結論
内海造船は、広島県尾道市の瀬戸田と因島に工場を持つ中堅の造船所である。フェリー、RORO 船、自動車運搬船、中型のばら積み船に加え、陸上自衛隊向けの輸送艦も手がける。2026 年 3 月期の売上は 470 億円、営業利益は 31 億円。日立造船(現カナデビア)の流れをくみ、同社が自己株を除く発行済み株式の約 39% を持つ筆頭株主である。
筆者の結論は、やや割高だ。今の営業利益率 6.5% は好況の頂点にあり、長くは続かない。会社自身も、2027 年 3 月期の営業利益を 16 億円と半分に見ている。10 年の中心は利益率 4% 台に置く。
追い風は二つある。手持ち工事は約 3 年分あり、2028 年ごろまでは稼働が埋まる見通しだ。もう一つは防衛で、2025 年 3 月期には防衛装備庁が売上の 40% を占めた。防衛関係費は 9 兆円を超え、なお増えている。
一方、利益の大半を握るのは、価格と納期で選ばれる民間船だ。中国の建造量は世界の 6 割を超え、日本は 13% 前後にとどまる。2024 年 3 月期には商船三井 1 社が売上の 7 割を占めた。大口が抜けると、売上は一気に動く。
10 年後の中立は、売上 650 億円、営業利益 27 億円。強気なら 64 億円、慎重なら 13 億円、最悪は利益ゼロに近い。
焦点は資本の使い方だ。配当性向は 1 割に満たず、利益のほとんどが現金として積み上がる。この現金が株主に届くかどうかで、評価は大きく変わる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、わかりやすい産業ではない。造船は受注産業で、船価の循環が大きい。今は山の頂上にいる。
確かに、数字は良い。直近の営業利益率は 6.5%、ROE は 17%、純現金は 80 億円。ただ、その ROE は、好況の利益を自己資本の少ない状態(自己資本比率 29%)で割った数字だ。好況が終われば、ROE は 1 桁に戻る。
純現金も割り引いて見る。造船所の現金は、船主から預かった前受金が混じる。引き渡しが進めば、現金は減る。実際に、純現金は年ごとに 70 億円も上下している。
良い点は、経営が堅実で、無理な借金をしていないこと。悪い点は、利益の大半を現金のまま抱え、株主に返さないことだ。配当性向は 1 割に満たず、自己株買いも近年は見えない。
安全域は、今の値段にはほとんどない。時価総額は 207 億円で、そのうち事業が稼ぐ力に見合う部分と、現金の部分を分けて考えると、事業の評価が高い。好況の利益を引き伸ばした値段になっている。
何で稼ぐ会社か
事業は新造船と修繕船の二本立てで、新造船が中心だ。年間の建造は 8〜12 隻。瀬戸田工場と因島工場で、フェリー、RORO 船、4 万重量トン型のばら積み船、自動車運搬船、輸送艦を造る。フェリーと RORO 船は国内でもトップクラスの建造実績がある。
売上の中身は年によって大きく動く。2024 年 3 月期は商船三井が売上の 70%(325 億円)を占め、2025 年 3 月期は防衛装備庁が 40%(179 億円)、商船三井が 10% だった。数隻の引き渡しが、そのまま売上の山と谷になる。2026 年 3 月期の内訳は確認できなかったので、サイトの数字は防衛 4 割、民間船と修繕 6 割と見た推定である。
防衛向けは、陸上自衛隊の「自衛隊海上輸送群」の輸送艦と舟艇だ。2024 年 10 月に瀬戸田工場で輸送艦が進水し、2025 年 11 月にも進水した。2024 年度予算では機動舟艇 3 隻の取得費が 173 億円計上されている。
設備では、瀬戸田工場に総額 27 億円で 160 トン吊りの塔型クレーン 2 基を入れ、2028 年 3 月までに完了させる。2026 年 9 月には、国土交通省が船体の供給確保計画を認定した。2034 年度までに 111 億円を投じ、最大 43 億円が助成される。
2027 年 3 月期の第 1 四半期は、売上 126 億円(前年同期比 +23.5%)、営業利益 13 億円(同 +203.6%)と、通期予想の営業利益 16 億円の 8 割に達した。それでも会社は通期予想を据え置いた。資機材の価格と為替が読めないという理由だ。
優良さと弱いところ
強みは、国内で数少ない、フェリーと RORO 船を造れる造船所だという点だ。船主との長い付き合いと、手持ち工事 3 年分の厚みがある。防衛向けは、艦艇を造る許可と実績が必要で、参入する会社は限られる。
財務は、見かけより軽い。純現金は 80 億円あるが、自己資本比率は 28.7% と低い。造船は、船主から工事の進み具合に応じて前受金が入るため、現金が多く、負債も多い。純現金は 2022 年 3 月期 64 億円、2023 年 3 月期 3 億円の純借金、2024 年 3 月期 57 億円、2025 年 3 月期 12 億円の純借金と、年ごとに 70 億円も揺れる。
一方で、堀は浅い。営業利益率は 2014 年 3 月期の −8.7% から、2021 年 3 月期の −2.9%、2024 年 3 月期の 6.9% まで振れた。2020 年代前半までは 1〜2% が普通だった。今の水準は、好況の頂点にある。
顧客が偏りやすい点も弱みだ。2024 年 3 月期は 1 社が売上の 7 割を占めた。受注が一つ抜けるだけで、翌期の稼働が落ちる。
株主の動きも読みにくい。カナデビアが約 39% を持ち、個人投資家の五味大輔氏が 6〜8% を純投資で持つ。自己株も発行済みの 25% ある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の新造船は、中国が建造量の 6 割を超え、韓国が 3 割弱、日本は 13% 前後にとどまる。2025 年の世界の建造量は約 77 百万総トン。発注量は前年比 24% 減の 1 億 5,120 万重量トンだった。日本の造船は、規模で中国や韓国に勝てないため、品質や特殊な船種に軸足を移している。
内海造船が組む船種は、その方向にある。大型の LNG 船や大型タンカーではなく、フェリー、RORO 船、中型のばら積み船、自動車運搬船、輸送艦だ。トラック輸送から船への切り替え(モーダルシフト)が進めば、フェリーや RORO 船の需要を支える。
環境規制も追い風になる。国際海事機関(IMO)は 2050 年ごろまでに国際海運の温室効果ガスをゼロにする方針で、LNG 燃料船などの新燃料船への置き換えが続く。船体のブロックが重くなり、設備の更新が要る。
防衛は別の市場だ。令和 8 年度の防衛関係費は 9 兆 353 億円で、前年度比 3.8% 増。護衛艦や潜水艦は三菱重工などの大手が握るが、輸送艦や舟艇のような中型の艦艇は、中堅の造船所にも回ってくる。
費用の面では、鋼材と人件費の上昇が重い。船価は資材費を反映して緩やかに上がるが、固定価格の契約を結んだ後の資材高は造船所が被る。今の船価は高く、2008〜09 年のリーマン級の下落では、新造船の発注がほぼ蒸発した。
資本政策と M&A
配当は少ない。2026 年 3 月期の配当性向は 7% 程度で、2027 年 3 月期は減配を予想している。純利益のほとんどは現金や設備に回り、自己資本は 2023 年 3 月期の 74 億円から 135 億円へほぼ倍になった。
自己株は、発行済みの約 25% にあたる 55 万株余りに達し、過去に大きな自己株買いをしたことがうかがえる。ただ、近年に新たな自己株買いの発表は確認できなかった。
大口の株主は、カナデビアが自己株を除く発行済みの約 39%、広島銀行が約 5%、五味大輔氏が 6〜8% を持つ。カナデビアの持分は「連結グループ政策のための保有」とされ、売却は想定しにくい。五味氏は純投資で、株主還元の拡大を求める動きになるかもしれない。
設備投資は増える。瀬戸田工場に 27 億円、2034 年度まで 111 億円の供給確保計画があり、国の助成は最大 43 億円。過去 5 年は十数億円規模だったので、投資の水準は上がる。減価償却費の額は、確認できた資料からは読み取れなかった。
当サイトの別の試算では、10 年以内の買収・TOB の確率は 19.7% とされる。カナデビアが約 39% を持つため、買収の主体は事実上この 1 社に限られる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
手持ち工事は約 3 年分ある。今の利益率は、鋼材の高騰を乗り越え、船価を上げて得たものだ。2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益 13 億円と、通期予想の 8 割をすでに稼いだ。予想の 16 億円は低すぎ、通期で 30 億円前後に届く可能性がある。
防衛は構造的に増える。防衛関係費は 9 兆円を超え、輸送艦や舟艇の需要は続く。造船の許可と実績が必要なので、新規参入は限られる。内海造船は、すでに輸送艦を複数進水させている。
民間船でも、フェリーと RORO の国内実績は他社を寄せつけない。モーダルシフトの流れが続き、新燃料船への置き換えも続く。国の供給確保計画で最大 43 億円の助成が出て、工場の効率も上がる。
財務は軽く、純現金が 80 億円ある。配当性向が低いのは、これから設備投資を増やすためで、余裕は十分ある。カナデビアという安定株主もいる。
しかも、積み上がった現金は事業の価値に上乗せされる。今の時価総額は、現金を足した価値を下回る可能性がある。
慎重な見方
今の利益は好況の頂点にある。2014 年 3 月期の −8.7%、2021 年 3 月期の −2.9% と、営業赤字の年は 2014 年 3 月期と 2021 年 3 月期にある。2020 年代前半までの営業利益は、年 1〜8 億円が普通だった。会社自身が、次の期を半分に見ている。
防衛は予算の枠に縛られ、競争入札で価格が決まる。1 社に売上の 4 割を依存するのは、受注が数年ごとに入れ替わる産業では危うい。2024 年 3 月期には、民間の 1 社が売上の 7 割を占めたこともある。
民間船は、価格と納期で選ばれる。中国が建造量の 6 割を超え、日本の造船の生産能力は縮む方向にある。新造船の発注は 2025 年に前年比 24% 減った。手持ち工事を消化した後、次の受注が同じ値段で取れる保証はない。
現金も額面どおりではない。純現金 80 億円には、前受金が含まれる。引き渡しが進めば減る。配当を絞って貯めた現金を株主に返す約束も、会社は示していない。
最後に、株主の動きだ。カナデビアが約 39% を持ち、買収する側は事実上 1 社に限られる。買収の可能性を、株価に織り込むのは危うい。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、手持ち工事の厚さと防衛の安定を足場にしているが、2027 年 3 月期の予想が半分になる事実を説明できない。慎重な見方のほうが、過去の振れ方と整合する。
確率は慎重側に寄せた。やや悲観を 26%、悲観を 12% と置いた。総合では、今の時価総額を 2 割ほど下回る。
財務が軽く、防衛向けの下支えもあるため、すぐに傾く心配は小さい。ただ、好況の利益を伸ばした今の値段は、高い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 22,085 円374 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 3,065 円52 億円)。 今の値に割り戻すと 12,058 円204 億円、今との差 +14.9%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 56,221 円953 億円 | 6,432 円109 億円 | +497.3% | +19.6% | 5,012 円85 億円 |
| やや楽観 | 20% | 35,451 円601 億円 | 4,779 円81 億円 | +283.5% | +14.4% | 8,046 円136 億円 |
| 中立 | 34% | 22,499 円381 億円 | 3,068 円52 億円 | +143.7% | +9.3% | 8,693 円147 億円 |
| やや悲観 | 26% | 8,892 円151 億円 | 1,711 円29 億円 | +1.1% | +0.1% | 2,757 円47 億円 |
| 悲観 | 12% | 4,467 円76 億円 | 885 円15 億円 | −49.0% | −6.5% | 642 円11 億円 |
| 加重平均 | 100% | 22,085 円374 億円 | 3,065 円52 億円 | +139.8% | +9.1% | 25,150 円426 億円 |
今の株価時価総額 10,490 円178 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 防衛が伸び、民間船も高付加価値へ。営業利益は 64 億円まで増える 利益 52 億円 · PER 16.5 倍 · 株価時価総額 56,221 円953 億円
防衛費は 9 兆円を超え、さらに増える。陸上自衛隊の輸送艦・舟艇の需要が続き、防衛・官公庁向けの売上は 391 億円、営業利益率は 6.5% になる。
民間船では、国内トップクラスの実績があるフェリーと RORO に加え、モーダルシフトの需要が追い風となる。引き渡しは年 11.5 万総トン換算に増え、売上は 460 億円、営業利益率は 8.5% に届く。
営業利益は 64 億円、純利益は 52 億円。配当性向は 30% に上がるが、現金はなお積み上がり、純現金は 237 億円になる。
事業の ROE は 24% と資本コストを大きく上回り、倍率は 16.53 倍まで上がる。それでも上限の約 9 割にとどまる。造船が循環産業であることは変わらない。
- 民間船の新造・修繕:数量 11.5(引き渡し量(万総トン換算・推定))× 価格 40(1 万総トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 460 億円・営業利益 39 億円。引き渡し 11.5 万総トン × 1 万総トンあたり 40.0 億円、利益率 8.5%
- 防衛・官公庁向けの艦艇・舟艇:数量 8,100(防衛省向けの中型艦艇・舟艇の年間発注額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 4.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 391 億円・営業利益 25 億円。市場 1.35 倍 × シェア 3.6%、利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.8% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)137 億円。全体の PER 16.53 倍、時価総額 953 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:8%。防衛向けの輸送艦・舟艇が拡大する防衛費で増え、民間船でもフェリーや RORO の国内の強みが価格に乗る形。営業利益率は 7.6% と、直近の山(6.9%)を上回る。造船は山の後に谷が来る産業で、これが 10 年続く確率は低く、8% にとどめた。
やや楽観 20% 好況が少し長引き、営業利益は 42 億円で踏みとどまる 利益 35 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 35,451 円601 億円
手持ち工事の約 3 年分がそのまま利益に変わり、その後も受注が続く。民間船は売上 404 億円、営業利益率 6%。防衛は売上 332 億円、営業利益率 5.5%。
営業利益は 42 億円、純利益は 35 億円。利益率は 5.8% と、直近の山の少し下に収まる。
設備投資の助成を受けて工場の効率が上がり、人手の不足を補う。配当性向は 30% に上がり、純現金は 190 億円まで増える。
好況が少し長引くだけで、構造が変わるわけではない。事業の ROE は 17% と高いが、倍率は 15.18 倍で上限の約 9 割にとどまる。
造船所の利益は船価の循環に左右され、この高い ROE が 10 年先まで続くとは限らない。
- 民間船の新造・修繕:数量 10.5(引き渡し量(万総トン換算・推定))× 価格 39(1 万総トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 404 億円・営業利益 24 億円。引き渡し 10.5 万総トン × 38.5 億円、利益率 6.0%
- 防衛・官公庁向けの艦艇・舟艇:数量 7,500(防衛省向けの中型艦艇・舟艇の年間発注額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 4.4%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 332 億円・営業利益 18 億円。市場 1.25 倍 × シェア 3.3%、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)101 億円。全体の PER 15.18 倍、時価総額 601 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:20%。手持ち工事の約 3 年分が利益に変わり、防衛向けも伸びる筋書き。営業利益率は 5.8% で、山の少し下に収まる。供給確保計画の助成で設備が整えば起きうるが、船価の循環を考え 20% とした。
中立 34% 好況は静まり、営業利益は 27 億円。積んだ現金が価値を支える 利益 23 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 22,499 円381 億円
好況は静まり、民間船の利益率は 4% に戻る。引き渡しは年 9.5 万総トン換算と、今より 5% 減る。船価は物価と資材費の上昇で 1.34 倍になり、売上は 359 億円になる。
防衛は、拡大する予算に支えられて実質 15% 増え、売上は 289 億円、営業利益率は 4.5%。合計の営業利益は 27 億円、利益率は 4.2% で、直近の 6.5% より低い。
純利益は 23 億円。配当性向は 25% 程度で、現金は積み上がり、純現金は 169 億円になる。積んだ現金の価値は、半分だけ株主に届くと見た。
10 年たっても、堅実だが伸びない造船所という姿に収まる。
- 民間船の新造・修繕:数量 9.5(引き渡し量(万総トン換算・推定))× 価格 38(1 万総トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 359 億円・営業利益 14 億円。引き渡し 9.5 万総トン × 37.8 億円、利益率 4.0%
- 防衛・官公庁向けの艦艇・舟艇:数量 6,900(防衛省向けの中型艦艇・舟艇の年間発注額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 4.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 289 億円・営業利益 13 億円。市場 1.15 倍 × シェア 3.13%、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)86 億円。全体の PER 13.69 倍、時価総額 381 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:34%。最も起きやすい形。今の利益は好況の頂点(営業利益率 6.5%)なので、10 年の中心は平準化して 4.2% に置く。同領域の会社の中心(32〜34%)にそろえた。
やや悲観 26% 民間船が細り、防衛だけが残る。営業利益は 13 億円 利益 12 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 8,892 円151 億円
手持ち工事を消化した後、民間船の受注が細る。引き渡しは年 8.2 万総トン換算に減り、船価の上がり方も鈍い。営業利益率は 1.5% に落ちる。
防衛は売上 245 億円を保つが、利益率は 3.5% と薄い。競争入札で価格が下がり、受注の隻数も限られる。
営業利益は 13 億円、純利益は 12 億円。物価が上がる中では、実質で今の半分以下だ。配当性向は 20%、純現金は 147 億円まで積み上がる。
利益を生まない現金が貯まり続けるので、株主から見れば資本の使い方が問われる局面になる。
造船所としては黒字を保つが、船価の下落と鋼材高が重なれば、利益率は 1% を割る余地もある。
- 民間船の新造・修繕:数量 8.2(引き渡し量(万総トン換算・推定))× 価格 36(1 万総トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 291 億円・営業利益 4 億円。引き渡し 8.2 万総トン × 35.5 億円、利益率 1.5%
- 防衛・官公庁向けの艦艇・舟艇:数量 6,300(防衛省向けの中型艦艇・舟艇の年間発注額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 3.9%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 245 億円・営業利益 9 億円。市場 1.05 倍 × シェア 2.9%、利益率 3.5%
倍率:積み上がる現金 93 億円を除いた事業の ROE は約 6.7%(純利益 10.8 億円÷自己資本 160 億円)。k 8.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値しかないので、上限は 1÷k=11.1 倍。その約 68%(7.5 倍)に置いた。余った現金は戻り方 0.5 を掛けて足してある。
確率:26%。手持ち工事を消化した後、民間船の受注が細り、利益率が過去の平均(2% 前後)に戻る形。2014 年 3 月期と 2021 年 3 月期に赤字を出した実績があり、同領域より少し厚く置いた。
悲観 12% 中国勢に民間船を奪われ、防衛の利益だけで食いつなぐ 利益 3 億円 · PER 7.3 倍 · 株価時価総額 4,467 円76 億円
中国の建造量が拡大し、日本の民間船は受注を失う。引き渡しは年 6.5 万総トン換算まで減り、船価も下がって、民間船は赤字(営業利益率 −1%)になる。
防衛だけが残るが、売上は 168 億円、営業利益率は 2% 止まり。工場の稼働が下がり、固定費が重くのしかかる。営業利益は 1 億円で、事実上ゼロに近い。
工場の減損などで自己資本が 15 億円減る。配当性向は 15% まで落ちる。
稼ぐ力では値が付かず、積んだ現金の半分と、わずかな事業の価値が株主の取り分になる。
前受金が剥がれ、手持ち工事が尽きた後の造船所は、受注の少ない時期の固定費に苦しむ。設備の縮小が避けられない。
- 民間船の新造・修繕:数量 6.5(引き渡し量(万総トン換算・推定))× 価格 33(1 万総トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 215 億円・営業利益 −2 億円。引き渡し 6.5 万総トン × 33.0 億円、利益率 −1%
- 防衛・官公庁向けの艦艇・舟艇:数量 5,700(防衛省向けの中型艦艇・舟艇の年間発注額(今の値段で測った実質・億円)× シェア)× 価格 2.9%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍))→ 売上 168 億円・営業利益 3 億円。市場 0.95 倍 × シェア 2.2%、利益率 2%
倍率:積み上がる現金 82 億円を除いた事業の ROE は約 1.6%(純利益 2.0 億円÷自己資本 122 億円)。k 8.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値しかないので、上限は 1÷k=11.1 倍。その約 59%(7.27 倍)に置いた。余った現金は戻り方 0.5 を掛けて足してある。
確率:12%。中国の建造量が世界の 6 割を超え、日本の民間船が構造的に縮む筋書き。防衛だけが残る。リーマン級で発注が蒸発した過去もある。同領域の悲観(10〜14%)の中ほどに置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
民間船の新造・修繕
フェリー、RORO 船、自動車運搬船、中型のばら積み船の新造と、修繕船。売上の約 6 割(推定)。
| 数量引き渡し量(万総トン換算・推定) | 価格1 万総トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 28 | 282 | 21 |
| 10 年後 中立 | 9.5 | 38 | 359 | 14 |
取り方:年 8〜12 隻の建造(開示)で、1 隻あたり平均 1 万総トン前後と見て 10 万総トン換算(推定)。民間船・修繕の売上 282 億円と営業利益 21.4 億円(利益率 7.6%)は、2025 年 3 月期の防衛 40% を 2026 年 3 月期にも当てはめた推定。全体の売上 470 億円・営業利益 31 億円は開示。数量は実質、物価 3% と船種ミックスは価格に入れた。
防衛・官公庁向けの艦艇・舟艇
陸上自衛隊の輸送艦、機動舟艇など。防衛装備庁が発注する。売上の約 4 割(推定)。
| 数量防衛省向けの中型艦艇・舟艇の年間発注額(今の値段で測った実質・億円)× シェア | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア × 物価の倍率(10 年で 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,000 | 3.1% | 188 | 9 |
| 10 年後 中立 | 6,900 | 4.2% | 289 | 13 |
取り方:防衛装備庁への売上 178.6 億円は 2025 年 3 月期(売上の 40%)の開示。2026 年 3 月期は同じ比率の 188 億円と置いた推定。営業利益は民間船より薄い 5% と推定。市場は、令和 8 年度の防衛関係費 9.0 兆円の約 7%(中型艦艇・舟艇向け)として約 6,000 億円と置いた粗い推定で、シェアは約 3.1%。
リスクと懸念
好況の終わりと船価の下落
今の営業利益率 6.5% は山の頂点だ。会社は 2027 年 3 月期の営業利益を半分の 16 億円と見る。手持ち工事を消化した後に船価が下がれば、赤字に戻る。リーマン級では新造船の発注が蒸発した。
中国勢のシェア拡大
中国の建造量は世界の 6 割を超え、日本は 13% 前後。民間船は価格と納期で選ばれるため、同じ土俵の中国・韓国勢にシェアを奪われやすい。
顧客と受注の偏り
2024 年 3 月期は商船三井 1 社が売上の 70%、2025 年 3 月期は防衛装備庁が 40% を占めた。引き渡しの時期がずれるだけで、期の売上と利益が大きく動く。
前受金の巻き戻りと現金の見かけ
純現金 80 億円には、船主から預かる前受金が混じる。引き渡しが進めば現金は減る。純現金は年ごとに 70 億円も上下し、額面どおりに株主の取り分と見られない。
資機材高と為替
鋼材や機器の値上がり、円相場の動きは、固定価格で受けた工事の利益を直接削る。会社は第 1 四半期が好調でも、資機材と為替が読めないとして予想を据え置いた。
設備投資の増加と更新費用
瀬戸田工場のクレーン 27 億円、2034 年度までの 111 億円と、投資は過去 5 年の十数億円規模から増える。クレーンや船台の更新費は物価とともに上がり、会計の償却額ほど現金が残らない。償却額は確認できなかった。
株主構成と資本の使い道
カナデビアが自己株を除く発行済みの約 39% を持ち、五味大輔氏が 6〜8%、自己株が発行済みの 25%。配当性向が低く、積み上がった現金が株主に戻る保証はない。株主の動き次第で方針が変わる可能性もある。
今後の分かれ目
- 手持ち工事の金額と、次の受注の船価が開示される
- 2028 年以降の稼働と利益率が読める。船価が今の水準を保つなら強気側の確率を上げる。
- 営業利益が 2027 年 3 月期の予想 16 億円を大きく上回り、期末に上方修正される
- 好況が長引いている合図。やや強気に重みを移す。
- 防衛装備庁向けの新規契約(輸送艦・舟艇)が発表される
- 防衛の売上が増える。防衛向けの売上と利益率の見直しに反映する。
- 前受金(契約負債)が大きく減り、純現金が減る
- 現金の見かけが剥がれている。余った現金を減らして評価する。
- 配当性向の引き上げや自己株買いが発表される
- 積んだ現金が株主に戻り始める。余った現金の戻り方を 0.5 から引き上げる。
- カナデビアが持ち株の売却や追加取得を発表する
- 事業の稼ぐ力とは別の価値が出る。買付価格が事業の価値を超えるかを確かめる。
見ておくもの
- 手持ち工事の金額・隻数と、次の受注の船価
- 防衛・官公庁向けの売上比率と利益率
- 前受金(契約負債)と純現金の動き
- 配当性向と自己株買いの方針
- カナデビアと五味大輔氏の保有の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト 8.25%(基本 7.5%+quality 1.5%)と、事業の ROE から出した。積み上がる現金を除いた事業の ROE が k を上回る筋書きでは、1÷k=11.1 倍を下限に、正当化 PER の約 9 割に、下回る筋書きでは 1÷k の約 7 割に置いた。今の利益は好況の頂点なので、中立の営業利益率は 4.2% まで戻し、直近の 6.5% を引き伸ばしていない。今の PER や株価には寄せていない。リース会計の変更は、会社が自前の工場と船台を持つため影響は小さく、数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。賃借の約束額は確認できた資料の範囲では不明。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→16.53 倍・やや楽観 PER 12→15.18 倍・中立 PER 11.1→13.69 倍・悲観 PER 6.5→7.27 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。