結論
日本ビルファンドは、三井不動産が後ろ盾に立つ国内最大のオフィス REIT だ。東京都心を中心に 70 棟のビルを持ち、稼働は 98% 台と申し分ない。それでも筆者の結論は割高である。今の値段は、借入の金利が 1% に届かず、ビルの利回りが 3% 前後で売買される低金利の世界をそのまま 10 年先へ延ばした値段だからだ。
10 年金利が 3% に落ち着く世界では、二つの重しが同時に効く。一つは利払いだ。6,000 億円を超える借入が借り換えのたびに 3.5% 前後へ移り、今の利益の半分近くが金利に消える。もう一つはビルの値段そのものだ。投資家が求める利回りが上がれば、同じ賃料でもビルの価値は 3 割ほど下がる。
賃料は上がる。都心の空室は締まり、物価の 3 分の 2 ほどは賃料に転嫁できると筆者は見る。ただ経費も物価で増え、修繕の費用は建築費とともに膨らむ。減価償却は昔の取得原価のままなので会計の利益は見かけより持ちこたえるが、現金の出入りで見ると余裕は薄い。物件の質は一級だが、払う値段に安全域は無い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良いビルと良い投資は別物だ。日本ビルファンドのビルは一級で、10 年後も都心で働く人を受け止めているだろう。堀、つまり他がまねしにくい強みは立地にある。だが投資主が受け取るのは、ビルが生む賃料から利払いを引いた残りだけだ。
この残りが、金利の正常化で細る。今の利払いは低すぎて続かない。借り換えが進むたびに、配れる額は削られる。賃料が物価の 3 分の 2 で上がっても、利払いの増加を埋めきれない。オーナーとしてこの事業を丸ごと持つなら、10 年の配当と 10 年後のビルの価値を合わせても、今の値段の半分ほどの価値にしかならない。
値段に安全域が無い時は、待つのが正しい。金利の世界が変わり、ビルの利回りが 4% を超える水準まで投資口の値段が下がれば、この一級の物件群は魅力的な持ち物になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は単純だ。ビルの床を企業に貸し、賃料を受け取り、経費と利払いを引いた残りのほぼ全部を投資主に配る。2026 年 6 月期の半年で賃料などの収入は約 487 億円、経費を引いた NOI、つまり物件が生む正味の賃料は約 318 億円だった。
物件は丸の内・大手町に近い都心 5 区が中心で、六本木・汐留・西新宿の大型ビルを持つ。最近は豊洲の大型ビルを買い増し、武蔵小杉や札幌の新しいビルも加えた。テナントは大企業が多く、1 社が抜けても穴は小さい。
運用は三井不動産が主な株主の資産運用会社が担う。物件の多くは三井不動産グループから買い、管理も同グループに任せている。賃料の改定は 2〜5 年の契約ごとで、物価が上がってもすぐには賃料に乗らない。この遅れが、物価 3% の世界で利益の伸びを鈍らせる。
借入は約 6,290 億円で、平均の金利は 0.82%、残りの期間は約 5 年だ。投資法人債と長期の借入が中心で、格付けは AA 級と高い。配った後に残る現金はほとんど無く、物件を増やすには新しく投資口を発行するしかない。2026 年 1 月にも公募で約 226 億円を集めた。
優良さと弱いところ
物件の質は国内の REIT で最上位だ。都心の大型ビルは代わりが少なく、景気が悪くても大企業の本社は簡単には出ていかない。稼働 98% 台を長く保ってきた実績がそれを示す。ただし賃料を自分で決める力は無い。オフィスの賃料は市況で決まり、2027 年以降も続く大型の新築ビルの供給と、在宅勤務の定着が上値を抑える。
資本の使い方はおおむね誠実だ。2026 年 1 月の公募は 1 口の純資産(NAV)を上回る値段で行われ、既存の投資主の取り分を薄めなかった。物件の入れ替えでは売却益を出し、それを分配に回している。一方で、物件の多くをスポンサーから買う関係は、買う値段がスポンサーに有利になりやすい形でもある。
弱いのは借入の重さだ。純負債は NOI から報酬を引いた額の約 10 倍で、金利が上がれば利益が大きく削られる。高い格付けは借りやすさを守るが、金利の水準からは守らない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京のオフィス市場は 2025 年から締まり、都心 5 区の空室は 3% 前後まで下がった。賃料は数年ぶりに上げ局面に入っている。ただ筆者は、これを 10 年続く上昇とは見ない。大型ビルの新築は 2027 年以降も続き、働く場所の分散で 1 人あたりの床は増えにくい。床の需要は実質で横ばいと置く。
物価 3% の世界では、オフィスの賃料は契約の更新ごとに遅れて上がる。物価の 3 分の 2、名目で年 2% 前後が中立の見方だ。一方で管理費・光熱費・固定資産税は物価並みに上がる。経費は収入の 35% あるので、NOI の伸びは賃料より遅い。
いちばん大きいのは金利だ。今のオフィスの取引利回りは 3% 台前半で、10 年国債との差は 1〜1.5% しかない。10 年金利が 3% になる世界では、同じ差を保てない。不動産に求める利回りを 6% 前後、NOI の長い伸びを 1.75% とすれば、都心の大型ビルの利回りは 4.25% 前後に落ち着く。今の鑑定の利回りより 1 ポイント以上高い。ビルの値段は 3 割ほど下がる計算になる。
REIT 全体で見ても、借入の金利の上昇と利回りの上昇は同時に来る。オフィスはその両方が最も効きやすい用途だ。
資本政策と M&A
利益のほぼ全部を配るのが REIT の決まりで、内部に利益を残さない。成長の道は、投資口を新しく発行して物件を買うことだけだ。2026 年 1 月の公募は NAV を上回る値段で、ここまでは規律が保たれている。
ただ今の値段は NAV をわずかに下回る。この水準で増資すれば既存の投資主の取り分が薄まるので、しばらく増資による成長は止まる。物件の入れ替え(古いビルを売り、新しいビルを買う)と、売却益の分配が主な手になる。
借入の LTV は 42.6% で、借り増しの余地は約 920 億円ある。ただ借りれば借りるほど、金利の上昇に弱くなる。筆者は、借り増しで規模を追うより、利払いの重さを見て LTV を下げる方が投資主のためになると見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
都心のビルは物価に強い資産だ。土地の値段は物価とともに上がり、建物の費用も上がるので、新しいビルの賃料は高くなる。既存のビルの賃料もそれに引かれて上がる。今の空室は 3% 前後と歴史的に低く、貸し手が強い市場が数年続く。賃料が物価並みに上がれば、NOI は 10 年で 3 割伸び、利払いの増加を吸収できる。
金利についても、10 年金利が 3% まで上がるとは限らない。日本の金利は上がるたびに景気が冷え、止まってきた。もし 2% 前後で止まれば、ビルの利回りも今の水準に近いまま残る。その時の価値は今の値段を上回る。
しかも借入の多くは固定で、残りの期間は 5 年ある。金利の上昇は一度に来ない。その間に賃料の改定が先に効く。格付けは AA 級で、借り換えの上乗せも小さい。三井不動産が後ろにいる以上、物件の取得の機会にも困らない。
都心の一等地は増えない。古いビルが建て替えで減れば、残る一級のビルの価値はむしろ上がる。
慎重な見方
低金利が作った値段だ。今のビルの利回りは 3% 前後で、10 年国債 3% の世界ではほとんど差が無い。そんな値段で不動産を買う投資家はいない。利回りが 4.25% に上がるだけで、ビルの価値は 3 割下がる。借入があるので、投資主の取り分はその倍の速さで減る。
利払いも重い。平均 0.82% の金利が 3.5% になれば、年の利払いは 170 億円近く増える。今の年の利益は約 380 億円なので、その 4 割強が消える。賃料が年 2% 伸びても、経費が 3% で増え、修繕の費用は建築費とともに膨らむ。
オフィスの需要も怪しい。2027 年以降も大型の新築ビルが続き、古いビルから新しいビルへの移転が止まらない。日本ビルファンドのビルにも築 30 年を超えるものがあり、修繕に金がかかる。スポンサーから物件を買う関係は、値段の規律を緩める。
修繕の現金を差し引けば、配れる額はさらに薄い。借りて増やす余地も、金利の高い世界では小さい。
どちらに重みを置いたか
物件の質の議論では強気の見方に分があるが、勝負を決めるのは金利だ。10 年金利 3% を前提にする以上、利払いとビルの利回りの上昇は避けられない。慎重な見方が勝つ。確率は中立を 40% に置き、悲観側を合わせて 32% と厚めにした。楽観は金利が今のまま止まる筋書きで、8% にとどめた。筆者は、物件の質が値段の下支えになることは認めるが、それは割高の度合いを縮めるだけで、結論は変えないと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 74,619 円6,578 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 36,879 円3,251 億円)。 今の値に割り戻すと 57,780 円5,093 億円、今との差 −52.0%、 期待の年率 −0.8%(資本コスト 8.4%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 198,310 円1.75 兆円 | 47,419 円4,180 億円 | +103.9% | +7.4% | 19,658 円1,733 億円 |
| やや楽観 | 20% | 116,937 円1.03 兆円 | 43,131 円3,802 億円 | +32.8% | +2.9% | 32,014 円2,822 億円 |
| 中立 | 40% | 71,503 円6,303 億円 | 38,264 円3,373 億円 | −8.9% | −0.9% | 43,907 円3,870 億円 |
| やや悲観 | 20% | 27,090 円2,388 億円 | 30,834 円2,718 億円 | −51.9% | −7.1% | 11,585 円1,021 億円 |
| 悲観 | 12% | 11,231 円990 億円 | 24,889 円2,194 億円 | −70.0% | −11.4% | 4,334 円382 億円 |
| 加重平均 | 100% | 74,619 円6,578 億円 | 36,879 円3,251 億円 | −7.5% | −0.8% | 111,498 円9,829 億円 |
今の株価時価総額 120,500 円1.06 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.4% を下回るほど割高。
楽観 8% 金利が止まり、都心の賃料が物価並みに上がる 利益 397 億円 · PBR 2.4 倍 · 株価時価総額 198,310 円1.75 兆円
都心のオフィスは貸し手の市場が 10 年続く。新築ビルの賃料が建築費とともに上がり、既存のビルもそれに引かれる。賃料は物価並みの年 3% で上がり、稼働は 99% を保つ。NOI は 10 年で約 4 割伸びる。
金利は借り換えで上がるが、格付けの高さで 3.3% にとどまる。不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 2.96% のまま変わらない。時価総額は 1 兆 7,481 億円と今の 1.6 倍になる。ビルの価値は今の鑑定を上回り、投資主の取り分は大きく増える。三井不動産からの取得も、NAV を上回る増資で続けられる。
筆者はこの筋書きを、前提の金利から外れる分だけ確率を低く見る。
- オフィスビルの賃貸:数量 14,361(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.2%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.8%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 1,319 億円・営業利益 681 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 866 − 資本的支出 140) ÷ キャップ 2.96% − 純負債 7036 = 17481 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 2.96% で、今の値付けが 10 年続く所(オフィスの下限 3.5% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:10 年金利が今の 3% 前後で止まり、都心の賃料が物価並みに上がる筋書き。前提の金利から外れるので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 賃料は物価に近く伸び、利回りの上昇は小さい 利益 322 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 116,937 円1.03 兆円
都心の空室は低いまま推移し、賃料は年 2.5% で上がる。稼働は 98% を保つ。経費は物価並みに増えるが、収入の伸びが上回り、NOI は 10 年で約 2 割伸びる。
借入は 3.4% 前後へ借り換わり、利払いは今の約 3 倍になる。純利益は今より細るが、賃料の伸びで一部を埋める。ビルの利回りは 3.75% に上がり、ビルの価値は今の鑑定をやや下回る。投資主の取り分は今の値段に届かない。新しい増資は NAV 近くの値段で小さく行う。
筆者は、この筋書きでも利払いの増加を賃料で埋めきれず、10 年の分配の合計は今のペースを下回ると見る。
- オフィスビルの賃貸:数量 14,216(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.7%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.8%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 1,243 億円・営業利益 605 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 790 − 資本的支出 140) ÷ キャップ 3.75% − 純負債 7036 = 10308 億円。キャップは中立 4.25% から 0.5% 下げた。
確率:賃料の上げ局面が長めに続き、ビルの利回りの上昇が小さい筋書き。都心の供給と需要の締まりが続けば起こりうるので 20%。
中立 40% 金利の正常化で利払いと利回りが上がる 利益 236 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 71,503 円6,303 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 5 年ほどで 3.5% へ借り換わる。年の利払いは今の約 50 億円から 230 億円へ増える。賃料は年 2% で上がるが、新築の供給で稼働は 96% へ少し下がる。経費は物価並みの 3% で増え、NOI は 10 年で 1 割強しか伸びない。
減価償却は昔の取得原価のままなので、会計の利益は利払いの増加ほどは減らない。それでも純利益は今の 6 割ほどに細り、分配も同じだけ減る。修繕の費用は建築費とともに今の 1.4 倍に膨らみ、償却の現金でまかなう。
ビルの利回りは 4.25% に上がり、ビルの価値は今の鑑定より約 3 割低い。負債は減らないので、投資主の取り分は今の値段の 6 割ほどになる。NAV 割れで増資はできず、規模は据え置きだ。
- オフィスビルの賃貸:数量 13,926(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.3%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.8%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 1,160 億円・営業利益 522 億円。稼働 96%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 707 − 資本的支出 140) ÷ キャップ 4.25% − 純負債 7036 = 6303 億円。キャップはオフィス(都心の大型)の中立 4.25%(要求利回り 6.0% − NOI の伸び 1.75%)。今の鑑定の利回り約 3.0% より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は物価の 3 分の 2 で上がる筋書き。最もありうるので 40%。
やや悲観 20% 供給過多で賃料が伸びず、利回りが上がる 利益 105 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 27,090 円2,388 億円
大型の新築ビルが続き、テナントは新しいビルへ移る。古いビルは賃料を下げて埋めることになり、平均の賃料は年 1% しか上がらない。稼働は 94% へ落ちる。経費は物価で増え、NOI はほぼ今のままだ。
借入は 3.6% へ借り換わり、純利益は今の 3 割を切る。分配は大きく減る。ビルの利回りは 4.75% へ上がり、ビルの価値は今の鑑定の 6 割を下回る。LTV は 6 割近くへ上がり、格付けの引き下げで借り換えの上乗せが増える。投資主の取り分は今の値段の 2 割ほどになる。
スポンサーが物件を引き取る支えはありうるが、その値段は投資主に有利とは限らない。
- オフィスビルの賃貸:数量 13,636(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.5%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.8%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 1,029 億円・営業利益 393 億円。稼働 94%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 576 − 資本的支出 135) ÷ キャップ 4.75% − 純負債 6900 = 2388 億円。キャップは中立 +0.5%。
確率:2027 年以降の大型供給と在宅の定着で賃料が伸びない筋書き。オフィスの循環から十分ありうるので 20%。
悲観 12% 金利の上振れと不況が重なり、物件の価値が負債に迫る 利益 −20 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 11,231 円990 億円
金利は 3% を超えて上がり、不動産の売りが重なる。借り換えの金利は 4.5% に上がり、利払いは今の 6 倍になる。不況で企業は床を減らし、稼働は 92%、賃料は 10 年たっても今と同じ名目にとどまる。経費を年 2% に抑えても、NOI は 2 割減る。
純利益は赤字すれすれになり、分配はほぼ止まる。配らずに残した現金で借入を少しずつ返す。ビルの利回りは 5% へ上がり、ビルの価値は今の鑑定の 4 割を切って、負債とほぼ同じになる。投資主に残るのは、市況が戻れば取り戻せる見込みの分だけだ。清算されない限り、ビルを売って NAV を受け取ることはできない。
- オフィスビルの賃貸:数量 13,346(稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.8%(稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.8%)。物価の転嫁で伸びる)→ 売上 912 億円・営業利益 321 億円。稼働 92%・賃料 年 +0.0%・経費 年 2.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 501 − 資本的支出 120) ÷ キャップ 5.00% − 純負債 6630 = 990 億円。キャップは中立 +0.75%。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:リーマン級の不況と金利の上振れが重なる筋書き。借入の重さを考え 12% と厚めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィスビルの賃貸
東京都心を中心とする 70 棟のオフィスビルを企業に貸す。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額=取得原価 × 稼働率、億円。今の値段の実質の規模) | 価格稼働した規模に対する賃料などの収入の比(今 6.8%)。物価の転嫁で伸びる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 14,245 | 6.8% | 973 | 476 |
| 10 年後 中立 | 13,926 | 8.3% | 1,160 | 522 |
取り方:2026 年 6 月期の半期の不動産賃貸事業収益 487 億円を 2 倍して年額 973 億円。帳簿価額 14,506 億円 × 期末の稼働 98.2% で数量、収入 ÷ 数量で価格。セグメントの利益は NOI 636 億円から減価償却 161 億円を引いた額。中立の価格が 1.22 倍で物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料が契約の更新ごとに遅れて上がり、物価の 3 分の 2 しか転嫁しないと見るため(業種ノート)。
リスクと懸念
借り換えの金利
平均 0.82% の借入が 3.5% へ借り換わると、年の利払いは 170 億円前後増える。今の年の利益の 4 割強だ。固定金利の比率は 77% まで下がっており、変動の分は先に効く。
ビルの利回りの上昇
今の鑑定の利回りは 3% 前後で、10 年国債 3% の世界では保てない。利回りが 1 ポイント上がるとビルの価値は約 25% 下がり、借入があるので投資主の取り分はその倍近く減る。
大型ビルの供給
2027 年以降も都心の大型ビルの新築が続く。テナントは新しいビルへ移り、築の古いビルは賃料を下げて埋めることになる。保有するビルの一部は築 30 年を超える。
修繕の費用
建築費は物価より速く上がる。修繕と更新の費用は 10 年で 1.4 倍以上になり、減価償却の現金の多くを食う。足りなければ借入が増え、利払いがさらに増える。
スポンサーとの取引
物件の多くを三井不動産グループから買い、管理も同グループに任せる。買う値段と管理の費用がスポンサーに有利になる余地がある。取得の値段と鑑定の差を見ておきたい。
増資の希薄化
今の値段は NAV をわずかに下回る。この水準で増資を急げば、既存の投資主の取り分が薄まる。規模を追う運用に戻れば、1 口の価値が削られる。
今後の分かれ目
- 10 年金利が 2% 前後で止まる
- ビルの利回りの上昇は小さく、借り換えの金利も 2.5% 前後にとどまる。中立よりやや楽観に近づき、割高の度合いは縮む。
- 都心の空室が 2% を切り、賃料が年 3% 以上で上がる
- NOI の伸びが利払いの増加を上回り、楽観の筋書きに近づく。
- NAV 割れのまま公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 自己投資口の取得や借入の返済に動く
- 金利の上昇への耐性が増し、資本の使い方の評価を上げる。
- 格付けが A 級に下がる
- 借り換えの上乗せが増え、やや悲観に近づく。
見ておくもの
- 平均調達金利と固定金利の比率
- 都心 5 区の空室率と新規の賃料
- 継続鑑定の利回り(キャップレート)
- 公募増資の値段と 1 口 NAV
- 修繕・資本的支出の額
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは 10 年金利 3% に用途の上乗せを足した業種ノートの表で、今の鑑定の利回りより高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 8.4% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.94% を足した 8.44%。事業は傾いていないので extra は置かない。