結論
小田原機器は、路線バスの運賃箱とICカードの読み取り機を作る会社だ。国内ではレシップに次ぐ2番手で、関東と名古屋に強い。筆者の結論は割高である。一番の理由は、売上が更新の波で大きく揺れる一方、波の頂上でも営業利益率が数%しか残らないことにある。
2024年は新紙幣、2025年は名古屋の大型案件で売上が膨らんだ。だが2025年は低い値段で取った案件が利益を削り、2026年の上期は売上が半分になって赤字に戻った。波の頂上で稼げない商売は、波の谷で守りに回るしかない。
10年先を見ると、路線バスの台数は運転手不足で1割半ほど減る。1台に積む機器はタッチ決済やQRコードで高度になるが、決済の仕組みの主役はカード会社やIT企業に移りつつある。運賃箱の作り手が値段を決める力は強まらないと筆者は見る。
財務は堅く、配当の方針も手厚い。それでも、自己資本で稼ぐ利回りが資本コストに届かない以上、利益に掛けられる倍率は低い。中立の価値は今の値段を大きく下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、悪くはないが、高い値段を払う事業でもない。運賃箱は地味だが、なくなりにくい製品だ。高齢の客は現金を使い続け、地方では現金とカードの両方を扱う装置が長く要る。この点では、事業が10年後も残ることを信じてよい。
弱いのは値段を決める力だ。客のバス会社は苦しく、入札で買う。波の頂上の年ですら利益率が数%しか残らない商売は、物価が上がっても株主の取り分が増えにくい。
経営は配当を厚くし、株主を意識した方向に変わった。それでも、稼ぐ力が資本コストに届かないまま自己資本を厚く持つ形は変わっていない。安全域、つまり払う値段と価値の差のゆとりは、今の値段では見当たらない。首都圏の更新で利益率が上がるかどうかを確かめてからでも遅くはない。
配当の方針が手厚いことは、株主にとって数少ない安心材料だ。利益をため込まず返すので、資本の無駄づかいは起きにくい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は、路線バスの運賃箱だ。乗客が入れた硬貨と紙幣をその場で数える即時計数式の運賃箱を、1986年にいち早く作った。これに交通系ICカードの読み取り機、クレジットカードやQRコードに対応するマルチ決済端末、保守の仕事が加わる。売上の9割強がこの運賃収受機器の事業だ。
客は全国のバス会社と、ワンマン運転の鉄道だ。注文は数年に一度の機器の入れ替えに集中する。新紙幣や新しいICカード、運賃の仕組みの変更があるたびに大きな更新が起き、その間は保守と部品が中心になる。2025/12期は名古屋市交通局と名古屋ガイドウェイバスの2社で売上の2割強を占めた。
もう一つの柱はシステム開発で、子会社のソタシステムが交通系やETC関連のソフトを受託で作る。グループ内の仕事も多く、外部への売上は全体の1割弱だ。
新しい中期経営計画「ONG2030」では、受注ごとに作る生産から、需要を見込んで標準品を作る生産へ切り替える。首都圏で控える運賃箱の大型更新でシェアを広げ、デジタルバス停やダイヤ作成の支援など新しい売り物も育てる計画だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは中くらいだ。運賃箱は硬貨と紙幣を正確に数え、揺れる車内で長く壊れずに動く必要がある。バス会社は一度入れた機種を保守とともに使い続けるので、乗り換えの手間は小さくない。国内でまともに作れるのはレシップと当社くらいだ。
ただ、値段を決める力は弱い。客のバス会社は運転手不足と燃料高で懐が苦しく、公営の交通局は入札で買う。2025年の「戦略的な低採算案件」は、数を取るために利益を削った跡だ。
利益の質も安定しない。2017〜2018年には大きな赤字を出し、過去10年のROEの中央値は3%に届かない。
財務は堅い。借入は運転資金の分だけで、ならせば純現金に近い。経営は創業家が約半分の株を持ち、配当を厚くする方向に方針を変えた。
当社の強みは関東と名古屋の客との長い付き合いと、保守の網だ。壊れた時にすぐ直しに来てくれる会社を、バス会社は簡単には替えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の路線バスは約6万台の成熟した市場だ。人口の減少と運転手の不足で、路線の廃止や減便が続く。10年先の台数は、今より1割半ほど少ないと見るのが自然だ。
一方で、1台に積む機器は高度になる。現金の運賃は減り、クレジットカードのタッチ決済やQRコードの読み取り、バスの位置を知らせる仕組みが広がる。運賃箱そのものの数は減っても、1台あたりの機器とソフトの売上は増える方向だ。
問題は、決済の仕組みの主役が誰になるかだ。タッチ決済の端末や読み取りの仕組みは、カード会社や決済のIT企業が標準を握りつつある。運賃箱の作り手が、汎用の端末を組み付ける下請けになれば、値段はさらに厳しくなる。
更新の波は今後も来る。首都圏ではICカードの機器や運賃箱の大型の入れ替えが控えており、当社は関東に強い。ただ波の間の年は売上が半分近くまで落ちる。2026年の上期がまさにその谷で、波の頂上と谷をならして見る必要がある。
競合は国内ではレシップがほぼ唯一で、2社で市場を分け合う形だ。数が少ない分、値下げ合戦に陥れば両社とも傷む。2025年の当社の低採算受注は、その危うさを示している。
資本政策と M&A
配当の方針は2025年8月に手厚くなった。配当性向40%か、自己資本に対する配当の割合3%の大きい方を払い、業績にかかわらず安定配当の部分も設けた。2026年には自己株の取得も決めた。
株主は創業家と資産管理会社で約5割、社員持株会が5%ほどだ。創業家の意向で経営が決まる会社で、外からの買収は起きにくい。M&Aでは、保守のオーバルテックや電子機器のアズマなど、小さな会社を取り込んできた。
利益が薄いので、自己資本の3%を配る方針は、悪い年には利益を上回る配当になる。方針を守るほど自己資本は増えず、悪い年が続けば方針そのものを見直すことになる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
首都圏の大型更新が、10年の流れを変える。関東は当社の地盤で、運賃箱とICカードの機器の入れ替えを数多く取れれば、売上の土台が一段上がる。名古屋でも大きな案件を取った実績がある。
1台に積む機器は確実に高度になる。タッチ決済、QRコード、乗降の人数を数える仕組み、デジタルバス停と、バス会社の人手不足を補う機器はどれも当社の売り物の延長にある。運賃箱の数が減っても、1台あたりの売上は物価以上に伸びうる。
生産の改革も効いてくる。受注ごとの生産から標準品の見込み生産に変えれば、部品の無駄と在庫が減り、利益率は過去の6%台に戻る。財務は堅く、配当の方針は手厚い。悪い年でも株主は配当を受け取れる。
2000年代の前半には営業利益率が20%を超えた年もある。ICカードの導入期のように、新しい決済の波を先に取れれば、利益率は今の想像より高く出る。運賃箱は高齢の客と地方の路線で長く要り、保守の売上は台数が減っても簡単には消えない。堅い財務は、谷の年を耐える力でもある。
慎重な見方
波の頂上で稼げない会社は、谷で苦しむ。2025年は売上が過去最高だったのに、営業利益率は2%しか残らなかった。2026年の上期は売上が半分になり赤字だ。数を取るために値段を下げた案件は、次の更新でも値段の基準として残る。
決済の主役は運賃箱の作り手から離れつつある。タッチ決済の端末はカード会社や決済のIT企業が標準を握り、運賃箱はその端末を載せる箱になりかねない。そうなれば1台あたりの売上は伸びても、利益は端末の側に流れる。
バスの台数は運転手不足で減り続ける。客のバス会社は苦しく、公営の交通局は入札で買う。名古屋の2社で売上の2割強という偏りも、案件が終われば反動になる。
受託のソフト開発は、AIが人の手間を置き換える流れで細る。ICカードの導入期のような高い利益率は、競合が少なく機器が新しかった時代の話で、今は当てにならない。
配当の方針も、悪い年には利益を上回る支払いを求める。谷が長引けば、方針の見直しと自己資本の目減りが同時に来る。株主が受け取るのは、その間の配当だけになりかねない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうがやや強い。首都圏の更新は本物の機会だが、名古屋の案件でも利益率は上がらなかった。数を取れても、値段を決める力が弱いままでは利益は残らない。確率は中立に厚く、やや悲観と悲観を合わせた重みを、上振れの二つとほぼ同じにした。首都圏の案件の利益率が、判断を変える一番の材料になる。名古屋の反動が出た2026年の数字を見る限り、今の時点で上振れに重みを寄せる理由は乏しい。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,048 円33 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 374 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 726 円23 億円、今との差 −45.8%、 期待の年率 +0.6%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,740 円87 億円 | 534 円17 億円 | +144.3% | +9.3% | 262 円8 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,748 円56 億円 | 471 円15 億円 | +65.6% | +5.2% | 444 円14 億円 |
| 中立 | 38% | 1,053 円34 億円 | 414 円13 億円 | +9.5% | +0.9% | 557 円18 億円 |
| やや悲観 | 22% | 259 円8 億円 | 282 円9 億円 | −59.6% | −8.7% | 119 円4 億円 |
| 悲観 | 12% | 189 円6 億円 | 151 円5 億円 | −74.6% | −12.8% | 41 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,048 円33 億円 | 374 円12 億円 | +6.2% | +0.6% | 1,423 円45 億円 |
今の株価時価総額 1,340 円43 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 首都圏の更新を広く取り、利益率が過去の高さへ 利益 6 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 2,740 円87 億円
首都圏の大型更新で運賃箱とICカードの機器を広く取り、関東での地盤がさらに固まる。タッチ決済やQRコード、デジタルバス停を組み合わせた仕組みとして売れるので、1台あたりの売上は物価を上回って伸びる。見込み生産への切り替えで原価と在庫が下がり、営業利益率は2000年代の高い年に近づく。バスの台数は運転手不足で減るが、自動運転の実験など新しい需要も生まれる。配当は方針どおり利益とともに増える。運賃箱の作り手から、バスの決済と運行をまとめて支える会社へと見方が変わる10年になる。利益の厚みが増し、配当も方針どおり増えていく。
- 運賃収受機器(運賃箱・IC カード機器・決済端末・保守):数量 55.0(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 17(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 94 億円・営業利益 8 億円。台数 0.95 倍・1 台の売上 1.40 倍(シェア拡大と機器の高度化)
- システム開発(交通系・ETC 関連の受託):数量 27.0(受託開発の技術者(人))× 価格 3,000(技術者 1 人あたりの年間の外部売上(万円))→ 売上 8 億円・営業利益 1 億円。AI を道具に人数の減りを抑える
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 12.98 倍、時価総額 84 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏の更新を広く取り、値段も守る必要がある。名古屋の大型案件でも利益率が上がらなかった実績から、重みは小さく置いた。
やや楽観 20% 更新の波を取り、生産の改革が実る 利益 4 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 1,748 円56 億円
首都圏と地方の更新の波をそれなりに取り、1台あたりの売上は機器の高度化で物価をやや上回って伸びる。バスの台数は1割減るが、マルチ決済端末と保守が売上を支える。見込み生産への切り替えが進み、営業利益率は過去の良い年の7%に戻る。受託のソフトはAIの影響で人数が減るが、交通系の知見で単価は保つ。配当は自己資本の3%を軸に続く。ROEは資本コストに少し届かないが、堅い財務の地味な機器メーカーとして稼ぎ続ける筋書きだ。首都圏の受注で関東の地盤がさらに固まり、保守の売上も積み上がる。財務は堅いままで、谷の年も配当を払い続けられる。
- 運賃収受機器(運賃箱・IC カード機器・決済端末・保守):数量 52.0(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 16(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 81 億円・営業利益 6 億円。台数 0.9 倍・1 台の売上 1.28 倍
- システム開発(交通系・ETC 関連の受託):数量 24.0(受託開発の技術者(人))× 価格 2,890(技術者 1 人あたりの年間の外部売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。人数 0.8 倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.15 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:首都圏の更新は計画にあり、生産の改革も中計で示された。ただ値段を決める力の弱さは変わらず、中立より低く置いた。
中立 38% 中立:更新の波をならして薄い利益率 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,053 円34 億円
バスの台数は運転手不足で1割半減る。1台あたりの売上は、波をならした今の水準から物価並みに上がり、タッチ決済などの高度化で少し上乗せされる。更新の波は数年ごとに来るが、取った案件の値段は厳しく、営業利益率は5%前後にとどまる。受託のソフトはAIエージェントの普及で人数が3分の2に減る。配当は自己資本の3%を払い続け、利益の多くが株主に戻るので、自己資本はあまり増えない。財務は堅いままだが、稼ぐ力が資本コストに届かない地味な10年になる。首都圏の更新は取れても、値段の厳しさで利益は大きく増えない。
- 運賃収受機器(運賃箱・IC カード機器・決済端末・保守):数量 49.3(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 14(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。台数 0.85 倍・1 台の売上 1.16 倍(波をならした今の 9.5 万円 × 物価 1.34 × 機器の高度化 1.1)
- システム開発(交通系・ETC 関連の受託):数量 20.0(受託開発の技術者(人))× 価格 2,890(技術者 1 人あたりの年間の外部売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。人数 0.65 倍(AI エージェント代替)・単価は物価並み
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 31 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年の利益率の中央値4%前後と、生産の改革の効果を合わせた中心の筋書き。更新の波をならした形を最も厚く置いた。
やや悲観 22% 決済の主役を奪われ、値段が下がる 利益 1 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 259 円8 億円
タッチ決済の汎用端末が広がり、バス会社は運賃箱と別に決済の端末を入れ始める。運賃箱は硬貨と紙幣を数える箱に戻り、1台あたりの売上は物価に追いつかない。更新の案件では入札の値段がさらに下がり、営業利益率は2%台に落ちる。受託のソフトも人数が減る。配当はDOE3%を守れず、安定配当の部分に近づく。赤字にはならないが、自己資本に対する利回りは2%台にとどまり、株主の価値は細っていく。名古屋の反動も重なり、売上の山谷はかえって大きくなる。財務の堅さで谷は耐えるが、株主に戻る額は年ごとに細る。地方のバス会社の路線の縮みも、更新の先送りに拍車をかける。
- 運賃収受機器(運賃箱・IC カード機器・決済端末・保守):数量 46.0(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 13(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 58 億円・営業利益 1 億円。台数 0.8 倍・1 台の売上 1.03 倍
- システム開発(交通系・ETC 関連の受託):数量 18.0(受託開発の技術者(人))× 価格 2,750(技術者 1 人あたりの年間の外部売上(万円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。人数 0.6 倍
倍率:ROE 2.3%(0.97 ÷ 41.6)と資本コストを大きく下回る。稼ぐ力は 0.97 ÷ 8.5% = 11 億円で、その内の PER 8.5 倍とした。今の自己資本 41.6 億円に対する PBR は 0.20 倍で中立より低い。今の売れる資産から負債を引くと約 21 億円あるが、創業家が経営を続け清算されないので、少数株主に戻るのはその一部(悲観の床 6 億円)で、やや悲観は稼ぐ力の側で測った。
確率:決済の主役が離れる流れは既に始まっており、2025年の低採算受注も実際に起きた。上振れの二つの合計に近い重みを置いた。
悲観 12% 構造的に負け、汎用端末の下請けに 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 189 円6 億円
決済の仕組みはカード会社とIT企業の標準の端末にまとまり、運賃箱は汎用の端末を載せる部品になる。現金を使う客が減り、運賃箱の更新そのものが先送りされる。バスの台数は3割減り、レシップとの価格競争で当社は赤字の案件を抱える。営業利益はほぼゼロから赤字に落ち、受託のソフトも細る。配当は安定配当の部分だけになる。創業家が経営を続けるので清算はされず、手元の現金と運転資金は赤字の穴埋めに少しずつ使われていく。レシップとの再編の話が出ても、値段は弱い側として決まる。株主に残るのは配当と、赤字で目減りした後の資産の一部だけだ。
- 運賃収受機器(運賃箱・IC カード機器・決済端末・保守):数量 40.0(国内の路線バスの台数(千台))× 価格 11(バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。台数 0.69 倍・1 台の売上 0.91 倍
- システム開発(交通系・ETC 関連の受託):数量 15.0(受託開発の技術者(人))× 価格 2,650(技術者 1 人あたりの年間の外部売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。人数 0.5 倍
倍率:赤字の筋書きなので PBR で測る。稼ぐ力は無く、床は売れる資産から負債を引いた残りに戻り方を掛けた額(floor_assets_oku 6 億円)。今の自己資本 41.6 億円に対する PBR 0.145 倍。市場の倍率は使っていない。
確率:過去にも2017〜2018年に大きな赤字を出した。決済の主役の交代は現実の流れで、12%と同業のレシップより厚めに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
運賃収受機器(運賃箱・IC カード機器・決済端末・保守)
路線バスとワンマン鉄道向けの運賃箱、交通系 IC カードの読み取り機、マルチ決済端末と保守。
| 数量国内の路線バスの台数(千台) | 価格バス 1 台あたりの当社の年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 58.0 | 12 | 70 | 1 |
| 10 年後 中立 | 49.3 | 14 | 69 | 3 |
取り方:運賃収受機器の売上 70.26 億円を、乗合バスの台数の目安 5.8 万台(同業レシップの in と同じ)で割った 1 台あたりの売上。鉄道向けも 1 台あたりに含めた推定。2025 年は名古屋の大型案件で山の年で、波をならした年の売上は 50〜55 億円前後。10 年の 1 台あたりの売上は、波をならした今の 9.5 万円から物価 1.34 倍と機器の高度化 1.1 倍で 14.0 万円(2025 年の山の年の 12.1 万円からは 1.16 倍)。
システム開発(交通系・ETC 関連の受託)
子会社ソタシステムによる交通系インフラ・ETC 関連のソフトの受託開発と機器の輸出入。
| 数量受託開発の技術者(人) | 価格技術者 1 人あたりの年間の外部売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 30.0 | 2,157 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 2,890 | 6 | 0 |
取り方:外部売上 6.47 億円(セグメント売上 7.69 億円からグループ内を除く)を、ソタシステム本社の従業員 30 人(有報の設備の状況)で割った推定。人月で売る受託なので AI エージェント代替の型(中立の人数 10 年 0.55〜0.75 倍)で見る。
リスクと懸念
更新の波の谷
注文は新紙幣やICカードの更新などの波に集中する。波の間の年は売上が半分近くに落ち、2026年の上期は赤字だった。固定費をまかなえない年が続けば、自己資本と配当の方針が揺らぐ。
決済の主役の交代
タッチ決済やQRコードの端末は、カード会社や決済のIT企業が標準を握りつつある。運賃箱がその端末を載せる箱になれば、機器が高度になっても利益は端末の側に流れる。
低い値段での受注
2025年は数を取るために低い値段の案件を取り、売上は最高でも利益は減った。首都圏の大型更新でも同じことが起きれば、シェアは増えても株主の取り分は増えない。
客の偏りと客の苦しさ
名古屋の2社で売上の2割強を占めた。案件が終われば反動が出る。客のバス会社は運転手不足と燃料高で苦しく、機器の更新を先送りしがちだ。
AIエージェント代替
子会社の受託ソフト開発は、人の手間で売る商売だ。AIが設計やプログラムを置き換える流れで、人数と単価の両方に下げ圧力がかかる。売上の1割弱と小さいが、利益の支えは細る。
今後の分かれ目
- 首都圏の運賃箱の大型更新で、当社が過半を取ったら
- 数量の土台が上がる。利益率が5%を超える受注なら、やや楽観の重みを上げる。
- 大型案件で再び受注損失の引当が出たら
- 数を取るために値段を下げる癖が続いている証拠になる。やや悲観に重みを移す。
- バス会社がタッチ決済の汎用端末を運賃箱と別に入れ始めたら
- 決済の主役が離れる悲観の筋書きに近づく。1台あたりの売上の見通しを下げる。
- 見込み生産への切り替えで在庫と原価が下がったら
- 波の谷でも黒字を保てる。中立の利益率を上げてよい。
- 創業家の持分に動きがあったら
- 資本の使い方や再編の可能性が変わる。現金の戻り方の見方を改める。
見ておくもの
- 首都圏の運賃箱・ICカード機器の更新の受注
- 運賃収受機器の営業利益率と受注損失引当金
- 名古屋の2社以外の売上の伸び
- 在庫と売掛金の水準
倍率と資本コストの決め方
路線バスの台数(実質)×1台あたりの売上(物価込み)で運賃収受を積み、2025年の山の年でなく波をならした売上を起点にした。受託ソフトは技術者の人数×単価で、AIエージェント代替で人数を減らした。ROEがkを下回る筋書きは1÷k=11.8倍を上限にし、中立はその8割。悲観は売れる資産から負債を引いた床に、創業家が約半分を持つ戻り方0.5を掛けて置いた。今のPBR1倍やPERは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→12.98 倍・やや楽観 PER 10.6→12.15 倍・中立 PER 9.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。同じ市場のレシップ(8.0%)より、規模が小さく 2 番手で、売上の山谷と赤字の年が大きい分(循環 +0.25・値決め +0.25)だけ高い。名古屋の 2 社への偏りは k に足さず筋書きで表した。