結論
HKS は、マフラーやターボなど、車の性能を上げる改造パーツを作る静岡県富士宮市の会社だ。売上は約 90 億円で、約 7 割が国内、約 3 割が海外。粗利率は 40% と高い。筆者の結論は、10 年の価値は今の時価総額をやや下回る(約 1 割)というものだ。ブランドと財務は強い。ただ、ガソリン車向けの市場が電動化で縮む。
財務は堅い。自己資本比率は 80% で、純現金は 10 億円ある。時価総額は 34 億円で、自己資本の 3 分の 1 にも届かない。売れる資産だけで見ても、今の値段には安全域がある。ただ、そこは悲観の床の話だ。
稼ぐ力は大きくない。営業利益率は 12 年で 1〜7% にとどまり、ROE は 3% 台だ。筆頭株主の株式会社アポロが 44.89% を持つ。余った現金は少数株主に戻りにくいと見る。
電動化で市場が縮む点と、資産が戻りにくい点を割り引くと、価値は今の値段の周辺に落ち着く。ブランドは評価するが、資本の使い方が変わるまでは、割安と言い切れないと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良いブランドを持つが、資本をうまく使えていない小さな会社」と見る。ブランドと財務は本物だ。しかし、稼いだ利益は設備と在庫に寝て、株主の手元に戻りにくい。
自己資本 106 億円に対して、純利益は 4 億円ほど。資本効率が低く、オーナーとしては歯がゆい。安全域は厚いが、時価総額の低さは、利益を生む力の弱さの反映でもある。
筆頭株主が 4 割超を持つため、少数株主の声は届きにくい。資産価値は大きいが、それを引き出す手段が少ない。利益率が 6% を超えて安定するか、還元が増える証拠が出るまでは、確信度を低く置く。
経営者が資本をどう使うかは、まだ見えない。純現金は積み上がるが、買収も増配も大きくない。オーナーとして持つなら、資産の活用を迫る株主が現れるかが分かれ目になる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、自社ブランドの改造パーツの販売だ。マフラー、ターボチャージャー、サスペンション、電子制御製品、エンジン部品などを、富士宮の工場とタイの子会社で作る。売上の約 7 割が国内で、海外は北米が約 12%、アジアが約 16%、欧州が約 3% だ。
最大の取引先は米国の販売代理店で、売上の約 11%。特定の自動車メーカーに頼る形ではない。粗利率は 40% で、値段を自分で決められる事業である。
副業として、自動車メーカーなどからの部品加工・開発の受託がある。稼働率を保つ役目だが、利益はほとんど出ていない。軽量小型飛行機のエンジン部品の販売も、小さく続けている。開示は単一セグメントのため、内訳は推定になる。従業員は連結で約 380 人で、臨時雇用は 30 人台である。
海外の生産と販売は、タイの子会社と、欧州・タイ・中国の販売会社、米国の広報会社が担う。2025 年 8 月期は、アフターマーケットの国内・海外がともに増収で、受託だけが減った。粗利益率は 40.3% で、前期より 0.3 ポイント下がった。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、HKS というブランドと、長年のレース・チューニングで培った技術だ。愛好家は名前で選ぶので、値段の比較になりにくい。粗利率 40% がそれを示す。
弱みは、市場が小さく、車の動力が変わると影響が直撃することだ。マフラーやターボは電気自動車には要らない。営業利益率は、12 年で最良でも 7% 弱にとどまる。
財務は強い。自己資本比率 80% で、純現金がある。ただ、自己資本の使い方が弱い。時価総額が自己資本の 3 分の 1 にとどまるのは、稼いだ利益が設備や在庫に寝て、資本効率が低いことの裏返しだ。経営は在庫調整や海外展開に取り組むが、成果はまだ小さい。
また、経営の実行力はまだ確かめきれない。当初の経営計画の利益水準には、届いた期が少ない。海外の販路拡大と電子制御製品の開発が、実を結ぶかを見たい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ガソリン車の改造パーツ市場は、電動化で長く細っていく。電気自動車にはマフラーもターボも要らない。世界の新車に占める EV の比率は約 25% で、10 年後は 4〜5 割に上がると見るのが業種全体の前提だ。日本は EV の普及が遅く、ハイブリッドが中心なので、当面は国内の影響が小さい。
ただ、改造の対象は新車ではなく、すでに走っている車だ。日本の旧車や国産スポーツカーは、海外で人気が高いといわれる。ガソリン車の保有台数は、新車の販売が減っても数年は残る。この点が、新車の部品会社と違う。
電動車向けにも、電子制御製品やサスペンション、冷却関連の需要はある。会社はその方向に製品を移している。
米国は最大の海外市場だが、関税の影響で売上が減った。為替は 150 円で変わらない前提のため、円安の追い風は織り込まない。
国内の人口減と若者の車離れは、新しい愛好家の入りを細らせる。一方で、愛好家は車にかけるお金が大きく、単価の高い商品が売れる。電動化の速度は国ごとに違い、規制の厳しい欧州では縮みも早い。
資本政策と M&A
還元は控えめで、配当は据え置きで、総額は年約 1 億円。純利益の 25% 前後で、自己株式は発行済みの 1 割強を持つ。筆頭株主の株式会社アポロが 44.89% を持つ。静岡銀行が 4.8% で続き、従業員持株会も株主に入る。
余った現金は、純現金 10 億円のうち運転に要る分を除いた 8 億円とみる。戻り方は 0.5 と見る。筆頭株主が 4 割超を持つオーナー支配で、還元の方針が弱く、純現金が長く積み上がっているためだ。
買収や再編の話は出ていない。kabufu は TOB の確率を 30% と見るが、公表された事実はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
PBR 0.3 倍は、資産価値に対して安すぎる。純現金に加え、在庫、土地、投資有価証券を足せば、時価総額の 1.5 倍を超える資産がある。赤字がほとんど無く、財務が崩れる心配もない。
国産スポーツカーの人気は世界に広がっている。旧車は海外で人気が高く、改造パーツの需要も高まる。HKS はブランドを持ち、粗利率 40% で値上げを通せる。電動化の影響は、国内ではまだ小さい。
2026 年 8 月期の会社予想は、売上 97 億円、営業利益 5 億円で、増収増益だ。電子制御製品や完成車メーカーとの共同開発が加われば、利益率は 6% を超える。資産価値と成長の両方が揃えば、今の値段は割安になる。会社は無借金に近く、不況でも続けられる体力がある。過去 20 年で最終赤字は 2 期だけで、感染症の 2020 年 8 月期も黒字を保った。それに、本社と工場の土地・建物は自社の持ち物で、賃料の固定費がかからない。在庫が厚いのは、欠品を避けて受注に応える体制の裏返しでもある。
慎重な見方
稼ぐ力は小さい。営業利益率は 12 年のうち 8 年が 5% 未満で、ROE は 3% 台だ。資産が大きくても、利益を生まない資産は、株主にとって価値が低い。時価総額が自己資本の 3 分の 1 にとどまるのは、その評価だ。
マフラーやターボは電気自動車に要らない。市場は長い目で縮む。米国の関税で北米向けは減り、受託は 15% 減った。
筆頭株主が 44.89% を持ち、少数株主に資産を戻す仕組みがない。純現金は 10 年かけても自己資本に積み上がるだけで、配当は純利益の 25% 前後だ。資産価値は、清算されない限り、少数株主には引き出せない。会社が資産を事業に回しても、利益率が上がる証拠は乏しい。在庫が厚く、回転が遅いことも、資本効率の低さの一因だ。国内は人口と若者の車離れで、需要の細りが避けられない。会社が軽量小型飛行機のエンジン部品を扱うなど、新しい分野を探していること自体が、本業の先細りへの危機感の表れだ。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さとブランドは認めるが、利益を生む力が弱く、市場が電動化で縮むため、確率は中立を最も重く、やや悲観を厚めに置いた。楽観とやや楽観を合わせて 25%、やや悲観と悲観を合わせて 37% を置いた。筆頭株主が資産を少数株主に戻さない構造も、資産価値をそのまま評価できない理由だ。慎重な見方がやや強い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 4,513 円64 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 773 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 2,671 円38 億円、今との差 +11.1%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 8,891 円126 億円 | 1,767 円25 億円 | +343.2% | +16.1% | 746 円11 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,524 円92 億円 | 1,131 円16 億円 | +218.3% | +12.3% | 1,378 円19 億円 |
| 中立 | 38% | 5,230 円74 億円 | 848 円12 億円 | +152.7% | +9.7% | 2,310 円33 億円 |
| やや悲観 | 25% | 2,120 円30 億円 | 424 円6 億円 | +5.8% | +0.6% | 636 円9 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,654 円23 億円 | 141 円2 億円 | −25.4% | −2.9% | 215 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,513 円64 億円 | 773 円11 億円 | +119.8% | +8.2% | 5,285 円75 億円 |
今の株価時価総額 2,405 円34 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:国産スポーツカー人気が続き、海外と電子制御製品が伸びる 利益 9 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 8,891 円126 億円
国産スポーツカーの人気は世界で続く。日本の旧車は海外で人気が高く、改造パーツの需要も伸びる。HKS はブランドを生かして海外の販路を広げ、出荷点数は今の 1.25 倍になる。単価はブランド力で物価をやや上回る。
電動車向けの電子制御製品と、自動車メーカーのコンプリートカーの共同開発が加わる。航空機エンジン部品も小さく貢献する。
営業利益は 11 億円ほどで、利益率は 7% を超える。純利益は 9 億円台になる。それでも手元に資金が積み上がり、還元は純利益の 3 割弱にとどまる。海外の売上比率は 4 割に近づき、国内の減少を補う姿だ。
- アフターマーケット(自社ブランド):数量 40.0(出荷点数(万点))× 価格 3.50(1 点あたり売上(万円))→ 売上 140 億円・営業利益 11 億円。出荷 1.25 倍、価格 1.40 倍
- 製造受託・開発受託:数量 108(受託の加工量(万個相当))× 価格 0.13(1 個あたり売上(万円))→ 売上 14 億円・営業利益 1 億円。受託も戻る
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 126 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:旧車・スポーツカーの改造熱が世界で続き、北米・アジアの販路が広がる筋書き。電動車向けの電子制御や、自動車メーカーとの完成車の共同開発も収益に乗る。確率は低く置く。
やや楽観 18% やや楽観:海外が伸び、国内の減少を埋めて利益率は 6% 近く 利益 7 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 6,524 円92 億円
出荷点数は今の 1.1 倍。国内は人口と若者の車離れで減るが、海外販売とブランドの拡大が埋める。単価は物価をやや下回る程度の 1.37 倍で、原価の上昇も転嫁できる。
受託は自動車メーカーの案件が戻り、小さな黒字に変わる。
営業利益は 7〜8 億円、利益率は 6% 近く。純利益は 6〜7 億円になる。手元資金が積み上がるが、筆頭株主が 4 割超を持つため、還元は純利益の 2〜3 割にとどまる。国内が少しずつ減る一方で、海外が伸び続ける姿である。電子制御製品や足回りなど、電動車にも使える製品の比率が上がり、利益率も小さく上がる。会社の経営計画が目指す方向に近い。
- アフターマーケット(自社ブランド):数量 35.2(出荷点数(万点))× 価格 3.43(1 点あたり売上(万円))→ 売上 121 億円・営業利益 8 億円。出荷 1.1 倍
- 製造受託・開発受託:数量 93.1(受託の加工量(万個相当))× 価格 0.13(1 個あたり売上(万円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。受託が小さな黒字
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 92 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の改造需要は微減だが、北米・アジアの伸びがそれを上回る筋書き。電子制御製品の拡販も効く。
中立 38% 中立:電動化で国内が細り、海外が支える。利益率は 5% 前後 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,230 円74 億円
出荷点数は 10 年で 5% 減る。国内は 15% 減るが、海外は 1 割強増える。電動車にはマフラーやターボが要らず、電子制御や足回りに製品を移す。単価は 10 年 1.34 倍。粗利率 40% の値決めが物価の上昇を吸収する。
受託は自動車メーカーの値下げ圧力で、単価の伸びは 1.30 倍にとどまり、利益はほぼ出ない。
営業利益は 5.7 億円で、利益率は 5% 前後。2026 年 8 月期の会社予想(5.1%)に近い水準が続く姿だ。純利益は 5 億円、還元は 3 割弱。国内の減少は、ブランドの値上げと海外の伸びで相殺され、物価で見ると今とほぼ同じ水準だ。
- アフターマーケット(自社ブランド):数量 30.4(出荷点数(万点))× 価格 3.35(1 点あたり売上(万円))→ 売上 102 億円・営業利益 6 億円。出荷 0.95 倍、価格 1.34 倍
- 製造受託・開発受託:数量 83.3(受託の加工量(万個相当))× 価格 0.13(1 個あたり売上(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。数量 0.85 倍、利益はほぼ無い
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ガソリン車向けの改造パーツ市場は、電動化で少しずつ縮む。ただ、国産スポーツカーの愛好家は世界に残り、海外が国内の減少を支える。最も重く置く。
やや悲観 25% やや悲観:電動化と米国関税で出荷が 1 / 4 減り、利益率は 2% 台 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 2,120 円30 億円
出荷点数は今の 75% に減る。ガソリン車の新車が減ると、数年おくれで改造需要も減る。米国向けは関税で価格が上がり、売れ行きが鈍る。単価は物価の 7 割ほどしか上がらない。
受託は自動車メーカーの内製化で細り、小さな赤字になる。
営業利益は 2 億円ほどで、利益率は 2% 台。純利益は 2 億円。工場の稼働が落ちて固定費が重くなり、手元資金も減る。事業の稼ぐ力は小さく、価値は売れる資産の側が決める。会社は無借金に近いので存続は危うくないが、利益は株主に戻りにくい。ブランドも、愛好家の高齢化とともに少しずつ古くなる。
- アフターマーケット(自社ブランド):数量 24.0(出荷点数(万点))× 価格 3.13(1 点あたり売上(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 2 億円。出荷 0.75 倍、価格 1.25 倍
- 製造受託・開発受託:数量 58.8(受託の加工量(万個相当))× 価格 0.12(1 個あたり売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。受託が細り赤字
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)は 25 億円弱だが、事業は縮む向き。売れる資産の税後(現金・投資有価証券・在庫と売掛金の一部)を今の自己資本(106.5 億円)に 0.28 倍を掛けた。
確率:電動化が速く、ガソリン車の改造需要が細る筋書き。米国の関税が続き、北米向けの利益が薄くなる。
悲観 12% 悲観:ガソリン車の改造市場が急に縮み、構造的に赤字になる 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,654 円23 億円
出荷点数は今の半分に減る。電動化で改造の対象車が急に減り、海外もまかなえない。単価は競合の安売りで物価の分も上がらない。
受託は消え、工場の稼働は大きく落ちる。固定費の重い開発・製造体制を縮めきれず、営業赤字に沈む。
営業損失は 1.5 億円ほど。純損失は 1 億円ほどで、受取利息の分だけ小さい。還元は配当を最小にとどめる。株主の取り分は、売れる資産の一部にとどまる。筆頭株主の方針しだいで、買い取りの価格も低くなりうる。ブランドの価値だけが残り、事業そのものは小さくなっていく。売上は 47 億円ほどに縮み、人員の削減も避けられない。
- アフターマーケット(自社ブランド):数量 16.0(出荷点数(万点))× 価格 2.75(1 点あたり売上(万円))→ 売上 44 億円・営業利益 −1 億円。出荷 0.5 倍、赤字
- 製造受託・開発受託:数量 29.4(受託の加工量(万個相当))× 価格 0.11(1 個あたり売上(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。受託が消える
倍率:赤字で PER は使えない。稼ぐ力はなく、売れる資産の税後(約 23 億円)まで。今の自己資本に 0.23 倍を掛けた。
確率:電動化が急に進み、マフラー・ターボの需要が半減する筋書き。ブランドの海外展開も追いつかず、固定費を落としきれない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アフターマーケット(自社ブランド)
マフラー、ターボ、電子制御製品、サスペンションなど、車好きの利用者が買う改造パーツ。国内が約 7 割で、海外は北米・アジア中心。売上の約 9 割。
| 数量出荷点数(万点) | 価格1 点あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 32.0 | 2.50 | 80 | 4 |
| 10 年後 中立 | 30.4 | 3.35 | 102 | 6 |
取り方:売上 89.8 億円はほぼ単一セグメントで、自動車メーカー向けの製造・開発受託が約 1 割と推定し、自社ブランドの販売を約 80 億円とした(推定)。出荷点数は非開示のため、1 点 2.5 万円前後と見て 32 万点とした(推定)。営業利益 3.9 億円のうち受託の赤字分を戻し、約 4.3 億円(利益率 5.4%)と推定。粗利率 40% で値決めは強く、価格は物価並みの 1.34 倍を基本にする。
製造受託・開発受託
自動車メーカーなどからの部品加工、製造、試作・開発の受託。稼働率の調整弁だが、利益は薄い。
| 数量受託の加工量(万個相当) | 価格1 個あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 98.0 | 0.10 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 83.3 | 0.13 | 11 | 0 |
取り方:売上の約 1 割(約 9.8 億円)と推定(受託は 2025 年 8 月期に約 15% 減と開示)。加工量は非開示のため、1 個 0.1 万円と見て 98 万個相当とした(推定)。委託先の在庫調整で減収、利益は小幅の赤字と推定。委託先が値下げを求める立場なので、価格は物価に届かない。
リスクと懸念
電動化で改造市場が縮む
マフラー・ターボは電気自動車に要らない。世界の EV 比率が 5 割を超えれば、出荷が 4 分の 1 以上減りうる。国内は EV の普及が遅く、当面の影響は小さい。
米国の関税
北米は売上の約 12%。関税で現地の価格が上がり、2025 年 8 月期の北米向けは減った。関税が長引けば利益率が下がる。
資本効率の低さ
自己資本 106 億円に対し純利益は 4 億円ほどで、ROE は 3% 台。資産が利益を生まない状態が続くと、時価総額は資産価値に近づかない。
筆頭株主の支配
株式会社アポロが 44.89% を持つ。少数株主への還元や、資産の活用を求める声が通りにくい。完全子会社化の時の価格が不利になる危険もある。
受託の縮小
自動車メーカーなどからの受託は、2025 年 8 月期に約 15% 減った。稼働率の調整弁を失うと、固定費の重さが利益に出る。
製品の電動車対応の遅れ
電子制御や足回りへの移行が遅れると、ブランドがガソリン車と一緒に古くなる。会社の中計は電動車向け製品の開発を挙げるが、成果は確認できない。
今後の分かれ目
- 2026 年 8 月期の営業利益が会社予想の 5 億円に届き、2027 年 8 月期も増える
- 海外の伸びが国内の減少を上回ると見て、中立からやや楽観側へ確率を移す。
- 北米向けの売上が、関税で 2 年続けて減る
- 海外の伸びが足りないと見て、やや悲観側へ確率を移す。
- 自己株式の消却や増配など、還元を厚くする発表がある
- 余った現金の戻り方を 0.5 から引き上げる材料になる。
- アポロが持分を売却、または完全子会社化の提案を出す
- 価格と条件を確かめ、少数株主への影響で見直す。
- 電子制御・電動車向けの製品の売上が全体の 1 割を超える
- 電動化への適応が進んだと見て、寿命の評価を見直す。
見ておくもの
- アフターマーケットの国内・海外別の売上と、出荷点数
- 営業利益率(今は 4% 台)と粗利率(今は 40%)
- 北米向けの売上と関税の影響
- 純現金と、配当・自己株式の方針
- 筆頭株主アポロの持株比率の変化
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価や過去・同業の PER は使っていない。中立は ROE 3.7% が k 7.75% に届かず、PER の上限は 1÷k の 12.5 倍。ブランドと値決めは強いが市場が縮むので、上限の約 7 割に置いた。やや悲観・悲観は稼ぐ力でなく、売れる資産の税後を今の自己資本に掛けた。余った現金は戻り方 0.5 で別に足し、PER に混ぜていない。今の時価総額(自己資本の約 3 分の 1)は、結果として比べただけだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.9 倍・やや楽観 PER 10→12.9 倍・中立 PER 9→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。