結論
森トラストリート投資法人は、森トラストが運用する J-REIT だ。取得価格の 59% がオフィス、31% がホテル、残りが商業施設と住宅。20 物件で資産は 4,635 億円、鑑定評価額は 5,364 億円。筆者の結論は、今の値段は割高ということだ。10 年の価値は、今の時価総額を 3 割強下回る。
強みは、スポンサーとの近さと、物件の質だ。森トラスト・ホールディングスが投資口の 29% を持ち、運用報酬は NOI の 5% と軽い。シャングリ・ラ東京や東京汐留ビルディングなど、都心の大型物件が中心で、稼働率は 99.6%。サンルートプラザ新宿は、2027 年 9 月から固定賃料が増え、変動賃料も入る新契約になり、鑑定評価額が 356 億円から 655 億円に上がった。
弱みは三つある。ひとつは、借入の平均の残りが 2.1 年と短く、2028 年 2 月期までに 52% が満期を迎えること。ふたつめは、借入の平均金利が 0.86% と低く、借り換えで利払いが 4 倍に増えること。みっつめは、鑑定評価額に対する稼ぎが 3.2% と低いことだ。
今の値段は NAV の 0.74 倍で安く見えるが、NAV は低い金利の上の鑑定で、割安の根拠にしない。スポンサーの点数は 1.8 で、悲観の確率は基本のままにした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この投資法人は、都心の大型オフィスと、運営力のあるホテルを持ち、スポンサーが 29% を出資する、投資主と近い運用者だ。堀と呼べるほどの強みはないが、運用報酬が軽く、増資に頼らない点には筋が通っている。
問題は、借入の短さと、低い金利を前提にした利益だ。借入の平均金利は 0.86% で、平均の残りは 2.1 年。3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 17 億円から 74 億円に増える。純利益は 131 億円から 105 億円へ 2 割削られる。
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.2% だ。キャップが 4.64% まで上がれば、物件の価値は鑑定を 3 割弱下回る。含み益 944 億円は、その分だけ消える。
今の値段は NAV の 0.74 倍で安く見える。だが NAV は、サンルートの新契約を織り込んだ鑑定を含み、低い金利の上の値段で、筆者は割安の根拠にしない。10 年の分配と、10 年後の物件の価値を今に引き直すと、今の値段を 3 割強下回る。
ホテルが 3 割を占め、需要の振れが分配を動かす点も見ておく。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、オフィスビルとホテルの賃料だ。投資法人は建物と土地を持ち、テナントやホテル運営会社に貸して賃料を受け取る。直近 1 年の賃貸事業収益は 233 億円で、そこから償却を除く費用を引いた NOI(賃貸の稼ぎ)は 181 億円だった。
物件は 20 ある。取得価格の内訳は、オフィスが 58.8%、ホテルが 30.7%、残りが商業施設と住宅。エリアは東京都心部が 78.7%。上位は、東京汐留ビルディング(825 億円)、神谷町トラストタワー(517 億円)、シャングリ・ラ東京(492 億円)、ONビル、紀尾井町ビル。
オフィスは、1 棟をマスターリースする形が多く、賃料は森トラストグループが運営するものと、第三者のテナントが入るものに分かれる。ホテルは 6 物件で、シャングリ・ラ東京、コートヤード・バイ・マリオット 2 棟、ヒルトン小田原、ホテルオークラ神戸、サンルートプラザ新宿。賃料は固定に、客室売上に連動する変動賃料を足す形が多い。
2023 年 3 月に森トラスト・ホテルリート投資法人と合併し、のれん約 6 億円を 20 年で償却している。運用報酬は年 9 億円で、NOI の 5%。
優良さと弱いところ
物件の質は、都心の大型と、ホテルの運営力が強みで、1 棟貸しの退去の影響が弱みだ。東京都心部が 79%、稼働率は 99.6%。シャングリ・ラ東京やコートヤード東京ステーションなど、インターナショナルブランドのホテルが 6 割を超える。
強みは三つある。ひとつめは、含み益が 944 億円(含み益率 21%)あること。ふたつめは、サンルートプラザ新宿の新契約で、2027 年 9 月から固定賃料が年 13.0 億円から 19.2 億円に増え、客室売上に連動する変動賃料が入ること。みっつめは、スポンサーが開発・運営する物件が 6 割を占め、過去の大型テナントの退去時にも、物件の入れ替えやリーシングの支援を受けてきたこと。
弱みも三つある。ひとつは、鑑定評価額に対する稼ぎの低さ。NOI から改修費を引くと 3.2% で、キャップが上がれば物件の価値が大きく縮む。ふたつめは、ONビルが簿価より鑑定評価額が 30 億円低く、大崎のオフィスが 1 棟貸しで再開発を待つ点。みっつめは、ホテルが NOI の 35% を占め、需要の振れを受けることだ。
物件別の鑑定では、直接還元利回りが 2.4% から 5.4% に並ぶ。低い金利の上の値段で、金利が上がればこの利回りが先に動く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オフィスは、東京都心の空室率が 3% 前後に締まり、賃料は上げ局面にある。ただし大型の新築供給が 2027 年以降も続き、在宅の定着で床の需要は実質で横ばいと見る。中立の賃料は名目年 2%。ホテルは、賃料が固定と変動の組み合わせで、客室単価は物価に強いが、需要が崩れると変動賃料が最も深く落ちる。中立の賃料は名目年 2%、稼働の係数は 0.98。
業種の表では、都心の大型オフィスの期待キャップが 4.25%、ホテルと商業が 5.0%。この投資法人は、オフィスが NOI の約 51%(都心の大型は 4.25%、仙台・天神・新横浜などは 4.5%)、ホテルが約 35%(5.0%)、商業と住宅が約 14%(5.0%)なので、中立のキャップは 4.64% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から改修費を引いて鑑定評価額で割ると 3.2% で、表より 1.4 ポイントほど低い。これは 10 年金利が 2% 前後の世界の値段で、3% に上がれば表に近づく。
賃料の伸びは、オフィスとホテルが年 2.0%、商業が年 1.5% で、加重した中立は年 1.9%。サンルートプラザ新宿の新契約で決まっている固定賃料の増額(年 6.2 億円、収入の約 2.7%)を 10 年分の伸びに直し、全ての筋書きに年 0.27% を上乗せした。経費は物価で年 3% 伸びる。
資本政策と M&A
借入は 2,205 億円。有利子負債を鑑定評価額で割った LTV は 41.1%、簿価ベースの総資産に対しては 46.8%。固定金利の比率は 88.9%、短期借入金の比率は 10.7%。平均金利は 0.86%、平均の残りは 2.1 年と短い。
2028 年 2 月期までの 2 年に、約 1,150 億円(52%)の満期が来る。2026 年 2 月期の借り換えでは、借入期間を 2.60 年から 1.47 年に短くし、金利は 0.68% から 1.08% に上がった。会社は、金利上昇の局面で短期の変動借入を使い、期間を短くしてコストを抑える方針で、2026 年 8 月期は平均金利 0.90%、2027 年 2 月期は 1.02% と見る。
増資は、2013 年が最後。2023 年 3 月の合併(森トラスト・ホテルリート投資法人)で口数が 356 万口になった。自己投資口の取得はない。
運用報酬は、資産の算定額に 0.15% を掛けた項と、1 口当たり純利益に純利益を掛けた項で、年 9 億円(NOI の 5%)。森トラスト・ホールディングスは投資口の 29.18% を持つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
スポンサーと同じ船に乗っている。森トラスト・ホールディングスが投資口の 29% を持ち、運用報酬は NOI の 5% と軽い。2013 年以降、増資で口数を増やしておらず、NAV 割れの増資はない。
物件の質が高い。東京都心部が 79%、稼働率は 99.6%。シャングリ・ラ東京や東京汐留ビルディングなど、都心の大型が中心で、スポンサーが開発・運営する物件が 6 割ある。
サンルートプラザ新宿は、2027 年 9 月から 20 年の新契約になり、固定賃料が年 13.0 億円から 19.2 億円に増え、客室売上に連動する変動賃料も入る。鑑定評価額は 356 億円から 655 億円に上がり、含み益は 944 億円、1 口当たり NAV は 13% 上がった。
ホテル 6 物件のうち 5 物件が変動賃料を採り、訪日客の増加がそのまま賃料に乗る。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3.3% で伸び、キャップが 4.16% に下がり、時価総額は 3,409 億円と今の 1.4 倍になる。
慎重な見方
借入が短い。平均の残りは 2.1 年で、2028 年 2 月期までに 52%(約 1,150 億円)が満期を迎える。平均金利は 0.86% で、3.4% 前後に借り換わると、年の利払いは 17 億円から 74 億円へ 4.3 倍になる。純利益は 131 億円から 105 億円へ減る。
鑑定評価額に対する稼ぎが低い。NOI から改修費を引くと 3.2% で、10 年国債が 3% の世界では、キャップが 4.64% まで上がる。物件の価値は鑑定を 3 割弱下回り、含み益 944 億円は消える。
ホテルは NOI の 35% を占め、需要が落ちると変動賃料が真っ先に減る。大型の 1 棟貸しのオフィスは、退去が起きると 1 棟分の賃料が抜け、再び埋めるまで時間がかかる。ONビルは簿価が鑑定評価額を 30 億円上回る。
やや悲観の筋書きでは、賃料の伸びが年 1.2% にとどまり、稼働が 96% に落ち、時価総額は 1,288 億円と今の 5 割強になる。悲観では、純利益がほぼゼロになり、時価総額は 111 億円まで縮む。
どちらに重みを置いたか
スポンサーが 29% を持つ同じ船の構造、軽い運用報酬、都心の大型物件、サンルートの新契約には、はっきりした根拠がある。ただ、借入の残りが 2.1 年と短く、2 年で 5 割が借り換わるため、利払いが 4 倍以上に増える。鑑定評価額に対する稼ぎも 3.2% と低い。中立の価値は今の時価総額を 3 割強下回った。筆者は、NAV に対する安さは値段に入っているが、金利の正常化は入っていないと見る。スポンサーの点数は 1.8 で、悲観の確率は基本のままにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 61,259 円2,181 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 31,928 円1,137 億円)。 今の値に割り戻すと 46,627 円1,660 億円、今との差 −30.3%、 期待の年率 +3.4%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 143,392 円5,105 億円 | 38,425 円1,368 億円 | +171.8% | +10.5% | 18,182 円647 億円 |
| やや楽観 | 22% | 77,131 円2,746 億円 | 35,869 円1,277 億円 | +68.9% | +5.4% | 24,860 円885 億円 |
| 中立 | 38% | 58,958 円2,099 億円 | 33,229 円1,183 億円 | +37.8% | +3.3% | 35,031 円1,247 億円 |
| やや悲観 | 20% | 36,178 円1,288 億円 | 28,426 円1,012 億円 | −3.4% | −0.3% | 12,921 円460 億円 |
| 悲観 | 10% | 3,118 円111 億円 | 18,819 円670 億円 | −67.2% | −10.6% | 2,194 円78 億円 |
| 加重平均 | 100% | 61,259 円2,181 億円 | 31,928 円1,137 億円 | +39.3% | +3.4% | 93,187 円3,318 億円 |
今の株価時価総額 66,900 円2,382 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 賃料が年 3.3% で伸び、キャップが今の 3.17% のまま 利益 142 億円 · PBR 2.2 倍 · 株価時価総額 143,392 円5,105 億円
都心のオフィスの増額が続き、ホテルは訪日客で変動賃料が伸びる。サンルートの新契約の固定賃料の増額と変動賃料も加わり、賃料は年 3.3% で伸びる。稼働は 99% を保つ。
借り換えは 3.3% で済む。年の利払いは 72 億円と今の 4.2 倍になる。それでも NOI は 181 億円から 252 億円へ 39% 増え、純利益は 142 億円と今より 8% 増える。
不動産の買い手は今の利回りで買い続け、物件の利回り(キャップ)は今の鑑定の 3.17% のまま変わらない。時価総額は 5,105 億円と今の 2.1 倍になる。
スポンサーの支援で、大型テナントが退去した後も空室を短く埋める。
- オフィス・ホテル・商業の賃貸:数量 4,381(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.3%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.3%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 321 億円・営業利益 230 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.3%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 252 − 資本的支出 26) ÷ キャップ 3.17% − 純負債 2024 = 5105 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り((NOI − 資本的支出) ÷ 鑑定評価額)の 3.17% で、今の値付けが 10 年続く所(複合の下限 3.25% より低い。楽観だけはここまで下げてよい)。
確率:東京のオフィス賃料の増額と、ホテルの変動賃料の伸びが続き、金利が落ち着く筋書き。ホテルとオフィスの偏りで上振れの幅が大きいので 10% とした。
やや楽観 22% 賃料は年 2.75% で伸び、借り換えは 3.35% 利益 124 億円 · PBR 1.2 倍 · 株価時価総額 77,131 円2,746 億円
オフィスの増額とホテルの変動賃料の伸びが数年続き、その後は物価並みに落ち着く。賃料は年 2.75% で伸び、稼働の係数は 0.985 になる。借り換えは 3.35% で、年の利払いは 73 億円になる。
NOI は 234 億円と 29% 増え、純利益は 124 億円と今の 94% になる。資本的支出は年 25 億円と今の 2.3 倍に増える(ホテルの改装を含む)。
物件の利回りは 4.38% に上がる。時価総額は 2,746 億円で、今の 1.15 倍になる。
ただし、賃料の伸びは物価の 3% に届かず、実質の収益は緩やかに目減りする。
- オフィス・ホテル・商業の賃貸:数量 4,359(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.9%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.3%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 303 億円・営業利益 212 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.8%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 234 − 資本的支出 25) ÷ キャップ 4.38% − 純負債 2021 = 2746 億円。キャップは中立 4.64% より 0.26% 低い 4.38% (賃料の伸びが強い筋書き)。
確率:中立より賃料の伸びが良く、キャップの上昇が小さい筋書き。22% とした。
中立 38% 賃料は物価に負け、利払いが 4.3 倍になる 利益 105 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 58,958 円2,099 億円
10 年金利は 3% に落ち着き、借入は 2 年ほどで 3.4% へ借り換わる。年の利払いは今の 17 億円から 74 億円へ増える。賃料は年 2.2% で伸び、稼働の係数は 0.975 に落ちる。
経費は物価並みの年 3% で増え、NOI は 181 億円から 215 億円へ 19% 増える。それでも利払いの増加を吸収しきれず、純利益は今の 131 億円から 105 億円へ 2 割減る。
物件の利回りは 4.64% に上がる。資本的支出は年 24 億円と、今の 2.2 倍に増える(会社の予想の年 20 億円に近い)。
時価総額は 2,099 億円で、今を 1 割強下回る。10 年の長さに割り引くと、今の値段を 3 割強下回る。
- オフィス・ホテル・商業の賃貸:数量 4,314(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.6%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.3%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 284 億円・営業利益 194 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 215 − 資本的支出 24) ÷ キャップ 4.64% − 純負債 2019 = 2099 億円。キャップは業種の表を NOI の比で加重した 4.64% (都心の大型オフィス 4.25%、地方・築古オフィス 4.5%、ホテル・商業 5.0%)。今の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割った 3.2%)より高い。
確率:前提どおり 10 年金利が 3% に落ち着き、賃料は年 2.2% で伸びる筋書き。最もありうるので 38%(スポンサーの点数が 1.8 で、悲観の確率は基本のまま 10%)。
やや悲観 20% 賃料の伸びが止まり、金利が高めに落ち着く 利益 71 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 36,178 円1,288 億円
金利は高めに落ち着き、借り換えは 3.6% になる。大型の新築供給と在宅勤務の浸透で空室が増え、ホテルの変動賃料は細り、賃料は 10 年で年 1.2% の伸びにとどまる。稼働の係数は 0.96 に落ちる。
経費は物価で伸び、NOI は 185 億円と今とほぼ同じになる。年の利払いは 78 億円で、純利益は 71 億円と今の 5 割強に縮む。資本的支出は年 23 億円に抑える。
物件の利回りは 4.89% に上がる。時価総額は 1,288 億円で、今の 5 割強になる。
借入の平均の残りが短いため、金利の高止まりがそのまま利益に響く。
- オフィス・ホテル・商業の賃貸:数量 4,248(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.0%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.3%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 254 億円・営業利益 164 億円。稼働 96%・賃料 年 +1.2%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 184 − 資本的支出 23) ÷ キャップ 4.89% − 純負債 2014 = 1288 億円。キャップは中立 +0.25%。賃料の頭打ちと利払いの増加で、物件の価値から借入を引いた額が大きく縮む。
確率:オフィスの需要の弱さとホテルの需要の鈍化で賃料が伸びず、金利が高めに落ち着く筋書き。20% とした。
悲観 10% 賃料の下落とホテルの失速、金利の上振れ 利益 3 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 3,118 円111 億円
不況でオフィスの空室が増え、ホテルの需要が落ち込む。賃料は年 1.1% ずつ縮み、稼働の係数は 0.92 に落ちる。
金利は 3% を超えて上がり、借り換えは 4.25% になる。年の利払いは 92 億円で、NOI は 127 億円と今の 7 割に減る。純利益は 3 億円とほぼゼロになり、分配は止まる。資本的支出は 19 億円に絞る。
物件の価値は、借入と預り敷金を引くとわずかしか残らず、投資主の取り分は 111 億円まで減る。
清算されない限り、物件を売って NAV を受け取ることはできない。
スポンサーが 29% を持つので、支援や物件の入れ替えで持ちこたえる余地は残るが、この筋書きでは頼らない。
- オフィス・ホテル・商業の賃貸:数量 4,071(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 4.7%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.3%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値)→ 売上 193 億円・営業利益 107 億円。稼働 92%・賃料 年 -1.1%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 127 − 資本的支出 19) ÷ キャップ 5.14% − 純負債 1996 = 111 億円。キャップは中立 +0.5%。賃料の下落と稼働の低下で NOI が 3 割減り、物件の価値から借入を引いた額がほぼ消える。NAV は床にしない(清算されない限り投資主は受け取れない)。
確率:スポンサーの点数が 1.8 なので、悲観の確率は基本の 10%。不況でオフィスの空室とホテルの需要の落ち込みが同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
オフィス・ホテル・商業の賃貸
東京のオフィス 51%、ホテル 35%、商業・住宅 14%(NOI の比)の 20 物件を、1 棟貸しのマスターリースなどで貸す。ホテルは固定賃料に客室売上連動の変動賃料を足す形が多い。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 5.3%)。賃料の増額と、変動賃料・付帯収益の増減を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 4,390 | 5.3% | 233 | 161 |
| 10 年後 中立 | 4,314 | 6.6% | 284 | 194 |
取り方:過去 1 年(2025 年 8 月期+2026 年 2 月期)の賃貸事業収益 233 億円(売却益なし)を数量・価格に分けた。簿価 4,425 億円(のれん含む)× 稼働率 99.2% が数量、収入 ÷ 数量が価格。NOI は収入から償却を除く費用 51 億円を引いて 181 億円、セグメントの利益は減価償却 20 億円を引いた額。中立の価格は 10 年で 1.24 倍で、物価の 1.34 倍に届かないのは、オフィスの賃料の転嫁が契約の更新で遅れ、物価の 3 分の 2 ほどしか通らないため(業種ノート)。サンルートの固定賃料の増額分(年 0.27%)を含む。
リスクと懸念
鑑定の利回りの低さと金利
鑑定評価額に対する稼ぎは、資本的支出を引くと 3.2%。10 年国債が 3% の世界でキャップが 4.64% まで上がると、物件の価値が 3 割弱縮み、含み益 944 億円が消える。
借入の短さと借り換え
平均の残りは 2.1 年、平均金利は 0.86%。2028 年 2 月期までに約 1,150 億円(52%)の満期が来る。3.4% 前後へ上がると、年の利払いは 17 億円から 74 億円へ増える。
ホテルの変動賃料
ホテルは NOI の 35%。6 物件のうち 5 物件が変動賃料で、需要が落ちると固定費の重さで収入が大きく減る。サンルートの新契約の変動賃料も売上次第。
1 棟貸しのオフィスの退去
大型テナントが退去すると 1 棟分の賃料が抜ける。過去にも日立本社ビル、イトーヨーカドー新浦安店などで起きた。ONビルは簿価が鑑定評価額を 30 億円上回る。
のれんと再開発
合併で出たのれん約 6 億円を 20 年で償却する。大崎の物件は再開発(2033 年以降)の完成待ちで、それまでの収益は 1 棟貸しの賃料に頼る。
スポンサー依存
森トラスト・ホールディングスが 29% を持ち、スポンサー開発物件が 6 割。物件の取得・売却の値段は、鑑定評価額と見比べる必要がある。
今後の分かれ目
- オフィスの賃料の増額が想定を上回り、年 4% 以上伸びる
- NOI が上振れし、中立と楽観の確率を上げる。今の値段は割高の度合いが縮む。
- 10 年金利が 2% 前後で止まり、借り換えが 2% 台で済む
- 利払いの増加もキャップの上昇も小さく、価値は上に振れる。
- ホテルの変動賃料が、2 期続けて前年を下回る
- ホテルの需要の頭打ちが確かめられ、悲観側の確率を上げる。
- NAV 割れで公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。分配と NAV が減れば、スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 1 棟貸しの大型オフィスの退去が決まる
- NOI が 1 棟分抜ける。スポンサーのリーシングと物件の入れ替えの支援の度合いを見て、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- オフィスの賃料増減率とホテルの変動賃料
- 借り換えの金利と 2028 年 2 月期までの満期
- 資本的支出と、減価償却との比
- サンルートプラザ新宿の新契約(2027 年 9 月)の実績
- スポンサーの持分と、物件の取得・売却の値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段や過去の値段から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、負債を引いて出した。キャップは用途ごとの表を NOI の比で加重した 4.64% で、今の NCF 利回り 3.2% より高い。NAV 割れを割安の根拠にしていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.50% を足した 9.00%。ホテルとオフィスの偏りは cycle に反映したので extra は置かない。