結論
霞ヶ関キャピタルは、用地を仕込み、自社が運営するファンドに載せて開発し、完成後に売る会社だ。対象はホテル、冷凍冷蔵の物流施設、データセンター、海外の住宅などである。筆者の結論は、事業の腕は本物だが、利益の質と借入を考えると、今の値段はほぼ妥当、というものだ。
腕の証拠は実績にある。純利益は5年で20倍になり、2026年8月期は167億円に達した。会社は2029年8月期に500億円を掲げる。
ただし利益は期末に偏る。今期は9か月で46億円にとどまり、残りの約120億円を最後の3か月で出した。ファンドへ売れた時点で益が立つ仕組みで、売れなければ在庫が積み上がる。
資本の面では、昨年11月に345億円の増資で自己資本比率を39%まで戻した。これからは借入が成長の燃料になる。金利が3%台に上がる世界では、この点が効いてくる。
10年後の中立の純利益は340億円。倍率は11倍弱が妥当だ。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額をわずかに上回るだけで、適正の圏内に収まる。計画の達成を信じる人には安く、疑う人には高い。その分かれ目が、確率の置き方に出る。
バリュー投資の観点から
オーナーとして持ち続けたい会社か。筆者の答えは、事業は評価できるが、値段を払って長く持つには、見通しの幅が広すぎる、だ。
評価できる点は三つある。第一に、実行力が高い。計画を上回る年が続き、組織が拡大に耐えている。第二に、資本効率が高い。自己資本を厚くしながら、ROEは20%台を保っている。第三に、時代に合う分野を早く押さえた。
気になる点も三つある。第一は、利益の質だ。売るたびに益が立ち、翌年の保証がない。第二は、資金の出し手に依存することだ。ファンドの買い手が消えれば、在庫が会社に残る。第三は、成長の速さそのものである。速く伸びる会社ほど、前提の一つが崩れた時の落差が大きい。
バリュー投資で見るのは、10年後に、払った値段に見合う利益が残るかだ。中立の筋書きで、この会社は利益を2倍に増やす。それでも本質価値は、今の時価総額を少し上回る程度にとどまる。安全域は厚くない。
事業が悪いのではない。悪い年の傷が深いことを、値段が十分に織り込んでいない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、用地の仕込みとファンドの組成だ。会社は土地を買い、ホテルや物流施設の計画を作り、開発ファンドに売る。完成すれば、物件は長く持つ安定ファンドに移る。
収益は三つある。一つ目は、開発ファンドへ土地を売る時の売却益。二つ目は、完成後に安定ファンドへ移す時の成功報酬。三つ目は、運用を受け持つ報酬だ。2025年8月期は、粗利益の約3割が成功報酬だった。
事業の領域は四つ。ホテル、インフラ(冷凍冷蔵倉庫・自動倉庫・データセンター)、海外、ヘルスケアである。今期のホテルは、用地の仕込みが22件、売却が16件、開業が5件。インフラは、神奈川県座間市でデータセンターの第1号案件が動き出した。海外は、米国のマイアミ案件を3月に取得し、8月にファンドへ移して益にした。
ヘルスケアは、診療報酬と介護報酬の改定を見極めるため、仕込みを止めている。会社が事業別の売上を細かく開示していないので、本稿の事業別の数字は推定だ。
この会社は、持つことで稼ぐのではなく、売ることで稼ぐ。ファンドの出し手が資金を出し続ける限り回る。資金が止まれば、土地と建物がそのまま会社の手元に残る。
優良さと弱いところ
優良さの評価は、実行力は高く、堀は浅い、だ。堀とは、他社がまねできない強みのことである。
実行力は数字に出ている。売上は5年で10倍以上になり、2026年8月期のROE(自己資本利益率)は27%だった。電力を確保した座間の用地や、冷凍冷蔵倉庫の私募ファンドなど、需要の強い分野に早く入った。ホテルでは、改装で稼ぐ力を3倍に上げた例も示している。
ただ、堀は深くない。用地を探し、ファンドの出し手を集める力は人と関係に宿る。他の開発会社や外資系の運用会社も、同じ分野に入ってくる。値段を自分で決められる事業でもない。
利益の質にも注意がいる。売却益は決済した時点で立ち、翌年も同じ額が入る保証はない。大型の土地売却では、相手と価格が守秘義務で非公表の例もある。貸借対照表には、ファンドの出資持分が100億円超載る。その時価評価が利益を動かす。
経営は、成長を最優先にしてきた。増資は何度もあり、1株当たりの価値は利益の伸びより遅れやすい。筆者は、その代わりに利益と自己資本が大きく積み上がった点を評価する。一方で、事業を続けるために資金を外から集め続ける体質は変わらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は強い。ただ、風向きが変わる日は必ず来る。10年の見方は、この一点にかかっている。
追い風の第一は、インバウンド(訪日客)だ。ホテルの客室単価と稼働が上がり、ホテルを買いたい投資家が増えた。第二は、AIとクラウドの投資である。電力を確保できる用地は希少で、データセンターと物流の用地の価値が上がった。第三は、建設費の上昇だ。2021年以降に2〜4割上がり、新築の供給が細った。完成した物件の価値は、その分だけ守られる。
向かい風もはっきりしている。10年国債が3%の世界では、賃貸物件の期待利回りが上がり、買い手が払える値段が下がる。ファンドの出し手も、案件を選ぶようになる。データセンターや物流施設は、電力や用地の制約が緩めば供給過剰になる。そうなれば、開発の利益は構造的に薄くなる。
競合は、エスコンのような同じ型の開発会社に加え、商社系の会社や外資系ファンドだ。ブラックストーンのような資金力のある相手も、同じ資産に入ってくる。この会社の差は、大手が拾いにくい中規模の案件を、速く仕込んで速く売る力にある。
成長の数量は、資金の流入額と案件の数で決まる。データセンター・物流への資金は10年で年3〜5%、ホテルは年2%ほど伸びるのが目安だ。それを大きく上回るなら、シェアを取り続けている証拠になる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、成長優先だ。配当は出すが、利益の大半は次の用地とファンドに回る。
2025年11月に、公募増資で345億円を調達した。会社は、これで大型案件を仕込めたと説明する。1株当たりの利益は薄まったが、自己資本比率は29.7%から39.1%へ上がった。今後は、株主の資金ではなく借入を成長の中心に置くと明言している。
配当は、2027年8月期も増やす予定だ。ただ配当性向は2割前後で、手厚い還元とは言えない。ROEの下限25%、目標30%を掲げる会社が、利益を事業に戻すのは筋が通る。
ファンドへの出資持分や、ファンドに載せない大型の資産も増えている。ここが資本配分のいちばんの見どころだ。
M&Aでは、買う側としては小さな出資にとどまる。上場会社としては小型で、TOBの対象になる可能性は、10年で見て2割ほどある。
点検済み(費用点検):今の -110 億円は、2026/08 期の売上でセグメントを積んだ合計と 2025/08 期の実績営業利益の差。同じ期の会社予想(営業利益 265 億円)で比べるとセグメント外は約 -34 億円で、中立 -60 億円はそれ以上に置いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2029年8月期の純利益500億円は、届く目標だ。会社は第1期の計画を1年前倒しで達成し、その後も毎年のように計画を上回ってきた。
仕込みの量が、その裏付けになる。運用中と開発中、開発前の案件を合わせると、パイプラインは1兆2千億円に達した。ホテルは今期だけで22件を仕込み、16件を売った。インフラは年5〜10件の用地を仕込み続ける。座間のデータセンターは、電力を確保した用地という、他社が簡単にまねできない資産を持つ。
資金の道も開けた。公募増資で自己資本を厚くし、借入の余力は約700億円ある。DBJ(日本政策投資銀行)が厚木の物流ファンドに出資するなど、大きな出し手が付き始めた。
事業の幅も広がる。ホテル、物流、データセンター、米国と、一つの市場が崩れても別の市場で補える。運用の報酬が積み上がれば、売却益に頼らない土台もできる。
最後に、会社はまだ小さい。不動産投資の市場全体から見れば、まだ小さな存在だ。この会社が1兆5千億円の運用資産に届き、10年で純利益が3倍以上になる絵は、十分に描ける。
慎重な見方
利益の質は低く、10年の見通しは、資金の出し手の機嫌に左右される。
今期の利益167億円のうち、最後の3か月で約120億円を出した。9か月の営業利益は前年を12%下回っていた。決算の直前に益が集中する構造は、1件のずれが通期を大きく動かす。
売却益は、会社が運営し出資もしているファンドへの売却で立つ。出し手が資金を絞れば、売却は止まる。在庫は712億円まで積み上がっており、この在庫が会社に戻れば、借入で抱えることになる。
金利は3%の世界へ向かう。賃貸物件の期待利回りが上がれば、ファンドが払える値段は下がる。ホテルは地方リゾートの立ち上がりに時間がかかり、データセンターは供給過剰になるかもしれない。2008年には、私募ファンド市場が止まり、複数の運用会社が破綻した。
海外は米国の金利やドバイの情勢に左右される。ヘルスケアは仕込みを止めた。株数は増資で2割増え、1株当たりの価値は薄まった。
10年先を考えれば、毎年の高い成長を続けるには、毎年、新しい出し手が要る。その前提を、10年外し続けない方が自然だ。
どちらに重みを置いたか
事業の実行力では強気の見方が優勢で、利益の質と資金の出し手の依存では慎重な見方が的を射ている。
強気の言い分は、実績とパイプラインの量に裏付けがある。慎重な見方は、利益が期末に偏ることと、売却の相手が資金の出し手であることを突く。どちらも事実だ。
確率は、中立に最も厚く置いた。上振れは、計画の達成が前提で、2割台にとどめた。悪い側は、資金の出し手が引く展開を重く見て、合わせて3分の1強を残した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 19,136 円4,696 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,966 円728 億円)。 今の値に割り戻すと 10,656 円2,615 億円、今との差 +59.1%、 期待の年率 +12.7%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 39,751 円9,754 億円 | 4,564 円1,120 億円 | +561.4% | +20.8% | 3,545 円870 億円 |
| やや楽観 | 20% | 30,810 円7,560 億円 | 3,774 円926 億円 | +416.2% | +17.8% | 6,917 円1,697 億円 |
| 中立 | 36% | 23,013 円5,647 億円 | 3,305 円811 億円 | +292.8% | +14.7% | 9,474 円2,325 億円 |
| やや悲観 | 24% | 5,425 円1,331 億円 | 2,572 円631 億円 | +19.3% | +1.8% | 1,919 円471 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,728 円424 億円 | 326 円80 億円 | −69.3% | −11.2% | 246 円60 億円 |
| 加重平均 | 100% | 19,136 円4,696 億円 | 2,966 円728 億円 | +229.9% | +12.7% | 22,102 円5,423 億円 |
今の株価時価総額 6,700 円1,644 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画をやり切り、運用資産が3倍になる 利益 579 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 39,751 円9,754 億円
計画をやり切り、その後も伸びる。2029年8月期に純利益500億円へ届き、2036年8月期には580億円前後まで積み上がる。ホテルは年36件、インフラは年24件を売り、米国と中東にも広がる。
運用資産は約2兆8千億円まで増え、運用報酬と成功報酬が利益の柱になる。DBJのような大きな出し手が付き、ファンドの買い手が尽きない。借入は増えるが、借入の一部をファンド側に置く工夫で、自己資本比率は3割台を保つ。
10年後の営業利益は今の3.5倍。ROEは17%ほどに落ち着く。この絵が10年続くには、都心のホテル、物流、データセンターの値段が崩れないことが前提だ。
- ホテル:数量 36.0(年間の売却件数(件))× 価格 50(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,809 億円・営業利益 217 億円。36 件 × 50.25、営業利益率 12.0%
- インフラ(物流・データセンター):数量 24.0(年間の売却件数(件))× 価格 80(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,930 億円・営業利益 241 億円。24 件 × 80.4、営業利益率 12.5%
- 海外(米国・ドバイ・マレーシア):数量 14.0(年間の売却件数(件))× 価格 87(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,219 億円・営業利益 171 億円。14 件 × 87.1、営業利益率 14.0%
- ヘルスケア:数量 12.0(年間の売却件数(件))× 価格 20(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 241 億円・営業利益 27 億円。12 件 × 20.1、営業利益率 11.0%
- ファンド運用・成功報酬:数量 28,000(運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.03(残高あたりの報酬(比率))→ 売上 708 億円・営業利益 453 億円。28000 億円 × 0.0253、営業利益率 64.0%
倍率:事業の純利益 579 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍。全体の PER 16.5 倍、時価総額 9,560 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画の超過実績とパイプラインの量は確かだが、10年連続で出し手の資金と市況が続く必要がある。上振れは8%にとどめた。
やや楽観 20% 計画の7割で、成長が続く 利益 450 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 30,810 円7,560 億円
計画には届かないが、成長は続く。2029年8月期は350億円ほどで、500億円の目標には届かない。それでも、年間の売却件数はホテルで31件、インフラで19件まで増える。
データセンターは電力の制約で、計画より遅れる。海外は米国が軌道に乗る一方、ドバイの比重は下がる。運用資産は約2兆2千億円になり、運用報酬が利益の4割を占める。ホテルは改装して稼ぐ力を上げる型が定着し、開業の件数が積み上がる。借入の利払いは利益の2割ほどを食うが、売却益で吸収できる。
10年後の営業利益は今の2.8倍。ROEは15%ほど。配当性向は3割程度を保ち、増資は再び要らない。ただ、毎年新しい案件を仕込み続ける体質は変わらず、ファンドの出し手が付き続けることが前提になる。
- ホテル:数量 31.0(年間の売却件数(件))× 価格 50(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,558 億円・営業利益 179 億円。31 件 × 50.25、営業利益率 11.5%
- インフラ(物流・データセンター):数量 19.0(年間の売却件数(件))× 価格 80(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,528 億円・営業利益 183 億円。19 件 × 80.4、営業利益率 12.0%
- 海外(米国・ドバイ・マレーシア):数量 11.0(年間の売却件数(件))× 価格 87(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 958 億円・営業利益 125 億円。11 件 × 87.1、営業利益率 13.0%
- ヘルスケア:数量 11.0(年間の売却件数(件))× 価格 20(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 221 億円・営業利益 23 億円。11 件 × 20.1、営業利益率 10.5%
- ファンド運用・成功報酬:数量 22,000(運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.03(残高あたりの報酬(比率))→ 売上 557 億円・営業利益 351 億円。22000 億円 × 0.0253、営業利益率 63.0%
倍率:事業の純利益 450 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.23 倍、時価総額 7,304 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:腕と資金調達力が保たれ、会社の目標の7割程度まで進む現実的な上振れ。実績を評価して2割を置いた。
中立 36% 腕は保たれるが、追い風は弱まる 利益 340 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 23,013 円5,647 億円
腕は保たれるが、追い風は弱まる。インバウンドと物流の需要は続くが、金利が3%台に定着し、期待利回りが上がる。10年のうち一度は、ファンドの出し手が案件を絞る谷が来る。
それでも事業は続く。年間の売却は、ホテルが26件、インフラが15件まで増える。運用資産は約1兆7千億円に届き、運用報酬が利益の4割を占める。借入は物価の分だけ増え、利払いが利益を削る。
10年後の営業利益は590億円前後、純利益は340億円。ROEは13%ほどで、資本コストをわずかに上回る。成長を続ける中堅の開発会社が、普通の収益力に落ち着く姿だ。
- ホテル:数量 26.0(年間の売却件数(件))× 価格 50(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,307 億円・営業利益 137 億円。26 件 × 50.25、営業利益率 10.5%
- インフラ(物流・データセンター):数量 15.0(年間の売却件数(件))× 価格 80(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,206 億円・営業利益 133 億円。15 件 × 80.4、営業利益率 11.0%
- 海外(米国・ドバイ・マレーシア):数量 9.0(年間の売却件数(件))× 価格 87(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 784 億円・営業利益 94 億円。9 件 × 87.1、営業利益率 12.0%
- ヘルスケア:数量 10.0(年間の売却件数(件))× 価格 20(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 201 億円・営業利益 20 億円。10 件 × 20.1、営業利益率 10.0%
- ファンド運用・成功報酬:数量 17,000(運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.03(残高あたりの報酬(比率))→ 売上 430 億円・営業利益 267 億円。17000 億円 × 0.0253、営業利益率 62.0%
倍率:事業の純利益 340 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.81 倍、時価総額 5,371 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:追い風が弱まり、一度は谷が来るが、事業は続くという落としどころ。最も重い確率として36%を置いた。
やや悲観 24% 出し手が絞り、回転が鈍る 利益 148 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 5,425 円1,331 億円
出し手が絞り、回転が鈍る。金利が3%台で定着し、ファンドが払える値段が下がる。期待利回りの上昇で、開発の利益は薄くなる。金融機関と出し手の双方が、案件を選ぶようになる。
ホテルは地方リゾートの立ち上がりが遅れ、売却が年18件にとどまる。データセンターと物流は、供給が増えて用地の値段が下がる。海外は、米国の金利と中東の情勢で件数が伸びない。運用資産は約1兆2千億円。
10年後の営業利益は270億円。借入の利払いが重く、純利益は150億円弱。ROEは8%台で資本コストに届かない。会社は残り、配当も出すが、成長の物語は終わる。新しい分野に手を広げても、出し手を見つける力が先に衰え、普通の中堅の開発会社に近づく。
- ホテル:数量 18.0(年間の売却件数(件))× 価格 45(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 810 億円・営業利益 65 億円。18 件 × 45.0、営業利益率 8.0%
- インフラ(物流・データセンター):数量 10.0(年間の売却件数(件))× 価格 72(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 720 億円・営業利益 61 億円。10 件 × 72.0、営業利益率 8.5%
- 海外(米国・ドバイ・マレーシア):数量 5.0(年間の売却件数(件))× 価格 78(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 390 億円・営業利益 31 億円。5 件 × 78.0、営業利益率 8.0%
- ヘルスケア:数量 6.0(年間の売却件数(件))× 価格 18(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 108 億円・営業利益 8 億円。6 件 × 18.0、営業利益率 7.0%
- ファンド運用・成功報酬:数量 12,000(運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.02(残高あたりの報酬(比率))→ 売上 272 億円・営業利益 150 億円。12000 億円 × 0.0227、営業利益率 55.0%
倍率:ROE 8.2%(事業の純利益÷自己資本)が k 8.25% 以下なので、正当化 PER は 1÷k=10.5 倍が上限。出し手が絞り、利益が谷で薄く、案件を仕込み直す必要もあるので、上限の6.7割の 7.0 倍に置いた。
確率:金利上昇と出し手の選別で、開発の利益が構造的に薄くなる。資金で回す開発会社に起こりやすく、24%を置いた。
悲観 12% ファンドが止まり、在庫が戻ってくる 利益 18 億円 · PBR 1.2 倍 · 株価時価総額 1,728 円424 億円
ファンドが止まり、在庫が戻ってくる。金利の上昇と市況の悪化で、開発ファンドの出し手が資金を引く。売却が止まり、仕込んだ用地と建設中の物件が会社の手元に残る。
会社は在庫を値引きして売り、評価損を出す。借り換えは厳しくなり、新しい仕込みは止まる。年間の売却件数は今の半分以下になり、運用資産も7千億円まで縮む。海外の案件は、米国の金利とドバイの情勢が重なって売れ残る。ファンドへの出資持分も、時価の下落で評価損になる。
10年後も会社は生き残るが、営業利益は35億円ほど。純利益は十数億円で、配当は止まる。価値は、売れる資産を処分して借入を返した後の、純資産の水準にまで下がる。2008年のリーマン後に、複数の運用会社が行き詰まった時の姿に近い。
- ホテル:数量 9.0(年間の売却件数(件))× 価格 36(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 321 億円・営業利益 10 億円。9 件 × 35.625、営業利益率 3.0%
- インフラ(物流・データセンター):数量 4.0(年間の売却件数(件))× 価格 57(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 7 億円。4 件 × 57.0、営業利益率 3.0%
- 海外(米国・ドバイ・マレーシア):数量 2.0(年間の売却件数(件))× 価格 62(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 124 億円・営業利益 3 億円。2 件 × 61.75、営業利益率 2.0%
- ヘルスケア:数量 3.0(年間の売却件数(件))× 価格 14(1件あたり売上(億円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。3 件 × 14.25、営業利益率 2.0%
- ファンド運用・成功報酬:数量 7,000(運用資産残高(億円・実質))× 価格 0.02(残高あたりの報酬(比率))→ 売上 126 億円・営業利益 50 億円。7000 億円 × 0.018、営業利益率 40.0%
倍率:ROE 1% が k 8.25% を大きく下回り、稼ぐ力(純利益÷k)は20億円足らず。価値は売れる資産の税後(floor_assets_oku)の水準まで下がる。検査の基準の自己資本は増資前の2025年8月期の362億円で、1.17 倍は実際の自己資本(約860億円)の約0.5 倍に当たる。純有利子負債を足したEV÷営業利益は24倍と高く見えるが、営業利益が谷の底の年の値で、倍率で語る水準ではない。
確率:私募ファンド市場が止まった2008年と同じ型の筋書き。会社は在庫712億円を抱え、無視できない12%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ホテル
ホテルの用地の仕込み、開発、改装。ファンドへの売却と、開業後の運営の改善。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 16.0 | 38 | 600 | 70 |
| 10 年後 中立 | 26.0 | 50 | 1,307 | 137 |
取り方:2026年8月期のホテルの売却は16件(会社の説明)。事業別の売上は短信本文を取れず、全体の売上1,638億円を分けて推定した。ホテルは約600億円とみて、1件約37.5億円と置く。件数は実質の数量、物価と物件の大型化は単価に入れる。営業利益率は約12%。 数量は実物(売却件数)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は会社の仕込み計画。単価は物件の大型化と物価。
インフラ(物流・データセンター)
冷凍冷蔵倉庫、自動倉庫、データセンターの用地仕込みと開発。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 8.0 | 60 | 480 | 55 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 80 | 1,206 | 133 |
取り方:年5〜10件の用地仕込みを続けており、売却は年8件前後とみる。売上は約480億円と推定し、1件約60億円。営業利益率は約11.5%と置いた。事業別の開示は確かめられず推定。 数量は実物(売却件数)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は用地の仕込み拡大。単価は物価と大型化。
海外(米国・ドバイ・マレーシア)
米国のホテルと住宅、ドバイの住宅、マレーシアの物流の開発とファンド化。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 4.0 | 65 | 260 | 40 |
| 10 年後 中立 | 9.0 | 87 | 784 | 94 |
取り方:米国のマイアミ案件を8月にファンドへ移して益にした。ほかにラスベガスとダラスの契約がある。売上は約260億円と推定し、年4件・1件約65億円。営業利益率は約15%。推定。 数量は実物(売却件数)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は米国などの案件の積み上がり。単価は物価と大型化。
ヘルスケア
介護施設などの開発とファンド化。今は診療報酬の改定を見極めるため、仕込みを止めている。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 8.0 | 15 | 120 | 14 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 20 | 201 | 20 |
取り方:2026年8月期に8件を開業した。売上は約120億円と推定し、1件約15億円。営業利益率は約12%。推定。
ファンド運用・成功報酬
ファンドから受け取る運用報酬、プロジェクト管理の報酬、安定ファンドへ移す時の成功報酬。
| 数量運用資産残高(億円・実質) | 価格残高あたりの報酬(比率) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/08 | 9,500 | 0.02 | 180 | 120 |
| 10 年後 中立 | 17,000 | 0.03 | 430 | 267 |
取り方:運用資産残高は約9,500億円(会社の説明)。売上は約180億円と推定し、比率は0.0189。成功報酬を含むので、案件の売買の回転が高いと高く出る。営業利益率は約67%と置いた。2025年8月期は粗利益の約3割が成功報酬だった。 数量は実物(運用資産残高)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は新規ファンドの組成。手数料率は成功報酬の増加。
リスクと懸念
利益が期末の売却に偏る
今期は9か月で純利益46億円、通期で167億円。最後の3か月で約120億円を出した。売却が1件ずれるだけで、通期の利益が大きく動く。売る事業なので、毎期なめらかに入る保証はない。
ファンドの出し手への依存
売却益は、会社が運営するファンドに土地や物件を売って立つ。出し手が資金を絞れば売却が止まり、在庫が会社に戻る。2008年には私募ファンド市場が機能不全になり、複数の運用会社が破綻した。
借入の増加と金利
在庫は712億円で、今後は借入が成長の中心になる。借り換えのたびに金利は3%台の新しい水準になり、利払いが利益を削る。会社の説明では借入余力は約700億円だが、使い切れば自己資本比率は30%まで下がる。
分野の供給過剰と利回りの上昇
物流とデータセンターは、電力と用地の制約が緩めば供給が増える。そうなれば期待利回りが上がり、ファンドが払える値段が下がる。ホテルも、地方リゾートの立ち上がりに時間がかかる。
海外事業の不確かさ
米国のマイアミ、ラスベガス、ダラス、ドバイ、マレーシアと、手を広げている。米国の金利と不動産価格、中東の情勢が直撃する。海外の案件を日本のファンドの出し手に売る型は、まだ新しい。
希薄化と利益の透明性
2025年11月の公募増資で、株数は2割ほど増えた。過去にも希薄化が5回ある。ファンドの出資持分は時価で評価され、一部の大型の売却は相手と価格が非公表で、利益の見通しが外から読みにくい。
今後の分かれ目
- 2027年8月期の純利益が、会社予想の240億円に届いたら
- 計画の信頼が高まり、中立から楽観側へ確率を移してよい。ただし最後の3か月の偏りが続くか、在庫と借入の伸びが利益の伸びを上回らないかを合わせて確かめる。
- 期末の売却が翌期にずれ、通期の計画を下げたら
- 利益の偏りという弱点が表に出たとみて、悪い側へ確率を移す。在庫の増加と自己資本比率の低下も同時に見る。
- ファンドの出し手が案件を絞り、開発ファンドの組成が減ったら
- 回転が鈍る、やや悲観の筋書きに近づく。パイプラインのうち開発前の案件が、開発中に進むかが目安になる。
- 座間のデータセンターが予定どおり進み、同種の案件が続いたら
- 電力を確保した用地という堀が確認でき、インフラの数量を上方に見直してよい。供給過剰の兆しが出ていないかも見る。
- 米国や中東の案件で、売却益が出ずに在庫が残ったら
- 海外の成長を割り引き、資本配分の規律を点検する。確率を悪い側へ移す。
- 運用資産に対する運用報酬が積み上がり、売却益に頼らない収益が増えたら
- 利益の質が上がる。倍率を式の上限に近づけてよく、楽観寄りに見直す。
見ておくもの
- 四半期ごとの純利益と、最後の3か月への偏りの度合い
- 棚卸資産と有利子負債、自己資本比率(30%が目安)
- パイプラインの進み方(開発前→開発中→運用中)と運用資産残高
- ホテルの売却件数・開業件数と、座間のデータセンターの進み具合
- 成功報酬の比率と、ファンドの出し手の顔ぶれ
倍率と資本コストの決め方
まず、セグメントごとに売却の件数と1件あたりの売上、運用資産と報酬の比率で、10年後の利益を積んだ。次に、10年後のROEと資本コスト8.25%(基本7.5%に循環・値決め・借金・寿命の+2.0%)から、倍率を式で出した。今の株価からは置いていない。倍率は中立で10.8倍。ROEが13%で資本コストを少し上回るので、1÷k=10.5倍を下回らせず、利益の質の低さで上限の9割強に置いた。事業別の売上は、短信本文を取れず推定。2026年8月期の自己資本は約860億円と推定した。今期の純利益が第4四半期に集中している点は、利益の質として確率と倍率に反映した。新リース会計の影響は、家賃より保有物件が中心で小さいとみて、今の形(家賃を営業費用に入れる形)に合わせた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→16.5 倍・やや楽観 PER 11.4→16.23 倍・中立 PER 10.8→15.81 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。