結論
日本リート投資法人は、東京経済圏の中規模オフィスと、三大都市圏の住宅を中心にした総合型の J-REIT だ。107 物件、取得価格で 2,742 億円のうち、オフィスが 60%、住宅が 26%、ホテル・底地などその他が 14%。メインスポンサーは SBI グループで、保有比率は 3.5%。
筆者の結論は、今の値段はやや割高というものだ。10 年後の物件の売値を、用途の表を物件の価格で加重した 4.26% の利回りで見ると、10 年後の価値と配当を今に引き直した額は 1,223 億円。今の時価総額 1,378 億円を 11% 下回る。
追い風はある。投資口は 1 口 NAV に対して 0.64 倍。含み益は 799 億円ある。オフィスの賃料は 6 期連続で上昇し、入替・更新時の増額は目標の 5% を達成した。資産の入替で売却益を毎期つくり、内部留保 57 億円を持つ。
ただ、借入は総資産の 48.1%、鑑定評価額で割ると 40.1% と重い。2 年内に約 34% が満期になる。借り換えで利払いは年 22 億円から 50 億円前後に増え、純利益は 1 割弱減る。
市場が付けている利回りは NOI ベースで 5.0% と、筆者の置く中立の 4.26% より高い。NAV の割安に見えて割安でない理由は、ここにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この法人は「築古を売って築浅を買い、売却益で分配を支える」型だ。入替で毎期の売却益をつくる姿勢は評価できる。報酬が分配金に連動し、運用会社の取り分が投資主と揃う点も良い。ただし、安全域がどこにあるかを見極める必要がある。
NAV の 0.64 倍は割安に見えるが、含み益 799 億円は鑑定の前提が崩れれば縮む。借入が総資産の 48% と重く、2 年内に 34% が満期になる。借り換えで利払いは 2 倍以上に増える。
市場の逆算利回りは NOI ベースで 5.0%。筆者の中立 4.26% は、これより低い。10 年後に売れる値段を高めに見ても、借入の重さで時価総額の取り分は薄い。
10 年の分配と 10 年後の売値を今に引き直すと、今の値段は 11% ほど高い。大きな割高ではなく、適正との境目にあるやや割高だ。筆者は、借入の重さと NAV 割れの増資を加味して、慎重に見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は賃料だ。今の保有資産が通期で寄与したとして、年の賃貸事業収益は約 185 億円。そこから運営費を引いた NOI(純収益)は 141 億円になる。物件の売却益は毎期あるが、繰り返せる収益ではないので除いて見る。
資産は 107 物件、取得価格で 2,742 億円。オフィスが 54 物件・1,655 億円(60%)、住宅が 44 物件・701 億円(26%)、その他が 9 物件・386 億円(14%)。その他にはホテルや研究開発施設、底地などが入る。オフィスは東京経済圏が 87% を占め、名古屋・大阪・福岡・札幌が残りだ。
全体の稼働率は 98.7%。平均築年数は約 23 年で、築古の物件を売って築浅を買う入替を続けている。2026 年 1〜3 月には、大田区の研究開発施設、川越の底地、日本橋浜町のオフィス、大阪のホテルなど 9 物件・360 億円を取得した。
第 28 期(2026 年 1〜6 月)の分配金総額は 46 億円。うち売却益の分が約 13 億円ある。第 29 期の予想分配は、売却益を除くと 1 口あたり本業の利益に近い水準。
資本的支出は直近 1 年で約 22 億円と、減価償却の約 25 億円を下回る。
優良さと弱いところ
この法人の優良さは、物件の入替と、東京経済圏の中規模オフィスの需給にある。築 40 年近い物件を売って築浅を買い、売却益を内部留保に回す。オフィスは入替・更新時の賃料増額が目標の 5% に届いた。
強みの一つ目は、分配の仕組みだ。運用報酬の一部が 1 口分配金に連動し、投資主の利益と運用会社の取り分が揃う。取得も第三者からの相対取引が中心で、スポンサーからの買い取りに頼らない。二つ目は、含み益 799 億円と内部留保 57 億円。分配を守る余地がある。
弱みは三つある。一つ目は、借入が総資産の 48.1% と重いこと。二つ目は、2026 年 3 月の公募増資を、NAV を大きく下回る価格(NAV の 77%)で行ったこと。三つ目は、資本的支出が減価償却を下回り、更新が先送りされている可能性があることだ。
筆者は、事業の質を「並」と見る。立地は良いが、築年数の高い中規模のビルが多く、借入も重い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
東京経済圏の中規模オフィスは、空室率が低位で、賃料が 6 期連続で上昇している。新築の供給が絞られ、築浅や改修済みのビルに需要が流れる。この法人の入替・更新時の賃料は、目標の 5% 増を達成した。ただし、築 30 年を超える物件の更新費は膨らむ。
住宅は、三大都市圏で入居が安定し、更新時の増額が続く。ホテルは訪日客で賃料が伸びるが、この法人の比率は 8% ほどで、固定賃料中心。
業種の表では、キャップレート(NCF ÷ 物件価値の利回り)はオフィス 4.25%、住宅 3.75%、ホテル 5.0%。この法人は、東京以外のオフィス(13%)に地方の上乗せを少し置き、全体で 4.26% になる。
今の鑑定の利回りは、NOI から資本的支出を引いて鑑定評価額で割ると 3.39%。J-REIT 全体では、上場の値段から逆算したキャップレートの中央は 4.2% 前後。この法人は NAV の 0.64 倍で、逆算の利回りは NOI ベースで 5.0% と、中央をやや上回る。市場は、鑑定を割り引いて見ている。
資本政策と M&A
借入は 1,413 億円(借入金 1,345 億円、投資法人債 68 億円)。総資産に対する比率(LTV)は 48.1%、鑑定評価額で割ると 40.1% だ。固定金利比率は 78.9%。格付けは JCR が AA−、R&I が A+。
弱点は満期の集中だ。1 年内に 228 億円、2 年内に累計 475 億円(全体の 34%)が期限を迎える。今の借入の多くは 1% 前後の低金利で、借り換えで金利は 3% 台に上がる。第 29 期の予想では、支払利息は半期で 11 億円。
投資口は、2026 年 3 月に公募増資と第三者割当で 6 万 1,950 口(3.5%)増やし、約 55 億円を調達した。発行価格は NAV の 77%。NAV を割る値段での増資が続く。
運用報酬は、総資産の 0.35% 以下と、NOI × 分配金の変動率 × 2.5% 以下の二本立て。直近は半期で約 6.6 億円。取得報酬は 1.0%(利害関係者からの取得は 0.5%)。SBI ホールディングスは 3.5% を保有する。分配は買換特例圧縮積立金を含み、配当性向は 90.5%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
投資口は NAV の 0.64 倍まで売られた。含み益は 799 億円、内部留保は 57 億円ある。鑑定が少し下がっても、NAV は今の 0.9 倍前後を保つ。今の投資口価格は、その下に十分な余裕を持つ値段だ。
東京経済圏の中規模オフィスは、需給が引き締まっている。入替・更新時の賃料増額は目標の 5% を達成し、賃料は 6 期連続で上昇している。
運用会社の報酬は分配金に連動し、スポンサーの SBI は 3.5% を保有する。取得は第三者との相対取引が中心で、スポンサーとの売買による利益相反は小さい。
資産の入替で築古を売り、築浅を買う動きも続く。売却益は毎期出ており、分配を守る力がある。第 29 期の分配予想は、今の投資口価格に対して年 6% ほどの利回りになる。
楽観の筋書きでは、賃料が年 3% 伸び、キャップは今の鑑定の NCF 利回り 3.39% で止まる。時価総額は 3,593 億円と今の 2.6 倍になる。
慎重な見方
借入が重い。総資産の 48.1%、鑑定評価額で割ると 40.1%。2 年内に 475 億円、34% が満期になる。今の平均金利は低く、市場の 3.4% 前後に借り換えると、利払いは年 22 億円から 51 億円に増える。純利益は 76 億円から 70 億円へ減り、分配の余裕は薄い。
NAV を割る増資が続いている。2026 年 3 月の増資は NAV の 77% の価格で、既存の投資主の取り分を薄めた。NAV 割れでは、成長のために増資すると 1 口の価値が下がる。
資本的支出は直近で減価償却を下回っている。築 23 年の平均で、築 30 年超の物件も混ざる。更新が先送りされていれば、後で膨らむ。建築費は物価より速く上がる。
キャップが 4.26% に上がれば、物件の価値は鑑定の 3,526 億円から 3,200 億円ほどに下がる。含み益 799 億円は半分近くが消える。
悲観の筋書きでは、稼働が 93% に下がり、借り換えが 4.3% になる。純利益は 6 億円まで縮み、時価総額は 378 億円まで縮む。
どちらに重みを置いたか
どちらも事実を言っている。NAV の割安は本物だが、借入の重さと、NAV 割れの増資が、その割安を打ち消す。一方で、報酬の形や相対取引の多さは、スポンサーとの利益相反を小さくしている。スポンサーの点数は 2.4 と 3 を下回るので、悲観の確率は 10% のまま置いた。中立のキャップを 4.26% に置くと、今の値段はやや割高と判断する。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 98,910 円1,810 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 40,299 円738 億円)。 今の値に割り戻すと 66,826 円1,223 億円、今との差 −10.3%、 期待の年率 +6.5%(資本コスト 9.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 196,303 円3,593 億円 | 49,936 円914 億円 | +230.5% | +12.7% | 19,699 円361 億円 |
| やや楽観 | 20% | 139,428 円2,552 億円 | 45,893 円840 億円 | +148.8% | +9.5% | 37,064 円678 億円 |
| 中立 | 40% | 100,474 円1,839 億円 | 42,124 円771 億円 | +91.4% | +6.7% | 57,039 円1,044 億円 |
| やや悲観 | 22% | 59,388 円1,087 億円 | 35,458 円649 億円 | +27.3% | +2.4% | 20,866 円382 億円 |
| 悲観 | 10% | 20,652 円378 億円 | 24,750 円453 億円 | −39.1% | −4.8% | 4,540 円83 億円 |
| 加重平均 | 100% | 98,910 円1,810 億円 | 40,299 円738 億円 | +86.9% | +6.5% | 139,209 円2,548 億円 |
今の株価時価総額 74,500 円1,364 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 賃料が年 3% 伸び、キャップは今の鑑定の利回りが続く 利益 99 億円 · PBR 2.6 倍 · 株価時価総額 196,303 円3,593 億円
東京経済圏の中規模オフィスで需要が供給を上回り続け、入替・更新の増額が積み上がる。住宅も増額が続き、賃料は年 3% の伸びになる。稼働は 99% に近づく。
借り換えは AA− 格のおかげで 3.2% で収まり、年の利払いは 48 億円。NOI は 141 億円から 191 億円へ 35% 増え、純利益は 99 億円と今を上回る。
不動産の売買市場は低金利の値付けを続け、キャップは 3.39% のままだ。物件の価値が 4,900 億円に達し、時価総額は 3,593 億円と今の 2.6 倍になる。
入替の売却益と新規取得が続く。ただし、その分は計算に入れていない。
- 東京経済圏のオフィス・住宅・その他の賃貸:数量 2,702(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 9.2%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 249 億円・営業利益 166 億円。稼働 99%・賃料 年 +3.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 191 − 資本的支出 25) ÷ キャップ 3.39% − 純負債 1300 = 3593 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り(NOI から資本的支出を引き、鑑定評価額で割った 3.39%)。今の値付けが 10 年続く筋書きで、楽観はここまで下げてよい。
確率:東京経済圏のオフィス需給が引き締まり続け、キャップが今の鑑定の NCF 利回り 3.39% のまま 10 年続く筋書き。基本どおり 8% とした。
やや楽観 20% 賃料は年 2.5%、キャップは 3.9% まで下がる 利益 84 億円 · PBR 1.9 倍 · 株価時価総額 139,428 円2,552 億円
オフィスと住宅の増額が続き、賃料は年 2.5% の伸びで、稼働率は 98.5% を保つ。
借り換えは 3.3%。年の利払いは 50 億円に増えるが、NOI は 178 億円と 26% 増え、純利益は 84 億円で今を上回る。
売買市場は、10 年金利 3% との差を 0.9 ポイントまで保つ。キャップは 3.9% に下がり、物件の価値は 3,900 億円近くになる。時価総額は 2,552 億円。
ただし、築 30 年を超える物件は鑑定の値上がりが小さく、全体のキャップは用途の表を大きく下回れない。
- 東京経済圏のオフィス・住宅・その他の賃貸:数量 2,688(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.8%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 236 億円・営業利益 153 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.5%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 178 − 資本的支出 27) ÷ キャップ 3.90% − 純負債 1315 = 2552 億円。キャップは今の鑑定の NCF 利回り(3.39%)より高い 3.90%。10 年金利との差が 0.9 ポイント残る前提。
確率:賃料が物価の 8 割ほど追随し、キャップが 3.9% まで下がる筋書き。ありうる上振れとして 20% とした。
中立 40% 賃料は年 2% で伸び、キャップが 4.26% に上がる 利益 70 億円 · PBR 1.4 倍 · 株価時価総額 100,474 円1,839 億円
借入の 3 分の 1 が 2 年内に借り換わり、金利は市場の 3.4% に近づく。年の利払いは 22 億円から 51 億円に増える。稼働率は 98% に下がる。
賃料は年 2% で伸びる。オフィスの入替・更新の増額が、固定賃料の鈍さを補う。経費は物価で年 3%。NOI は 141 億円から 165 億円へ、10 年で 17% 伸びる。そこから資本的支出 30 億円が出る。
減価償却は 25 億円、運用報酬などは 20 億円。純利益は 76 億円から 70 億円へ、8% 減る。分配は、内部留保の取り崩しがなくなり、今よりやや下がる。
物件の売値は、キャップ 4.26% で 3,180 億円ほど。そこから純負債 1,340 億円を引くと、時価総額は 1,839 億円になる。
- 東京経済圏のオフィス・住宅・その他の賃貸:数量 2,675(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 8.4%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 224 億円・営業利益 140 億円。稼働 98%・賃料 年 +2.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 165 − 資本的支出 30) ÷ キャップ 4.26% − 純負債 1340 = 1839 億円。キャップは業種の表を取得価格で加重した 4.26%(オフィス 4.31%、住宅 3.75%、ホテル等 5.0%)。今の NCF 利回り(3.39%)より高い。
確率:10 年金利が 3% 前後に落ち着き、賃料は年 2% で伸びる筋書き。最も起こりやすい。スポンサーの点数は 2.4 で 3 未満のため、悲観の確率は基本の 10% のまま、中立は 40% とした。
やや悲観 22% オフィスの賃料が弱まり、キャップが 4.51% に上がる 利益 46 億円 · PBR 0.8 倍 · 株価時価総額 59,388 円1,087 億円
オフィスの増額が止まり、築古の物件で退去が出る。賃料の伸びは年 1% にとどまる。稼働率も 97% に下がる。
借り換えは 3.6%。年の利払いは 54 億円。NOI は 142 億円と今と同じ水準にとどまり、純利益は 46 億円に縮む。
分配は借入の返済を優先して絞り、内部留保も使い切る。入替による売却益も難しくなる。含み益は縮み、投資口価格は純資産を下回ったまま戻らない。
キャップは 4.51% に上がる。物件の価値は 2,450 億円ほどで、純負債 1,360 億円を引くと、時価総額は 1,087 億円だ。
- 東京経済圏のオフィス・住宅・その他の賃貸:数量 2,647(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 7.6%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 201 億円・営業利益 118 億円。稼働 97%・賃料 年 +1.0%・経費 年 3.0%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 142 − 資本的支出 32) ÷ キャップ 4.51% − 純負債 1360 = 1087 億円。キャップは中立 4.26% に 0.25 ポイント上乗せして 4.51% (金利の上振れと、築古オフィスの売り)。
確率:オフィスの供給が戻り、増額が止まる筋書き。借り換えの上乗せも重なる。22% とした。
悲観 10% オフィス需要の崩れと金利上昇で、物件の価値が借入に近づく 利益 6 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 20,652 円378 億円
オフィスの空室が増え、賃料は年 0.5% 下がる。全体の稼働率は 93% に下がる。
借り換えは 4.3% になり、年の利払いは 64 億円。NOI は 110 億円と今の 8 割弱まで減り、純利益は 6 億円に縮む。
分配は大きく減り、借入の返済を優先して物件を売る。増資は NAV を割る価格でしかできず、投資主の取り分は薄まる。売却は築古の物件から進むが、買い手が細る局面では売値も下がる。さらに借り換えの条件が厳しくなり、格付けの引き下げも視野に入る。
キャップは 4.76% まで上がり、物件の価値は 1,770 億円ほど。純負債 1,390 億円を引くと、時価総額は 378 億円にとどまる。
- 東京経済圏のオフィス・住宅・その他の賃貸:数量 2,538(稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模))× 価格 6.5%(規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値)→ 売上 166 億円・営業利益 86 億円。稼働 93%・賃料 年 -0.5%・経費 年 2.5%
倍率:PBR は物件の価値から純負債を引いた額を自己資本で割った値。(NOI 110 − 資本的支出 26) ÷ キャップ 4.76% − 純負債 1390 = 378 億円。キャップは中立 4.26% に 0.50 ポイント上乗せして 4.76%。物件の価値が純負債に近づき、時価総額は自己資本の 3 割以下になる。
確率:スポンサーの点数 2.4 は 3 未満なので、悲観の確率は基本の 10% のまま。オフィスの賃料の崩れと借り換え金利の上昇が同時に来る筋書き。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
東京経済圏のオフィス・住宅・その他の賃貸
国内 107 物件を持ち、オフィス(60%)、住宅(26%)、ホテル・底地などその他(14%)から賃料を受ける。
| 数量稼働している物件の規模(帳簿価額 × 稼働の係数、億円。今の値段の実質の規模) | 価格規模に対する賃貸事業収益の比(今 6.9%)。賃料の改定と、入替による増額を合わせた値 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 2,694 | 6.9% | 185 | 117 |
| 10 年後 中立 | 2,675 | 8.4% | 224 | 140 |
取り方:今の保有資産(107 物件、2026 年 7 月に築地フロントを譲渡後)が通期で寄与するとして、第 29 期の予想(賃貸事業収益 92.4 億円)を 2 倍して年 185 億円とした。売却益は繰り返せないので除く。数量は築地を除く帳簿価額 2,729 億円に稼働率 98.7% を掛けた規模、価格は収入 ÷ 数量。NOI は運営費 43 億円を引いて 141 億円、セグメントの利益は減価償却 25 億円を引いた額。2026 年 1〜3 月の取得が第 28 期は一部期間のため、第 28 期の実績ではなく予想を使った。中立の価格は 10 年で 1.22 倍にとどまり、物価の 1.34 倍に届かないのは、固定賃料の部分が物価に連動しにくいため(業種ノート)。
リスクと懸念
借入の重さと借り換え
総資産に対する比率は 48.1%、鑑定評価額で割ると 40.1%。2 年内に累計 475 億円(34%)が満期になる。1% 前後から 3.4% 前後に借り換えると、年の利払いは 22 億円から 51 億円になる。
NAV を割る増資
2026 年 3 月の公募増資は NAV の 77% の価格。投資口価格が NAV を下回る間に増資すると、既存の投資主の取り分が薄まる。
オフィスへの偏り
取得価格の 60% がオフィス。供給が戻ると、増額が止まり、築 30 年超の物件で退去が出る。
資本的支出の低さ
直近 1 年で約 22 億円と、減価償却の約 25 億円を下回る。更新の先送りが続けば後で膨らむ。建築費は物価より速く上がる。
鑑定の前提
NAV の 0.64 倍は、市場が鑑定を割り引いている表れ。キャップが 4.26% に上がれば、含み益 799 億円は半分近くが消える。
売却益と内部留保に頼る分配
第 28 期の分配には売却益が含まれ、第 30 期の予想は圧縮積立金の取り崩しを前提にする。本業の利益が分配を下回る期が続けば、内部留保が減る。
今後の分かれ目
- 10 年国債の利回りが 2% 台前半へ戻り、借り換えが 2.5% 前後で済む
- 利払いの増加が小さくなり、純利益が 90 億円近くを保つ。楽観側の確率を上げる。
- オフィスの入替・更新の増額率が 5% を超えて数年続く
- NOI の伸びが年 3% に近づく。中立の見方を上げる。
- 東京経済圏のオフィス空室率が上がり、稼働率が 96% を下回る
- NOI の減りが想定より早まる。慎重側の確率を上げる。
- NAV 割れでさらに公募増資を行う
- 1 口の価値が薄まる。スポンサーの点数を上げ、悲観の確率を上げる。
- 借り換えを 3% 未満で済ませ、固定比率を保つ
- 利払いの増加が小さくなり、純利益の減りが止まる。中立の見方を上げる。
見ておくもの
- オフィスの入替・更新時の賃料増減率
- 借り換えの金利と、2 年内の満期
- NAV と投資口価格の差
- 資本的支出と減価償却の比
- 売却益と内部留保の残高
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や NAV 倍率から置いていない。10 年後の時価総額は、NOI から資本的支出を引いた額をキャップレートで割り、純負債を引いて出した。中立のキャップは用途の表を取得価格で加重した 4.26% で、今の鑑定の NCF 利回り 3.39% より高い。NAV(含み益)は床に使っていない。基本の資本的支出は、直近 1 年が約 22 億円と低いため、減価償却を上回る 30 億円まで引き上げた。
資本コスト 9.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.73% を足して 9.23%。用途の分散は cycle に入れたので extra は置かない。