結論
東京建物は、東京駅前の八重洲・日本橋・京橋(YNK)で再開発を重ねる総合不動産会社だ。筆者の結論は「やや割高」で、割高に見えかけた一番の理由は、純負債の重さを資本コストに映すと、利払い増で8%台にとどまるROEでは今の値段を支えきれないことだ。
稼ぎの土台は賃貸だ。都心の空室率は低く、賃料は物価と一緒に上がる。2026年2月には東京駅直結の TOFROM YAESU TOWER が竣工し、賃貸の面積が増える。分譲マンションと投資家向けの物件売却が、利益の振れ幅を作る。
気になるのは借金だ。純有利子負債は自己資本の2倍と、大手の中で重い。10年国債が3%で定着すれば、借り換えのたびに利払いが増える。筆者は、これで ROE が会社の掲げる10%に届かず、8%台にとどまると見る。この重さを資本コストにも映し、基本7.5%に借金+1.0%・循環+0.25%を足した8.75%で測る。10年の間に、利払いが増益を食う。10年後は、賃貸が物価並みに積み上がる一方、売却益は今の水準を実質では割り込む。借金の重さと売却益の振れを織り込み、悲観の筋書きは三菱地所や三井不動産より厚くした。悲観を厚く見ても資産の裏付けはあるが、含み益の額は開示で確認できず推定にとどまる。その資産の裏付けは、悲観の筋書きの床として使った。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を1割強下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、東京建物の本質価値は何で決まるか。一言で言えば、賃貸の積み上げと、売却益の質だ。賃貸は物価と一緒に上がり、再開発で面積も増える。ここには持ち続けたいと思える強さがある。
問題は、稼ぎのうち株主の手元に残る「オーナー利益」の大きさだ。再開発と資産回転に毎年多額を投じる。純利益のうち売却益が占める分は一回限りの性質を持つ。見た目の利益より保守的に見るべきだ。
資本の使い方は、方向は正しい。政策保有株を減らし、ROE を10%に置き、配当性向を上げる。ただ、純負債が自己資本の2倍と重いのは、安全域の面で弱い。金利が3%で定着すると、借り換えのたびに利益が削られる。保有ビルの含み益は厚く、悪い年でも下値を支えるが、その額は開示で確認できず、推定にとどまる。
払う値段に十分な安全域があるかを問われれば、資産の裏付けはあるが、借金が重いので、強気には見られない。分からない部分、つまり売却益の見通しと海外の収益は、確信を下げて見ている。
何で稼ぐ会社か
東京建物は、1896年に安田善次郎が創業した不動産会社だ。稼ぎは3本ある。1本目はビルの賃貸と運営で、八重洲・日本橋・京橋(YNK)の都心オフィスを核に、商業施設・物流施設(T-LOGI)・ホテルも持つ。2本目は住宅で、Brillia ブランドの分譲マンションを開発して売る。3本目はアセットサービスで、ビルやマンションの管理、駐車場(日本パーキング)、仲介、ファンドの運用で手数料を得る。
2025年12月期の営業利益は958億円だった。内訳は、ビル事業が約670億円、住宅事業が約260億円、アセットサービス事業が約115億円で、残りは本社費などの調整にあたる。ビル事業は前の期から6割伸び、住宅事業は3割減った。伸びと減りがここまで違うのは、投資家向けの物件売却が一時的に増えたためだ。
この売却が3本にまたがる。自社で開発したビルを竣工後に投資家へ売り、売却益と手数料を得る回転型の事業だ。売却益は年ごとの振れが大きい。中計は3年で投資家向け物件の売却益を約1,100億円と見込む。
2026年2月には、東京駅直結の TOFROM YAESU TOWER が竣工した。約25年かけた再開発で、これが賃貸の面積と収益を押し上げる。YNK では今後も再開発の竣工が続く。海外は米国・英国・アジアに投資しているが、中計の期間では投資拡大期で利益はマイナスの見込みだ。2030年の事業利益の約1割を海外に担わせる計画である。
優良さと弱いところ
筆者がまず見るのは、堀、つまり他社がまねできない強みの厚さだ。東京建物の堀は、YNK というまとまった街にある。八重洲・日本橋・京橋は東京駅に近く、再開発が重なるほど街の価値が上がる。ただ、丸の内を押さえる三菱地所や日本橋に強い三井不動産に比べ、規模も資本も一回り小さい。三菱地所の営業利益は3,297億円で、東京建物の958億円の3倍強ある。堀は「ある」が、「強い」とまでは言いにくい。
資本の使い方には評価と不安が混ざる。評価できるのは、ROE を中計で10%に置き、政策保有株を純資産の1割以下まで減らし、配当性向を40%へ上げる点だ。不安は、利益の質と借金の重さにある。投資家向けの売却益は年ごとの振れが大きい。純有利子負債は自己資本の2倍、自己資本比率は26%で、借り換えのたびに利払いが重くなる。2011年に赤字を出した前例もある。
経営は「次世代デベロッパー」を掲げ、売却と分譲を増やす方向に舵を切った。2030年の利益構成を賃貸3割・分譲売却6割に見直したのは、再開発の竣工が遅れた事情もあるが、利益の波が大きい構成に寄ることでもある。筆者は、この波の大きさが本当に持ち続けたい事業の姿なのかを、いちばん気にしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
大手の総合デベロッパー6社は、都心のオフィス賃貸を土台に、分譲・商業・ホテルを組み合わせる。東京建物はその中で、規模では下位、街の縄張りでは YNK という位置にある。三菱地所は丸の内、三井不動産は日本橋と八重洲の一部、住友不動産は新宿を押さえ、街ごとに縄張りが分かれている。東京建物の YNK は三井不動産の日本橋と重なる所があり、全部を独り占めできるわけではない。野村不動産と東急不動産は、分譲や商業・リゾートに強みを持つ。
足元は貸し手に有利だ。都心5区のオフィス空室率は1.85%と低く、賃料は32カ月連続で上がっている。首都圏の新築マンションは発売戸数が2025年に2万戸強と1973年以降で最少で、平均価格は過去最高だ。数は減り、単価は上がる局面が続いている。
今後の分かれ目は金利だ。10年国債が3%で定着すると、不動産の買い手が求める利回りが上がり、資産の値上がりが止まりやすい。東京建物は売却益を稼ぎの柱にしているので、この影響を大手より受けやすい。もう一つは東京一極集中だ。金融・IT・外資の集積が続けば賃料は底堅いが、企業の地方分散が進めば伸びは止まる。人口減少は分譲の戸数をじわじわ削る。大手は海外とファンド運用への配分を増やし、事業の形が似てきている。東京建物の海外は、まだ利益が出る前の段階にある。
資本政策と M&A
資本政策は、中計(2025〜2027年度)で明確になった。目標は2027年度の事業利益950億円、純利益600億円、ROE 10%、配当性向40%だ。政策保有株の純資産比率を10%以下へ減らし、固定資産と合わせて累計1,300億円以上を売る。2026年は会社予想を上方修正し、配当も増やした。
投資は大きい。3年で再開発に約2,000億円、資産回転型に約9,700億円を投じる。資産回転型の内訳は分譲マンション、投資家向け物件、海外だ。戦略的資金枠は500億円で、買収や株主還元に使う。自社株買いは機動的に行う方針で、積極的に買い進めるとは言っていない。財務の指針は、自己資本の2.4倍程度の借金、有利子負債がEBITDAの12倍程度と、借金を使う前提だ。
M&A では、日本パーキングを2011年に完全子会社にした。2023年には日本プライムリアルティ投資法人の運用会社を取得すると開示した。大手同士の合併は考えにくい。一方、PBR が1倍前後で時価総額は6,700億円と小さく、kabufu の推計でも10年以内の TOB の確率は17%ある。含み益の厚い都心の資産を持つため、他社が狙う余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
YNK は東京駅前の最も良い立地の一つで、TOFROM YAESU TOWER が2026年に竣工した。この大型ビルが通年で稼ぎ始める。都心の空室率は1.85%と低く、賃料は32カ月連続で上がっている。中計の2027年度の目標(純利益600億円)は、2026年の会社予想がすでに上方修正されており、前倒しで届く勢いだ。住宅は Brillia の高価格帯が売れ、年2,000戸体制を目指す。売却益は中計で約1,100億円と見込まれ、これが年ごとに積み上がる。政策保有株を減らして ROE を10%に引き上げ、配当性向も40%へ上げる。配当は増え続ける。そのうえ株価は純資産の1.1倍と、都心の資産の含み益を考えれば安い。賃料は物価と一緒に上がるので、借金の実質的な負担も軽くなる。2030年の事業利益1,200億円という長期目標も、再開発の竣工が続けば現実味がある。海外も、2030年には事業利益の1割を担う見込みだ。
慎重な見方
東京建物は大手の中で一番借金が重い。純有利子負債は自己資本の2倍、自己資本比率は26%だ。10年国債が3%で定着すれば、借り換えのたびに利払いが増え、税後で年200億円超の利益が消える。2025年の過去最高益は、投資家向けの売却が増えた波に乗ったもので、毎年は続かない。売却は金利が上がれば最初に冷え込む。2011年には赤字を出した。三菱地所や三井不動産に比べ、堀は浅い。YNK は三井不動産の日本橋と重なる。会社自身も、2030年の利益構成を賃貸3割・分譲売却6割に見直した。再開発の竣工が遅れたからで、利益の波が大きくなる。分譲は人口減少で戸数が細り、住宅の利益率は2025年に18%から15%台へ落ちた。海外は投資拡大期で、赤字が長引く可能性がある。中計の ROE 10% は、売却益と政策保有株の売却が続くことが前提で、それがなくなれば8%台に戻る。今の株価はその危うさを十分には織り込んでいない。
どちらに重みを置いたか
賃貸の強さは強気の見方が優勢だ。ただ、借金の重さと売却益の振れは、慎重な見方のほうが的を射ており、大手より重く見るべきだと判断した。確率は、中立を最も厚く置き、悲観の2つを三菱地所・三井不動産より1〜2ポイントずつ厚くした。会社の中計の ROE 10% は採らず、利払いの増加を織り込んだ8%台を中立にした。そのうえで、資本コスト8%で測ると、確率で重みを付けた本質価値は今の時価総額を1割弱下回り、計算の結論は「やや割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 5,994 円1.25 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,618 円3,364 億円)。 今の値に割り戻すと 3,878 円8,063 億円、今との差 +19.6%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 11,473 円2.39 兆円 | 2,397 円4,984 億円 | +328.0% | +15.6% | 1,664 円3,461 億円 |
| やや楽観 | 24% | 7,955 円1.65 兆円 | 1,988 円4,134 億円 | +206.8% | +11.9% | 2,386 円4,962 億円 |
| 中立 | 32% | 5,776 円1.20 兆円 | 1,746 円3,631 億円 | +132.1% | +8.8% | 2,407 円5,006 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,340 円6,946 億円 | 1,088 円2,263 億円 | +36.6% | +3.2% | 974 円2,026 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,251 円2,601 億円 | 550 円1,143 億円 | −44.5% | −5.7% | 180 円374 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,994 円1.25 兆円 | 1,618 円3,364 億円 | +134.9% | +8.9% | 7,612 円1.58 兆円 |
今の株価時価総額 3,241 円6,739 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 次世代デベロッパーが形になる 利益 1,394 億円 · PER 15.4 倍 · 株価時価総額 11,473 円2.39 兆円
YNK の再開発が次々に竣工し、賃貸面積は5割増える。東京は金融・IT・外資の集積が続き、賃料は物価を上回る。分譲は年2,000戸体制が実現し、海外も2030年の事業利益の1割という目標に届く。投資家向けの売却益は年500億円を超え、資産回転が回り続ける。会社が掲げる2030年の事業利益1,200億円を大きく超え、ROE は12%台に定着する。借金は増えるが、利益の伸びがそれを上回る。三菱地所・三井不動産との差は縮まらないが、YNK を軸にした専業に近い強さが認められ、アセットサービスの手数料収益も厚くなる。会社が掲げる「次世代デベロッパー」が、数字で裏づけられる姿だ。東京駅前から日本橋・京橋までが一つの街として評価され、賃料の交渉でも主導権を握れる。
- 賃貸(オフィス・商業・物流・ホテル):数量 82.5(保有する賃貸面積(万坪、持ち分換算))× 価格 358,145(1坪あたり年間の賃貸・運営収益(円))→ 売上 2,955 億円・営業利益 1,005 億円。賃料+41%・面積+50%
- 投資家向け物件の売却:数量 3.0(売却する物件の延床面積(万坪))× 価格 568(1坪あたり売却価格(万円))→ 売上 1,705 億円・営業利益 597 億円。売却額が1.5倍
- 住宅(分譲マンション Brillia):数量 2,170(年間の計上戸数(戸))× 価格 1.63(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 3,534 億円・営業利益 601 億円。戸数+55%(年2,000戸超)
- アセットサービス(管理・駐車場・仲介・運用):数量 12.1(管理・運営を受託する資産の規模(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.01(受託資産に対する手数料等の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 1,665 億円・営業利益 350 億円。受託1.9倍
倍率:事業の純利益 1,394 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.4 倍。全体の PER 15.38 倍、時価総額 21,440 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:YNKの再開発が全部うまく収益化し、年2,000戸体制と海外も軌道に乗るのは条件が重なる姿で、確率は1割強にとどめる。
やや楽観 24% YNKの再開発が収益の柱に育つ 利益 990 億円 · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 7,955 円1.65 兆円
再開発の竣工は計画から少し遅れるが、YNK の賃貸面積は4割近く増える。賃料は物価に沿って上がる。分譲は戸数を2割増やし、売却益も計画の線で積み上がる。海外は黒字化する。アセットサービスは管理と運用の受託が増え、手数料が安定した収益の柱になる。2030年の事業利益1,200億円に近い水準に届き、ROE は10%前後になる。政策保有株は純資産比率10%以下まで減り、売却益は先細るが、事業の稼ぎがその分を補う。借り換えの利払いは全部が新しい金利に変わるが、増益で吸収できる。売却益は年300億円台後半で、中計の水準を保つ。三菱地所・三井不動産との差は縮まらないが、YNK では存在感を増す。
- 賃貸(オフィス・商業・物流・ホテル):数量 75.9(保有する賃貸面積(万坪、持ち分換算))× 価格 347,912(1坪あたり年間の賃貸・運営収益(円))→ 売上 2,641 億円・営業利益 871 億円。賃料+37%・面積+38%
- 投資家向け物件の売却:数量 2.4(売却する物件の延床面積(万坪))× 価格 552(1坪あたり売却価格(万円))→ 売上 1,325 億円・営業利益 437 億円。売却量+20%
- 住宅(分譲マンション Brillia):数量 1,680(年間の計上戸数(戸))× 価格 1.60(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 2,683 億円・営業利益 429 億円。戸数+20%
- アセットサービス(管理・駐車場・仲介・運用):数量 9.5(管理・運営を受託する資産の規模(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.01(受託資産に対する手数料等の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 1,276 億円・営業利益 249 億円。受託1.5倍
倍率:事業の純利益 990 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14 倍、時価総額 13,860 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計とその先の2030年の事業利益1,200億円に近い姿で、やや厚めに置く。
中立 32% 賃貸が積み上がり、利益は物価並みに伸びる 利益 720 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 5,776 円1.20 兆円
賃貸の面積は再開発の竣工で3割増え、賃料は物価並みの1.34倍になる。分譲は人口減少の中でも戸数を保ち、価格が物価に沿って上がる。売却益は年300億円前後で、今の水準を実質では割り込む。海外の利益は小さい。アセットサービスは管理と運用の受託が3割ほど増える。借り換えは全部が新しい金利に変わり、税後で年200億円超の利払いの増加になる。利益は物価並みにしか伸びず、ROE は8%台にとどまる。会社が2030年に掲げる事業利益1,200億円は達成するが、その先は物価並みの成長になる。三菱地所・三井不動産との差は今と変わらず、東京建物は下位の大手にとどまる。
- 賃貸(オフィス・商業・物流・ホテル):数量 71.5(保有する賃貸面積(万坪、持ち分換算))× 価格 341,090(1坪あたり年間の賃貸・運営収益(円))→ 売上 2,439 億円・営業利益 756 億円。賃料+34%(物価並み)・面積+30%
- 投資家向け物件の売却:数量 2.0(売却する物件の延床面積(万坪))× 価格 536(1坪あたり売却価格(万円))→ 売上 1,072 億円・営業利益 332 億円。売却の量は横ばい
- 住宅(分譲マンション Brillia):数量 1,400(年間の計上戸数(戸))× 価格 1.58(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 2,214 億円・営業利益 321 億円。戸数横ばい・価格は物価並み
- アセットサービス(管理・駐車場・仲介・運用):数量 8.5(管理・運営を受託する資産の規模(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.01(受託資産に対する手数料等の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 1,140 億円・営業利益 205 億円。受託+34%
倍率:事業の純利益 720 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.58 倍、時価総額 9,058 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:賃貸が積み上がり利益が物価並みに伸びる姿を中心に置く。
やや悲観 22% 東京の需要が弱まり停滞 利益 266 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 3,340 円6,946 億円
東京の企業が地方へ分散し、オフィスの需要が頭打ちになる。賃料は物価に追いつかず、新築ビルの空室を埋めるのに時間がかかる。分譲は人口減少で戸数が4分の1減る。金利は高止まりし、売却の市場は細る。海外は赤字が続き、資金を食う。借金の利払いが全部新しい金利に変わり、純利益は300億円を割る。ROE は3%台に落ちる。それでも都心の資産は残り、賃貸の稼ぎ自体は崩れない。減配はしないが、自社株買いは止まる。中計の目標は遠くなり、株価は資産の値に近づいていく。会社は売却と分譲を増やして利益を取り戻そうとするが、金利高の中ではそれも難しい。
- 賃貸(オフィス・商業・物流・ホテル):数量 63.3(保有する賃貸面積(万坪、持ち分換算))× 価格 317,214(1坪あたり年間の賃貸・運営収益(円))→ 売上 2,006 億円・営業利益 542 億円。賃料+25%・面積+15%
- 投資家向け物件の売却:数量 1.2(売却する物件の延床面積(万坪))× 価格 482(1坪あたり売却価格(万円))→ 売上 579 億円・営業利益 139 億円。売却量-40%
- 住宅(分譲マンション Brillia):数量 1,050(年間の計上戸数(戸))× 価格 1.45(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 1,527 億円・営業利益 168 億円。戸数-25%
- アセットサービス(管理・駐車場・仲介・運用):数量 7.0(管理・運営を受託する資産の規模(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.01(受託資産に対する手数料等の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 889 億円・営業利益 142 億円。受託+10%
倍率:事業の ROE 3.4% は資本コスト 8% 以下。新しく投じるお金が価値を増やさないので、PER は 1÷k=11.4 倍まで。この筋書きは稼ぐ力(純利益 266 億円÷k)で測る。上限の 9.5 割、11.88 倍に置いた。 余り資産は立てていない(賃貸の含み益は賃料・売却益が純利益に入って倍率で数え済みなので足さない。悲観の床にだけ使う)。
確率:東京一極集中の鈍化と金利高止まりが重なる停滞は、10年では現実味があり、2割強を置く。
悲観 10% 借金の重さが響き構造的に縮む 利益 −200 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,251 円2,601 億円
不況と金利高が同時に来て、借金の重い会社が構造的に縮む。賃貸の面積は増えず、賃料は物価の8割にとどまる。売却は市場が冷えて3分の1に細り、分譲も戸数が半分以下になる。借金の利払いが全部新しい金利に変わり、純利益は赤字になる。保有不動産の一部を安く売って資金を作り、配当は大きく減る。含み益は縮むが、2011年の赤字の前例のとおり、PBR は0.5倍前後まで下がる。経営の自由度は失われ、他社や投資ファンドが買収を仕掛ける可能性も高まる。含み益は縮んでも、都心の資産を安く手に入れたい買い手は現れる。再開発の途中にある大型案件は、資金繰りの重荷にもなる。YNK という街の価値は残るが、それを活かす余力が会社から失われていく。
- 賃貸(オフィス・商業・物流・ホテル):数量 52.3(保有する賃貸面積(万坪、持ち分換算))× 価格 272,872(1坪あたり年間の賃貸・運営収益(円))→ 売上 1,426 億円・営業利益 285 億円。賃料+7%・面積-5%
- 投資家向け物件の売却:数量 0.7(売却する物件の延床面積(万坪))× 価格 402(1坪あたり売却価格(万円))→ 売上 281 億円・営業利益 34 億円。売却量-65%
- 住宅(分譲マンション Brillia):数量 630(年間の計上戸数(戸))× 価格 1.34(1戸あたり平均価格(億円))→ 売上 847 億円・営業利益 42 億円。戸数-55%
- アセットサービス(管理・駐車場・仲介・運用):数量 5.1(管理・運営を受託する資産の規模(兆円。今の値段に直した実質))× 価格 0.01(受託資産に対する手数料等の比率 × 物価の指数(今=1))→ 売上 599 億円・営業利益 66 億円。受託-20%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。含み益込みの純資産(自己資本 5,910 億円+賃貸等不動産の含み益の税後約 3,500 億円(開示を確認できず、筆者の推定)=約 9,400 億円)から、地価・賃料の下落と評価損、処分値引きで 7 割強を失った残りの 2,600 億円を床に置いた。
確率:借金が重い会社が10年の間に不況と金利高の両方を食らう構造的な負けは、同業の大手より厚い1割を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
賃貸(オフィス・商業・物流・ホテル)
八重洲・日本橋・京橋(YNK)を中心に都心のオフィスビルを持ち、商業施設・物流施設(T-LOGI)・ホテルと合わせて賃料と運営収益を得る。
| 数量保有する賃貸面積(万坪、持ち分換算) | 価格1坪あたり年間の賃貸・運営収益(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 55.0 | 254,545 | 1,400 | 420 |
| 10 年後 中立 | 71.5 | 341,090 | 2,439 | 756 |
取り方:ビル事業の営業収益2,202億円(営業利益671億円)のうち、賃貸・施設運営を約1,400億円・営業利益約420億円と筆者が推定した(内訳は開示を確認していない)。面積は収益を坪あたり年25万円強の収益で割り戻した持ち分換算の約55万坪。価格は中立で物価並み(3年1.09倍・10年1.34倍)。面積は再開発の竣工の分だけ増える(実質)。
投資家向け物件の売却
自社で開発・取得したビルや物流施設を、竣工後に投資家やファンドへ売る回転型の事業。売却益は年ごとの振れが大きい。
| 数量売却する物件の延床面積(万坪) | 価格1坪あたり売却価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.0 | 400 | 800 | 251 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 536 | 1,072 | 332 |
取り方:ビル事業のうち賃貸を除く売却分を売上約800億円・営業利益約251億円と筆者が推定した(中計の売却益は年平均367億円が目安で、2025年は売却が増えた年)。売却面積を約2万坪、坪400万円(持ち分・物流施設・古いビルを含む平均)とした推定。価格は中立で物価並み。
住宅(分譲マンション Brillia)
Brillia ブランドで首都圏を中心に分譲マンションを開発・販売する。一部は投資家向けの賃貸住宅の売却も含む。
| 数量年間の計上戸数(戸) | 価格1戸あたり平均価格(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,400 | 1.18 | 1,652 | 256 |
| 10 年後 中立 | 1,400 | 1.58 | 2,214 | 321 |
取り方:住宅事業の2025/12期実績(営業収益1,651億円・営業利益256億円・利益率15.5%)から。中計は3年で約4,300戸(年平均1,400戸超)を計上する計画なので戸数を1,400戸とし、売上から平均価格1.18億円(都心の高価格帯を含む)を逆算した。価格は中立で物価並み。
アセットサービス(管理・駐車場・仲介・運用)
ビル・マンションの管理、駐車場の運営(日本パーキング)、仲介、不動産ファンドの運用などの手数料で稼ぐ事業。
| 数量管理・運営を受託する資産の規模(兆円。今の値段に直した実質) | 価格受託資産に対する手数料等の比率 × 物価の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 6.4 | 0.01 | 635 | 115 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 0.01 | 1,140 | 205 |
取り方:アセットサービス事業の2025/12期実績(営業収益635億円・営業利益115億円)から。受託資産の規模は開示が無いので、手数料の比率を1%と置いて逆算した約6.35兆円の推定。物価の分は価格(比率 × 物価の指数)に入れた。
リスクと懸念
借金の重さと借り換えの利払い
純有利子負債は1.2兆円で自己資本の2倍。借り換えのたびに新しい金利になり、10年で税後約210億円の利益が消える。自己資本比率は26%と低く、不況で評価損が出ると財務の余裕がなくなる。2011年には赤字を出した前例がある。中計も有利子負債の倍率を高いまま運営する前提を置いている。
投資家向け売却益の振れ
2025年にビル事業の営業利益が6割伸びたのは、投資家向けの売却が増えたからだ。金利が上がると投資家の利回りの要求が上がり、売却は最初に冷え込む。中計の売却益(年約367億円)が続かなければ、利益の質が落ち、ROE 10% は遠のく。
再開発の竣工の遅れとコスト増
YNK では今後も再開発の竣工が続くが、建設費は物価を上回って上がる。竣工が遅れれば収益の立ち上がりも遅れ、会社は2030年の利益構成を賃貸3割に見直した。大型ビルの空室を埋める時間も、賃料の想定を左右する。
分譲マンションの需要の縮小
首都圏の新築マンションは発売戸数が1973年以降で最少の水準で、平均価格は過去最高だ。これ以上の値上げには限界があり、人口減少で戸数が細る。計画の年1,400戸、将来の2,000戸体制が実現しないと、住宅の利益が計画を下回る。2025年は住宅の営業利益がすでに33%減った。
海外事業の赤字と実行リスク
海外は米国・英国・アジアで投資拡大期にあり、2027年度の利益はマイナス見込みだ。2030年に事業利益の約1割を担う計画だが、米国や英国のオフィス市況、為替、現地の金利次第で赤字が長引き、資金を食う恐れがある。
政策保有株の売却益の先細り
政策保有株の売却益は純利益を押し上げてきた。純資産比率10%以下へ減らす計画が進むほど、一回限りの利益は剥がれ落ちる。2025年の純利益が前期比で10.6%減ったのも、前の年の売却益の反動が大きい。事業の稼ぎだけで中計の純利益600億円を保てるかが問われる。
TOB や株主からの圧力
時価総額は6,700億円と大手に比べて小さく、PBR は1倍前後。含み益が厚い都心の資産を持つため、他社や投資ファンドの標的になる余地がある。買収は株主には有利でも、独立した事業の長期の姿は変わる。会社は独立を保つ方針だが、株価が資産の値を大きく下回る局面では、圧力が強まりやすい。
今後の分かれ目
- 10年国債が3%を大きく超えて上がる
- 投資家の売却の買い手が減り、売却益が細る。借り換えの利払いも増え、ROE は8%を下回り、慎重な筋書き(やや悲観・悲観)の確率を上げる必要がある。
- 中計の2027年度の目標(純利益600億円)を前倒しで達成し、2030年の事業利益1,200億円も上方修正される
- 再開発が計画どおり収益化した証拠で、強気の筋書き(楽観・やや楽観)の確率を引き上げる。
- TOFROM YAESU TOWER のテナントが想定を上回る賃料で埋まる
- 賃貸の稼ぎが想定より厚く、YNK の街の力が確認される。賃貸の面積と賃料の見通しを上げられる。
- 都心の空室率が3%を超えて上がり始める
- 賃料の伸びが止まり、新築ビルの空室を埋めるのに時間がかかる。やや悲観の筋書きに近づく。
- 政策保有株の売却が終わり、売却益が剥がれても、純利益が600億円前後を保つ
- 事業そのものの稼ぎが確認され、利益の質の見方を上げられる。中立の倍率を上限の上の方に置ける。
- 他社や投資ファンドが TOB を示す
- 時価総額は含み益込みの純資産に近づく可能性がある。ただし提示額は資産価値と比べて判断する。
見ておくもの
- 都心5区と YNK のオフィス空室率・賃料(三鬼商事の月次)
- 首都圏新築マンションの発売戸数・平均価格(不動産経済研究所)
- 投資家向け物件の売却益(四半期ごとの決算説明資料)
- 純有利子負債と利払い、自己資本比率の推移
- 政策保有株の純資産比率と売却額、自社株買いの実施
- TOFROM YAESU TOWER など大型ビルのテナントの入居状況
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、数量(賃貸面積・売却面積・分譲戸数・受託規模)と価格(物価 3% 込みの名目)を積み、借り換えの利払いの増加(10 年で税後約 210 億円)を純利益から引いた。倍率は資本コスト 8%(基本 7.5% に借金+1.0%・循環+0.25%)と正当化 PER の上限の 9〜9.5 割に置いた。やや悲観は稼ぐ力(純利益÷k)、悲観は含み益込みの純資産(含み益は有報の賃貸等不動産の注記(時価−簿価 5,464 億円)の税後 7 割、約 3,820 億円)から評価損を引いた売れる資産で測り、過去の PBR の底は使っていない。決算期は 12 月で、リースは今の形(家賃を営業費用に入れた形)にそろえた。この含み益は賃料と売却益が純利益に入っているので、中立以上には余り資産として足していない。結論は「やや割高」。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.57→15.38 倍・やや楽観 PER 11.55→14 倍・中立 PER 10.29→12.58 倍・やや悲観 PER 10.86→11.88 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β 0.78 × 5% + 規模 0.50%。k は基本 7.5% に quality +1.25%(循環+0.25・借金+1.0)を足した 8.75%。事業は傾いていないので extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.00%。