結論
近畿車輛は、近鉄グループの鉄道車両メーカーである。東大阪の工場で電車を造り、JR西日本・近鉄・南海に納める。海外ではカイロ地下鉄とロサンゼルスの路面電車がある。商業施設の賃貸も持つ。
筆者の結論は、10 年の本質価値が今の時価総額を大きく下回る、というものだ。2026 年 3 月期の営業損益は 2 億円の赤字だった。純利益 16 億円は、有価証券の売却益と税の効果でふくらんだ数字にすぎない。稼ぐ力は、まだ戻っていない。
見かけの強さにも注意がいる。純現金は 168 億円あるが、顧客から先にもらった前受金が 200 億円あり、株主のお金とは言えない。
救いは 2 つある。受注残が 1,132 億円と売上の約 3 年分あること。もう 1 つは、有価証券と賃貸不動産という売れる資産を持つことだ。ただ近鉄が 4 割超の議決権を握るため、株主に戻る保証は弱い。
会社の計画でも営業利益率は 2.9% にとどまる。資本コストを下回る稼ぎの会社に、帳簿の厚みだけで高い値は付けられない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「安く見えるだけ」の典型に近い。帳簿の自己資本は 360 億円あるが、稼ぐ力は営業赤字に近い。ためた利益 1 億円は、1 億円未満の価値しかない。
見かけの現金にも気をつけたい。契約負債が 200 億円あり、納品が終われば現金は出ていく。株主が自由に使えるお金ではない。
評価できる点もある。賃貸不動産は簿価が小さく、利益率が約 9 割と高い。有価証券は売れる資産だ。会社が資産を株主に戻す意思を示せば、価値は変わる。ただ 4 割超を握る近鉄が動かない限り、その確証はない。
安全域は、資産の面では厚く、稼ぐ力の面では薄い。持ち続けたい会社かと問われれば、利益が資本コストを超えるまでは、持ちたいとは言えない。
筆者がいちばん知りたいのは、資産と稼ぐ力のどちらを根拠に値を付けるか、会社がどちらを選ぶかだ。今の経営は、稼ぐ力を戻す方を選んでいる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 97% は鉄道車両で、2026 年 3 月期の売上は 363 億円だった。国内の中心はJR西日本・近鉄・南海などの電車で、東大阪の工場で造る。近鉄の特急車両の実績は長く、ステンレス車両とアルミ車両の両方を扱う。
海外の売上は約 99 億円で、全体の 27% を占める。ロサンゼルス郡都市交通局向けの路面電車は 235 両の大型案件で、車体を米国で造る初の案件だった。カイロ地下鉄 4 号線の車両は三菱商事を通じて約 400 億円で受注した。北米には車両保守の仕事もあるが、2025 年 9 月に 1 件が終わり、2026 年 2 月に別案件を取るまで売上が谷になった。
不動産賃貸は売上 8.5 億円と小さいが、営業利益は 7.4 億円で、鉄道の利益 2.8 億円を上回る。東大阪と所沢の商業施設だ。
この事業は、数量を自分では決められない。国内の電車の新造は年 1,500 両前後で、受注残の厚みがそのまま先 3 年の売上の見通しになる。会社の中計は、ものづくりの変革・海外・脱炭素の 3 本柱を掲げる。
優良さと弱いところ
強みは、顧客との長い関係と、車両づくりの技の積み重ねだ。近鉄グループの一員であり、近鉄・JR西日本・南海から更新の仕事が続く。北米の路面電車でも実績を作った。
弱みは、利益の薄さである。過去 12 年のうち営業利益率が 1% 未満か赤字だった年が 6 回ある。2017 年 3 月期は海外案件で 142 億円の営業損失を出した。今回も、コロナ期に受けた案件が物価高で赤字になった。値が入札と交渉で決まるため、コストの上昇を転嫁しにくい。
資本の効率も低い。ROE は 10 年の中央値で 4.3% と、資本コストの半分ほどだ。会社は配当の下限を年 3.4 億円とするが、配当性向は 22% で、利益の多くが社内に残る。
経営は北米にリソースを集める方針で、ピスカタウェイ工場を閉めてパームデールに集約する。判断は筋が通る。ただ過去の失敗の型が再び出ないかは、まだ証明されていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の電車の新造は年 1,500 両前後で、人口減の中でも、老朽車両の更新と省エネ要請で大きくは減らない。ただ鉄道会社の投資は運賃改定と利用者数に縛られ、需要は伸びない。
競争相手は日立製作所、川崎車両、総合車両製作所、日本車輌製造だ。入札では価格を削られやすい。近畿車輛は関西圏の私鉄とJR西日本に強いが、首都圏では総合車両製作所が強い。
海外では、北米の路面電車(LRV)の置き換え需要がある。ただ米国は現地調達の規則が厳しく、現代ロテムやシーメンスなど世界の大手と争う。近畿車輛は北米専任の組織を立て、「基本モデル+セミオーダー」の路面電車を市場に出す計画だ。
足元は物価高と人手不足で、原価が上がりやすい。2026 年 3 月期に受注は 315 億円と 55% 伸び、受注残は 1,132 億円と厚い。ただ、この受注残に物価高を価格に乗せた案件が入っているかが、利益の分かれ目になる。
鉄道車両は、一度納めれば 30 年ほど使われる。更新は計画的だが、時期は鉄道会社の財布で決まる。新造の波が谷にあたる年は、売上が 2〜3 割落ちることもある。近畿車輛の売上が 2020 年代前半に 300 億円台まで落ちたのは、この波と海外案件の空白が重なったためだ。
資本政策と M&A
会社は配当の下限を年 3.4 億円とし、配当性向は 22% だった。増配の方針はなく、自社株買いの実績もない。資本効率の向上を理由に、保有する投資有価証券の一部を売却している。2026 年 3 月期は約 14 億円を売り、売却益が 9.6 億円出た。
オアシス・マネジメントが 2026 年 6 月に 6.96% を取得した。提案の中身は公表されていない。ただ近鉄グループは直接 14% と、退職給付信託の 30% を合わせて議決権の 4 割超を握る。物言う株主の提案だけでは動きにくい構造だ。
現有の不動産は、成長の資源・収益の波動への備えとして持ち続けると会社が書いた。売る予定はない。買収の歴史はなく、TOB の可能性は低くないが、価格は近鉄が決める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注残は 1,132 億円と売上の 3 年分に迫る。2026 年 3 月期の受注は 55% 伸びた。物価高で赤字になった案件は納品を終えるたびに片づき、新しい契約には物価の連動が入っていく。
北米は、ロサンゼルス郡の路面電車 235 両の実績がある。会社は北米に専任組織を置き、パームデール工場に集約した。置き換え需要のある市場で、新しい路面電車を売り込む段階だ。
資産面では、含み益のある賃貸不動産と、約 75 億円の有価証券がある。時価総額は 162 億円で、自己資本 360 億円の半分以下だ。オアシスが 6.96% を持ち、資産の売却や還元を求める可能性がある。近鉄が動けば、価値が表に出る。
2029 年度以降に営業利益率 6% という会社の目標は、物価の転嫁が進めば現実味を帯びる。
仮に営業利益率が 4% で定着すれば、営業利益は 20 億円近くになり、時価総額の 1 割を超える。賃貸だけでも年 7 億円の利益があり、資産の質は悪くない。
慎重な見方
会社は、中計の営業利益率の目標を 3 年続けて下げた。当初 6% だった最終年の見通しは 2.9% まで落ちた。2026 年 3 月期の営業損益は 2 億円の赤字で、会社予想の 2027 年 3 月期も 1 億円にとどまる。
純現金 168 億円は、前受金 200 億円で作られた見かけの数字だ。納品が進めば現金は減る。2017 年 3 月期には海外案件で 142 億円の営業損失を出し、自己資本が半分近くになった。
近鉄が 4 割超を握るので、オアシスが加わっても資産の売却や還元は進みにくい。配当性向は 22% で、下限は年 3.4 億円。ROE が資本コストを超えない会社に、ためた資産の分だけ高い値は付けられない。
北米の路面電車は、現地調達の規則と競争で、採算が読めない。
賃貸と有価証券は魅力だが、売らない方針のままでは価値は表に出ない。会社は不動産を「持ち続ける」と明言している。株主の取り分になる前に、固定費と前受金の反動が先に来る。
どちらに重みを置いたか
強気の主張は、受注残と資産の厚みに根拠がある。ただ 10 年の価値は、稼ぐ力が資本コストを超えられるかで決まる。会社自身が目標を 3 回下げた事実と、近鉄が議決権を握る構造から、慎重な主張の方が重いと判断した。
確率は中立に 37%、やや悲観を 25%、悲観を 10% と、悲観側を少し厚くした。楽観は 8% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,970 円136 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 558 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 1,218 円84 億円、今との差 −50.2%、 期待の年率 +0.3%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,605 円317 億円 | 872 円60 億円 | +124.1% | +8.4% | 438 円30 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,276 円225 億円 | 654 円45 億円 | +60.8% | +4.9% | 786 円54 億円 |
| 中立 | 37% | 2,080 円143 億円 | 552 円38 億円 | +7.7% | +0.7% | 974 円67 億円 |
| やや悲観 | 25% | 554 円38 億円 | 494 円34 億円 | −57.1% | −8.1% | 262 円18 億円 |
| 悲観 | 10% | 382 円26 億円 | 291 円20 億円 | −72.5% | −12.1% | 67 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,970 円136 億円 | 558 円38 億円 | +3.4% | +0.3% | 2,527 円174 億円 |
今の株価時価総額 2,444 円168 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:北米の路面電車で新規受注が続き、国内も採算が会社の目標に届く 利益 25 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 4,605 円317 億円
国内ではJR西日本・近鉄・南海の更新が途切れず、値上げの受け入れも進んで、コロナ期のような赤字案件が出なくなる。北米ではロサンゼルスの次の案件を取り、パームデール工場の稼働が安定する。専任組織で売る「基本モデル+セミオーダー」の路面電車が、置き換え需要をつかむ。2029 年度以降の営業利益率 6% という会社の目標に、全社でほぼ届く。賃貸の商業施設は物価に追いつかないものの、安定して利益を出し続ける。ただ売上は 550 億円台にとどまり、鉄道は数件の大型案件で利益が決まる事業のままだ。配当は下限(年 3.4 億円)から少しずつ厚くなり、利益の 4 割ほどを戻す。それでも自己資本の利回りは資本コストに届かない。
- 国内鉄道車両:数量 200(新造両数(両・推定))× 価格 1.88(1両あたり売上(億円。名目は物価で上昇))→ 売上 376 億円・営業利益 26 億円。両数 200。営業利益率 7%
- 海外車両・北米保守:数量 32.0(路面電車・地下鉄の両数換算(両・推定))× 価格 5.51(1両換算あたり売上(億円。保守込み))→ 売上 176 億円・営業利益 12 億円。両数換算 32。営業利益率 7%
- 不動産賃貸:数量 100(賃貸面積の指数(今を 100))× 価格 0.10(面積 100 あたりの賃料(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 9 億円。面積指数 100。利益率 88%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)47 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 317 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が目指す 3 年平均 6% は中計の当初目標で、これまで届いていない。北米の新規受注と国内の価格転嫁が同時にうまくいく必要があり、確率は低くした。
やや楽観 20% やや楽観:価格転嫁が定着し、営業利益率は 3% 台で安定する 利益 17 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,276 円225 億円
コロナ期に受けた赤字気味の案件が納品を終え、物価を価格に乗せる契約が増えていく。国内の新造は年 1,500 両前後で動かないが、近鉄・JR西日本・南海の更新で工場は埋まる。北米は既存のロサンゼルス案件の保守と部分的な受注で、パームデール工場を維持する。営業利益率は会社の目標の 6% には届かず、3% 台で落ち着く。人手不足と物価で人件費は毎年上がるが、ものづくりの変革で吸収する。配当は下限(年 3.4 億円)を保ちつつ、少し上がる。賃貸の収益が全体を下支えする。価格の見直しに応じる顧客が増え、受注の質も少しずつ上がる。
- 国内鉄道車両:数量 192(新造両数(両・推定))× 価格 1.88(1両あたり売上(億円。名目は物価で上昇))→ 売上 361 億円・営業利益 20 億円。両数 192。営業利益率 5.5%
- 海外車両・北米保守:数量 26.0(路面電車・地下鉄の両数換算(両・推定))× 価格 5.51(1両換算あたり売上(億円。保守込み))→ 売上 143 億円・営業利益 7 億円。両数換算 26。営業利益率 5%
- 不動産賃貸:数量 100(賃貸面積の指数(今を 100))× 価格 0.10(面積 100 あたりの賃料(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 9 億円。面積指数 100。利益率 88%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)47 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 225 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が売上の約 3 年分あり、既受注の赤字気味の案件も 2028 年度までに片づく見込みで、採算が少し上向く姿は十分にありうる。
中立 37% 中立:受注残に支えられるが、利益は薄いまま物価と競う 利益 9 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,080 円143 億円
国内の電車は年 1,500 両前後の市場で、近畿車輛の両数は少しずつ減る。価格は物価並みに上がるが、人件費や資材も同じ率で上がるため、鉄道の利益率は 4% 前後にとどまる。北米は案件の切り替えの谷があり、横ばいで推移する。海外の大型案件では原価の読み違いが一度起きると 1 年の利益が消える。全社の営業利益は 10 億円ほどで、金利収入と配当を足して純利益は 9 億円前後になる。減価償却は取得時の値段のまま、新しい設備だけ高い値段で償却が加わる。更新投資は建築費の上昇で膨らみ、配当の下限配当を守ると、自己資本はほとんど増えない。
- 国内鉄道車両:数量 178(新造両数(両・推定))× 価格 1.88(1両あたり売上(億円。名目は物価で上昇))→ 売上 335 億円・営業利益 13 億円。両数 178。営業利益率 4%
- 海外車両・北米保守:数量 24.0(路面電車・地下鉄の両数換算(両・推定))× 価格 5.51(1両換算あたり売上(億円。保守込み))→ 売上 132 億円・営業利益 4 億円。両数換算 24。営業利益率 3%
- 不動産賃貸:数量 100(賃貸面積の指数(今を 100))× 価格 0.10(面積 100 あたりの賃料(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 9 億円。面積指数 100。利益率 88%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)47 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 143 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社自身が見通す 2026〜28 年度の営業利益率 2.9% より少し低い 2% 前後の水準で、数量は人口減で細り、価格は物価並み。過去の実績にもいちばん近く、最も重く置いた。
やや悲観 25% やや悲観:価格転嫁が進まず、北米が細って全社で営業赤字になる 利益 1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 554 円38 億円
物価の上昇を価格に乗せきれない契約が続き、国内の電車の利益率は 2% に下がる。北米の車両保守は契約が切り替わるたびに売上が落ち、新しい路面電車の受注も取れない。パームデール工場の稼働が低く、固定費が重くなる。全社費用の 17 億円を鉄道の利益で賄えず、営業利益は赤字になる。受注残で 2 年は食いつなぐが、新しい受注の質が落ちる。賃貸の収益と有価証券の配当だけが利益を支える。近鉄グループは支えるが、成長のお金は出さない。稼ぐ力はほぼ消え、価値は持っている資産で測るほかない。受注残の減り方が新規受注を上回り、先の売上の見通しも細っていく。
- 国内鉄道車両:数量 165(新造両数(両・推定))× 価格 1.88(1両あたり売上(億円。名目は物価で上昇))→ 売上 310 億円・営業利益 6 億円。両数 165。営業利益率 2%
- 海外車両・北米保守:数量 18.0(路面電車・地下鉄の両数換算(両・推定))× 価格 5.51(1両換算あたり売上(億円。保守込み))→ 売上 99 億円・営業利益 0 億円。両数換算 18。営業利益率 0%
- 不動産賃貸:数量 95.0(賃貸面積の指数(今を 100))× 価格 0.10(面積 100 あたりの賃料(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 9 億円。面積指数 95。利益率 88%
倍率:稼ぐ力がほぼ無いので資産で測る。有価証券の税引き後 62 億円と賃貸不動産の税引き後 76 億円を合わせた約 138 億円の半分を、今の自己資本 360 億円の 0.106 倍に置いた。半分とするのは、近鉄が 4 割超を握り、株主への戻りが限られるため。
確率:過去 12 年のうち営業利益が赤字か 1% 未満の年が 6 回ある。コロナ期の赤字案件と北米の空白で、会社が中計の見通しを下げた事実を重く見て、悲観側を少し厚くした。
悲観 10% 悲観:海外の大型案件で損失を出し、国内も採算が崩れる 利益 −12 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 382 円26 億円
海外の大型案件で原価の読み違いが再び起き、数年の損失を出す。北米の工場を畳み、事業を国内に絞る。国内でも価格転嫁が進まず、工場の稼働が落ちて赤字が続く。減損で自己資本は減る。配当は下限(年 3.4 億円)を守れず、減配になる。近鉄グループは子会社として抱えるが、増資や支援には応じない。残るのは、賃貸の商業施設と有価証券、土地・設備の売却価値だ。もう優良ではなくなった 10 年になる。株主への戻りは細り、資産を食いつぶしながら事業を守る姿になる。北米の保守契約と路面電車の受注を失えば、海外の売上は数年で 1 割以下に縮む。
- 国内鉄道車両:数量 130(新造両数(両・推定))× 価格 1.88(1両あたり売上(億円。名目は物価で上昇))→ 売上 244 億円・営業利益 −5 億円。両数 130。営業利益率 -2%
- 海外車両・北米保守:数量 8.0(路面電車・地下鉄の両数換算(両・推定))× 価格 5.51(1両換算あたり売上(億円。保守込み))→ 売上 44 億円・営業利益 −4 億円。両数換算 8。営業利益率 -8%
- 不動産賃貸:数量 90.0(賃貸面積の指数(今を 100))× 価格 0.10(面積 100 あたりの賃料(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 8 億円。面積指数 90。利益率 85%
倍率:赤字の筋書きなので、売れる資産で測る。有価証券の税引き後 62 億円と賃貸不動産の税引き後 76 億円で約 138 億円。そのうち株主に戻る分を見て、今の自己資本 360 億円の 0.073 倍に置いた。契約負債は顧客の前受で、現金は床に数えない。
確率:2017 年 3 月期に営業利益率が -31%(営業損失 142 億円)まで落ちた前例があり、海外の大型案件で同じ型の失敗が起きる余地を 1 割残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内鉄道車両
JR西日本・近鉄・南海などの電車を東大阪の工場で造る主力事業。ステンレス車両とアルミ車両の両方を造る。
| 数量新造両数(両・推定) | 価格1両あたり売上(億円。名目は物価で上昇) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 188 | 1.40 | 264 | 2 |
| 10 年後 中立 | 178 | 1.88 | 335 | 13 |
取り方:両数は開示がない。国内の電車は 1 両 1.4 億円前後と推定して 188 両とした。売上は日本向け 272.3 億円(決算短信の地域別)から不動産賃貸 8.5 億円を引いた 263.8 億円。鉄道セグメント利益 2.76 億円を国内と海外に売上で按分した推定。
海外車両・北米保守
ロサンゼルス郡都市交通局向けの路面電車、カイロ地下鉄、北米の車両保守。北米はパームデール工場に集約する。
| 数量路面電車・地下鉄の両数換算(両・推定) | 価格1両換算あたり売上(億円。保守込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.0 | 4.11 | 99 | 1 |
| 10 年後 中立 | 24.0 | 5.51 | 132 | 4 |
取り方:米国 74.6 億円とその他 24.1 億円(決算短信)の合計 98.7 億円。保守を含む混合で、両数換算の 24 両は推定。利益は鉄道セグメントの按分。
不動産賃貸
東大阪と所沢の商業施設の賃貸。簿価が小さく、利益率が約 9 割と高い。
| 数量賃貸面積の指数(今を 100) | 価格面積 100 あたりの賃料(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.08 | 9 | 7 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.10 | 10 | 9 |
取り方:賃貸売上 8.47 億円・セグメント利益 7.42 億円(決算短信)。賃料の更新は物価より遅いので、10 年の価格は 1.20 倍とした。
リスクと懸念
物価高で赤字になる受注案件
コロナ期に受けた案件が想定を上回る物価高で収支が悪化したと会社が書いている。受注損失引当金は 14 億円に増えた。受注残 1,132 億円の中に同じ型の案件が残っていると、利益が計画に届かない。
海外の大型案件の失敗
2017 年 3 月期は海外案件で営業損失 142 億円、純損失 146 億円を出し、自己資本が半分近くに減った。北米の路面電車やカイロ地下鉄は難しい案件で、納期や原価の読み違いが一度起きるだけで年の利益が消える。
前受金で膨らんだ現金の反動
契約負債は 55 億円から 201 億円に増え、現金も 169 億円に増えた。納品が進めば前受金は売上に変わり、現金は材料と人件費で出ていく。純現金 168 億円を株主の余力とみると、価値を見誤る。
北米保守の空白と工場の集約
北米の保守案件は 2025 年 9 月に終わり、2026 年 2 月まで売上と利益が減った。ピスカタウェイ工場の閉鎖は 2026 年度に売却を予定する。集約で稼働が落ち着くまでは固定費が重い。
近鉄の支配と株主への戻り
近鉄グループは直接約 14%、退職給付信託 30% で議決権の 4 割超を握る。オアシスが 6.96% を持つが、近鉄が動かなければ資産の売却や還元は進まない。配当性向は 22% で、利益が社内に残る。
国内需要の頭打ちと価格競争
国内の電車の新造は年 1,500 両前後で、人口減の中で増えにくい。日立・川崎車両・総合車両製作所との入札で値を削られやすく、鉄道会社の投資は運賃と利用者数に縛られる。
人手不足と人件費の上昇
会社は人財確保と要員減の克服を課題に挙げる。技能の継承が滞ると、品質と納期に響く。人件費は物価で毎年上がり、価格に乗せきれなければ利益率が下がる。
今後の分かれ目
- 2028 年度に、中計の見通しである営業利益 13 億円を超える
- 物価の転嫁が進み、やや楽観に近づく。2029 年度以降の 6% 目標にも手が届く。
- 北米で新しい路面電車の本格受注を取る
- パームデール工場の稼働が安定し、海外の両数が増える。楽観・やや楽観に近づく。
- 海外の大型案件で追加の損失が出る
- 2017 年のような営業損失が再び出て、やや悲観・悲観に近づく。自己資本も減る。
- 近鉄が完全子会社化や資産の売却・還元を示す
- 売れる資産が株主に戻る道が開け、価値の見方が変わる。戻り方は 0.5 より高く見直せる。
- 配当性向を 4 割に引き上げる、または自社株買いを発表する
- ためた資産が価値に変わる速度が上がる。ただ利益が資本コストに届かない限り、PER は上がらない。
- 契約負債が減り、現金が 100 億円を割る
- 前受金の反動が出て、純現金の厚みは見かけだったことが確かになる。
見ておくもの
- 受注残の金額と、物価連動のある案件の割合
- 営業利益(2027 年 3 月期の予想は 1 億円)
- 契約負債と現金の推移
- 北米の路面電車の新規受注
- オアシスの提案と近鉄グループの対応
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに両数と価格の指数を置いて 10 年の利益を積み、その時点の ROE と資本コストから正当化 PER の上限(ROE が k 以下なので 1÷k)を出し、その 7〜8 割に置いた。資本コストは基本 7.5% に quality +1.5%(循環・値決め・寿命)を足した 9.0%。中立の営業利益率は会社の見通し 2.9% より低く 2% 前後で、過去 12 年の山 10% を使っていない。悲観は売れる資産の税後 138 億円を今の自己資本の 0.15 倍に置いた。今の PER・PBR は使っていない。リースの新会計基準(2028 年 3 月期から)で BS の形が変わるが、リースは約 14 億円と小さく、10 年後の数字は今の形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.9→11.43 倍・やや楽観 PER 8.5→11.43 倍・中立 PER 7.8→11.43 倍・やや悲観 PBR 0.2→0.106 倍・悲観 PBR 0.15→0.073 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した 9.0%。近鉄との関係や海外案件の失敗は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.75%。