合併して生まれた。342 物件で、鑑定評価額は 1 兆 3,420 億円。取得価格の内訳は、オフィスが 34%、住宅が 26%、商業が 25%、ヘルスケアが 7%、ホテルが 5%、物流が 4%。筆者の結論は、今の値段はやや割高ということである。価値の計算は、今の時価総額を 26% 下回る。
強みは、賃料増額と資本政策だ。入替・更新の賃料増額は前期の 2 倍になり、合併後に自己投資口の取得を 3 回行った。格付は JCR の AA で、含み益は 1,475 億円ある。投資口価格は NAV の 0.74 倍だ。
弱みは三つある。ひとつは、NOI から資本的支出を引いた額が、鑑定評価額の 3.6% しかないこと。10 年国債が 3% の世界では、物件の価値は下がる。ふたつめは、借入の 41% が 2028 年 4 月期までに満期を迎え、借り換えで利払いが 3 倍以上に膨らむこと。みっつめは、運用報酬が NOI の 11% と重く、スポンサーの出資が 3.4% と小さいことだ。
スポンサーの点数は 2.4 と、悲観の確率は上げなかった。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この投資法人は、都心とその周辺の物件を貸す、堅実な不動産賃貸業だ。堀は広い分散と、スポンサーの情報にある。ただし、物件に尖りがなく、特定の用途の優位を取れていない。
今の低い金利が前提の利益だ。借入の平均金利は 1.05% で、3.5% 前後に借り換わると、年の利払いは 58 億円から 209 億円へ増える。2 年で 41% が満期を迎え、借り換えは急ぐ。
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.6% だ。10 年国債が 3% の世界では、キャップが 4.45% まで上がり、物件の価値は鑑定を 2 割弱下回る。含み益 1,475 億円は、その分だけ薄くなる。
今の値段は NAV の 0.74 倍で、これだけ見れば安い。だが、NAV は低い金利の上の鑑定で、筆者は割安の根拠にしない。自己投資口の取得は、投資主には良い使い方だ。
10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 3 割弱下回る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、オフィス・住宅・商業・ヘルスケア・ホテル・物流の賃料だ。投資法人が持つのは建物と土地で、テナントに貸して賃料を受け取る。直近 1 年の賃貸収入は 772 億円で、賃貸 NOI(賃料から費用を引いた稼ぎ)は 554 億円だった。
物件は 342 ある。取得価格では、オフィスが 4,131 億円(34%)、住宅が 3,148 億円(26%)、商業が 2,985 億円(25%)、ヘルスケアが 892 億円(7%)、ホテルが 560 億円(5%)、物流が 437 億円(4%)。東京経済圏が 68% を占め、地方の都市にも持つ。上位 10 物件の割合は 14% と、分散が効いている。
賃料は固定が基本で、商業とホテルの一部は売上連動の歩合賃料がある。稼働率は、オフィスが 99%、住宅が 97%、商業が 99.6%、ホテルとヘルスケアが 100%、物流が 94〜97%、全体で約 99% だ。
毎期、資産の入替を行う。2026 年 4 月期は 3 物件を 356 億円で買い、2 物件を 40 億円で売った。2026 年 12 月には、大阪の商業施設の底地を 37 億円で売る予定だ。
分配は、売却益と、合併で生じた内部留保(積立金)の取崩しで整える。積立金は約 200 億円ある。
優良さと弱いところ
物件の質は、分散の広さに強みがあり、尖りはない。東京経済圏の中小型オフィスと賃貸住宅が中心で、ヘルスケア・ホテル・物流の比率は小さい。地方都市の物件も多く、都心の大型物件に比べて築年が古く、資本的支出が嵩みやすい。
強みは三つある。ひとつめは、格付が JCR の AA で、借入の平均金利が 1.05% と低いこと。ふたつめは、含み益が 1,475 億円あり、鑑定評価額が帳簿価額を 12% 上回ること。みっつめは、入替・更新の賃料増額が、1 期で月額 4,570 万円と前期の 2 倍になったことだ。
弱みも三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎの低さ。ふたつめは、住宅の鑑定 NOI 利回りが 3.9% と低いこと。みっつめは、ヘルスケアの鑑定評価額が帳簿価額とほぼ同じで、含み益がないことだ。
既存物件の NOI は、直近 1 年で 2.7% 伸びた。ただし、これは物価の 3% には届かない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オフィスは、東京都心の空室率が 3% 前後に締まり、賃料が上がっている。KDX は中小型が多く、大型の新築供給の影響は受けにくいが、地方都市は需要が弱い。住宅は、更新と入替で賃料が物価に追随し、稼働が安定する。商業は、立地と業態で差が大きい。ホテルは、変動賃料が訪日客に連動する。
業種の表では、都心の大型オフィスの期待キャップは 4.25%、住宅は 3.75%、商業は 5.0%、ホテルは 5.0%、ヘルスケアは 4.5%、物流は 4.25%。KDX のオフィスは中小型と地方を含むので、4.5% に 0.25% 上乗せした。
鑑定 NOI の比は、オフィスが約 37%、商業が約 25%、住宅が約 22%、ヘルスケアが約 8%、ホテルが約 5%、物流が約 3%。加重した中立のキャップは 4.45% になる。
現在の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引くと 3.6% で、表より低い。これは 10 年金利が 2% 前後の世界の値段で、3% に上がれば表に近づく。賃料の伸びは、更新による増額が当面効くが、10 年の中立では年 2.0% に置いた。
資本政策と M&A
借入は 5,844 億円で、有利子負債を鑑定評価額で割った比率(LTV)は 43.5%。総資産に対しては 45.8% で、運用の上限の目安は 49% だ。固定金利の比率は 85.7%、平均金利は 1.05%、平均の残りは 2.9 年と短い。格付は JCR が AA だ。
2028 年 4 月期までの 2 年に、約 2,370 億円(41%)の満期が来る。2026 年 4 月期には 520 億円を借り換え、平均金利が 0.90% から 1.25% に上がった。借入期間は 6.6 年から 2.8 年に縮めて、金利の急な上昇を避けている。
増資は、2023 年の合併以降、行っていない。自己投資口は、2024 年 4 月に 63,588 口、2025 年 4 月に 40,111 口を取得して消却した。3 回目は、2026 年 6 月から 9 月に上限 60 億円で行っており、今の口数には未反映だ。
運用報酬は、総資産の 0.12%(Ⅰ)と、分配可能金額と 1 口の利益の積に 0.002% を掛けた額(Ⅱ)などから成る。年 61 億円で、NOI の 11% にあたる。
分配は、積立金の取崩しで保つ。2026 年 10 月期と 2027 年 4 月期の取崩しは、12 億円と 10 億円の見込みだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
賃料の増額が通っている。入替・更新の賃料増額は 1 期で月額 4,570 万円と、前期の 2 倍になった。既存物件の NOI は、直近 1 年で 2.7% 伸びた。
格付は JCR の AA。借入の平均金利は 1.05% で、2026 年 4 月期の借り換えは 1.25% で実行できた。借入余力は、総資産 LTV の上限 49% まで約 800 億円ある。
自己投資口の取得を、合併以降 3 回行った。増資はしておらず、1 口の価値を薄めていない。今の値段は NAV の 0.74 倍で、含み益は 1,475 億円ある。
分配には、約 200 億円の積立金がある。借入コストが増える局面でも、増配を保つ余力が大きい。ケネディクスと SMFL みらいパートナーズが、物件の供給を支える。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% で伸び、キャップが 3.95% に下がり、時価総額は 1 兆 1,055 億円と今の 2 倍になる。
慎重な見方
鑑定評価額に対する稼ぎが低い。賃料から改修費を引くと 3.6% で、10 年国債が 3% の世界では、キャップが 4.45% まで上がる。物件の価値は鑑定を 2 割弱下回り、含み益 1,475 億円は薄くなる。
借入 5,844 億円の平均金利は 1.05%。3.5% 前後に借り換わると、年の利払いは 3 倍以上になる。2 年で 41% の約 2,370 億円が満期を迎える。借入期間が短いので、借り換えを急ぐ。
運用報酬は NOI の 11% で、総資産に連動する部分が大きい。スポンサーの出資は 3.4% と小さく、同じ船の度合いは低い。
会計の利益は、利払いの増加で縮む。分配は積立金の取崩しで保つが、積立金には限りがある。
やや悲観の筋書きでは、賃料が 10 年でほぼ伸びず、NOI は 494 億円に落ち、時価総額は 2,881 億円と今の半分になる。
悲観の筋書きでは、物件の価値が縮み、投資主の取り分は 252 億円まで減る。
どちらに重みを置いたか
賃料増額の勢い、AA の格付、自己投資口の取得には根拠がある。ただ、鑑定評価額に対する稼ぎが低く、満期が近い借入の借り換えで利払いが 3 倍以上に増え、キャップの上昇が物件の価値を削る。中立の価値は今の時価総額を 3 割弱下回った。スポンサーの点数は 2.4 で、悲観の確率は基本のままにした。筆者は、NAV に対する安さは値段に入っているが、金利の正常化は入っていないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 154,460 円6,239 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 63,897 円2,581 億円)。 今の値に割り戻すと 105,755 円4,272 億円、今との差 −23.9%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 9.1%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 314,965 円1.27 兆円 | 81,155 円3,278 億円 | +185.2% | +11.0% | 39,612 円1,600 億円 |
| やや楽観 | 22% | 214,400 円8,660 億円 | 74,347 円3,003 億円 | +107.9% | +7.6% | 63,524 円2,566 億円 |
| 中立 | 38% | 160,280 円6,474 億円 | 67,266 円2,717 億円 | +63.8% | +5.1% | 86,468 円3,493 億円 |
| やや悲観 | 20% | 71,326 円2,881 億円 | 48,649 円1,965 億円 | −13.6% | −1.5% | 23,995 円969 億円 |
| 悲観 | 10% | 6,239 円252 億円 | 41,345 円1,670 億円 | −65.7% | −10.2% | 4,758 円192 億円 |
| 加重平均 | 100% | 154,460 円6,239 億円 | 63,897 円2,581 億円 | +57.2% | +4.6% | 218,358 円8,820 億円 |
今の株価時価総額 138,900 円5,610 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.1% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料増額が続き、年 3% で増える 利益 322 億円 · PBR 2.0 倍 · 株価時価総額 314,965 円1.27 兆円
オフィスは空室が締まり、住宅は更新と入替で上がる。商業は立地のよい物件で増額が通る。賃料は年 3% で伸び、稼働は 100% に近づく。
借り換えは 3.3% で済み、年の利払いは 197 億円と今の 3 倍強になる。それでも NOI は 554 億円から 745 億円へ 34% 増え、純利益は 322 億円と今をわずかに上回る。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.59% のまま変わらない。時価総額は 1 兆 2,722 億円と今の 2.2 倍になる。
自己投資口の取得が続き、増資は不要になる。
積立金の取崩しに頼らず、会計の利益で分配を賄える。
- オフィス・住宅・商業等の賃貸:数量 11,944(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.5%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 1,037 億円・営業利益 623 億円。稼働 100%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 745 − 資本的支出 88) ÷ キャップ 3.59% − 純負債 5570 = 12722 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.59% で、今の値付けが 10 年続く所(複合の下限 3.25% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:賃料ギャップの解消が続き、オフィスと住宅の賃料が年 3% 伸びる筋書き。総合型は用途の分散で上振れの幅が大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.5% で伸び、借り換えは 3.4% 利益 267 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 214,400 円8,660 億円
賃料の増額は 5 年ほど続き、その後は物価並みに落ち着く。賃料は年 2.5% で伸び、稼働の係数は 0.995 になる。借り換えは 3.4% で、年の利払いは 203 億円になる。
NOI は 691 億円と 25% 増えるが、利払いの増加で、純利益は 267 億円と今の 16% 減になる。資本的支出は年 92 億円と今の 1.3 倍に増える。
物件の利回りは 4.2% に上がる。時価総額は 8,660 億円で、今の 1.5 倍になる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。
- オフィス・住宅・商業等の賃貸:数量 11,884(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.3%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.5%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 983 億円・営業利益 570 億円。稼働 100%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 690 − 資本的支出 92) ÷ キャップ 4.20% − 純負債 5590 = 8660 億円。キャップは中立 4.45% より 0.25% 低い 4.2% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 賃料は物価に負け、利払いが 3 倍強になる 利益 209 億円 · PBR 1.0 倍 · 株価時価総額 160,280 円6,474 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3 年ほどで 3.5% へ借り換わる。年の利払いは今の 58 億円から 209 億円へ増える。賃料は年 2.0% で伸び、稼働の係数は 0.985 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 554 億円から 634 億円へ 14% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 318 億円から 209 億円へ 34% 減る。
物件の利回りは 4.45% に上がる。資本的支出は年 96 億円と、今の 1.3 倍に増える。
時価総額は 6,474 億円で、今を 14% ほど上回る。10 年の長さに割り引くと、今の値段を 3 割弱下回る。
- オフィス・住宅・商業等の賃貸:数量 11,765(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.5%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 927 億円・営業利益 514 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 634 − 資本的支出 96) ÷ キャップ 4.45% − 純負債 5620 = 6474 億円。キャップは業種の表を NOI で加重した 4.45% (オフィス 4.5%、商業 5.0%、住宅 3.75% など)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.6%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.0% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%(スポンサーの点数が 2.4 で、悲観の確率は基本のまま 10%)。
やや悲観 20% 賃料の伸びが止まり、金利が高めに落ち着く 利益 59 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 71,326 円2,881 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.8% になる。地方都市のオフィスと商業の賃料が伸びず、賃料は 10 年で年 0.5% の伸びにとどまる。稼働の係数は 0.97 に落ちる。
経費は物価で伸び、NOI は 494 億円と今の 11% 減る。年の利払いは 226 億円で、純利益は 59 億円と今の 2 割以下に縮む。資本的支出は年 92 億円に抑える。
物件の利回りは 4.7% に上がる。時価総額は 2,881 億円で、今の半分になる。
積立金の取崩しも減り、分配を保てなくなる。
満期が近い借入の借り換えで、金利の上昇がそのまま利益を削る。
- オフィス・住宅・商業等の賃貸:数量 11,586(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.5%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 787 億円・営業利益 376 億円。稼働 97%・賃料 年 +0.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 494 − 資本的支出 92) ÷ キャップ 4.70% − 純負債 5680 = 2881 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の頭打ちと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:オフィスの需要の弱さと消費の鈍化で賃料が伸びず、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 10% 賃料の下落と金利の上振れ 利益 −105 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 6,239 円252 億円
不況でオフィスの空室が増え、商業のテナントが減額を求める。賃料は年 1% ずつ縮み、稼働の係数も 0.94 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.5% になる。年の利払いは 267 億円で、NOI は 364 億円と今の 3 分の 2 に減る。純利益は 105 億円の赤字に沈み、分配は出せなくなる。資本的支出は 65 億円に絞る。
物件の価値は借入と預り敷金を大きく下回り、投資主の取り分は 252 億円まで減る。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
自己投資口の取得も続けられなくなる。
- オフィス・住宅・商業等の賃貸:数量 11,227(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.8%(規模に対する賃貸収入の比(今 6.5%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値)→ 売上 656 億円・営業利益 248 億円。稼働 94%・賃料 年 -1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 364 − 資本的支出 65) ÷ キャップ 4.95% − 純負債 5780 = 252 億円。キャップは中立 +0.5%。物件の価値から借入を引いた額が小さく、時価総額は再建の見込みの分だけを置く。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 2.4 なので、悲観の確率は基本の 10%。オフィスの空室と商業の苦戦が同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィス・住宅・商業等の賃貸
オフィス・住宅・商業・ヘルスケア・ホテル・物流の 342 物件を、定期借家(商業とホテルの一部は歩合賃料)でテナントに貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸収入の比(今 6.5%)。賃料の増額と、変動賃料の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 11,801 | 6.5% | 772 | 452 |
| 10 年後 中立 | 11,765 | 7.9% | 927 | 514 |
取り方:過去 1 年(2025 年 10 月期+2026 年 4 月期)の賃貸収入から売却益を除いた 772 億円を数量・価格に分けた。簿価(賃貸等不動産の貸借対照表計上額)1 兆 1,944 億円 × 係数 1.00 が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用を引いて 554 億円、セグメントの利益は減価償却 103 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、賃料増額の余地が当面あっても、10 年の長さで賃料ギャップが解消し、伸びが鈍るため(業種ノート)。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.6%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 4.45% まで上がると、物件の価値が 2 割弱縮み、含み益 1,475 億円が薄くなる。
借り換えによる利払いの増加
平均金利は 1.05%。3.5% 前後へ上がると、年の利払いは 58 億円から 209 億円まで増える。2028 年 4 月期までに約 2,370 億円(41%)の満期が来る。
平均の借入期間の短さ
平均の残りは 2.9 年で、2026 年 4 月期の借り換えでは借入期間を 6.6 年から 2.8 年に縮めた。金利が上がり続ける局面では、借り換えの回数が増える。
地方・中小型物件の資本的支出
地方都市のオフィスや築年の古い物件が多く、設備の更新が続く。資本的支出は直近 1 年で 73 億円と、減価償却の 7 割にあたる。
運用報酬とスポンサーの出資
運用報酬は NOI の 11%。総資産に連動する部分がある。ケネディクスの出資は 3.4% と小さい。
積立金の取崩しによる分配
2026 年 10 月期と 2027 年 4 月期の分配は、積立金の取崩しで保つ。約 200 億円の積立金には限りがある。
今後の分かれ目
- オフィスと住宅の賃料の増額が想定を上回り、年 4% 以上伸びる
- NOI が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割高の度合いが縮む。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- 借り換えで、借入期間を 3 年以下に縮め続ける
- 借り換えの金利リスクが残り、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得を続け、ケネディクスが出資を増やす
- 同じ船の度合いが上がり、スポンサーの点数が下がる。
見ておくもの
- 契約更改・入替の賃料増減率(オフィス・住宅・商業)
- 借り換えの金利と 2028 年 4 月期までの満期
- 資本的支出の推移と、減価償却との比
- 積立金の残高と、取崩しによる分配の割合
- 自己投資口の取得と、スポンサーの出資比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは用途ごとの表を NOI で加重した 4.45% で、今の NCF 利回り 3.6%(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った)より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.1% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.63% を足した 9.13%。用途の分散は cycle に反映したので extra は置かない。