結論
レシップは、路線バスの運賃箱や行先表示器、IC カードの読み取り機を作る会社だ。筆者の結論は、国内の地盤は固く、米国にも足場ができたが、特需の後の稼ぐ力に見合う値段がすでについている、というものだ。
2024 年と 2025 年の 3 月期は、新紙幣に対応する運賃箱の改修で利益が跳ねた。この特需は一巡し、2026 年 3 月期の営業利益は 13 億円に戻った。筆者はこの特需を 10 年の起点にしない。
伸びしろは米国だ。オレゴン州ポートランドやカリフォルニア州の交通局から運賃箱の大口を受け、年 1,200 台の安定受注を目指す。国内でも、現金の運賃が減るぶん、タッチ決済やバスの位置情報のシステムで 1 台あたりの稼ぎを増やす。
一方で、国内の路線バスは運転手の不足で減っていく。10 年の中立では営業利益は 17 億円前後で、確率で重みづけした価値は今の時価総額とほぼ並ぶ。
手元は純現金で、配当も厚くなった。下値は守られているが、上に大きく伸ばすには米国の利益率の証明が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、レシップは「狭いが本物の堀を持つ、小さな会社」だ。路線バスの運賃箱は、替えにくく、改修で長く稼げる。この性質は 10 年後も残ると筆者は見る。
問題は、堀の中の市場が縮むことだ。バスの台数は減り、現金の運賃も減る。堀が守る利益の総量は、放っておけば細る。会社はタッチ決済やシステムで 1 台あたりの稼ぎを増やし、米国で数を補う道を選んだ。方向は正しいが、米国では入札で値段を削られる。
筆者が評価するのは、資本の使い方が変わったことだ。配当を 3 倍に増やし、自己株も買い始めた。特需で得た現金を、無理な買収に回していない。
それでも、今の値段に安全域は乏しい。特需の後の利益で見れば、価値はほぼ値段と並ぶ。
筆者がこの会社に見るのは、狭い堀を守りながら、外へ少しずつ出ていく姿だ。米国で利益を伴う受注を 2〜3 年続けられれば、評価は一段上がる。それまでは、値段と価値が並んだまま待つことになる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 8 割強は輸送機器だ。路線バスの運賃箱、車内の運賃表示器、車外の LED の行先表示器、IC カードの読み取り機を、バス会社と鉄道会社に直接売る。トラックの灯具や、米国の鉄道車両向けの LED 照明もここに入る。2026 年 3 月期の売上は 200 億円、利益は 12 億円だった。
運賃箱は 1 台ごとに装置を納め、その後の改修と保守で長く稼ぐ。紙幣や硬貨が変わるたびに、全国のバスで改修が要る。2024 年 7 月の新紙幣がそれで、2 期にわたって利益を押し上げた。
海外は売上の約 15% だ。米国子会社が北米の交通局に運賃箱を納め、累計は 6 事業者に約 2,600 台になった。2025 年には、オレンジ郡交通局など 2 局から約 1,300 万ドルの受注を得た。
残る産業機器は、フォークリフトの充電器や LED の電源、車載の基板の受託生産だ。売上は 38 億円で、利益は 1 億円余りと薄い。充電器と電源の一部は生産を終え、基板の受託へ軸足を移している。
新しい芽もある。ごみ収集車の作業を効率にする「G-SUPPORT」は名古屋市の実証に採用され、富士山の入山管理アプリも続けて使われている。どれも、バスで培った車載の機器と通信の技術を、別の客に広げる試みだ。
優良さと弱いところ
国内の運賃箱には、確かな堀がある。運賃箱はバス会社の料金の仕組みや IC カードの精算とつながり、一度入れると替えにくい。会社の説明では、バスの運賃箱のシェアは 6 割強で国内首位、ローカル線の鉄道の運賃箱は 9 割を超える。残りの多くは小田原機器が握る。新紙幣のような変化のたびに、改修の注文が既存の納入先から戻ってくる。
ただ、この堀の上にいる客は細っている。地方のバス会社は赤字が多く、設備の更新を先送りしがちだ。値上げは物価に追いつく程度で、それ以上は取りにくい。
利益の安定も弱い。新紙幣の前の 10 年は、営業利益率がマイナスから 7% の間を行き来した。特需の 2 期を除けば、資本コストを安定して上回った年は少ない。
経営は、配当を 3 倍に増やし、自己株も買い始めた。資本の使い方は、ここ 2 年で目に見えて良くなった。
弱みは規模だ。売上は 250 億円前後で、研究開発に回せるのは年 7 億円ほど。決済の仕組みが速く変わる時代に、大手の IT 企業と同じ速さで投資を続けられるかは心もとない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の路線バスは、約 6 万台が走る成熟した市場だ。人口の減少と運転手の不足で、路線の廃止や減便が続く。10 年先の台数は、今より 1〜2 割少ないと見るのが自然だ。
一方で、1 台に積む機器は高度になる。現金の運賃は減り、クレジットカードのタッチ決済や QR コードの読み取り、バスの位置を知らせる仕組みが広がる。運賃箱そのものの数は減っても、1 台あたりの機器とソフトの売上は増える方向だ。当社は統合の仕組み「MoveLe」で、2030 年度に売上 35 億円を目指す。
米国は様子が違う。公共交通への連邦の補助が続き、古い運賃箱の入れ替えが各地で進む。現地の大手と入札で競うので、値段は厳しい。2026 年 3 月期には、戦略的な案件で受注損失の引当金を積んだ。数を取るために利益を削った跡だ。
競合は、国内では小田原機器、海外では米国の大手の運賃収受メーカーだ。決済の仕組みが IT 企業の側へ移ると、装置の作り手は下請けになりかねない。
筆者は、国内の運賃箱という商売が 10 年で消えるとは見ない。高齢の客は現金を使い続け、地方では現金とカードの両方を扱う装置が長く要る。ただ、運賃箱 1 台の値段が、決済の仕組み全体の中で軽くなっていく流れは止まらない。
資本政策と M&A
還元は、ここ 2 年で大きく変わった。中期計画「RT2026」で、純資産に対する配当の目安を 2% 以上から 3% 以上に上げ、2027 年 3 月期の配当総額は約 4 億円の予定だ。2026 年度の 1Q には自己株も取得した。
手元は純現金で、借入を上回る現金を持つ。米国の大型案件では、部品の先買いと納入までの運転資金が膨らむので、全部が余っているわけではない。
親会社は無く、大株主は名古屋中小企業投資育成と地元の銀行だ。規模が小さく、決済や交通の IT 企業から見れば買いやすい大きさにある。
中期計画の 2 年で約 59 億円の現金を生むとし、その配り先を広げた。次の中期計画で総還元の目安が出るかが、次の見どころだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の地盤は見た目より強い。運賃箱は料金の仕組みとつながり、一度入れれば 10 年以上替わらない。紙幣や決済の仕組みが変わるたびに、改修の注文が必ず戻る。タッチ決済の広がりは、まさにその次の波だ。
米国はこれからだ。北米の交通局は古い運賃箱を入れ替える時期にあり、当社は 6 事業者に約 2,600 台を納めた実績を持つ。年 1,200 台の受注が定着すれば、海外の売上は今の倍になる。2027 年 3 月期に売上が過去最高になる見通しも、その流れの中にある。
資本の使い方も良くなった。配当は 3 倍になり、自己株も買い始めた。純現金で借金の心配はない。特需の後でも営業利益 19 億円を見込む会社に、今の値段は高くない。
国内の運賃箱は、現金とカードの両方を扱う装置として、地方では長く残る。高齢の客が多い路線ほど、現金はなくならない。新しい決済の装置を載せる時も、運賃箱とつなぐ必要があり、既存の納入先の更新は当社に戻ってくる。ごみ収集車向けの G-SUPPORT など、車載の機器を別の客に広げる芽もある。
慎重な見方
特需の利益を基準にしてはいけない。新紙幣の前の 10 年、営業利益率はマイナスから 7% の間を行き来した。紙幣の変更は 20 年に 1 度で、次の山は 10 年の中に来ない。
国内の客は細る。地方のバス会社は赤字が多く、運転手の不足で路線を減らしている。現金の運賃が減れば、運賃箱は簡単な読み取り機で足りるようになる。決済の主役が IT 企業やカード会社に移れば、装置の作り手は値段を決められない下請けになる。
米国は入札の世界だ。2026 年 3 月期には、戦略的な案件で受注損失を積んだ。数を取りに行けば利益が削られる。海外の比率が上がるほど、利益率は薄まる。
規模の小ささも弱点だ。研究開発は年 7 億円ほどで、決済の仕組みを作る大手とは桁が違う。装置の値段は年ごとに軽くなり、利益の多くは保守と改修に頼るようになる。バスの台数が減れば、その保守の数も減る。特需の後の今の値段は、米国の成功を先に織り込みすぎている。
資本の使い方が良くなったのは認めるが、それは特需の現金があったからだ。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分は拮抗するが、特需を除いた実績の弱さを重く見て、確率はやや慎重な側に寄せた。国内の堀は本物で、米国の受注も実績がある。それでも、米国の利益率はまだ証明されていない。中立は特需を除いた姿に置き、強気の側の米国の伸びは、やや楽観に入れた。新紙幣の前の弱い 10 年は、まだ過去の話ではない。米国で利益を伴う受注が続けば、確率を楽観の側へ移す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,296 円198 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 302 円46 億円)。 今の値に割り戻すと 806 円123 億円、今との差 +26.9%、 期待の年率 +9.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 2,427 円370 億円 | 459 円70 億円 | +354.6% | +16.3% | 346 円53 億円 |
| やや楽観 | 23% | 1,733 円264 億円 | 361 円55 億円 | +229.8% | +12.7% | 482 円73 億円 |
| 中立 | 38% | 1,328 円203 億円 | 295 円45 億円 | +155.7% | +9.8% | 617 円94 億円 |
| やや悲観 | 19% | 473 円72 億円 | 230 円35 億円 | +10.6% | +1.0% | 133 円20 億円 |
| 悲観 | 8% | 144 円22 億円 | 98 円15 億円 | −61.8% | −9.2% | 19 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,296 円198 億円 | 302 円46 億円 | +151.6% | +9.7% | 1,598 円244 億円 |
今の株価時価総額 635 円97 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 楽観:決済の切り替えで 1 台あたりが増え、米国は年 1,500 台 利益 21 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 2,427 円370 億円
国内では、現金の運賃が減る代わりに、タッチ決済とバスの位置情報の仕組みが全国に広がる。当社は運賃箱からソフトまで一式で納め、1 台あたりの年間の売上は物価を上回って 1.5 倍になる。路線の減少は 5% にとどまる。
米国では、交通局の更新が各地で続き、年 1,500 台を納める。保守の契約が積み上がり、利益率は 9% に上がる。
営業利益は 30 億円を超え、ROE は 1 割に届く。配当は DOE 3% を上回り、自己株の取得も続く。規模が大きくなれば、決済の会社と組む話も出てくる。
G-SUPPORT のような新しい車載の機器も、自治体に広がる。
- 国内の輸送機器(運賃箱・表示器・IC 機器・灯具):数量 55.1(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 42(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 234 億円・営業利益 22 億円。台数 0.95 倍、1 台あたり 1.50 倍
- 海外の運賃収受(北米が中心):数量 1,500(年間の運賃箱の納入(台))× 価格 504(1 台あたりの売上(保守込み・万円))→ 売上 76 億円・営業利益 7 億円。年 1,500 台、単価 1.40 倍
- 産業機器(電源・充電器・基板の受託):数量 91.2(電源・充電器・基板の出荷(万台))× 価格 0.67(1 台あたりの平均の売上(万円))→ 売上 61 億円・営業利益 3 億円。基板の受託が伸びる
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 16.02 倍、時価総額 347 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内でタッチ決済とシステムが広く入り、米国で年 1,200 台の目標を超える筋書き。米国は北米の 6 事業者・約 2,600 台の実績があるが、1,500 台を利益率 9% で続けた実績はまだ無い。1 割強に置いた。
やや楽観 23% やや楽観:米国の年 1,200 台が定着し、国内は 1 台あたりで補う 利益 15 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 1,733 円264 億円
国内のバスは 1 割減るが、タッチ決済や位置情報の仕組みで 1 台あたりの売上が 1.45 倍になる。運賃箱の改修と保守の契約は続き、国内の利益率は 8% を保つ。
米国は年 1,200 台の受注が定着する。入札の値段は厳しいが、保守の売上が積み上がり、利益率は 7.5% まで戻る。産業機器は基板の受託が伸び、利益率 4% に上がる。
営業利益は 23 億円前後。配当は DOE 3% で増え、自己株もときどき買う。ROE は 8% 前後で、資本コストとほぼ並ぶ。
新紙幣の前の弱い時期より、稼ぐ力は一段上がる。外から見ても、特需が去った後の会社とは思えない姿になる。
- 国内の輸送機器(運賃箱・表示器・IC 機器・灯具):数量 52.2(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 41(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 214 億円・営業利益 17 億円。台数 0.90 倍、1 台あたり 1.45 倍
- 海外の運賃収受(北米が中心):数量 1,200(年間の運賃箱の納入(台))× 価格 493(1 台あたりの売上(保守込み・万円))→ 売上 59 億円・営業利益 4 億円。年 1,200 台、単価 1.37 倍
- 産業機器(電源・充電器・基板の受託):数量 83.6(電源・充電器・基板の出荷(万台))× 価格 0.65(1 台あたりの平均の売上(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 2 億円。数量 1.1 倍、単価 1.30 倍
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 14.79 倍、時価総額 239 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる米国の年 1,200 台と、国内の MoveLe の売上 35 億円が届く筋書き。米国の受注と国内のシステムの導入は実績があり、届く道筋が見えるので 2 割強に置いた。
中立 38% 中立:特需の後の地力。国内は台数減を単価で埋め、営業利益 17 億円 利益 12 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 1,328 円203 億円
国内の路線バスは運転手の不足で 15% 減る。それでも、タッチ決済や位置情報の仕組みで 1 台あたりの売上は 1.40 倍になる。値上げは物価並みで、ソフトの分だけ上に乗る。利益率は 7% で、特需の前の水準より少し上だ。
米国は年 1,000 台前後の受注が続く。入札で値段は削られ、利益率は 6% にとどまる。産業機器は電源から基板の受託へ移り、利益率は 3.5% と薄い。
営業利益は 17 億円前後で、特需の年の半分にとどまる。配当は DOE 3% で払い、純現金は少しずつ積み上がる。ROE は 6% 台で、資本コストをやや下回る。
大きく崩れも、伸びもしない 10 年だ。
- 国内の輸送機器(運賃箱・表示器・IC 機器・灯具):数量 49.3(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 40(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 195 億円・営業利益 14 億円。台数 0.85 倍、1 台あたり 1.40 倍
- 海外の運賃収受(北米が中心):数量 1,000(年間の運賃箱の納入(台))× 価格 482(1 台あたりの売上(保守込み・万円))→ 売上 48 億円・営業利益 3 億円。年 1,000 台、単価 1.34 倍
- 産業機器(電源・充電器・基板の受託):数量 76.0(電源・充電器・基板の出荷(万台))× 価格 0.63(1 台あたりの平均の売上(万円))→ 売上 48 億円・営業利益 2 億円。数量横ばい、単価 1.25 倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 13.71 倍、時価総額 173 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:特需の 2 期を除いた利益の実力に、国内の決済の切り替えと米国の受注の実績を足した姿。バスの減少と 1 台あたりの増加が打ち消し合う。どちらにも決め手が無く、一番厚くした。
やや悲観 19% やや悲観:路線の縮小が速く、米国は採算割れの入札が続く 利益 5 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 473 円72 億円
地方のバス会社の路線の廃止が速まり、国内のバスは 4 分の 1 減る。決済の仕組みはカード会社や IT 企業が主導し、当社は装置を納めるだけになる。1 台あたりの売上は物価に届かず、利益率は 4% に下がる。
米国は、数を守るために値段を下げた入札が続き、利益率は 2% に沈む。産業機器も、受託の値段が厳しく利益はほぼ出ない。
営業利益は 7 億円前後で、新紙幣の前の水準に戻る。配当は DOE の目安を守るが、自己株は止まる。ROE は 3% 前後で、ためた現金は額面ほどの価値を持たない。
新紙幣の特需は、振り返れば一度きりの山だった。
- 国内の輸送機器(運賃箱・表示器・IC 機器・灯具):数量 43.5(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 37(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 160 億円・営業利益 6 億円。台数 0.75 倍、1 台あたり 1.30 倍
- 海外の運賃収受(北米が中心):数量 600(年間の運賃箱の納入(台))× 価格 450(1 台あたりの売上(保守込み・万円))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。年 600 台、単価 1.25 倍
- 産業機器(電源・充電器・基板の受託):数量 68.4(電源・充電器・基板の出荷(万台))× 価格 0.60(1 台あたりの平均の売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。数量 0.9 倍、単価 1.2 倍
倍率:PER 9.0 倍。ROE 3% 弱で k を大きく下回り、上限 12.5 倍の約 7 割。稼ぐ力(純利益÷k)を超えないように置いた。余った現金は 20 億円×0.75(谷で食う分)×0.75 を足す。
確率:新紙幣の前の 10 年に営業利益率が 0〜5% だった実績に戻る筋書き。地方の路線の廃止が速まり、米国で利益の薄い案件が続く。過去の実績に根拠があるので 2 割弱に置いた。
悲観 8% 悲観:運賃箱が汎用の読み取り機に置き換わり、赤字に沈む 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 144 円22 億円
国の後押しでバスの完全なキャッシュレスが進み、運賃箱は汎用のカード読み取り機に置き換わる。読み取り機は海外製の安い品や決済の会社の端末が担い、当社の出番は表示器と保守に縮む。国内のバスも 4 割減る。
米国は採算が合わず、新しい入札から手を引く。産業機器は利益が出ない。
赤字が続き、工場と人員を減らす。手元の現金は赤字と構造改革の費用で減り、配当も減らす。10 年の終わりに残るのは、小さくなった表示器の事業と、減った現金だ。
表示器の事業も、LED の値段の下落で利益は細い。会社の規模は今の半分ほどになり、上場を続ける意味も問われる。
- 国内の輸送機器(運賃箱・表示器・IC 機器・灯具):数量 34.8(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 34(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 118 億円・営業利益 −2 億円。台数 0.60 倍、1 台あたり 1.20 倍
- 海外の運賃収受(北米が中心):数量 200(年間の運賃箱の納入(台))× 価格 432(1 台あたりの売上(保守込み・万円))→ 売上 9 億円・営業利益 −1 億円。撤退に近い縮小
- 産業機器(電源・充電器・基板の受託):数量 60.8(電源・充電器・基板の出荷(万台))× 価格 0.60(1 台あたりの平均の売上(万円))→ 売上 37 億円・営業利益 0 億円。数量 0.8 倍
倍率:PBR 0.2 倍を今の自己資本 110 億円に掛けた。稼ぐ力は赤字で、価値は売れる資産の床で測る。積み上げた自己資本には掛けていない。
確率:現金の運賃がほぼ消え、運賃箱が要らなくなる筋書き。決済の装置は汎用品になり、当社の堀が崩れる。国内の運賃箱には改修と保守の長い稼ぎがあり、10 年で崩れ切るのは考えにくいので 1 割弱に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の輸送機器(運賃箱・表示器・IC 機器・灯具)
路線バスと鉄道向けの運賃箱、運賃表示器、行先表示器、IC カードの読み取り機、改修と保守。トラックの灯具も含む。
| 数量国内の路線バスの台数(千台) | 価格バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 58.0 | 28 | 164 | 11 |
| 10 年後 中立 | 49.3 | 40 | 195 | 14 |
取り方:輸送機器の売上 200.4 億円から海外(全社売上の約 15% のうち輸送機器分として 36 億円)を引いて 164 億円と推定。台数は乗合バスの登録台数の目安 5.8 万台で、鉄道とトラック向けも 1 台あたりに含めた。利益 11.0 億円は輸送機器の利益 11.9 億円を国内と海外に分けた推定(海外は受注損失の引当で薄い)。
海外の運賃収受(北米が中心)
米国子会社が北米の交通局に運賃箱と保守を納める。スウェーデン・タイにも拠点。
| 数量年間の運賃箱の納入(台) | 価格1 台あたりの売上(保守込み・万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 360 | 36 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 482 | 48 | 3 |
取り方:海外売上は全社の約 15%(決算説明会)で 36 億円。OCTA・CAT の 592 台で約 1,300 万ドル(保守込み)から、1 台あたり約 2.2 万ドル(150 円で 330 万円)に保守と付帯を足して 360 万円と置き、台数を 1,000 台と推定。
産業機器(電源・充電器・基板の受託)
フォークリフトの充電器、LED の電源、車載の基板の受託生産。
| 数量電源・充電器・基板の出荷(万台) | 価格1 台あたりの平均の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 76.0 | 0.50 | 38 | 1 |
| 10 年後 中立 | 76.0 | 0.63 | 48 | 2 |
取り方:売上 38.3 億円・利益 1.4 億円は有報ベースの開示。台数の開示は無く、1 台あたり平均 0.5 万円の電源・基板として 76 万台と推定した。
リスクと懸念
特需の反動
2024 年と 2025 年の 3 月期は、新紙幣の改修で営業利益率が 14% に跳ねた。紙幣の変更は 20 年に 1 度で、次は 10 年の中に来ない。特需の後の利益を地力と取り違えると、価値を高く見誤る。
路線バスの減少
地方のバス会社は赤字が多く、運転手の不足で路線の廃止と減便が続く。運賃箱の数はバスの台数に比例し、台数の減りがそのまま売上の下押しになる。
キャッシュレスで運賃箱が要らなくなる
現金の運賃が消えれば、運賃箱は汎用の読み取り機で足りる。決済の主導権がカード会社や IT 企業に移ると、当社は装置を納めるだけの下請けになりかねない。
米国の入札の採算
北米の交通局は入札で選び、値段は厳しい。2026 年 3 月期には戦略的な案件で受注損失の引当金を積んだ。数を取りに行くほど、利益率が薄まるおそれがある。
受注の山谷
大口の案件は年によって偏り、売上と利益が大きく振れる。部品の先買いや納入の遅れで、運転資金が膨らむ年もある。
部品の調達
半導体や電子部品の不足が起きれば、生産が止まり納期が遅れる。2021〜2023 年の 3 月期は、部品不足と需要の落ち込みが重なって利益がほぼ出なかった。
今後の分かれ目
- 米国で年 1,200 台以上の受注が 2 期続き、海外の利益率が 7% を超える
- 米国の中立を年 1,200 台・利益率 7.5% に上げ、やや楽観を中心に見直す。
- 国内でタッチ決済の装置の大口の更新が始まる
- 国内の 1 台あたりの売上を 1.45 倍に上げる。
- 米国で再び受注損失の引当金を積む
- 米国の中立の利益率を 6% から 3% に下げ、やや悲観の確率を上げる。
- 国内の路線バスの台数が年 2% 以上減り続ける
- 中立の台数を 0.85 倍から 0.78 倍に下げる。
- 決済や交通の IT 企業との資本提携や買収の話が出る
- 1 台あたりの稼ぎが上がる道とみて、条件を見て楽観側を厚くする。
- 総還元性向の目標や自己株の取得の枠が数字で示される
- 余った現金の戻り方を 1.0 に上げる。
見ておくもの
- 米国の運賃箱の受注台数と受注残
- 輸送機器のセグメント利益率(特需の前は 0〜7%)
- 国内のバス事業者のキャッシュレス決済の導入
- MoveLe の売上(2030 年度に 35 億円目標)
- 受注損失引当金の有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k(8.0%)から決め、ROE が k を下回る中立は上限 1÷k=12.5 倍の約 84%、ROE が k を超える楽観だけ正当化 PER(約 14 倍)の約 9 割に置いた。今の PER や同業の値付けは見ていない。新紙幣の特需の 2 期は中立の起点に使わず、特需の前後の実績から利益率を置いた。リースは小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→16.02 倍・やや楽観 PER 11.5→14.79 倍・中立 PER 10.5→13.71 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.5% = 8.0%。同じ領域の済み会社は無い。