結論
ミクニは、二輪車と四輪車のエンジンに空気と燃料を送る部品(スロットルボディなど)を作る会社だ。売上の約8割がこの事業で、二輪・特機・マリン向けが62%を占める。筆者の結論は、今の時価総額はやや高い、つまり10年の見通しに対して割高寄りというものだ。
強みは、インドと東南アジアで伸びる二輪の需要に根を張っていることだ。最大の客はヤマハ発動機グループで、売上の26%を占める。2026年3月期の営業利益は42億円と2期ぶりに増え、利益率は4.0%に戻った。
弱みは2つある。四輪向けは電動化で構造的に縮む。借金も重く、純有利子負債は330億円と時価総額の2.7倍に当たる。
中立の姿は、売上1,300億円、営業利益率3.9%。物価分だけ売上は伸びるが、利益は大きくは増えない。航空機部品の商社事業が利益の4割弱を稼ぐ点は、見落とせない特徴だ。
時価総額が低く見えるのは、市場が借金と四輪の縮小を見ているからだ。筆者もその見方に大きな異論はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は持ちたい事業とは言い切れない。客が値段を決め、四輪は電動化で縮み、借金が重い。
見かけは安い。純資産に対して0.3倍の時価総額は、割安に見える。だが利益が資本コストを大きく下回る会社の純資産は、額面どおりの価値がない。ためた利益が株主に回るまでに、借金の返済と設備の更新で消えてしまうからだ。
良い点もある。二輪とインドの需要は10年でも続く公算が大きい。航空機部品の商社事業は、少ない資本で利益を稼ぐ。
中立でも、10年後の純利益は20億円ほどで、今の時価総額を大きくは超えない。上振れは営業利益率が4%台に定着する場合に限られ、悲観の下振れは深い。上下の幅が不利に偏るので、確信度は低い。
筆者がいちばん気にしているのは、利益が出ても株主の手元に残る前に、借金の返済と設備の更新で消えていく点だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、エンジンに空気と燃料を送る部品だ。スロットルボディ、オイルポンプ、冷却水の流れを制御するバルブなどを作る。売上の約83%を占めるモビリティ事業で、二輪・特機(発電機など)・マリン向けが62%、四輪向けが38%だ。
地域別では、日本が約4割、アセアンとインドが約3割、中国・台湾が約15%を占める。二輪の成長市場に近い場所で作り、売る形になっている。インドの子会社は利益の伸びを支えている。
ほかに、商社事業が約10%ある。航空機部品の輸入販売や芝管理機械の販売で、売上は小さいが利益率が高い。ガス制御機器のガステクノ事業は約5%で、福祉・介護機器などもその他に含まれる。
客の仕様に合わせて作る受託型の事業で、設計の主導権は客にある。そのため値上げは通りにくく、原価低減を求められ続ける。
四輪向けは自動車メーカーの量産に合わせた長い取引で、二輪向けはヤマハ発動機などの機種ごとの採用が軸になる。海外の工場は、客の組立工場が近い東南アジアとインドに多い。部品は小さいが、燃料と空気の量を決める役割は重い。
優良さと弱いところ
一言でいえば、二輪の現場では代わりが少ないが、値段は客が決める会社だ。
燃料や空気の量を細かく制御する部品は、エンジンの性能と排ガスの成績に直結する。客は設計の段階から組み込んでいるため、簡単には切り替えない。これが堀、つまり他社がまねしにくい強みの中身だが、価格は交渉で決まる。
利益率は3〜4%台で、過去12年の最高は5.0%だった。ROEの中央値は3.6%で、資本コストを大きく下回る。赤字の期は20年で6回あり、景気や客の生産に利益が大きく振れる。
良い点は、インドの好調、中国拠点の再編、取引価格の適正化で、利益が持ち直していることだ。ROICを重要な指標に掲げ、2033年度に7%以上を目標にした。目標自体は控えめだが、資本効率を意識し始めた点は評価できる。堀は弱いと置く。
筆者は、経営が拠点の整理を実行した点は認める。赤字だった中国の拠点を再編し、取引価格を見直した成果は小さくない。ただし、資本の使い方を評価できるのは、純有利子負債が確実に減り、利益率が安定して上がってからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
二輪は、インドと東南アジアで台数の増加が続く。人口の増加と所得の上昇が背景で、10年で世界の二輪の台数は緩やかに伸びる。ただしインドでは電動二輪の浸透が始まり、エンジン部品の需要を食う可能性がある。
四輪はより厳しい。電気自動車ではスロットルボディや燃料系の部品が要らなくなる。ハイブリッド車は当面エンジンを積むため、減り方は緩やかだが、長期では構造的な縮小だ。
競合は、デンソーやボッシュなど、大手の燃料系部品メーカーだ。二輪向けではインドの現地企業も力を付けている。同社は規模で劣るが、二輪の小型エンジンに特化して生き残ってきた。
10年の中立は、二輪が小さく伸び、四輪が大きく縮み、全体では数量がやや減る姿だ。航空機部品の商社事業は、世界の航空需要の増加を受けて伸びる。
部品会社の利益は、客の生産台数、原材料、人件費の組み合わせで決まる。10年の中立では原材料と人件費は物価並みに上がり、客が値上げを認める度合いが利益率を決める。ここは年ごとの交渉で、同社に強い力はない。
なお、為替は150円で固定して考える。
資本政策と M&A
資本政策は、財務の立て直しを続けながら、配当を一定の水準で守る形だ。
純有利子負債は2025年3月期の382億円から330億円へ減ったが、時価総額に比べれば重い。短期借入金が144億円と多く、借り換えの条件に左右される。配当性向は約4割で、自社株買いは期待しにくい。
大株主はりそな銀行や三菱UFJなど、金融機関の政策保有が中心で、特定の親会社はない。過去の分析では、10年以内のTOB(株式公開買い付け)の確率は2割台とされる。ただし、その値段が本質価値を反映するとは限らない。
中期の数値目標は確かめられた資料では確認できなかったため、事業の数量と価格から自前で積み上げた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
二輪の成長市場に深く入り込んでいる。インドと東南アジアの二輪は、10年でも台数が伸びる。ミクニはヤマハ発動機を最大の客とし、小型エンジンの部品に絞って事業を続けてきた。
足元の利益は戻っている。インド子会社の好調に加え、中国の整理と取引価格の適正化が効き、営業利益は4割近く増えた。商社事業の航空機部品は利益率が約16%と高く、航空需要の増加で伸びる。
借金も減り始めた。短期借入が多いとはいえ、純有利子負債は1年で50億円減った。ROIC7%以上を目標に掲げ、資本の効率を見直す局面に入った。利益率が過去の山の5%に届けば、純利益は40億円近くになり、時価総額121億円は大きく低い。
また、りそな銀行などの政策保有が緩めば、事業会社による買収の可能性もある。
航空機部品の商社事業は少ない資本で稼ぎ、利益の安定にも役立つ。景気の谷でも、この事業が全体を下支えする。
二輪の部品は小さく、客にとって切り替えの手間が大きい割に費用は小さい。採用が続く限り、ミクニの数量は安定しやすい。
慎重な見方
四輪向けは構造的に縮む。電気自動車はスロットルボディも燃料系の部品も要らず、ハイブリッド車はエンジンの小型化で部品の数と単価が下がる。売上の約3分の1を占める四輪がこの流れに沿って縮めば、固定費の重さが利益を飲み込む。
二輪も安泰ではない。インドの電動二輪は始まったばかりだが、10年のうちに主役になりうる。ヤマハ発動機への依存も26%と高く、客の調達方針に数量が左右される。
借金は時価総額の2.7倍だ。金利が上がれば利払いは10年で8億円増え、営業利益の2割近くを削る。赤字の期は20年で6回あり、配当を守る力にも不安がある。
今期の会社予想は営業利益43億円と、前期の42億円からほぼ横ばいで、第1四半期は営業利益が16%減った。回復が一巡したとの見方もできる。
中立ですら ROE は資本コストを大きく下回る。ためた利益が株主に回らない会社の純資産は、額面どおりに評価できない。
配当を守るには利益が要る。性向が約4割と高めのため、利益が落ちれば配当の削減は避けにくい。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強いと判断した。四輪の縮小は構造の問題で、金利上昇と借金の重さも10年にわたって効く。確率は悲観側に46%、中立に32%、楽観側に22%を置いた。インドの二輪が支えとなるので、悲観を深くしすぎることはしなかった。結果は今の時価総額を下回る。
楽観側の言い分は、足元の回復と商社事業の稼ぎに根拠がある。慎重な見方は、四輪の縮小と借金の重さに根拠があり、こちらを重く見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 519 円175 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 150 円51 億円)。 今の値に割り戻すと 323 円109 億円、今との差 −10.0%、 期待の年率 +6.4%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,261 円424 億円 | 327 円110 億円 | +342.5% | +16.0% | 95 円32 億円 |
| やや楽観 | 16% | 999 円336 億円 | 253 円85 億円 | +248.8% | +13.3% | 200 円67 億円 |
| 中立 | 32% | 717 円241 億円 | 208 円70 億円 | +157.8% | +9.9% | 296 円100 億円 |
| やや悲観 | 28% | 155 円52 億円 | 74 円25 億円 | −36.2% | −4.4% | 64 円22 億円 |
| 悲観 | 18% | 59 円20 億円 | 15 円5 億円 | −79.3% | −14.6% | 13 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 519 円175 億円 | 150 円51 億円 | +86.4% | +6.4% | 669 円225 億円 |
今の株価時価総額 359 円121 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% インドの二輪と航空機部品が伸び、利益率が4%台に定着する 利益 37 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,261 円424 億円
インドと東南アジアの二輪が伸び、ヤマハ発動機向けを中心に数量が5%増える。四輪の縮小は、ハイブリッド車の長持ちで予想より緩やかになる。
モビリティの営業利益率は4%に上がり、商社事業は航空需要の増加で数量が4割伸びる。利益率も16%を保つ。
営業利益は80億円ほどに増え、借金の返済と配当の増額が進む。それでも、客が値段を決める構造は変わらず、利益率が過去の山を大きく超えて続くとは置かない。電動化の影響は10年先も限定的だ。
中国の拠点は再編が済み、アジア全体で黒字が定着する。
借金の返済が進み、金利上昇の影響も営業利益の範囲に収まる。
- モビリティ(スロットルボディ・ポンプ・冷却水バルブ):数量 1,575(供給した部品の台数相当(万台、推定))× 価格 0.77(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 1,207 億円・営業利益 48 億円。モビリティ 利益率4.0%
- 商社(航空機部品の輸入販売ほか):数量 7.0(取扱件数相当(万件、推定))× 価格 28(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 194 億円・営業利益 31 億円。商社 利益率16.0%
- ガステクノ・その他(全社費を含む):数量 40.0(供給した製品の台数相当(万台、推定))× 価格 2.50(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 100 億円・営業利益 1 億円。ガス・その他 利益率1.0%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 424 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:インドの二輪の伸びと航空機部品の伸びが同時に当たり、価格転嫁も通る必要があり、確度は低い。5%を少し超える水準に置いた。
やや楽観 16% 四輪の縮小を二輪が吸収し、商社事業が利益を支える 利益 29 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 999 円336 億円
二輪がインドを中心に小さく伸び、四輪の縮小を吸収する。モビリティの数量は横ばい、営業利益率は3.6%に上がる。
商社事業は航空機部品の需要で数量が1.25倍になり、利益率は15%台を保つ。ガステクノ・その他は小さな赤字にとどまる。
営業利益は70億円弱で、純有利子負債は少しずつ減る。配当は純利益の4割で続く。会社の長期目標に近い姿だが、劇的な改善にはならない。
日本の拠点は縮むが、金型や補修部品で利益を保つ。
借金の削減が進めば、金利上昇の影響も営業利益の範囲に収まり、財務の不安は和らぐ。
四輪向けはハイブリッド車の長持ちで、縮み方が緩やかになる。
- モビリティ(スロットルボディ・ポンプ・冷却水バルブ):数量 1,500(供給した部品の台数相当(万台、推定))× 価格 0.75(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 1,131 億円・営業利益 41 億円。モビリティ 利益率3.6%
- 商社(航空機部品の輸入販売ほか):数量 6.2(取扱件数相当(万件、推定))× 価格 28(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 172 億円・営業利益 26 億円。商社 利益率15.0%
- ガステクノ・その他(全社費を含む):数量 38.0(供給した製品の台数相当(万台、推定))× 価格 2.50(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 0 億円。ガス・その他 利益率0.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 336 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の回復と商社事業の伸びが続く筋書き。ただし会社の今期の営業利益予想が前期と同じ水準にとどまり、2割には届かないと置いた。
中立 32% 中立:二輪が支え四輪が縮み、利益率は3%台で動かない 利益 21 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 717 円241 億円
二輪は小さく伸びるが、四輪は電動化で縮み、モビリティの数量は10年で5%減る。値段は客の原価低減要請で、物価の1.34倍に届かず1.30倍にとどまる。
営業利益率は3%で、足元の3.2%からやや下がる。商社事業は航空需要で数量が1.15倍に伸び、利益率13%を保つ。
純有利子負債は借り換えで金利が上がり、利払いが8億円ほど増える。配当は純利益の4割。ROEは4%強で、資本コストを大きく下回り続ける。
減価償却は設備投資50億円から年40億円台と推定し、今ある設備の分は物価で増えない。10年後は更新分だけ新しい値段で足され、50億円台に増える。更新の投資は償却より膨らみ、現金は細る。
- モビリティ(スロットルボディ・ポンプ・冷却水バルブ):数量 1,425(供給した部品の台数相当(万台、推定))× 価格 0.74(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 1,059 億円・営業利益 32 億円。モビリティ 利益率3.0%
- 商社(航空機部品の輸入販売ほか):数量 5.8(取扱件数相当(万件、推定))× 価格 27(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 159 億円・営業利益 21 億円。商社 利益率13.0%
- ガステクノ・その他(全社費を含む):数量 38.0(供給した製品の台数相当(万台、推定))× 価格 2.50(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 95 億円・営業利益 −1 億円。ガス・その他 利益率-1.0%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 241 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:二輪が支え四輪が縮む最も重い筋書き。堀が弱く借金が重いので、慎重な見方がやや強いとして悲観側を厚くした。
やや悲観 28% 四輪の電動化と二輪の電動化が重なり、利益が薄くなる 利益 6 億円 · PER 5.5 倍 · 株価時価総額 155 円52 億円
四輪の電動化が早まり、スロットルボディの数量が大きく減る。インドの電動二輪も立ち上がり、二輪の数量も伸びが止まる。モビリティの数量は15%減り、値段も物価に届かない。
営業利益率は2%弱に沈み、固定費の重さが利益を削る。商社事業は航空需要が一巡し、利益率が9%に下がる。
借り換えで金利が上がり、利払いが営業利益の大きな部分を占める。配当は半分に減り、設備の更新も遅れる。赤字には沈まないが、株主に回る利益はごくわずかな10年になる。
中国拠点の再編の追加費用も出る。
日本国内の拠点は統廃合が避けられなくなる。
- モビリティ(スロットルボディ・ポンプ・冷却水バルブ):数量 1,275(供給した部品の台数相当(万台、推定))× 価格 0.71(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 910 億円・営業利益 16 億円。モビリティ 利益率1.8%
- 商社(航空機部品の輸入販売ほか):数量 4.8(取扱件数相当(万件、推定))× 価格 27(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 127 億円・営業利益 12 億円。商社 利益率9.0%
- ガステクノ・その他(全社費を含む):数量 36.0(供給した製品の台数相当(万台、推定))× 価格 2.43(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 87 億円・営業利益 −3 億円。ガス・その他 利益率-3.0%
倍率:事業の ROE 1.3% は k を大きく下回り、上限は 1÷k = 10.8 倍。利益がほぼ出ず借金も重いので、上限の 5 割の 5.5 倍に置いた。自己資本比の PBR は低いが、ROE が k に届かず帳簿は床にならない。EV÷営業利益 は営業利益が薄く意味が小さいので PER を優先した。
確率:四輪の縮小が早まり、二輪も電動化で数量が減る筋書き。赤字の期が20年で6回ある点を踏まえ、3割弱に置いた。
悲観 18% 客の調達見直しと借金の重さで赤字が続き、事業の切り売りに向かう 利益 −24 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 59 円20 億円
ヤマハ発動機などが電動化と調達先の見直しを進め、数量が3割減る。値段も物価に追いつかず、モビリティは赤字になる。
商社事業は残るが、利益は縮む。借り換えの条件が悪化し、利払いが営業利益を上回る。増資か資産売却が避けられない。
配当はほぼなくなり、株主の取り分は事業を切り売りして借金を返した後に残る額が中心になる。政策保有の銀行が株主にいても、救済の理由は薄い。最後は、売れる事業の値段が価値の上限になる。
過去の赤字期と同様に、自己資本の目減りで財務の余力が一気に細る。
最終的には、客が離れ、売れる設備と事業の値段が株主に残る価値の上限になる。
- モビリティ(スロットルボディ・ポンプ・冷却水バルブ):数量 1,050(供給した部品の台数相当(万台、推定))× 価格 0.66(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 690 億円・営業利益 −7 億円。モビリティ 利益率-1.0%
- 商社(航空機部品の輸入販売ほか):数量 4.0(取扱件数相当(万件、推定))× 価格 25(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 98 億円・営業利益 5 億円。商社 利益率5.0%
- ガステクノ・その他(全社費を含む):数量 32.0(供給した製品の台数相当(万台、推定))× 価格 2.24(1単位あたり売上(万円/単位相当、名目))→ 売上 72 億円・営業利益 −4 億円。ガス・その他 利益率-5.0%
倍率:赤字の筋書きなので稼ぐ力でなく売れる資産で測る。売れる事業の税後約 280 億円から、純有利子負債 330 億円と再編費用を引くとほぼ残らず、有限責任の小さな値 約 20 億円を今の自己資本 約 399 億円の 0.05 倍に置いた。
確率:客の調達見直しと金利上昇で赤字が続き、事業の売却に向かう筋書き。借金が時価総額の2.7倍と重く、強く残る尾のリスクとして18%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
モビリティ(スロットルボディ・ポンプ・冷却水バルブ)
二輪・四輪・特機・マリン用のスロットルボディ、オイルポンプ、冷却水バルブ。
| 数量供給した部品の台数相当(万台、推定) | 価格1単位あたり売上(万円/単位相当、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 0.57 | 857 | 27 |
| 10 年後 中立 | 1,425 | 0.74 | 1,059 | 32 |
取り方:モビリティの売上857億円を、二輪・四輪・特機の供給台数相当1,500万台(推定。開示なし)で割った。営業利益は27.3億円(利益率3.2%)。価格は物価1.34倍が基本だが、客の原価低減で中立は1.30倍とした。四輪の縮小と二輪の伸びを合わせ、中立の数量は0.95倍。
商社(航空機部品の輸入販売ほか)
航空機部品の輸入販売、芝管理機械の販売など。
| 数量取扱件数相当(万件、推定) | 価格1単位あたり売上(万円/単位相当、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5.0 | 20 | 102 | 16 |
| 10 年後 中立 | 5.8 | 27 | 159 | 21 |
取り方:商社事業の売上102億円を取扱件数相当5万件(推定)で割った。営業利益は16.1億円(利益率15.8%)。航空機部品は世界の航空需要で伸びるとして、中立の数量は1.15倍、価格は物価並みの1.34倍。
ガステクノ・その他(全社費を含む)
ガス制御機器、福祉・介護機器、不動産賃貸など。全社の本社費を含む。
| 数量供給した製品の台数相当(万台、推定) | 価格1単位あたり売上(万円/単位相当、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 1.87 | 75 | −2 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 2.50 | 95 | −1 |
取り方:ガステクノとその他の売上75億円を供給台数相当40万台(推定)で割った。営業利益は全社の本社費を含めて−1.6億円。数量は小さく縮み、価格は物価並み。
リスクと懸念
四輪の電動化
電気自動車にはスロットルボディや燃料系の部品が要らない。売上の約3分の1を占める四輪向けは構造的に縮み、ハイブリッド車の寿命が尽きる頃に急に減る可能性がある。
二輪の電動化とインドの競争
インドで電動二輪が広がれば、エンジン部品の需要が想定より早く減る。現地企業の台頭で、価格の下押しも強まる。
ヤマハ発動機への依存
最大の客であるヤマハ発動機グループが売上の26%を占める。調達方針や車種の変更が、そのまま数量に響く。
借金の重さと金利
純有利子負債は330億円で時価総額の2.7倍。短期借入金が144億円と厚く、借り換えで金利が3.5%前後に上がると、利払いは10年で8億円ほど増える。
利益の薄さと景気の振れ
営業利益率は3〜4%台で、赤字の期は20年で6回あった。稼働率が少し落ちるだけで利益が消える固定費の構造は変わらない。
商社事業への依存
航空機部品の商社事業は売上の1割だが、営業利益の約4割を稼ぐ。仕入先との契約や航空需要の変化が、全社の利益を左右する。
今後の分かれ目
- ヤマハ発動機などから二輪の大型の新規受注が出たら
- 二輪の数量を上げ、楽観側へ確率を移す。
- モビリティの営業利益率が4%を超えて2年続いたら
- 中立の利益率を上げ、倍率の質も見直す。
- インドの電動二輪の比率が2割を超えたら
- 二輪の数量を下げ、悲観側へ確率を移す。
- 純有利子負債が250億円を下回ったら
- k の借金の項を下げ、悲観の深さを見直す。
- 商社事業の仕入先の契約が変わったら
- 商社事業の利益を下方に見直す。
- 赤字が2期続いたら
- 悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- モビリティの営業利益率
- インドの二輪の台数と電動化率
- 四輪向けの売上比率
- 純有利子負債と短期借入金
- 商社事業の利益
倍率と資本コストの決め方
倍率は式の上限(ROE が k 以下なので 1÷k = 10.8 倍)に対し、利益の質が低いため5割〜8.5割に置いた。過去・現在・同業の PER や PBR は使っていない。悲観は事業の売却価値から純負債を引くとほぼ残らないため、有限責任の小さな床を置いた。配当は会社の実績(性向4割)に沿って置いた。減価償却は設備投資50億円から推定し、既存設備の分は物価で増やさず更新分だけ足した。新リース会計基準で BS の形は変わるが、数字は家賃を営業費用に含める今の形でそろえた。結果は今の値段より低い側に出たが、計算を株価に寄せる調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.2→11.43 倍・やや楽観 PER 8.4→11.43 倍・中立 PER 7.6→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.75% を足した 9.25%。ヤマハ依存や中国・インドの事業リスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。