結論
エイケン工業は、自動車の補修用フィルターに特化した静岡県御前崎市の会社だ。VIC ブランドで、整備工場やカー用品店に卸す。売上の約 96% がフィルターで、約 4% がガスバーナーなどの燃焼機器である。筆者の結論は、10 年の価値は今の時価総額をやや下回るというものだ。いちばんの理由は、電動化でフィルターの需要が長く細ること。
財務は堅い。自己資本比率は 78%、純現金は 7 億円ある。営業利益率は過去 12 年のうち 8 期で 5% を超え、赤字の期もない。ただ、売上の 45% が卸大手のユニオンモーター 1 社で、価格交渉では不利だ。
電動化の影響は、10 年ではまだ限られる。ガソリン車とハイブリッド車にはフィルターが要り、日本の保有車は高齢化している。ただ、その先は読めない。2026 年 10 月期は上期の売上が前年を下回り、会社予想の経常利益も 5% 減だ。筆者は、堅実さは評価するが、長く細る事業の会社に高い値段は払えないと考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味だが堅実な、減っていく事業の会社」と見る。補修用フィルターは、景気に強い。しかし、電動化が進むほど、市場は小さくなる。株主にとっては、利益が出る間に現金を戻してもらう会社だ。
純現金があり、赤字もない。安全域は厚い。ただ、利益は 3 億円台と小さく、時価総額は自己資本の 55% ほど。資本効率の低さは、今後も続く。
経営は堅実で、投資は控えめだ。電動化に備える新規事業や M&A は、まだ具体的な成果が見えない。わからない部分が大きいぶん、確信度は低く置く。筆者は、安全域は財務にあり、事業の将来にはないと見る。配当は続いているが、自社株買いなど資本を積極的に使う動きは見えない。オーナーとして持つなら、利益が出る間に株主へ戻してもらうことを期待する会社だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、補修用の自動車フィルターだ。エンジンオイル、燃料、エアの 3 種類が主力。車は使うほどに劣化するので、オイルフィルターは車検や点検のたびに交換する。補修用は、新車の純正品と違い、景気の波が小さい。
販路は卸が中心だ。最大の取引先はユニオンモーターで、売上の 45.1%(前期 36.9%)。次が日発販売の 11.3%。2 社で売上の 5 割を超える。自社の価格決定は、この 2 社との交渉に左右される。
燃焼機器は、ガスバーナーや業務用厨房の熱源で、売上の約 4%。規模は小さいが、フィルターの景気とは別の需要で動く。従業員は約 250 人で、生産は御前崎の工場で行う。2025 年 10 月期は設備投資に約 3 億円を使い、翌期には濾紙を折る機械の更新も予定している。研究開発費は年 0.3 億円ほどで、製品の新規開発には控えめだ。売上は 2025 年 10 月期に 81 億円で、前期比 11% 増えた。値上げの浸透と、ユニオンモーター向けの増加が主な理由だ。2026 年 10 月期の上期は 37.2 億円と、前年同期の 39.1 億円から減った。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、VIC ブランドの品揃えと、整備工場・カー用品店への長い取引だ。補修用は車種が多く、揃える手間が参入障壁になる。ただ、フィルターそのものは技術の差が出にくい。海外の安価な製品との競争が強まっている。
収益は安定している。営業利益率は 12 年で 2〜9% の間を動き、赤字の期はない。直近 3 期は 2〜5% と低く、原材料と賃金の上昇を価格に移すのが遅れた。
財務は強い。自己資本比率 78%、純現金 7 億円。堅実だが、投資は控えめで、資本の使い方は保守的だ。設備投資は濾紙折り機など、更新が中心である。経営は新製品の開発や M&A に慎重で、利益が出ても事業の入れ替えには動いていない。電動化への備えは、情報収集と新規事業の開拓にとどまる。経営は堅実だが、変化への備えが遅い点は弱みだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車フィルターの補修用市場は、保有台数と車の使用年数で決まる。日本の保有車は約 8,000 万台で、人口減とともに微減する。一方で、平均使用年数が延びて、修理・交換の需要は底堅い。
電動化の影響は、保有車の入れ替わりが遅いため、ゆっくり出る。純電気自動車は、オイルフィルターもエアフィルターも不要だ。会社も有価証券報告書で、次世代車の普及による需要減少をリスクに挙げている。ハイブリッド車には要るので、10 年後でも大半の保有車はフィルターを使う。
競合は、大手自動車部品メーカーの補修用部門と、海外の安価な製品だ。卸の再編で、大手への依存はむしろ高まっている。
輸出は拡大が課題で、会社の戦略に挙げられている。国内でも、国産車の補修部品の需要は、新車の販売より遅れて動く。車を長く使う人が増えることは、補修用の追い風になる。
一方、整備工場の数は減る傾向にあるとされる。卸と整備工場の統廃合は、補修用フィルターの販路を少しずつ狭める。部品の輸入が増えるなかで、国内メーカーの存在感は、品質と納期の確かさで保たれている。
資本政策と M&A
還元は安定的で、配当を年 1 回出す。総額は約 1.1 億円で、純利益の 3 割強。自社株買いの記載はない。配当は 2021 年 10 月期から減額され、その後は据え置きだ。
筆頭株主は育実企画で、約 14.6%。創業家に近い個人の株主も並ぶ。親会社はない。上場株式 92 銘柄(約 2.5 億円)と非上場株式(約 1.2 億円)を持つ。
余った現金は、純現金 7 億円のうち運転に要る分を除いた 4 億円とみる。戻り方は 0.75 と見る。配当はあるが、自社株買いの実績がなく、保有株も抱えるためだ。M&A は新規事業の探索で触れている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
補修用フィルターは、景気の波が小さく、赤字の期がない。日本の保有車は高齢化して、使用年数が延びており、修理・交換の需要は底堅い。ハイブリッド車にも、オイルとエアのフィルターは要る。純電気自動車が保有車の大半を占めるのは、10 年以上先のことだ。
財務は強い。自己資本比率は 78%、純現金は 7 億円。時価総額は自己資本の 55% ほどで、純現金と保有株だけで時価総額の 3 割強を占める。利益の戻りがあれば、割安に見える。
輸出の拡大と、新製品・M&A による多角化が進めば、利益率は 6〜8% に戻る。会社は電動化への対応として、新規事業の開拓を掲げている。補修用の堅実な利益を土台に、時間をかけて事業を足していける。配当を出し続ける体力もある。営業利益率は 2023 年 10 月期の 1.7% を底に、2025 年 10 月期は 5.1% まで戻った。値上げが通り始めた証拠で、売上と利益率の回復が続けば、利益は今の 1.5 倍になりうる。
慎重な見方
売上の 45% が卸大手 1 社で、値決めの力は弱い。前期は 36.9% だったので、依存はむしろ高まっている。原材料と賃金が上がっても、価格に移すのが遅れ、直近 3 期の営業利益率は 2〜5% に落ちた。
電動化で、フィルターの需要は長く細る。会社自身が、次世代車では自動車用フィルターが不要になる可能性をリスクに書いている。他の事業は売上の 4% しかない。
海外の安価な製品も競合だ。巨大地震が起きれば、御前崎の工場の被害は大きい。財務が強くても、利益が小さいまま続けば、自己資本は有効に使われない。配当を出すだけでは、時価総額は自己資本に近づかない。2026 年 10 月期は、上期の売上が前年を下回り、会社予想も経常利益 5% 減だ。回復は一時的だった可能性が高い。保有株は上場 92 銘柄と多く、資本の使い方として効率が悪い。電動化は 10 年で終わらず、その先に需要の縮みが続く。会社の研究開発費は年 0.3 億円ほどと小さく、電動化に向けた新製品を生む力は乏しい。
どちらに重みを置いたか
補修用の底堅さと財務の強さは認めるが、電動化で長く需要が細り、売上の 45% が卸大手 1 社に偏るため、確率は中立を最も重く、やや悲観を厚めに置いた。楽観とやや楽観を合わせて 25%、やや悲観と悲観を合わせて 37% を置いた。純現金と保有株はあるが、戻り方は 0.75 とみて、そのまま時価総額には足していない。慎重な見方がやや強い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 4,842 円50 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,026 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 2,882 円30 億円、今との差 −7.2%、 期待の年率 +6.6%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 9,891 円102 億円 | 2,429 円25 億円 | +296.8% | +14.8% | 862 円9 億円 |
| やや楽観 | 18% | 7,275 円75 億円 | 1,652 円17 億円 | +187.5% | +11.1% | 1,607 円17 億円 |
| 中立 | 38% | 5,382 円55 億円 | 1,215 円13 億円 | +112.5% | +7.8% | 2,507 円26 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,332 円24 億円 | 389 円4 億円 | −12.4% | −1.3% | 680 円7 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,768 円18 億円 | 0 円0 億円 | −43.0% | −5.5% | 212 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,842 円50 億円 | 1,026 円11 億円 | +89.0% | +6.6% | 5,868 円60 億円 |
今の株価時価総額 3,105 円32 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:輸出が伸び、電動車向けにも使える製品を足して利益率は 8% 利益 8 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 9,891 円102 億円
輸出拡大が軌道に乗り、フィルターの出荷は今の 1.15 倍になる。国内の補修用は車の平均使用年数が延びて底堅く、ハイブリッド車の整備需要も残る。単価はブランドと品質で物価をやや上回る。会社が戦略に挙げる輸出と国内の拡販が、そろって実を結ぶ姿だ。ただ、国内の保有台数の減少は避けられず、輸出の比率を 1 割以上に高めることが条件になる。
新規事業と M&A で、電動車にも使える製品が加わる。生産の効率化で、利益率は 8% に戻る。
営業利益は 10 億円ほど。純利益は 8 億円前後になる。純現金も積み上がるが、還元は純利益の 3 割強にとどまる。
- フィルター(自動車用):数量 1,495(出荷本数(万本))× 価格 0.08(1 本あたり売上(万円))→ 売上 124 億円・営業利益 10 億円。出荷 1.15 倍、価格 1.38 倍
- 燃焼機器:数量 2.4(出荷台数(万台相当))× 価格 2.80(1 台あたり売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。出荷 1.5 倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.0% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 12.59 倍、時価総額 102 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:輸出拡大と新製品が実り、利益率が過去の山(8% 台)に戻る筋書き。電動化の影響を、補修用の底堅さと新規事業で埋める。確率は低く置く。
やや楽観 18% やや楽観:補修用が底堅く、輸出が小さく伸びて利益率は 6% 台 利益 6 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 7,275 円75 億円
フィルターの出荷は今の 1.03 倍。日本の保有車は高齢化して、補修用の需要は長く続く。ハイブリッド車でもオイルとエアのフィルターは要る。単価は物価に近い 1.34 倍で、原材料の上昇も転嫁できる。
燃焼機器は小さく伸びて、わずかな黒字になる。輸出の売上も増えるが、卸大手への依存は変わらない。
営業利益は 7 億円ほどで、利益率は 6% 台。純利益は 6 億円弱になる。還元は純利益の 3 割強で、配当を少しずつ増やす姿だ。電動化の影響は、10 年のうちには本格的に出ない。卸大手との取引条件は今のままで、依存の高さも残る。
- フィルター(自動車用):数量 1,339(出荷本数(万本))× 価格 0.08(1 本あたり売上(万円))→ 売上 108 億円・営業利益 7 億円。出荷 1.03 倍、価格 1.34 倍
- 燃焼機器:数量 1.9(出荷台数(万台相当))× 価格 2.70(1 台あたり売上(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。出荷 1.2 倍
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 71 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の補修用が保有台数の高齢化で底堅く、輸出が小さく伸びる筋書き。電動化の影響は 10 年ではまだ小さい。
中立 38% 中立:国内の補修用は緩やかに減り、輸出が支える。利益率は 5% 前後 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,382 円55 億円
フィルターの出荷は 10 年で 5% 減る。純電気自動車が保有車に占める割合は、10 年後でも 1 割に届かず、ガソリン車とハイブリッド車にはまだフィルターが要る。ただ、人口減で保有台数が減る。輸出はそれを一部補う。単価は 10 年 1.30 倍。卸大手の値下げ要請で、物価には届かない。
燃焼機器は横ばいで、小さな黒字を保つ。
営業利益は 5 億円ほど、利益率は 5% 前後。過去 12 年の中央値(6.7%)より低く、直近 3 期の平均(約 3.5%)より高い。純利益は 4 億円弱、還元は純利益の 3 割強だ。
- フィルター(自動車用):数量 1,235(出荷本数(万本))× 価格 0.08(1 本あたり売上(万円))→ 売上 96 億円・営業利益 5 億円。出荷 0.95 倍、価格 1.30 倍
- 燃焼機器:数量 1.6(出荷台数(万台相当))× 価格 2.68(1 台あたり売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 50 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動車は増えるが、10 年後の日本の保有車は大半がガソリン車とハイブリッド車のまま。補修用の需要は 5% ほど減り、輸出が補う。最も重く置く。
やや悲観 25% やや悲観:電動車が増えて需要が 2 割減り、卸大手の値下げも続く 利益 2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 2,332 円24 億円
フィルターの出荷は今の 8 割に減る。電動車が増えて、オイルフィルターの需要が細る。エアフィルターもハイブリッド以外は減る。単価は卸大手の値下げ要請で、物価の 6 割ほどしか上がらない。
工場の稼働が落ち、固定費が重くなって、営業利益率は 2% 台に下がる。燃焼機器は赤字が続く。卸大手がさらに値下げを求め、利益を削る。保有株の評価額も下がり、純現金の積み上がりも鈍る。新規事業は成果が出ず、投資の余力が減る。
営業利益は 2 億円弱で、純利益は 2 億円ほど。事業の稼ぐ力は小さく、価値は売れる資産の側が決める。
- フィルター(自動車用):数量 1,040(出荷本数(万本))× 価格 0.07(1 本あたり売上(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 2 億円。出荷 0.8 倍、価格 1.20 倍
- 燃焼機器:数量 1.4(出荷台数(万台相当))× 価格 2.40(1 台あたり売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.9 倍、赤字
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)は 24 億円弱で、売れる資産の税後と並ぶ。今の自己資本に 0.40 倍を掛けた(内訳は floor_assets_why)。
確率:電動車の普及が速く、中古車の輸出も進んで、国内の保有車が減る筋書き。売上の 45% を占めるユニオンモーターが値下げを求め、利益率が 2% 台に下がる。
悲観 12% 悲観:電動化と輸入品に挟まれ、構造的に赤字になる 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,768 円18 億円
フィルターの出荷は今の 55% に減る。電動車が急に増えて、補修用の需要が半減に近づく。輸入の安価な製品が卸で選ばれ、単価も物価に届かない。
固定費の重い御前崎の工場は稼働が落ちる。巨大地震のリスクもある。営業利益は赤字になる。設備の更新を先送りして、さらに競争力を失う。新規事業は成果が出ず、保有株の売却で当座をしのぐ。会社の規模では、再建の選択肢は限られる。営業損失と減損が重なり、純現金は大きく減る。
営業損失は 1 億円強。純損失は 1 億円ほどで、受取利息の分だけ小さい。配当は止まり、株主の取り分は売れる資産の一部にとどまる。
- フィルター(自動車用):数量 715(出荷本数(万本))× 価格 0.07(1 本あたり売上(万円))→ 売上 47 億円・営業利益 −1 億円。出荷 0.55 倍、赤字
- 燃焼機器:数量 1.3(出荷台数(万台相当))× 価格 2.20(1 台あたり売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.8 倍
倍率:赤字で PER は使えない。稼ぐ力はなく、売れる資産の税後(約 18 億円)まで。今の自己資本に 0.3 倍を掛けた。
確率:電動化が急に進み、海外の安いフィルターが補修用に入り込む筋書き。卸大手も仕入先を替え、固定費を落としきれない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
フィルター(自動車用)
エンジンオイル・燃料・エアのフィルター。主力は整備工場やカー用品店向けの補修用で、VIC ブランド。建設・農業機械用の特殊フィルターも作る。売上の約 96%。
| 数量出荷本数(万本) | 価格1 本あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 1,300 | 0.06 | 78 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,235 | 0.08 | 96 | 5 |
取り方:有報でフィルター部門は売上の約 96%(約 78 億円)。出荷本数は非開示のため、補修用の卸値を 1 本 0.06 万円前後と見て約 1,300 万本とした(推定)。営業利益 4.1 億円はほぼフィルターの稼ぎで、約 4.2 億円(利益率 5.4%)と推定。価格は物価並みが基本だが、卸大手のユニオンモーターが売上の 45% を占め、値下げ要請に近い立場なので中立は 1.30 倍にとどめる。
燃焼機器
ガスバーナーや業務用厨房機器の熱源など。売上の約 4% で、規模は小さい。
| 数量出荷台数(万台相当) | 価格1 台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 1.6 | 2.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.6 | 2.68 | 4 | 0 |
取り方:有報で燃焼機器部門は売上の約 4%(約 3.2 億円)。台数は非開示のため、1 台 2 万円と見て 1.6 万台相当とした(推定)。利益はほぼゼロから小幅の赤字と推定。
リスクと懸念
電動化で需要が細る
純電気自動車にはオイル・エアフィルターが要らない。保有車の 2 割が電動車になれば、出荷は今の 8 割まで減りうる。会社も、次世代車での需要減少をリスクに挙げている。
卸大手への依存
ユニオンモーター 1 社で売上の 45.1%(前期 36.9%)。日発販売と合わせて 5 割を超える。取引条件が変われば、利益率が一気に動く。
海外の安価な製品
フィルターは技術の差が出にくく、海外の安価な製品が補修用に入り込んでいる。価格競争で、物価の転嫁が進まない危険がある。
原材料と賃金の上昇
濾紙や鋼材の価格、賃金の上昇を価格に移すのが遅れ、直近 3 期の営業利益率は 2〜5% に低下した。この遅れが再び起きうる。
巨大地震
生産拠点は静岡県御前崎市で、南海トラフ巨大地震の影響を受けやすい。工場が止まれば、卸大手への供給が途絶える。
新規事業の遅れ
電動化に備える新規事業や M&A は、具体的な成果が見えない。研究開発費は年 0.3 億円ほどと小さい。
今後の分かれ目
- ユニオンモーターの売上比率が 50% を超える、または取引条件が悪化する
- 値決めの力がさらに弱まったと見て、やや悲観側へ確率を移す。
- 輸出の売上が全体の 1 割を超えて伸びる
- 国内の減少を補う筋書きの重みを増やし、中立からやや楽観側へ寄せる。
- 営業利益率が 2 年続けて 6% を超える
- 価格転嫁が定着したと見て、楽観・やや楽観側へ重みを移す。
- 自社株買いや増配など、還元を厚くする発表がある
- 余った現金の戻り方を 0.75 から 1.0 へ引き上げる材料になる。
- 新規事業や M&A で、電動車にも使える製品の売上が立つ
- 寿命の評価を見直し、悲観側の確率を下げる。
見ておくもの
- ユニオンモーター・日発販売の売上比率と取引条件
- 補修用の出荷本数と、輸出の売上
- 営業利益率(今は 5% 前後)と、原材料価格の転嫁
- 純現金と、配当・自社株買いの方針
- 新規事業・M&A の発表
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価や過去・同業の PER は使っていない。中立は ROE 4.6% が k 8.25% に届かず、PER の上限は 1÷k の 12.5 倍。補修用の底堅さはあるが、需要が長く細り、卸大手への依存が高いので、上限の約 7.6 割に置いた。やや悲観・悲観は稼ぐ力でなく、純現金と売れる資産の税後を今の自己資本に掛けた。余った現金は戻り方 0.75 で別に足し、PER に混ぜていない。今の時価総額(自己資本の約 55%)は、結果として比べただけだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→12.59 倍・やや楽観 PER 10.8→12.12 倍・中立 PER 9.5→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。