結論
盟和産業は、自動車のトランクやフロアに敷く樹脂の内装部品をつくる、神奈川県厚木市の会社だ。売上の約6割はトヨタ系で、トヨタ紡織と林テレンプが2大顧客になる。筆者の結論は、今の値段は10年の価値に対して高い、というものだ。
理由は、資産の大きさと稼ぐ力の差にある。自己資本は121億円あるのに、営業利益は4億円弱で、ROEは1%に届かない。営業利益率は過去30年でも最高4.6%で、薄さが構造になっている。純現金は3億円ほどで、余った現金は無い。
配当は年1.75億円の水準を保ち、今期の純利益0.8億円を大きく上回る。続けるには利益が3億円台に戻る必要があり、戻らなければ減配の圧力が強まる。
親会社はなく、持ち株は分散している。余った現金を戻す圧力も、買収の動きも、今は見えない。見どころは、会社予想の営業利益5.2億円に届くか、中国子会社の損失が止まるかだ。この二つが動けば、配当は利益から払える形に近づく。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安い資産、薄い利益」だ。
財務は堅い。借入はあるが純現金で、自己資本比率は5割を超え、土地も帳簿で25億円ある。資産の面で守りは厚い。
問題は、資産に比べて稼ぎが小さいことだ。自己資本121億円で営業利益は4億円弱。10年の中立でもROEは4%にとどまり、資本コストに届かない。ためた利益は額面より小さい価値しかない。
事業の経済性も強くはない。内装の部品は技術の壁が低く、顧客が値段を決める。トヨタ系という安定した顧客が付いている反面、値下げ要請を跳ね返す力は無い。
筆者は、PBRが0.3倍台にある点を割安の根拠にしない。資産が利益を生まない限り、資産の厚みは価値を押し上げない。安全域は、悲観側の床にだけ残る。利益が会社予想まで戻れば話は変わるが、それは10年の筋書きの中で確率をつけて見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、自動車の内装に使う樹脂の部品だ。トランクの床と側面、フロアの敷き物、シートの背面、天井まわりが中心で、売上の91%を占める。残り9%は住宅の設備資材と内装資材で、こちらも樹脂を使う。
売る相手は完成車メーカーではなく、内装を組み上げる大手だ。トヨタ紡織が売上の15%、林テレンプが12%を占め、トヨタ系全体では58%になる。日産車体や日産自動車の内装にも使われている。
工場は国内が長野県、山梨県、岐阜県の3か所。海外は中国の大連と佛山、米国テネシー州、タイの4極で、いずれも100%子会社だ。メキシコには取引のない非連結子会社がある。
従業員は連結で約370人、提出会社の平均年収は660万円ほどになる。設備投資は10億円で、生産設備と型・治具が中心だ。研究開発費は連結で0.3億円と小さく、独自技術より受注した部品を安く作る力が売りの会社だ。内装の部品は車種ごとに型を起こして受注を取る商売で、一度受注すれば数年は納め続けるが、車種が終われば仕事も終わる。型や治具の費用は先に出て、量産が始まってから回収する。
優良さと弱いところ
優良さは「堅実だが利益が薄い下請け」と見る。強みは財務の堅さと、顧客との長い取引だ。自己資本比率は53%で、純現金があり、借入金の返済に困る水準ではない。トヨタ系の内装の大手とは長く付き合い、受注した車種は数年にわたって納め続ける。
弱みは三つある。一つ目は、営業利益率の低さだ。過去30年の最高が4.6%で、直近は1.6%。二つ目は、顧客の集中だ。トヨタ系が58%を占め、値下げ要請を断る力は弱い。三つ目は、赤字の多さだ。過去20年で6期が赤字で、利払いの3倍ほどしか営業利益がない。
経営は中期計画で純利益9億円を掲げるが、実績は0.8億円で、距離が大きい。配当は利益を超えて払う姿勢で、少数株主には有利だが、続けられるかは別の話だ。親会社はなく、ガバナンスの縛りは弱い。社外の目が届きにくい点は、資本の使い方の改善が遅れる要因にもなる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車の内装部品は、完成車の生産台数に連動する。台数が増えれば数量が増え、車種が入れ替わるたびに受注を取り直す。価格は顧客が主導権を持ち、毎年の値下げ要請が続く。
電動化の影響は小さい。トランクやフロアの内装は、エンジン車でも電気自動車でも要る。電池を床下に積む車では床の形が変わり、新しい部品の受注機会が生まれる可能性もある。ただ、これは筆者の見方で、会社は電動化に関する具体的な数字を出していない。
値下げ要請は強まる方向にある。電気自動車は部品点数が減り、部品会社の売上の元が細りやすい。内装は点数が変わらないぶん影響が小さいが、同じ部品を安く作る競争は厳しくなる。
原料の樹脂は原油に連動する。値上がりを価格に反映するのが遅れ、利益を一時的に削る。
中国では日系車の販売が伸び悩み、大連・佛山の子会社の稼働に響く。国内の競合は、トヨタ紡織自身の内製や、豊田合成などのトヨタ系の内装会社だ。トヨタ系が部品の調達先を絞る動きは、2次の部品会社には脅威になる。一方で、軽量化のために金属から樹脂に替える流れは、内装の樹脂部品には追い風になる。
資本政策と M&A
資本政策の特徴は、配当を利益より優先している点だ。配当総額は年1.75億円を保ち、今期の配当性向は225%になる。自社株買いはなく、優待もない。
現金は47億円、有利子負債は50億円で、純現金は3億円ほど。売上の約2.4か月分の現金は運転資金に使われ、余った現金は無い。分けて足す額はない。
親会社はなく、筆頭株主は太陽生命の6%。樹脂の仕入先であるプライムポリマーと三井物産プラスチックが各2〜3%を持つ。持ち合いは上場株17銘柄で約7億円、非上場株は約5億円。
融資枠40億円には財務制限条項があり、営業損失を2期続けないことが条件になる。買収の確率は、10年で2割強と試算されている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
資産の厚みと、顧客の安定が両方ある。自己資本は121億円、PBRは0.3倍台で、土地と上場株を含む資産だけでも時価総額に近い。純現金があり、借入に困らない。
事業は電動化に強い。トランクやフロアの内装は、電気自動車でも要る。電池を床下に積む車では、新しい形の床部品を受注する機会もある。会社の純現金は小さいが、借入には困らない。
利益は戻る余地が大きい。今期の純利益0.8億円は、中国子会社の在庫評価損など一時的な費用で押された形だ。会社予想の営業利益5.2億円、純利益3.2億円に戻れば、今の配当を利益から払える。中期計画の純利益9億円に近づけば、価値は大きく上がる。
北米とタイの工場が稼働率を上げれば、トヨタ系の新しい車種の内装を取りこめる。分散した株主構成なので、資本効率の改善を求める圧力が強まれば、還元が増える余地もある。純現金と政策保有株の売却余地があり、資産の使い道を変えれば、1株あたりの価値は目に見えて動く。
慎重な見方
稼ぐ力が資産に比べて小さすぎる。営業利益率は過去30年でも最高4.6%で、直近は1.6%。自己資本121億円に対するROEは1%に届かず、10年の中立でも4%にとどまる。資産が厚いことは、利益が薄いことの裏返しでもある。
顧客はトヨタ系が58%。値下げ要請を断れず、樹脂が値上がりしても価格に反映するのが遅れる。過去20年で赤字は6期あり、利払いの3倍ほどしか営業利益がない。
配当は利益を大きく超える。今期の配当性向は225%で、続けるには純利益が3億円台に戻る必要がある。戻らなければ減配になり、株価を支える材料が無くなる。
融資枠の財務制限条項は、営業損失を2期続けないことを求める。赤字が続けば、資金繰りに響く。中国の日系車の失速も、子会社の損失として表に出ている。今期は中国の評価損とリファイナンス費用だけで、純利益が8割減った。この状況でトヨタ系の値下げ要請が強まれば、改善の見込みは立てにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。資産の厚みは本物だが、価値を決めるのは稼ぐ力で、それは資本コストに届かない。電動化の影響が小さい点は強気の見方を取り入れ、悲観の確率は4割台半ばにとどめた。ただし、強気の見方が頼る利益の戻りは、まだ数字で確認できていない。確認できるまでは、慎重な見方を少し重く置くのが筋だと考えた。結果は、今の値段を下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,612 円56 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 446 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 1,009 円35 億円、今との差 −12.5%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 3,430 円120 億円 | 857 円30 億円 | +271.8% | +14.0% | 214 円8 億円 |
| やや楽観 | 15% | 2,589 円91 億円 | 686 円24 億円 | +184.1% | +11.0% | 491 円17 億円 |
| 中立 | 34% | 1,849 円65 億円 | 572 円20 億円 | +110.0% | +7.7% | 823 円29 億円 |
| やや悲観 | 31% | 946 円33 億円 | 286 円10 億円 | +6.8% | +0.7% | 382 円13 億円 |
| 悲観 | 15% | 866 円30 億円 | 114 円4 億円 | −15.0% | −1.6% | 147 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,612 円56 億円 | 446 円16 億円 | +78.5% | +6.0% | 2,058 円72 億円 |
今の株価時価総額 1,153 円40 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 会社の計画に近づき、利益率が3%台に乗る 利益 10 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,430 円120 億円
北米とタイの工場が稼働率を上げ、トヨタ系の新しい車種の内装を取りこむ。数量は1割強増え、単価は取引採算の改善が効いて物価に近い速さで上がる。
営業利益率は自動車で3.6%、全体で3.7%まで上がる。一貫生産と原価改善が定着し、値下げ要請を吸収する形だ。
配当は利益に合わせて増え、株主還元は厚くなる。この筋書きは、北米・タイの稼働、原価改善、受注の拡大の3つが同時にうまく動いた場合にしか成り立たない。ただし、ROEは6%にとどまり、資本コストに届かない。資本が重いこと自体は変わらない。楽観でも、ためた資産が利益を生む力は弱いままだ。
- 自動車内装部品(トランク・フロア・シート・ルーフ):数量 146(納入部品の車1台相当数(万台相当、推定))× 価格 2.13(1台相当あたり売上(億円/万台相当、名目))→ 売上 311 億円・営業利益 11 億円。営業利益率3.6%
- 住宅資材ほか(住宅設備資材・建築内装資材):数量 43.0(資材の出荷面積(万㎡相当、推定))× 価格 0.72(1万㎡あたり売上(億円/万㎡、名目))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 120 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中期計画(最終年度の純利益9億円)を超えて伸び続ける必要がある。営業利益率は過去30年でも最高4.6%で、この水準の維持は実績に乏しく5%に置いた。
やや楽観 15% 原価改善が進み、利益率が3%近くまで戻る 利益 8 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,589 円91 億円
数量は7%増える。北米の稼働が上がり、国内は横ばい。単価は物価の伸びの8割ほどで、10年で1.28倍になる。
営業利益率は自動車で2.9%。中国子会社の在庫評価損のような一時的な費用が出ず、取引採算の見直しが効く。
配当は今の水準を保ちつつ、利益の伸びに合わせて少しずつ増える。会社が掲げる9億円の純利益には届かないが、予想の3億円は上回る。中国子会社の損失が止まる前提で、国内は受注を守る形だ。トヨタ系の新しい車種の内装も一部で受注し、稼働率が少しずつ上がる。自己資本は155億円まで積み上がる。ROEは5%で、資本コストには届かない。
- 自動車内装部品(トランク・フロア・シート・ルーフ):数量 139(納入部品の車1台相当数(万台相当、推定))× 価格 2.07(1台相当あたり売上(億円/万台相当、名目))→ 売上 287 億円・営業利益 8 億円。営業利益率2.9%
- 住宅資材ほか(住宅設備資材・建築内装資材):数量 41.0(資材の出荷面積(万㎡相当、推定))× 価格 0.70(1万㎡あたり売上(億円/万㎡、名目))→ 売上 29 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 91 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の営業利益率は1.6%で、会社予想は2.1%。これを超えて3%近くまで戻るには、取引採算の改善が着実に進む必要があり、15%に置いた。
中立 34% 会社予想の2%台を保ち、数量は微増 利益 6 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,849 円65 億円
稼ぎの形は今と同じ。トヨタ紡織や林テレンプに内装部品を納め、数量は5%増える。国内は横ばいで、北米とタイが少し伸びる。単価は値下げ要請を吸収するため物価の7割ほどしか上がらず、10年で1.24倍になる。
営業利益率は自動車で2.1%、全体で2.4%。足元の1.6%から会社予想の水準へ戻る。
配当は今の水準を保つ。今の延長線上の姿で、大きな成功も大きな失敗も置かない。海外の拠点は稼働を保ち、国内は受注の入れ替わりを乗り切る。純利益が3億円台になれば配当性向は5割台で、利益から払える形になる。自己資本は145億円まで増える。
- 自動車内装部品(トランク・フロア・シート・ルーフ):数量 137(納入部品の車1台相当数(万台相当、推定))× 価格 2.00(1台相当あたり売上(億円/万台相当、名目))→ 売上 274 億円・営業利益 6 億円。営業利益率2.1%
- 住宅資材ほか(住宅設備資材・建築内装資材):数量 41.0(資材の出荷面積(万㎡相当、推定))× 価格 0.68(1万㎡あたり売上(億円/万㎡、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。営業利益率4.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 65 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想は営業利益率2.1〜2.2%。過去の中央値の1%台前半より高く、10年かけてそこまで戻る形を中立に置いた。トヨタ系への依存で値下げ要請が続くので、これ以上は置かない。10年の価格が物価に届かないのは、毎年の値下げ要請を原価改善で吸収しても、価格に残るのが物価の7割ほどだからだ。
やや悲観 31% 値下げ要請と中国の縮小で、利益率が1%を割る 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 946 円33 億円
数量は3%減る。中国の大連・佛山の子会社は日系車の販売減で稼働が落ち、国内も車種の入れ替わりで受注を失う。単価は値下げ要請が重く、物価の伸びの半分ほどで1.17倍にとどまる。
営業利益率は自動車で0.9%まで下がる。樹脂の値上がりを価格に転嫁するのが遅れ、固定費の重さが残る。国内3工場の稼働が下がり、一貫生産の強みも活きない。
配当は今の6割ほどに下がる。融資枠の財務制限条項(営業損失を2期続けない)を避けるため、設備投資も絞る。更新を先送りした設備は古くなり、原価の改善が遅れるという悪循環に入る。
- 自動車内装部品(トランク・フロア・シート・ルーフ):数量 126(納入部品の車1台相当数(万台相当、推定))× 価格 1.89(1台相当あたり売上(億円/万台相当、名目))→ 売上 238 億円・営業利益 2 億円。営業利益率0.9%
- 住宅資材ほか(住宅設備資材・建築内装資材):数量 39.0(資材の出荷面積(万㎡相当、推定))× 価格 0.65(1万㎡あたり売上(億円/万㎡、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。営業利益率2.5%
倍率:稼ぐ力は純利益2.2億円で、kで割っても約25億円。床は売れる資産の税後を使う。今の自己資本121億円に0.30倍を置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.273 倍・時価総額 33 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:過去20年で赤字は6期あり、営業利益率が1%を割る年は珍しくない。トヨタ系の値下げ要請が強まり、中国の日系車が苦戦する姿を3割に置いた。
悲観 15% トヨタ系の内製化と値崩れで、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 866 円30 億円
数量は12%減る。トヨタ系の主要顧客が自社工場に内製を戻し、国内の受注が細る。中国の子会社は日系車の失速で赤字が続き、減損が出る。単価は値下げ要請で1.10倍しか上がらず、物価に負ける。
営業利益は赤字になり、融資枠の財務制限条項(営業損失を2期続けない)に触れる恐れが出る。工場の統合と人員の整理に追い込まれる。内装の仕事を失った工場は、他の用途に転用しにくい。
価値の拠りどころは売れる資産になる。純現金、土地、上場株が中身だが、これらを売って株主に戻す動機は経営にない。この場合、配当は大きく減り、株価は資産価値を意識した水準まで下がる。
- 自動車内装部品(トランク・フロア・シート・ルーフ):数量 114(納入部品の車1台相当数(万台相当、推定))× 価格 1.77(1台相当あたり売上(億円/万台相当、名目))→ 売上 202 億円・営業利益 −3 億円。営業利益率-1.5%
- 住宅資材ほか(住宅設備資材・建築内装資材):数量 36.0(資材の出荷面積(万㎡相当、推定))× 価格 0.63(1万㎡あたり売上(億円/万㎡、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 0 億円。営業利益率1.5%
倍率:赤字で稼ぐ力はない。床は売れる資産の税後で、今の自己資本121億円に0.25倍を置いた。
確率:大口のトヨタ紡織が内製を増やすか、値下げ要請が構造的に続く姿。営業損失を2期続けると融資枠の条項に触れる。過去20年で赤字6期の実績から、15%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車内装部品(トランク・フロア・シート・ルーフ)
トヨタ紡織や林テレンプなど、内装を組み上げる大手に納める樹脂の内装部品。トランクまわり、フロア、シートの背面、天井まわりが中心。
| 数量納入部品の車1台相当数(万台相当、推定) | 価格1台相当あたり売上(億円/万台相当、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 130 | 1.61 | 210 | 3 |
| 10 年後 中立 | 137 | 2.00 | 274 | 6 |
取り方:開示された自動車部品の売上209.7億円。車1台相当の数は、1台あたり約1.6万円の部品を納めると置いた推定で、開示ではない。セグメント利益は非開示で、全体の営業利益3.7億円を自動車2.9億円・住宅0.8億円に分けたのも推定。
住宅資材ほか(住宅設備資材・建築内装資材)
住宅の設備まわりと内装に使う樹脂の資材。ほかに大連の発泡梱包材がごくわずかある。
| 数量資材の出荷面積(万㎡相当、推定) | 価格1万㎡あたり売上(億円/万㎡、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.52 | 21 | 1 |
| 10 年後 中立 | 41.0 | 0.68 | 28 | 1 |
取り方:住宅20.8億円とその他0.01億円の合計。出荷面積は1㎡あたり約5千円の資材と置いた推定で、開示ではない。利益は全体の営業利益からの按分で、開示ではない。
リスクと懸念
トヨタ系への依存
トヨタ紡織が売上の15%、林テレンプが12%、トヨタ系全体で58%を占める。値下げ要請を断る力は弱く、顧客が内製を増やせば受注が一気に動く。
薄い利益と赤字の多さ
営業利益率は直近1.6%、過去30年でも最高4.6%。過去20年で赤字は6期あり、2021年3月期と2024年3月期は営業損失になった。利益の薄さは構造的で、少しの原価上昇で赤字に落ちる。
樹脂の価格転嫁の遅れ
主原料のプラスチック樹脂は原油に連動する。値上がりを価格に反映するのが遅れ、利益を一時的に削る。値下げ要請と同時に来ると、利益が消える。
中国子会社の損失
大連・佛山の子会社は日系車の販売に頼る。2026年3月期は中国子会社の棚卸資産の評価損が0.7億円出た。日系車の失速が続けば、減損が出る可能性がある。
融資枠の財務制限条項
40億円の融資枠には、営業損失を2期連続にしないことと、純資産の維持が条件に付く。赤字が続けば資金繰りに響く。営業利益は利払いの3倍ほどしかなく、余裕は大きくない。
配当を続けられるか
配当は総額約1.75億円。今期の純利益0.8億円を大きく上回り、配当性向は225%になる。会社予想の純利益3.2億円に届かなければ、減配の圧力が強まる。
今後の分かれ目
- 営業利益が会社予想の5.2億円に届き、中国子会社の損失が止まったら
- 営業利益率を引き上げ、中立から楽観側へ確率を移す。
- トヨタ紡織が内製を増やす、または主要車種の受注を失ったら
- 数量を引き下げ、悲観側へ確率を寄せる。
- 営業損失が2期続き、融資枠の条項に触れる恐れが出たら
- 悲観の確率を引き上げ、床の水準を見直す。
- 北米・タイ工場の稼働率が上がり、海外の利益が積み上がったら
- 数量の伸びを上げ、中立の売上を引き上げる。
- 政策保有株の売却や自社株買いなど、資本の使い方を変える方針が出たら
- 余った資産の戻り方を見直し、価値を引き上げる。
見ておくもの
- 営業利益と営業利益率(会社予想の5.2億円)
- トヨタ系の受注と内製の動き
- 中国子会社の損益と評価損
- 樹脂価格と価格転嫁の速さ
- 配当性向(今の配当を利益から払えるか)
- 融資枠の財務制限条項
倍率と資本コストの決め方
倍率は式の上限(ROE が k 以下なので 1÷k=11.4 倍)の7〜8割に置き、今の株価や同業の PER・PBR は使っていない。悲観側は純現金と売れる資産の税後を、今の自己資本に掛けた。土地の時価は開示がなく、帳簿を使った。純現金は運転資金と設備投資に使うので、余った現金としては分けなかった。セグメント利益は非開示のため、自動車と住宅の利益の配分は推定で、全体の営業利益には合わせてある。結果は今の値段を下回ったが、計算を株価に寄せる調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.76 倍・やや楽観 PER 9→11.76 倍・中立 PER 8.6→11.76 倍・やや悲観 PBR 0.3→0.273 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.25% を足した8.75%。値下げ要請や中国の縮小は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。