結論
ワシントンホテルは、全国43か所、約9,400室の宿泊特化型ホテルを運営する会社だ。低価格の「ワシントンR&Bホテル」と、駅前の「ワシントンホテルプラザ」の二つの顔を持つ。建物の大半は借りており、自前で持つのは7か所にとどまる。
筆者の結論は「やや割高」だ。直近の営業利益は38億円と、前の期の1.7倍に伸びた。客室単価と稼働率がそろって上がり、リニューアルが利益に効いた。この回復は本物である。
それでも割高と見るのは、利益の質に固定の重さがあるからだ。年間の家賃は約49億円で、売上の2割にあたる。解約できない家賃の約束は、148億円ある。需要が3割落ちれば、家賃は残り、利益は一気に消える。2021年は営業利益が71億円の赤字だった。
会社の中期計画は、2031年3月期に営業利益87億円を掲げる。筆者は、その7割ほどの水準が10年後の中立と見る。最初の2〜3年の伸びは堅いが、その先は賃料と人件費の上昇に食われる。
強みは、効率の高い運営と、会員の囲い込みである。一度立ち直った会社の勢いは、確率に反映した。
強みと弱みを一言で言えば、運営の腕は一流で、構造は重い。R&Bホテルの営業利益率は20%を超え、同じ業態の中でも高い。一方で、解約できない家賃の約束があり、需要が崩れた時の傷は深い。この両面を、筆者は10年の確率に織り込んだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「立ち直った運営の名手だが、家賃という借金を抱えた会社」である。筆者がまず見るのは、オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益だ。営業キャッシュフローは46億円と、営業利益の38億円を上回る。減価償却の分があるためだ。だが、この現金の多くはリニューアルと出店に使われる。ホテルは、建物と内装の更新に毎年お金がかかる事業だ。建築費の上昇で、更新の費用は償却を上回って膨らむ。
堀の幅と持続は、運営の効率に支えられる。ただし、他社が同じ運営をまねるのは難しくない。10年先も今の利益率が続くとは言い切れない。
資本の使い方は、堅実に見える。無理な買収はせず、借入金を返しながら改装と出店を進めている。ただし、配当と自社株買いは小さい。
払う値段の観点では、利益が山の高さにある可能性を考える。2026年3月期は経常利益より純利益が大きく、税の戻りがあったとみられる。次の期の会社予想では、純利益が減る。ならした利益で見れば、今の値段に安全域はほとんどない。家賃の固定費が重いホテルを、利益の山で買うのは危うい。
経営者の資本配分は、堅実さが際立つ。コロナで自己資本を削られた経験が、借入金の返済を優先する姿勢につながっている。大きな賭けを避ける点は評価できる。ただ、利益の山で買う値段は、10年の安全域を削る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は、客室を貸す宿泊業に絞られる。ブランドは二つだ。ワシントンホテルプラザは、1969年開業の1号店以来の老舗で、主要駅や繁華街の近くにある。18ホテルを運営し、売上は118億円。朝食に郷土料理を出し、飲食店や宴会場を持つ店もある。
ワシントンR&Bホテルは、大都市圏の宿泊特化型で、25ホテルを運営する。朝食の専門スタッフを置かず、フロントが対応する少人数の運営で、低料金を保つ。売上は122億円と、プラザとほぼ同じだが、営業利益は25億円と、プラザの2倍近い。
43ホテルのうち、建物を借りて運営する店が34か所、自社の建物は7か所、土地だけを借りる店が2か所ある。ゴルフ場のレストランの受託は、売上がごくわずかだ。
客室の販売は、ネット経由が75%、旅行代理店が16%で、自社の予約サイト「ワシントンネット」が18%を占める。会員は62万人に達する。2026年3月期の稼働率は71.7%で、客室単価は前年より10.8%上がり、販売可能な客室1室あたりの売上は15%伸びた。従業員は428人で、臨時の働き手を含めて運営している。
拠点は北海道から九州まで、主要都市に広がる。プラザは駅前の大型店が多く、R&Bは大都市圏の中小型店が中心だ。2025年4月に、R&Bホテルの名を「ワシントンR&Bホテル」に改め、ブランドを統一した。名前を揃えて会員への訴求力を高める狙いがある。
優良さと弱いところ
強みは、運営の効率と、客室単価を引き上げる力だ。R&Bホテルの営業利益率は20%を超え、業界でも高い。少ない人数で回す仕組みが効いている。リニューアルでツインやコネクティングルームを増やし、複数人利用を取り込んでいる。2026年3月期は、客室単価が10.8%、稼働率が2.6ポイント上がり、1室あたり売上は15%伸びた。
会員の囲い込みも堀になる。自社サイトの会員は62万人で、年に43万室を使う。予約手数料の高い外部サイトへの依存を下げる効果がある。
弱みは三つある。第一に、固定費が重い。年間の家賃は約49億円で、解約できない約束は148億円ある。第二に、財務の余裕が小さい。借入金は136億円で、自己資本比率は35%だ。第三に、コロナ期の傷が深かった。2021年3月期の営業赤字は71億円で、2022年3月期には自己資本が34億円まで細った。
筆者は、堀は「普通」と置く。運営力は高いが、ビジネスホテルは新規参入が続き、宿泊価格は市場で決まるからだ。
経営の姿勢は堅実である。コロナ期の傷を、借入金の返済と改装で立て直してきた。2026年3月期は借入金を20億円返し、現金も積み上げた。リニューアルは販売できない客室を除いた稼働率で管理し、投資の効果を数字で追う。ただし、固定の家賃が重い構造は変えにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の宿泊需要は、二つの顔を持つ。2025年の外国人の延べ宿泊者数は約1億7,800万人泊と、過去最高を更新した。一方、日本人は約4億7,600万人泊と、前年より4%減った。ビジネスホテルは、この国内の出張と旅行の需要を主な市場とする。
ワシントンの客層は、国内ビジネスが半分、国内レジャーが4割、インバウンドが1割だ。為替の水準が円安に保たれる限り、インバウンドの比率は上がる余地がある。ただし、日本人の宿泊者数が減る中で、新規のホテル供給が続けば、地方の稼働率は下がる。
競合は、東横イン、アパホテル、ルートイン、スーパーホテルといった大手チェーンに加え、外資系ブランドのビジネスホテルや、民泊だ。ビジネスホテル全体の客室単価は、ここ数年で大きく上がったが、これは物価の上昇と、コロナ後の供給の絞り込みの結果だ。10年にわたって実質で上がり続けるとは限らない。
人件費の上昇も業界共通だ。最低賃金は毎年上がる。建設費と資材の高騰で、新規出店は遅れる。ワシントンの浜松の新店も、賃借開始が1年延びた。ここは、新規参入の壁にもなる。
国内の宿泊需要は、2025年に延べ6億5千万人泊と、3年続けて6億人泊を超えた。ホテルの稼働率は約8割と、世界の平均より高い。だが、需要の伸びは2025年秋をピークに鈍っている。日本人の宿泊は減り、外国人が全体を支える形だ。ビジネスホテルは、出張の需要が戻りきらない中、観光客の取り込みが成否を分ける。
資本政策と M&A
株主への還元は、ようやく動き出した段階だ。配当は、配当性向25%を目安とし、期末に年1回出す。2026年3月期の期末配当は、純利益の1割台半ばにとどまる。中期経営計画は、25%以上を早期に実現するとし、自己株式の取得も活用すると書く。
投資の主役は、リニューアルと出店だ。5年で16ホテルの全面改装に69億円、新規拠点の開発に114億円を見込む。財源は営業キャッシュフローで、借入金の返済はD/Eレシオ1倍を目安に進める。
政策保有株は、藤田観光の株が3.7億円ある。「ワシントンホテル」の名が共同商標で、経営母体の誤認のリスクがあると有報は書く。親会社や支配株主の記載はない。外部の推計では、10年以内の買収や公開買付けの確率が25%とされるが、確かな材料は見当たらない。
家賃は、固定の約束だ。2028年3月期の新しいリース会計基準で、賃借物件が貸借対照表に載り、借金の見かけが増える。実質は変わらないが、自己資本比率は下がる。
財務の健全化は着実だ。借入金は2026年3月期に20億円返し、自己資本は27億円増えた。D/Eレシオ1倍を目安に、返済を進める方針である。一方、配当と自社株買いの拡大は慎重だ。筆者は、改装と出店への投資が回収されるまで、還元は大きく増えないと置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ワシントンの回復は、まだ途中である。2026年3月期は、客室単価が10.8%上がったが、会社の計画は、2031年3月期までに客室単価をさらに27%引き上げ、稼働率を82%にすることを見込む。今の稼働率は71.7%で、業界の約8割に届いていない。リニューアルを終えた店の稼働率は、改装前を大きく上回る。16ホテルの全面改装が進めば、客室単価と稼働率の両方が上がる余地がある。
運営の効率が高い。R&Bホテルの営業利益率は20%を超え、少人数で回す仕組みは、人件費が上がる局面でも強みになる。会員62万人のネット予約は、外部の手数料を抑える。インバウンド比率が1割から1.5割へ上がれば、客室単価の押し上げ要因になる。
新規出店も進む。保有室数は9,500室から11,000室へ増やす計画で、浜松など新店が加わる。家賃の固定費が重いのは確かだが、稼働率が上がるほど、増えた売上の大半が利益になる。2031年3月期の営業利益87億円という会社の計画は、野心的だが、2023年の営業利益率17%という実績が裏づける。
足もとの需要も強い。第3四半期(10〜12月)の稼働率は78%と、年間で最も高かった。観光とビジネスの両方が混ざる立地は、景気の波をならす。
慎重な見方
今の利益は、コロナ後の反動と、円安によるインバウンドの上振れに支えられた山の水準だ。ビジネスホテルの客室単価は、ここ数年で急に上がったが、業界の供給が戻れば、価格競争が再燃する。日本人の宿泊者数は減っており、地方の稼働率は下がりやすい。
固定費が重い。年間の家賃は約49億円、解約できない家賃の約束は148億円だ。稼働率が1割下がるだけで、利益は大きく削られる。2021年3月期の営業赤字71億円は、その重さを示した。借入金は136億円あり、金利が上がれば利払いも増える。
会社の中期計画は、営業利益を5年で2.3倍にする野心的なものだ。客室単価を27%上げ、稼働率を10ポイント上げ、保有室数を16%増やす。この三つが同時に起きる必要がある。建設費と人件費の高騰で、新店の開業は延びている。
政策保有株の藤田観光とは、共同商標を共有する。ブランドの評判が他社の不祥事の影響を受けるリスクもある。新しいリース会計基準で、借金の見かけが増える点も、資本市場の評価を下げうる。
さらに、第4四半期(1〜3月)は稼働率が64%まで落ちる。季節の波が大きく、固定の家賃を払う月は赤字になりうる。一年の利益は、繁忙期の数か月に集中する構造だ。
どちらに重みを置いたか
運営の効率と回復の勢いは、強気の主張が正しい。一方で、家賃の重さと、利益が山の高さにあるという指摘も的を射る。中立の筋書きは、会社の計画の7割ほどの水準で、営業利益が60億円台に届く形だ。
確率は、中立を最も厚くし、やや悲観をやや寄せた。需要が落ちた時の家賃の重さは、同じ領域のグリーンズと同じ理由で、悲観側を無視できない。ただし、ワシントンは自前の商標を持ち、ブランド契約の期限という別のリスクがないため、悲観の確率はグリーンズより少し低くした。 運営の腕を信じても、10年先の固定費を考えると、今の値段に安全域はない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,657 円559 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 665 円80 億円)。 今の値に割り戻すと 2,609 円313 億円、今との差 +43.5%、 期待の年率 +11.3%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,664 円1,039 億円 | 1,017 円122 億円 | +432.5% | +18.2% | 678 円81 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,385 円886 億円 | 867 円104 億円 | +353.9% | +16.3% | 1,485 円178 億円 |
| 中立 | 34% | 6,533 円784 億円 | 800 円96 億円 | +303.4% | +15.0% | 2,493 円299 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,746 円209 億円 | 500 円60 億円 | +23.6% | +2.1% | 606 円73 億円 |
| 悲観 | 14% | 203 円24 億円 | 217 円26 億円 | −76.9% | −13.6% | 59 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,657 円559 億円 | 665 円80 億円 | +192.7% | +11.3% | 5,322 円638 億円 |
今の株価時価総額 1,818 円218 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 改装と出店が実り、会社の計画に近づく 利益 52 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 8,664 円1,039 億円
16ホテルの全面改装が実り、ツインやコネクティングルームの比率が上がる。複数人の利用が増え、客室単価は物価を超えて伸びる。稼働率は78%近くまで上がり、保有室数も11,000室を超える。
新店はアパートメント型や地方都市にも広がる。R&Bホテルの営業利益率は22%に上がり、プラザも14%に改善する。
営業利益は82億円と、今の2.1倍になる。会社の2031年の目標87億円に10年かけて届く形だ。自己資本は380億円に積み上がり、ROEは13%台を保つ。配当性向は3割台に上がる。
銀行の借入金は返済が進み、金利が上がっても利払いの重さは限られる。家賃も客室単価の上昇で吸収でき、固定費の重さが逆に利益を押し上げる、いわゆる営業レバレッジが効く10年になる。
- ワシントンホテルプラザ事業:数量 129(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.54(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+飲食など))→ 売上 199 億円・営業利益 28 億円。室数1.12倍、単価1.50倍、利益率14%
- ワシントンR&Bホテル事業:数量 170(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.44(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+付帯))→ 売上 245 億円・営業利益 54 億円。室数1.30倍、単価1.55倍、利益率22%
- その他(運営受託など):数量 2.0(受託施設数(か所。推定))× 価格 1.35(1か所あたり売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍。全体の PER 18.4 倍、時価総額 962 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:客室単価・稼働率・保有室数の三つが同時に計画どおり伸び、インバウンドも堅調という複数の好条件が必要。コロナ期の傷と固定費の重さを考えると、1割未満が妥当。
やや楽観 18% 回復が続き、客室単価は物価を超えて伸びる 利益 45 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 7,385 円886 億円
客室単価は物価を5%ほど超えて伸び、稼働率は75%台に上がる。R&Bホテルの利益率は21%、プラザは13%に上がる。販売室数は、新店と稼働率の改善で1〜2割増える。
営業利益は71億円で、今の1.9倍だ。賃料の上昇は契約更新の時に出るが、客室単価の伸びが吸収する。
純利益は45億円で、配当と自社株買いも増える。借入金は少しずつ減り、利払いの負担は軽くなる。
新店の出店は計画の7割ほどにとどまるが、既存店の改装が進み、客室の質が上がる。インバウンドの比率は1割台半ばに上がる。借入金の返済が進み、金利の上昇にも耐えられる。
- ワシントンホテルプラザ事業:数量 127(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.49(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+飲食など))→ 売上 190 億円・営業利益 25 億円。室数1.10倍、単価1.46倍、利益率13%
- ワシントンR&Bホテル事業:数量 160(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.39(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+付帯))→ 売上 223 億円・営業利益 47 億円。室数1.22倍、単価1.50倍、利益率21%
- その他(運営受託など):数量 2.0(受託施設数(か所。推定))× 価格 1.35(1か所あたり売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 17.98 倍、時価総額 809 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼働率がなお業界水準を下回り、リニューアルの効果が続く間は、利益が伸びる余地がある。会社の計画の中間目標(2029年3月期の営業利益64億円)に近い水準なので、重みを置く。
中立 34% 改装と出店で伸びるが、賃料と人件費に利益が食われる 利益 40 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 6,533 円784 億円
販売室数は、新店と稼働率の改善で今の1割強増える。客室単価は、物価の分に実質で1割弱の上乗せがあり、1.4倍台半ばになる。稼働率は74%台に上がる。
営業利益率は16%台で、今と同じだ。R&Bホテルの利益率は20%、プラザは12.5%を保つ。賃料の更新と人件費の上昇は、客室単価の伸びで吸収する。営業利益は63億円で、今の1.7倍になる。
純利益は40億円で、配当性向3割を保つ。自己資本は350億円近くに増え、ROEは11〜12%に落ち着く。10年の間に、景気の後退が一度は来て、稼働率が数ポイント下がる年がある。それでも、赤字には落ちない。
- ワシントンホテルプラザ事業:数量 125(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.45(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+飲食など))→ 売上 181 億円・営業利益 23 億円。室数1.08倍、単価1.42倍、利益率12.5%
- ワシントンR&Bホテル事業:数量 151(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.36(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+付帯))→ 売上 204 億円・営業利益 41 億円。室数1.15倍、単価1.46倍、利益率20%
- その他(運営受託など):数量 2.0(受託施設数(か所。推定))× 価格 1.35(1か所あたり売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍。全体の PER 17.7 倍、時価総額 708 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画の約7割という慎重な水準。最初の数年は改装の効果が堅いが、その先は賃料・人件費・供給の増加で伸びが鈍る、最も自然な筋書き。
やや悲観 27% 供給の増加と金利の上昇で、伸びが止まる 利益 19 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,746 円209 億円
ビジネスホテルの新規供給が続き、価格競争が再燃する。客室単価は物価ほど上がらず、1.3倍にとどまる。稼働率は68%台まで下がる。地方の店で、改装の効果が薄れる。
賃料は更新のたびに上がり、人件費も毎年増える。R&Bホテルの利益率は14%、プラザは8%に下がる。営業利益は35億円と、今の9割だ。
借入金の金利は3.5%に上がり、純利益は19億円まで減る。配当は守るが、自社株買いは止まる。新店の出店も止まる。
景気の後退が一度重なる。稼働率は数ポイント落ち、改装の投資回収が遅れる。会社は出店を止め、借入金の返済を優先する。家賃の更新交渉で、一部の店を閉める判断も出る。
- ワシントンホテルプラザ事業:数量 110(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.33(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+飲食など))→ 売上 146 億円・営業利益 12 億円。室数5%減、単価1.30倍、利益率8%
- ワシントンR&Bホテル事業:数量 131(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.24(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+付帯))→ 売上 163 億円・営業利益 23 億円。室数横ばい、単価1.34倍、利益率14%
- その他(運営受託など):数量 2.0(受託施設数(か所。推定))× 価格 1.35(1か所あたり売上(億円・名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業ROE 6.9%はk 8%を下回り、上限は1÷k=11.1倍。家賃の重さで稼ぎが細るため、上限の約72%の8.0倍に置いた。
確率:ホテルの供給が戻り、国内客の宿泊者数の減少が続き、金利と賃料も上がる筋書き。需要が落ちると固定費の重さが効く。グリーンズと同じ理由で、悲観側に重みを置いた。
悲観 14% 需要の衰えと家賃の重さで、構造的に負ける 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 203 円24 億円
国内の人口減と出張の減少、新規供給の過剰が重なり、稼働率は65%を割る。客室単価は物価に追いつけず、1.1倍台にとどまる。さらに、大きな需要ショックが一度重なり、数年の赤字が続く。
家賃は残る。契約の途中で閉められないため、赤字の店を抱えたまま、利益が消える。プラザは赤字、R&Bもわずかな黒字にとどまる。営業利益は1億円まで減る。
借入金の返済と家賃の支払いに追われ、配当は止まる。店を減らして家賃の約束を軽くするが、違約金で現金が出る。会社は存続するが、株主の取り分は小さい。
金利は上がり、借入金の返済が重くなる。新リース会計で自己資本比率は下がり、資金調達の条件が悪くなる。
- ワシントンホテルプラザ事業:数量 86.6(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.15(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+飲食など))→ 売上 99 億円・営業利益 −2 億円。室数25%減、単価1.12倍、利益率-2%
- ワシントンR&Bホテル事業:数量 105(販売室数(万室夜・年。推定))× 価格 1.07(1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+付帯))→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円。室数2割減、単価1.15倍、利益率3%
- その他(運営受託など):数量 2.0(受託施設数(か所。推定))× 価格 1.21(1か所あたり売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:稼ぐ力は赤字に近く、純利益÷kでは価値が出ない。家賃の約束を抱えたまま、売れる資産の床(約25億円)に近い値として、今の自己資本の0.20倍(約24億円)に置いた。赤字なのでPBRで置く。 EV ÷ 営業利益で見ても、赤字に近い利益では意味を持たず、倍率で割安とは言えない(EV は時価総額+純有利子負債)。
確率:日本人の宿泊者数の減少と供給過剰が続き、大きな需要ショックが重なる筋書き。家賃の固定費が重く、起きると利益が一気に消える。2021年の実例があり、1割強の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ワシントンホテルプラザ事業
主要駅・繁華街の近くのホテル18か所。客室に加え、郷土料理の朝食、飲食店、宴会場を持つ店もある。
| 数量販売室数(万室夜・年。推定) | 価格1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+飲食など) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 116 | 1.02 | 118 | 13 |
| 10 年後 中立 | 125 | 1.45 | 181 | 23 |
取り方:ワシントンホテルプラザの売上118.2億円(開示)。客室数を約4,500室(18ホテルの平均250室の推定)、稼働率70.3%(開示)から、販売室数を約115万室夜と置き、1室夜あたり約1.02万円(客室単価に飲食・宴会の売上を加えた)とした。客室数は内訳が開示されず推定。数量は実質、物価は単価に入れた。
ワシントンR&Bホテル事業
大都市圏の宿泊特化型ホテル25か所。朝食の専門スタッフを置かない少人数運営で、低料金を保つ。
| 数量販売室数(万室夜・年。推定) | 価格1室夜あたり売上(万円・名目。客室単価+付帯) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 131 | 0.93 | 122 | 25 |
| 10 年後 中立 | 151 | 1.36 | 204 | 41 |
取り方:ワシントンR&Bホテルの売上121.7億円(開示)。客室数を約4,900室(25ホテルの平均200室の推定)、稼働率72.8%(開示)から、販売室数を約131万室夜と置き、1室夜あたり約0.93万円(客室単価に付帯売上を加えた)とした。客室数は推定。営業利益25.1億円は開示。
その他(運営受託など)
ゴルフ場のクラブハウス内レストランの運営受託など。
| 数量受託施設数(か所。推定) | 価格1か所あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 1.00 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 1.35 | 3 | 0 |
取り方:その他(ゴルフ場レストランの運営受託など)の売上2.0億円(開示)。受託施設を2か所と推定し、1か所あたり約1億円。売上はごくわずかで、営業利益は0.2億円の赤字。
リスクと懸念
家賃の固定費と需要ショック
年間の家賃は約49億円、解約できない家賃の約束は148億円だ。2021年3月期は営業赤字が71億円に達した。感染症や景気後退で需要が3割落ちれば、家賃は残り、利益は一気に消える。
供給の増加と価格競争
ビジネスホテルは新規参入が続く。コロナ後に絞られた供給が戻れば、客室単価の上昇は止まる。日本人の宿泊者数は減っており、地方の店の稼働率が下がりやすい。
金利の上昇
借入金は136億円で、金利の水準や固定・変動の内訳は開示されない。借り換えで3.5%に上がれば、利払いは2億円ほど増える。新リース会計の適用後は、家賃も借金の見かけに載る。
出店とリニューアルの遅れ
建設費と人件費の高騰で、浜松の新店は賃借開始が1年延びた。5年で188億円という成長投資は、計画どおりに進む保証がない。改装中の客室は販売できず、稼働率を押し下げる。
人件費と外注費の上昇
最低賃金は毎年上がる。清掃やリネンの外注単価も上がる。少人数運営が強みでも、人手が確保できなければ営業が成り立たない。
ブランドの共同商標
「ワシントンホテル」の名は共同商標で、経営母体の誤認によるレピュテーションのリスクがある。他社の不祥事の影響を受ける可能性がある。
今後の分かれ目
- 稼働率が75%を超えて定着し、客室単価が1万円に近づいた
- やや楽観・楽観の確率を上げる。会社の中期計画が現実味を帯びる。
- 日本人の延べ宿泊者数が2年続けて前年を下回った
- 地方の稼働率の下振れを織り込み、やや悲観の確率を上げる。
- 浜松など新店の開業がさらに遅れ、出店計画が下方修正された
- 販売室数の伸びを下げ、中立の営業利益を下げて見る。
- 総還元性向が4割を超える方針が示された
- 資本のためすぎが解消されるため、ROEが保たれ、中立のPERを少し上げて見る。
- 借入金の借り換え金利が、想定の3.5%を大きく超えた
- 純利益の見通しを下げ、悲観側に重みを寄せる。
- 感染症や景気後退で、稼働率が2期続けて6割台に落ちた
- 家賃の固定費が効き、悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 稼働率・客室単価・1室あたり売上の四半期の推移
- リニューアルを終えた店の稼働率と、改装前との差
- 年間の家賃・借入金の金利・新リース会計の影響額
- 日本人の延べ宿泊者数と、新規ホテル供給の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、ROEとk(9.0%)から正当化PERの上限を計算して置いた。今の株価に寄せていない。今のPERは8倍前後と低めだが、それを根拠にせず、10年中立のPERは、ROEがkを上回るため下限1÷k=11.1倍を守って11.2倍に置いた。利益は2026年3月期の山(税の戻りがあった年)ではなく、営業利益から純利益への比0.63(過去の中央値0.60に近い)で置いた。数量は実質、物価は価格に入れた。家賃は固定の約束で、10年後も今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置く。2028年3月期の新リース会計基準で数字の形が変わることを織り込んだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→18.4 倍・やや楽観 PER 11.6→17.98 倍・中立 PER 11.2→17.7 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。