結論
イノベーションホールディングスは、東京の飲食店の店舗を、大家から借りて飲食店に又貸しする会社だ。「居抜き」、つまり前の店の設備が残る物件を中心に、3,000 件を超える店舗を抱える。売上は約 200 億円、営業利益は約 20 億円、ROE は 27% と高い。筆者の結論は「やや割安」だ。通常の稼ぐ力に対し、今の値段は低めだと見る。
稼ぎの仕組みは単純だ。大家に払う家賃と、出店者から受け取る家賃の差が利益になる。件数が積み上がるほど、毎月の収入が安定する。2026 年 3 月期は物件数が 315 件増え、不動産売買の利益も急増して、営業利益が 4 割増えた。
ただし、この商売には裏の顔がある。大家への家賃は、借り手がいなくても毎月払う約束だ。これは借金と同じ重さの固定費である。自己資本比率は 26.5% と低く見えるのも、この約束を預かった保証金などと組み合わせた帳簿の形による。外食が崩れれば、利益はまず空き店舗の家賃で削られる。
10 年の中立は、物件数が 5,700 件まで増え、営業利益率が 9% 前後で定着する姿に置いた。ROE は 20% を超え、資本コストを大きく上回る。倍率は式の上限の 85% にとどめた。固定の家賃の重さを資本コストと確率に織り込んだうえでも、今の値段は低いと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この事業は「ストック型の収益」の良さと「固定の約束」の悪さが同居する。件数が積み上がるほど毎月の収入が安定するが、大家への家賃は借り手の有無にかかわらず払う。これは借金と同じ性質の約束だ。純現金に見える 52 億円も、預り保証金などと見合うので、余った現金とは見ない。
オーナー利益、つまり株主が自由にできる利益は、純利益 14 億円にほぼ近い。設備投資が小さく、差入保証金も預り保証金とほぼ両建てだからだ。時価総額 203 億円は、その約 15 倍。ROE が 27% の会社としては高くない。
資本の配分は、これまでのところ良い。借入は軽く、配当性向は 42%、自社株買いも行った。ただし親会社が 57% を持つので、少数株主に有利な使い方がいつまでも続くかは分からない。筆者は、事業の質は高く、安全域は中くらいだと考える。
何で稼ぐ会社か
事業は店舗転貸借と不動産売買の二つだ。店舗転貸借が売上 178 億円(セグメント利益 15.5 億円)、不動産売買が売上 22 億円(同 4.9 億円)である。持株会社体制に移ったのは 2024 年 10 月で、子会社が事業を分担する。テンポイノベーションが転貸、アセットイノベーションが売買、セーフティーイノベーションが家賃保証を担う。
転貸借の売上は二つに分かれる。毎月の家賃収入(ランニング)が 157 億円、出店時にもらう手数料などの一時収入(イニシャル)が 21 億円だ。対象は東京 23 区を中心とする 1 都 3 県の飲食店。物件の情報は不動産会社との取引と、「居抜き店舗.com」「店舗買取り.com」などの自社サイトから集まる。出店者には、居抜き物件の情報取得から契約までを一括で提供し、大家には家賃の保証とトラブル対応の代行を提供する。
家賃保証事業は、出店者が家賃を払えなくなった時に代わりに払い、保証料を受け取る。第 1 四半期の外販契約は 772 件、代理店は 1,880 件まで増えた。不動産売買は、仕入れた物件を磨いて売る事業で、在庫は 13.5 億円まで増えている。連結の従業員は 196 人と少ない。
営業は、仕入れ(物件を探す)とリーシング(借り手を探す)に分業している。営業人員は 2026 年 3 月末の 53 人から 56 人に増えた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、普通の水準だと筆者は見る。強みは、東京の居抜き物件の情報が集まる点と、物件数の多さが生む仕入れ力にある。飲食店に特化して優良物件を扱う競合は少なく、不動産会社との関係が情報の源になっている。ただ、法的な参入障壁は無く、大手の不動産会社が参入すれば競争になる。
実績は強い。過去 10 年に赤字の期は無く、営業利益率は 6〜10% の間を動いた。コロナ禍の 2021 年 3 月期も営業利益は 7 億円を保った。物件数は 2026 年 3 月期に 3,021 件と、1 年で 315 件増えた。目標は 2031 年 3 月期に 5,500 件である。
資本効率は高い。ROE は過去 10 年の中央値が 21%、直近は 27%。不動産を持たず、借入も軽いので、少ない資本で回る。ただし、見かけの自己資本比率は 26.5% と低い。差入保証金(大家に預ける保証金)が 79 億円で総資産の 4 割を占め、預り保証金などと両建てになっているからだ。
弱みは三つある。第一に、物件が東京とその近郊に集中する点。第二に、親会社クロップスが 57% を持つ上場子会社である点。第三に、小さな組織という点。連結の従業員は 196 人だ。
取引は分散している。総販売額の 10% 以上を占める顧客はいない。出店者は小さな飲食事業者が多く、倒産の確率は高いが、1 社の影響は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食市場は、コロナ禍の前は 25〜26 兆円規模で安定し、急減ののち 2023 年に 24 兆円まで戻った。人口が減る中で市場は伸びにくいが、飲食店は入れ替わりが激しい。開業と廃業が続くので、居抜き物件が出る機会は多い。
この会社の数量は、外食市場の大きさでなく、居抜き物件の流通の中でのシェアで決まる。筆者の推定では、東京 23 区を中心とする 1 都 3 県の飲食店は十数万店あり、3,000 件の転貸は数% にすぎない。取れる余地は大きいが、優良物件の仕入れが難しくなる点が制約になる。
競合は、店舗の仲介会社、居抜きの買取り業者、大手の不動産会社、家賃保証会社などだ。転貸という形で大量に抱える会社は少ない。家賃の水準は、都心の商業地の賃料と人件費の上昇に連れて上がる傾向にある。
循環の位置は、外食の需要が回復し、家賃も上がる局面にある。物価が 10 年で 1.34 倍になれば、家賃も契約の更新で上がる。受け取る家賃と払う家賃が同じ速さで上がれば、差益の円の額は広がる。ただし、更新のタイミングがずれると、片側だけ上がる年が出る。
再編では、居抜き物件の流通に大手の不動産会社や投資ファンドが参入する可能性がある。飲食店のチェーン化が進めば、小さな出店者から大きな出店者へ顧客の構成が変わり、転貸の差益は小さくなりうる。
資本政策と M&A
配当は年 1 回の期末配当で、2026 年 3 月期の連結配当性向は 42.1%、配当総額は約 5.7 億円だった。過去に自社株買いも行い、自己株式は約 10 億円ある。成長のための資本は少なくて済むので、10 年で還元を厚くできる。10 年の還元は、性向が 4 割台から 7 割台へ上がる形に置いた。
親会社は株式会社クロップスで、発行済株式の 56.8% を持つ。子会社としての上場なので、少数株主に有利な資本の使い方が選ばれるかは、親会社の意向に左右される。会社は 2024 年 10 月に持株会社体制へ移り、事業ごとに子会社が分担する。
M&A は小さい。買収は無く、新設の子会社(家賃保証)が成長のための投資だ。第 1 四半期は、先行投資で営業利益が 24% 減った。
減価償却は物価で増やさない。会社は賃貸用不動産を一部持つが、償却は営業利益の 3% に届かない小さな額で、開示も小さい。設備投資は 2026 年 3 月期で約 6.5 億円。償却は取得原価のままで、増えるのは新しく買う分だけだ。大きいのは家賃で、受け取る側も払う側も、契約の更新で物価に連れて上がる。
財務は軽い。現金は 58 億円あり、長期借入は 5 億円程度だ。営業活動で 20 億円の現金を稼いだ。第 1 四半期末の販売用不動産は 13.5 億円まで増えており、第 2 四半期以降に売却を進める計画だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、10 年で物件数を着実に積み上げてきた。2026 年 3 月期は 315 件増え、第 1 四半期の末には 3,127 件になった。ストック型の収益は、件数が増えるほど安定する。営業利益は 2026 年 3 月期に 4 割増えた。
家賃保証は成長の第二の柱だ。代理店は 1,880 件まで増え、保証料の収入が積み上がる。原価率が低く、粗利益率は高い。営業利益の見通しも、2029 年 3 月期に 29 億円、利益率は 10% 近くまで上がると会社は示す。
財務は軽い。自己資本比率は 26.5% と低く見えるが、保証金を差し引くと 54% になる。現金は 58 億円あり、借入は 5 億円程度だ。コロナ禍でも赤字にならなかった実績がある。ROE が 27% の会社を、利益の 15 倍で買えるのは安い。
ストック型の収益は、景気の波に強い。家賃は毎月入り、物件数は着実に積み上がる。優良物件の情報が集まる好循環があり、後発が追いつきにくい。外食が回復している今は、追い風が続く局面だ。
慎重な見方
この商売の本質は、固定の家賃を負って変動の家賃を受け取る構造だ。借り手が倒れれば、大家への家賃は会社が払う。外食は入れ替わりが激しく、景気が悪化すれば閉店が重なる。空き店舗の期間の家賃が、一気に利益を削る。
新リース会計基準では、この家賃の約束が貸借対照表に載る。規模は自己資本の何倍にもなり、自己資本比率は一桁に落ちる見込みだ。会計の見え方が変わるだけでも、市場の評価が変わる。
親会社が 57% を持つので、少数株主の取り分は親会社の意向で決まる。物件は東京に集中し、災害や地価の下落、賃料相場の悪化で影響が一斉に出る。第 1 四半期は先行投資で 24% の減益だった。不動産売買の利益は、2026 年 3 月期の急増が平常には戻る。
家賃の差益は大きくない。転貸借のセグメント利益率は 8.7% で、家賃の 1 割にも満たない。わずかな空き家賃や貸倒れの増加が、利益を大きく動かす。
成長の質にも疑問が残る。物件数が増えても、優良物件の仕入れが難しくなれば、新しい物件の差益は薄くなる。営業人員を増やす先行投資が続く間、利益率は上がらない。会社が掲げる 2029 年 3 月期の営業利益 29 億円は、物件数と利益率の両方が計画どおり進んで初めて届く。
どちらに重みを置いたか
事業の質と財務の軽さ、実績は、強気の見方が正しい。ただし固定の家賃の約束、親会社の存在、東京への集中は、慎重な見方が重い。中立は、物件数が 5,700 件まで増え、利益率が 9% 前後で定着する筋書きに置いた。確率は中立を最も厚くし、悲観側を楽観側より少し重く寄せた。固定の約束の重さは、資本コストの借金の部分と、悲観の確率で織り込んだ。また、第 1 四半期の減益が先行投資なのか、構造的な利益率の低下なのかは、半期の決算で確かめられる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,290 円553 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 734 円123 億円)。 今の値に割り戻すと 2,108 円354 億円、今との差 +72.2%、 期待の年率 +12.6%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,716 円1,129 億円 | 1,273 円214 億円 | +552.7% | +20.6% | 559 円94 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,046 円848 億円 | 1,011 円170 億円 | +394.8% | +17.3% | 1,211 円204 億円 |
| 中立 | 40% | 3,886 円653 億円 | 815 円137 億円 | +284.1% | +14.4% | 1,881 円316 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,100 円185 億円 | 506 円85 億円 | +31.1% | +2.7% | 353 円59 億円 |
| 悲観 | 11% | 133 円22 億円 | 54 円9 億円 | −84.8% | −17.2% | 20 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,290 円553 億円 | 734 円123 億円 | +228.8% | +12.6% | 4,025 円677 億円 |
今の株価時価総額 1,224 円206 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 転貸が倍に広がり、家賃保証も外へ 利益 50 億円 · PER 22.6 倍 · 株価時価総額 6,716 円1,129 億円
転貸の件数が倍以上に広がり、家賃保証も外へ広がる筋書きだ。飲食店の開業を居抜きで済ませたい出店者が増え、東京の主要エリアの優良物件の情報が集まり続ける。物件数は 8,000 件に近づく。家賃保証の代理店網が育ち、保証料の収入が積み上がる。営業利益率は 10% を超えて定着する。不動産売買は在庫の回転が良く、利益に貢献する。親会社クロップスとの関係も安定し、配当性向は 8 割近くまで上がる。
(名目の前提)受け取る家賃も払う家賃も、契約の更新で物価に連れて上がる。物件数は実質(物の数)で置き、家賃の単価に物価を掛けた。人件費も同じ速さで上がる。
(自己資本の流れ)前期の純利益 14 億円から流した。減価償却は開示が小さく(設備投資は賃貸用不動産の取得が中心)、物価で増やさず、新しく買う分だけ新しい値段で按分する。償却は営業利益の 3% に届かない規模で、物価で一律に増やしても営業利益への差は小さい。毎月払う家賃は物価で更新のたびに上がるが、受け取る家賃も同じ速さで上がる。投資は少なく、借入は増えない。現金は還元に回る。
- 店舗転貸借(家賃保証を含む):数量 8,000(期末の転貸借物件数(件))× 価格 0.08(億円/件(売上を期末の物件数で割った実効単価。家賃・手数料・保証料を合わせたもの))→ 売上 651 億円・営業利益 68 億円。物件数2.65倍・家賃の単価1.38倍・利益率10.5%
- 不動産売買:数量 120(取引量の指数(売却した物件の件数と規模。2026/03 期=100))× 価格 0.30(億円/指数 1)→ 売上 36 億円・営業利益 6 億円。取引量1.20倍・価格1.34倍・利益率16.0%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 30.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 19.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.6 倍。全体の PER 22.58 倍、時価総額 1,129 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物件数が倍以上になり、利益率も 10% を超えて定着する必要がある。会社の目標を大きく上回る筋書きなので 1 割に満たない確率に置いた。
やや楽観 20% 中長期目標を少し遅れて超える 利益 39 億円 · PER 21.8 倍 · 株価時価総額 5,046 円848 億円
中長期目標の 5,500 件を少し遅れて超える筋書きだ。物件数は 6,800 件になり、転貸差益は物価と一緒に伸びる。営業利益率は 9% 台後半で定着し、家賃保証が利益に加わる。不動産売買は件数を絞って収益性を保つ。外食の景気は悪くない。配当性向は 4 割台から 7 割台まで上がる。
(名目の前提)受け取る家賃も払う家賃も、契約の更新で物価に連れて上がる。物件数は実質(物の数)で置き、家賃の単価に物価を掛けた。人件費も同じ速さで上がる。
(自己資本の流れ)前期の純利益 14 億円から流した。減価償却は開示が小さく(設備投資は賃貸用不動産の取得が中心)、物価で増やさず、新しく買う分だけ新しい値段で按分する。償却は営業利益の 3% に届かない規模で、物価で一律に増やしても営業利益への差は小さい。毎月払う家賃は物価で更新のたびに上がるが、受け取る家賃も同じ速さで上がる。投資は少なく、借入は増えない。
- 店舗転貸借(家賃保証を含む):数量 6,800(期末の転貸借物件数(件))× 価格 0.08(億円/件(売上を期末の物件数で割った実効単価。家賃・手数料・保証料を合わせたもの))→ 売上 545 億円・営業利益 53 億円。物件数2.25倍・家賃の単価1.36倍・利益率9.8%
- 不動産売買:数量 110(取引量の指数(売却した物件の件数と規模。2026/03 期=100))× 価格 0.30(億円/指数 1)→ 売上 33 億円・営業利益 5 億円。取引量1.10倍・価格1.34倍・利益率14.0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 26.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.7 倍。全体の PER 21.75 倍、時価総額 848 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中長期目標(2031 年 3 月期に 5,500 件)を少し遅れて超える線。物件数は着実に増えてきた実績があり、2 割に置いた。
中立 40% 中立:緩やかに増え、利益率は9%前後で定着 利益 30 億円 · PER 21.5 倍 · 株価時価総額 3,886 円653 億円
物件数が緩やかに増え、営業利益率は 9% 前後で定着する筋書きだ。1 都 3 県の居抜き需要は続くが、優良物件の仕入れが難しくなり、伸びは鈍る。物件数は 5,700 件になり、中長期目標の 5,500 件は予定より遅れて達成する。転貸差益は家賃と共に伸び、営業利益率は 2026 年 3 月期の 10.2% より低い。不動産売買の利益は、2026 年 3 月期の急増が戻り、平常に落ち着く。配当性向は段階的に上がる。
(名目の前提)受け取る家賃も払う家賃も、契約の更新で物価に連れて上がる。物件数は実質(物の数)で置き、家賃の単価に物価を掛けた。人件費も同じ速さで上がる。
(自己資本の流れ)前期の純利益 14 億円から流した。減価償却は開示が小さく(設備投資は賃貸用不動産の取得が中心)、物価で増やさず、新しく買う分だけ新しい値段で按分する。償却は営業利益の 3% に届かない規模で、物価で一律に増やしても営業利益への差は小さい。毎月払う家賃は物価で更新のたびに上がるが、受け取る家賃も同じ速さで上がる。営業利益は +24 億円。投資は小さく、借入は増えない。現金は運転資金と預り保証金の増加で厚くなる。
- 店舗転貸借(家賃保証を含む):数量 5,700(期末の転貸借物件数(件))× 価格 0.08(億円/件(売上を期末の物件数で割った実効単価。家賃・手数料・保証料を合わせたもの))→ 売上 450 億円・営業利益 41 億円。物件数1.89倍・家賃の単価1.34倍・利益率9.0%
- 不動産売買:数量 100(取引量の指数(売却した物件の件数と規模。2026/03 期=100))× 価格 0.30(億円/指数 1)→ 売上 30 億円・営業利益 4 億円。取引量1.00倍・価格1.34倍・利益率12.0%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 24.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 16.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.5 倍。全体の PER 21.5 倍、時価総額 645 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物件数の伸びが鈍る、利益率は 9% 前後という中心の筋書き。過去 10 年に赤字の期がなく、コロナ禍でも黒字を保った実績から、最も厚くした。
やや悲観 22% 外食の苦境で空き店舗と貸倒れが増える 利益 16 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,100 円185 億円
外食の苦境で、空き店舗と貸倒れが増える筋書きだ。出店者の入れ替わりで空き家賃が膨らみ、保証料の事故も増える。物件数の伸びは鈍り、4,300 件にとどまる。家賃の更新で、転貸差益の取り分が削られる。不動産売買は在庫が重くなり、評価損が出る。営業利益率は 7% に下がる。
(名目の前提)受け取る家賃も払う家賃も、契約の更新で物価に連れて上がる。物件数は実質(物の数)で置き、家賃の単価に物価を掛けた。人件費も同じ速さで上がる。
(自己資本の流れ)前期の純利益 14 億円から流した。減価償却は開示が小さく(設備投資は賃貸用不動産の取得が中心)、物価で増やさず、新しく買う分だけ新しい値段で按分する。償却は営業利益の 3% に届かない規模で、物価で一律に増やしても営業利益への差は小さい。毎月払う家賃は物価で更新のたびに上がるが、受け取る家賃も同じ速さで上がる。投資を絞り、現金は厚くなる。
- 店舗転貸借(家賃保証を含む):数量 4,300(期末の転貸借物件数(件))× 価格 0.08(億円/件(売上を期末の物件数で割った実効単価。家賃・手数料・保証料を合わせたもの))→ 売上 324 億円・営業利益 23 億円。物件数1.42倍・家賃の単価1.28倍・利益率7.0%
- 不動産売買:数量 70.0(取引量の指数(売却した物件の件数と規模。2026/03 期=100))× 価格 0.27(億円/指数 1)→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。取引量0.70倍・価格1.20倍・利益率6.0%
倍率:事業の ROE 14.4% は資本コスト 7.5% を上回る。RONIC=k+残る割合 1/2×(ROE−k)=11.6%、g 4.0% から正当化 PER=13.8 倍。外食の苦境で利益の質が落ちるので、約 7.6 割の 10.5 倍に置いた。余り資産は立てていない。
確率:外食の景気の悪化、競合の参入、親会社との関係の変化という慎重な見方が強い。家賃の固定費の重さを考え、強気の見方より少し厚く置いた。
悲観 11% 閉店が続き、固定の家賃だけが残る 利益 −2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 133 円22 億円
構造的な負けの筋書きだ。飲食店の閉店が続き、東京の家賃も下がる。毎月払う家賃は変わらず、空き店舗の家賃を会社が負う。物件数は 2,300 件まで減り、保証金の回収不能と家賃保証の事故が重なる。不動産売買は在庫の評価損が出る。営業利益は赤字になる。新リース会計基準で家賃の約束が貸借対照表に載ると、自己資本比率の低さが一気に見える。配当は最低限に絞られる。
(名目の前提)受け取る家賃も払う家賃も、契約の更新で物価に連れて上がる。物件数は実質(物の数)で置き、家賃の単価に物価を掛けた。人件費も同じ速さで上がる。
(自己資本の流れ)前期の純利益 14 億円から流した。減価償却は開示が小さく(設備投資は賃貸用不動産の取得が中心)、物価で増やさず、新しく買う分だけ新しい値段で按分する。償却は営業利益の 3% に届かない規模で、物価で一律に増やしても営業利益への差は小さい。毎月払う家賃は物価で更新のたびに上がるが、受け取る家賃も同じ速さで上がる。損失で自己資本は下に外れる。
- 店舗転貸借(家賃保証を含む):数量 2,300(期末の転貸借物件数(件))× 価格 0.06(億円/件(売上を期末の物件数で割った実効単価。家賃・手数料・保証料を合わせたもの))→ 売上 149 億円・営業利益 −1 億円。物件数0.76倍・家賃の単価1.10倍・利益率-1.0%
- 不動産売買:数量 50.0(取引量の指数(売却した物件の件数と規模。2026/03 期=100))× 価格 0.24(億円/指数 1)→ 売上 12 億円・営業利益 −1 億円。取引量0.50倍・価格1.10倍・利益率-5.0%
倍率:床は今の自己資本に 0.45 を掛けた。稼ぐ力は赤字で、売れる資産の税後 25 億円(floor_assets_oku)が下を支える。差入保証金の回収不能と販売用不動産の評価損を引いた額。清算されない限り、現金の使い方は少数株主には決められないので、床より少し低く置いた。
確率:外食の構造的な不況と、固定の家賃を負う契約の重さが重なる筋書き。過去に赤字がないが、構造は借金に近いので 1 割強に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
店舗転貸借(家賃保証を含む)
東京の飲食店の居抜き店舗を大家から借りて、出店者に又貸しする。家賃の差益のほか、出店時の手数料、家賃保証料が収入になる。
| 数量期末の転貸借物件数(件) | 価格億円/件(売上を期末の物件数で割った実効単価。家賃・手数料・保証料を合わせたもの) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,021 | 0.06 | 178 | 15 |
| 10 年後 中立 | 5,700 | 0.08 | 450 | 41 |
取り方:店舗転貸借の売上 178.03 億円を、期末の物件数 3,021 件で割った実効単価(期末の数で割るので、年の途中で増えた物件の分だけ単価は低く出る)。営業利益 15.48 億円は有報のセグメント利益。数量は新規 607 契約のうち純増 315 件の勢いで増え、価格は家賃の更新で物価並みに上がる。
不動産売買
仕入れた物件を磨いて売る。在庫は第 1 四半期末で 13.5 億円。
| 数量取引量の指数(売却した物件の件数と規模。2026/03 期=100) | 価格億円/指数 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.22 | 22 | 5 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.30 | 30 | 4 |
取り方:不動産売買の売上 22.09 億円を取引量の指数 100 で割った実効単価(件数と規模は開示がなく、筆者の推定)。営業利益 4.93 億円は有報のセグメント利益。前期に比べて利益が 3.6 倍と急増しており、平常には戻る。
リスクと懸念
固定の家賃の約束
大家への家賃は、借り手がいなくても毎月払う契約だ。外食が崩れ、空き店舗が増えれば、その期間の家賃を会社が負う。解約できない賃借料の総額は開示されていないが、年間の支払い家賃は 140 億円規模と推定される。これは借金と同じ重さの約束である。
新リース会計基準での貸借対照表の変化
新リース会計基準は 2028 年 3 月期から適用される。大家に払う家賃の約束が使用権資産とリース負債として載り、総資産が数倍になる。自己資本比率は一桁に落ちる見込みで、資金調達の見え方が変わる。事業の稼ぎは変わらない。
東京への集中
物件はすべて東京とその近郊にある。地震などの災害、地価と賃料相場の下落、外食の需要の地域的な悪化が、一斉に響く。分散による打ち消しが効かない。
親会社の存在
親会社クロップスが発行済株式の 56.8% を持つ。親会社グループとの関係が変われば、事業の仕組みや資金の使い方が変わりうる。少数株主の取り分は、親会社の意向に左右される。
差入保証金の回収不能
大家に預ける差入保証金は 79 億円で、総資産の 4 割を占める。大家が倒れたり、賃貸借契約が解除されたりすれば、回収できない可能性がある。預り保証金とは両建てだが、一致しない部分が損失になる。
競合の参入と優良物件の不足
店舗の仲介会社や大手の不動産会社が参入すれば、優良物件の取り合いになり、仕入れ値が上がる。法的な参入障壁は無い。会社は営業人員を増やして対応しているが、先行投資で第 1 四半期は減益だった。
不動産売買の利益の波
不動産売買の利益は、2026 年 3 月期に 3.6 倍と急増したが、売買の件数と値段で大きく振れる。在庫は 13.5 億円まで増えており、市況が悪化すれば評価損が出る。今の高い利益率は、平常には戻る。
今後の分かれ目
- 転貸借物件数が 4,000 件を超えるペースで増え続けたら
- 中長期目標の 5,500 件が現実になる。楽観側へ確率を移してよい。
- 家賃保証の代理店が 2,000 件を超え、保証料の収入が営業利益を押し上げたら
- 第二の柱が確かめられる。営業利益率を 10% 近くに置く筋書きの確率を上げる。
- 空き家賃や保証の事故が増え、営業利益率が 7% を割ったら
- やや悲観側へ確率を移す。固定の家賃の重さが表に出たサインとして扱う。
- 新リース会計基準の適用後、貸借対照表の資産が数倍に膨らんだら
- 見かけの自己資本比率は一桁になる。事業の稼ぎが変わらないことを確かめ、資金調達の条件の変化に注意する。
- 親会社クロップスが持株を売却するか、株式交換などを持ちかけたら
- 少数株主の取り分を、利益ベースの価値と比べる。買付けの値段が十分かが分かれ目になる。
- 外食の需要が落ち、閉店が前年の 2 倍に増えたら
- 悲観側の筋書きに重みを移す。物件数の伸びと貸倒れの両方を確かめる。
見ておくもの
- 転貸借物件数(期末 3,021 件、2026 年 6 月末 3,127 件から 5,500 件へ)
- 営業利益率と、家賃保証の代理店数・外販契約数
- 空き家賃・保証の事故・差入保証金の回収の動き
- 親会社クロップスの持分比率と、配当性向の引き上げ
- 新リース会計基準の適用(2028 年 3 月期)による貸借対照表の変化
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER から筋書きを作らず、転貸借の物件数と家賃の単価(億円/件)、不動産売買の取引量から営業利益を積んだ。資本コストは 7.5%(基本 7.5% に、循環 0.5%・借金 0.5%・寿命 0.25% の+1.25%。借金には固定の家賃の約束を含む)。中立は ROE が 22% で k を大きく上回り、正当化 PER は約 15.6 倍、その約 85% の 13.3 倍に置いた。新リース会計基準(2028 年 3 月期)で家賃の約束が貸借対照表に載るが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.7→22.58 倍・やや楽観 PER 14.3→21.75 倍・中立 PER 13.3→21.5 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +1.25% を足した 8.75%。事業は傾いていないので上乗せは置かない。親会社との関係のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 7.50%。