結論
ヒューリックリート投資法人は、ヒューリックが運用する J-REIT だ。取得価格の 51% がオフィス、22% がホテル、17% が商業施設、10% が有料老人ホーム。2026 年 9 月の交換後で 62 物件、取得価格は 4,497 億円、鑑定評価額は 2026 年 8 月末で 4,899 億円。筆者の結論は、今の値段は割高ということだ。10 年の価値は、今の時価総額を 4 割強下回る。
強みは、立地と運用者との近さだ。物件の 97% が東京圏で、稼働率は 99.7%。ヒューリックが投資口の 14.5% を持ち、2021 年 10 月を最後に増資はなく、NAV 割れの増資はしていない。オフィスの賃料は市場より 8.3% 低く、増額が加速している。
弱みは三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎが NOI から資本的支出を引くと 3.1% と低いこと。ふたつめは、借入の平均金利が 1.01% で、2028 年 8 月期までに約 33% が満期を迎え、借り換えで利払いが増えること。みっつめは、分配が調整後の利益より 16% 多く、交換差益と内部留保で支えられていること。
今の値段は NAV の 0.71 倍で安く見えるが、NAV は低い金利の上の鑑定で、割安の根拠にしない。スポンサーの点数は 2.3 で、悲観の確率は基本のままにした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この投資法人は、東京の駅近のビルを持ち、ヒューリックが 14.5% を出資する、増資に頼らない運用者だ。堀と呼べるほどの強みはないが、賃料の増額が進み、立地の確かさには筋が通っている。
問題は、鑑定に対する稼ぎの低さと、低い金利を前提にした利益だ。NOI から資本的支出を引くと、鑑定評価額に対して 3.1% しかない。借入の平均金利は 1.01% で、3.3% 前後に借り換わると、年の利払いは 32 億円から 74 億円に増える。純利益は 88 億円から 68 億円へ 2 割強削られる。
分配の質も見ておく。2026 年 8 月期の分配は、売却益や交換差益を除いた利益より 16% 多い。差は、譲渡益と内部留保の取り崩しで埋めている。物件の入れ替えは、運用報酬の譲渡報酬を生み、運用会社に有利な形でもある。
今の値段は NAV の 0.71 倍で安く見える。だが NAV は、鑑定の利回り 3.4% の上にあり、筆者は割安の根拠にしない。10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 4 割強下回る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、東京のオフィス・商業施設・ホテル・有料老人ホームの賃料だ。投資法人は建物と土地を持ち、テナントやホテル運営会社、介護事業者に貸して賃料を受け取る。直近 1 年(2025 年 9 月〜2026 年 8 月)の賃貸事業収益は 225 億円で、そこから償却を除く費用を引いた NOI(賃貸の稼ぎ)は 176 億円だった。
物件は 62 ある(2026 年 9 月の交換後)。取得価格の内訳は、オフィス 33 物件(51.4%、NOI 利回り 4.1%)、ホテル 6 物件(22.1%、4.7%)、商業施設 10 物件(17.0%、4.4%)、有料老人ホーム 13 物件(9.5%、4.7%)。エリアは東京圏が 97.1% で、東京 23 区だけで 92.8%。オフィスは駅から 1 分以内が 6 割を超える。
ヒューリックは、都心に小中規模のビルを多く持つ不動産会社で、物件の取得の大半はヒューリックグループから出る。投資法人は、物件を入れ替えて収益性を上げる方針で、交換(買い換え特例の圧縮記帳を使う)を多用する。2026 年 6 月と 9 月に 745 億円の取得と 487 億円の譲渡を行い、さらに 500 億円ほどの入れ替えを目指す。
運用報酬は、総資産に 0.5% を掛けた項と、利益に連動する項などで、直近 1 年で約 28 億円(NOI の 16%)。投資口は 144 万口で、増資は 8 回行い、直近は 2021 年 10 月。
優良さと弱いところ
物件の質は、東京の駅近の立地が強みで、築年のばらつきとホテルの偏りが弱みだ。東京圏が 97%、稼働率は 99.7%。平均築年数は交換後で 21.0 年(オフィス 20.4 年、商業 16.4 年、ホテル 29.2 年、有料老人ホーム 13.7 年)。
強みは三つある。ひとつめは、含み益が 900 億円(含み益率 22.5%)あること。ふたつめは、賃料の上昇が進んでいること。オフィスの賃料ギャップは 8.3% に広がり、9,000 ㎡超の区画で 6.6% の増額を実現した。商業施設も、2027 年 8 月期に約 1,500 ㎡で 23.6% の増額を見込む。みっつめは、ホテルの変動賃料で、2026 年 8 月期は 6.2 億円、予想を 8.9% 上回った。
弱みも三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎの低さ。直接還元利回りの平均は 3.4% で、NOI から資本的支出を引くと 3.1% しかなく、キャップが上がれば物件の価値が大きく縮む。ふたつめは、2026 年 2 月に火災が起きた五反田山手通ビルで、復旧は 2027 年 4 月までかかり、保険金が収益を補う。みっつめは、ホテルが 29 年と古く、設備更新の負担が重いこと。
物件別の鑑定では、直接還元利回りが低く、ヒューリックが取得した新しい物件ほど鑑定の利回りが低い。低い金利の上の値段で、金利が上がればこの利回りが先に動く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オフィスは、東京都心の空室率が 3% 前後に締まり、賃料は上げ局面にある。ただし大型の新築供給が 2027 年以降も続き、在宅の定着で床の需要は実質で横ばいと見る。中立の賃料は名目年 2%。商業は、都市型でも固定賃料が主で、中立は年 1.5%。ホテルは、固定と変動の賃料の組み合わせで、客室単価は物価に強いが、需要が崩れると変動賃料が最も深く落ちる。中立は年 2%。有料老人ホームは、長期の固定契約で中立は年 1.0%。
業種の表では、都心の大型オフィスの期待キャップが 4.25%、地方・中小・築古が 4.75%(担当が 4.5% に置く)、商業とホテルが 5.0%、ヘルスケアが 4.5%。この投資法人は、オフィスが NOI の約 49%(都心 6 区が 65% で 4.25%、その他の 23 区などが 35% で 4.5%、加重して 4.34%)、ホテルが約 24%(5.0%)、商業が約 17%(5.0%)、有料老人ホームが約 10%(4.5%)なので、中立のキャップは 4.63% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から改修費を引いて鑑定評価額で割ると 3.1% で、表より 1.5 ポイントほど低い。これは 10 年金利が 2% 前後の世界の値段で、3% に上がれば表に近づく。
賃料の伸びは、オフィスとホテルが年 2.0%、商業が年 1.5%、有料老人ホームが年 1.0% で、NOI の比で加重した中立は年 1.8%。会社は賃料ギャップの解消で NOI 年 3% の成長を目標にするが、筆者は業種の中立を使う。経費は物価で年 3% 伸びる。
資本政策と M&A
借入は 2026 年 8 月末で 1,951 億円、交換後の今日は 2,163 億円(会社の予想)。有利子負債を鑑定評価額で割った LTV は、8 月末だけだと 39.8% だが、交換後は鑑定評価額を約 5,110 億円と置いて 42.3%。会社の時価 LTV(総資産基準)は 38.4% から 40.4% に上がる。固定金利の比率は 72.5%、平均金利は 1.01%、平均の残りは 3.2 年。格付は JCR の AA(安定的)。
2028 年 8 月期までの 2 年に、グラフから読んで約 640 億円(33%)の満期が来る。会社は、2027 年 2 月期の平均金利を 1.2%、8 月期を 1.4% と見て、政策金利は 2026 年 12 月に 1.5% まで上がる想定を置く。支払利息等は、直近 1 年の 21 億円から、予想の年換算で約 32 億円に増える。
増資は、2014 年の上場から 8 回行い、直近は 2021 年 10 月。それ以降の増資はなく、自己投資口の取得もない。会社は含み益を使った物件入れ替えと、時価 LTV 40% 台前半の維持を掲げる。分配は 2 年計画で高い水準を保ち、内部留保 11.7 億円を取り崩して補う。
運用報酬は、総資産に 0.5% を掛けた項、利益に連動する項、取得・譲渡の報酬。ヒューリックは投資口の 14.5% を持つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
立地が強い。東京圏が 97%、東京 23 区が 93%、オフィスは駅から 1 分以内が 6 割を超える。稼働率は 99.7% で、賃料が市場より 8.3% 低いので、更新のたびに増額が通る。
運用者と近い。ヒューリックが投資口の 14.5% を持ち、役員の報酬の約半分が投資口価格の相対成績に連動する。増資は 2021 年 10 月が最後で、NAV 割れの増資はしていない。取得の大半はヒューリックから来るため、良い物件の情報が先に入る。
含み益が大きい。含み益は 900 億円で、含み益率は 22.5%。直近の取得 5 物件は含み益が 175 億円あり、取得価格より鑑定が 2 割以上高い。この含み益を、物件の入れ替えで分配に変える余地がある。
ホテルの変動賃料が伸び、浅草ビューホテルのリニューアル後の客室は、リニューアル前より RevPAR が 2.5 倍になった。
楽観の筋書きでは、賃料が年 2.8% で伸び、キャップが 4.15% に下がり、時価総額は 2,858 億円と今の 1.4 倍になる。
慎重な見方
鑑定に対する稼ぎが低い。NOI から資本的支出を引くと 3.1% で、10 年国債が 3% の世界では、キャップが 4.63% まで上がる。物件の価値は鑑定を 3 割ほど下回り、含み益 900 億円は消える。
借入が重い。交換後の有利子負債は 2,163 億円で、LTV は 42.3%。平均金利は 1.01% と低く、2028 年 8 月期までに約 33% が満期を迎える。3.3% 前後に借り換わると、年の利払いは 32 億円から 74 億円へ 2.3 倍になる。純利益は 88 億円から 68 億円へ減る。
分配の質が低い。2026 年 8 月期の分配は、譲渡益や交換差益を除いた利益より 16% 多く、内部留保 11.7 億円の取り崩しと入れ替えの益で水準を保っている。入れ替えが続かなければ、分配は調整後の利益に近づく。
運用会社に有利な形でもある。取得・譲渡の報酬は、関連者との取引でも 0.5% 取れ、譲渡は益が出る時だけ報酬が付くため、入れ替えの回数が収益になる。取得の 98% がヒューリックグループ等から、譲渡の 85% がスポンサーへ向かう。
やや悲観の筋書きでは、賃料の伸びが年 0.9% にとどまり、時価総額は 838 億円と今の 4 割強になる。悲観では、純利益が赤字になり、時価総額は 150 億円まで縮む。
どちらに重みを置いたか
東京の駅近の立地、ヒューリックの 14.5% 出資、2021 年以降の増資なし、賃料の増額には、はっきりした根拠がある。ただ、鑑定に対する稼ぎは 3.1% と低く、キャップが 4.63% まで上がれば物件の価値が大きく縮む。借入は 2 年で約 33% が借り換わり、利払いは 2 倍以上になる。中立の価値は今の時価総額を 4 割強下回った。筆者は、NAV に対する安さは値段に入っているが、金利の正常化は入っていないと見る。スポンサーの点数は 2.3 で、悲観の確率は基本のままにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 120,897 円1,741 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 51,851 円747 億円)。 今の値に割り戻すと 84,519 円1,217 億円、今との差 −38.6%、 期待の年率 +2.3%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 319,722 円4,604 億円 | 65,556 円944 億円 | +179.8% | +10.8% | 38,528 円555 億円 |
| やや楽観 | 22% | 152,847 円2,201 億円 | 59,792 円861 億円 | +54.4% | +4.4% | 46,781 円674 億円 |
| 中立 | 38% | 112,153 円1,615 億円 | 54,028 円778 億円 | +20.7% | +1.9% | 63,149 円909 億円 |
| やや悲観 | 20% | 58,194 円838 億円 | 42,778 円616 億円 | −26.7% | −3.1% | 20,194 円291 億円 |
| 悲観 | 10% | 10,417 円150 億円 | 30,556 円440 億円 | −70.2% | −11.4% | 4,097 円59 億円 |
| 加重平均 | 100% | 120,897 円1,741 億円 | 51,851 円747 億円 | +25.5% | +2.3% | 172,749 円2,488 億円 |
今の株価時価総額 137,700 円1,983 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 2.8% で伸び、キャップが今の 3.07% のまま 利益 101 億円 · PBR 2.3 倍 · 株価時価総額 319,722 円4,604 億円
都心のオフィスで賃料の増額が続き、商業の増額とホテルの変動賃料も伸びる。賃料は年 2.8% で伸び、稼働は 99.5% を保つ。
借り換えは 3.1% で済み、年の利払いは 70 億円と今の 2.2 倍になる。それでも NOI は 178 億円から 234 億円へ 31% 増え、純利益は 101 億円と今より 15% 増える。資本的支出は年 28 億円(今の 1.3 倍)。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.07% のまま変わらない。時価総額は 4,604 億円と今の 2.3 倍になる。
含み益を使った入れ替えが続き、分配の水準が保たれる。
- オフィス・ホテル・商業・老人ホームの賃貸:数量 4,228(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.1%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.4%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 301 億円・営業利益 204 億円。稼働 100%・賃料 年 +2.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 234 − 資本的支出 28) ÷ キャップ 3.07% − 純負債 2106 = 4604 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.07% で、今の値付けが 10 年続く所(複合の下限 3.25% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:ギャップの解消が進んでオフィスの賃料が伸び、ホテルの変動賃料が伸び続け、金利が落ち着く筋書き。上振れの幅は大きいが、物件の入れ替えの益に頼る面もあるので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.3% で伸び、借り換えは 3.2% 利益 84 億円 · PBR 1.1 倍 · 株価時価総額 152,847 円2,201 億円
オフィスの増額とホテルの変動賃料の伸びが数年続き、その後は物価並みに落ち着く。賃料は年 2.3% で伸び、稼働の係数は 0.99 になる。借り換えは 3.2% で、年の利払いは 72 億円になる。
NOI は 218 億円と 22% 増え、純利益は 84 億円と今の 96% になる。資本的支出は年 29 億円に増える(築年の経過とホテルの改装を含む)。
物件の利回りは 4.39% に上がる。時価総額は 2,201 億円で、今の 1.1 倍になる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。
- オフィス・ホテル・商業・老人ホームの賃貸:数量 4,207(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.4%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 285 億円・営業利益 188 億円。稼働 99%・賃料 年 +2.3%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 218 − 資本的支出 29) ÷ キャップ 4.39% − 純負債 2110 = 2201 億円。キャップは中立 4.63% より 0.24% 低い 4.39% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 賃料は物価に負け、利払いが 2.3 倍になる 利益 68 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 112,153 円1,615 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は数年で 3.3% へ借り換わる(格付 AA の水準)。年の利払いは今の 32 億円から 74 億円へ増える。賃料は年 1.8% で伸び、稼働の係数は 0.985 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 178 億円から 203 億円へ 14% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 88 億円から 68 億円へ 2 割強減る。
物件の利回りは 4.63% に上がる。資本的支出は年 31 億円と、今の 1.4 倍に増える(会社の予想の年 24 億円を上回る。築 20 年を超えるため)。
時価総額は 1,615 億円で、今を 2 割下回る。10 年の長さに割り引くと、今の値段を 4 割強下回る。
- オフィス・ホテル・商業・老人ホームの賃貸:数量 4,185(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.5%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.4%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 270 億円・営業利益 172 億円。稼働 98%・賃料 年 +1.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 203 − 資本的支出 30) ÷ キャップ 4.63% − 純負債 2116 = 1615 億円。キャップは業種の表を NOI の比で加重した 4.63% (東京都心のオフィス 4.25%、その他のオフィス 4.5%、ホテル・商業 5.0%、有料老人ホーム 4.5%)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.1%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 1.8% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%(スポンサーの点数が 2.3 で、悲観の確率は基本のまま 10%)。
やや悲観 20% 賃料の伸びが止まり、金利が高めに落ち着く 利益 35 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 58,194 円838 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.6% になる。大型の新築供給と在宅勤務の浸透で空室が増え、ホテルの変動賃料は細り、賃料は 10 年で年 0.9% の伸びにとどまる。稼働の係数は 0.97 に落ちる。
経費は物価で伸び、NOI は 177 億円と今とほぼ同じになる。年の利払いは 81 億円で、純利益は 35 億円と今の 4 割に縮む。資本的支出は年 32 億円。
物件の利回りは 4.88% に上がる。時価総額は 838 億円で、今の 4 割強になる。
借入の 3 割近く(固定比率 72.5% の残り)が変動金利のため、金利の高止まりがそのまま利益に響く。
- オフィス・ホテル・商業・老人ホームの賃貸:数量 4,122(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.9%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.4%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 244 億円・営業利益 146 億円。稼働 97%・賃料 年 +0.9%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 176 − 資本的支出 32) ÷ キャップ 4.88% − 純負債 2124 = 838 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の頭打ちと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:オフィスの需要の弱さとホテルの需要の鈍化で賃料が伸びず、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 10% 賃料の下落とホテルの失速、金利の上振れ 利益 −23 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 10,417 円150 億円
不況でオフィスの空室が増え、ホテルの需要が落ち込む。賃料は年 0.8% ずつ縮み、稼働の係数は 0.93 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.2% になる。年の利払いは 99 億円で、NOI は 133 億円と今の 7 割半に減る。純利益は 23 億円の赤字になり、分配は止まる。資本的支出は 33 億円。
物件の価値は、借入と預り敷金を引くとマイナスになり、投資主の取り分は、再建と増資の余地の分として 150 億円を置いた。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
ヒューリックが 14.5% を持つので、支援や物件の入れ替えで持ちこたえる余地は残るが、この筋書きでは頼らない。
- オフィス・ホテル・商業・老人ホームの賃貸:数量 3,952(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 5.0%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.4%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 197 億円・営業利益 103 億円。稼働 93%・賃料 年 -0.8%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 133 − 資本的支出 33) ÷ キャップ 5.13% − 純負債 2246 = 150 億円。キャップは中立 +0.5%。賃料の下落と稼働の低下で NOI が 4 分の 1 減り、物件の価値から借入を引いた額が消える。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 2.3 なので、悲観の確率は基本の 10%。不況でオフィスの空室とホテルの需要の落ち込みが同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィス・ホテル・商業・老人ホームの賃貸
東京圏のオフィス 49%、ホテル 24%、商業 17%、有料老人ホーム 10%(NOI の比)の 62 物件を貸す。ホテルは固定賃料に運営の売上に連動する変動賃料を足す形が多い。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.4%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 4,224 | 5.4% | 228 | 148 |
| 10 年後 中立 | 4,185 | 6.5% | 270 | 172 |
取り方:直近 1 年(2025 年 9 月〜2026 年 8 月)の賃貸事業収益 225 億円(売却益・交換差益 24 億円は除く)を、2026 年 9 月の交換と 6 月の取得の通年化で組み替え、年 228 億円にした。簿価は交換後で約 4,249 億円(8 月末の 3,998 億円に、取得 486 億円を足し、譲渡した 3 物件の簿価約 235 億円を引いた概算)× 稼働率 99.4% が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用 50 億円を引いて 178 億円、セグメントの利益は減価償却 30 億円を引いた額。NOI は会社の 2027 年 2 月期・8 月期の予想(保険金を除く)の合計 178 億円とも合う。中立の価格は 10 年で 1.20 倍で、物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料の転嫁が契約の更新で遅れ、商業・老人ホームの固定賃料が物価に連動しないため(業種ノート)。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.1%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 4.63% まで上がると、物件の価値が 3 割ほど縮み、含み益 900 億円が消える。
借入の借り換え
平均金利は 1.01%、平均の残りは 3.2 年。2028 年 8 月期までに約 640 億円(33%)の満期が来る。3.3% 前後へ上がると、年の利払いは 32 億円から 74 億円へ増える。
分配の質と入れ替えへの依存
2026 年 8 月期の分配は、売却益と交換差益を除いた利益より 16% 多い。内部留保 11.7 億円の取り崩しと、入れ替えの益で水準を保っており、入れ替えが止まれば分配は下がる。
ホテルの変動賃料
ホテルは NOI の約 24%。変動賃料は需要次第で、固定費の重さで収入が大きく振れる。ホテルは築 29 年と古く、設備更新の負担も重い。
五反田山手通ビルの火災
2026 年 2 月に火災が起き、復旧は 2027 年 4 月まで。会社は保険金収入を 2027 年 8 月期に 7.3 億円と見込むが、金額と時期は保険会社との交渉次第。
スポンサー依存と関連者取引
ヒューリックが 14.5% を持ち、物件の取得の大半がスポンサーグループから、譲渡の大半がスポンサー向け。取得・譲渡の値段は、鑑定評価額と見比べる必要がある。
今後の分かれ目
- オフィスの賃料の増額が想定を上回り、年 4% 以上伸びる
- NOI が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割高の度合いが縮む。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- ホテルの変動賃料が、2 期続けて前年を下回る
- ホテルの需要の頭打ちが確かめられ、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。分配と NAV が減れば、スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 入れ替えが止まり、分配が調整後の利益まで下がる
- 分配の水準が実力に落ちる。今の値段の下支えが外れ、割高の度合いが強まる。
見ておくもの
- オフィスの賃料増減率と賃料ギャップ
- 借り換えの金利と 2028 年 8 月期までの満期
- 資本的支出と、減価償却との比
- 調整後の利益と分配の差(入れ替えの益・内部留保の取り崩し)
- スポンサーの持分と、物件の取得・譲渡の値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは用途ごとの表を NOI の比で加重した 4.63% で、今の NCF 利回り 3.1% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.54% を足した 9.04%。用途の偏りは cycle に反映したので extra は置かない。