結論
日本プラストは、ハンドルとエアバッグ、樹脂の内外装部品を作る自動車部品メーカーだ。売上は 1,100 億円台で、日産グループが 65%、ホンダグループが 30% を占める。時価総額は 84 億円で、自己資本 375 億円の 4 分の 1 以下という値段になっている。
筆者の結論は「やや割安」だ。確率をかけた本質価値は今の時価総額を 2 割強上回る。営業利益率が 2% 台で薄くても、年 20 億円前後の純利益は残るからだ。ここ 3 期の営業利益は 26 億円から 28 億円にそろい、今の値段はその 4 倍台にとどまる。
ただし、この値段には理由がある。売上の 65% を預ける日産は工場を減らし、10 年後の数量は読めない。純有利子負債は 117 億円あり、2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が 87% 減った。
筆者が見ているのは、日産の縮小を海外とホンダ向けで補えるか、そして値下げ要請を労務費や関税の転嫁でどこまで取り返せるかだ。ハンドルとエアバッグは EV でも要る。EV 化の影響は、エンジンまわりの樹脂部品に限られる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」が最初の問いになる。ハンドルとエアバッグという安全部品は、EV になっても残る。この点で、エンジン部品のように存在そのものが縮む事業と違う。ただし客先 2 社への偏りが強く、強みは堀というより取引の慣性に近い。
株主のものになる利益は、営業利益 26 億円から利払い 9 億円、税と少数株主を引いた 20 億円前後。設備投資は償却を下回っているので、この利益はほぼ現金として手元に残る。2026 年 3 月期の純利益には、製品保証引当金の戻入や投資有価証券の売却益のような一時的な押し上げが混じる点は割り引く。
経営の資本配分は堅実だが、積極的ではない。借入を抱えながら配当性向 3 割を守り、成長投資を抑えている。
安全域は、今の値段が自己資本の 4 分の 1 であることにある。利益が半分になっても、この値段は高くない。一方で、日産の再建が失敗する筋書きでは、自己資本の 375 億円も売却価値は小さい。この会社の安さは、帳簿の厚みではなく、稼ぎが続く間の利益の安さとして見るべきだと筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 2 つに分かれる。1 つ目の安全部品は売上 582 億円で、ハンドル 311 億円とエアバッグ 271 億円。ハンドルは自動運転支援で運転者がハンドルを握っているかを検知するセンサー付きを開発している。エアバッグは前期比 12% 減った。
2 つ目の樹脂部品は売上 566 億円で、内装・外装の樹脂部品とバッテリー冷却用のダクトなど。客先の車種ごとに受注し、車種が続く間は数量が読める。
地域別の売上は、北米が 570 億円と半分近くを占め、日本 433 億円、中国 110 億円、東南アジア 36 億円。営業利益は日本 14 億円、北米 6 億円、東南アジア 9 億円で、中国は 2 億円の赤字。中国の 2 つの子会社は合弁でなく 100% 持分で、赤字は前の期の 8 億円から縮んだ。
客先は日産グループが 65%、ホンダグループが 30%。日産北米向けだけで売上の 15% を占める。上位の株主は東京中小企業投資育成、個人、ダイセルで、日産もホンダも株主ではない。親会社はなく、完全に独立した部品メーカーだ。
優良さと弱いところ
強みは、ハンドルとエアバッグを一貫して作る技術と、日産・ホンダとの長い取引だ。安全部品は品質への要求が厳しく、新規に参入する難しさがある。車種が決まれば数年は仕入れ先が固定される。
弱みは、第 1 に利益率の薄さだ。営業利益率は 2.3% で、過去 12 年の最高が 4.7%。第 2 に客先の偏りで、日産の再建の成否がそのまま数量に響く。第 3 に値決め力のなさ。有価証券報告書は、取引先からの値上げ要請に応じて仕入価格を改定したことをマイナスとして挙げ、関税コストの回収は一部にとどまると書く。第 4 に品質問題で、自動運転対応ハンドルの電子部品の問題が長引いている。
資本効率は、過去 10 年の ROE の中央値が 6% で、k の 9% を下回る。自己資本が 375 億円と厚いのに、稼ぎは 20 億円前後。自己資本が稼ぎに変わっていないというのが、現状の正直な評価だ。
経営は、第 6 次中計で営業利益率 3% を掲げたが 2.3% にとどまり、第 7 次は先行きが読めないとして公表を見送った。この慎重さは評価できるが、成長の絵は描けていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の新車販売は約 1 億台で、EV は約 25% に達した。日本国内の EV はまだ 3% に届かないが、新興国や中国で普及が加速している。部品メーカーにとって EV 化は、部品が減る領域と増える領域に分かれる。エンジン、トランスミッション、排気の部品は減る。ハンドルとエアバッグは EV でも要り、むしろ個数が増える傾向にある。
自動運転支援の普及は、ハンドルにセンサーを加える追い風だ。ただし将来、完全な自動運転が広がればハンドルそのものが不要になる。10 年ではそこまで進まないと筆者は見る。
客先の値下げ要請は、EV への投資資金を部品の原価低減で賄う動きの一部だ。価格は物価に届かない。エアバッグは新興国向けの廉価化への対応も会社の課題に挙がる。
競合は、エアバッグではオートリブ、ジョイソン、ダイセルのような大手が世界シェアを持つ。ハンドルはジョイソンや東海理化。国内の独立系は規模が小さく、客先との関係が守りになっている。日産は工場を 17 から 10 に減らす計画で、主要拠点の生産が減るほど、取引先の再編の波は大きくなる。
資本政策と M&A
還元は連結配当性向 30% を目安に、下限が設けられている。2026 年 3 月期は性向が 3 割に近い。自己株式の取得は実施しておらず、増配と下限で安定を目指す。自己資本の割に値段が低く、本来は自己株式の取得が効果的な局面だが、借入があり実施していない。
現金は 139 億円あり、40 億円のコミットメントライン(借入枠)がある。設備投資は 37 億円で、減価償却の 45 億円を下回る。更新が遅れるわけではなく、売上が横ばいの中で投資を抑えた形だ。
政策保有株は伊藤忠商事とダイセルなどで、時価で 25 億円ほど(推定)。持ち合いの解消は今のところ進んでいない。
買収の可能性は 10 年で 3 割程度と推計される。客先の日産が部品の調達を見直す局面では、国内の独立系部品メーカーの再編も起こりうる。TOB の上乗せは本質価値に含めていない。
親会社はいないため、余った現金の戻し方に親子上場のような制約はない。ただし現金は借入の返済と設備更新に回る分が大きく、今は余りを論じる段階にない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ここ 3 期の営業利益は 28 億、28 億、26 億円とそろい、利益の水準は固まった。2026 年 3 月期の純利益 20 億円に対し、時価総額は 84 億円で 4 倍台。配当利回りも 6% を超えて十分に高い。ハンドルとエアバッグは EV 化で消えず、自動運転支援でハンドルにセンサーが載れば単価が上がる。
日産は再建のために工場を減らしているが、それは部品メーカーの数量が急減することを意味しない。むしろ車種を絞って利益を取りに行く動きで、安全部品は削りにくい。北米の売上は 570 億円と日本の 1.3 倍で、関税の負担も一部は客先に回収できている。中国の赤字は 8 億円から 2 億円へ縮んだ。減損 4 億円と赤字の拠点整理が進めば、営業利益率は 3% に近づく。
自己資本 375 億円に対し、現金 139 億円と政策保有株 25 億円がある。借入は 117 億円の純負債だが、営業のキャッシュ収入で十分に返せる水準だ。
慎重な見方
2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が 87% 減り、経常は赤字に落ちた。売上は増えたのに利益が消えた。値上げ要請を受けて仕入価格を引き上げたことも、会社自身がマイナス要因と認めている。営業利益率は 2% 台で、少しの原価上昇で赤字に転ぶ。過去 12 年に、純損失の期が 6 回ある。
売上の 65% を預ける日産は赤字が続き、メキシコの工場を閉じ、世界の工場を 10 に減らす。仕入れ先を絞る局面で、独立系の中堅は真っ先に値下げを迫られる。ホンダは堅調でも 30% にすぎない。
自己資本 375 億円は設備と運転資本に張り付き、売れば簿価の 1 割台しか返らない。純有利子負債は 117 億円で、金利の上昇も重い。自動運転対応ハンドルの品質問題が長引けば、客先の信用に響く。値段が安いのは、それだけのリスクがあるからだ。仮に日産が再建に失敗すれば、10 年間の利益の積み上げは消えるうえ、借入の返済が株主の取り分に先行する。2022 年 3 月期の純損失は 80 億円にのぼり、今の純利益の 4 年分が 1 期で消えた前例もある。
どちらに重みを置いたか
足元の利益の水準が固まっている点と、値段の安さが、慎重な見方を上回る。ただし日産の縮小と値下げ要請は構造的で、中立の利益率は 2% 台、価格は物価に届かない水準に置いた。確率は中立に 3 割強、やや悲観と悲観に合わせて 4 割を置き、楽観は 7% にとどめた。それでも割安が残るのは、利益が半減しても値段が高くないからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,157 円218 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 231 円43 億円)。 今の値に割り戻すと 679 円128 億円、今との差 +51.9%、 期待の年率 +12.0%(資本コスト 8.3%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,376 円447 億円 | 532 円100 億円 | +550.5% | +20.6% | 204 円38 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,879 円353 億円 | 372 円70 億円 | +403.6% | +17.5% | 450 円85 億円 |
| 中立 | 33% | 1,515 円285 億円 | 266 円50 億円 | +298.5% | +14.8% | 588 円111 億円 |
| やや悲観 | 26% | 322 円61 億円 | 106 円20 億円 | −4.1% | −0.4% | 111 円21 億円 |
| 悲観 | 14% | 223 円42 億円 | 27 円5 億円 | −44.1% | −5.6% | 35 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,157 円218 億円 | 231 円43 億円 | +210.5% | +12.0% | 1,388 円261 億円 |
今の株価時価総額 447 円84 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 日産が立ち直り、センサー付きハンドルと多点エアバッグで部品の単価が上がる 利益 36 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 2,376 円447 億円
日産とホンダの両方が北米で販売を戻し、自動運転支援の普及でハンドルにセンサーと手放し検知(運転者がハンドルを握っているかを見張る機能)が標準で付く。ハンドル 1 本あたりの単価が上がる。エアバッグは側面・カーテンなど 1 台あたりの個数が増え、数量が 1 割伸びる。樹脂部品は EV のバッテリー冷却ダクトが加わるが、エンジンまわりの部品は減る。品質問題は片付き、価格転嫁も進む。営業利益は 55 億円と過去最高の 57 億円に並ぶが、営業利益率は 3.6% で、過去の山 4.7% を超えない。中国の赤字は止まり、北米と東南アジアが利益を支える。借入は利益で返せ、配当は性向 3 割台を保つ。
- ステアリング(ハンドル):数量 400(出荷本数(万本。推定))× 価格 1.04(1 万本あたりの売上(億円))→ 売上 417 億円・営業利益 19 億円。ハンドル 400 万本(推定)、1 本あたり 1.34 倍(センサー付きで単価上昇)、利益率 4.5%
- エアバッグ:数量 660(出荷個数(万個。推定))× 価格 0.59(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 388 億円・営業利益 16 億円。エアバッグ 660 万個、1.30 倍、利益率 4.2%
- 樹脂部品:数量 300(搭載車の台数換算(万台。推定))× 価格 2.45(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 736 億円・営業利益 21 億円。樹脂部品 300 万台相当、1.30 倍、利益率 2.8%
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 436 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日産の再建が成功し、自動運転支援のハンドルが量産に乗る筋書きは、赤字の期が 6 回ある会社としては 1 割に届かない。営業利益率が過去最高の 4.7% を超えない形で、7% とした。
やや楽観 20% 日産とホンダの販売は戻るが、値下げ要請で価格は物価に届かない 利益 26 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,879 円353 億円
日産は北米の不振から立ち直り、ホンダは堅調。ハンドルとエアバッグの数量は 5% 減に収まる。価格は物価の 1.34 倍に届かず 1.25 倍。労務費と関税の転嫁は進むが、客先の値下げ要請を差し引く。営業利益率はハンドルが 3.8%、エアバッグが 3.5%、樹脂部品が 2.1%。営業利益は 40 億円、純利益は 25 億円台。中国は赤字を縮め、北米は日産次第。配当は性向 3 割を保つ。自動運転支援のハンドルが一部の車種で量産に入るが、単価の上昇は限られ、品質問題の解決にも時間がかかる。営業利益率は 3% に届かず、過去の山 4.7% の半分強にとどまる。減価償却は新設備の分だけ増え、設備投資と同水準で推移する。
- ステアリング(ハンドル):数量 380(出荷本数(万本。推定))× 価格 0.97(1 万本あたりの売上(億円))→ 売上 369 億円・営業利益 14 億円。ハンドル 380 万本、1.25 倍、利益率 3.8%
- エアバッグ:数量 630(出荷個数(万個。推定))× 価格 0.57(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 356 億円・営業利益 13 億円。エアバッグ 630 万個、1.25 倍、利益率 3.5%
- 樹脂部品:数量 285(搭載車の台数換算(万台。推定))× 価格 2.36(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 672 億円・営業利益 14 億円。樹脂部品 285 万台相当、1.25 倍、利益率 2.1%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 310 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2024 年 3 月期に営業利益 28 億円まで戻したが、その後の 3 期は 28→27→26 億円とほぼ横ばい。回復が進んでも、利益率が 3% を超えて定着する根拠は薄く、5 分の 1 に置いた。
中立 33% 日産の縮小を海外で補い、価格転嫁は半分にとどまる。営業利益率 2% 台が続く 利益 19 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,515 円285 億円
日産は工場を 17 から 10 に減らす計画で、国内と北米の数量は 1 割減る。ホンダ向けと東南アジアが穴を埋めるが、全体の数量は 1 割弱減る。価格は物価の 1.34 倍のうち、値下げ要請で 1.20 倍にとどまる。ハンドルは自動運転支援の普及でセンサー付きが増え、利益率は 3.3%。エアバッグは 3.0%。樹脂部品は EV で要らなくなるエンジンまわりが縮み、バッテリー冷却ダクトで補うが、利益率は 1.7%。減価償却は 2026 年 3 月期の 45 億円から新設備分だけ増える。営業利益は 31 億円、利払い後の純利益は 19 億円。設備投資が償却を上回る年が増え、借入は減らない。
- ステアリング(ハンドル):数量 360(出荷本数(万本。推定))× 価格 0.93(1 万本あたりの売上(億円))→ 売上 336 億円・営業利益 11 億円。ハンドル 360 万本、価格 1.20 倍(客先の値下げ要請で物価の 1.34 倍に届かない)、利益率 3.3%
- エアバッグ:数量 570(出荷個数(万個。推定))× 価格 0.54(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 309 億円・営業利益 9 億円。エアバッグ 570 万個、価格 1.20 倍(値下げ要請と新興国向けの廉価化)、利益率 3.0%
- 樹脂部品:数量 270(搭載車の台数換算(万台。推定))× 価格 2.26(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 612 億円・営業利益 10 億円。樹脂部品 270 万台相当、価格 1.20 倍(値下げ要請と、単価の高いエンジンまわり部品の縮小)、利益率 1.7%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 228 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は平均 2% 台で、4% を超えたのは 3 期だけ。足元の 2.3% に近い水準が 10 年続くと置いた。
やや悲観 26% 日産が縮小し、EV 化で樹脂部品の一部が不要になる。利益率 1% に近づく 利益 6 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 322 円61 億円
日産の生産がさらに 2 割減り、ホンダも北米で伸びない。ハンドルとエアバッグの数量は 15〜25% 減る。米国の関税負担の協議が長引き、価格は物価の 1.34 倍のうち 1.12 倍にとどまる。樹脂部品はエンジンまわりが減り、売上に占める稼働の悪い工場が増える。営業利益は 13 億円まで落ち、金利の上昇もあって純利益は 6 億円。配当は性向を保てず、下限の水準まで減る。設備投資は絞られ、更新が遅れる。2022 年 3 月期と 2023 年 3 月期の赤字ほどの落ち込みには至らないが、薄い黒字が続くだけで株主に残る利益はほとんどない。中国の赤字は止まらず、拠点の整理を迫られる。
- ステアリング(ハンドル):数量 300(出荷本数(万本。推定))× 価格 0.87(1 万本あたりの売上(億円))→ 売上 261 億円・営業利益 5 億円。ハンドル 300 万本、1.12 倍、利益率 2.0%
- エアバッグ:数量 510(出荷個数(万個。推定))× 価格 0.51(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 258 億円・営業利益 4 億円。エアバッグ 510 万個、1.12 倍、利益率 1.6%
- 樹脂部品:数量 225(搭載車の台数換算(万台。推定))× 価格 2.11(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 476 億円・営業利益 4 億円。樹脂部品 225 万台相当、1.12 倍、利益率 0.8%
倍率:ROE 1.6% で稼ぎは k に届かない。PER は 1÷k の 11.1 倍が上限で、利益が薄いので 9.0 倍と割り引いた。EV(時価総額 + 純有利子負債 117 億円)÷ 営業利益は 14 倍になり、借入の重い会社として、これ以上は高く置かない。
確率:2022 年 3 月期と 2023 年 3 月期は営業赤字が続き、純損失は合わせて 116 億円に達した。需要減と原価上昇が重なる状況が再び来る確率を 4 分の 1 強に置いた。
悲観 14% 日産の再建が失敗し、北米と日本の需要が崩れる 利益 −25 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 223 円42 億円
日産の世界販売が構造的に減り、ホンダも北米の電動化の遅れで数量を落とす。ハンドルとエアバッグの数量は半分近くに減る。価格は 1.05 倍と物価の 1.34 倍に遠く及ばず、全社の営業赤字は 17 億円に達する。減損が出て、自己資本は 280 億円に減る。借入は 117 億円が残り、利払いが重くのしかかる。配当は下限も守れず、売れる資産と政策保有株を頼りに継続する。客先は代わりの仕入れ先を探し、中国と北米の拠点は閉鎖に向かう。売上は 700 億円を割り込み、固定費の重い国内工場の稼働が大きく下がる。2022 年 3 月期の純損失 80 億円を上回る損失が、数年続く筋書きだ。
- ステアリング(ハンドル):数量 220(出荷本数(万本。推定))× 価格 0.82(1 万本あたりの売上(億円))→ 売上 180 億円・営業利益 −5 億円。ハンドル 220 万本、1.05 倍、利益率 −2.5%
- エアバッグ:数量 390(出荷個数(万個。推定))× 価格 0.47(1 万個あたりの売上(億円))→ 売上 185 億円・営業利益 −5 億円。エアバッグ 390 万個、1.05 倍、利益率 −2.5%
- 樹脂部品:数量 165(搭載車の台数換算(万台。推定))× 価格 1.98(1 万台あたりの売上(億円))→ 売上 327 億円・営業利益 −8 億円。樹脂部品 165 万台相当、1.05 倍、利益率 −2.5%
倍率:赤字で稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後 47 億円(下の内訳)と、減損後の自己資本 280 億円に 0.15 倍を掛けた 42 億円に近い。今の自己資本 375 億円に対しては 0.11 倍。事業の経済性から置いた値で、市場の値付けには依らない。
確率:日産は 2025 年にメキシコ工場の閉鎖を決め、国内も縮小に動く。売上の 65% を預ける客先が揺らぐ悲観は、10 年で 1 割台の確率とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ステアリング(ハンドル)
ハンドル。自動運転支援のためのセンサー付き(手放し検知)を開発中。
| 数量出荷本数(万本。推定) | 価格1 万本あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.78 | 311 | 10 |
| 10 年後 中立 | 360 | 0.93 | 336 | 11 |
取り方:売上 310.9 億円は開示。出荷本数は開示がなく、日産北米・ホンダ向けの生産規模から 400 万本相当と推定した(1 本あたり約 0.78 万円相当)。営業利益はセグメント別の開示がなく、全社 26.5 億円を安全部品と樹脂部品で配分した推定(本社費を含む)。
エアバッグ
運転席・助手席・側面などのエアバッグモジュール。
| 数量出荷個数(万個。推定) | 価格1 万個あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.45 | 271 | 8 |
| 10 年後 中立 | 570 | 0.54 | 309 | 9 |
取り方:売上 271.3 億円は開示(前期比 12% 減)。出荷個数は開示がなく 600 万個相当と推定した。営業利益はセグメント別の開示がなく推定。
樹脂部品
内外装の樹脂部品、バッテリー冷却用ダクトなど。
| 数量搭載車の台数換算(万台。推定) | 価格1 万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 300 | 1.89 | 566 | 9 |
| 10 年後 中立 | 270 | 2.26 | 612 | 10 |
取り方:売上 566.2 億円は開示(前期比 2.5% 減)。納める車の台数は開示がなく 300 万台相当と推定した。営業利益はセグメント別の開示がなく推定(利益率 1.6%)。10 年の価格が物価の 1.34 倍に届かないのは、客先の値下げ要請と、単価の高いエンジンまわり部品の縮小による。
リスクと懸念
日産への集中と再編
売上の 65% が日産グループ。日産は工場を 17 から 10 に減らす計画で、車種と調達先の絞り込みが進めば、数量と価格の両方に響く。
客先の値下げ要請と関税
取引先の値上げ要請に応じた仕入価格の改定は、すでにマイナス要因になっている。米国の関税の負担協議も続く。価格は物価の 1.34 倍に届かない。
薄い利益率
営業利益率は 2% 台。少しの原価上昇や稼働の低下で赤字に転ぶ。2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が 87% 減った。
EV 化でエンジンまわりの樹脂部品が不要になる
ハンドルとエアバッグは EV でも要るが、樹脂部品にはエンジンまわりの部品があれば縮む。バッテリー冷却ダクトが補えるかは開示から読めない。
品質問題と信用
自動運転対応ハンドルの電子部品の品質問題が長引く。安全部品は不具合が客先の信用に直結し、リコールの費用も重い。
中国事業の赤字と借入
中国は 2 億円の赤字(前の期は 8 億円)。純有利子負債は 117 億円で、金利が上がると利払いが重くなる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 3% を超えて 2 年続く
- 中立の利益率を上に見直し、楽観の確率を上げる。
- 日産が調達先の再編や値下げ要請を強める
- 価格と数量の下振れを大きく見て、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- 自動運転支援ハンドルの量産が本格化し、品質問題が解決する
- ハンドルの単価と利益率を上に見直す。
- 中国の赤字が止まる、または拠点を整理する
- 全社の利益率を 0.2〜0.3 ポイント上げる。
- 自己株式の取得や配当性向の引き上げが出る
- 還元の積み上がりを見直し、資本政策を評価し直す。
- 他社や投資会社からの買収提案が出る
- 提案価格を本質価値と比べる。本質価値は事業の稼ぎで置いてあり、上乗せ分は含まない。
見ておくもの
- 営業利益率(2% 台を保てるか、3% を超えるか)
- 日産グループ向けの売上比率と数量
- 北米の関税負担の回収と価格転嫁の進み具合
- 中国セグメントの損益(2 億円の赤字がゼロになるか)
- 純有利子負債の推移(117 億円)
倍率と資本コストの決め方
数量 × 価格をセグメントごとに積み、k 8.25% と ROE から倍率を決めた。ROE が k 以下で PER は 1÷k の 11.1 倍が上限、中立は 7.4 倍に置いた。今の時価総額は自己資本の 4 分の 1 以下だが、PBR の低さを割安の根拠にしていない。ROE が 4% 前後で、ためた利益は額面どおり評価されないためだ。2026 年 3 月期の営業利益率 2.3% は過去の平均に近く、足元の第 1 四半期の落ち込みも踏まえて中立は 2% 台に置いた。減価償却は 45 億円のまま新設備分を足し、物価では増やしていない。新リース会計基準の影響は小さい見込み。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.12 倍・やや楽観 PER 8.4→12.12 倍・中立 PER 7.4→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。