結論
ファイザーは、抗凝固薬エリキュース、心アミロイドーシスのヴィンダケル系、肺炎球菌ワクチンのプレベナー、がん領域(イブランス・イクスタンジ・パドセブ)を持つ世界最大級の製薬会社である。2025 年の売上は 626 億ドル(前年比 −2%)で、コロナ関連が 67 億ドルまで縮む中、コロナを除くと +6% 成長した。2026 年は上半期の好調(エリキュース +21%・ヴィンダケル +9%)で売上見通しを 605〜625 億ドルへ引き上げた一方、コロナ関連は約 40 億ドルへ下方修正した。2026 年 4〜6 月期に GAAP で赤字(−2.5 億ドル)になったのは、肺がんの ADC(シグボタグ)の第 3 相失敗で 43 億ドルの減損を出したためで、買収した事業の価値が壊れた例がまた増えた。
事業の質は悪くないが、これから 3 年で売上の約 4 分の 1(エリキュース・イブランス・イクスタンジ)が後発薬と薬価交渉にさらされる。イブランスとイクスタンジは 2027 年、エリキュースは 2028 年 4 月に米国の後発薬が出る。ヴィンダマックスは和解で 2031 年 6 月まで守られるが、その先に崖が控える。会社は 2028 年末から 2033 年末にかけて「リスク調整後で 1 桁台後半の売上成長」を掲げ、メセラ買収(約 100 億ドル)で肥満薬に入り、費用を 97 億ドル削るとしている。
数量 × 価格で積み上げると、中立は 2035 年に売上 636 億ドル・純利益 115 億ドルで、10 年かけて今の水準をやっと取り戻す。配当(年 98 億ドル)は平常の純利益で賄えるが、フリーキャッシュフロー(2025 年 91 億ドル)は配当に届かない。倍率は利益ベースの正当化 PER(10 年の中立で 13.7 倍。g 4.0%・k 8.5%)の 9 割、12.3 倍に置いた(ROE が低く上限そのものが低いので、7 割にすると稼ぐ力の 1÷k=11.8 倍を下回る)。特許切れと薬価政策は、この割合と確率に入れた。確率を重ねた本質価値は今の時価総額(1,690 億ドル)を約 25% 下回り、「やや割高」。買収で価値を壊してきた経営は倍率ではなく確率(悲観・やや悲観の合計 10 年 40%)と悲観の深さで表した。悲観では今の 1 割強まで落ちるので、安全域は見かけより薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後を問う。エリキュース・イブランス・イクスタンジ・ヴィンダマックスの 4 つで売上の約 3 割が 2031 年までに独占を失い、残るのはプレベナー・パドセブと新薬である。堀は「独占の期限が決まっている薬の束」であって、広がる堀ではない。10 年後もこの会社は存在するが、今より強いかは新薬の当たり外れで決まり、予測はしにくい。
オーナー利益を見る。2025 年の GAAP の純利益 78 億ドルは、償却・整理費用・減損で押し下げられている。償却と平常の整理費用を考えた平常の純利益は 130 億ドル前後で、フリーキャッシュフローの 91 億ドルとほぼ重なる。配当 98 億ドルを払うと残りは小さく、負債の返済と買収の頭金に回る。10 年後の中立で純利益は 115 億ドル前後と今の平常並みで、利益は名目でも伸びない。
資本配分は採点が厳しい。シグボタグの減損のように買った開発品の外れが続き、自社開発の肥満薬は失敗し、買った肥満薬も第 2b 相で体重減 12.3% と競合(チルゼパチド 20% 超)に及ばない。それでも配当を毎年払い続ける誠実さと、費用を 97 億ドル削る規律は評価できる。今の値段は平常の純利益の 13 倍で、特許切れ後の利益水準を織り込んだ値付けに近い。悲観の確率を 4 割近く置くと、利益ベースの正当化 PER の 9 割で測っても本質価値は今の約 0.75 倍で、余裕はない。事業への確信は中、今の値段への確信は中。
何で稼ぐ会社か
売上の約 3 割は「いつか切れる主力」の 3 つである。エリキュース(2025 年 79.6 億ドル)は血栓を防ぐ飲み薬で、ブリストル・マイヤーズ スクイブと売上を分ける。ヴィンダケル系(63.8 億ドル)は心アミロイドーシスの飲み薬で、診断が進んで数量が伸びている。プレベナー(64.9 億ドル)は肺炎球菌ワクチンで、成人への接種推奨が 50 歳以上へ広がった。2026 年 4〜6 月期はエリキュースが 24.3 億ドル(+21%)、ヴィンダケル系が 17.6 億ドル(+9%)と強いが、プレベナーは 13.4 億ドル(−3%)で伸びていない。
がん領域は 168 億ドルで、イブランス(41.2 億ドル)とイクスタンジ(21.9 億ドル)がまだ大きい。2023 年に約 430 億ドルで買ったシージェン(Seagen)の ADC 薬パドセブは 19.4 億ドルで、2026 年 4〜6 月期に +23%、膀胱がんでキイトルーダ併用の適応拡大が承認された。ほかにタキシブ、エルレフィオ、腫瘍のバイオシミラー(13 億ドル)がある。コロナ関連は 2022 年の約 570 億ドルから 2025 年に 67 億ドルへ縮み、2026 年は約 40 億ドルの見込み。
残りは、ヌルテック(片頭痛、14.2 億ドル)・シビンコ(皮膚炎)・ヒンパブジ(血友病)などの成長品と、リピトール・リリカ・ゼルヤンツや無菌注射剤などの成熟した品で約 170 億ドル。米国の価格は保険会社・薬剤給付管理会社との交渉と政府の制度(メディケア薬価交渉・最恵国待遇・TrumpRx)で決まる。2025 年 9 月に政府と合意し、メディケイドへの最恵国価格と新薬の最恵国価格を約束する代わりに、関税を 3 年猶予された。
優良さと弱いところ
堀は 2 つある。第 1 は販売と製造の規模で、世界の病院・薬局・保険会社へ届ける力と、ワクチンや無菌注射剤の製造力は他社に真似できない。エリキュースのように大型薬を提携で世界へ広げる経験もある。第 2 は個別の薬の特許と処方の定着で、ヴィンダマックスは和解で 2031 年まで、プレベナー 20 とパドセブは当面守られる。
しかし堀は狭まっている。調整後の営業利益率は 38% 前後で、イーライリリーの 45%(2025 年)やアッヴィの調整後 47% に届かない。GAAP の ROE は 2025 年に 9% で、同業の 25〜40% と大きく差がある。理由は、買収した事業の価値が思ったほど出ないからで、シージェンの 430 億ドルのうち今回の 38 億ドルの減損のように、買った開発品の外れが続く。コロナの特需(2022 年に純利益 314 億ドル)で得たお金も、買収と配当に消えた。
弱点は 3 つ。第 1 に新薬の成功率が低く、肥満薬は自社開発(ダヌグリプロン)を肝臓の副作用で 2025 年に打ち切り、メセラの買収に約 100 億ドルを払って入り直した。第 2 に価格を決める力が弱まり、メディケア薬価交渉と最恵国待遇が主力にかかる。第 3 に配当(98 億ドル)がフリーキャッシュフロー(91 億ドル)を超え、レバレッジは 2.7 倍で、自由度が小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
大手製薬の共通の課題は、2025〜2030 年に米国で 2,300 億ドル超の売上が独占を失うこと(業界の推計)で、ファイザーはその中でもメルク・ブリストル・アムジェンと並んで崖が急な会社に入る。ファイザー自身の見通しでは 2026 年の LOE(独占の喪失)の影響は −11 億ドルだが、2027 年にイブランスとイクスタンジ、2028 年にエリキュースが重なり、2028 年までに主力 3 つの売上が 70 億ドル超、コロナ関連も約 40 億ドル減る。業界の置き方では、特許で守られた既存の主力は、特許切れ後 3 年で低分子は 80〜90% 落ち、失う売上の 60〜70% を新薬と買収で補うのが中立で、ファイザーもこの置き方に沿う。
競合は薬ごとに違う。エリキュースは J&J とバイエルのザレルト(Xarelto)と後発薬、ヴィンダケル系はブリッジバイオのアトルバ(アコラミジス)とアルナイラムのアムブトラ、プレベナーはメルクのキャップバックスとバクスサイト(Vaxcyte)の次世代、イブランスはノバルティスのキスカリ(Kisqali)とイーライリリーのバージニオ(Verzenio)、イクスタンジはバイエルのヌベカ(Nubeqa)と J&J のアーリーダ(Erleada)。肥満薬はイーライリリーとノボ ノルディスクが寡占で、世界市場は 2030 年に 1,260〜1,500 億ドル、2036 年に約 2,500 億ドル(業界の置き方)まで伸びる。
薬価は構造的に下がる。メディケアの薬価交渉は第 3 弾(2028 年適用)で 15 薬に広がり、最恵国待遇の合意でファイザーを含む大手が価格の約束と関税の猶予を交換した。業界の置き方では米国の純価格は名目で年 −1% 程度の下げが続き、物価 3.5% には届かない。分かれ目は、特許切れの順番と新薬の成功率、肥満薬の内服・月 1 回の注射の価格、IRA と最恵国待遇の対象の広がりである。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、2025 年は 98 億ドル、自社株買いはなく、2026 年も見込まない。会社は特許切れの期間も配当を維持し、その後に増額を再開するとしている。フリーキャッシュフローは 2025 年に 91 億ドルで、配当に 7 億ドル足りない。調整後の純利益(184 億ドル)では余裕があるが、買収に伴う償却と整理費用を引いた平常の純利益は 130 億ドル前後で、配当性向は 75% 前後と高い。
M&A は同社の宿命で、2022 年にアレイ(Arena)とバイオヘイブン(Biohaven)、2023 年にシージェン(約 430 億ドル)、2025 年にメセラ(約 100 億ドル)、2026 年にはイノベント・バイオロジクス(前払い 6.5 億ドル、最大 98.5 億ドルのマイルストーン)の提携を成立させた。成功は半々で、シージェンのパドセブは成功、シグボタグ(肺がん)やオキスブリタ(鎌状赤血球症、市場から撤退)は外れた。事業開発に使える余力は約 60 億ドル。
費用は 2029 年までに合計 97 億ドル削る計画で、2027〜2029 年に追加 25 億ドル。純負債は 538 億ドル(時価総額比 32%)、借り換えで新しい借入は 5.75% 前後になる。買われる側になる可能性は、時価総額 1,690 億ドルで現実的でない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の 1,690 億ドルは、平常の純利益 130 億ドル前後の 13 倍で、配当利回りは 5.8%。特許切れの崖は 3 年前から見えており、値段はすでに織り込んでいる。実際、2026 年 4〜6 月期はエリキュースが +21%、ヴィンダケル系が +9% で、会社は売上見通しを引き上げた。ヴィンダマックスは和解で 2031 年 6 月まで守られ、診断の進みで数量が伸びる。
穴の補充もこれから形になる。パドセブは筋層浸潤性膀胱がんへ広がり、イクスタンジとの併用を試す mevrometostat の第 3 相が 2026 年の第 4 四半期に初結果を出す。メセラ由来のベロベナチドは月 1 回の注射で 28 週に最大 12.3% の体重減を示し、2026 年に 10 本の第 3 相を始める。肥満薬の世界市場は 2036 年に約 2,500 億ドルで、1% 取るだけで 25 億ドル、5% なら 125 億ドルになる。
費用は 97 億ドル削られ、営業利益率は特許切れの中でも守られる。配当を維持する間に売上は 2028 年で底を打ち、2028 年末から 2033 年末は 1 桁台後半の成長を会社が掲げる。PER 13 倍で配当 5.8% を受け取りながら再成長を待つのは、安全域の厚い投資である。
慎重な見方
崖は見えていても、補充できていない。イブランス・イクスタンジ・インライタ・エリキュース・コロナ関連の合計は、2025 年の 219 億ドルから 2028 年の中立で 108 億ドルと半分に縮む。補充の中心は肥満薬だが、ベロベナチドの 12.3% の体重減は競合(イーライリリーのチルゼパチド 20% 超)に及ばず、承認は 2028 年以降。市場は寡占で価格は年 −4.5% と下がり、後発の参入者が利益を取りにくい。
買収の実績が悪い。シージェン(約 430 億ドル)の ADC のうちシグボタグは 2026 年に 38 億ドルを減損し、ファイザーの ROE は 9% で、2022 年の 33% からコロナの特需が終わって元に戻った。メセラは約 100 億ドルで、結果が出るのは 2030 年代。mevrometostat と PD-1×VEGF も、第 3 相の失敗率は高い。
配当は守れない恐れがある。フリーキャッシュフロー 91 億ドルが配当 98 億ドルに届かず、売上が 2028 年に 573 億ドルへ縮めば配当を借金や資産売却で払うことになる。メディケア薬価交渉・最恵国待遇・TrumpRx で価格を決める力も弱まり、中立の 10 年後でも売上は今の水準へ戻るだけ。値段は割安に見えるが、利益そのものが減るので割安ではない。
どちらに重みを置いたか
エリキュース・イブランス・イクスタンジの崖と、買収の失敗率の高さを重く見て、10 年の悲観・やや悲観を合計 40% に置いた。一方、2026 年上半期の底堅さと、ヴィンダマックスの 2031 年までの保護、費用削減の確かさ、配当が平常の純利益で賄える点を強気が上回り、中立は 10 年 33% を最大にした。楽観は 10 年でも 7% にとどめ(肥満薬での成功が前提)、悲観は 10 年 13% と厚めにした。結論は「利益が先細る筋書きを厚く置き、利益ベースの正当化 PER の 9 割で測っても、本質価値は今の約 0.75 倍でやや割高。悲観の確率も厚い」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 22.47 ドル1,284 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 18.56 ドル1,061 億ドル)。 今の値に割り戻すと 22.28 ドル1,273 億ドル、今との差 −26.8%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 55.12 ドル3,149 億ドル | 28.01 ドル1,600 億ドル | +173.3% | +10.6% | 5.82 ドル332 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 37.46 ドル2,140 億ドル | 24.51 ドル1,400 億ドル | +103.7% | +7.4% | 12.39 ドル708 億ドル |
| 中立 | 33% | 24.74 ドル1,413 億ドル | 18.03 ドル1,030 億ドル | +40.6% | +3.5% | 14.11 ドル806 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 8.96 ドル512 億ドル | 15.40 ドル880 億ドル | −19.9% | −2.2% | 6.58 ドル376 億ドル |
| 悲観 | 13% | 4.12 ドル235 億ドル | 12.25 ドル700 億ドル | −46.2% | −6.0% | 2.13 ドル122 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 22.47 ドル1,284 億ドル | 18.56 ドル1,061 億ドル | +34.9% | +3.0% | 41.03 ドル2,344 億ドル |
今の株価時価総額 30.42 ドル1,738 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:肥満薬と腫瘍の新薬が育ち、2028 年からの再成長が 10 年続く 利益 240 億ドル · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 55.12 ドル3,149 億ドル
2035 年、新薬群は 300 億ドル(肥満薬 100 億ドル超・PD-1×VEGF・mevrometostat など)、腫瘍の成長品は 215 億ドル、プレベナーとアブリスボは 120 億ドル。エリキュース・ヴィンダマックスは後発薬で 8 億ドルと 38 億ドルへ縮み、イブランス・イクスタンジはほぼ消える。売上は 928 億ドル(2025 年の 1.5 倍)、営業利益率は約 32%、純利益は 240 億ドル。配当は 2029 年から増え、自社株買いも再開して、10 年の還元は 1,600 億ドル。倍率は正当化 PER 16.4 倍の 8 割の 13.1 倍に置いた。
- エリキュース(抗凝固薬):数量 1,500(治療患者数(万人))× 価格 53(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 4 億ドル
- ヴィンダケル系(ヴィンダマックス):数量 7.0(治療患者数(万人))× 価格 54,286(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 38 億ドル・営業利益 21 億ドル
- 肺炎球菌・RSV ワクチン(プレベナー・アブリスボ):数量 6,800(年間の接種回数(万回))× 価格 176(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 120 億ドル・営業利益 55 億ドル
- コロナ関連(コミナティ・パクスロビド):数量 2,200(接種・治療の件数(万件))× 価格 100(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 6 億ドル
- 腫瘍の特許切れ組(イブランス・イクスタンジ・インライタ):数量 14.0(治療患者数(万人))× 価格 7,143(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 5 億ドル
- 腫瘍の成長品(パドセブ・アドセトリス・ロルブレナ・タキシブ・エルレフィオ・バイオシミラーほか):数量 62.0(治療患者数(万人))× 価格 34,677(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 215 億ドル・営業利益 77 億ドル
- 新規の成長品(ヌルテック・シビンコ・ヒンパブジほか):数量 110(治療患者数(万人))× 価格 5,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 55 億ドル・営業利益 18 億ドル
- 成熟薬・病院向け(リピトール・リリカ・ゼルヤンツ・無菌注射剤ほか):数量 31,000(処方・使用の件数(万件))× 価格 52(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 160 億ドル・営業利益 53 億ドル
- 新薬群(肥満薬ベロベナチド・PD-1×VEGF・mevrometostat ほか):数量 90.0(治療患者数(万人))× 価格 33,333(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 300 億ドル・営業利益 114 億ドル
倍率:正当化 PER は 16.4 倍(g 4.0%、RONIC 15.3%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 22.1% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 13.1 倍(8 割)に置いた。堀は普通:複数の大型薬の特許切れで利益が崖の後に縮み、新薬の成功率も低く見ており、ROE も 12% と低いので強い堀(2/3)とは見ない。崖を新薬が埋める筋書き。上限の 8 割に置く。純利益は GAAP。
確率:肥満薬ベロベナチドが月 1 回の優位性で世界の肥満薬市場の約 10%(300 億ドル規模は新薬群全体)を取り、PD-1×VEGF と mevrometostat も成功する展開。ファイザーの新薬の成功率の実績から、全部がそろう確率は低く 7%。
やや楽観 20% やや楽観:腫瘍の成長品と新薬が崖を埋め、売上が今を 26% 上回る 利益 180 億ドル · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 37.46 ドル2,140 億ドル
2035 年、新薬群は 230 億ドル、腫瘍の成長品は 190 億ドル、プレベナーとアブリスボは 110 億ドル、ヴィンダマックスは 30 億ドルへ縮む(2031 年の後発薬)。売上は 791 億ドル(今の 1.26 倍)、営業利益率は約 28%、純利益は 180 億ドル。配当は 2030 年ごろから増え、10 年の還元は 1,400 億ドル。成長が年 1 桁台前半に落ち着き。肥満薬は市場の 3% ほどを取り、ベロベナチドは 40 億ドル規模。パドセブは膀胱がんで第一選択の地位を保つが、後発の ADC が出て価格は物価に届かない。買収は小粒(数十億ドル級)を中心に進め、純負債は減らせる。倍率は正当化 PER 15.8 倍の 7.5 割の 11.9 倍に置いた。
- エリキュース(抗凝固薬):数量 1,400(治療患者数(万人))× 価格 50(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 4 億ドル
- ヴィンダケル系(ヴィンダマックス):数量 6.0(治療患者数(万人))× 価格 50,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 30 億ドル・営業利益 16 億ドル
- 肺炎球菌・RSV ワクチン(プレベナー・アブリスボ):数量 6,400(年間の接種回数(万回))× 価格 172(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 110 億ドル・営業利益 50 億ドル
- コロナ関連(コミナティ・パクスロビド):数量 1,800(接種・治療の件数(万件))× 価格 100(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 5 億ドル
- 腫瘍の特許切れ組(イブランス・イクスタンジ・インライタ):数量 12.0(治療患者数(万人))× 価格 6,667(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 3 億ドル
- 腫瘍の成長品(パドセブ・アドセトリス・ロルブレナ・タキシブ・エルレフィオ・バイオシミラーほか):数量 56.0(治療患者数(万人))× 価格 33,929(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 190 億ドル・営業利益 65 億ドル
- 新規の成長品(ヌルテック・シビンコ・ヒンパブジほか):数量 95.0(治療患者数(万人))× 価格 5,053(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 48 億ドル・営業利益 14 億ドル
- 成熟薬・病院向け(リピトール・リリカ・ゼルヤンツ・無菌注射剤ほか):数量 30,500(処方・使用の件数(万件))× 価格 49(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 150 億ドル・営業利益 48 億ドル
- 新薬群(肥満薬ベロベナチド・PD-1×VEGF・mevrometostat ほか):数量 65.0(治療患者数(万人))× 価格 35,385(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 230 億ドル・営業利益 76 億ドル
倍率:正当化 PER は 15.8 倍(g 4.0%、RONIC 13.9%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 19.4% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 11.9 倍(7.5 割)に置いた。堀は普通:複数の大型薬の特許切れで利益が崖の後に縮み、新薬の成功率も低く見ており、ROE も 12% と低いので強い堀(2/3)とは見ない。上限の 7.5 割に置く。純利益は GAAP。
確率:腫瘍の成長品(パドセブの適応拡大・エルレフィオ・ADC)と新薬群の一部が当たり、会社の「2028 年末から 2033 年末まで 1 桁台後半の成長」にほぼ届く展開。20%。
中立 33% 中立:10 年かけて今の売上へ戻る。特許切れを新薬が追いかける形が続く 利益 115 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 24.74 ドル1,413 億ドル
2035 年、新薬群は 150 億ドル(肥満薬 約 25 億ドル)、腫瘍の成長品は 160 億ドル(パドセブ・エルレフィオ・ADC)、プレベナーとアブリスボは 100 億ドル。エリキュースは 6 億ドル、ヴィンダマックスは 25 億ドル、イブランス・イクスタンジはほぼ消える。成熟薬・病院向けは 135 億ドルへ縮む。売上は 636 億ドル(今とほぼ同じ名目)、営業利益率は約 24%、純利益は 115 億ドル。配当は維持し、2030 年ごろから増額が再開して、10 年の還元は 1,030 億ドル(株式報酬による増加分を引いた正味)。倍率は正当化 PER 13.7 倍の 9 割の 12.3 倍に置いた。
- エリキュース(抗凝固薬):数量 1,200(治療患者数(万人))× 価格 50(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 3 億ドル
- ヴィンダケル系(ヴィンダマックス):数量 5.0(治療患者数(万人))× 価格 50,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 13 億ドル
- 肺炎球菌・RSV ワクチン(プレベナー・アブリスボ):数量 6,000(年間の接種回数(万回))× 価格 167(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 100 億ドル・営業利益 44 億ドル
- コロナ関連(コミナティ・パクスロビド):数量 1,400(接種・治療の件数(万件))× 価格 100(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル
- 腫瘍の特許切れ組(イブランス・イクスタンジ・インライタ):数量 10.0(治療患者数(万人))× 価格 6,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 2 億ドル
- 腫瘍の成長品(パドセブ・アドセトリス・ロルブレナ・タキシブ・エルレフィオ・バイオシミラーほか):数量 50.0(治療患者数(万人))× 価格 32,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 160 億ドル・営業利益 51 億ドル
- 新規の成長品(ヌルテック・シビンコ・ヒンパブジほか):数量 80.0(治療患者数(万人))× 価格 5,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 11 億ドル
- 成熟薬・病院向け(リピトール・リリカ・ゼルヤンツ・無菌注射剤ほか):数量 29,500(処方・使用の件数(万件))× 価格 46(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 135 億ドル・営業利益 41 億ドル
- 新薬群(肥満薬ベロベナチド・PD-1×VEGF・mevrometostat ほか):数量 50.0(治療患者数(万人))× 価格 30,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 150 億ドル・営業利益 42 億ドル
倍率:正当化 PER は 13.7 倍(g 4.0%、RONIC 10.4%。RONIC は k 8.50% に、事業の ROE 12.3% が k を超える分の 0.5 を足した値。moat は normal)。これに対し 12.3 倍(9 割)に置いた。堀は普通:複数の大型薬の特許切れで利益が崖の後に縮み、新薬の成功率も低く見ており、ROE も 12% と低いので強い堀(2/3)とは見ない。ROE が k をわずかに上回るだけで、式の値が 1÷k に近い。中立の PER は 1÷k を下回らせず、上限の 9 割に置く。純利益は GAAP。
確率:会社の目標より低い置き方。2028 年に底を打った後、新薬群が 2035 年に 150 億ドル、腫瘍の成長品が 160 億ドルまで育つが、エリキュース・ヴィンダマックス・プレベナーの特許切れ・価格下落が相殺する。業界ノートの中立(既存の主力は売上 年 +4%・純価格 年 −1%)に沿うが、ファイザーは新薬の成功率が低いので成長を割り引いた。33%。
やや悲観 27% やや悲観:新薬が育たず、買収で穴を埋めようとして価値を壊す 利益 58 億ドル · PER 8.8 倍 · 株価時価総額 8.96 ドル512 億ドル
2035 年、新薬群は 80 億ドルにとどまり、腫瘍の成長品は 130 億ドル、プレベナーとアブリスボは 85 億ドル(競合のワクチンに押される)。ヴィンダマックスは 20 億ドルへ縮む。売上は 483 億ドル(今の 77%)、営業利益率は約 20%。買収で穴を埋めようとして負債が増え、価値も壊れる(第 3 相の外れ)。配当は据え置きで増額は止まる。10 年の還元は 880 億ドル。この間にエリキュースの後発薬の後遺症(価格の崩れ)が予想より長く、成熟薬・病院向けの数量も年 −1% で縮み、費用削減の効果は後発薬と薬価の下落で食われる。倍率は正当化 PER 11.8 倍の 7.5 割の 8.8 倍に置いた。
- エリキュース(抗凝固薬):数量 1,000(治療患者数(万人))× 価格 50(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 3 億ドル
- ヴィンダケル系(ヴィンダマックス):数量 4.0(治療患者数(万人))× 価格 50,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 20 億ドル・営業利益 10 億ドル
- 肺炎球菌・RSV ワクチン(プレベナー・アブリスボ):数量 5,600(年間の接種回数(万回))× 価格 152(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 85 億ドル・営業利益 37 億ドル
- コロナ関連(コミナティ・パクスロビド):数量 1,000(接種・治療の件数(万件))× 価格 100(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル
- 腫瘍の特許切れ組(イブランス・イクスタンジ・インライタ):数量 9.0(治療患者数(万人))× 価格 5,556(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 2 億ドル
- 腫瘍の成長品(パドセブ・アドセトリス・ロルブレナ・タキシブ・エルレフィオ・バイオシミラーほか):数量 44.0(治療患者数(万人))× 価格 29,545(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 130 億ドル・営業利益 40 億ドル
- 新規の成長品(ヌルテック・シビンコ・ヒンパブジほか):数量 65.0(治療患者数(万人))× 価格 4,615(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 30 億ドル・営業利益 8 億ドル
- 成熟薬・病院向け(リピトール・リリカ・ゼルヤンツ・無菌注射剤ほか):数量 29,000(処方・使用の件数(万件))× 価格 41(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 118 億ドル・営業利益 36 億ドル
- 新薬群(肥満薬ベロベナチド・PD-1×VEGF・mevrometostat ほか):数量 40.0(治療患者数(万人))× 価格 20,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 80 億ドル・営業利益 18 億ドル
倍率:事業の ROE 8.3% が k 8.50% 以下なので PER は 1÷k=11.8 倍まで。これに対し 8.8 倍(7.5 割)に置いた。堀は普通:複数の大型薬の特許切れで利益が崖の後に縮み、新薬の成功率も低く見ており、ROE も 12% と低いので強い堀(2/3)とは見ない。崖の後に新薬が育たない筋書き。ROE が k に届かず、上限は 1÷k で、その 7.5 割に置く。純利益は GAAP。
確率:ファイザーが「買った薬が外れる」実績を繰り返す展開。シグボタグ・オキスブリタに続く外れが出て、新薬群が 80 億ドルにとどまり、値下げ圧力も続く。主力の穴が埋まらず、売上が縮んだまま戻らない。27%。
悲観 13% 悲観:構造的に負け、優良企業ではなくなる 利益 20 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4.12 ドル235 億ドル
2035 年、新薬群は 40 億ドルまで縮み、肥満薬は撤退、腫瘍の成長品は 100 億ドル、プレベナーとアブリスボは 70 億ドルへ。ヴィンダマックスは 14 億ドル、エリキュースは 4 億ドル。売上は 360 億ドル(今の 58%)で、営業利益率は、減損と償却を引く前が約 25%、引いた後は 6% 前後で、純利益は 20 億ドルにとどまる。配当は 2031 年に半分へ減らし、その前は現金と資産の売却で賄う。時価総額は、ROE が k に届かず、ためた利益は額面より低い価値なので、純利益 20 億ドルを k 8.5% で割った稼ぐ力の約 235 億ドル(今の約 1.4 割)で、自己資本 760 億ドルの約 0.3 倍。10 年の還元は 700 億ドル。
- エリキュース(抗凝固薬):数量 900(治療患者数(万人))× 価格 44(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 2 億ドル
- ヴィンダケル系(ヴィンダマックス):数量 3.0(治療患者数(万人))× 価格 46,667(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 14 億ドル・営業利益 6 億ドル
- 肺炎球菌・RSV ワクチン(プレベナー・アブリスボ):数量 5,000(年間の接種回数(万回))× 価格 140(1 回あたりの純売上(ドル))→ 売上 70 億ドル・営業利益 28 億ドル
- コロナ関連(コミナティ・パクスロビド):数量 700(接種・治療の件数(万件))× 価格 86(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル
- 腫瘍の特許切れ組(イブランス・イクスタンジ・インライタ):数量 8.0(治療患者数(万人))× 価格 5,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル
- 腫瘍の成長品(パドセブ・アドセトリス・ロルブレナ・タキシブ・エルレフィオ・バイオシミラーほか):数量 38.0(治療患者数(万人))× 価格 26,316(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 100 億ドル・営業利益 24 億ドル
- 新規の成長品(ヌルテック・シビンコ・ヒンパブジほか):数量 55.0(治療患者数(万人))× 価格 4,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 4 億ドル
- 成熟薬・病院向け(リピトール・リリカ・ゼルヤンツ・無菌注射剤ほか):数量 28,000(処方・使用の件数(万件))× 価格 36(1 件あたりの純売上(ドル))→ 売上 100 億ドル・営業利益 24 億ドル
- 新薬群(肥満薬ベロベナチド・PD-1×VEGF・mevrometostat ほか):数量 20.0(治療患者数(万人))× 価格 20,000(1 人あたり年間の純売上(ドル))→ 売上 40 億ドル・営業利益 0 億ドル
倍率:事業の ROE 2.6% が k 8.50% 以下なので PER は 1÷k=11.8 倍まで。これに対し 11.8 倍(10 割)に置いた。堀は普通:複数の大型薬の特許切れで利益が崖の後に縮み、新薬の成功率も低く見ており、ROE も 12% と低いので強い堀(2/3)とは見ない。構造的に負けた筋書き。ROE が k に届かず、ためた利益は額面より低い価値なので、稼ぐ力(純利益 ÷ k)を床にとる。自己資本に PBR を掛けない。純利益は GAAP。
確率:10 年のうちに、肥満薬・腫瘍の新薬がほぼ失敗し、薬価政策で主力の価格が崩れ、買収の減損が続いて配当も減らす展開。景気後退ではなく構造的な負け。13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
エリキュース(抗凝固薬)
血栓の予防に使う飲み薬エリキュース(ブリストル・マイヤーズ スクイブとの提携)のファイザー取り分。米国の後発薬は 2028 年 4 月、メディケア薬価交渉の価格は 2026 年から。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,000 | 265 | 80 | 49 |
| 10 年後 中立 | 1,200 | 50 | 6 | 3 |
取り方:2025 年のエリキュース 79.6 億ドル(ファイザーの取り分)を、世界の治療患者 約 3,000 万人(推定)で割った純単価。ブリストルとの提携で売上は両社が分け、ファイザー分は薬の売上の約半分。価格は 2026 年のメディケア薬価交渉で米国の大口が下がり、2028 年 4 月からの米国の後発薬で急落するため、中立で 10 年 0.2 倍台まで落ちる(物価並みなら 10 年 1.41 倍)。数量は 2028 年の米国の後発薬参入まで伸び、参入後は先発の取り分が急減する。
ヴィンダケル系(ヴィンダマックス)
心アミロイドーシスの飲み薬。米国の後発薬参入は和解で 2031 年 6 月。最近は米国でヴィンダマックスに一本化。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9.0 | 70,889 | 64 | 41 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 50,000 | 25 | 13 |
取り方:2025 年のヴィンダケル系 63.8 億ドルを、治療患者 約 9 万人(推定)で割った純単価。米国は価格の高い希少疾患薬で、物価並みに上げにくいが、2031 年 6 月の後発薬参入(和解)まで大きくは崩れない。数量は診断の進み(心アミロイドーシスはまだ見逃しが多い)で年 +8% 前後。競合はブリッジバイオ(BridgeBio)のアトルバ(アコラミジス)とアルナイラム(Alnylam)のアムブトラで、価格は中立で 10 年 0.7 倍台(2031 年以降は後発薬)。
肺炎球菌・RSV ワクチン(プレベナー・アブリスボ)
プレベナー 20 を軸とする肺炎球菌ワクチンと、RSV ワクチンのアブリスボ。
| 数量年間の接種回数(万回) | 価格1 回あたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5,000 | 150 | 75 | 32 |
| 10 年後 中立 | 6,000 | 167 | 100 | 44 |
取り方:2025 年のプレベナー 64.9 億ドルとアブリスボ 10.3 億ドルを、年間の接種 約 5,000 万回(推定)で割った 1 回あたり約 150 ドル。成人への推奨拡大(CDC が 50〜64 歳へ)で数量が増える一方、メルクのキャップバックス(Capvaxive)との競合とワクチン政策の不透明さで価格は物価並みに上げにくい(中立で 10 年 1.11 倍)。
コロナ関連(コミナティ・パクスロビド)
コロナのワクチンと治療薬。2026 年は約 40 億ドルへ縮み、その後も緩やかに縮む。
| 数量接種・治療の件数(万件) | 価格1 件あたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,000 | 168 | 67 | 20 |
| 10 年後 中立 | 1,400 | 100 | 14 | 3 |
取り方:2025 年のコミナティ 43.7 億ドルとパクスロビド 23.6 億ドルを、接種・治療の件数 約 4,000 万件(推定)で割った純単価。2026 年はパクスロビドが前年同期比 95% 減で、通期は約 40 億ドル(会社見通し)。数量は流行の弱まりと接種率の低下で減り、価格は下がる(中立で 3 年 0.75 倍。物価に逆らう)。
腫瘍の特許切れ組(イブランス・イクスタンジ・インライタ)
乳がんのイブランス、前立腺がんのイクスタンジ、腎がんのインライタ。米国の後発薬参入が 2027 年。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 45.0 | 16,067 | 72 | 40 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 6,000 | 6 | 2 |
取り方:2025 年のイブランス 41.2 億ドル・イクスタンジ 21.9 億ドル・インライタ 9.2 億ドルを、患者 約 45 万人(推定)で割った純単価。イブランスとイクスタンジは米国の後発薬参入が 2027 年で、メディケア薬価交渉の対象(2027 年適用)にも選定されている。中立で 2028 年に売上が 4 割台まで落ちる(数量 0.8 倍・価格 0.52 倍。物価並みの 1.11 倍には届かず、後発薬と交渉価格で下がる)。
腫瘍の成長品(パドセブ・アドセトリス・ロルブレナ・タキシブ・エルレフィオ・バイオシミラーほか)
シージェン買収で得た抗体薬物複合体(ADC)などの成長品と、腫瘍のバイオシミラー。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 40.0 | 24,000 | 96 | 24 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 32,000 | 160 | 51 |
取り方:2025 年の腫瘍 168.3 億ドルから上の特許切れ組を引いた残り 96.0 億ドル(パドセブ 19.4・アドセトリス・ロルブレナ・タキシブ 4.6・エルレフィオ 3.0・腫瘍のバイオシミラー 13.0 ほか)を、患者 約 40 万人(推定)で割った純単価。パドセブ+キイトルーダの筋層浸潤性膀胱がんへの拡大(FDA が適応拡大を承認)で数量が伸びる。価格は物価並みに上がるが、競合(メルク・アストラゼネカ・ロシュの ADC)と新薬の入れ替わりで平均は 10 年 1.33 倍と物価(1.41 倍)に届かない。
新規の成長品(ヌルテック・シビンコ・ヒンパブジほか)
片頭痛のヌルテック、皮膚炎のシビンコ、血友病のヒンパブジなど、近年買収・発売した成長品。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 3,333 | 20 | 4 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 5,000 | 40 | 11 |
取り方:2025 年のヌルテック 14.2 億ドル・シビンコ 2.8 億ドル・ヒンパブジなどの合計 約 20 億ドルを、患者 約 60 万人(推定)で割った純単価。立ち上がり期で販売費が重く、利益率は低い。ヌルテックは 2026 年 4〜6 月期に 4.2 億ドル(+17%)。価格は新薬の構成の変化で中立で 10 年 1.5 倍(物価並み以上。立ち上がりで 1 人あたりの治療期間が延びる)。
成熟薬・病院向け(リピトール・リリカ・ゼルヤンツ・無菌注射剤ほか)
特許の切れた成熟薬、無菌注射剤などの病院向け、その他の既存品。後発薬に侵食されつつ、物価に近い価格で売れる部分が残る。
| 数量処方・使用の件数(万件) | 価格1 件あたりの純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30,000 | 51 | 152 | 39 |
| 10 年後 中立 | 29,500 | 46 | 135 | 41 |
取り方:2025 年の売上 625.8 億ドルから上の 7 つを引いた残り 151.6 億ドル(リピトール・リリカ・ゼルヤンツ 10.9・インフルエンザなど他のワクチン・無菌注射剤・プレマリンほか)を、年間の使用 約 3 億件(推定)で割った 1 件あたり約 50 ドル。ゼルヤンツなど後発薬に侵食される品が毎年数 % 縮む一方、無菌注射剤は物価並みに上がる。中立で数量は 10 年で −2%、価格は 10 年 0.91 倍(物価 3.5% に届かない)。
新薬群(肥満薬ベロベナチド・PD-1×VEGF・mevrometostat ほか)
2028 年以降に出る新薬の合計。メセラ買収の肥満薬、中国の 3SBio から導入した PD-1×VEGF 二重特異性抗体、イクスタンジとの併用を試すmevrometostat などが中心。
| 数量治療患者数(万人) | 価格1 人あたり年間の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.0 | 1,000 | 0 | −10 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 30,000 | 150 | 42 |
取り方:今はほぼ 0。ここは 2028 年以降の新薬の合計(患者数 × 年間の純売上)で、今は研究費(約 10 億ドル)だけが先に出る。肥満薬ベロベナチドの承認は 2028 年以降の見込み(会社の目標)。2035 年の中立で 150 億ドル(うち肥満薬 約 25 億ドル、世界の肥満薬市場 2036 年 約 2,500 億ドルの 1%)。
リスクと懸念
エリキュース・イブランス・イクスタンジの特許切れ(2027〜2028 年)
イブランスとイクスタンジは 2027 年、エリキュースは 2028 年 4 月に米国で後発薬が出る。3 つの合計は 2025 年に 143 億ドル、売上の 23%。後発薬は低分子で売上の 80〜90% を奪うのが前例で、2028 年に先発の取り分は 3 分の 1 まで縮む。補充が間に合わなければ純利益が 3 割以上減る。
買収の失敗と ROE の低さ
シージェン(約 430 億ドル)の ADC のうちシグボタグが 2026 年に失敗し、43 億ドルを減損した。ファイザーの ROE は 2025 年に 9%、同業は 25〜40%。メセラ(約 100 億ドル)、イノベント(最大 98.5 億ドル)も同じ失敗率なら、事業開発の余力 60 億ドルでは補えない。
肥満薬で出遅れ、価格も下がる
自社開発のダヌグリプロンは 2025 年に肝臓の副作用で打ち切り、メセラのベロベナチドは 12.3% の体重減(28 週)で、イーライリリーのチルゼパチド(20% 超)より弱い。承認は 2028 年以降で、イーライリリー・ノボ ノルディスク・アムジェンが先行し、純価格は年 −4.5% で下がる。
米国の薬価政策(IRA・最恵国待遇・TrumpRx)
エリキュースは 2026 年から、イブランス・イクスタンジも 2027 年適用の薬価交渉の対象。2025 年 9 月の合意で、メディケイドへの最恵国価格と新薬の最恵国価格を約束した(関税は 3 年猶予)。新薬の価格が最初から低いと、投資の回収が遅れる。
配当を賄う余力が小さい
配当は年 98 億ドルで、2025 年のフリーキャッシュフロー 91 億ドルを超えた。純負債は 538 億ドル、レバレッジは 2.7 倍。2028 年に売上が縮めば配当性向が 90% を超える。会社は LOE の期間も維持と言うが、悲観では半分に減らす。
コロナ関連の縮小とワクチンの政策
コロナ関連は 2022 年の約 570 億ドルから 2026 年に約 40 億ドルへ縮む(会社見通し)。プレベナーは 2026 年 4〜6 月期に −3% で伸びず、メルクのキャップバックスや次世代ワクチン(バクスサイト)の競合と、米国のワクチン政策の不透明さが重なる。
ヴィンダマックスの先の崖(2031 年)
ヴィンダマックスは和解で 2031 年 6 月まで守られるが、他の訴訟(アポテックス)の結果次第。競合のアトルバ(アコラミジス)とアムブトラが数量を削り、2031 年の後発薬で 63.8 億ドルの売上が崩れる。10 年の筋書きで最も効く単独の要因。
今後の分かれ目
- mevrometostat とイクスタンジの併用(MEV-Pro1)が 2026 年第 4 四半期に有意な改善を示したら
- 腫瘍の成長品の 10 年後を中立の 160 億ドルから 190 億ドル超へ見直し、イクスタンジの崖が部分的に先送りされる。やや楽観・楽観の確率を上げる。
- ベロベナチドの第 3 相で、競合に並ぶ体重減(15% 超)と月 1 回の優位が確認されたら
- 新薬群の 10 年後の売上を 150 億ドルから 250 億ドル超へ見直し、10 年の楽観側へ確率を動かす。
- エリキュースの 2026 年の +21% が続き、2028 年 4 月の後発薬の後も先発の取り分が 6 割以上残ったら
- 3 年の売上を 573 億ドルから 600 億ドル超へ見直し、純利益 130 億ドル超を見込める。
- 最恵国待遇が民間保険に広がる、またはメディケア薬価交渉がプレベナー・ヴィンダマックスに及んだら
- 米国の純価格を 1 割下げて見直し、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 事業開発で 100 億ドル超の買収をまた発表したら
- 純負債が 640 億ドル超になり、配当の余力と買収の失敗率が効く。買収額の 3 割の価値毀損を悲観に入れて見直す。
- 2028 年にフリーキャッシュフローが配当を下回り、会社が配当方針を変えたら
- 10 年の悲観の確率を 13% から 20% 超へ上げ、還元を半分で見る。
見ておくもの
- エリキュース・ヴィンダケル系・プレベナーの四半期売上、とくにエリキュースの純価格
- イブランス・イクスタンジの後発薬の参入時期(2027 年)と取り分
- MEV-Pro1(mevrometostat)の 2026 年第 4 四半期の結果、PD-1×VEGF の第 3 相の開始
- ベロベナチドの第 3 相の開始と結果、肥満薬の他社との比較
- フリーキャッシュフローと配当、純負債、費用削減(97 億ドル)の進み
- メディケア薬価交渉・最恵国待遇・TrumpRx の運用と、ヴィンダマックスの訴訟(アポテックス)
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 1,690 億ドル・PER 21.7 倍(GAAP)を見る前に、9 つの事業を患者数(または接種回数・件数)× 1 人あたり純売上で積み上げ、営業利益率を置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER の 7〜10 割に置いた。10 年の中立は上限 13.7 倍(g 4.0%・k 8.5%)の 9 割で 12.3 倍。特許切れの崖が深く、買収で価値を壊した歴史もあり、上限そのものが低い。事業の ROE は 12% 台と低く、上限も低くなる。今の倍率(平常の純利益の 13 倍)には寄せていない。10 年の中立は純利益が今の平常と同じで、時価総額は今の約 0.84 倍。積み上げから出た値で、今の株価から逆算していない。結論は「やや割高」。計算の結論として、最後に今の値段と比べた。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality +0.5% = 8.5%。特許切れの崖・薬価政策・買収(シージェン)の資本効率・新薬の成否などの個別のリスクは k に足さず、やや悲観・悲観の確率(合計 40%)と悲観の深さで表した。存続は危うくないので上乗せ 0。
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読んだ資料
- Pfizer 2025 年第 4 四半期・通期決算(8-K 別紙、2026-02-03)
- Pfizer 2026 年第 2 四半期決算(8-K 別紙、2026-08-04)
- Pfizer 第 2 四半期の決算説明会の要点(MarketBeat、2026-08-05)
- Pfizer 2026 年通期見通しの引き上げと費用削減(Indian Pharma Post)
- ヴィンダマックスの特許和解(後発薬 2031 年 6 月)
- ブリストル・アムジェン・ファイザーの特許の崖(Fierce Pharma)
- メセラ買収と肥満薬の戦略(Pharmaceutical Technology)
- 最恵国待遇・TrumpRx の合意(CBS News、2025-09-30)