結論
ホンダは、二輪と金融で稼ぎ、四輪で勝負する複合企業である。筆者の結論は、今の値段はやや割安。10年で約28%の割安と出た。四輪の失敗が目立つが、二輪と金融の稼ぐ力がそれを受け止めている。
二輪は世界シェア約4割で、2026年3月期の世界販売は2,210万台。営業利益は7,319億円と過去最高だった。金融サービス事業も残高16.3兆円を持ち、営業利益2,755億円を出した。
一方で同期は、米国のEV補助金の縮小と化石燃料規制の緩和を受けて戦略を転換し、1兆4,000億円超のEV関連損失を出した。上場以来初の営業赤字と最終赤字(純損失4,239億円)である。赤字の主因は四輪に集中している。
2026年5月の中期計画は、2040年までの全車BEV・FCV化の目標を取り下げ、ハイブリッド車に資源を集める。2029年3月期に営業利益1兆4,000億円以上への回復を目指す。
筆者は中立で、四輪の営業利益率を2.5%という低い姿に置いた。それでも二輪と金融が土台になり、10年後の時価総額は今の2.1倍になる。EV損失と日産との統合破談という連続した方針転換への不信は、今の値段にかなり織り込まれているとみる。二輪という第二の稼ぎ頭が、四輪の失敗で会社全体が揺らぐのを防ぐ安全弁になっている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、本田の最大の価値は二輪事業という「もう一つのオーナー利益の源泉」にある。世界シェア4割・過去最高益という二輪の強さは、新興国の現地生産・ブランド・ディーラー網という堀に支えられ、四輪事業の失敗が会社全体を傾けない安全弁になっている。金融サービス事業も残高が積み上がるほど利益が厚みを増す構造で、トヨタと同様に複利が効く。
ただし四輪事業そのものの質には留保が要る。営業利益率は歴史的に数%台と薄く、トヨタのような規模の経済・ブランド力による価格決定力は弱い。2040年全車BEV/FCV化目標を掲げてから4年足らずで撤回し、AFEELA開発中止、日産との経営統合破談と、経営の見通す力・資本配分の規律そのものに疑問が残る方針転換が連続した。「今の優良さがそのまま続く」と決めつけるのは危うい。
安全域については、ROEがマイナスに落ち込んだ今の値段が一過性のEV損失をどこまで織り込んでいるかが鍵で、二輪・金融の稼ぐ力が健全なままであることは下値への備えになる。一次審査(業績の予測可能性)では、四輪事業の戦略転換の多さが大きな減点材料で、トヨタより安全域を厚く取って評価するのが妥当で、それは資本コストの上乗せに反映した。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は二輪事業・四輪事業・金融サービス事業の3つ。二輪事業は世界160以上の国と地域でホンダブランドの小型コミューター車から大型レジャーバイクまでを生産・販売し、2026年3月期の世界販売は2,210万台で世界シェア約4割の最大手。主戦場はインド・インドネシア・ベトナム・タイ・フィリピンなどアジアの新興国で、現地生産・現地開発した低価格モデルが量を支え、先進国向けの大型バイクが単価を押し上げる。
四輪事業はシビック・アコード・CR-V・N-BOXなどの乗用車・軽自動車を北米・中国・日本・アジアで販売し、2026年3月期の世界販売(グループ計)は338.7万台。北米市場の比重が大きく、関税政策の影響を強く受ける構造で、中国では広汽本田・東風本田との合弁で生産・販売するが、中国地場EV勢との競争で近年は苦戦している。
金融サービス事業はアメリカン・ホンダ・ファイナンスを中心とするファイナンス子会社群が自動車ローン・リースを提供し、2026年3月末の残高は16.3兆円に達した。トヨタの金融事業(45.7兆円)に比べ規模は小さいが、四輪・二輪の販売を支える重要な収益源になっている。小規模なパワープロダクツ事業(汎用エンジン・発電機等)もあるが、全社の規模からすれば限定的。ソニーとの合弁会社ソニー・ホンダモビリティ(EVブランド「AFEELA」)は、ホンダのEV戦略見直しを受けて2026年3月に開発・発売を中止した。
優良さと弱いところ
二輪事業における世界シェア4割という規模の経済と、新興国での現地生産・ブランド力・ディーラー網が最大の堀。長年の品質・耐久性への信頼は新興国の個人客にとって乗り換えコストそのものであり、Hero MotoCorp・Bajaj・中国メーカーが追随してもなお価格以外の面で優位を保っている。四輪事業はハイブリッド車技術の蓄積があるが、トヨタほどの規模の経済・ブランド力はなく、営業利益率は歴史的に数%台と薄く、2026年3月期はEV戦略の見直しに伴う一過性損失で大幅な赤字に転落した。金融サービス事業は販売を支える下支えとして機能するが、トヨタの金融事業に比べ規模は小さい。
ROEは2026年3月期がマイナス3.6%(一過性要因)で、自己資本比率35.3%・純有利子負債は時価総額の約1.2倍とトヨタ並みに金融事業を含む見かけ上のレバレッジは高い。弱みは経営の方針転換の多さで、2040年全車BEV/FCV化目標の撤回、AFEELA開発中止、日産自動車との経営統合協議(2024年12月提案、2025年2月破談)と、短期間に大きな戦略変更が連続し、資本配分の規律・経営の見通す力そのものに疑問符がつく場面が増えている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界新車販売(OICA集計)は2025年に約9,980万台で前年比+4.7%、世界のEV比率は新車の約25%まで伸びたが、日本国内のEV普及率は2.66%と低くHEV・PHEVが主流という構図はホンダにも当てはまる。2026年3月期にホンダが打撃を受けたのは、まさにこの世界的なEV化の速度を見誤った戦略(2040年全車BEV/FCV化目標)の裏返しで、米国のEV補助金見直し・化石燃料規制緩和でEV需要が鈍化し、開発中だった北米生産EV3車種の開発・発売を中止する一過性損失を抱えた。トヨタ・ホンダ・日産・マツダ・SUBARU・スズキという国内競合に加え、BYDなど中国EV勢が新興国・欧州への輸出攻勢を強める構図は乗用車メーカー全体に共通する。
一方、二輪事業が属する世界二輪市場は2024年に約5,990万台(過去最高)で、インドが単独で約1,960万台と世界最大市場、インドネシア・ベトナム・タイ・フィリピンが続く。インド・ASEANの所得向上でモータリゼーションが続く一方、電動二輪はインドで121万台まで拡大しており、10年の時間軸では新興国で電動二輪比率が2〜3割まで高まる可能性がある。ホンダは二輪の世界シェア約4割を握る最大手で、ヤマハ発動機・Hero MotoCorp・Bajaj・TVS・中国メーカーとの寡占的な競争が続く。2026年5月の中期計画では、2027年から新世代HEVを投入し2029年度までに世界15モデルを展開、開発費・開発期間・開発工数を2025年比で50%減らす「トリプルハーフ」で中国勢のコスト競争力に対抗する方針を示した。
資本政策と M&A
配当方針は2026年3月期から、業績変動に左右されにくい安定配当を目指してDOE(調整後親会社所有者帰属持分配当率)3.0%を目安とする方式に転換し、最終赤字の2026年3月期も年間約2,725億円(前期と同水準)の配当を継続した。自己株買いは機動的な資本政策の一環として適宜実施する方針。
最大の資本イベントは2024年末に日産自動車へ提案した経営統合協議で、株式交換による子会社化が念頭にあったとされるが、日産側が自主性の維持に確信を持てず2025年2月に協議は打ち切られ、同年8月にSDV分野での協業(資本統合なし)に転換した。三菱自動車とは資本提携・協業関係を維持するが買収には至っていない。ソニーとの合弁ソニー・ホンダモビリティは、EV戦略見直しに伴いAFEELA第1弾・第2弾の開発・発売を中止し、投資の一部が失われた。
点検済み:起点は 2026/03 の EV 関連の一過性損失(約 1.45 兆円)を除き、純利益 6,500 億円にならして流れを始めている。中立の営業利益率 6.3% は過去 12 年の平均 4.5% より高いが、二輪が利益の柱に育った構成の積み上げで、二輪 16.5% は直近の過去最高 18.2% より下、四輪は 2.5%。金融子会社は金融サービス事業として別に積み、株数は自己株を除いた値と一致。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
二輪事業は過去最高の営業利益を記録し、世界シェア4割という規模の経済は揺るがない。インド・インドネシア・ベトナムなど新興国のモータリゼーションは今後も続き、電動二輪への移行でも現地生産・ブランド力を持つホンダが優位に立てる可能性が高い。金融サービス事業も残高16.3兆円まで積み上がり、二輪・四輪の販売を支える「二本目・三本目の収益の柱」として機能している。
四輪事業の赤字はEV戦略の見直しに伴う一過性の損失が主因で、これを除けば小幅な黒字を確保している。2026ビジネスアップデートで示された「トリプルハーフ」(開発費・期間・工数を2025年比で50%減)が実現すれば、中国勢の価格攻勢にも対抗できる体質転換になる。2027年からの次世代HEV15車種投入は、まさに今需要が強いHEV市場を狙い撃ちにした合理的な資源配分で、2029年3月期の営業利益1兆4,000億円以上という会社目標は、二輪・金融の安定した稼ぐ力を考えれば十分に実現可能な水準だ。日産との経営統合破談は短期的な混乱に見えるが、無理な統合を避けて身軽さを保てたとポジティブに評価できる。AFEELA中止も、身の丈に合わないEV投資を早期に止める規律ある判断と見れば、むしろ評価できる資本配分だ。
慎重な見方
四輪事業の営業利益率は歴史的に数%台と薄く、今回のEV関連損失1兆4,000億円超は単発の不運では済まされない。2040年全車BEV/FCV化という自ら掲げた目標をわずか数年で撤回し、北米生産予定だったEV3車種の開発・発売を直前で中止するという経営判断の揺れは、世界の需要動向を読む力そのものへの疑問を抱かせる。AFEELA開発中止もソニーとの合弁に投じた資源の一部が無駄になったことを意味し、日産自動車との経営統合協議も、提案から破談までわずか2カ月という拙速さが露呈し、資本市場の信頼を損ねた。
中国のBYDなど地場EVメーカーは新興国・欧州への輸出攻勢を一段と強めており、ホンダが得意とするハイブリッド車の優位も、バッテリーコストの低下とともにいずれ薄れる。二輪事業も中国・インドの地場メーカーが電動二輪で台頭すれば、現在の世界シェア4割がこの先10年も保たれるとは限らない。自己資本比率は35.3%、純有利子負債は時価総額の1.2倍に達し、四輪事業の赤字が続けばDOE3.0%を目安とする新しい配当方針も維持できなくなるリスクがある。短期間に連続した大きな方針転換そのものが、経営の資本配分規律への不信として今後も尾を引く可能性が高い。
どちらに重みを置いたか
二輪の過去最高益と金融の安定は、四輪の一過性の損失だけで会社全体の価値は損なわれないという強気の指摘を支える。一方、EV戦略の急転換、AFEELAの中止、日産との統合破談と、方針転換が短期間に続いたことは、慎重な指摘として軽くない。
中立でも、二輪と金融の稼ぎで本質価値は今の時価総額を上回る。倍率は式の上限の8.5割に抑えた。確率は中立を軸にしつつ、四輪再建の実行力への不安から、やや悲観側にトヨタより厚い確率(10年の悲観は16%)を置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,598 円17.90 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 894 円3.48 兆円)。 今の値に割り戻すと 2,796 円10.88 兆円、今との差 +55.6%、 期待の年率 +11.8%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 11,785 円45.88 兆円 | 1,653 円6.44 兆円 | +648.0% | +22.3% | 1,075 円4.19 兆円 |
| やや楽観 | 19% | 7,984 円31.08 兆円 | 1,322 円5.15 兆円 | +418.0% | +17.9% | 1,768 円6.88 兆円 |
| 中立 | 31% | 4,735 円18.43 兆円 | 1,022 円3.98 兆円 | +220.4% | +12.3% | 1,784 円6.95 兆円 |
| やや悲観 | 26% | 1,766 円6.87 兆円 | 691 円2.69 兆円 | +36.8% | +3.2% | 639 円2.49 兆円 |
| 悲観 | 16% | 1,323 円5.15 兆円 | 90 円3,510 億円 | −21.3% | −2.4% | 226 円8,803 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,598 円17.90 兆円 | 894 円3.48 兆円 | +205.7% | +11.8% | 5,493 円21.38 兆円 |
今の株価時価総額 1,797 円6.99 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 固体電池と次世代HEVでEVでも優位を取り戻す 利益 29,203 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 11,785 円45.88 兆円
全固体電池の量産化とソフトウェア定義車(SDV)への対応に成功し、ハイブリッド車の優位を保ちながらEVでもコスト競争力を獲得する。四輪事業は世界販売400万台まで伸び、電動化・安全装備の高度化で平均販売単価も大きく上がり営業利益率7.5%まで改善する。二輪事業はインド・ASEANの成長に加え電動二輪へのシフトでも現地生産・ブランド力を発揮し、世界販売2,900万台・営業利益率19%近くまで高まる。金融サービス事業は残高26兆円まで拡大し、サブスクリプション等の新サービスが利ざやを支える。日産とのSDV協業、三菱自動車との提携も新技術の相互活用に寄与し、2040年全車BEV/FCV化目標の撤回を乗り越えて再び成長軌道に戻る10年になる。
- 二輪事業:数量 2,900(世界販売台数(万台))× 価格 28(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 79,896 億円・営業利益 15,181 億円。電動二輪シフトでも営業利益率19.0%
- 四輪事業:数量 400(世界販売台数(グループ計、万台))× 価格 618(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 247,281 億円・営業利益 18,546 億円。固体電池・SDVで営業利益率7.5%
- 金融サービス事業:数量 26.0(金融サービス受取債権+オペレーティングリース資産残高(兆円))× 価格 21.0%(残高に対する営業収益の利回り(%、実質的な利ざや))→ 売上 54,600 億円・営業利益 4,641 億円。サブスク等で営業利益率8.5%
倍率:事業の純利益 29,203 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.71 倍、時価総額 458,779 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:固体電池の量産化・SDVへの対応・次世代HEVの成功を複数同時に実現する必要があり、実現すれば非常に強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 19% 次世代HEVと二輪の成長が主要市場で機能し続ける 利益 21,087 億円 · PER 14.7 倍 · 株価時価総額 7,984 円31.08 兆円
次世代HEVが北米・アジアの主要市場で支持を保ち続け、四輪事業は世界販売375万台まで緩やかに伸び、営業利益率5.0%前後を回復する。電動化コストの上昇は一定程度価格に転嫁できる。二輪事業は世界販売2,750万台まで伸び、電動二輪の普及が進む新興国でも現地生産の強みを生かして営業利益率18%前後を保つ。金融サービス事業は残高23兆円まで拡大し、営業利益率8%前後を維持する。中国EV勢のシェア拡大は一部地域で進むが、二輪・四輪ともに主力市場では踏みとどまり、トリプルハーフによる体質転換も一定の成果を上げる底堅い10年になる。
- 二輪事業:数量 2,750(世界販売台数(万台))× 価格 27(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 73,176 億円・営業利益 13,172 億円。営業利益率18.0%
- 四輪事業:数量 375(世界販売台数(グループ計、万台))× 価格 585(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 219,226 億円・営業利益 10,961 億円。営業利益率5.0%
- 金融サービス事業:数量 23.0(金融サービス受取債権+オペレーティングリース資産残高(兆円))× 価格 20.5%(残高に対する営業収益の利回り(%、実質的な利ざや))→ 売上 47,150 億円・営業利益 3,866 億円。営業利益率8.2%
倍率:事業の純利益 21,087 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.7 倍。全体の PER 14.74 倍、時価総額 310,822 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:次世代HEVと二輪の成長が主要市場で機能し続けるという、中期計画の達成に近い想定。
中立 31% 中立:四輪はEV化の波に揺れ、二輪が会社を支え続ける 利益 13,974 億円 · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 4,735 円18.43 兆円
世界のEV比率が40〜50%まで上がる中、四輪事業はハイブリッド車の強みを維持しつつEVでも一定のシェアを確保するが、中国EV勢に新興国・欧州の一部シェアを奪われ、世界販売は350万台にとどまり営業利益率は2.5%程度で低迷する。二輪事業は新興国のモータリゼーションと電動二輪への移行が同時に進み、世界販売2,600万台・営業利益率16.5%で安定的に稼ぎ続け、全社の利益を実質的に支える。金融サービス事業も残高20兆円・利回り20%程度で安定する。固体電池や次世代HEVでの飛躍的な優位確立には至らないが、二輪という第二の収益源があるおかげで、四輪の苦戦だけでは優良企業としての評価を失わずに済む10年になる。
- 二輪事業:数量 2,600(世界販売台数(万台))× 価格 26(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 66,389 億円・営業利益 10,954 億円。営業利益率16.5%
- 四輪事業:数量 350(世界販売台数(グループ計、万台))× 価格 551(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 192,852 億円・営業利益 4,822 億円。営業利益率2.5%
- 金融サービス事業:数量 20.0(金融サービス受取債権+オペレーティングリース資産残高(兆円))× 価格 20.0%(残高に対する営業収益の利回り(%、実質的な利ざや))→ 売上 40,000 億円・営業利益 3,120 億円。営業利益率7.8%
倍率:事業の純利益 13,974 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.2 倍。全体の PER 13.19 倍、時価総額 184,317 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界のEV化と中国勢の台頭という業種ノートの中心的な見通しに沿う、四輪はEV化に揺れつつ二輪が支える、最も重みを置く筋書き。
やや悲観 26% 中国EV勢に四輪・二輪とも侵食される 利益 6,148 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 1,766 円6.87 兆円
中国の地場EVメーカーが新興国・欧州への輸出攻勢を一段と強め、四輪事業のハイブリッド車の優位もバッテリーコスト低下で徐々に薄れる。世界販売は310万台まで伸び悩み、値引き合戦で営業利益率はマイナス1.0%まで悪化する。二輪事業も中国・インドの地場メーカーが電動二輪で台頭し、世界シェア4割が侵食されて世界販売2,400万台・営業利益率14%まで低下する。金融サービス事業も信用コストの上昇で利回りが縮む。EV戦略の度重なる方針転換への不信がなかなか払拭されず、DOE目安の配当方針も縮小圧力を受け続ける苦しい10年になる。
- 二輪事業:数量 2,400(世界販売台数(万台))× 価格 24(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 57,412 億円・営業利益 8,038 億円。営業利益率14.0%
- 四輪事業:数量 310(世界販売台数(グループ計、万台))× 価格 517(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 160,396 億円・営業利益 −1,605 億円。営業利益率マイナス1.0%
- 金融サービス事業:数量 17.5(金融サービス受取債権+オペレーティングリース資産残高(兆円))× 価格 19.0%(残高に対する営業収益の利回り(%、実質的な利ざや))→ 売上 33,250 億円・営業利益 2,328 億円。信用コスト増で営業利益率7.0%
倍率:中国 EV 勢に四輪・二輪とも侵食され、純利益 6,148 億円・ROE 4.3% は k 7.75% を下回る。PER の上限は 1÷k = 12.1 倍で、成長のない利益なので上限の 8.7 割の 11.18 倍に置いた。二輪と金融が残る姿で、式と事業の経済性から置いた。
確率:中国EV勢の輸出攻勢が四輪・二輪とも侵食するという、業種ノートの下位レンジに相当する想定。 度重なる方針転換への不信は資本コストに足さず、この筋書きの確率を 1〜2 点厚くして表した。
悲観 16% 四輪が構造的に優良さを失う一方、二輪が最後の支え 利益 −1,233 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,323 円5.15 兆円
中国・新興EVメーカーがコスト・技術で優位に立ち、四輪事業の世界シェアが構造的に縮小する。ハイブリッド車の優位はEVの価格低下でほぼ消え、世界販売は230万台まで落ち込み、値引き合戦と工場の稼働率低下で営業利益率はマイナス6%まで悪化する。金融サービス事業も残高の縮小と信用コスト上昇で利ざやが薄れる。二輪事業も中国・インドの地場メーカーの電動二輪攻勢で世界シェアを失い、世界販売は2,000万台まで縮小するが、それでも営業利益率9%程度を保ち、全社が完全な損益崩壊に陥ることを防ぐ最後の支えになる。配当も手元現金・金融資産を取り崩して最低限を維持するにとどまり、経営の方針転換が繰り返された結果、投資家は資本配分への期待を捨て、優良企業としての評価そのものを市場から外してしまう10年になる。 赤字の年も配当は二輪・金融の稼ぎと手元資金で払い、足りない分は政策保有株の売却も充てる。
- 二輪事業:数量 2,000(世界販売台数(万台))× 価格 21(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 41,661 億円・営業利益 3,750 億円。営業利益率9.0%
- 四輪事業:数量 230(世界販売台数(グループ計、万台))× 価格 457(平均販売単価(ASP、万円/台))→ 売上 105,094 億円・営業利益 −6,306 億円。営業利益率マイナス6.0%
- 金融サービス事業:数量 13.0(金融サービス受取債権+オペレーティングリース資産残高(兆円))× 価格 17.0%(残高に対する営業収益の利回り(%、実質的な利ざや))→ 売上 22,100 億円・営業利益 995 億円。信用コスト増で営業利益率4.5%
倍率:赤字の筋書きなので稼ぐ力でなく売れる資産で測る。二輪を売った税後約 2.9 兆円、金融事業の純資産を簿価の 8 割・税引き後で売って約 2.0 兆円、その他約 0.3 兆円を合わせた 5.2 兆円を床とし、今の自己資本 118,175 億円の約 0.44 倍の 5.15 兆円に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.45 倍・時価総額 51,507 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:四輪事業の技術優位の喪失と、度重なる戦略転換への不信が重なる複合シナリオ。四輪事業の収益力がトヨタより薄く、二輪事業も中国・インド地場メーカーの電動化攻勢に晒されるため、トヨタ(10%)よりやや高い確率を置いた。 度重なる方針転換への不信は資本コストに足さず、この筋書きの確率を 1〜2 点厚くして表した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
二輪事業
世界160以上の国と地域で小型コミューター車から大型レジャーバイクまでを生産・販売。新興国の現地生産モデルが量を、先進国向け大型車が単価を支える。
| 数量世界販売台数(万台) | 価格平均販売単価(ASP、万円/台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,210 | 18 | 40,188 | 7,319 |
| 10 年後 中立 | 2,600 | 26 | 66,389 | 10,954 |
取り方:2026年3月期の世界二輪車販売2,210.1万台(世界シェア約4割)と二輪事業の売上4兆0,188億円から、売上÷台数で平均販売単価(ASP)18.18万円を逆算した。営業利益7,319億円は過去最高。
四輪事業
シビック・アコード・CR-V・N-BOXなどの乗用車・軽自動車を北米・中国・日本・アジアで販売。北米市場の比重が大きく、関税政策の影響を強く受ける。
| 数量世界販売台数(グループ計、万台) | 価格平均販売単価(ASP、万円/台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 339 | 409 | 138,634 | −14,111 |
| 10 年後 中立 | 350 | 551 | 192,852 | 4,822 |
取り方:2026年3月期のグループ世界販売338.7万台(前年371.6万台から減)と四輪事業の売上13兆8,634億円から平均販売単価(ASP)409.4万円を逆算した。営業利益はEV関連一過性損失(北米生産予定EV3車種の開発・発売中止に伴う減損等)1兆4,536億円を含め1兆4,111億円の損失。これを除くとほぼ損益ゼロ〜小幅益。 単価は物価並みに上げるが、3 年の中立は米国の大型 SUV・ピックアップの比率が下がり小型車と HEV に寄るので、実質で 3% ほど下がる(名目では今の 1.05 倍)と置いた。10 年は物価並み(1.34 倍)。
金融サービス事業
アメリカン・ホンダ・ファイナンス等のファイナンス子会社群による自動車ローン・リースの提供。四輪・二輪の販売を支える。
| 数量金融サービス受取債権+オペレーティングリース資産残高(兆円) | 価格残高に対する営業収益の利回り(%、実質的な利ざや) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.3 | 21.6% | 35,295 | 2,755 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 20.0% | 40,000 | 3,120 |
取り方:ファイナンス子会社群の金融サービス受取債権+オペレーティングリース資産残高(IFRS、2026年3月末)16兆3,272億円を残高とし、金融サービス事業の売上3兆5,295億円÷残高で利回り21.6%を算出、営業利益2,755億円との比で営業利益率7.8%を得た。 残高(兆円)は車の値段と一緒に物価で膨らむ名目の値で、利回りも名目のまま(トヨタと同じ扱い)。金融の借金は仕入れなので、全社の利払いの計算からは外した。
リスクと懸念
EV戦略の度重なる転換
2040年全車BEV/FCV化目標を掲げてから数年で撤回し、北米生産予定だったEV3車種の開発・発売を直前で中止、ソニーとの合弁AFEELAも開発中止に至った。経営が世界のEV需要の速度を見誤り、大きな方針転換を短期間に連続させたこと自体が、今後の資本配分判断への不信として残り続けるリスクがある。
四輪事業の薄い収益力
四輪事業の営業利益率は歴史的に数%台にとどまり、トヨタのような規模の経済・ブランド力による価格決定力を持たない。北米関税・中国EV勢との価格競争が重なれば、EV関連損失のような一過性要因がなくても事業単体で損益が悪化しやすい構造的な脆さを抱えている。
中国EV勢の台頭
BYDをはじめとする中国のEVメーカーがコストと技術で急速に力をつけ、新興国・欧州への輸出攻勢を強めている。四輪事業のハイブリッド車の優位だけでなく、二輪事業の世界シェア4割も電動二輪の普及とともに中国・インドの地場メーカーに侵食されるリスクがある。
日産との経営統合破談とガバナンス
2024年12月に提案した日産自動車との経営統合協議は、わずか2カ月で正式に打ち切られた。提案から破談までの拙速さは資本市場の信頼を損ね、SDV分野での協業へ転換したものの、大型M&Aを見極める経営の判断力そのものへの疑問が残っている。
関税・通商政策の感応度
北米市場の比重が大きい四輪事業は、米国の通商政策(関税)の変更に業績が強く左右される構造が続く。関税率や対象品目の変更、現地生産比率の調整が追いつかない間は、価格転嫁が進まず営業利益率を圧迫し続ける可能性がある。
金融サービス事業の信用コスト
ファイナンス子会社群の残高は16.3兆円まで積み上がっており、景気後退期に自動車ローン・リースの焦げ付きが増えれば利益への下押しが大きい。四輪・二輪の販売不振と信用コスト悪化が同時に進めば、下支え役であるはずの金融事業の利益も縮小する。
配当方針(DOE)の持続性
2026年3月期から導入したDOE3.0%目安の配当方針は、業績が振れても安定配当を維持する狙いだが、最終赤字が続けば自己資本の積み上がりそのものが鈍り、配当の原資を削る形で株主還元の持続性が試される場面が出てくる可能性がある。
今後の分かれ目
- 次世代HEVが2027年から計画どおり北米・アジアで投入され販売が伸びたら
- やや楽観・楽観側の筋書きに重みを移す。四輪事業の営業利益率がどこまで回復したかを確認する。
- 中国EVメーカーの新興国・欧州シェアが会社の想定を上回って拡大したら
- 10年の筋書きをやや悲観側に寄せる。四輪だけでなく二輪事業の世界シェアも侵食されているかを見る。
- 日産自動車とのSDV協業が具体的な製品・収益に結びついたら
- 四輪事業の技術投資の前提をやや楽観側に見直す。
- ファイナンス子会社群の信用コストが景気後退で急上昇したら
- 金融サービス事業の利益前提をやや悲観側に下げる。
- トリプルハーフ(開発費・期間・工数の50%減)が計画を上回って進んだら
- 四輪事業の損益改善ペースを楽観側に見直す。
- 二輪事業で電動二輪への移行が新興国で想定より急速に進んだら
- ホンダの現地生産・ブランド力が優位に働くか、中国・インド地場メーカーに奪われるかを見極めて確率を調整する。
見ておくもの
- 四半期ごとの四輪事業の営業利益率とEV関連損失の有無
- 二輪事業の世界販売台数と世界シェア
- 次世代HEVの投入進捗(2027年開始・2029年度15モデル)とトリプルハーフの達成度
- ファイナンス子会社群の残高と信用コストの推移
- 日産自動車とのSDV協業・三菱自動車との提携の進捗
- DOE3.0%目安の配当方針の継続状況
倍率と資本コストの決め方
二輪・四輪は世界販売台数×平均販売単価、金融サービスは残高×利回りで売上と利益を積み上げた。資本コストは基本7.5%に quality +0.75%(循環+0.5・寿命+0.25)を足した8.25%。倍率は利益ベースの正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(g 4.5%、RONIC は k を超える分の半分が残る値)を上限として、中立は8.5割、楽観・やや楽観は8.8割に置いた。金融サービスは ROE が k 前後なので同じ PER で測り、純有利子負債 8.4 兆円を全部足した EV ÷ 営業利益は中立で 11 倍。やや悲観は稼ぐ力(上限の 8.7 割)、悲観は二輪と金融の売れる資産の税後 5.2 兆円を床にし、今の自己資本に掛けた。過去の PBR は使っていない。今の値段は最後に比べただけ。総合は10年で約 +29% のやや割安。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.4→15.71 倍・やや楽観 PER 11.7→14.74 倍・中立 PER 10.7→13.19 倍・やや悲観 PER 10.5→11.18 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。EV 戦略の転換や統合破談といった個別のリスクは k に足さず、やや悲観・悲観の確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。
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