結論
エスコンは、マンションを分譲し、物流施設やホテルを開発して売る不動産会社だ。中部電力が過半の株を持つ。筆者の結論は、腕は確かだが、金利が上がる世界では借金が利益を削る、というものだ。総合の本質価値は今の時価総額を約2割下回り、やや割高と出た。
稼ぐ力は本物だ。前期は売上も営業利益も過去最高で、営業利益は261億円に届いた。マンションの引き渡しに加え、大型の収益物件を売る力が効いた。賃貸などの安定した収益が全体の4分の1を占め、売って稼ぐ力を支えている。
弱みは借金の重さだ。総資産5,100億円に対し、自己資本比率は17%にとどまる。借入の平均金利は1.6%で、借り換えのたびに3.5%前後へ上がっていく。営業利益が増えても、利息に吸われて純利益はあまり増えない。
救いは親会社の信用だ。中部電力の傘下で格付けはAA-まで上がり、資金は細りにくい。一方で親子上場のため、少数株主より親会社の都合が先に立つ場面もありうる。完全子会社化の可能性は、上振れの材料として頭の隅に置いた。
10年先の筋書きは、稼ぐ力が伸びても利息の負担がそれを打ち消す、というのが中心になる。ROE(自己資本利益率)は今の14%台から、一桁台へ下がる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「この会社の利益のうち、株主が自由に使える分はいくらか」を見る。
エスコンは、稼いだ利益の大半を、在庫と賃貸資産の買い増しに再投資している。そのうえ借金も増やす。オーナー(株主)が自由に取り出せる利益は、帳簿の純利益よりずっと小さい。利益が出ても現金が積み上がらない会社は、見かけより安い値段で買うのが筋だ。
堀は、分譲では浅く、資金調達では深い。中部電力の信用は、大きな強みだ。ただ、この強みは株主ではなく、会社が借りるお金の安さで効く。金利が上がる世界では、借金の重さが利益に直接のしかかる。
経営の資本の使い方は悪くない。買収は賃貸資産の買い増しに絞られ、割高な買い物で価値を壊した形跡は少ない。野菜工場への出資のように、本業の外の投資には疑問が残る。
安全域はどうか。楽観の筋書きでも、今の値段を大きくは上回らない。慎重な筋書きでは、今の値段の半分を割る。この事業は10年後も存在するが、持ち続けて報われるかは、金利と借金の行方で決まる。筆者は、今の値段に十分な安全域はないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は大きく4つある。マンション分譲、不動産開発、不動産賃貸、資産管理だ。
住宅分譲は、年に1,000戸前後を引き渡す。前期は971戸だった。首都圏と中部で売上の3割ずつ、残りを九州と関西が占める。高い値段の物件が増え、戸数が減っても単価で補った。
不動産開発は、いま最大の稼ぎ頭だ。物流施設や賃貸レジデンス、ホテル、商業施設を自社で開発し、完成後に不動産投資信託(REIT)や私募ファンドに売る。前期は大型の売却が重なり、利益は149億円と前の期の1.5倍近くに増えた。売る相手の1つが、自社が運用を任されるエスコンジャパンリートだ。出口を自前で持つことが、この事業の強みになる。
不動産賃貸は、自社で持つビルや商業施設、ホテルから家賃を得る。2021年以降、ピカソグループ、四条大宮ビル、芝リアルエステートを取得して厚くした。賃貸の資産は約1,110億円で、不況でも利益が崩れにくい。
資産管理は、REITやファンドの運用と物件管理の報酬だ。規模は小さいが利益率が高い。北海道では、エスコンフィールドHOKKAIDOの周辺で駅前の複合施設やホテルを開発している。野菜工場への出資のように、本業から離れた投資は赤字が続いている。
要するに、売って稼ぐ部分と、持って稼ぐ部分を組み合わせ、後者を厚くしようとしている会社だ。
優良さと弱いところ
優良さは、筆者の見立てでは「中くらいの堀に、強い後ろ盾」だ。堀とは、他社がまねできない強みのことをいう。
いちばんの強みは中部電力の信用だ。格付けは1段階上がってAA-になり、前期の平均調達金利は1.6%に抑えた。同じ規模の独立系の不動産会社には、まねできない条件だ。
次の強みは、開発から売却、運用までを一貫して持つ点だ。自社で用地を仕入れ、建て、REITや私募ファンドへ売り、運用の報酬も得る。売る先に困りにくい。北広島のまちづくりのように、土地の仕入れ自体を差別化にしている点も効く。
一方、分譲マンションの堀は浅い。上位にはオープンハウス、野村不動産、住友不動産、三井不動産といった大手が並び、価格を決める力は弱い。
資本の面では注意がいる。ROEは14%台と高いが、借金で膨らませた数字だ。自己資本比率は17%で、純有利子負債は自己資本の3倍をこえる。利益の大きな部分が、物件を売る時期に左右される点も弱みだ。
経営は、利益と同時にストック収益を積む方針を示し、実績も出している。ただ、持分法で持つ野菜工場の赤字に見られるように、新しい事業の見極めには甘さが残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は、分譲と収益不動産という性格のちがう2つの市場にまたがる。
分譲マンションは、数が減り、値段が上がる市場だ。2025年の首都圏の発売は2.2万戸で、1973年以降で最少だった。建築費と用地代が上がり、各社が数を絞って単価を上げている。近畿は1.7万戸で前年より増え、地域差が大きい。この構図は、物価が年3%で上がる前提のもとでも続くと見る。数は人口に沿ってゆるやかに減り、値段は物価を少し上回って上がる。
収益不動産は、投資マネーの流れで決まる。物流施設、賃貸レジデンス、ホテルは、REITや私募ファンドの買いが厚い。ただ、10年国債が3%になる世界では、投資家の求める利回り(キャップレート)が上がり、売却価格に圧力がかかる。開発して売る事業は、仕入れと売却の利回りの差で稼ぐ。この差が薄くなると、同じ量を売っても利益は減る。
ホテルや商業施設の賃料は、訪日客と物価に連れて上がる。北広島の駅前や、2027年秋に開業予定のホテルは、ボールパークの集客力に乗る事業だ。
競争は2つの面で起きる。分譲では大手との用地の取り合いだ。収益不動産では、商社系や外資系のファンドが同じ物流施設や賃貸レジデンスを狙う。エスコンの勝ち筋は、中部電力グループの信用と、地方都市や郊外の中規模案件を丁寧に拾うことにある。
資本政策と M&A
還元は「累進配当」、つまり減らさない配当が約束だ。来期も増配の計画で、利益に対する割合は4割弱に収まる。自社株買いに重きを置いておらず、お金は成長投資に回る。
投資は積極的だ。第5次中期経営計画の3年間で、総額2,500億円を投じる計画で、7割近くを使い終えた。賃貸の資産を厚くし、開発の在庫も増やす。その分、借金も膨らむ。自己資本比率は来期末に17.5%を目指す。
買収は、ピカソグループ、四条大宮ビル、芝リアルエステートと続いた。いずれも賃貸の資産を厚くする目的で、収益の安定には役立った。
親会社の中部電力は51%を持つ。親子上場のため、東京証券取引所は、少数株主の利益を守る体制を強く求めている。完全子会社化の公開買い付けが出れば、株主には上振れだ。ただ、発表はなく、今回の価値には入れていない。
次の中期経営計画は、今期の終了後に示される。長期ビジョンが掲げる2030年度の経常利益300億円、不動産アセット1兆円が、どの数字に置き換わるかが焦点になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
前期の営業利益は261億円で、会社の中期計画の目標を前倒しで超えた。来期は265億円を見込み、長期ビジョンの2030年度の経常利益300億円も、手の届く範囲にある。
稼ぎの形が変わった。賃貸などのストック収益は、前期に全体の25.6%まで高まり、目標の30%へ向かっている。開発で売る利益が谷になっても、賃貸が土台を支える。
資金面では中部電力の信用が効く。格付けはAA-まで上がり、前期の平均調達金利は1.6%だった。金利が上がっても、独立系より調達の差で有利に立てる。
北広島では駅前の複合施設に続き、2027年秋にホテルが開業し、2028年にはボールパーク近くに新駅ができる。この街づくりが、10年かけて賃料と開発利益になる。
収益不動産への資金は厚く、REITや私募ファンドが買い手になる。出口を自社で持つため、物件を売れずに抱える危険は小さい。この条件がそろえば、営業利益は10年で2倍を超え、ROEも11%台を保つ。
慎重な見方
前期の利益は、大型の売却がたまたま重なった結果だ。開発の利益は1年で5割近く増えたが、こうした大型案件は毎年は出ない。今の利益が10年続くとは言えない。
借金は、事業の燃料であると同時に、重い荷物でもある。総資産5,100億円に自己資本は870億円しかなく、純有利子負債は3,000億円を超える。借入の平均金利は1.6%だが、10年国債が3%の世界では、借り換えのたびに3.5%前後へ上がる。これだけで、利息は年60億円ほど増える。
営業利益が増えても、利息が増えれば純利益は伸びない。ROEは14%台から一桁台へ下がり、資本コストを下回る。ここまで下がると、利益を再投資しても株主の価値は増えない。
キャップレートが上がれば、開発して売る事業は、売却価格が仕入れの値上がりに追いつかない。2008年のように資金の出し手が消えれば、在庫は売れず、評価損が自己資本を一気に削る。当時は最終損益が2期続けて大きな赤字になった。
親子上場の構造も重い。中部電力の意向で、少数株主に不利な取引が起きる危険は消えない。野菜工場のように、本業と関係が薄い投資の赤字も続いている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。稼ぐ力そのものは強気の見方のとおりだが、価値は、金利の上昇で利息が増える分を引いて測る必要がある。この分は強気の見方が軽く見ている。
一方、中部電力の信用は本物で、2008年のような破綻の形にはなりにくい。そこで悲観の確率は12%にとどめ、やや悲観に24%を置いた。
楽観とやや楽観を合わせた確率は28%にした。計画どおりに進む筋書きは確かにありうるが、利息の負担が増える中で、その確率を高く置く理由は乏しい。確率は慎重な側に寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,719 円1,648 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 544 円521 億円)。 今の値に割り戻すと 1,100 円1,055 億円、今との差 +5.3%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 8.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,281 円3,146 億円 | 770 円738 億円 | +287.6% | +14.5% | 324 円311 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,650 円2,541 億円 | 689 円661 億円 | +219.6% | +12.3% | 668 円640 億円 |
| 中立 | 36% | 2,071 円1,986 億円 | 581 円557 億円 | +153.7% | +9.8% | 955 円915 億円 |
| やや悲観 | 24% | 686 円657 億円 | 501 円480 億円 | +13.5% | +1.3% | 285 円273 億円 |
| 悲観 | 12% | 136 円130 億円 | 125 円120 億円 | −75.1% | −13.0% | 31 円30 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,719 円1,648 億円 | 544 円521 億円 | +116.5% | +8.0% | 2,262 円2,169 億円 |
今の株価時価総額 1,045 円1,002 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画どおりに進み、ストックが厚くなる 利益 229 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 3,281 円3,146 億円
長期ビジョンどおりに、経常利益300億円、不動産アセット1兆円を達成し、その後も勢いが続く。分譲は中部と関西で戸数を増やし、単価も物価を少し上回って上がる。開発では、物流施設や賃貸レジデンスの売却が年17件ほどに増え、売却額も大きくなる。
賃貸は、北広島のホテルや商業施設、買い足したビルで残高が倍になり、家賃も物価に沿って上がる。資産管理は、REITと私募ファンドの運用資産が2倍強に増え、報酬が積み上がる。
中部電力の信用で借り入れを増やせるが、借り換えの金利は3.5%前後に上がる。利息が営業利益の半分近くになっても、純利益は229億円まで伸びる。ROEは11%台を保つ。
- 住宅分譲:数量 1,200(年間の引渡し戸数(戸))× 価格 0.97(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,160 億円・営業利益 209 億円。1,200戸×0.97億円、利益率18%
- 不動産開発:数量 17.0(年間の売却件数(件))× 価格 61(1件あたり売却額(億円・名目))→ 売上 1,036 億円・営業利益 280 億円。17件×61億円、利益率27%
- 不動産賃貸:数量 2,200(賃貸不動産の残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.21(残高あたり賃貸売上(比率・名目の賃料の指数を含む))→ 売上 457 億円・営業利益 210 億円。残高2,200億円、利益率46%
- 資産管理・その他:数量 7,000(運用・管理を受託する資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(残高あたり報酬など(比率・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 63 億円。運用・管理7,000億円、利益率50%
倍率:事業の純利益 229 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.78 倍、時価総額 2,927 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画の達成実績と、中部電力の資金力は本物だ。ただ、10年続けて市況に乗り、利息の負担も吸収する必要がある。借金の重さを考え、確率は1割に届かない8%にとどめた。
やや楽観 20% 計画の7割は達成し、利息が利益を削る 利益 190 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 2,650 円2,541 億円
中期計画のおよそ7割まで進む。分譲は戸数を1,100戸ほどに増やし、開発の売却も年15件前後で安定する。賃貸は残高が1,900億円まで伸び、北広島のホテルが育つ。
借金は6,000億円規模に膨らみ、借り換えで金利は3.5%前後になる。営業利益は467億円まで伸びるが、利息が200億円近くに達するため、純利益は190億円にとどまる。ROEは10%台前半で、資本コストをわずかに上回る。
中部電力との関係は今と変わらず、完全子会社化の動きもない。配当は累進配当の方針どおりに増え、還元は利益の4割ほどを保つ。計画を達成しきれなかった分は、賃貸の積み上げが穴埋めする形になる。
- 住宅分譲:数量 1,100(年間の引渡し戸数(戸))× 価格 0.91(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 1,006 億円・営業利益 176 億円。1,100戸×0.91億円、利益率17.5%
- 不動産開発:数量 15.0(年間の売却件数(件))× 価格 60(1件あたり売却額(億円・名目))→ 売上 897 億円・営業利益 233 億円。15件×60億円、利益率26%
- 不動産賃貸:数量 1,900(賃貸不動産の残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.21(残高あたり賃貸売上(比率・名目の賃料の指数を含む))→ 売上 395 億円・営業利益 180 億円。残高1,900億円、利益率45.5%
- 資産管理・その他:数量 5,500(運用・管理を受託する資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(残高あたり報酬など(比率・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 48 億円。運用・管理5,500億円、利益率49%
倍率:事業の純利益 190 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.18 倍、時価総額 2,314 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:前期までの実績から、計画の7割ほどは達成できると見る。借り換えの利息が増える分を差し引くと、計画どおりとはいかない。確率は2割とした。
中立 36% 稼ぎは増えるが、利息に打ち消される 利益 153 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,071 円1,986 億円
分譲は戸数が1,000戸前後で横ばいになり、単価が物価に沿って上がる。開発の売却は年13件ほどで、前期のような大型案件の山は毎年は出ない。賃貸は残高が1,700億円へ増え、家賃は物価に沿って上がる。
営業利益は381億円まで伸び、10年で5割増える。ただ、借入は4,900億円に増え、借り換えで金利は3.5%前後になる。利息が160億円近くになり、純利益は153億円と、今より3割増えるだけだ。
自己資本は、利益を貯めて1,780億円に増える。ROEは8.6%と、資本コストを下回る。稼ぎは増えても、株主の持ち分の価値は、利益ほどには増えない。
- 住宅分譲:数量 1,000(年間の引渡し戸数(戸))× 価格 0.88(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 879 億円・営業利益 145 億円。1,000戸×0.88億円、利益率16.5%
- 不動産開発:数量 13.0(年間の売却件数(件))× 価格 58(1件あたり売却額(億円・名目))→ 売上 755 億円・営業利益 189 億円。13件×58億円、利益率25%
- 不動産賃貸:数量 1,700(賃貸不動産の残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.21(残高あたり賃貸売上(比率・名目の賃料の指数を含む))→ 売上 353 億円・営業利益 159 億円。残高1,700億円、利益率45%
- 資産管理・その他:数量 4,500(運用・管理を受託する資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(残高あたり報酬など(比率・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 39 億円。運用・管理4,500億円、利益率48%
倍率:事業の純利益 153 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 1,749 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:稼ぐ力は物価の伸びを少し上回るが、利息の負担がそれを打ち消す。最も起こりやすい形として、確率は最大の36%に置いた。
やや悲観 24% 利回りが上がり、開発の稼ぎが細る 利益 52 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 686 円657 億円
10年国債3%の定着で、投資家が求める利回りが上がり、物流施設やホテルの売却価格が伸びなくなる。開発の売却は年10件に減り、利益率も19%まで下がる。分譲も、建築費の上昇で利益率が14%に落ちる。
賃貸は残高が1,550億円まで積み上がるが、ホテルの稼働と家賃の伸びが鈍い。借入は4,300億円で、金利は3.5%前後。営業利益は221億円でも、利息が約140億円かかり、純利益は52億円まで細る。配当は累進配当を守るため、利益の半分ほどを払い続ける。
開発の売却が減ると、在庫の回転が遅れ、借入も増えやすい。自己資本比率は伸び悩み、新しい投資にも慎重にならざるをえない。会社は賃貸の積み上げで食いつなぐが、成長の勢いは物価の伸びを下回る。ROEは4%を割り、資本コストに遠く届かない。
- 住宅分譲:数量 850(年間の引渡し戸数(戸))× 価格 0.86(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 729 億円・営業利益 102 億円。850戸×0.86億円、利益率14%
- 不動産開発:数量 10.0(年間の売却件数(件))× 価格 54(1件あたり売却額(億円・名目))→ 売上 540 億円・営業利益 103 億円。10件×54億円、利益率19%
- 不動産賃貸:数量 1,550(賃貸不動産の残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.20(残高あたり賃貸売上(比率・名目の賃料の指数を含む))→ 売上 314 億円・営業利益 129 億円。残高1,550億円、利益率41%
- 資産管理・その他:数量 3,800(運用・管理を受託する資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(残高あたり報酬など(比率・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 28 億円。運用・管理3,800億円、利益率42%
倍率:ROEは3.9%でk 8.75%を大きく下回り、PERの上限は1÷k=10.5倍。稼ぐ力は低く、在庫の回収と借り換えを急ぐ会社なので、PER 7.0倍に置いた。EV÷営業利益は、借入約4,300億円を足して約21倍と高く、本業の稼ぎだけでは評価が上がらないことも確かめた。
確率:金利の上昇でキャップレートが上がり、開発の利益が構造的に薄くなる展開は、業界の筋書きとして現実的だ。借金の重さも重なる。確率は24%とした。
悲観 12% 資金の出し手が消え、在庫が重荷になる 利益 −120 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 136 円130 億円
金利が一段と上がり、不動産ファンドと銀行が一斉に引く。完成した物件が売れず、開発の在庫は在庫のまま滞る。分譲の戸数も5割近く減る。評価損と利息の増加が重なり、純損失が出る。
借入は4,000億円ほどで、危機時の金利は5%近くに上がる。利息だけで営業利益を大きく上回る。自己資本は評価損で大きく削られ、中部電力が資本を入れる場面も出る。株主の持ち分は大きく薄まり、配当も減らす。
会社は破綻はしないが、10年たっても優良さは戻らない。株主の価値は、親会社の支援に依存する残りかすになる。
還元は、純損失の中でも配当の下限を守ろうとするため、累積の利益を大きく超える。足りない分は、保有する資産の売却と親会社の資金で埋める。それでも自己資本は150億円ほどまで細り、今の水準の2割にも届かない。
- 住宅分譲:数量 500(年間の引渡し戸数(戸))× 価格 0.75(1戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 374 億円・営業利益 22 億円。500戸×0.75億円、利益率6%
- 不動産開発:数量 5.0(年間の売却件数(件))× 価格 46(1件あたり売却額(億円・名目))→ 売上 232 億円・営業利益 19 億円。5件×46億円、利益率8%
- 不動産賃貸:数量 1,400(賃貸不動産の残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.19(残高あたり賃貸売上(比率・名目の賃料の指数を含む))→ 売上 268 億円・営業利益 94 億円。残高1,400億円、利益率35%
- 資産管理・その他:数量 2,500(運用・管理を受託する資産残高(億円・今の値段のまま))× 価格 0.02(残高あたり報酬など(比率・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 11 億円。運用・管理2,500億円、利益率30%
倍率:悲観の価値は、今の自己資本867億円に0.15倍を掛けた。売れる資産を税後で換金して借金を返すと、手元に残る額はほぼゼロになる。残るのは、中部電力が支える前提の残存価値だけ。EV÷営業利益は約99倍になり、利益の倍率ではなく資産で測るしかない。稼ぐ力は赤字で、ためた利益や帳簿の自己資本は床にならない。
確率:2008年のように、資金の出し手が消える展開が、再び来る確率は1割ほどとみる。中部電力の後ろ盾が破綻を遠ざけるが、借金の重さで谷は深い。確率は12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅分譲
マンションの分譲。首都圏・中部・関西・九州で年1,000戸前後を引き渡す。
| 数量年間の引渡し戸数(戸) | 価格1戸あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 971 | 0.66 | 637 | 115 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.88 | 879 | 145 |
取り方:2026/03期の引渡しは971戸(決算説明)。分譲の売上は来期計画665億円が前期比4.5%増という開示から約637億円と逆算し、1戸あたり0.656億円と置いた。セグメント利益は115億円(利益率18%)。
不動産開発
物流施設・賃貸レジデンス・ホテル・商業施設を開発し、REIT・私募ファンド・事業会社へ売る。底地の売却も含む。
| 数量年間の売却件数(件) | 価格1件あたり売却額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 43 | 520 | 149 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 58 | 755 | 189 |
取り方:開発のセグメント売上は520億円・利益149億円(決算説明)。件数は開示がないため、物流施設・賃貸レジデンス・底地などの大型売却が年12件前後と推定し、1件あたり約43億円と置いた。利益率は約29%。
不動産賃貸
自社で持つオフィス・商業施設・ホテルの賃貸と運営。買い増しで残高を積む。
| 数量賃貸不動産の残高(億円・今の値段のまま) | 価格残高あたり賃貸売上(比率・名目の賃料の指数を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,110 | 0.16 | 172 | 80 |
| 10 年後 中立 | 1,700 | 0.21 | 353 | 159 |
取り方:賃貸アセットは約1,110億円(2025/09の説明資料)。2026/03期の賃貸売上は上期の89億円と来期計画175億円から約172億円、セグメント利益は80億円と推定した。残高あたり売上が高いのはホテル運営の売上を含むため。 数量は賃貸アセットの残高(実物)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は開発物件の保有分の積み上がり。
資産管理・その他
REIT・私募ファンドの運用と物件の管理で受ける報酬、北広島の施設運営など。
| 数量運用・管理を受託する資産残高(億円・今の値段のまま) | 価格残高あたり報酬など(比率・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 0.01 | 40 | 20 |
| 10 年後 中立 | 4,500 | 0.02 | 80 | 39 |
取り方:資産管理は上期売上9.5億円・利益5億円、その他は上期売上7億円・利益1.5億円(決算説明)から通期で売上約40億円・利益約19.5億円と置いた。運用・管理の残高は開示がなく、エスコンジャパンリートなどの受託分を含め約3,000億円と推定した。 数量は運用・管理の残高(実物)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由はリートなどの受託の拡大。
リスクと懸念
借り換えによる金利負担
借入の平均金利は前期で1.6%だが、10年国債が3%の世界では借り換えのたびに3.5%前後へ上がる。純有利子負債は3,000億円を超え、利息だけで年60億円ほど増える。営業利益が伸びても、純利益はそれほど増えない。
売却時期と市況への依存
前期の利益は大型の売却が重なった結果だ。開発の利益は1年で5割近く増えたが、毎年は続かない。売却が1期ずれるだけで、期の利益が大きく振れる。
自己資本の薄さ
自己資本比率は17%で、総資産の8割以上が借金など他人のお金だ。不動産の評価が2割下がるだけで、自己資本の大半が消える。2008年と2009年には最終赤字を出し、増資も経験した。
親子上場の構造
中部電力が51%の株を持つ。親会社の都合で、少数株主に不利な取引や、安い値段での完全子会社化が起きる危険は消えない。逆に、上場の維持を迫る流れが強まる可能性もある。
分譲マンションの競争
首都圏の発売戸数は2025年に1973年以降で最少だった。上位には、オープンハウス、野村不動産、住友不動産、三井不動産といった大手が並ぶ。用地の取り合いで負ければ、仕入れが細り、戸数も利益率も落ちる。
本業から離れた投資の赤字
持分法で持つ野菜工場は、出荷が計画を下回り、前期は40億円前後の持分法損失を出した。新規事業の見極めが甘いと、経常利益が圧迫される。
今後の分かれ目
- 10年国債の利回りが3%より高く、借り換え金利が4%を超えた時
- 利息がさらに膨らみ、純利益は大きく減る。やや悲観の筋書きへ確率を移す。
- 物流施設や賃貸レジデンスの売却が、利回りを守ったまま続いた時
- 開発の利益が安定し、やや楽観へ確率を寄せてよい。出口の厚さの証拠になる。
- 中部電力が完全子会社化の公開買い付けを発表した時
- この分析にない上振れの材料になる。ただ、値段が今の時価総額の延長でないか確かめる。
- 次の中期経営計画が、自己資本比率の改善と借入の抑制を明確に示した時
- 借金の重さへの不安が和らぎ、確率をやや楽観側に寄せる。逆に投資の積み増しだけが並ぶなら、慎重に見る。
- 大型の分譲物件で契約の進みが鈍り、在庫が積み上がった時
- 分譲の利益率が下がり、やや悲観の筋書きに近づく。
- 野菜工場など持分法の投資損失が、再び拡大した時
- 経営の資本配分に疑問が出る。評価を一段厳しくする。
見ておくもの
- 借入の平均金利と、借り換えの上乗せ幅
- 開発の売却件数と、売却先(REIT・私募ファンド・事業会社)の厚み
- 自己資本比率と、純有利子負債の増え方
- ストック収益の比率(目標30%)と、賃貸アセットの残高
- 次の中期経営計画の目標と、中部電力の動き
倍率と資本コストの決め方
先にセグメントごとの数量と価格で10年後の営業利益を積み、次に借入の増え方と借り換えの金利から利息を引き、事業の稼ぎと資本コストから倍率を決めた。今の株価や過去の倍率は倍率の根拠にしていない。純有利子負債は決算の短信が確認できず、利息54億円÷平均金利1.6%から、約3,250億円と推定した。借り換え後の金利は10年国債3%+格付けの高い会社の上乗せ0.5%で3.5%とした。セグメント別の売上のうち、賃貸・資産管理・その他は開示の一部からの推定で、件数や運用残高にも開示がない。家賃を営業費用に入れる今の形のまま、10年先もそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.78 倍・やや楽観 PER 10.5→12.18 倍・中立 PER 8.6→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。