結論
京阪神ビルディングは、大阪の都心に建物を持ち、貸して稼ぐ会社だ。売上の半分強はデータセンター専用ビル8棟の賃料で、残りはオフィス、競馬の場外発売所(ウインズ)、商業施設である。筆者の結論は「稼ぐ力で測ると割高」だ。含み益を足せば資産に比べて安く見えるが、利益は金利の上昇に押さえつけられる。
データセンターは強い。空室はほぼゼロで、一部の借り手が本契約に移って賃料も上がった。この事業が10年の稼ぎの主役になる。弱いのは借金だ。純額で約700億円あり、借り換えのたびに新しい金利が乗る。10年で税引き前の利益が約17億円削られる計算で、営業利益の3割にあたる。
中立の筋書きでは、10年後の純利益は今の1.3倍にとどまり、自己資本利益率は5%台だ。資本コストの8.25%に届かない会社に、高い倍率は付けられない。含み益は大きいが、国債が3%の世界では不動産の評価額が目減りしうるうえ、本業の稼ぐ力を押し上げるわけでもない。
上振れの芽は2つある。大阪のデータセンター需要が想定を超える展開と、物言う株主が求める資産売却や自社株買いが進む展開だ。それでも確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額の6割弱にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、堀は「大阪都心の土地」と「データセンターの運営力」の2つだけで、どちらも10年後に今より強いとは言い切れない。データセンターは需要が強い反面、供給競争が最も激しくなる事業でもある。
オーナーが手にする利益は、帳簿の利益より厚い。減価償却が実際の維持費より重く、建物の価値は物価で上がるからだ。それでも、借り換えで新しい金利が乗れば、株主に残る利益は薄くなる。含み益に頼る評価は、金利が上がる局面でいちばん弱い。
経営の資本配分には、まだ点数を付けにくい。海外の住宅・物流への出資は小さく始まったが、実績がない。政策保有株の縮小や配当性向の引き上げは前向きだが、物言う株主に押された動きという面もある。
安全域は、資産の側にはあるが、利益の側にはない。含み益を足した純資産は時価総額を上回るのに、稼ぐ力は資本コストに届かない。この食い違いが解けない限り、割安とは呼べない。筆者は、今の値段では安全域が足りないと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は4つある。いちばん大きいのがデータセンタービルの賃貸で、大阪市の中央区・西区・北区と吹田市に8棟を持ち、延べ床は合計12万5千㎡ほどになる。売上の54%を占める。通信設備やサーバーを置く専用ビルで、受電は原則として複数回線、防災とセキュリティも厚い。借り手の名前や契約条件は開示されていない。
2番目はオフィスビルの賃貸で、売上の23%。3番目がウインズビルで、梅田・難波・京都・神戸などの場外発売所の建物を、設立以来半世紀にわたって日本中央競馬会(JRA)に貸している。売上の16.5%を占める安定収入だが、増える見込みは薄い。残りの6%が商業施設と物流倉庫だ。
会社は2033年3月期までの長期経営計画で、事業利益を2028年3月期に80億円、2033年3月期に140億円へ伸ばす目標を掲げる。柱は資産の回転、米国の住宅・物流開発への出資、私募ファンドの立ち上げで、第1期の成長投資は770億円。都心の土地を単独で仕入れて開発することが難しくなり、出資や共同開発に回っている。
今期(2027年3月期)は、京都の四条河原町ビルの譲渡益約59億円で純利益が70億円に膨らむ予想だが、これは一過性だ。本業の営業利益は55億円の予想である。
優良さと弱いところ
堀は、大阪都心の土地と、データセンターを30年以上運営してきた経験にある。専用ビルは電力や冷却の設備が重く、借り手が簡単には移れない。空室率が0.02%まで詰まっているのは、その表れだ。ただし他社の施設も増えており、賃料を自分で決められるほど独占的ではない。値決め力は中くらいと見る。
資本効率は低い。自己資本利益率は過去10年で7.5%を超えたのが1度だけで、直近も5.7%にとどまる。営業利益率は10年前の3割台半ばから、今は27%台まで下がった。データセンターの建物の減価償却が重いためだ。含み益が大きい分、帳簿の利益は実力より低く出る。
弱みは3つある。まず借金が重い。純負債は営業利益の約12倍で、自己資本比率は44%あっても、利払いの余裕は新しい金利で薄くなる。次に、持ち合い先の株主が多く、物言う株主との対立が続く。さらに、海外の住宅・物流への出資は始めたばかりで、不動産会社として実績の浅い領域に資金を回している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
大阪のデータセンター市場は、いま追い風の中にある。生成AIやクラウドの需要が強く、電力と土地を押さえた事業者が有利で、都心に近い大型の専用ビルは貴重だ。一方で、大手の事業者が大阪で新しい施設の計画を相次いで出しており、数年後に供給が追いつく局面は十分にありうる。電力の確保と設備の新しさで、古い建物は見劣りしやすい。筆者がいちばん気にしているのはここだ。
オフィスは梅田を中心に大型ビルの供給が続く。大阪の需給は東京ほど締まっておらず、賃料の伸びは物価並みが精いっぱいだろう。
ウインズは別の理屈で動く。JRAの馬券は大半がインターネットで売れ、場外発売所の役割は薄れている。京都のウインズは整備工事のため2026年6月から2027年末ごろまで休業する予定で、ほかの拠点でも再編はありうる。賃貸借の期間と賃料の改定幅は開示されておらず、読みにくい。
ヒューリックなど都心の大型ビル保有会社と比べると、この会社は大阪とデータセンターに偏っている。データセンターの賃貸借は一般に長期で、改定は契約ごとになるため、物価の上昇に追いつくのに時間がかかる面がある。10年国債が3%の世界では、不動産の期待利回りが切り上がり、資産価格の伸びは鈍る。含み益は、金利の上昇で目減りしうる。
資本政策と M&A
株主還元は手厚くなる方向だ。長期経営計画は配当性向を従来の35〜40%から45%程度に引き上げ、減配しない累進配当を掲げる。2026年には株主優待も新設した。自社株買いは「検討」にとどまり、実績はまだ薄い。
資本政策の焦点は、政策保有株と持ち合い先の株主である。会社は政策保有株を連結純資産の10%以下に減らす計画で、期限は2028年3月期だ。物言う株主のストラテジックキャピタルは2024年と2026年に株主提案を出した。2026年は政策保有株主の持ち株を会社が買い取らせる案だったが、いずれも総会で否決された。三井住友銀行が出資する保険代理店の銀泉が筆頭株主(13%)で、買収の動きは今のところ見えない。
M&Aは自社では小さい。米国の物流・住宅開発を日鉄興和不動産や阪急阪神不動産と共同で進める形が中心で、投資額は成長投資770億円の範囲に収まる。ただし借金で賄う分は、金利の重荷になる。
減価償却は物価で増やさない。今ある設備の償却は取得した時の値段のままで、増えるのは更新と新規の分だけだ。償却は今の38億円が10年後に約 40億円。更新投資は価格の上昇で膨らみ、足りない分は借入になって利払い(3.5%)が増える。会計の利益と現金の動きは同じ向きに動かない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
大阪のデータセンターは、需要が伸び続けるのに供給は電力で縛られる。8棟とも埋まり、空室は0.02%まで詰まっている。借り手が本契約に移るたびに賃料が上がり、物価の上昇分を超えて賃料を取れる局面が続く。既存の建物を高密度の設備に改修するだけでも、同じ床面積から取れる賃料は増える。
資産の側も強い。大阪の都心に持つ土地とビルには、税引き後で650億円ほどの含み益があるとみられ、純資産と合わせれば時価総額を大きく上回る。会社は政策保有株を10%以下に減らし、配当性向を45%に上げ、累進配当も掲げた。物言う株主が9%超を握っており、資産の売却や自社株買い、不動産投資法人への切り出しといった、含み益を株主に返す動きが一段と進む可能性は高い。
海外の住宅・物流開発や私募ファンドは、都心の土地を単独で買えなくなった中での合理的な打ち手だ。資産を回転させて売却益を積み上げれば、自己資本利益率は計画の8%に近づく。
慎重な見方
稼ぐ力は低い。自己資本利益率は過去10年で7.5%を超えたのが1度だけで、直近も5.7%にとどまる。借金は純額で約700億円、営業利益の12倍にあたり、借り換えで新しい金利が乗れば利払いは10年で約17億円増える。営業利益が伸びても、利払いが伸びを食う。
データセンターはいちばん危うい。需要が強いのは事実だが、大阪では大手の新施設が相次ぎ、数年後に供給過剰になれば賃料の改定は据え置きか下げに転じる。借り手の顔ぶれも契約条件も開示されておらず、大口が抜けた時の傷が見えない。オフィスは梅田で大型の供給が続き、ウインズはJRAの場外発売所の再編で面積が減りうる。
含み益は、国債が3%の世界ではキャップレートの上昇で目減りする。物言う株主の提案は2024年も2026年も否決され、持ち合い先が筆頭の13%を握る構図は変わっていない。資産を売って株主に返す動きが進む保証はなく、海外の出資は実績がない。含み益を理由に割安と言うのは、利益を見ない言い訳に近い。
どちらに重みを置いたか
データセンターの強さと含み益の厚さは、強気の見方が正しい。ただ、利益の側で見ると、借り換えの利払いが重く、自己資本利益率が資本コストを超える姿は描きにくい。慎重な見方の指摘が強い。確率は中立を厚く置き、強気側は3割弱、慎重側は3割半ばとした。同じ領域のヒューリックと比べ、借金の軽さと契約の安定を認めて資本コストを少し下げ、中立の確率を厚くした。結論は「割高」だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,541 円1,471 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 237 円226 億円)。 今の値に割り戻すと 894 円853 億円、今との差 −3.7%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,619 円2,499 億円 | 340 円324 億円 | +218.8% | +12.3% | 237 円226 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,219 円2,117 億円 | 301 円287 億円 | +171.6% | +10.5% | 504 円481 億円 |
| 中立 | 37% | 1,949 円1,859 億円 | 269 円257 億円 | +139.0% | +9.1% | 821 円783 億円 |
| やや悲観 | 23% | 546 円521 億円 | 186 円177 億円 | −21.2% | −2.4% | 168 円160 億円 |
| 悲観 | 12% | 345 円330 億円 | 63 円60 億円 | −56.0% | −7.9% | 49 円47 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,541 円1,471 億円 | 237 円226 億円 | +91.7% | +6.7% | 1,779 円1,697 億円 |
今の株価時価総額 928 円885 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 需要が強く、含み益を株主に返す動きも進む 利益 114 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,619 円2,499 億円
大阪のデータセンター需要が強いまま推移し、電力に余裕のある既存ビルの改修や新棟で実効の面積が4割ほど増える。賃料は契約のたびに更新され、10年で物価の伸びを大きく超えて上がる。オフィスは入替で面積を保ち、ウインズは5カ所とも契約が続く。成長投資は海外の住宅・物流と私募ファンドで残高が3倍超に積み上がり、運用の手数料と売却益が利益に乗る。物言う株主の圧力もあって、政策保有株の整理と資産の売却が進み、売却代金は借金の返済と自社株買いに回る。持ち合い先の株が市場に出て株主構成が入れ替わり、自己資本利益率は8%に迫る。この筋書きには、株主構成の変化で買収提案が出る展開も含む。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の38億円が10年後に約 40億円(物価で一律に増やすと約 20億円)。営業利益は +20億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- データセンタービル賃貸(大阪8棟):数量 17.5(保有8棟の延床面積(万㎡))× 価格 15(延床1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 270 億円・営業利益 136 億円。面積+40%・賃料の指数1.75・償却は物価で増やさず按分(10年後 40億円)
- オフィスビル賃貸:数量 7.2(賃貸面積(万㎡。推定))× 価格 10(1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 74 億円・営業利益 20 億円。面積+10%・指数1.45
- ウインズビル賃貸(JRA向け):数量 5.0(賃貸する場外発売所の数(カ所))× 価格 8.38(1カ所当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 42 億円・営業利益 14 億円。5カ所のまま・指数1.25
- 商業施設・物流倉庫等と成長投資(国内外の開発・出資):数量 900(投下残高(億円。今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.07(投下残高に対する収入の比率 × 賃料の指数(今=1))→ 売上 64 億円・営業利益 19 億円。投下残高3.6倍・指数1.45
倍率:事業の純利益 114 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.76 倍、時価総額 1,569 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の強さと、含み益を株主に返す経営の転換がそろって初めて届く筋書きで、確率は低く置く。中立を厚くした分、同じ領域のヒューリックより薄い。
やや楽観 20% データセンターの賃料が着実に上がる 利益 88 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,219 円2,117 億円
データセンターの賃料が契約更新で着実に上がり、一部の借り手の本契約への移行が進む。実効の面積は2割ほど増え、賃料は物価を超える。オフィスは物価並みに上がり、ウインズは据え置きに近い。海外の住宅・物流開発とファンドは計画の線で残高が2倍強に育ち、資産売却益が毎年出る。政策保有株は目標の10%以下に下がり、配当性向は45%を保つ。借り換えの利払いは増えるが、増益がそれを上回る。自己資本利益率は6%台にとどまり資本コストには届かないが、事業利益は長期経営計画の目標に近づく。大阪のデータセンター市場が拡大を続け、会社が電力の確保と設備の更新に遅れずに投資できた姿である。含み益を株主に返す動きは、計画の範囲で進む。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の38億円が10年後に約 40億円(物価で一律に増やすと約 24億円)。営業利益は +16億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- データセンタービル賃貸(大阪8棟):数量 15.0(保有8棟の延床面積(万㎡))× 価格 14(延床1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 209 億円・営業利益 101 億円。面積+20%・指数1.58・償却は物価で増やさず按分(10年後 40億円)
- オフィスビル賃貸:数量 6.8(賃貸面積(万㎡。推定))× 価格 10(1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 69 億円・営業利益 18 億円。面積+5%・指数1.40
- ウインズビル賃貸(JRA向け):数量 5.0(賃貸する場外発売所の数(カ所))× 価格 8.04(1カ所当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 40 億円・営業利益 14 億円。5カ所のまま・指数1.20
- 商業施設・物流倉庫等と成長投資(国内外の開発・出資):数量 600(投下残高(億円。今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.07(投下残高に対する収入の比率 × 賃料の指数(今=1))→ 売上 40 億円・営業利益 11 億円。投下残高2.4倍・指数1.38
倍率:事業の純利益 88 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,135 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:データセンターの賃料が着実に上がる姿は今の動きの延長で、起こりやすい。それでも金利の重みが残るので、中立より薄く置く。
中立 37% 賃料は物価を上回るが、利払いが増益を削る 利益 68 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,949 円1,859 億円
データセンターの賃料は、物価に電力設備の増強が重なって年3〜4%で上がり、面積は今の8棟のままとする。オフィスは物価並み、ウインズは物価に届かない小幅の改定にとどまる。成長投資は残高が倍弱に増え、海外の開発と資産売却で売却益が毎年20億円前後出る。借り換えで利払いが増え、増益の3分の2ほどが金利の重みで消える。純利益は今の1.3倍で、配当性向45%を保つと自己資本は積み上がり、自己資本利益率は5%台のままだ。政策保有株は計画どおり減るが、会社が自社株買いに本格的に動くことはない。物言う株主との対立は続き、株主構成は大きくは変わらない。データセンターの借り手の入替も、目立った混乱なく進む。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の38億円が10年後に約 40億円(物価で一律に増やすと約 28億円)。営業利益は +12億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- データセンタービル賃貸(大阪8棟):数量 12.5(保有8棟の延床面積(万㎡))× 価格 13(延床1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 160 億円・営業利益 76 億円。面積横ばい・指数1.45・償却は物価で増やさず按分(10年後 40億円)
- オフィスビル賃貸:数量 6.5(賃貸面積(万㎡。推定))× 価格 9.61(1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 62 億円・営業利益 15 億円。面積横ばい・物価並み1.34
- ウインズビル賃貸(JRA向け):数量 5.0(賃貸する場外発売所の数(カ所))× 価格 7.71(1カ所当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 39 億円・営業利益 12 億円。5カ所のまま・指数1.15
- 商業施設・物流倉庫等と成長投資(国内外の開発・出資):数量 450(投下残高(億円。今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.07(投下残高に対する収入の比率 × 賃料の指数(今=1))→ 売上 29 億円・営業利益 7 億円。投下残高1.8倍・物価並み1.34
倍率:事業の純利益 68 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 877 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:賃料収入の大半が長期の賃貸借で、振れ幅が小さい。借り換えの金利という確実な逆風と、データセンターという確実な追い風が打ち消し合う姿を、最も厚く置く。
やや悲観 23% 賃料が頭打ちになり、高い金利が居座る 利益 25 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 546 円521 億円
データセンターの賃料改定が頭打ちになり、新築の供給で10年を通じて物価に届かない。面積は変わらないが賃料の指数は1.2倍止まりで、費用だけが物価で上がる。オフィスは梅田の大型供給に押されて面積も賃料も弱く、ウインズは1カ所が返還される。金利は3%のまま居座り、借り換えで利払いが営業利益の半分以上になる。会社は含み益のあるビルを売って借金を返し、配当は増やせても自社株買いまでは届かない。純利益は今の半分以下に落ちるが、赤字には沈まず、財務の傷は浅い。海外の出資と成長投資は縮み、会社は守りの経営に戻る。株価は資産の厚みで支えられるが、成長の物語は描けなくなる。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の38億円が10年後に約 40億円(物価で一律に増やすと約 35億円)。営業利益は +5億円。投資は内部の資金で賄え、借入は増えない。
- データセンタービル賃貸(大阪8棟):数量 12.5(保有8棟の延床面積(万㎡))× 価格 11(延床1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 132 億円・営業利益 42 億円。面積横ばい・指数1.20・償却は物価で増やさず按分(10年後 40億円)
- オフィスビル賃貸:数量 6.2(賃貸面積(万㎡。推定))× 価格 8.60(1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 53 億円・営業利益 11 億円。面積-5%・指数1.20
- ウインズビル賃貸(JRA向け):数量 4.0(賃貸する場外発売所の数(カ所))× 価格 7.04(1カ所当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 28 億円・営業利益 8 億円。1カ所返還・指数1.05
- 商業施設・物流倉庫等と成長投資(国内外の開発・出資):数量 300(投下残高(億円。今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.06(投下残高に対する収入の比率 × 賃料の指数(今=1))→ 売上 18 億円・営業利益 4 億円。投下残高1.2倍・指数1.2
倍率:含み益込みの売れる資産の税後を床とみて、今の自己資本 814 億円に PBR 0.64 を掛けた。稼ぐ力(純利益 22 億円÷k)は 270 億円ほどで、それより床が高い。EV÷営業利益は約 24 倍で、借金と利益の両面で重い。
確率:データセンターの供給が増える局面は数年内に現実味があり、オフィスとウインズも弱い。業種ノートの10年の構造的な負け筋(利回りの上昇)にも沿い、相応に厚い。
悲観 12% 供給過剰・大口の退去・投資の失敗が重なる 利益 −68 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 345 円330 億円
大阪でデータセンターの新設が相次ぎ、需給が緩む。電力設備の古いビルから、大口の借り手が条件の良い新築へ移り、実効の面積が1割近く減る。賃料の改定は据え置きに近く、費用だけが物価で上がって利益率が落ちる。ウインズはJRAの場外発売所の再編で2カ所が返還され、建物は用途転換か売却を迫られる。海外の住宅・物流への出資は期待した成果を生まず、損失を計上する。金利が3%のまま居座るので、借り換えのたびに利払いが膨らむ。赤字に落ち、資産の一部を安く売って借金を減らす。含み益はキャップレートの上昇でほぼ消える。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得原価のまま、更新と新規の投資だけ新しい値段で35年に按分した。償却は今の38億円が10年後に約 40億円(物価で一律に増やすと約 39億円)。営業利益は +1億円。建築費の上昇で膨らむ更新・再開発の投資を借入で賄うため、新しい借入の利払い年 7億円(3.5%)を純利益から引いた。
- データセンタービル賃貸(大阪8棟):数量 11.5(保有8棟の延床面積(万㎡))× 価格 9.68(延床1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 111 億円・営業利益 20 億円。実効面積-8%(空室・退去)・指数1.10・償却は物価で増やさず按分(10年後 40億円)
- オフィスビル賃貸:数量 5.9(賃貸面積(万㎡。推定))× 価格 7.53(1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。面積-10%・指数1.05
- ウインズビル賃貸(JRA向け):数量 3.0(賃貸する場外発売所の数(カ所))× 価格 6.70(1カ所当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。2カ所返還・据え置き
- 商業施設・物流倉庫等と成長投資(国内外の開発・出資):数量 250(投下残高(億円。今の値段で測った実質。推定))× 価格 0.05(投下残高に対する収入の比率 × 賃料の指数(今=1))→ 売上 13 億円・営業利益 2 億円。残高横ばい・指数1.1
倍率:赤字で稼ぐ力は 0 とみて、売れる資産の税後を床に置いた。今の自己資本 814 億円に PBR 0.405 を掛けた約 330 億円。EV÷営業利益は 60 倍を超えるが、利益が崩れた筋書きなので資産で測る。
確率:大口の退去・供給過剰・投資の失敗が重なる筋書き。大阪の土地という床があり、倒産には遠いので、最も低く置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
データセンタービル賃貸(大阪8棟)
データセンター専用に建てたビルを、通信・クラウド事業者などに床単位で貸す中核事業。
| 数量保有8棟の延床面積(万㎡) | 価格延床1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.5 | 8.80 | 110 | 36 |
| 10 年後 中立 | 12.5 | 13 | 160 | 76 |
取り方:延床は会社の事業案内(8棟の合計約12.5万㎡)。売上は IR のアセットタイプ別(2026/03 期 110.1 億円)で、1万㎡当たり 8.8 億円はそれを割った値(電力容量や専用面積ではない)。営業利益は開示がなく、減価償却(会社全体で約 40 億円と推定)の多くがこの事業にあるとみて 36 億円(利益率 33%)と推定。賃料は電力設備の増強と契約の移行で物価を超えて上がる前提(中立 10 年 1.45 倍)。
オフィスビル賃貸
大阪を中心にオフィスビルを持ち、一般のテナントに貸す事業。
| 数量賃貸面積(万㎡。推定) | 価格1万㎡当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.5 | 7.17 | 47 | 11 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 9.61 | 62 | 15 |
取り方:賃貸面積は開示がなく、売上 46.6 億円を大阪のオフィス賃料(年約 7.2 万円/㎡)で割って約 6.5 万㎡と推定。営業利益は 11 億円(24%)と推定。賃料の指数は中立で物価並み(10 年 1.34 倍)。
ウインズビル賃貸(JRA向け)
競馬の場外発売所の建物を、設立以来、日本中央競馬会(JRA)に貸している事業。
| 数量賃貸する場外発売所の数(カ所) | 価格1カ所当たり年間賃料収入(億円)=賃料の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 6.70 | 34 | 12 |
| 10 年後 中立 | 5.0 | 7.71 | 39 | 12 |
取り方:JRA に貸す場外発売所の建物 5 カ所。売上 33.5 億円(IR)を 5 で割り、1 カ所 6.7 億円。営業利益 12 億円(36%)は推定(建物の償却が進んでいるとみる)。賃料は JRA との長期の賃貸借で改定が小さく、場外発売の縮小もあるので、中立は 10 年 1.15 倍(物価の 1.34 倍に届かない)。
商業施設・物流倉庫等と成長投資(国内外の開発・出資)
商業施設や物流倉庫の賃貸に加え、中期計画で増やす海外の住宅・物流開発、ファンド、資産回転型の投資の受け皿。
| 数量投下残高(億円。今の値段で測った実質。推定) | 価格投下残高に対する収入の比率 × 賃料の指数(今=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 0.05 | 12 | 3 |
| 10 年後 中立 | 450 | 0.07 | 29 | 7 |
取り方:商業施設・物流倉庫等の売上 12.2 億円(IR)を、収入の比率 4.9% で割って投下残高を約 250 億円と推定。成長投資(海外の住宅・物流、ファンド、資産回転型)が増える分は、この残高の増加として数量に入れる。営業利益は 3.4 億円(28%)と推定。比率は物価並みに上がる(中立 1.34 倍)。 数量は投下残高(実物)で、名目の市場の伸びではない。伸びの理由は会社の成長投資計画。比率は物価の 1.34 倍。
リスクと懸念
金利の上昇と不動産の評価額
10年国債が3%に上がると、不動産の期待利回りも切り上がり、含み益は目減りする。借り換えのたびに新しい金利が乗り、10年で税引き前の利益が約17億円削られる。借金は純額で約700億円、営業利益の約12倍あり、この影響がいちばん重く出る。
データセンターの供給過剰と大口の退去
大阪で大手の新施設が相次げば、既存ビルの賃料改定は頭打ちになる。借り手の顔ぶれも契約期間も開示されておらず、大口が抜けた時の傷が読めない。売上の半分強が8棟に集中している。
データセンターの設備更新費
生成AI向けは電力と冷却の密度が上がり、古い設備のままでは借り手をつなぎ留めにくい。改修の費用は減価償却に乗って利益を押し下げ、借金で賄えば利払いが増える。
ウインズの縮小
JRAの馬券はインターネットが主流で、場外発売所は縮小の方向にある。京都は2026年6月から2027年末ごろまで整備工事で休業する予定だ。売上の16.5%を占めるが、契約期間と賃料の改定幅は開示がなく、返還や減額の可能性を読み切れない。
海外・投資事業の実績の浅さ
米国の賃貸住宅・物流開発への出資は小さく始まったが、不動産会社として実績が浅い。今期は海外の開発案件の費用が前倒しで出て、経常利益が下方修正された。現地の需給と金利が悪化すれば、損失が出る余地がある。
持ち合いと物言う株主との対立
三井住友銀行が出資する保険代理店の銀泉が筆頭株主(13%)で、持ち合い先の株主が多い。物言う株主の提案は2024年も2026年も否決され、対立が続く。資本効率の改善が遅れると、株主構成をめぐる混乱が続く恐れがある。
今期の利益に一過性が混ざる
今期の純利益70億円の予想は、四条河原町ビルの譲渡益約59億円を含む。本業の利益の水準を誤って高く見積もらないよう注意が要る。
今後の分かれ目
- 大阪でデータセンターの空室率が上がり、契約更新で賃料が下がり始める
- 賃料の指数が物価を下回る慎重な筋書きに近づき、本質価値は下がる。
- 会社が政策保有株を前倒しで売り、自社株買いと借金の返済に回す
- 利払いが減り、資本効率が上がる。強気の筋書きの確率を引き上げる。
- 物言う株主が再び株主提案を出し、賛成が大きく増える
- 資産売却や自社株買いの圧力が強まり、含み益を株主に返す展開の確率が上がる。
- 10年国債が3%を大きく超えて上がる
- 借り換えの利払いが想定を超え、含み益も目減りする。慎重な筋書きが厚くなる。
- JRAがウインズの一部を返還・縮小する
- ウインズの賃料が減り、建物の用途転換費用が出る。やや悲観に近づく。
- 海外の住宅・物流への出資で減損が出る
- 資本配分への評価が下がり、成長投資の価値を割り引く。
見ておくもの
- 大阪のデータセンターの空室率・新規供給・賃料(業界の調査、会社の決算説明資料)
- 会社のデータセンタービルの売上の伸びと、借り手の本契約への移行(決算短信)
- 政策保有株の比率(連結純資産の10%以下の目標、2028年3月期)と自社株買いの実績
- 10年国債の利回りと、会社の借り換えの金利(有価証券報告書の借入の注記)
- 成長投資770億円の執行状況・海外案件の損益・私募ファンドの立ち上げ
倍率と資本コストの決め方
今の株価や PER からは筋書きを置かず、セグメントごとに面積・件数・残高(実質)と賃料の指数(物価 3% 込みの名目)を積み、借り換えの利払い増(10 年で約 17 億円)と成長投資の借金を純利益から引いた。倍率は資本コスト 7.75%(基本 7.5% に借金+0.75%・循環−0.25%・寿命+0.25%)と、ROE が資本コストを下回るので PER の上限 1÷k から出し、楽観〜中立は上限の 9〜9.5 割。やや悲観・悲観は今の自己資本に掛ける PBR で、含み益込みの売れる資産の税後から置いた。含み益は悲観の床にだけ使い、中立〜楽観には賃料・売却益が純利益に入っているので足していない。額は物言う株主の資料からの推定で、確かな開示値ではない。新リース会計基準は貸す側の当社にはほぼ影響しない。結論は「割高」。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.76 倍・やや楽観 PER 11→12.9 倍・中立 PER 10.9→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。事業は傾いていないので extra は置かない。ヒューリック(+1.0%)より借金の対自己資本が軽く、契約が安定している分だけ低い。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。