結論
投資法人みらいは、オフィス・ホテル・商業施設などを 44 物件、取得価格で約 1,800 億円持つ複合型の REIT だ。三井物産系の運用会社とイデラ キャピタルがスポンサーにつく。筆者の結論は、今の値段はやや割高ということである。いちばんの理由は借入の重さにある。
借入は鑑定評価額の 46% に達し、平均の金利は 0.98%、残りの期間は 2.9 年しかない。10 年たてば借入のほぼ全部が 3% 台に借り換わり、年の利払いは今の 9 億円から 33 億円ほどに増える。賃料が物価の 6 割ほどで伸びても、純利益は今の 7 割に縮む。分配もそれに連れて細る。
物件の値段も、今の鑑定の利回りが 10 年金利とほとんど変わらない水準にある。利回りが用途なりの水準に戻ると、物件の価値は鑑定を下回る。NAV を 3 割下回る値段は、この二つをおおむね織り込んでいるが、まだ足りない。今の値段は、10 年金利が今より低く戻る前提の値段だと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この REIT は持ち続けたい事業とは言いにくい。物件の入替で含み益を出す腕はある。それでも、借入が重く、期間が短い。金利が 3% の世界に移ると、投資主の取り分は利払いに削られる。
今の純利益は年 51 億円ある。10 年後には利払いが 24 億円ほど増え、賃料の伸びはその半分も埋めない。純利益は 37 億円前後まで細る。分配が細れば、投資口の値段も上がりにくい。
NAV を 3 割下回る値段は安く見える。だが NAV は鑑定の値段で、清算されない限り投資主の手には入らない。鑑定の利回りが用途なりに戻れば、NAV 自体が縮む。
筆者が見たいのは、自己投資口の取得の実行と、借入の比率を 40% 台前半に下げる動きだ。この二つがそろえば、評価を変える。逆に、NAV を下回る値段での増資がまた出れば、評価はさらに下げる。持ち続けたいかと問われれば、今の形のままでは答えは否だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、オフィスとホテルの賃料だ。2026 年 4 月期の半年で賃貸事業収入は 61 億円、償却を除く費用を引いた NOI は 45 億円だった。NOI の 55% をオフィス、22% をホテル、15% を商業施設が稼ぐ。残りはデータセンターや整備工場の底地などだ。
オフィスは品川シーサイドパークタワーや新宿イーストサイドスクエアなど首都圏の大型と、大阪・名古屋の中規模ビルが中心になる。期末の稼働率は 97.8% と高い。ホテルは秋田・北上・伊勢・新潟などのバジェット型が多く、一部は売上に連動する変動賃料で貸す。訪日客と国内旅行の波がそのまま賃料に出る。
借入は 940 億円で、三井住友銀行が 4 分の 1 を貸す。平均の残りの期間が 2.9 年と短く、2027 年 4 月までに 180 億円が返済期限を迎える。
運用は物件の入替が軸だ。値上がりした物件を売り、その益を分配に回しながら、利回りの高い物件に買い替える。THINGS 青山は鑑定を上回る値段で売り、熊谷のホテルを買う。スポンサー 2 社の持分はあわせて 2.1% にとどまる。
優良さと弱いところ
物件の質は複合型 REIT の中で中位だ。首都圏の大型オフィスは強いが、地方のバジェットホテルは築年が古く、建物の更新に費用がかかる。1985 年築の物件もある。
強みは二つある。一つめは、物件の入替で含み益を実現してきた運用の腕だ。上場以来の売却益は累計 25 億円を超え、1 口の NAV は上場時から 2 割増えた。二つめは、格付けが JCR で AA- と高いことだ。借り換えの上乗せ金利は小さくて済む。
弱みは三つある。ひとつは借入の重さで、鑑定ベースで 46%、総資産ベースで 49% に達する。ふたつめは、2021 年と 2023 年の公募がどちらも NAV を下回る値段だったこと。2023 年は NAV の 8 割弱で口数を増やした。みっつめは、スポンサーの持分が 2.1% と薄く、運用報酬が NOI の 11.5% と軽くないことだ。報酬は資産の規模と取得に連動し、規模を追う動機が残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
複合型の REIT は、用途ごとの景気の違いで稼ぎを均す。オフィスは東京の空室が 3% 前後まで締まり、賃料は上げの局面にある。ただ 2027 年以降も大型の新築が続き、賃料が上がる力は物価の 3 分の 2 ほどだと筆者は見る。大阪・名古屋の中規模ビルは、供給は細いが、テナントの層が薄い。
ホテルは訪日客の回復で客室単価が上がった。この REIT の変動賃料もその恩恵を受けている。ただ、2026 年は万博の反動と中国からの客の減少で、一部のホテルの売上が落ちた。景気が崩れれば、ホテルの賃料はいちばん先に落ちる。
商業は都市型の店舗と郊外のスーパーが中心で、賃料はほぼ固定だ。物価が上がっても賃料は追いつきにくい。
金利の 10 年は、すべての用途の物件の利回りを押し上げる。10 年国債が 3% なら、用途を混ぜた期待キャップは 4.6% 前後になる。今の鑑定の NCF 利回りは 3.5% で、借入の新しい金利 3.4% とほぼ同じだ。借りて買っても利ざやが出ない値段である。この差が、物件の価値を鑑定より 2 割ほど下げる。借入の比率が高い REIT ほど、その下げが投資主の取り分に大きく響く。
資本政策と M&A
資本政策の柱は、物件の入替と借入の運営だ。直近 5 年の公募増資は 2021 年 12 月と 2023 年 11 月の 2 回で、どちらも 1 口の NAV を下回る値段だった。2023 年は発行価額が NAV の 78% で、既存の投資主の取り分を薄めた。
今は投資口が NAV を 3 割下回るので、公募はできない。会社は入替の益と内部留保を使い、自己投資口の取得を検討すると説明する。まだ実行はしていない。筆者は、言葉より実行を見たい。
借入は総資産の 49% と、運用の上限に近い。新しい物件を借入で買う余地は 20 億円ほどしかない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
NAV に対する割引が大きい。投資口は 1 口の NAV を 3 割下回り、物件を鑑定どおりに売れれば、その差が投資主に戻る。実際、THINGS 青山は鑑定を上回る値段で売れた。都心の物件の取引の値段は、上場の REIT の値段よりずっと高い。
ホテルの変動賃料は物価に強い。客室単価は毎日つけ替えられ、訪日客は 10 年で増える。オフィスも東京の空室が締まり、賃料の改定は上げの方向だ。フリーレントの解消も効く。
格付けは AA- で、借り換えの上乗せは小さい。固定の比率は 86% あり、金利の上がり方は数年に分かれる。入替の益と自己投資口の取得を組み合わせれば、1 口の分配は守れる。三井物産の後ろ盾で、物件の情報も入りやすい。パイプラインには 150 億円、利回り 4.6% の物件が控え、借入の余力を使えば NOI を積み増せる。今の値段は、この運用の腕をほとんど評価していない。金利の上昇がいったん止まれば、REIT 全体の値段が戻る局面も来る。その時、割引の大きい銘柄ほど戻りが大きい。
慎重な見方
借入が重すぎる。鑑定ベースで 46%、総資産ベースで 49% あり、残りの期間は 2.9 年しかない。10 年後の利払いは今の 3 倍を超え、純利益の 3 割を食う。賃料の伸びで埋まる額ではない。
ホテルの多くは地方のバジェット型で、築年も古い。訪日客が減れば、変動賃料はすぐ消える。2026 年にも万博の反動と中国の客の減少で売上が落ちた。改装の費用も膨らむ。
スポンサーの持分は 2 社で 2.1% と薄く、NAV 割れの公募を 2 回した。運用報酬は資産の規模と取得に連動し、規模を追う動機がある。NAV の割引は、この構造への値引きだ。
今の鑑定の利回りは借入の新しい金利と変わらない。用途なりの利回りに戻ると、物件の価値は 2 割下がり、投資主の取り分はそれ以上に縮む。NAV の割引は罠で、割安の印ではない。入替の益は年に数億円で、利払いの増加の数分の一にすぎない。物件を売れば NOI も減る。
どちらに重みを置いたか
借入の重さと期間の短さという慎重な見方の論点は、数字で確かめられる。強気の見方の入替の益は確かにあるが、年に数億円で利払いの増加を埋めきれない。中立を最も厚く置き、スポンサーの点数が 3 を超えるので悲観に 15% を置いた。確率は悲観側にやや寄せた。強気の見方が勝つには、金利が今より低く戻るか、自己投資口の取得で 1 口の価値を積み増す動きが要る。今はどちらも見えていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/04 期)
確率で加重した株価時価総額 35,104 円670 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 21,652 円413 億円)。 今の値に割り戻すと 27,425 円523 億円、今との差 −28.3%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 9.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 81,313 円1,551 億円 | 26,423 円504 億円 | +181.7% | +10.9% | 8,619 円164 億円 |
| やや楽観 | 20% | 60,710 円1,158 億円 | 24,955 円476 億円 | +124.0% | +8.4% | 17,133 円327 億円 |
| 中立 | 37% | 34,759 円663 億円 | 23,120 円441 億円 | +51.3% | +4.2% | 21,415 円408 億円 |
| やや悲観 | 20% | 15,623 円298 億円 | 19,188 円366 億円 | −9.0% | −0.9% | 6,962 円133 億円 |
| 悲観 | 15% | 3,146 円60 億円 | 14,365 円274 億円 | −54.2% | −7.5% | 2,627 円50 億円 |
| 加重平均 | 100% | 35,104 円670 億円 | 21,652 円413 億円 | +48.4% | +4.0% | 56,756 円1,083 億円 |
今の株価時価総額 38,250 円730 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 今の鑑定の値付けが続き、ホテルが伸びる 利益 49 億円 · PBR 1.8 倍 · 株価時価総額 81,313 円1,551 億円
10 年金利は 3% を下回って落ち着き、AA- の格付けで借り換えは 3.2% で済む。訪日客は増え続け、ホテルの変動賃料が伸びる。オフィスの賃料改定も上げが続き、賃料全体は年 2.5% で伸びる。稼働は 99% を保つ。
物件の利回りは今の鑑定の 3.55% のまま 10 年続き、物件の価値は鑑定並みを保つ。入替の益は分配と自己投資口の取得に回る。
それでも利払いは今の 3 倍を超え、純利益は今とほぼ同じにとどまる。物件の価値が保たれる分、投資主の取り分は大きく増える。三井物産の物件情報を使った入替も続き、NOI の伸びを上積みする。
- 複合(オフィス・ホテル・商業ほか)の賃貸:数量 1,801(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 157 億円・営業利益 96 億円。稼働 99%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 114 − 資本的支出 24) ÷ キャップ 3.55% − 純負債 975 = 1551 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り 3.53% 近く(楽観の下限は用途の下限と今の NCF 利回りの低い方)。
確率:金利が 3% を下回って落ち着き、鑑定の利回りが今のまま続く筋書き。借入が重く、上振れの余地は限られるので 8%。
やや楽観 20% 賃料が物価に近く伸び、利回りは用途の下限近くに 利益 44 億円 · PBR 1.3 倍 · 株価時価総額 60,710 円1,158 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借り換えは 3.3% で済む。オフィスの賃料は年 2% 強で上がり、ホテルの変動賃料も物価並みに伸びる。賃料全体は年 2.2% で伸び、稼働は 98.5% を保つ。
経費は年 3% で増えるので、NOI は 10 年で 2 割ほど伸びる。利払いは今の 9 億円から 32 億円に増え、純利益は今の 85% ほどになる。
物件の利回りは 3.9% にとどまり、物件の価値は鑑定をわずかに下回る程度だ。入替で含み益を実現し、自己投資口の取得も始める。借入の比率は少しずつ下がり、格付けは保たれる。
- 複合(オフィス・ホテル・商業ほか)の賃貸:数量 1,792(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.4%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 151 億円・営業利益 90 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 108 − 資本的支出 25) ÷ キャップ 3.90% − 純負債 980 = 1158 億円。キャップは用途の下限を NOI の比で混ぜた 3.7% より少し上。
確率:賃料の改定と変動賃料が想定より強く、物件の利回りの戻りが小さい筋書き。20% とした。
中立 37% 借り換えで純利益が 3 割細り、利回りは用途なりに戻る 利益 37 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 34,759 円663 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 3〜4 年のうちに 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の約 9 億円から 33 億円に増える。賃料は年 1.85% で伸び、稼働は 97.5% へ少し下がる。
経費は年 3% で増えるので、NOI は 10 年で 13% しか伸びない。純利益は今の 51 億円から 37 億円ほどに減り、分配も同じだけ細る。
物件の利回りは用途を混ぜて 4.6% に戻り、物件の価値は鑑定を 2 割ほど下回る。借入の比率が高いので、投資主の取り分は物件の価値の下げ以上に縮む。増資は投資口が NAV に戻るまで控える。
- 複合(オフィス・ホテル・商業ほか)の賃貸:数量 1,774(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.2%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 145 億円・営業利益 84 億円。稼働 98%・賃料 年 +1.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 102 − 資本的支出 26) ÷ キャップ 4.60% − 純負債 984 = 663 億円。キャップは用途の表を NOI の比で加重した 4.6%(オフィス 4.25〜4.75%、ホテル・商業 5.0%、その他 4.5%)。今の鑑定の NCF 利回り 3.5% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利 3% に落ち着き、賃料が物価の 6 割ほどで伸びる筋書き。最もありうるので 37%。
やや悲観 20% ホテルが伸び悩み、金利の上乗せが残る 利益 22 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 15,623 円298 億円
10 年金利は 3% を少し上回り、借り換えは 3.7% になる。訪日客の伸びが止まり、地方のバジェットホテルの変動賃料は伸びない。オフィスも大量供給で賃料が横ばいに近い。賃料全体は年 1% しか伸びず、稼働は 96% に下がる。
経費は年 3% で増え、NOI は今とほとんど変わらない。利払いは 36 億円に増え、純利益は今の 4 割ほどになる。
物件の利回りは 4.9% に上がる。借入の比率が高いため、物件の価値の下げが投資主の取り分を大きく削る。公募はできず、入替の益も細る。分配の減り方が値段を押し下げる。
- 複合(オフィス・ホテル・商業ほか)の賃貸:数量 1,747(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 131 億円・営業利益 71 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 88 − 資本的支出 25) ÷ キャップ 4.90% − 純負債 990 = 298 億円。キャップは中立 +0.3%。
確率:訪日客の伸びが止まり、地方の稼働が下がる筋書き。借入の重さを考えて 20%。
悲観 15% 金利の上振れと地方ホテルの不振で、物件の価値が借入を下回る 利益 3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 3,146 円60 億円
金利が上振れし、借り換えは 4.3% になる。景気が崩れ、地方のバジェットホテルは客室単価と稼働の両方が落ちる。オフィスの空室も増え、賃料は 10 年で伸びず、稼働は 93% まで下がる。
NOI は今より 2 割近く減り、利払いが純利益をほぼ食い尽くす。分配はほとんど出なくなり、物件を売って借入を返す。
物件の利回りは 5.3% に上がり、物件の価値は純負債を下回る。投資口に残るのは、再建の見込みの分だけだ。スポンサーの支えは薄く、持分 2.1% の 2 社が資本を入れる保証はない。地方の築古ホテルは買い手が限られ、売る値段も鑑定を大きく下回る。
- 複合(オフィス・ホテル・商業ほか)の賃貸:数量 1,692(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値)→ 売上 115 億円・営業利益 57 億円。稼働 93%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 74 − 資本的支出 22) ÷ キャップ 5.30% − 純負債 1000 = 60 億円。キャップは中立 +0.7%。物件の価値が純負債を下回るため、時価総額は再建の見込みとして今の自己資本の 7% にとどめた。
確率:スポンサーの点数が 3.8 と高く(3 以上で +5 ポイント)、借入が重いので 15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
複合(オフィス・ホテル・商業ほか)の賃貸
首都圏・大阪・名古屋のオフィス、全国のバジェットホテル、都市型の商業施設、データセンターなどの底地 44 物件を貸す。ホテルの一部は売上に連動する変動賃料。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃貸事業収入の比(今 6.8%)。用途ごとの賃料の伸びを NOI の比で混ぜた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/04 | 1,798 | 6.8% | 122 | 74 |
| 10 年後 中立 | 1,774 | 8.2% | 145 | 84 |
取り方:2026 年 4 月期の半年の賃貸事業収入 61.07 億円(売却益なし)を 2 倍して年 122.1 億円。帳簿価額 1,819 億円(44 物件)× 2026 年 8 月末の稼働率 98.8% で数量、収入 ÷ 数量で価格。NOI は収入 − 償却を除く賃貸事業費用で年 90.1 億円、セグメントの利益はそこから減価償却 15.7 億円を引いた額。中立の賃料の伸びは年 1.85%(オフィス 55%×2.0%、ホテル 22%×2.0%、商業 15%×1.5%、その他 8%×1.0%)で、価格は 10 年で 1.20 倍と物価の 1.34 倍に届かない。オフィスは契約が 2〜5 年で物価に遅れ、商業と底地はほぼ固定のため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えによる利払いの増加
平均の金利は 0.98%、残りの期間は 2.9 年。2027 年 4 月までに 180 億円が返済期限を迎える。10 年後には年の利払いが今の 9 億円から 33 億円ほどに増え、純利益を 3 割削る。
借入の比率の高さ
借入は総資産の 49%、鑑定の 46% で運用の上限に近い。物件の価値が下がれば比率はさらに上がり、物件の売却か分配の削減で借入を返すことになる。
地方ホテルの変動賃料
ホテルは NOI の 22% を稼ぎ、一部は売上連動の変動賃料だ。訪日客や国内旅行が落ちれば、賃料はすぐ減る。2026 年にも万博の反動で一部の売上が落ちた。
NAV 割れの増資の再発
2021 年と 2023 年の公募はどちらも NAV を下回る値段だった。運用報酬が資産の規模と取得に連動するので、規模を追う増資が再び起きれば 1 口の価値が薄まる。
今後の分かれ目
- 自己投資口の取得を実行する
- 1 口の価値を増やす使い方で、スポンサーの点数を下げる。価値は上に振れる。
- 借入の比率を鑑定の 40% 前後まで下げる
- 借り換えの影響が小さくなり、k の上乗せも減る。
- 10 年金利が 2% 台前半に戻る
- 利払いの増加も利回りの上昇も小さく、今の値段は適正に近づく。
- 訪日客が減り、ホテルの変動賃料が落ちる
- 純利益がさらに細り、悲観側の確率を上げる。
- NAV を下回る値段で公募増資をする
- 1 口の価値が薄まり、スポンサーの点数を上げる。
見ておくもの
- 借り換えの金利と残りの期間
- 鑑定 LTV と総資産 LTV
- ホテルの変動賃料(月次の運用状況)
- 自己投資口の取得の有無
- 物件の入替の売却益と取得の利回り
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップで割り、負債を引いて出した。キャップは用途の表を NOI の比で加重した 4.6% で、今の鑑定の NCF 利回り 3.5% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は変わらない。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +2.26% を足した 9.76%。事業は傾いていないので extra は置かない。