結論
GMB は、車の修理用の部品を世界に売るメーカーだ。ウォーターポンプ、ジョイント、ベアリングが三本柱になる。筆者の結論は、10 年の価値は今の時価総額とほぼ並び、安いとも高いとも言い切れない、というものだ。事業は堅いが、借入が時価総額の 5 倍あり、株主の取り分は薄い。市場はその重さを織り込んでいる。
強みは、修理用の部品という需要の安定だ。走る車の寿命は延び、故障した部品は交換される。新車の動きに左右されにくい。
課題は 3 つある。1 つ目は借入で、有利子負債は 401 億円。2 つ目は、韓国子会社の利益の 45% が少数株主に行くこと。3 つ目は、機械式のポンプが電動に置き換わる転換だ。
中立では、10 年後の営業利益は 47 億円、純利益は 16 億円。電動のポンプが機械式の減少を埋め、利益は少しずつ戻る。ただ、利益に対して借入が重く、高い倍率は払えない。
補修用の需要が安定していることは、悲観でも事業が残る裏づけになる。それでも株主の取り分が薄いことに変わりはない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業の安定と、財務の脆さを分けて見る。補修用部品は、走る車がある限り需要が続く点で、評価できる。
ただ、株主のものになる利益は小さい。営業利益は 33 億円だが、借入の利払い、少数株主への分配、税を引くと、残るのはわずかだ。2026 年 3 月期は最終赤字だった。設備投資も大きく、フリーキャッシュフローは赤字が続く。
財務の安全域も薄い。自己資本比率は 24%、営業利益は利払いの 2.5 倍しかない。借り換えで金利が上がる世界では、危うい。
経営は電動化に備え、米国やインドに投資を進める。方向は正しいが、借入で賄う成長は、株主にとって安全域を削る。
見極めは、電動ウォーターポンプの量産で利益率が上がるか、借入が減り始めるかにかかる。払う値段に安全域を求めるなら、この会社は条件を満たさない。
何で稼ぐ会社か
GMB は奈良県川西町に本社と主力工場を置く、自動車部品のメーカーだ。売上は 1,053 億円で、海外の比率が 91% を占める。
製品は 3 つに分かれる。駆動・伝達装置部品(ユニバーサルジョイント、等速ジョイント、ボールジョイント)が 475 億円、冷却装置部品(ウォーターポンプ、電動ウォーターポンプ、ファンクラッチ)が 428 億円、ベアリング(テンショナー、アイドラー、ハブ用)が 146 億円だ。
主な販売先は 2 つある。1 つ目は海外の補修用市場で、米国、欧州、アジアの卸や小売に売る。2 つ目は新車用で、韓国の GMB KOREA が現代自動車グループに供給する。現代自動車と現代トランシスだけで売上の 16.5%、グループ全体で 38.3% になる。
地域別では、韓国が 675 億円と最大で、利益の大半を稼ぐ。日本 176 億円、中国 77 億円、米国 56 億円と続く。従業員は約 2,500 人。
韓国子会社 GMB KOREA は、韓国取引所に上場しており、議決権の 54.4% を持つ。研究開発の中心もここにある。
優良さと弱いところ
一言でいえば、補修用の分野で裾野の広い品ぞろえを持つ堅実な会社だが、財務が薄く、利益率も低い。
強みは 2 つある。1 つ目は、補修用の幅広い品ぞろえと、世界の流通網だ。2 つ目は、韓国で現代自動車グループの新車用を供給する実績だ。補修用は、走る車の台数に連動して安定する。
弱みは 3 つある。1 つ目は、借入が重いこと。2 つ目は、米国の低価格競争で、米国セグメントが赤字なこと。3 つ目は、現代自動車グループへの依存度の高さだ。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 2.2% で、資本コストの 4 分の 1 に満たない。営業利益率は過去 12 年の山でも 4.2% だ。2026 年 3 月期は 19.5 億円の減損で最終赤字になった。
経営は電動化への対応と、米国・インドの新工場に投資を進めている。方向は評価できるが、財務に余裕がなく、投資の失敗を吸収しにくい。堀の評価は普通にとどめる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車の補修用部品市場は、世界で走る車の台数に連動する。新車の販売が落ちても、走り続ける車の部品は交換される。平均の車齢が延びるほど、需要は積み上がる。
電動化の影響は、10 年では緩やかだ。補修用は、10 年から 15 年前に売れた車が対象になるためだ。今の内燃機関車が走り続ける間は、機械式のウォーターポンプも売れる。
ただし 10 年を超えると、電気自動車の増加で、機械式の部品は減っていく。一方、電気自動車にも冷却が要り、電池とモーターの熱を管理する電動ウォーターポンプや熱管理モジュールは増える。ボールジョイントや等速ジョイントは、電気自動車にも使われる。
米国の補修用市場は、低価格の競争が厳しい。大手小売業者の返品慣行も重い。中国の部品メーカーが、安い価格で攻める構図もある。
新車用では、現代自動車グループが電動車を増やしており、電動ポンプの需要が見込める。物価が年 3% の世界では、補修用の価格は転嫁しやすいが、新車用は毎年の値下げ要請が前提だ。
ロシアの子会社は 2022 年から止まり、2024 年に限定的に再開した。地政学の影響は避けられない。
資本政策と M&A
還元は最低の水準を守る。会社は最低配当の水準を決め、連結配当性向 25% を目標に掲げる。2026 年 3 月期は純損失でも、最低配当を維持した。
借入は増えている。有利子負債は 401 億円と、前期から 68 億円増えた。投資 CF は 36 億円の支出で、設備投資は韓国を中心に 40 億円。次の年は 53 億円を見込み、米国のアラバマ州にも新工場を建てる。フリーキャッシュフローは 22 億円の赤字で、借入で賄っている。
韓国子会社の株式を、議決権の 54.4% 持つ。韓国で上場する子会社なので、利益の 45% は少数株主のものになる。
大株主の筆頭は個人で、発行済株式の 18.5% を持つ。親会社はない。TOB の発表は確認できなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
補修用部品は、景気に左右されにくい需要が続く。世界で走る車の台数は増え続け、車齢も延びている。部品を交換する需要は、電動化が進んでも消えない。ボールジョイントや等速ジョイントは、電気自動車にも使われる。
電動ウォーターポンプや熱管理モジュールは、電動化で新しく生まれる需要だ。GMB は欧州で電動ウォーターポンプの生産を始め、新車用でも現代自動車グループとの関係がある。冷却は単価が上がる分野で、売上を伸ばす力になる。
足元の業績は上向いている。営業利益は 71% 増えた。2026 年の赤字は、子会社の減損という一時的な費用による。今期は純利益が戻る会社予想だ。
時価総額は純利益の 4〜5 倍にすぎず、利益が少し回復するだけで、再評価の余地は大きい。
米国とインドの新工場が立ち上がれば、補修用の拡販と OEM の外注化の双方を取り込める。借入は膨らむが、売上の規模も同時に伸びる。補修用は在庫を持つ流通との取引が長く、新製品を既存の販路に載せやすい。
慎重な見方
借入の重さが、すべてを決める。純負債は 303 億円で、時価総額の 5 倍。営業利益は利払いの 2.5 倍しかなく、金利が 1% 上がるだけで、利益が数億円消える。
営業利益が増えても、株主には残らない。韓国子会社の利益の 45% は少数株主に行く。過去 10 年の ROE の中央値は 2.2% で、資本コストの 4 分の 1 しかない。
米国は 8.5 億円の赤字で、売上は 24% 減った。低価格競争と大手小売の返品慣行という構造的な問題で、立て直しは簡単ではない。現代自動車グループへの依存も 38% と高い。
設備投資は増え、フリーキャッシュフローは赤字だ。借入で賄う成長は、金利が上がる世界では株主の価値を削る。減損が繰り返される危険もある。
電動化の波で機械式の部品が先に減れば、設備の稼働率が落ち、さらに減損が出る。金利が上がる世界では、借入で賄う投資の回収が遅れるほど、株主の取り分は削られる。
どちらに重みを置いたか
強い論点は慎重な側にある。借入が重く、金利が上がる世界では、利益が株主に残りにくい。ただ、補修用の需要は安定し、電動ポンプの追い風もあるので、悲観を最大にはしなかった。
確率は、中立を 34% と最も重く置き、やや悲観と悲観を合わせて 46% にした。楽観側は合わせて 20%。時価総額が純利益の 4 倍台と低いのは、借入の重さを織り込んだ結果と見て、安全域とは判断しなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,640 円141 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 444 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 1,375 円73 億円、今との差 +25.3%、 期待の年率 +10.9%(資本コスト 9.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 6,399 円342 億円 | 1,123 円60 億円 | +585.7% | +21.2% | 376 円20 億円 |
| やや楽観 | 15% | 4,527 円242 億円 | 842 円45 億円 | +389.4% | +17.2% | 805 円43 億円 |
| 中立 | 34% | 3,814 円204 億円 | 636 円34 億円 | +305.7% | +15.0% | 1,513 円81 億円 |
| やや悲観 | 30% | 1,067 円57 億円 | 150 円8 億円 | +10.9% | +1.0% | 365 円19 億円 |
| 悲観 | 16% | 150 円8 億円 | 0 円0 億円 | −86.4% | −18.1% | 24 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,640 円141 億円 | 444 円24 億円 | +181.1% | +10.9% | 3,083 円165 億円 |
今の株価時価総額 1,097 円59 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 5% 電動ウォーターポンプが伸び、米国の補修用も立て直す 利益 31 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 6,399 円342 億円
電動化で冷却は大きく変わる。エンジンの冷却だけでなく、電池とモーターの熱を管理する電動ウォーターポンプと統合熱管理モジュールの需要が伸びる。冷却装置部品の単価は電動品への切り替えで 1.5 倍に上がり、台数も 1 割増える。
駆動・伝達部品は補修用の需要が底堅く、台数は 15% 増える。世界で走る車の平均車齢が延び、補修の需要が積み上がる。米国の拠点も大手小売業者との取引を整理して、赤字を脱する。
営業利益率は 5.1% に上がる。新工場が稼働し、固定費が薄まるためだ。それでも過去 12 年の山(4.2%)を超える、会社として初めての水準になる。
- 駆動・伝達装置部品(ユニバーサルジョイント・等速ジョイント・ボールジョイント):数量 46.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 1.61(1 個あたり売上(千円))→ 売上 738 億円・営業利益 41 億円。駆動・伝達 営業利益率 5.5%
- 冷却装置部品(ウォーターポンプ・電動ウォーターポンプ・ファンクラッチ):数量 18.8(年間の販売数(百万個相当))× 価格 3.75(1 個あたり売上(千円))→ 売上 706 億円・営業利益 35 億円。冷却 営業利益率 5.0%
- ベアリング(テンショナー・アイドラー・ハブベアリング):数量 20.8(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.94(1 個あたり売上(千円))→ 売上 196 億円・営業利益 8 億円。ベアリング 営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 31 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 335 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化の部品が計画どおり立ち上がり、米国の採算も戻る、二つが同時に必要。借入が重い会社でそこまで運ぶのは難しいので 5% にとどめた。
やや楽観 15% 電動品が育ち、補修用の価格改定も定着する 利益 21 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 4,527 円242 億円
電動ウォーターポンプの採用が広がり、冷却装置部品の単価が 1.42 倍に上がる。機械式ポンプは減るが、電動品の単価の高さが補う。駆動・伝達は台数が 8% 増える。
ベアリングのうちテンショナーとアイドラーは、ベルトで回す補機の減少で台数が 5% 減る。ハブベアリングは堅調で、全体では緩やかな減少にとどまる。
営業利益は 60 億円、利益率は 4.2% と過去の山に並ぶ。ただし、韓国子会社の少数株主が利益の 45% を持ち、借入の金利が上がるため、純利益は 21 億円にとどまる。会社の中計が掲げる補修用の拡販と、ユニバーサルジョイントの外注化の受け皿が、数量を支える。
- 駆動・伝達装置部品(ユニバーサルジョイント・等速ジョイント・ボールジョイント):数量 43.2(年間の販売数(百万個相当))× 価格 1.57(1 個あたり売上(千円))→ 売上 678 億円・営業利益 31 億円。駆動・伝達 営業利益率 4.5%
- 冷却装置部品(ウォーターポンプ・電動ウォーターポンプ・ファンクラッチ):数量 16.2(年間の販売数(百万個相当))× 価格 3.55(1 個あたり売上(千円))→ 売上 576 億円・営業利益 23 億円。冷却 営業利益率 4.0%
- ベアリング(テンショナー・アイドラー・ハブベアリング):数量 19.8(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.91(1 個あたり売上(千円))→ 売上 181 億円・営業利益 6 億円。ベアリング 営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 227 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の中計の方向に近い筋書き。足元の営業利益は 71% 増え、補修用の価格改定も進んでいる実績がある。
中立 34% 電動品が機械式の減りを埋め、利益は少しずつ戻る 利益 16 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 3,814 円204 億円
中立では、機械式ウォーターポンプが減り、電動品が代わりに伸びる。冷却装置部品の台数は 0.85 倍に減るが、単価は 1.40 倍に上がり、売上は 19% 増える。
駆動・伝達部品は、補修用が底堅く、台数は横ばい。単価は 1.28 倍で、物価の 1.34 倍に届かない。ベアリングは機械式の補機の減少で台数が 0.85 倍。
営業利益は 47 億円、利益率は 3.7%。足元の 3.2% から少し上がるが、過去の山には届かない。借入の金利が上がり、年 8 億円ほど利益を削る。少数株主への流出もあり、純利益は 16 億円にとどまる。会社の来期予想(営業利益 36 億円、純利益 10〜14 億円)から連続した伸びだ。
- 駆動・伝達装置部品(ユニバーサルジョイント・等速ジョイント・ボールジョイント):数量 40.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 1.53(1 個あたり売上(千円))→ 売上 613 億円・営業利益 25 億円。駆動・伝達 営業利益率 4.0%
- 冷却装置部品(ウォーターポンプ・電動ウォーターポンプ・ファンクラッチ):数量 14.5(年間の販売数(百万個相当))× 価格 3.50(1 個あたり売上(千円))→ 売上 508 億円・営業利益 18 億円。冷却 営業利益率 3.5%
- ベアリング(テンショナー・アイドラー・ハブベアリング):数量 17.7(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.91(1 個あたり売上(千円))→ 売上 161 億円・営業利益 5 億円。ベアリング 営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 173 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化の部品が増える一方で機械式が減り、米国の補修用は低採算が続く。いちばん素直な落としどころなので重く置く。
やや悲観 30% 米国と現代向けの採算が悪化し、金利の負担が重くのしかかる 利益 5 億円 · PER 5.0 倍 · 株価時価総額 1,067 円57 億円
米国の補修用市場の低価格競争が続き、米国の拠点は赤字が続く。現代自動車グループ向けは値下げを迫られ、単価の上昇が 1.20 倍にとどまる。
機械式の部品が先に減り、電動品の立ち上げは遅れる。冷却装置部品の台数は 0.75 倍。営業利益率は 2.2% に下がり、営業利益は 23 億円。
借入の金利が 3.5% に上がり、利払いが年 8 億円増える。少数株主への流出も重く、純利益は 4.5 億円しか残らない。配当は最低水準を守れるが、増配はない。設備投資を抑え、借入を返す局面に入る。電動品の立ち上げに必要な投資を絞るため、成長の芽も遅れる。
- 駆動・伝達装置部品(ユニバーサルジョイント・等速ジョイント・ボールジョイント):数量 36.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 1.44(1 個あたり売上(千円))→ 売上 517 億円・営業利益 13 億円。駆動・伝達 営業利益率 2.5%
- 冷却装置部品(ウォーターポンプ・電動ウォーターポンプ・ファンクラッチ):数量 12.8(年間の販売数(百万個相当))× 価格 3.25(1 個あたり売上(千円))→ 売上 416 億円・営業利益 10 億円。冷却 営業利益率 2.5%
- ベアリング(テンショナー・アイドラー・ハブベアリング):数量 15.6(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.84(1 個あたり売上(千円))→ 売上 131 億円・営業利益 3 億円。ベアリング 営業利益率 2.0%
倍率:事業の ROE 1.8% は資本コスト 9.25% の 5 分の 1。稼ぐ力の床(純利益÷k)は 49 億円で、その半分に満たない 5.0 倍に置いた。借入の返済が先に立ち、株主の取り分は少ない。
確率:借入が 400 億円あり、営業利益の 12 倍にあたる。借り換えの金利上昇と米国の赤字が重なると、利益が消えるのは十分ありうる。過去 12 年で赤字の年が 4 回あることも踏まえて、厚く置いた。
悲観 16% 借入が重荷になり、株主の取り分がほとんど残らない 利益 −25 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 150 円8 億円
現代自動車グループ向けが大きく減り、韓国子会社の稼働率が落ちる。米国の補修用は採算が戻らず、撤退や縮小の費用がかさむ。駆動・伝達の台数は 0.7 倍、冷却は 0.55 倍まで落ち、営業は赤字になる。
借入の金利が上がり、利払いが利益を食う。純損失は 25 億円。自己資本は 150 億円台まで減り、銀行の担保余力が問われる。資産を売って返済する局面に入る。
この局面では、株主の取り分はほとんど残らない。韓国子会社の株式や不動産を売れても、借入と少数株主への分配が先になるからだ。銀行が追加の担保や増資を求める局面もありうる。増資が行われれば、既存株主の持ち分はさらに薄まる。
- 駆動・伝達装置部品(ユニバーサルジョイント・等速ジョイント・ボールジョイント):数量 28.0(年間の販売数(百万個相当))× 価格 1.34(1 個あたり売上(千円))→ 売上 376 億円・営業利益 −4 億円。駆動・伝達 営業利益率 -1.0%
- 冷却装置部品(ウォーターポンプ・電動ウォーターポンプ・ファンクラッチ):数量 9.4(年間の販売数(百万個相当))× 価格 2.88(1 個あたり売上(千円))→ 売上 271 億円・営業利益 −3 億円。冷却 営業利益率 -1.0%
- ベアリング(テンショナー・アイドラー・ハブベアリング):数量 11.4(年間の販売数(百万個相当))× 価格 0.77(1 個あたり売上(千円))→ 売上 88 億円・営業利益 −2 億円。ベアリング 営業利益率 -2.0%
倍率:赤字なので稼ぐ力では測れず、売れる資産から借入と少数株主の取り分を引いた残り(8 億円)を床に置いた。今の自己資本 228 億円に対する PBR は 0.04 倍。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.0351 倍・時価総額 8 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:現代自動車グループの発注減と米国の赤字、金利上昇が重なる筋書き。純負債が時価総額の 5 倍の会社として、ありうる深さなので 16% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
駆動・伝達装置部品(ユニバーサルジョイント・等速ジョイント・ボールジョイント)
車の駆動力を伝え、操舵をつなぐ関節の部品。補修用が中心で、新車用は韓国子会社が現代自動車グループ向けに供給。
| 数量年間の販売数(百万個相当) | 価格1 個あたり売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 1.20 | 479 | 17 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 1.53 | 613 | 25 |
取り方:製品別売上 475.0 億円と、その他 4.0 億円を合わせた 479.0 億円(2026/03、有報)。個数は開示がなく、1 個あたり約 1.2 千円と置いた年 4,000 万個の推定。利益は地域別の開示のみで、全社の営業利益 33.2 億円を製品別に配った推定(17.0 億円・3.5%)。
冷却装置部品(ウォーターポンプ・電動ウォーターポンプ・ファンクラッチ)
エンジンの冷却水を回すポンプとその関連部品。電動ウォーターポンプと熱管理モジュールが電動化の対象。
| 数量年間の販売数(百万個相当) | 価格1 個あたり売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.1 | 2.50 | 428 | 13 |
| 10 年後 中立 | 14.5 | 3.50 | 508 | 18 |
取り方:製品別売上 427.9 億円(+4.5%、有報)。個数は 1 個あたり約 2.5 千円と置いた年 1,710 万個の推定。利益は全社を配った推定(12.8 億円・3.0%)。
ベアリング(テンショナー・アイドラー・ハブベアリング)
ベルトの張りを保つ部品や、車輪を支えるハブ用のベアリング。
| 数量年間の販売数(百万個相当) | 価格1 個あたり売上(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.8 | 0.70 | 146 | 3 |
| 10 年後 中立 | 17.7 | 0.91 | 161 | 5 |
取り方:製品別売上 145.9 億円(-4.8%、有報)。個数は 1 個あたり約 0.7 千円と置いた年 2,080 万個の推定。利益は全社を配った推定(3.4 億円・2.3%)。
リスクと懸念
借入が重い
有利子負債は 401 億円で、現金を引いた純負債は 303 億円。自己資本比率は 24%。営業利益が利払いの 2.5 倍しかなく、金利が上がると利益が消える。借り換えで金利が 3.5% に上がる影響は、10 年で年 8 億円ほどになる。
現代自動車グループへの依存
現代自動車と現代トランシスだけで売上の 16.5%、グループ全体で 38.3%。韓国子会社 GMB KOREA の売り上げの大部分を占める。発注方針や価格の見直しは、利益を左右する。
米国の補修用市場
米国セグメントは売上が 24% 減り、8.5 億円の赤字。低価格競争と大手小売業者の返品慣行が有報のリスクにある。拠点の見直しや値上げが進まなければ、赤字が続く。
韓国子会社の少数株主への流出
韓国子会社 GMB KOREA は議決権の 54.4% を持つ上場会社で、利益の 45% は少数株主に行く。営業利益の大半を韓国が稼ぐため、連結の純利益は営業利益の 3 分の 1 ほどに目減りする。
電動化による機械式部品の減少
機械式ウォーターポンプやテンショナー・アイドラーのベアリングは、電動車では不要になる。電動ウォーターポンプなどの電動品の立ち上げが遅れると、数量が先に落ちる。
減損や赤字の繰り返し
2026 年 3 月期は 19.5 億円の減損で純損失になった。過去 12 年で最終赤字が 4 回あり、少しの需要減で赤字に落ちる。設備投資が先行すると、償却の負担も重い。
今後の分かれ目
- 電動ウォーターポンプの量産が欧州(ルーマニア)で始まり、売上が 100 億円を超えたら
- 冷却装置部品の単価を上方に直し、やや楽観の筋書きに確率を移す。
- 米国セグメントが黒字に転じたら
- 米国の採算の見方を上方に直し、倍率を少し上げる。
- 借入の金利が 4% を超えて借り換えが進んだら
- 純利益の見通しを下げ、やや悲観の筋書きに確率を移す。
- 現代自動車グループ向けの売上が 2 割以上減ったら
- 韓国子会社の稼働率が下がり、悲観の筋書きに確率を移す。
- 増資や資産売却で借入を減らす発表があったら
- 借金の負担が軽くなり、k の借金の項目を見直す。希薄化があれば株主の取り分を直す。
見ておくもの
- 電動ウォーターポンプの量産開始と売上
- 米国セグメントの黒字化
- 借入残高と借り換えの金利
- 現代自動車グループ向けの売上比率
- 韓国子会社への持ち株比率と少数株主への分配
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業の ROE と資本コスト 9.25% から置いた。ROE が k に届かず、借入が重いので、PER は 1÷k の 10.8 倍を上限に、中立は 7.0 倍とした。今の株価・過去の PER や PBR・同業の倍率は使っていない。時価総額が純利益の 4 倍台であることは、割安の根拠にしていない。純負債が時価総額の 5 倍あるため、EV÷営業利益も確かめた。悲観の床は、売れる資産から借入と少数株主の取り分を引いた額で置き、帳簿の自己資本は床にしていない。新リース会計基準で BS の形は変わるが、数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→10.81 倍・やや楽観 PER 8→10.81 倍・中立 PER 7→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.75% を足して 9.25%。同じ領域の会社(エフ・シー・シー +1.0%、NITTAN +1.5%)より高いのは、借入の重さのため。