結論
グローバル・ワンは、東京都心と千葉、大阪、福岡などの中大型オフィス 18 棟を持つ REIT だ。1 棟の平均は 130 億円台と、同業の中小型より大きい。稼働は 98.3% で、賃料の増額が 7 期続き、増額率は 8% 近い。筆者の結論は割高である。今の値段は、鑑定の利回りが 3% 台という低金利の評価を、そのまま 10 年先へ延ばした値段だからだ。
気になるのは資本の使い方だ。2025 年に自己投資口を 34 億円ほど買って消却した直後の 2026 年 4 月、NAV の 8 割弱の値段で 139 億円の公募増資をした。買う時と売る時が逆で、1 口の価値を削っている。増資の発表後、投資口は 2 割ほど下がった。
借入は 1,266 億円。LTV は帳簿で 53.2%(増資後は 50% 前後)、平均金利は 1.19% で、残りの期間は 2.8 年と短い。10 年金利が 3% に落ち着けば、年の利払いは今の 3 倍近くになり、利益は半分以下に細る。
2026 年 3 月にスポンサーが入れ替わり、明治安田生命と三菱 UFJ 信託銀行が中心になった。スポンサーの出資比率は低い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、物件の質は合格点だが、資本の使い方は落第に近い。自己投資口を買って消却したその半年後に、NAV を大きく割る値段で増資をした。投資主の1口の価値を守る意識が弱い。
また、投資主が受け取るのは、賃料から利払いを引いた残りだけだ。借入は 1,266 億円で、平均 1.19% の金利が 3% 台半ばへ変わると、年の利払いは 15 億円ほどから 41 億円へ増える。10 年の分配と 10 年後のビルの価値を合わせても、今の値段の半分ほどの価値にしかならない。
賃料の増額が 8% 近く続くのは強みだ。ただ、増額分は利払いの増加で消える。ビルの利回りが 4% 台半ばまで来て、NAV をさらに大きく下回る値段になれば、魅力的な持ち物になる。今はまだそこにない。
経営の誠実さは、割高という結論を変えない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。企業にビルを貸し、賃料から経費と利払いを引いた残りを投資主に配る。2026 年 3 月期(半年)の賃貸事業収入は約 55 億円、そこから経費を引いた NOI、つまり物件の正味の賃料は約 41 億円だった。期中と期末後の取得を年に直した NOI は、およそ 99 億円と見る。
物件は 18 棟、取得価格で 2,350 億円。東京都心 5 区のほか、千葉、大阪の淀屋橋・梅田・新大阪、福岡、札幌、さいたま、横浜などにある。2025 年 11 月と 12 月に福岡と新大阪、2026 年 3 月と 4 月に千葉と芝公園を買い、錦糸町と品川を売った。賃料の改定は、改定対象の面積の 68% で増額、平均の増額率は 7.9% と大きい。市場賃料との差(レントギャップ)は 8.9% に広がった。
借入は 1,266 億円。平均金利は 1.19%、固定の比率は 79.0%、残りの期間は 2.8 年。格付けは JCR の AA マイナス。千葉の取得に使った 175 億円の変動金利のブリッジローンが、2027 年 3 月に返済期限を迎える。手元の現金は 270 億円ほどある。
優良さと弱いところ
物件の質は、中大型のオフィスとして標準以上だ。稼働は高く、増額改定が続き、都心や主要都市のビルが中心である。ただ、豊洲では大口テナントの退去が控え、賃料を自分で決める力は無い。
資本の使い方に疑問が残る。2024 年から 2025 年に NAV の 8 割台の値段で自己投資口を 3 回買って消却した。ところが 2026 年 4 月には、NAV の約 8 割の値段で公募増資をした。買い入れと増資が逆向きに動いており、1 口の価値は 2 年で削られた。増資の値段は発表時の市場価格より約 15% 安かった。
運用報酬は NOI の 12% で、資産規模に連動する形だ。増資で資産が増えるほど報酬が増える。売却益は分配に回している。
スポンサーの出資比率は、明治安田生命が 1.5%、運用会社が 1.0% と低い。スポンサーが投資主と同じ船に乗る度合いは弱い。
借入の重さは気になる。純負債は NOI から報酬を引いた額の約 13 倍で、同じ用途の中でも重い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京のオフィス市場は、空室率が低く、賃料は上昇基調にある。この REIT の増額改定も 8% 近い幅で続く。ただ、大型の新築は 2027 年以降も続き、働く場所は分散する。筆者は中立の賃料の伸びを、物価の 3 分の 2、名目で年 2% 前後と置く。経費は物価で増えるので、NOI の伸びは賃料より遅い。大阪・福岡・札幌の主要都市は、東京より供給の波が大きい。
いちばん大きいのは金利だ。この REIT の鑑定の利回りは 3% 台で、含み益はこの低い利回りに支えられている。10 年国債が 3% の世界で、不動産に求める利回りを 6%、NOI の長い伸びを 1.6% とすれば、都心と主要都市の中大型ビルは 4.4% 前後に落ち着く。
中大型ビルは、大型の都心ビルより借り手が絞られる分、市況が悪くなると空室の回復が遅い。豊洲のように 1 社が大きな面積を借りているビルは、退去の影響も大きい。
オフィスは、金利の上昇と利回りの上昇が同時に効きやすい用途である。
東京の中大型ビルは、都心の大型ビルより賃料の上がり方が緩やかになりやすい。
資本政策と M&A
利益のほぼ全部を配るのが REIT の決まりだ。成長の道は、増資で物件を買うか、物件を入れ替えるかのどちらかになる。この投資法人は、入れ替えと増資を組み合わせてきた。
直近は 2026 年 4 月の公募増資で 132 億円、第三者割当で 7 億円を集め、芝公園と千葉を取得した。目標の資産規模 2,500 億円に向けた動きだ。増資の値段は NAV の約 8 割、発表時の市場価格より約 15% 低い。一方で、その直前の 2025 年 9 月まで自己投資口を買って消却していた。同じ NAV 割れの局面で、買う時と売る時を使い分けたことになる。
入れ替えでは、錦糸町と横浜を売って益を出した。2027 年 3 月期は、積み立てた益を 42 億円取り崩して分配を維持する。筆者は、売却益と積立の取り崩しを通常の分配には数えず、一度きりの上乗せとして別に扱った。
LTV は増資後で帳簿 50%、追加の借り増し余地は 277 億円。ただ金利上昇で変動金利の比率を 30% まで上げる方針で、利払いの振れが大きくなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ビルの質と賃料の勢いは本物だ。改定の増額は面積の 7 割近くで取れ、平均 8% 近い。市場賃料との差は 8.9% に広がり、賃料はさらに上がる余地がある。稼働は 98.3% と高く、満室の福岡と新大阪、築浅の千葉、大規模改修した芝公園と、買った物件の質も高い。
増資でLTV を 50% に下げ、借り増し余力は 277 億円に広がった。豊洲の空室は埋まり始め、ダウンタイム無しの入れ替えも進んでいる。含み益は 400 億円を超え、値段が NAV に近づくだけで大きく報われる。
スポンサーが明治安田生命と三菱 UFJ 信託銀行に代わり、金融系の安定した後ろ盾を得た。資金調達の面で追い風になる。
金利が 3% まで上がるとも限らない。固定の比率は 79% あり、格付けは AA マイナスだ。
こうした運営の力が賃料の上昇として積み上がれば、分配は守られる。
増資で得た資金で買った芝公園と千葉は、賃料の上昇と安定した収益を両立でき、1 口あたりの利益を押し上げる。
慎重な見方
低金利が作った値段だ。鑑定の利回りは 3% 台、10 年国債が 3% の世界ではほとんど差が無い。利回りが 4% 台半ばに上がれば、ビルの価値は 2 割台半ば下がり、借入があるので投資主の取り分はその倍近い速さで減る。LTV は帳簿で 50% 台と高く、鑑定の利回りが上がるとこの余裕は消える。
利払いも重い。平均 1.19% の借入が 3% 台半ばに変われば、年の利払いは 3 倍近くになる。残りの期間は 2.8 年と短く、2027 年 3 月には 175 億円のブリッジローンが期限を迎える。変動金利の比率を 30% まで上げる方針もあり、金利の上昇がそのまま響く。
資本の使い方が投資主に不利だ。自己投資口を買って消却した半年後に、NAV の 8 割弱で増資した。報酬は資産規模に連動し、増資で資産が増えるほど報酬も増える。
分配金は売却益と積立の取り崩しに頼る。巡航の利益は 2027 年 3 月期に減る見通しで、今の分配の水準を維持する力は弱い。
どちらに重みを置いたか
強気にも言い分はあるが、勝負を決めるのは金利と借入の重さだ。10 年金利 3% を前提にする以上、利払いとビルの利回りの上昇は避けられない。スポンサーの点数が 3 を超えるので、悲観の確率は厚くした。中立を 34% に置き、悲観側を合わせて 38% とした。楽観は金利が今のまま止まる筋書きで 8%。筆者は、この REIT の賃料を上げる力と物件の質は認める。ただ結論は変わらず、割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 72,676 円795 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 38,447 円421 億円)。 今の値に割り戻すと 54,979 円602 億円、今との差 −47.1%、 期待の年率 +0.7%(資本コスト 9.2%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 228,837 円2,504 億円 | 50,812 円556 億円 | +169.2% | +10.4% | 22,372 円245 億円 |
| やや楽観 | 20% | 110,763 円1,212 億円 | 45,968 円503 億円 | +50.8% | +4.2% | 31,346 円343 億円 |
| 中立 | 34% | 71,923 円787 億円 | 41,033 円449 億円 | +8.7% | +0.8% | 38,405 円420 億円 |
| やや悲観 | 22% | 28,239 円309 億円 | 32,534 円356 億円 | −41.5% | −5.2% | 13,370 円146 億円 |
| 悲観 | 16% | 9,687 円106 億円 | 25,497 円279 億円 | −66.1% | −10.3% | 5,630 円62 億円 |
| 加重平均 | 100% | 72,676 円795 億円 | 38,447 円421 億円 | +7.0% | +0.7% | 111,123 円1,216 億円 |
今の株価時価総額 103,900 円1,137 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 金利が止まり、賃料の増額が長く続く 利益 55 億円 · PBR 2.4 倍 · 株価時価総額 228,837 円2,504 億円
東京と主要都市の本社需要が強く、増額改定が続く。賃料は物価並みの年 3% で上がり、稼働は 99% を保つ。NOI は 10 年で 3 割台半ば伸びる。
借り換えの金利は AA マイナスの格付けで 3.3% にとどまる。不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 2.92% のまま変わらない。時価総額は 2,504 億円と今の 2.2 倍になる。売却益や積立の分配も続き、投資主の取り分は今の値段を上回る。
筆者はこの筋書きを、前提の金利から外れる分だけ低く見る。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びがそれを上回り、償却を引いた後の利益も毎年増えていく。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,196(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.3%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 183 億円・営業利益 113 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 134 − 資本的支出 27) ÷ キャップ 2.92% − 純負債 1160 = 2504 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 2.92% で、今の値付けが 10 年続く所(オフィスの下限 3.5% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:10 年金利が今の 3% 前後で止まり、増額改定が長く続く筋書き。前提の金利から外れるので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料は物価に近く伸び、利回りの上昇は小さい 利益 45 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 110,763 円1,212 億円
空室は低いまま推移し、賃料は年 2.5% で上がる。稼働は 98.5% を保つ。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びが上回り、NOI は 10 年で 3 割弱伸びる。
借入は 3.4% 前後へ借り換わり、利払いは今の 3 倍近くになる。純利益は今より 2 割ほど減る。ビルの利回りは 4.05% に上がり、ビルの価値は今の鑑定を大きく下回る。
増額改定による押し上げは続くが、物価の上昇には追いつかない。自己投資口の買い入れより、増資を選ぶ可能性もあり、1 口の価値が削られる心配は残る。
含み益の売却による分配の上乗せもあるが、通常の利益には数えない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,185(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.9%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 173 億円・営業利益 104 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 124 − 資本的支出 28) ÷ キャップ 4.05% − 純負債 1170 = 1212 億円。キャップは中立 4.4% から 0.35% 下げた。
確率:増額改定が進み、ビルの利回りの上昇が小さい筋書き。20%。
中立 34% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 34 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 71,923 円787 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3〜4 年で 3.5% へ借り換わる。年の利払いは今の 15 億円から 41 億円へ増える。賃料は年 2% で上がるが、新築の供給で稼働は 97.5% へ少し下がる。経費は物価並みの 3% で増え、NOI は 10 年で 1 割台半ばしか伸びない。
減価償却は昔の取得原価のままなので、会計の利益は利払いの増加ほどは減らない。それでも純利益は今の 6 割ほどに細る。修繕と更新の費用は築年とともに 1.3 倍に膨らみ、償却を上回る。
ビルの利回りは 4.4% に上がり、ビルの価値は今の鑑定より 3 割以上低い。負債は減らず、投資主の取り分は今の自己資本の 7 割ほどになる。NAV 割れでも増資をする癖があり、規模は据え置きと置いたが、希薄化の心配は残る。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,163(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 163 億円・営業利益 94 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 114 − 資本的支出 28) ÷ キャップ 4.40% − 純負債 1180 = 787 億円。キャップは都心と主要都市の中大型オフィスの中立 4.4%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.6%)。今の鑑定の利回り 3.7% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 34%。
やや悲観 22% 供給過多で賃料が伸びず、利回りが上がる 利益 15 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 28,239 円309 億円
大型の新築ビルが続き、テナントは新しいビルへ移る。大阪・福岡・札幌のビルは賃料の改定で増額が取れず、平均の賃料は年 1% しか上がらず、稼働は 95.5% へ落ちる。豊洲のように大口が抜けるビルは回復が遅れる。経費は物価で増え、NOI は今より 1 割ほど増えるにとどまる。
借入は 3.75% へ借り換わり、純利益は今の 3 分の 1 まで細る。分配は大きく減る。ビルの利回りは 4.65% へ上がり、ビルの価値は今の鑑定の 6 割台に下がる。LTV は 6 割に近づき、格付けの引き下げで借り換えの上乗せが増える。
スポンサーが物件を引き取る支えはありうるが、その値段が投資主に有利とは限らない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,118(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 145 億円・営業利益 76 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 96 − 資本的支出 26) ÷ キャップ 4.65% − 純負債 1200 = 309 億円。キャップは中立 +0.25%。
確率:2027 年以降の大型供給と在宅の定着で、中大型ビルから借り手が離れる筋書き。22%。
悲観 16% 金利の上振れと不況が重なり、物件の価値が負債に迫る 利益 −4 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 9,687 円106 億円
金利は 3% を超えて上がり、不動産の売りが重なる。借り換えの金利は 4.4% に上がり、利払いは今の 4 倍になる。不況で企業は床を減らし、稼働は 93%、賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。経費を年 2% に抑えても、NOI は今より小さくなる。
純利益はほぼゼロになり、分配は止まる。配らずに残した現金で借入を少しずつ返す。ビルの利回りは 4.9% へ上がり、物件の価値は負債の 1.1 倍ほどにまで縮む。投資主に残るのは、市況が戻れば取り戻せる見込みの分だけだ。清算されない限り、ビルを売って NAV を受け取ることはできない。
- オフィスビルの賃貸:数量 2,063(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.2%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 128 億円・営業利益 64 億円。稼働 93%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 84 − 資本的支出 22) ÷ キャップ 4.90% − 純負債 1150 = 106 億円。キャップは中立 +0.5%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:リーマン級の不況と金利の上振れが重なる筋書き。借入の重さとスポンサーの点数を考え 16% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィスビルの賃貸
東京都心・千葉・大阪・福岡・札幌などの中大型オフィス 18 棟を企業に貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.2%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,180 | 6.2% | 135 | 80 |
| 10 年後 中立 | 2,163 | 7.5% | 163 | 94 |
取り方:2026 年 3 月期の半期の NOI 41 億円から、期中・期末後の取得(福岡・新大阪・千葉・芝公園)の通年の寄与を加えた年額の NOI を 99 億円とし、NOI 率 73% で収入を年額 135 億円と置いた。帳簿価額 2,218 億円(期末の 2,089 億円に芝公園を足した)× 期末の稼働 98.3% で数量、収入 ÷ 数量で価格。セグメントの利益は NOI から減価償却 19 億円を引いた額。中立の価格が物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料が契約の更新ごとに遅れて上がり、物価の 3 分の 2 しか転嫁しないと見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 1.19% の借入が 3% 台半ばへ借り換わると、年の利払いは 26 億円ほど増える。今の年の利益の半分を超える。残りの期間は 2.8 年と短く、2027 年 3 月には 175 億円のブリッジローンが期限を迎える。
ビルの利回りの上昇
鑑定の利回りは 3% 台と低く、10 年国債 3% の世界では保てない。利回りが 1 ポイント上がるとビルの価値は 2 割台半ば下がり、LTV は帳簿で 6 割に近づく。
NAV 割れの増資
2026 年 4 月に NAV の約 8 割で公募増資をした。直前に自己投資口を買って消却していた。同じことが繰り返されれば、1 口の価値が削られる。
変動金利の拡大
変動金利の比率の上限を 10% から 30% へ引き上げる方針。金利の上昇がそのまま利払いに響く。
売却益と積立への依存
2027 年 3 月期は積立を 42 億円取り崩して分配を維持する。巡航の利益だけでは、今の分配の水準を保てない。
大口テナントの退去
豊洲では 2026 年 7 月に大口テナントが退去する。埋め戻しは進むが、フリーレントの期間は収入が減る。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- ビルの利回りの上昇は小さく、借り換えの金利も 2.5% 前後にとどまる。中立よりやや楽観に近づき、割高の度合いは縮む。
- 巡航の利益が分配を上回る
- 賃料の増額が経費と利払いを上回った証拠になる。楽観の筋書きに近づく。
- NAV 割れのまま再び増資を行う
- 1 口の価値がさらに薄まる。スポンサーの点数を大きく上げる。
- 自己投資口の買い入れを再開する
- NAV との差が縮まり、資本の使い方の評価を上げる。ただし借入で賄うなら金利の重さが増す。
- 格付けが AA マイナスを下回る
- 借り換えの上乗せが増え、やや悲観に近づく。
見ておくもの
- 平均調達金利と変動金利の比率
- 巡航の利益と分配のずれ
- 継続鑑定の利回り(キャップレート)
- 増資と自己投資口の買い入れの方針
- 簿価 LTV
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回りより高い。NAV 割れ(今は NAV の約 7 割)を割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.68% を足した 9.18%。事業は傾いていないので extra は置かない。