結論
ニッキは、芝刈り機や発電機などの小さなエンジンに付ける気化器と、ガスで動くエンジンの燃料装置を作る会社だ。筆者の結論は「やや割高」である。主力の気化器は、米国の芝刈り機の電動化で数量が細る。それを、ガス機器の伸びと、工場の用地を貸す賃料が半分ほど埋める。
利益の形は意外だ。2026年3月期の営業利益11億円のうち、6億円は厚木の工場用地に建てた倉庫などの賃料だった。部品の事業だけの利益は5億円にすぎない。
顧客は米国の小型エンジンのメーカーに偏る。Briggs & StrattonとRehlkoの2社で売上の4分の1を占める。米国の州が小型エンジンの規制を広げれば、需要は一気に減りうる。
財務は手堅く、自己資本比率は57%ある。筆者は、賃料という安定した土台は評価するが、本業の縮みを考えると今の値段は少し高いと見る。
米国向けが4割を占めるが、この分析では為替を150円で固定している。円安の追い風は数字に入れていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「縮む本業を、賃料の土台が支える」型である。部品の事業は電動化で細るが、厚木の倉庫と住宅の賃料は景気にも技術の変化にも左右されにくい。利益の半分以上がこの安定した収入だ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益は、年8〜10億円ほどだ。設備投資は年3億円前後と軽い。ただ、本業が縮む中で、その利益の多くは賃料に頼ることになる。
経営の資本の使い方は保守的だ。純負債を抱えながら政策保有の株を持ち、還元は利益の3割にとどまる。土地の価値を株主に戻す方針も見えない。
安全域は、賃料の分だけある。だが本業の縮みを考えると、今の値段に十分な余裕があるとは筆者は見ない。
もし会社が土地の使い方を変え、賃貸を広げるか売るかを決めれば、話は変わる。その時は資産の値を株主にどう戻すかを、改めて測り直したい。
何で稼ぐ会社か
事業は五つある。最大は汎用機器で、売上は39億円、利益は4.8億円だ。芝刈り機、発電機、農機、船外機などのエンジンに付ける気化器と、二輪の噴射装置を作る。気化器は燃料と空気を混ぜてエンジンに送る部品で、ニッキはこの分野で長い歴史を持つ。
二つめはガス機器で、売上は31億円、利益は2.3億円だ。LPGやCNGで動くエンジンの燃料装置を作る。フォークリフトや新興国のガス車、発電機に使われる。中国の瀋陽にも工場がある。水素エンジンの噴射装置も開発している。
三つめと四つめは自動車機器と産業機器で、合わせて15億円弱の売上がある。自動車機器はエンジン車の吸気の部品で、2億円の赤字が続く。産業機器は2025年に大島機工を買って広げた。
五つめが不動産の賃貸だ。厚木の工場用地に倉庫を建てて貸し、賃貸の住宅も持つ。売上は7.6億円だが利益は6億円あり、利益率は8割に近い。全社の売上の6割は海外で、米国だけで4割を占める。従業員は連結で509人、提出会社の平均の勤続は18年と長い。熟練の技術者が支える会社だ。
優良さと弱いところ
強みは、小さなエンジンの燃料の制御で長く培った技術だ。気化器は地味な部品だが、排ガスの規制に合わせた微妙な調整が要る。米国の大手エンジンメーカーと長く取引し、ガスの燃料装置でも中国やインドに足場がある。
だが、堀、つまり他社がまねできない強みとしては弱い。顧客は少数のエンジンメーカーで、値段の交渉は顧客が強い。気化器の需要は、電池で動く機械に置き換わると戻らない。自動車機器は赤字が続き、手を打てていない。
資本効率は低めだ。自己資本利益率は過去10年の中央値で8%、2026年3月期は7%だった。政策保有の株を20億円近く持ち、資本が厚い。
明るい面は賃貸だ。利益の半分以上を、景気や電動化に左右されない賃料が稼ぐ。部品の事業が谷でも、会社の利益は簡単には赤字にならない。ここは同業の部品の会社には無い強みだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
小型エンジンの市場は、電動化の波の中にある。芝刈り機や草刈り機、小さな発電機は、電池の性能が上がって置き換えが進む。カリフォルニア州は2024年から、新しく売る小型のエンジンの機械を事実上禁じた。同じ規制がほかの州に広がるかが、ニッキの汎用機器の行方を決める。
エンジンが残る分野もある。大型の芝刈り機、建設や農業の機械、非常用の発電機、船外機は、電池では力や時間が足りない。そこでは気化器から電子制御の噴射装置への移行が進み、部品の単価は上がる。
ガスのエンジンは、脱炭素の橋渡しとして残る。インドや中国ではCNGの車が多く、フォークリフトはLPGが主流だった。ただフォークリフトは電動化が速い。水素で動くエンジンは、トラックや発電機で試みが始まったばかりだ。
業界の見通しでは、エンジンの部品は全体として縮む。筆者は、ニッキの10年は気化器の縮む速さと、ガスと水素の伸びがどこまで埋めるかで決まると見る。
中国の部品メーカーとの値段の競争も強まる。汎用エンジンの多くは中国でも作られ、気化器の値段は下がりやすい。ニッキが単価を保てるのは、規制に合わせた調整の技術と、長い取引の信頼があるからだ。
資本政策と M&A
還元の方針は、連結の配当性向30%を当面の目標とする。2026年3月期の配当の総額は2億円強だった。自社株買いの実績は少なく、2026年には自己株を処分した。
手元の現金は42億円、借入は81億円で、差し引き39億円の純負債がある。政策保有の株は、韓国の取引先のMotonicが8億円、三菱UFJが7億円など、合わせて20億円ほどある。配当は利益に入っているので、価値には別に足さない。
株主は個人の大株主が23%を持ち、いちごアセットも大量に保有する。M&Aは小さな部品の会社を買う形で、大島機工の子会社化がその例だ。逆に、ニッキ自身が買われる可能性もある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益の半分以上を、厚木の工場用地の賃料が稼ぐ。倉庫の需要は物流の拡大で強く、賃料は物価に沿って上がる。この安定した利益だけで、今の時価総額のかなりの部分を説明できる。
ガス機器は伸びている。2026年3月期の利益は前期の1.6倍だった。インドのガス車、中国の発電機、そして水素で動くエンジンの噴射装置と、伸びる芽がある。ガスの燃料の制御はニッキが長く磨いた技術で、水素にも生きる。
汎用機器の縮みも、言われるほど速くない。大型の芝刈り機や非常用の発電機、船外機はエンジンが残る。気化器から噴射装置に移れば、単価は上がる。
政策保有の株も20億円あり、いちごアセットが株主にいる。還元が増える余地は大きい。
自己資本比率は57%と財務も堅い。本業が谷でも配当は続けられる。電動化の速さは、思われているより遅いかもしれない。電池の値段と充電の手間が、業務用の機械では壁になる。プロの庭師や建設の現場では、エンジンの機械が長く使われ続ける。
慎重な見方
主力の気化器は、電池に置き換わる製品だ。カリフォルニア州の規制は始まりで、ほかの州に広がれば需要は一気に減る。顧客は少数の米国のエンジンメーカーで、Briggs & Strattonは一度経営が破綻した会社でもある。
ガス機器の伸びも限られる。フォークリフトは電動化が速く、新興国のガス車も、いずれEVと競う。水素エンジンは試みの段階で、売上の柱になる保証は無い。
自動車機器は何年も赤字が続き、手を打てていない。部品の事業だけの利益は5億円しかない。
賃料は安定しているが、それは不動産の会社の稼ぎだ。不動産の利益に、成長する部品の会社の値段を付けるべきではない。土地を売る方針も無く、含み益は株主に戻らない。
中国の部品メーカーとの値段の競争も強まる。噴射装置への移行で単価が上がると言っても、その市場には大きな部品の会社が待っている。ニッキの規模で勝ち残れる保証は無い。研究開発に回せるお金も、大手と比べれば桁が違う。
どちらに重みを置いたか
両者の言い分はかみ合っている。賃料の土台は本物だが、本業の縮みもまた確かだ。電動化の規制は止まらないので、慎重な見方が少し強い。確率は中立を40%とし、悲観側に33%、楽観側に27%を置いた。結果として、今の値段は本質価値を少し上回る。賃料の価値を認めても、縮む本業に払う値段としては余裕が無いと判断した。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,256 円136 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,570 円29 億円)。 今の値に割り戻すと 4,429 円83 億円、今との差 +12.4%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 11,394 円214 億円 | 2,081 円39 億円 | +242.0% | +13.1% | 943 円18 億円 |
| やや楽観 | 20% | 9,099 円171 億円 | 1,814 円34 億円 | +177.0% | +10.7% | 2,183 円41 億円 |
| 中立 | 40% | 8,638 円162 億円 | 1,654 円31 億円 | +161.2% | +10.1% | 4,117 円77 億円 |
| やや悲観 | 22% | 4,581 円86 億円 | 1,334 円25 億円 | +50.1% | +4.1% | 1,301 円24 億円 |
| 悲観 | 11% | 1,596 円30 億円 | 961 円18 億円 | −35.1% | −4.2% | 281 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,256 円136 億円 | 1,570 円29 億円 | +124.0% | +8.4% | 8,825 円165 億円 |
今の株価時価総額 3,940 円74 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 水素とガスのエンジンが育ち、汎用の縮みを埋める 利益 17 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 11,394 円214 億円
脱炭素の流れで、トラックや発電機のエンジンに水素やガスを使う動きが広がる。ニッキは長く培ったガスの噴射の技術で、水素エンジンの噴射装置を量産する。インドと中国のガス車向けも伸び、ガス機器の数量は今の1.4倍になる。
汎用機器は、芝刈り機の電動化で気化器が減るが、噴射装置に置き換わって単価が上がる。数量は15%の減りにとどまる。自動車機器は赤字の製品をやめて黒字に戻す。
全社の営業利益は21億円前後、純利益は16億円になる。賃貸の利益は物価に沿って増え、土台を支える。還元は配当性向30%を保つ。
部品の会社として、エンジンの脱炭素の流れに乗れた姿だ。自己資本利益率は7%に上がるが、資本コストにはわずかに届かない。
- ガス機器:数量 350(燃料システムの出荷(千台・推定))× 価格 18(1台あたりの売値(千円))→ 売上 61 億円・営業利益 6 億円。台数1.40倍・単価1.40倍(水素とガスの高い製品)・利益率10%
- 汎用機器:数量 2,975(気化器・噴射装置の出荷(千個・推定))× 価格 1.68(1個あたりの売値(千円))→ 売上 50 億円・営業利益 7 億円。個数0.85倍・単価1.50倍(噴射装置へ)・利益率13%
- 自動車機器:数量 640(部品の出荷(千個・推定))× 価格 1.34(1個あたりの売値(千円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。個数0.80倍・単価1.34倍・利益率2%
- 産業機器:数量 280(部品の出荷(千個・推定))× 価格 4.68(1個あたりの売値(千円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。個数1.40倍・単価1.40倍・利益率7%
- 不動産賃貸:数量 42.0(貸している床の面積(千平方メートル・推定))× 価格 2.50(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 8 億円。面積1.05倍・賃料1.32倍・利益率78%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 214 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:水素エンジンの噴射装置はまだ売上の柱になっていない。インドのガス車と発電機の伸びが両方そろう必要があるので7%とした。
やや楽観 20% ガス機器が伸び、汎用は緩やかに縮む 利益 14 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 9,099 円171 億円
ガス機器はインドのガス車と発電機向けで数量を2割伸ばす。汎用機器は電動化で数量が4分の3に減るが、噴射装置が増えて単価は物価を上回る。
自動車機器は赤字を縮め、ほぼ収支ゼロになる。産業機器は大島機工を取り込んで数量を3割増やす。賃貸の利益は物価に近く増える。
全社の営業利益は17億円前後、純利益は13億円になる。配当性向30%の還元を続けても自己資本は膨らみ、自己資本利益率は6%前後にとどまる。手堅い部品の会社として続く姿だ。
政策保有の株を少しずつ売り、借入を減らす。利払いの負担は軽くなるが、資産の厚さは変わらない。
- ガス機器:数量 300(燃料システムの出荷(千台・推定))× 価格 17(1台あたりの売値(千円))→ 売上 50 億円・営業利益 4 億円。台数1.20倍・単価1.34倍・利益率8.5%
- 汎用機器:数量 2,625(気化器・噴射装置の出荷(千個・推定))× 価格 1.60(1個あたりの売値(千円))→ 売上 42 億円・営業利益 5 億円。個数0.75倍・単価1.43倍(噴射装置の比率上昇)・利益率12%
- 自動車機器:数量 600(部品の出荷(千個・推定))× 価格 1.32(1個あたりの売値(千円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。個数0.75倍・単価1.32倍・利益率−1%
- 産業機器:数量 260(部品の出荷(千個・推定))× 価格 4.48(1個あたりの売値(千円))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。個数1.30倍・単価1.34倍・利益率5%
- 不動産賃貸:数量 41.0(貸している床の面積(千平方メートル・推定))× 価格 2.40(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 10 億円・営業利益 8 億円。面積1.03倍・賃料1.27倍・利益率78%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 170 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ガス機器は2026/03期に利益を6割増やし、産業機器も買収で広がった。その延長が続く姿として20%とした。
中立 40% 汎用の気化器が縮み、賃貸が利益を支える 利益 11 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 8,638 円162 億円
米国では小型エンジンの規制が州から州へ広がり、芝刈り機や発電機の電動化が進む。汎用の気化器の数量は10年で3分の2に減る。噴射装置への置き換えで単価は物価を少し上回るが、売上は今より1割減る。
ガス機器は新興国のガス車で横ばいを保ち、値段は物価並みに上がる。自動車機器はエンジン車の部品が細り、小さな赤字が残る。
賃貸は倉庫の賃料を少しずつ上げ、利益は7億円台になる。全社の営業利益は14億円、純利益は11億円になる。配当性向30%の還元を続け、自己資本利益率は5%台にとどまる。
利益の半分強を賃料が稼ぐ形は今と同じだ。会社は部品と不動産の二つの顔を持ったまま、静かに続く。
- ガス機器:数量 238(燃料システムの出荷(千台・推定))× 価格 17(1台あたりの売値(千円))→ 売上 40 億円・営業利益 3 億円。台数0.95倍・単価1.34倍・利益率7%
- 汎用機器:数量 2,275(気化器・噴射装置の出荷(千個・推定))× 価格 1.57(1個あたりの売値(千円))→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。個数0.65倍・単価1.40倍(噴射装置への移行で物価を少し上回る)・利益率10.5%
- 自動車機器:数量 560(部品の出荷(千個・推定))× 価格 1.30(1個あたりの売値(千円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。個数0.70倍・単価1.30倍・利益率−3%
- 産業機器:数量 240(部品の出荷(千個・推定))× 価格 4.48(1個あたりの売値(千円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。個数1.20倍・単価1.34倍・利益率4%
- 不動産賃貸:数量 40.0(貸している床の面積(千平方メートル・推定))× 価格 2.37(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 7 億円。面積1.00倍・賃料1.25倍(倉庫の長期契約は改定が遅い)・利益率78%(償却は取得原価のまま)
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:芝刈り機などの電動化は米国の規制で確実に進む。ガス機器と賃貸の安定がそれを半分ほど埋める、最も起こりやすい姿として40%とした。
やや悲観 22% 電動化が速く、本業は賃貸頼みに 利益 7 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 4,581 円86 億円
米国の小型エンジンの規制が全米に広がり、汎用の気化器の数量は半分以下に落ちる。噴射装置への置き換えも電池の機械に負ける。主要な顧客の発注が細る。
ガス機器もフォークリフトの電動化で数量が2割減る。自動車機器は赤字が続く。本業の利益はほとんど消え、全社の営業利益は賃貸の7億円に支えられて9億円台になる。
配当性向30%は保つが、配当の額は減る。会社は工場の用地の使い方を見直し、賃貸を広げる道を探る。部品の会社から、不動産の会社に近づく姿だ。
自己資本は厚いが、部品の事業が稼がないので、帳簿の値に見合う値は付かない。
- ガス機器:数量 200(燃料システムの出荷(千台・推定))× 価格 15(1台あたりの売値(千円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。台数0.80倍・単価1.20倍・利益率4%
- 汎用機器:数量 1,575(気化器・噴射装置の出荷(千個・推定))× 価格 1.40(1個あたりの売値(千円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。個数0.45倍・単価1.25倍・利益率6%
- 自動車機器:数量 480(部品の出荷(千個・推定))× 価格 1.20(1個あたりの売値(千円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。個数0.60倍・単価1.20倍・利益率−6%
- 産業機器:数量 200(部品の出荷(千個・推定))× 価格 4.00(1個あたりの売値(千円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。個数1.00倍・単価1.20倍・利益率2%
- 不動産賃貸:数量 40.0(貸している床の面積(千平方メートル・推定))× 価格 2.27(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 9 億円・営業利益 7 億円。面積1.00倍・賃料1.20倍・利益率76%
倍率:事業のROEは約4%でk 8%を下回る。稼ぐ力の床(純利益÷k)の範囲で、本業の縮みが続くので8倍。
確率:主要な顧客の2社で売上の4分の1を占め、その製品が電動化で減る。規制の広がりが速ければ十分ありうるので22%とした。
悲観 11% 気化器の需要が消え、本業が赤字に 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,596 円30 億円
芝刈り機や発電機の多くが電池に置き換わり、汎用の気化器の需要は10年で7割減る。噴射装置も中国の部品に値段で負ける。ガス機器もフォークリフトとガス車の電動化で4割減る。
本業は赤字に沈み、工場の人員を減らす。残るのは厚木の倉庫と住宅の賃料だけだ。全社の営業利益は4億円前後、利払いを引いた純利益は3億円になる。
配当は大きく減る。賃貸の土地は残るが、会社が売る方針を示さない限り、少数株主に戻る価値は限られる。
株主に残る価値の床は、厚木の土地の賃料が生む値だ。部品の会社としての価値は、ほぼ消える。
- ガス機器:数量 150(燃料システムの出荷(千台・推定))× 価格 14(1台あたりの売値(千円))→ 売上 21 億円・営業利益 −1 億円。台数0.60倍・単価1.10倍・利益率−3%
- 汎用機器:数量 1,050(気化器・噴射装置の出荷(千個・推定))× 価格 1.30(1個あたりの売値(千円))→ 売上 14 億円・営業利益 −1 億円。個数0.30倍・単価1.16倍・利益率−4%
- 自動車機器:数量 400(部品の出荷(千個・推定))× 価格 1.10(1個あたりの売値(千円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。個数0.50倍・単価1.10倍・利益率−10%
- 産業機器:数量 160(部品の出荷(千個・推定))× 価格 3.68(1個あたりの売値(千円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。個数0.80倍・単価1.10倍・利益率−2%
- 不動産賃貸:数量 40.0(貸している床の面積(千平方メートル・推定))× 価格 2.08(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 8 億円・営業利益 6 億円。面積1.00倍・賃料1.10倍・利益率74%
倍率:本業は赤字で、稼ぐ力は賃料だけ。賃貸の不動産の値から純負債を引いて戻り方0.5を掛けた床の約30億円を、今の自己資本に対する0.215倍で置いた。
確率:汎用エンジンの気化器は単一の製品に近く、規制で需要が一気に消えるおそれがある。賃貸が残るので会社は傾かない。構造的に負ける姿として11%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ガス機器
LPG・CNG・LNGで動くエンジンの燃料システム(電子制御の噴射装置・ガスの圧力を下げる機器など)。フォークリフトや新興国のガス車、発電機向け。
| 数量燃料システムの出荷(千台・推定) | 価格1台あたりの売値(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 13 | 31 | 2 |
| 10 年後 中立 | 238 | 17 | 40 | 3 |
取り方:台数の開示は無い。ガス機器の売上31.25億円(2026/03期の有報)を、噴射装置と調圧機器の組み合わせの平均の単価約12.5千円で割った推定。千台×千円×0.01で億円。
汎用機器
芝刈り機・発電機・農機・船外機などの汎用エンジンの気化器と、二輪の噴射装置。米国のエンジンメーカーが主な顧客。
| 数量気化器・噴射装置の出荷(千個・推定) | 価格1個あたりの売値(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,500 | 1.12 | 39 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2,275 | 1.57 | 36 | 4 |
取り方:個数の開示は無い。汎用機器の売上39.18億円を、気化器と噴射装置の平均の単価約1.12千円で割った推定の350万個。主な顧客はBriggs & Stratton(全社売上の14.5%)とRehlko(同12.0%)。
自動車機器
スロットルボディ、アクセルワイヤ、アクチュエータなど、エンジン車の吸気と操作の部品。
| 数量部品の出荷(千個・推定) | 価格1個あたりの売値(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 1.00 | 8 | −2 |
| 10 年後 中立 | 560 | 1.30 | 7 | 0 |
取り方:個数の開示は無い。売上7.99億円を単価約1千円で割った推定。営業損失2.02億円(前期は2.61億円の損失)。
産業機器
空圧の制御機器の部品、建設機械の部品など。2025年9月に大島機工を子会社にした。
| 数量部品の出荷(千個・推定) | 価格1個あたりの売値(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 200 | 3.35 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 240 | 4.48 | 11 | 0 |
取り方:個数の開示は無い。売上6.69億円(大島機工の子会社化で前期の1.7倍)を単価約3.3千円で割った推定。
不動産賃貸
本社の厚木工場の用地に建てた倉庫と、賃貸の住宅を貸す。
| 数量貸している床の面積(千平方メートル・推定) | 価格1平方メートルあたりの年間の賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 1.90 | 8 | 6 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 2.37 | 9 | 7 |
取り方:面積の開示は無い。賃貸の売上7.58億円を、倉庫の年間の賃料を1平方メートルあたり約1.9万円と見た推定の4万平方メートル。利益6.0億円。千平方メートル×万円×0.1で億円。
リスクと懸念
小型エンジンの電動化
カリフォルニア州は新しく売る小型エンジンの機械を事実上禁じた。規制がほかの州に広がれば、汎用の気化器の需要は一気に減る。汎用機器は売上の4割を占める最大の事業だ。
顧客の偏り
Briggs & StrattonとRehlkoの2社で売上の4分の1を占める。どちらかが発注を減らす、部品の調達先を変える、経営に行き詰まると、利益に直接響く。
ガス機器の電動化
フォークリフトはLPGのエンジンから電池への移行が速い。新興国のガス車もいずれEVと競う。水素エンジンの噴射装置が育つ前に、ガスの需要が細るおそれがある。
自動車機器の赤字
エンジン車の吸気の部品は数年赤字が続く。EVへの移行で数量は細る一方で、撤退や縮小の判断が遅れれば損が積み上がる。
資産を株主に戻さない
政策保有の株と工場用地の含み益は厚いが、売る方針も還元を増やす方針も無い。資産の値が株主に戻らないまま、資本効率が低く続くおそれがある。
今後の分かれ目
- 米国のほかの州がカリフォルニア州と同じ小型エンジンの規制を決めた
- 汎用の数量をさらに下げ、やや悲観と悲観の確率を厚くする。
- 水素エンジンの噴射装置で量産の受注を公表した
- ガス機器の数量を上げ、楽観側に確率を寄せる。
- 自動車機器から撤退するか、黒字に戻した
- 赤字の分を除き、中立の利益を少し上げる。
- 政策保有の株を売り、自社株買いや増配に回す方針を数字で示した
- 還元を厚くし、余った資産として一部を足すかを考え直す。
- 大株主やファンドが株式を買い取る提案を出した
- 買付けの値段で評価が決まる。本質価値の計算は止め、分析の対象から外す。
見ておくもの
- 汎用機器の売上と利益率
- 米国の州の小型エンジン規制の広がり
- ガス機器の伸びと水素エンジンの受注
- 自動車機器の損益
- 賃貸の賃料と稼働
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価を見ずに決めた。10年後の事業のROEは中立で約5%とk 8%に届かないので、PERの上限は1÷k≒11.8倍、中立はその8割の9.5倍。賃料の利益は利益に残すので、工場用地の含み益は別に足していない(二重を避ける)。政策保有の株も配当が利益に入るので足さない。賃貸の建物の償却は取得原価のままで物価で増やさず、利益率は78%前後に保った。悲観側は稼ぐ力の床(純利益÷k)の範囲で置いた。過去のPERやPBRは使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.5 倍・やや楽観 PER 10.3→12.5 倍・中立 PER 9.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityの+1.0%を足した(決まりv2)。個別のリスクは筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。