結論
ポラリス・ホールディングスは、宿泊に絞ったホテルを借りて運営する会社だ。KOKO HOTELS などのブランドで、2026年3月末に国内外93軒、14,241室を持つ。買収と合併で、5年前の十数倍の規模になった。
筆者の結論は「割高」だ。事業の拡大は本物だが、拡大の大半は買収で、のれん約257億円が自己資本の大半を占める。ここから毎年13億円が費用になり、利益率の低さと借入金の利息を重ねて、純利益は営業利益の半分以下に削られる。
2026年3月期は売上485億円、営業利益40億円と増収増益だった。純利益46億円は、税金の戻り19億円を含む。今期は売上545億円、営業利益42億円を見込むが、純利益は16億円に下がる。
10年先の中立は、売上800億円、営業利益64億円、純利益33億円とみる。客室数は増えるが、競合の開業で稼働率は下がり、固定賃料と人件費の上昇が利益を抑える。ROEは7%前後で、資本コストに届かない。
懸念は、需要が落ちても払う固定賃料と、親会社スターアジアの意向で動く資本政策だ。過去20年で、赤字の期が10回ある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ポラリスは「成長は見えるが、買った値段が高い会社」だ。運営ホテルは増えているが、増えた分の多くは、のれんという形で、株式を払って買ったものだ。
堀は浅い。宿泊特化型は、立地と客室単価の競争が激しく、ブランドの力も大手ほど強くない。優良さは、親会社の紹介と資金に依存している。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、帳簿の純利益より大きい。のれんの償却13億円は現金が出ない費用で、これを足し戻すと、今期の利益は40億円を超える。この点は強気の言い分に分がある。
ただし、賃借型の固定賃料は現金で払い続ける費用だ。需要が落ちる年には、この固定費が利益を一気に削る。過去20年に赤字の期が10回あるのは、その表れだ。
資本の使い方は、評価が割れる。復配と配当性向30%の方針は前向きだが、買収を重ねて株数が増えた実績は、少数株主にとって良くない。筆者は、確信度を中くらいに置く。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、ホテルを借りるか、運営を請け負い、宿泊料金と料飲の売上を得ることだ。自分で建物を持つ割合は小さい。
セグメントは二つで、ホテル運営事業が利益のほぼ全部を稼ぐ。2026年3月期のセグメント利益は、運営51億円、投資0.4億円だ。運営は、国内のKOKO HOTELS、ベストウェスタン、Value the Hotelと、フィリピンのレッドプラネットに分かれる。国内の販売額は、フィリピンの10倍以上ある。
契約の形が利益の波を決める。もとは運営を受託する形が多く、売上のうち受託料だけを得た。最近は、固定賃料と変動賃料を払って借りる形に切り替えている。借りる形は、混んだ時の利益が大きいが、閑散期にも固定賃料を払う。客室の過半が借りる形になった。
2023年10月にフィリピンのレッドプラネット、2024年12月にミナシアを取り込んだ。ミナシアとは株式交換と、親会社のスターアジアからの融資100億円で一体になった。2026年5月には、ミナシアを吸収合併すると開示している。
ホテル投資事業は、ホテルの開発・保有・売却を手がける。売上は小さく、規模は推定した。
優良さと弱いところ
優良さは、宿泊に絞った運営の仕組みと、親会社の資金力にある。KOKO HOTELSは都市部の宿泊特化型で、予約・清掃・購買を共通にできる。軒数が増えるほど、本部の費用が薄まる。
スターアジアは、ホテル・不動産の投資を手がける。ポラリスは、運営の受け皿として出店の案件を紹介してもらえる。みずほリースも2026年2月に資本業務提携を決め、資金面の裏付けが広がった。
実績もある。2026年3月期は営業利益が44%増え、国内の稼働率は約80%、客室単価は前期比17%上がった。
弱みは、堀の浅さと財務だ。ホテルの運営は、立地と客室単価の競争が激しい。借りる形が増えて固定費が重く、営業利益÷支払利息は3.4倍にとどまる。
さらに、帳簿上の自己資本322億円のうち、のれんが257億円ある。株式交換で膨らんだ資本は、利益を生まない限り、ROEを押し下げる。筆者は、堀は浅く、利益の質は並と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の宿泊は、訪日客が過去最高の水準にあり、都市部の客室単価が上がっている。一方で、国内旅行の需要は調整局面にあり、人口減で長い目では細る。
ホテルの運営会社の競争は、立地と客室単価の勝負だ。都市部では新規開業が相次ぎ、供給が増える。宿泊特化型は、料飲や大浴場のコストを省けるため、利益率が高い代わりに、差別化は難しい。
費用の面では、人件費と清掃・リネンの外注費が上がり続けている。賃借型は、賃料が物価や売上に連動して上がる契約が多く、需要が落ちると固定費が重い。
為替が円安のうちは、訪日客の購買力が高く、大阪・東京・京都の客室単価を押し上げる。円高や海外情勢で需要が調整されると、都市部の稼働率が落ちる。
業界の再編は続いており、ポラリスも、買収と合併で規模を取ってきた。規模の経済は効くが、買収の値段が高いと、回収が遅れる。
宿泊特化型の運営会社は、出店のたびに物件の貸し手と賃料を交渉する。立地の良い物件は取り合いになり、賃料が上がる。貸し手が大手の不動産会社や投資ファンドなら、運営会社の取り分は薄くなりやすい。親会社に不動産の投資の窓口があることは、その点で有利に働く。
資本政策と M&A
還元は始まったばかりだ。連結配当性向30%を目標に掲げ、16年ぶりに復配し、3期連続で増配している。2027年3月期の配当は前期の倍の水準にする予定だ。自社株買いの方針は確認できない。
株主優待は、ホテルの宿泊割引券だ。費用の開示はなく、空室を使うため実質の負担は小さい。10年で4億円と仮置きした。
問題は、株数の増え方だ。株式交換による買収や増資で、過去20年に希薄化の期が8回ある。2026年3月末の株数は2.3億株に達した。親会社のスターアジアが議決権の約72%を持つ。少数株主にとって、新しい株式交換や増資の可能性は常にある。
のれんの償却と税金の戻りも、利益の質を落とす。2026年3月期の純利益46億円は、法人税等調整額の益19億円を含み、今期はその反動で16億円に減る見込みだ。
当サイトの参考値では、10年以内のTOBの確率は2割台前半ある。親会社の持分が7割を超えるため、非公開化の筋道は考えやすい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
統合の効果は、これから出る。ミナシアの取り込みで、運営ホテルは1.8倍、客室数は1.6倍になった。営業・予約・購買の仕組みが一本になれば、本部の費用が薄まり、同じ売上でも利益が増える。
需要も追い風だ。国内の稼働率は約80%で、客室単価は前期比17%上がった。訪日客は過去最高の水準で、大阪・東京・京都の都市部に集中する。KOKO HOTELSは、その需要を取れる立地に多く出している。
帳簿の数字は、実力より低い。のれんの償却13億円は現金が出ない費用で、これを除いた今期の利益は42億円ある。償却と税金の戻りの影響を除いた利益は、前期より増える見込みだ。
資金の面でも、スターアジアとみずほリースが支える。出店の案件が増え、資金調達の不安は小さい。復配と配当性向30%の方針は、株主を見ている証拠だ。
借りる形は、満室に近い時の利益の伸びが大きい。固定賃料を払った後の売上は、ほぼ全額が利益になる。稼働率が1ポイント上がるだけで、営業利益が数億円増える仕組みだ。都市部の客室単価が物価を上回って上がり続ければ、帳簿の利益は急に厚くなる。
慎重な見方
拡大は、買って膨らんだものだ。2024年12月の統合で、自己資本の大半がのれんになった。毎年13億円が償却されるが、買収の値段に見合う利益を生んでいるかは、これから分かる。今期の純利益は16億円まで減る見込みだ。
固定賃料が重い。客室の過半が借りる形で、需要が落ちても賃料は減らない。営業利益÷支払利息は3.4倍にとどまり、金利が上がると利息が増える。今期の第1四半期は、大阪の需要の反動と費用増で、営業利益が3割減った。
競合も増える。都市部の宿泊特化型ホテルの開業は続き、稼働率が下がれば、客室単価の上昇も止まる。人口減で国内の出張・観光需要は細る。
株主の取り分も薄い。過去20年に希薄化の期が8回、赤字の期が10回ある。親会社が議決権の約72%を持つため、新しい株式交換や増資の可能性は常に残る。
運営の実力も、まだ証明されていない。受託から借りる形に切り替えた判断が、需要の下振れ局面でも利益を守れるかは、一度も試されていない。統合後の予約・購買の効率化は、会社の計画であり、実績ではない。
どちらに重みを置いたか
事業の拡大と、親会社の支えには、強気の言い分に分がある。のれんの償却が現金の出ない費用である点も確かだ。一方で、固定賃料の重さと、買収で膨らんだ自己資本、赤字の期の多さは、慎重な言い分のとおりだ。
そこで、中立に最も厚く置き、楽観は合わせて25%、悲観は合わせて40%とした。赤字には落とさないが、悲観は厚めに置いた。結果として、本質価値は今の時価総額を下回り、割高の範囲に入った。割高の幅は大きい。のれん償却は現金が出ない費用なので、強気の言い分を倍率で一部取り入れたが、固定賃料と希薄化の重さが上回った。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 171 円399 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 33 円76 億円)。 今の値に割り戻すと 105 円247 億円、今との差 −44.2%、 期待の年率 +0.7%(資本コスト 7.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 464 円1,087 億円 | 63 円148 億円 | +179.1% | +10.8% | 37 円86 億円 |
| やや楽観 | 18% | 289 円678 億円 | 46 円107 億円 | +77.4% | +5.9% | 60 円141 億円 |
| 中立 | 35% | 189 円443 億円 | 33 円78 億円 | +17.6% | +1.6% | 78 円182 億円 |
| やや悲観 | 25% | 68 円158 億円 | 23 円53 億円 | −52.1% | −7.1% | 23 円53 億円 |
| 悲観 | 15% | 19 円45 億円 | 17 円40 億円 | −80.9% | −15.2% | 5 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 171 円399 億円 | 33 円76 億円 | +7.5% | +0.7% | 203 円475 億円 |
今の株価時価総額 189 円442 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 出店と単価が噛み合い、固定賃料の負担を超えて利益が伸びる 利益 66 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 464 円1,087 億円
運営ホテルは 100 軒を超え、国内の販売客室数は年 520 万泊に増える。ミナシアとの統合で営業・予約・購買の仕組みが一本になり、KOKO HOTELS への切り替えが進んで、客室単価が物価を超えて上がる。
インバウンドは大阪・東京・京都の都市部で高い水準を保ち、国内の出張・観光需要も崩れない。賃借型は固定賃料が重いが、稼働率が 80% 近くを保つため、増えた売上が利益に回る。
営業利益は 105 億円前後、利益率は 12% に乗る。のれん償却 13 億円は続くが、利益で薄まる。スターアジアの資金力で出店を続け、配当性向は 35% に上がる。
- 国内ホテル運営:数量 520(年間の販売客室数(万泊))× 価格 1.82(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目)。客室単価と付帯売上、受託型の料金体系を含む)→ 売上 948 億円・営業利益 119 億円。出店で 520 万泊、客室単価は物価超え(×1.45)
- フィリピンのホテル運営:数量 70.0(年間の販売客室数(万泊))× 価格 0.76(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 6 億円。フィリピンの出店が進む
- ホテル投資:数量 900(投資ホテルの保有室数(室、推定))× 価格 0.03(1 室あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。投資ホテルが増える
倍率:事業の純利益 66 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍。全体の PER 16.42 倍、時価総額 1,087 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店の継続、客室単価の物価超えの上昇、稼働率の維持、金利負担の軽さがそろう必要がある。条件が多く、過去 20 年で赤字の期が 10 回あるので 7% と低く置いた。
やや楽観 18% 出店が続き、単価が物価を少し上回る 利益 47 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 289 円678 億円
運営ホテルは 100 軒に近づき、販売客室数は国内で年 480 万泊に増える。統合の効果で予約・購買が効率化し、稼働率は 78% 前後を保つ。
客室単価は物価をわずかに超えて上がる。賃借型の固定賃料は増えるが、増えた売上で吸収できる。営業利益は 82 億円前後、利益率は 11% だ。
のれん償却 13 億円が重く、純利益は営業利益の半分ほどにとどまる。配当性向は 33% で、増配が続く。
統合後の仕組みで、新しい出店のたびに立ち上げの期間が短くなる。ただし、競合の開業も続くため、稼働率は 2 ポイントほど下がる。フィリピンは緩やかに広がり、利益への寄与はまだ小さい。
- 国内ホテル運営:数量 480(年間の販売客室数(万泊))× 価格 1.75(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目)。客室単価と付帯売上、受託型の料金体系を含む)→ 売上 839 億円・営業利益 92 億円。出店で 480 万泊、客室単価は物価を少し超える(×1.39)
- フィリピンのホテル運営:数量 62.0(年間の販売客室数(万泊))× 価格 0.73(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 5 億円。出店が緩やかに進む
- ホテル投資:数量 750(投資ホテルの保有室数(室、推定))× 価格 0.03(1 室あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。投資ホテルが緩やかに増える
倍率:事業の純利益 46 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍。全体の PER 14.57 倍、時価総額 678 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:出店は計画どおりに進み、客室単価も物価を少し超えるが、賃料と人件費の上昇で利益率は伸びきらない姿。蓋然性のある強気として 18% を置いた。
中立 35% 出店は続くが、単価は物価並みで利益率は 1 割どまり 利益 33 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 189 円443 億円
国内の宿泊需要は、インバウンドが下支えして落ちないが、新しく開業する競合が増え、稼働率は 80% から 76% に緩やかに下がる。販売客室数は出店で 440 万泊に増える。
客室単価は物価並みに上がり、1 泊あたり売上は 1.34 倍になる。賃借型の固定賃料は物価と連動して上がり、人件費も上がるため、営業利益率は 10% で止まる。
営業利益は 64 億円、利益率は 8.6% だ。のれん償却 13 億円と借入金の利息が重く、純利益は 30 億円台前半にとどまる。配当性向は 30% の方針が守られる。
- 国内ホテル運営:数量 440(年間の販売客室数(万泊))× 価格 1.68(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目)。客室単価と付帯売上、受託型の料金体系を含む)→ 売上 741 億円・営業利益 74 億円。出店で 440 万泊、客室単価は物価並み(×1.34)
- フィリピンのホテル運営:数量 55.0(年間の販売客室数(万泊))× 価格 0.73(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 4 億円。横ばいから微増
- ホテル投資:数量 600(投資ホテルの保有室数(室、推定))× 価格 0.03(1 室あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 20 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 443 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の宿泊需要は横ばいから微増、客室単価は物価並み。出店で数量は伸びるが、賃料と人件費、金利の上昇が利益の伸びを抑える。いちばん確からしい筋書きとして 35% を置いた。
やや悲観 25% 競合の新規開業と賃料の上昇で、固定費が重くなる 利益 18 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 68 円158 億円
都市部で競合の開業が続き、稼働率は 70% 台前半に下がる。販売客室数は 400 万泊で止まり、客室単価も物価に追いつかず 1.27 倍にとどまる。
賃借型の固定賃料は物価と連動して上がるため、売上が伸びなくても費用は減らない。営業利益率は 8.5% に下がり、営業利益は 42 億円前後と、今と同じ水準にとどまる。物価の分を引けば、実質で 3 割ほど減ったことになる。
のれん償却 13 億円と借入金の利息が重く、純利益は 10 億円台にとどまる。配当の方針は守るが、増配の余力はない。
出店は止まらないが、新しい物件は賃料が高く、採算は前の物件より劣る。ミナシアとの統合で期待した本部の費用の低下も、競合の値下げに食われる。のれんの償却は続き、帳簿の資本効率は 3% 台にとどまる。
- 国内ホテル運営:数量 400(年間の販売客室数(万泊))× 価格 1.60(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目)。客室単価と付帯売上、受託型の料金体系を含む)→ 売上 639 億円・営業利益 54 億円。稼働率の低下で 400 万泊、客室単価は物価に追いつかない(×1.27)
- フィリピンのホテル運営:数量 45.0(年間の販売客室数(万泊))× 価格 0.69(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。競合に押される
- ホテル投資:数量 500(投資ホテルの保有室数(室、推定))× 価格 0.03(1 室あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。売却が進み縮む
倍率:事業の ROE は 4% 台で、資本コスト 7.5% を大きく下回る。上限は 1÷k=11.8 倍で、その約 76% を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9 倍・時価総額 158 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:都市部のホテルの新規開業が重なり、稼働率が下がる一方、固定賃料と人件費が上がり続ける姿。賃借型が客室の過半なので、悪い方向に振れやすい。25% を置いた。
悲観 15% 構造的に負ける:人口減と供給過剰で、固定賃料が利益を食う 利益 6 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 19 円45 億円
国内の宿泊需要が人口減で細り、インバウンドも為替や情勢で調整に入る。ホテルの供給は増え続け、稼働率は 70% を割る。
販売客室数は 360 万泊にとどまり、客室単価は物価に追いつかず 1.23 倍にとどまる。賃借型の固定賃料は売上が落ちても減らず、営業利益率は 7% に沈む。
営業利益は 25 億円前後だ。のれん償却 13 億円は税の対象外のため、純利益は 5 億円ほどに削られる。配当は維持を優先し、利益の 35% を払う。
スターアジアが支援を続けるが、資本効率は低下し、ミナシア統合の成果は出ない。のれんの減損が出る恐れもある。
- 国内ホテル運営:数量 360(年間の販売客室数(万泊))× 価格 1.55(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目)。客室単価と付帯売上、受託型の料金体系を含む)→ 売上 557 億円・営業利益 39 億円。稼働率の低下で 360 万泊、客室単価は物価に追いつかない(×1.23)
- フィリピンのホテル運営:数量 35.0(年間の販売客室数(万泊))× 価格 0.63(1 泊あたり売上(億円/万泊・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。利益が出ない
- ホテル投資:数量 400(投資ホテルの保有室数(室、推定))× 価格 0.03(1 室あたり年間売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。売却が進み縮む
倍率:事業の ROE は 2% 以下で、資本コスト 7.5% を大きく下回る。上限は 1÷k=11.8 倍で、その約 7 割を稼ぐ力として置いた。市場の値付けは根拠にしない。借入金があるため純現金の床はなく、借りて運営するホテルは自社の資産ではないので、売れる資産による床も置かない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8 倍・時価総額 45 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:国内の人口減で出張・観光需要が細り、インバウンドが調整局面に入る中で、ホテルの供給過剰が続く構造的な負けの姿。賃借型の固定賃料が利益を直撃する。過去 20 年で赤字の期が 10 回あるので 15% と置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内ホテル運営
KOKO HOTELS、Best Western などの国内ホテルを、賃借・直営・運営受託の形で運営する。宿泊・料飲の売上と運営受託料。
| 数量年間の販売客室数(万泊) | 価格1 泊あたり売上(億円/万泊・名目)。客室単価と付帯売上、受託型の料金体系を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 350 | 1.26 | 440 | 48 |
| 10 年後 中立 | 440 | 1.68 | 741 | 74 |
取り方:国内ホテル運営の売上を約440億円、営業利益を約48億円とした。運営事業の売上(約470億円)のうち、フィリピン約30億円を除いた額と、運営セグメント利益51.0億円からフィリピンを除いた額による。販売客室数は、年平均の運営客室数(約12,000室)に稼働率80%を掛けて約350万泊とし、1泊あたり売上は1.257億円/万泊(客室単価に付帯売上を含む。RevPARの開示は約1万円で整合)。セグメント別の開示はなく、推定を含む。
フィリピンのホテル運営
2023 年に買収したレッドプラネットが、フィリピンの宿泊特化型ホテルを運営する。
| 数量年間の販売客室数(万泊) | 価格1 泊あたり売上(億円/万泊・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 0.55 | 30 | 3 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 0.73 | 40 | 4 |
取り方:フィリピンの売上は、決算説明で約30億円とされた。営業利益3億円は、運営セグメント利益51億円を国内と案分した推定。販売客室数は、1泊あたり売上を0.5455億円/万泊と置いて約55万泊と逆算した。開示はなく、推定を含む。
ホテル投資
ホテルの開発・保有・売却と、運営ホテルへの投資。外部売上のみ。
| 数量投資ホテルの保有室数(室、推定) | 価格1 室あたり年間売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.03 | 15 | 0 |
| 10 年後 中立 | 600 | 0.03 | 20 | 0 |
取り方:ホテル投資の売上は、開示がなく15億円と推定した。営業利益はセグメント利益の0.35億円による。保有室数600室、1室あたり年間売上250万円は逆算した推定で、規模の目安にとどまる。
リスクと懸念
固定賃料の重さと、需要の反動
客室の過半が借りる形で、需要が落ちても賃料は減らない。今期の第1四半期は、大阪の需要の反動と費用増で営業利益が3割減った。稼働率が数ポイント下がるだけで、営業利益が大きく目減りする。
のれんの減損と、ROEの低下
自己資本322億円のうち、のれんが約257億円ある。統合の成果が想定より遅れれば、減損が出る恐れがある。償却は毎年13億円で、約20年続く。
株数の希薄化と、親会社の意向
過去20年に希薄化の期が8回ある。株式交換や増資で株数が増えると、1株あたりの価値が薄まる。親会社のスターアジアが議決権の約72%を持ち、少数株主の意向が通りにくい。
借入金と金利の負担
営業利益÷支払利息は3.4倍にとどまる。純有利子負債は93億円で、10年国債が上がると、借り換えで利息が増える。10年で利益が約2億円減る推定だ。
競合の新規開業と人件費の上昇
都市部の宿泊特化型の開業が続き、稼働率が下がれば、客室単価の上昇も止まる。清掃・リネンの外注費と人件費は上がり続けている。
訪日客と国内旅行の調整
訪日客の需要は為替や海外情勢で変わる。国内旅行は調整局面にあり、人口減で長い目では細る。為替が円高に振れると、都市部の客室単価が下がる。
今後の分かれ目
- 国内の稼働率が80%を保ち、客室単価が前年比で物価を上回って上がる
- 固定賃料の負担を吸収できている証拠になる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- 営業利益率が7%を割り、賃借型の損益が悪化する
- 固定費の重さが表に出た証拠になる。やや悲観に重みを移す。
- のれんの減損が出る、または統合の効果が出ず純利益が計画を下回る
- 買収の回収が遅れている証拠になる。悲観の確率を上げる。
- 株式交換や増資で株数が10%以上増える
- 希薄化が進む。1株あたりの価値が薄まるため、中立の評価を引き下げる。
- 営業利益÷支払利息が5倍を超える、またはスターアジアが持分を減らす
- 財務の脆さが和らぐ。資本コストの借金の上乗せを下げる余地が出る。
- スターアジアが非公開化(TOB)に動く
- 少数株主に有利な価格が出るかが焦点になる。価格の水準を本質価値と比べて判断する。
見ておくもの
- 国内の稼働率と客室単価(前年比)
- 賃借型の割合と、営業利益率
- 営業利益÷支払利息と、純有利子負債
- のれんの償却額と、減損の有無
- 発行済株式数の増減(株式交換・増資)
- 親会社の持分とみずほリースの出資の動き
- 配当性向と、株主優待の内容
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPERを見ず、各筋書きのROEと資本コスト7.5%(基本7.5%に循環+0.5%、借金+0.5%)から正当化PERを計算して置いた。中立はROEが資本コストに届かず、上限1÷k=11.8倍の約9割に置いた。のれんの償却13億円は現金が出ない費用で、帳簿上のROEが実力より低く出るため、上限に近づけた。賃借のホテルの賃料は営業費用に入っており、新リース会計基準で数字の形が変わっても価値は動かない。純有利子負債は93億円で、利息を純利益に入れて価値に反映した。10年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→16.42 倍・やや楽観 PER 11.8→14.57 倍・中立 PER 10.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0%(循環 +0.5・借金 +0.5)を足して k 7.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.50%。