結論
ミラースは、旧タカラレーベンだ。「レーベン」ブランドの新築分譲マンションを全国で売る会社で、2025年の供給戸数は全国5位だった。分譲に加えて、ビルやマンションを仕入れて磨いて売る流動化、中古住宅の再販、戸建分譲、管理・賃貸、太陽光を中心とした発電を持つ。筆者の結論は「割高」寄りだ。いちばんの理由は、稼ぎに比べて借入が重いことにある。
2026年3月期の営業利益は過去最高の176億円だった。ところが純利益は、発電所の減損で48億円に沈んだ。営業の稼ぎは強いのに、株主に残る利益は薄い。自己資本比率は約2割しかなく、有利子負債は約2,700億円ある。借り換えのたびに金利が3.5%前後へ上がれば、利払いは10年で数十億円増える。営業利益の伸びの多くを食う額だ。
事業の向きは悪くない。会社は、建築費高騰で利幅が薄れた分譲マンションの比重を落とし、戸建と中古再販へ力を移している。管理するマンションは約9万5千戸あり、景気に左右されない土台になる。ただ、住宅分譲は人口減の下で数量が細る業界だ。物価で価格が上がっても、土地と建築費も同じだけ上がる。
筆者は、10年後を「営業利益は伸びるが、利払いに吸われて純利益は今より少し増える程度」と見る。会社が目標に掲げる自己資本利益率9%にも、届きにくい。5つの筋書きを確率で加重した本質価値は、今の時価総額を1割あまり下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ミラースは「持ち続けたい事業」とは言いにくい。理由は三つある。
一つめは、稼ぎの質だ。利益の大半は、土地や建物を仕入れて売るたびに生まれる。次の仕入れに資金を回さなければ、翌年の利益は続かない。株主が自由に使えるお金は、決算の純利益より小さい。
二つめは、資本の使い方だ。自己資本838億円に対し、有利子負債は約2,700億円ある。在庫と発電所を担保にした借入なので、すぐに危うくはない。ただ、不動産市況が崩れた年には、在庫の値下げと借入の返済が同時に来る。2008年前後に、中堅の分譲会社が相次いで破綻したのがその姿だ。
三つめは、安全域だ。10年先の中立の姿でも、純利益は95億円前後、自己資本利益率は7%台にとどまる。資本コストに届かない会社に、高い倍率は払えない。
良い点もある。管理で積み上がる安定収益、地方に根を張ったブランド、配当の下限を決めた経営の姿勢だ。資本効率を目標に掲げて動き出したことは評価できる。ただ結果が出るまでは、利益の伸びより借入の重さを重く見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは大きく5つに分かれる。いちばん大きいのが新築分譲マンションだ。2026年3月期の売上は約1,070億円で、全社の半分を占める。年に約2,800戸を引き渡す。地方の中核都市に強く、首都圏・中部・近畿の三大都市圏の比率は46%まで高めてきた。
次が流動化だ。賃貸マンション、ホテル、オフィスを仕入れ、貸したり改修したりして、投資家に売る。売上は約370億円。分譲より回転が速く、市況の追い風を受けやすい。反面、買い手の資金調達が細ると売れ残る。
新築戸建分譲と、リニューアル再販(中古住宅を買って直して売る事業)は、規模こそ小さいが、会社が成長の牽引役に据えた。2026年3月期は戸建が239戸、再販が238戸だ。2030年度に、この二つで不動産の営業利益の3割を稼ぐ姿を描く。
管理・賃貸は土台だ。管理するマンションは約9万5千戸あり、毎月の管理費が入る。大規模修繕の受注も加わるため、景気に強い。
最後が発電だ。稼働中の発電所は約390メガワットで、売電収入は約106億円。固定価格買取で価格が決まるので安定する。ただ維持費の上昇と制度変更が悩みで、2026年3月期は延岡のバイオマス発電所などで減損を出した。アセットマネジメントとカンボジアのカシューナッツ事業は、まだ小さい。
全体は「土地や建物を仕入れ、短い期間で売る」在庫回転の商売だ。だから借入が膨らむ。総資産4,195億円のうち、棚卸資産が約1,700億円、発電設備が約800億円を占める。
優良さと弱いところ
優良さは中の上、堀は弱い。強いのは、地方の分譲マンションで築いたブランドと、管理で積み上げた顧客基盤だ。レーベンは地方都市で知られ、供給戸数は全国5位。ただし1位のオープンハウスは約6,600戸で、3倍以上の差がある。
堀、つまり他社がまねできない強みは小さいと見る。新築分譲は、土地を入札で仕入れ、売値は市場が決める。値決めの力がない。2026年3月期の粗利率は20.7%で、建築費の上昇に1ポイント削られた。会社も、マンションを今後の主役にはしないと決めた。
資本効率は低い。自己資本利益率は直近で5.7%、過去10年の中央値で10.5%だ。借入の重さが主因で、自己資本比率は約2割、D/Eレシオは3倍ある。在庫を抱えて回す商売の宿命だが、金利が上がる局面では弱みになる。
経営には、誠実な面と危うい面が混ざる。取締役7人のうち社外が4人で、リスク管理の責任者を取締役から立てた。配当に下限(DOE)を入れ、約10年ぶりに自社株買いにも踏み切った。一方、2022年には元役員の交通違反による有罪判決の報告が遅れ、宅建業の免許をいったん返上して取り直した。仕組みの甘さを示した件だ。
発電への多角化は、結果として資本を縛った。有形固定資産の6割が発電所で、減損が出た。会社自身が見直しに動いているが、その整理は途上だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
分譲住宅の市場は、人口減の下で数量が細り、価格だけが物価で上がっていく。2025年の新設住宅着工は約74万戸と、62年ぶりの低水準だった。分譲一戸建ての着工は約11.6万戸。分譲マンションは、建築費が2〜4割上がった水準で定着した。
筆者は、この市場の数量が10年で実質3〜5%ほど減ると見る。建築費は物価並みに上がり続けるので、1戸の価格は上がる。だが売り手の利幅は広がらない。土地も建築費も同じ速さで上がるからだ。
競争の形は、都心と地方で違う。都心の狭小地や大型開発は、オープンハウスと財閥系の大手が押さえる。ミラースの持ち場は、人口100万人規模の都市の中心部や、首都圏でも城西・城北・城東の通勤30〜45分圏にいるアッパーミドル層だ。大手の隙間を縫う位置にある。
追い風は、新築の値上がりで中古再販の需要が増えることと、管理戸数の積み上げ、大規模修繕の需要だ。逆風は、住宅ローン金利の上昇、工期の長期化、地方の人口減である。10年国債が3%の世界では、変動ローンの金利が上がり、実需層の購買力を直接削る。
再編の余地はある。住宅分譲の担い手は分散しており、規模をそろえたい地場の中堅が多い。飯田グループの8社統合のような動きは、人手不足が続けば再び起こる。ミラースが買い手になる道も、買われる道も、ありうる。
資本政策と M&A
資本政策は守りに寄せた。2026年3月期は発電所の減損で純利益が振るわなかったが、配当は据え置く。新たに、純資産に対して3.5%を払うDOEの下限を入れ、配当性向35〜40%と高い方を採る。自社株買いは約10億円で、約10年ぶりだ。
有利子負債は約2,700億円ある。このうち特定の資産に紐づかないのは379億円で、残りは在庫や発電所に紐づく。目標は自己資本比率23%以上、LTV(総資産に占める借入の割合)65%未満、D/Eレシオ3倍未満だ。自己資本比率はまだ届かず、LTVとD/Eは上限の近くにいる。
筆頭株主は資産管理の一般社団法人で、持株比率は約18%。信託口が約10%で続く。単独で支配する株主はいない。
M&Aは、大型の買収で規模を買うより、自前の仕入れで伸ばす路線だった。戸建の施工を担う子会社の再編が進み、2026年7月には二つの子会社が商号を変える。
発電所の売却は、資本を回す手段になる。2027年3月期は約90億円の施設売却を見込む。売却資金で借入を返せるかが、資本効率の改善の鍵だ。
決算期末のあとに実行した自社株買い約 10 億円は株数と自己資本の起点に反映したため、10 年の還元からは除いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ミラースは、事業の重心を動かし始めたところだ。分譲マンションは建築費の高騰で粗利率が1ポイント削られたが、その間に戸建と再販を伸ばしている。再販の粗利益は期初計画を7割上回り、戸建は粗利益が5割近く増えた。新築が高くなるほど、中古を直して売る需要は膨らむ。会社は2030年度に、この二つで不動産の営業利益の3割を稼ぐ姿を描いている。
管理は9万5千戸の土台で、管理費と修繕工事が毎年入る。2025年の供給戸数は全国5位。地方の中核都市と首都圏の外縁で、大手が取らない層を押さえている。流動化は、売却先の多様化とアセットライトの進展で、回転が速くなる。
資本面では、DOEの下限と自社株買いが始まった。自己資本比率の目標も数字で示した。発電所の減損で悪い材料は先に出し切り、売却を進めれば借入も減らせる。
10年後、数量が減っても、都市の中心部と首都圏の城西・城北・城東で価格が物価を上回れば、営業利益は大きく伸びる。会社が目指す自己資本利益率9%は、手の届く範囲にある。強気の筋書きでは、営業利益が300億円を超え、金利負担をこなしても純利益は150億円を超える。
慎重な見方
金利が敵だ。有利子負債は約2,700億円で、いまの利払いは約43億円。借り換えのたびに金利が3.5%前後へ上がれば、利払いは10年で倍近くになる。営業利益176億円のうち、数十億円が消える。分譲の原価に入る利息を、売値に転嫁できる保証はない。
マンションは、建築費が上がって利幅が薄くなった。会社が力点を戸建と再販に移したのは、本業の限界を認めたに等しい。ところが戸建と再販は合わせても売上が270億円、営業利益は十数億円だ。マンションの穴を埋める規模ではない。
発電は、減損が出た。固定価格買取で価格が決まるのに、維持費は上がり、制度も変わる。有形固定資産の6割がここにある。売却を急げば、帳簿より安くなるおそれがある。
在庫の重さもある。棚卸資産は約1,700億円で、完成在庫が増えている。人口減と住宅ローン金利の上昇が重なれば、売れ残りと値引きで損益が一気に崩れる。2022年に免許を返上した件が示すように、統治の脆さも残る。
自己資本比率は約2割で、目標の23%にも届かない。景気後退の年に、在庫の評価損と借入の返済が同時に来れば、配当も自社株買いも止まる。弱気の筋書きでは、営業利益は100億円を割り、純利益は数十億円に細る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。分譲の数量が細る点と、金利が利払いを重くする点は、10年でほぼ確実に効く。強気の見方が頼る戸建・再販は、規模がまだ小さい。ただ、不動産の営業利益は底堅く、管理の土台もあるので、悲観の確率を大きく上げることはしなかった。確率は楽観7%、やや楽観21%、中立33%、やや悲観25%、悲観14%とし、中立よりやや悲観側へ寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 675 円901 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 246 円328 億円)。 今の値に割り戻すと 445 円594 億円、今との差 +6.6%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 9.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,344 円1,797 億円 | 379 円507 億円 | +313.4% | +15.2% | 121 円161 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,023 円1,367 億円 | 326 円436 億円 | +223.5% | +12.5% | 283 円379 億円 |
| 中立 | 33% | 790 円1,056 億円 | 279 円373 億円 | +156.4% | +9.9% | 353 円471 億円 |
| やや悲観 | 25% | 337 円450 億円 | 187 円250 億円 | +25.7% | +2.3% | 131 円175 億円 |
| 悲観 | 14% | 149 円199 億円 | 82 円110 億円 | −44.5% | −5.7% | 32 円43 億円 |
| 加重平均 | 100% | 675 円901 億円 | 246 円328 億円 | +120.7% | +8.2% | 920 円1,229 億円 |
今の株価時価総額 417 円557 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 戸建・再販と管理が育ち、金利を吸収する 利益 155 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 1,344 円1,797 億円
人口100万人規模の都市の中心部と、首都圏の城西・城北・城東で、分譲マンションの価格が物価を上回って伸びる。戸数は少し減るが、価格が穴を埋める。戸建と中古再販は会社の描く通りに育ち、不動産の営業利益の3割を稼ぐ。流動化は売却先が広がり、仕入れから売却までの期間が縮んで、毎年きれいに回る。管理は戸数が増え、大規模修繕の受注も重なる。発電は売却で縮め、蓄電池に絞って稼ぎが安定する。借入は3,300億円ほどに増えるが、売上の伸びで自己資本比率は3割に近づく。利払いは増えるが、営業利益が300億円を超えて吸収する。会社が掲げる自己資本利益率9%を超え、配当と自社株買いは増え続ける。
- 新築分譲マンション:数量 2,700(年間引渡戸数(戸、共同事業を含む))× 価格 0.56(1戸当たり売上(億円))→ 売上 1,514 億円・営業利益 121 億円。戸数-2%・単価+45%
- 流動化(収益不動産の再生・売却):数量 28.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 29(1件当たり売却額(億円))→ 売上 799 億円・営業利益 64 億円。件数+56%・単価+40%
- 戸建・中古再販:数量 800(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.81(1戸当たり売上(億円))→ 売上 645 億円・営業利益 52 億円。戸数+68%・単価+42%
- 管理・賃貸・その他:数量 105,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸当たり年間収益(億円。管理・賃貸・建設・ホテル・運用報酬を含む))→ 売上 496 億円・営業利益 67 億円。戸数+10%・単価+40%
- 発電(再生可能エネルギー):数量 400(稼働済発電規模(メガワット))× 価格 0.32(1メガワット当たり年間売上(億円))→ 売上 128 億円・営業利益 19 億円。規模+2%・単価+10%
倍率:事業の純利益 155 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.59 倍、時価総額 1,796 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:分譲の価格上昇、戸建・再販の高成長、流動化の好回転、借入の圧縮がそろう必要があり、重なる確率は低い。借入の重さと利払いの上昇が、楽観の上限を抑える。
やや楽観 21% 戸建・再販が計画どおり育ち、分譲は数量を絞って利幅を守る 利益 123 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,023 円1,367 億円
戸建と再販は計画に近い速さで育ち、2030年度には不動産の営業利益の約2割を占める。分譲マンションは、利幅の薄い地方の案件を絞り、戸数を1割ほど減らす代わりに、粗利率を20%台に保つ。流動化は資金回収の短い案件に絞り、売却は年に24件ほどで回る。管理戸数は10万戸に届き、大規模修繕と管理費が毎年の利益を支える。発電は不採算の設備を売り、縮んだまま小さく稼ぐ。借入は2,900億円ほどで横ばいになるが、売上の伸びで自己資本比率は2割台前半まで戻る。金利は上がるが、営業利益の伸びが半分ほどを吸収する。配当は下限のDOEを守りつつ、じりじり増える。
- 新築分譲マンション:数量 2,550(年間引渡戸数(戸、共同事業を含む))× 価格 0.54(1戸当たり売上(億円))→ 売上 1,380 億円・営業利益 99 億円。戸数-8%・単価+40%
- 流動化(収益不動産の再生・売却):数量 24.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 28(1件当たり売却額(億円))→ 売上 670 億円・営業利益 50 億円。件数+33%・単価+37%
- 戸建・中古再販:数量 680(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.78(1戸当たり売上(億円))→ 売上 532 億円・営業利益 38 億円。戸数+43%・単価+38%
- 管理・賃貸・その他:数量 102,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸当たり年間収益(億円。管理・賃貸・建設・ホテル・運用報酬を含む))→ 売上 471 億円・営業利益 61 億円。戸数+7%・単価+37%
- 発電(再生可能エネルギー):数量 390(稼働済発電規模(メガワット))× 価格 0.31(1メガワット当たり年間売上(億円))→ 売上 122 億円・営業利益 16 億円。規模-1%・単価+7%
倍率:事業の純利益 123 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 1,366 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:戸建・再販の育成と管理の積み上げは、会社の方針と実績が裏づけており、現実味が高い。ただ金利負担が重く、利益の伸びの半分ほどが吸収されるため、確率は中立より低く置く。
中立 33% 数量は細り、価格と管理で支える。金利負担で純利益は微増にとどまる 利益 95 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 790 円1,056 億円
分譲の数量は人口減と建築費の高止まりで緩やかに細り、2036年3月期の引渡は2,400戸ほどになる。価格は物価並みに上がるが、土地も建築費も同じだけ上がるので、利幅は広がらない。戸建と再販は560戸まで育つが、不動産の営業利益に占める割合は1割台にとどまる。流動化は年20件ほどで回る。管理戸数は10万戸に届き、安定した収益の柱になる。発電は設備の売却で縮み、固定買取のため単価は物価についていかない。借入は2,600億円ほどで、借り換えのたびに金利が3.5%前後へ上がる。営業利益は215億円まで伸びるが、利払いが倍近くに増え、純利益は95億円どまりだ。自己資本利益率は7%台で、資本コストには届かない。
- 新築分譲マンション:数量 2,400(年間引渡戸数(戸、共同事業を含む))× 価格 0.52(1戸当たり売上(億円))→ 売上 1,244 億円・営業利益 81 億円。戸数-13%・単価+34%
- 流動化(収益不動産の再生・売却):数量 20.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 27(1件当たり売却額(億円))→ 売上 546 億円・営業利益 38 億円。件数+11%・単価+34%
- 戸建・中古再販:数量 560(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.76(1戸当たり売上(億円))→ 売上 426 億円・営業利益 28 億円。戸数+17%・単価+34%
- 管理・賃貸・その他:数量 100,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸当たり年間収益(億円。管理・賃貸・建設・ホテル・運用報酬を含む))→ 売上 452 億円・営業利益 54 億円。戸数+5%・単価+34%
- 発電(再生可能エネルギー):数量 380(稼働済発電規模(メガワット))× 価格 0.31(1メガワット当たり年間売上(億円))→ 売上 116 億円・営業利益 14 億円。規模-3%・単価+5%(固定買取で物価に連動しない)
倍率:事業の純利益 95 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 1,056 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量が緩やかに細り、価格と管理で売上を保つ姿を中心に据える。会社の自己資本利益率9%の目標は、金利が上がる中ではなかなか届かないとみる。
やや悲観 25% 金利が高止まりし、分譲と流動化が冷える 利益 28 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 337 円450 億円
10年国債が3%を超えて推移し、住宅ローン金利が上がる。地方の分譲マンションの売れ行きが落ち、戸数は4割近く減る。会社は値引きで在庫をさばき、粗利率は15%台に下がる。流動化は、買い手の資金調達が細り、売却件数が減る。戸建と再販は、需要が弱く伸びない。管理だけが安定するが、管理戸数は頭打ちだ。発電は固定買取の価格が上がらず、維持費だけが増える。借入は2,300億円まで減らすが、利払いが営業利益の6割を食う。配当はDOEの下限を保つのがやっとで、自社株買いは止まる。純利益は30億円に満たず、自己資本比率は2割を割る。
- 新築分譲マンション:数量 1,700(年間引渡戸数(戸、共同事業を含む))× 価格 0.47(1戸当たり売上(億円))→ 売上 802 億円・営業利益 36 億円。戸数-39%・単価+22%
- 流動化(収益不動産の再生・売却):数量 14.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 24(1件当たり売却額(億円))→ 売上 343 億円・営業利益 15 億円。件数-22%・単価+20%
- 戸建・中古再販:数量 420(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.68(1戸当たり売上(億円))→ 売上 286 億円・営業利益 13 億円。戸数-12%・単価+20%
- 管理・賃貸・その他:数量 96,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸当たり年間収益(億円。管理・賃貸・建設・ホテル・運用報酬を含む))→ 売上 389 億円・営業利益 39 億円。戸数+1%・単価+20%
- 発電(再生可能エネルギー):数量 360(稼働済発電規模(メガワット))× 価格 0.29(1メガワット当たり年間売上(億円))→ 売上 105 億円・営業利益 8 億円。規模-8%・単価横ばい
倍率:事業の ROE 2.6% は資本コスト 9% 以下で、新しく投じるお金は価値を増やさない。この筋書きは稼ぐ力(純利益÷k)で測り、1÷k=10.3 倍の 9 割、9.97 倍とした。在庫の値下げは下の悲観の話で、ここでは使わない。
確率:住宅ローン金利の上昇と建築費の高止まり、地方の人口減が同時に効く姿は、10年という期間では現実味がある。借入の重さが、この筋書きの傷を深くする。
悲観 14% 不動産市況が崩れ、在庫と借入が同時にのしかかる 利益 −31 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 149 円199 億円
景気後退と金利上昇が重なり、分譲マンションの戸数は3分の1に落ちる。完成在庫の値引きで赤字が出る。流動化は、買い手がつかず、仕入れた物件が長く残って評価損が続く。戸建と再販も、在庫の値下げで利益が消える。管理戸数は、受託先の減少で1割ほど減る。発電は、固定買取の期間が切れた設備が増えて単価が下がり、減損が重なる。借入は金利の高い借り換えに追われ、返済のために発電所や賃貸ビルを安く売る。配当は大きく減り、自社株買いは止まる。発電と在庫を売却して借入を返すと、手元に残る株主の取り分は、今の自己資本の4分の1ほどになる。
- 新築分譲マンション:数量 900(年間引渡戸数(戸、共同事業を含む))× 価格 0.41(1戸当たり売上(億円))→ 売上 365 億円・営業利益 −4 億円。戸数-67%・単価+5%(在庫の値引きで赤字)
- 流動化(収益不動産の再生・売却):数量 8.0(年間の売却件数(件、推定))× 価格 20(1件当たり売却額(億円))→ 売上 163 億円・営業利益 −5 億円。件数-56%・単価横ばい
- 戸建・中古再販:数量 200(年間引渡戸数(戸))× 価格 0.57(1戸当たり売上(億円))→ 売上 114 億円・営業利益 0 億円。戸数-58%・単価横ばい
- 管理・賃貸・その他:数量 85,000(管理戸数(戸))× 価格 0.00(1戸当たり年間収益(億円。管理・賃貸・建設・ホテル・運用報酬を含む))→ 売上 301 億円・営業利益 24 億円。戸数-11%・単価+5%
- 発電(再生可能エネルギー):数量 330(稼働済発電規模(メガワット))× 価格 0.26(1メガワット当たり年間売上(億円))→ 売上 87 億円・営業利益 3 億円。規模-16%・単価-10%
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみる。株主に残るのは、販売用不動産・流動化資産・発電設備を値下げして売り、借入を返したあとの分。今の自己資本 838 億円に評価損と処分値引きを見込み、その約 24% の 201 億円を床に置いた(内訳は筆者の推定)。EV でも見た結果、EV ÷ 営業利益は 100 倍を超えるが、営業利益がほぼ 0 の筋書きで倍率は意味を持たず、借入を返した後の取り分だけを測った。
確率:有利子負債が自己資本の3倍あり、自己資本比率が2割と薄い。市況が崩れると、在庫の値下げと借入の返済が同時に来る。2008年前後の分譲会社の破綻が前例で、やや厚めに置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
新築分譲マンション
「レーベン」ブランドで、地方の中核都市と首都圏・近畿・中部の郊外を中心に、ファミリー向けの新築マンションを企画・分譲する中核事業。共同事業の戸数を含む。
| 数量年間引渡戸数(戸、共同事業を含む) | 価格1戸当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,767 | 0.39 | 1,070 | 76 |
| 10 年後 中立 | 2,400 | 0.52 | 1,244 | 81 |
取り方:2026年3月期の分譲マンション売上1,069.86億円を、引渡2,767戸(共同事業の戸数を含む)で割り、1戸約3,870万円とした。セグメント営業利益155.5億円のうち、粗利率20.7%と販管費の配分から本事業を約76億円(利益率7.1%)と推定。事業ごとの営業利益は会社の開示がなく、販管費の配分は筆者の推定。
流動化(収益不動産の再生・売却)
賃貸マンション・ホテル・オフィス・物流施設などを仕入れ、貸して改修し、投資家や私募ファンドに売る事業。資産の回転で稼ぐ。
| 数量年間の売却件数(件、推定) | 価格1件当たり売却額(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.0 | 20 | 367 | 28 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 27 | 546 | 38 |
取り方:売上366.9億円(粗利63.2億円、粗利率17.2%)を、1件約20億円の中小型の物件が年18件売れたものと推定して割った(件数は非開示で、筆者の推定)。営業利益は粗利から販管費の配分を引いて約28億円(7.6%)。
戸建・中古再販
新築戸建分譲(239戸)と、中古住宅を買って直して売るリニューアル再販(238戸)。会社が成長の牽引役に据える二つ。
| 数量年間引渡戸数(戸) | 価格1戸当たり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 477 | 0.57 | 271 | 14 |
| 10 年後 中立 | 560 | 0.76 | 426 | 28 |
取り方:戸建の売上164.3億円(239戸)と再販の106.4億円(238戸)を合算して477戸で割り、1戸約5,670万円。粗利は合計約42億円で、販管費の配分後の営業利益を約14億円(5.2%)と推定。
管理・賃貸・その他
分譲マンションの管理(約9万5千戸)、賃貸、大規模修繕、建設、ホテル運営、アセットマネジメント、カシュー事業など。景気に左右されにくい稼ぎの土台。
| 数量管理戸数(戸) | 価格1戸当たり年間収益(億円。管理・賃貸・建設・ホテル・運用報酬を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 95,357 | 0.00 | 322 | 42 |
| 10 年後 中立 | 100,000 | 0.00 | 452 | 54 |
取り方:管理108.7億円・賃貸66.9億円・その他不動産41.4億円と、その他事業92.3億円・アセットマネジメント12.3億円の合計321.6億円を、管理戸数95,357戸で割った1戸当たり収益。管理戸数に連動しない建設・ホテル・手数料の分が混ざるため推定の置き方。営業利益は不動産の残り分と他の事業の合計約42億円(13.1%)。
発電(再生可能エネルギー)
太陽光を中心に、稼働中の発電所が約390メガワット。固定価格買取で売電する。発電所の売却益も含む。
| 数量稼働済発電規模(メガワット) | 価格1メガワット当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 393 | 0.29 | 115 | 16 |
| 10 年後 中立 | 380 | 0.31 | 116 | 14 |
取り方:セグメント売上114.7億円(売電106.4億円と施設売却8.2億円)を稼働規模393メガワットで割った。営業利益16.2億円(14.1%)。2026年3月期は延岡のバイオマス発電所などで減損を計上済みで、この営業利益には含まれない。
リスクと懸念
金利上昇による利払いの膨張
有利子負債は約2,700億円で、借り換えのたびに金利が3.5%前後へ上がる。いまの利払いは約43億円だが、10年で倍近くになりうる。営業利益176億円のうち、数十億円が利払いに消える。分譲の原価に入る利息を売値へ転嫁できなければ、純利益が先に細る。
在庫評価損と市況の急変
棟数の増加と完成在庫の積み上がりで、棚卸資産は約1,700億円に膨らんだ。住宅ローン金利の上昇や景気後退で売れ行きが落ちれば、値引きと評価損が同時に出る。自己資本838億円に対して在庫が2倍あり、損失の吸収余力は薄い。2008年前後の分譲会社の破綻が、前例だ。
発電事業の資産の重さ
有形固定資産1,340億円のうち、発電施設が約820億円を占める。2026年3月期は延岡のバイオマス発電所などで減損を出した。維持費の上昇と制度変更が続けば、追加の減損や、帳簿より安い売却がありうる。売却資金で借入を減らす計画の前提が崩れる。
分譲マンションの利幅の薄さ
建築費の上昇と工期の長期化で、粗利率は20.7%と1ポイント下がった。2027年3月期の計画は20.0%。売値は市場が決め、土地は入札で仕入れるため、値決めで利幅を戻す力は弱い。主力の中核が細ると、会社全体の稼ぎが先に傷む。
戸建・再販の育成の遅れ
成長の牽引役に据えた二つだが、合計の売上は270億円、営業利益は十数億円にとどまる。マンションの穴を埋めるには、数倍の規模が要る。仕入れの競り合いと人手不足で、育成が計画より遅れれば、事業の重心の移し替えが進まない。
統治と資本効率の目標の実現
2022年に、元役員の交通違反による有罪判決の報告が遅れ、宅建業の免許を一度返上した。内部統制の部門を新設し、リスク管理の責任者を置くなど、手当ては進めている。ただ、自己資本比率23%以上・自己資本利益率9%以上という目標は、金利が上がる中では届きにくい。
今後の分かれ目
- 10年国債が想定の3%を大きく超えて上昇する
- 住宅ローン金利と借り換えの金利が同時に上がり、分譲の戸数と純利益の両方が削られる。本質価値は、やや悲観・悲観の筋書きに近づく。
- 戸建と中古再販の営業利益が計画どおり育ち、不動産の営業利益の2割を超える
- 景気に強い収益の割合が高まり、分譲の波を和らげる。本質価値は、やや楽観の筋書きに近づく。
- 発電所の売却が帳簿に近い価格で進み、借入が1割以上減る
- 自己資本比率が目標の23%に近づき、利払いの増加が和らぐ。本質価値は中立から上へ動く。
- 分譲マンションの粗利率が20%を割って、18%台に下がる
- 建築費の転嫁が効かず、主力の稼ぎが細る。純利益の伸びが止まり、悲観寄りの確率を引き上げる必要が出る。
- 大型の統合や買収の提案が出る
- 同業の規模統合の流れに乗る場合、規模の経済で原価が下がり利幅が戻る可能性がある。逆に買われる側なら、純資産と収益力を反映した価格が焦点になる。
- 完成在庫の日数が延び、値引き販売が増える
- 在庫評価損の前触れで、悲観の筋書きの確率を上げる必要が出る。
見ておくもの
- 新築分譲マンションの契約進捗率(期首時点38.1%の消化)と粗利率(20.0%の計画)
- 戸建・中古再販の営業利益の割合(2030年度に不動産の3割を目指す)
- 自己資本比率(23%以上の目標)・LTV(65%未満)・D/Eレシオ(3倍未満)
- 発電施設の売却の進み方と、売却価格と帳簿価格の差
- 住宅ローン金利と10年国債の利回り、借り換えの金利
- 配当(DOE3.5%)・自社株買いの継続
倍率と資本コストの決め方
今の株価や倍率から筋書きを作らず、5つの事業ごとに数量と価格を置いて10年後の営業利益を積んだ。純利益は、借入を3.5%に借り換え、現金を2%で運用した場合の利払いを営業利益から引いて出した。倍率は資本コスト9%(基本7.5%に、分譲の循環+0.75・値決め力の弱さ+0.5・借入の重さ+1.0)と、弱い堀(残る割合1/3)の正当化 PER から決め、中立・楽観は上限の 8.5〜9.9 割に置いた。悲観の床は稼ぐ力と、在庫・発電設備を値引きして売った後の株主の取り分から出し、過去の PBR の底は使っていない。今の時価総額は最後に比べただけだ。リースは営業費用に入った今の形のまま置いており、新リース会計基準で数字の形が変わる点は考慮していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.59 倍・やや楽観 PER 9.2→11.11 倍・中立 PER 8.7→11.11 倍・やや悲観 PER 9.2→9.97 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +2.25% を足した 9.75%。2022年の宅建免許の再取得のような個別の統治の問題は k に足さず、確率と悲観の筋書きで表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.75% → 9.00%。