結論
ナンシンは、台車や機械の脚に付ける車輪、キャスターの専業の老舗だ。工場や物流の現場で荷物を運ぶ道具を作り、マレーシアと中国にも工場を持つ。筆者の結論は「適正」だ。手元には時価総額とほぼ同じ約38億円の現金がある。一方で、本業の営業利益率は2%台に沈み、自己資本の大きさに比べて稼ぎがあまりに小さい。
キャスターは、どこの工場や倉庫にも要る地味な部品だ。物流の人手不足で、重い物を楽に運ぶ道具の需要は底堅い。重量物用の高機能キャスターという伸ばしたい商品もある。ただ、汎用のキャスターは中国やアジアのメーカーと値段で競い、原材料と人件費の上昇を客に転嫁しきれていない。2015〜2021年は7〜11%あった利益率が、ここ数年は1〜2%台だ。
値段を支えているのは現金だ。投資ファンドなどが株主に並び、現金を株主に戻す圧力はかかっている。ただ、会社がそれに応える保証は無い。事業の稼ぎだけでは資本コストに届かず、現金の行方が価値の多くを決める会社だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業そのものより、手元の現金の使い道が価値を決める会社だ。キャスターは地味だが要る部品で、販路と品ぞろえには年月の重みがある。ただ、値段を決める力は弱く、利益率は数年で7%台から2%台に落ちた。
オーナーとして見ると、資本の配分が最大の問題だ。自己資本の3割以上を現金と預金で持ち、2%前後の利回りで眠らせている。事業も資本コストに届かない稼ぎしか生まない。この状態が10年続けば、帳簿の価値は増えても株主の価値はほとんど増えない。
値段については、現金がある分だけ下値は固い。ただし、現金の価値は会社がそれを株主に戻すかどうかで決まり、少数株主にはそれを決められない。筆者が見方を変えるのは、会社が自社株買いや増配で現金を大きく戻すと決めた時か、本業の利益率が5%を超えて戻った時だ。それまでは、現金があるから安いと言い切るのは早い。
何で稼ぐ会社か
事業はキャスターと、その他の物流機器に分かれる。2026年3月期の売上98億円のうち、キャスターが58億円、台車などその他が39億円だった。キャスターは8%減り、その他は14%増えた。
キャスターは、台車、カゴ車、医療機器、事務機器、工場の設備の脚に付ける車輪だ。軽い物用から何トンもの重い物を運ぶ重量物用まで、大きさと材質の組み合わせで品の数が多い。重量物用の高機能キャスターは、搬送の手間と電気を減らすとして力を入れており、年3万個の目標に対して2026年3月期は2.5万個を売った。
その他は、樹脂やスチールの台車、運搬車、物流の現場の道具だ。工具や機械の卸の山善が売上の18%、台車のメーカーの本宏製作所が10%を占め、代理店の販路で全国の工場や倉庫に届く。
生産は国内のほか、マレーシアのペナンと中国の蘇州で行う。蘇州の工場は利益を出すが、マレーシアは赤字が続く。国内の店舗の跡地をスギ薬局の運営会社に貸すなど、小さな賃貸の収入もある。
利益の柱は国内と中国で、マレーシアの立て直しが全社の利益率を左右する。
優良さと弱いところ
優良さは、長い取引の積み重ねにある。キャスターは品の数が多く、客の設計に合わせた細かな品ぞろえと、すぐに届ける在庫が要る。山善などの販路と、70年を超える取引の実績は、新しく入る会社には作りにくい。
しかし、値段を決める力は弱い。汎用のキャスターは中国や台湾のメーカーも作れ、客は値段で選びやすい。2022年からの原材料と物流費の上昇を転嫁しきれず、営業利益率は7%台から2%台に落ちた。マレーシアの工場の赤字も重い。
資本の効率は低い。自己資本は約121億円あるのに、純利益は2億円台で、ROEは2%前後だ。その大きな理由は、時価総額とほぼ同じ現金と定期預金を抱えていることにある。配当性向は5割を超えるが、利益が小さいので額は限られる。
経営には変化の兆しもある。投資ファンドが株主に並び、取り合いになっていたパラマウントベッドの株は公開買付けに応じて売った。持ち合いを解き、資本の使い方を見直す圧力はかかっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
キャスターの需要は、工場、倉庫、病院、店舗の数と、そこで物を運ぶ回数で決まる。国内の製造業は伸びないが、物流の人手不足は深刻で、重い物を少ない人数で運ぶ道具の需要は底堅い。自動の搬送機やロボットにも車輪は要る。医療や介護の機器、事務機器も安定した売り先だ。
一方で、汎用のキャスターは値段の競争が激しい。中国や台湾、東南アジアのメーカーが安い品を出し、ネット通販でも簡単に買える。国内の大手には車輪の専業のハンマーキャスターなどがあり、高い荷重や静かさ、耐熱など、機能で差をつけた品で勝負している。
景気の波もある。工場の設備投資と物流の投資が落ちれば、キャスターの注文も減る。ただ、消耗品として交換の需要もあるので、落ち方は機械ほど深くない。10年の中立では、国内の数量は横ばいからわずかに増え、海外は東南アジアの工場の需要で少し伸びると見る。値段は物価にやや届かない。原材料のゴム、樹脂、鉄の値段は物価並みに上がるので、利益率を戻すには品の入れ替えと値上げが要る。
この会社は、機能の品と汎用の品の間に挟まれている。
資本政策と M&A
配当は年2回で、2026年3月期の配当性向は57%だった。利益が小さいので、配当の総額は1.3億円にとどまる。
財務はきわめて厚い。2026年3月末の現金と預金は約41億円で、借入は3.5億円しかない。現金同等物は30億円で、残りの約11億円は3か月を超える定期預金だ。ほかに持ち合いの株が約5億円ある。時価総額は約39億円なので、事業はほとんどただで値付けされている計算になる。
株主の顔ぶれは変わってきた。創業家とみられる個人が13%、投資事業有限責任組合のUH Partnersが7%、光通信系の組合が6%を持つ。自己株は発行済の約17%に当たる。現金を株主に戻すよう求める声が強まれば、自社株買いや増配、あるいは会社の売却が選択肢に上る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この値段は、ほとんど現金の額だ。現金と預金は41億円、借入は3.5億円で、時価総額39億円を純現金だけで賄える。そのうえ持ち合いの株と、貸している土地もある。キャスターと台車の事業は、ほぼただで付いてくる。
事業も底を打った。2026年3月期は経常利益が2割増え、2027年3月期も増益の予想だ。台車などのその他の売上は14%伸びた。物流の人手不足で、重い物を楽に運ぶ道具の需要は増え続ける。重量物用の高機能キャスターは2.5万個まで育ち、目標の3万個も見えている。2015〜2021年に7〜11%あった利益率の半分に戻るだけでも、利益は今の2倍になる。
株主の顔ぶれも変わった。投資ファンドや光通信系の組合が株を持ち、持ち合いのパラマウントベッドの株は売った。現金を戻す圧力は強まっている。自社株買いや増配が出れば、眠っている現金がそのまま株主の価値になる。
現金を外した事業の値段は、利益の数倍にすぎない。下値の固さに比べ、上値の余地は大きい。
慎重な見方
利益率が戻る根拠は弱い。原材料と人件費の上昇を客に転嫁しきれず、営業利益率は5年近く1〜2%台に沈んでいる。汎用のキャスターは中国や東南アジアのメーカーと値段で競う商品で、会社の努力だけで7%台に戻せるとは考えにくい。マレーシアの工場は赤字が続き、高機能キャスターも目標に届いていない。
キャスターの売上は8%減った。客の上位2社で売上の3割近くを占め、販路の都合で注文が揺れる。
現金も、戻らなければ株主の価値にならない。会社は長年この現金を抱えたままで、自社株買いの方針も示していない。配当性向は5割を超えるが、利益が小さいので額はわずかだ。少数株主が現金の使い道を決めることはできない。現金を外して見れば、資本コストに届かない事業が残るだけだ。
事業の稼ぎが資本コストに届かない限り、現金は帳簿の上で眠り続ける。会社が自ら現金を戻すと決めない限り、現金の厚さを値段の支えと見るのは危うい。株主の圧力が実るかどうかも、まだ誰にもわからない。
どちらに重みを置いたか
両者はほぼ拮抗する。現金の厚さと株主の圧力は本物で、事業も底を打った。一方で、利益率が戻る根拠は弱く、現金が戻る保証も無い。確率は中立に4割弱、楽観側に2.8割、悲観側に3.4割を置いた。現金があるので、深い悲観でも価値は大きくは崩れない。現金を戻す決定が出れば、強気の見方に大きく傾く。逆に、利益率が戻らないまま現金が工場の整理に使われ始めれば、慎重な見方に寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,053 円68 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 284 円18 億円)。 今の値に割り戻すと 681 円44 億円、今との差 +12.8%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,870 円120 億円 | 468 円30 億円 | +287.0% | +14.5% | 187 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,489 円96 億円 | 390 円25 億円 | +211.1% | +12.0% | 376 円24 億円 |
| 中立 | 38% | 1,187 円76 億円 | 312 円20 億円 | +148.1% | +9.5% | 569 円37 億円 |
| やや悲観 | 22% | 574 円37 億円 | 187 円12 億円 | +26.0% | +2.3% | 167 円11 億円 |
| 悲観 | 12% | 234 円15 億円 | 78 円5 億円 | −48.4% | −6.4% | 37 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,053 円68 億円 | 284 円18 億円 | +121.4% | +8.3% | 1,337 円86 億円 |
今の株価時価総額 604 円39 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 高機能キャスターが育ち利益率が戻る 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,870 円120 億円
物流の人手不足が深まり、倉庫や工場は重い物を少ない人数で運ぶ道具を求める。重量物用の高機能キャスターは年10万個を超え、自動の搬送機やロボットの車輪にも採用される。品の入れ替えで、キャスター1個あたりの売上は物価を上回って上がる。
台車などの物流機器も伸び、マレーシアの工場は品の絞り込みで黒字に戻る。営業利益率は8%台に戻り、営業利益は11億円に近づく。
会社は株主の求めに応じて自社株買いと増配を進め、現金の一部を戻す。それでもROEは6%前後で、資本コストには届かない。現金が多すぎて、資本の効率は上がりきらない。
- キャスター:数量 450(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 0.20(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 90 億円・営業利益 8 億円。450万個×単価1.33倍、利益率9%
- 台車などの物流機器:数量 36.0(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 1.60(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 58 億円・営業利益 3 億円。36万台×単価1.33倍、利益率5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 120 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:重量物用の高機能キャスターと物流の自動化の需要で、利益率が過去の良い年の水準に戻る姿。値段の競争を考えると1割未満。
やや楽観 20% 値上げが通り利益率が半分戻る 利益 6 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,489 円96 億円
値上げが少しずつ通り、原材料と人件費の上昇を取り戻す。高機能キャスターは目標の3万個を超え、5万個前後まで伸びる。キャスター全体の数量は1割余り増える。
台車などの物流機器も物流の投資で伸び、マレーシアの工場は収支とんとんまで戻る。営業利益率は5%台半ばで、2010年代後半の水準の半分を少し超える。営業利益は8億円台になる。
配当は増え、自社株買いも時々行う。ROEは4〜5%で、資本コストには届かない。
現金はほとんど手つかずで残り、株主の価値の多くは引き続き現金が支える。事業の価値は少し上がるが、現金の使い道は変わらない。
- キャスター:数量 430(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 0.20(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 85 億円・営業利益 6 億円。430万個×単価1.32倍、利益率7%
- 台車などの物流機器:数量 35.0(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 1.58(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 55 億円・営業利益 2 億円。35万台×単価1.32倍、利益率4%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 96 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと品の入れ替えで利益率が5〜6%に戻る姿。2026年3月期の増益と2027年3月期の計画が続く前提で2割。
中立 38% 利益率は4%台で落ち着く 利益 5 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,187 円76 億円
物流の人手不足でキャスターの需要は底堅く、数量は10年で5%ほど増える。値上げは物価にやや届かず、10年で1.3倍だ。高機能キャスターは伸びるが、汎用品の値段の競争がそれを打ち消す。
台車などの物流機器は横ばいで、マレーシアの工場の赤字は縮むが消えない。営業利益率は4%台半ばで、営業利益は6億円前後になる。
配当性向は5割余りを保つが、現金の多くは手元に残る。ROEは3%台で資本コストの半分に届かない。株主の圧力で時々自社株買いが出るが、現金を大きく戻すまでには至らない。
株主の価値は、事業の稼ぎより現金の厚さに頼ったままだ。
- キャスター:数量 410(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 0.20(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 80 億円・営業利益 4 億円。410万個×単価1.3倍(汎用品の競争で物価にやや届かない)、利益率5.5%
- 台車などの物流機器:数量 33.0(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 1.56(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。33万台×単価1.3倍、利益率3%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)21 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 76 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画どおり増益が続くが、値段の競争で利益率は過去の良い年の半分ほどにとどまる姿を中心に置いた。
やや悲観 22% 汎用品が値下げに押され薄利が続く 利益 2 億円 · PER 10.7 倍 · 株価時価総額 574 円37 億円
汎用のキャスターはネット通販でアジアのメーカーの安い品が広がり、数量も値段も押される。キャスターの出荷は1割近く減る。高機能キャスターは伸びるが、規模が小さく全体を支えきれない。
マレーシアの工場は赤字が続き、会社は生産を中国と国内に寄せる費用を払う。営業利益率は2%前後で、今とほとんど変わらない。
利益は小さく、配当は今の水準を保つのがやっとだ。現金の一部は工場の再編と設備に使われ、余った現金は24億円に減る。ROEは2%を割り、帳簿の価値は稼がない。
株主に残るのは、細った稼ぎと目減りした現金だ。
- キャスター:数量 370(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 0.18(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 67 億円・営業利益 2 億円。370万個×単価1.2倍、利益率3%
- 台車などの物流機器:数量 30.0(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 1.45(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。30万台×単価1.21倍、利益率0.5%
倍率:ROE1.6%で資本コストに遠く届かない。帳簿は床にならないので、事業の純利益に1÷kより低い10.65倍を掛け、工場の再編で減った余った現金24億円を戻り方0.75で足す。
確率:アジアのメーカーの安い品に押され、利益率が今の2%台から戻らない姿。この5年の実績なので2割余り。
悲観 12% 海外の工場が重荷になり赤字に転じる 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 234 円15 億円
中国や東南アジアのメーカーが国内の代理店にも安い品を流し、山善などの販路で扱いが減る。キャスターと台車の数量は今の8割台に落ち、値段も物価に届かない。
マレーシアの工場の赤字が膨らみ、会社は閉鎖を決めて減損と撤退の費用を出す。国内の工場も操業度が下がり、営業赤字が続く。
現金は赤字の穴埋めと工場の整理に使われ、余った現金は20億円まで減る。配当は減り、会社は現金を抱えたまま小さく縮む。少数株主に残るのは、戻らない現金だけだ。
買い手が現れても、赤字の事業に高い値段は付かない。現金の厚さが、かえって経営の危機感を鈍らせる。
- キャスター:数量 330(出荷個数(万個・年、推定))× 価格 0.17(1万個あたりの売上(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 −1 億円。330万個×単価1.1倍、赤字
- 台車などの物流機器:数量 26.0(出荷台数(万台・年、推定))× 価格 1.35(1万台あたりの売上(億円))→ 売上 35 億円・営業利益 −1 億円。26万台×単価1.13倍、赤字
倍率:赤字なのでPBRで置く。稼ぐ力は無く、床は残る余った現金に戻り方を掛けた約15億円。今の自己資本121億円に0.124倍を掛けた額がこれに当たる。
確率:値段の競争と主要な販路の変化で赤字に転じる構造的な負け。現金が厚いので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
キャスター
台車・医療機器・工場の設備に付ける車輪。軽い物用から重量物用まで。
| 数量出荷個数(万個・年、推定) | 価格1万個あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 389 | 0.15 | 58 | 2 |
| 10 年後 中立 | 410 | 0.20 | 80 | 4 |
取り方:個数の開示は無い。売上58.3億円を、汎用品と重量物用を合わせた平均単価を1万個あたり約0.15億円と置いて約389万個と推定。利益は開示が無く、全社の営業利益2.11億円をキャスターに多めに割り振った推定。
台車などの物流機器
樹脂やスチールの台車、運搬車など。
| 数量出荷台数(万台・年、推定) | 価格1万台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 32.9 | 1.20 | 40 | 0 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 1.56 | 52 | 2 |
取り方:台数の開示は無い。売上39.5億円を、1万台あたり約1.2億円の平均単価と置いて約33万台と推定。利益は全社の残り。
リスクと懸念
値段の競争
汎用のキャスターは中国や東南アジアのメーカーも作れ、ネット通販で安い品が広がる。原材料と人件費の上昇を転嫁できなければ、利益率は今の2%台から戻らない。
マレーシアの工場
ペナンの工場は赤字が続く。生産の再編や閉鎖になれば、減損と撤退の費用が出る。為替や現地の人件費の上昇も重い。
販路の偏り
山善が売上の18%、本宏製作所が10%を占める。代理店が扱う品を海外の安い品に替えれば、売上は一度に減る。
現金が戻らない
純現金は時価総額とほぼ同じだが、会社は長年それを抱えたままだ。自社株買いの方針は無く、少数株主には使い道を決められない。低い利回りのまま眠れば、資本の効率は上がらない。
設備投資の波
工場と物流の設備投資が落ちれば、キャスターと台車の注文も減る。消耗品の交換の需要があるとはいえ、景気の谷では利益がさらに薄くなる。
今後の分かれ目
- 大きな自社株買いや増配で現金を戻す
- 余った現金の戻り方が1.0に近づき、価値は2割ほど上がる。
- 営業利益率が5%を超えて2期続く
- やや楽観の筋書きに近づく。値上げが通った証拠になる。
- マレーシアの工場を閉じる
- 一度は費用が出るが、赤字の源が消え、中立から楽観側に寄る。
- 投資ファンドが経営の見直しや会社の売却を求める
- 現金と事業の価値を合わせた値段での買収の可能性が出る。
- キャスターの売上が2期続けて減る
- やや悲観の筋書きに寄る。値段の競争に負けている。
見ておくもの
- 営業利益率とマレーシアの工場の損益
- 高機能キャスターの販売数
- 自社株買い・配当の方針
- 大株主の投資ファンドの動き
- キャスターの売上の前年比
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRの低さから置いていない。中立のROEは3%台でk8%を大きく下回るので、PERの上限は1÷kの11.8倍で、その約85%の10倍を事業の純利益(現金の利息を除く)に掛け、余った現金28億円を戻り方0.75で別に足した。facts の純現金は現金同等物だけで、3か月超の定期預金約11億円が抜けていたので、短信の現金と預金で置き直した。悲観側は稼ぐ力と残る現金で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.5 倍・やや楽観 PER 10.5→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍・やや悲観 PER 10→10.65 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に質の上乗せ1.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。