結論
ユニプレスは、車のボディを組む鋼板のプレス部品を作る会社だ。売上の約9割が車体プレスで、約4分の3は日産向けである。筆者の見立ては、今の値段は10年の価値をやや下回るが、その差は薄く、安全域は厚くない、というものだ。
会社はここ数年、日産の減産に付き合って赤字と減損を重ねてきた。いまは中国の拠点を7から3へ、日本の車体拠点を5から2へ減らし、タイとブラジルからは手を引く。損益分岐点は下がる。ただ、これは守りの整理であり、利益が自然にふくらむ話ではない。
10年の主役は、日産が今の規模を保てるかどうかだ。保てれば、営業利益率は5%前後に戻り、自己資本利益率は7%近くまで上がる。それでも資本コストの9%には届かない。届かない会社が積んだ利益は、帳簿の額ほどの価値を持たない。
一方で、固定費を削った分だけ、日産が持ち直したときの利益の戻りは大きい。逆に日産が縮めば、部品会社は最後に値切られる。この幅の広さを、確率で表した。
実質無借金で、自己資本比率は45%ある。倒産の心配は小さい。ただ、安いから放っておけばよい銘柄ではない。
注目すべきは新しい客先と新しい部品だ。ホットスタンプの大型部品や電池ケースの引き合いは前年度の約3倍に増えた。だが会社自身が、2030年度に売上を300億円積む程度の絵しか描いていない。日産の穴を埋める柱には、まだ育っていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ユニプレスは「持ち続けたい会社」とは言いにくい。事業が悪いのではなく、稼いだお金を同じ会社に再投資しても、資本コストを上回る稼ぎが出にくいからだ。
株主のものになる利益は、見かけの純利益より小さい。会社は2026〜2027年度の2年間で、設備投資に320億円、研究開発に120億円を使う。営業キャッシュフローの約550億円は、ほぼこれで消える。
自己資本は1,300億円あるが、事業が稼ぐ力は年50〜110億円だ。資本コストを8.5%とみれば、稼ぐ力の価値は帳簿の6〜9割にとどまる。帳簿の額を価値とみなさず、稼ぐ力から値付けをする理由はここにある。
一方、会社が実質無借金で、拠点の整理に自力で払える点は安心材料だ。筆者は、日産の持ち直しを予想する理由は持たないが、悲観を急ぎすぎる理由もないと見る。
結局は、日産と運命を共にする会社を、どの値段で持つかという問題だ。経営が配当を強めると言っている点は前向きだが、DOE3%でも年に40億円台で、自己資本全体から見れば小さい。値段が帳簿の半分を割るほど安ければ話は別だが、それは稼ぐ力を割り引いた結果として確かめる必要がある。
何で稼ぐ会社か
事業は車体のプレス部品がほぼすべてだ。ドアやフロアなど車の骨格になる鋼板を、プレスで成形して溶接でつなぐ。売上の約89%が車体プレスで、変速機向けなどの精密部品が約9%、樹脂部品が約1%を占める。
稼ぎ方は「1台あたりの部品代 × 納める車の台数」だ。重い鋼板は遠くへ運べないため、客先の組立工場のそばに自前の工場を置く。日本、メキシコ、米国、英国、中国、インドネシアなどに拠点を持つのはそのためだ。
客先は日産自動車とその関連で約75%に達する。内訳は、北米日産とメキシコ日産が各16%台、日本の日産が13%、欧州日産が10%、東風汽車が8%だ。日産以外では、ホンダが約7%、三菱自動車が約4%、ルノーが約2%。中国の新興EVメーカーも入ってきたが、まだ1%に満たない。
地域別では、米州が売上の4割強で、全社の利益のほとんどを稼ぐ。日本は薄利で、欧州とアジアも黒字が小さい。ただし日本と米国の間では、取引価格の調整(移転価格)で利益の置き場所が動く。地域別の利益は、そのまま読まないほうがよい。
ホットスタンプ(鋼板を熱して成形する高強度部品)は、中国の合弁を2025年10月に完全子会社にした。金型の事業は2025年6月に分社した。事業の形を、軽く、わかりやすくする動きが続いている。
優良さと弱いところ
ユニプレスの強みは、客先のそばで安く作り切る力だ。日産から品質で高い評価を受け、東風日産の最優秀サプライヤー賞や欧州日産の品質賞を受けている。ホットスタンプや高張力鋼の成形も持っており、軽量化の要求には応えられる。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは厚くない。車体プレスは図面どおりに作る仕事で、値段は客先が決める。日産という1社が売上の4分の3を握っているので、値決めの力は弱い。技術で選ばれても、高い値段を付けることまではできない。
資本の効率は低い。過去10年の自己資本利益率の中央値はほぼゼロで、7年のうち5期で純損益が赤字になった。工場を持つ事業なのに、設備を増やしても稼ぎが資本コストに届かなかった、ということだ。
救いは財務の堅さだ。自己資本比率は45%、純有利子負債はほぼゼロで、日産の台数が落ち込んでも耐える体力はある。経営は、拠点を3分の1近く減らす決断を実行に移している。ここは評価できる。
気になるのは、整理の結果が利益にまだ十分に表れていない点だ。2026年度の営業利益は、売上の減少で115億円へ下がる計画である。整理が先、利益は後という順番を、数字で確かめていく局面にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
部品会社の10年を決めるのは、電気自動車(EV)への切り替えよりも、日産の台数だ。車体の骨格はEVでも要る。EVでは電池ケースなどの新しい部品も生まれ、ホットスタンプのような高強度部品の需要は残る。エンジンやトランスミッションが減る会社とは、事情が違う。
その日産は、再建の途中にいる。世界の車の工場を17から10へ減らし、中国以外の生産能力を350万台から250万台へ絞る。追浜の車両生産は2027年度末、湘南は2026年度末で終える。2026年度の生産計画は、8月に295万台から280万台へ引き下げられた。台数が戻る道筋は、まだ見えない。
部品の側では、日産に合わせて拠点を畳む順番が来ている。ユニプレスの日本の車体拠点の整理は、追浜や湘南の生産移管とほぼ同じ時期に進む。客先が減らすぶんを、先回りして減らす形だ。
競合は、ホンダ系のジーテクト、トヨタ系の豊田鉄工など、系列ごとに分かれる。海外ではスペインのゲスタンプやカナダのマグナなどの大手がいる。日産系の車体プレスでは、ユニプレスが最大級とされる。ただ、系列の外に出て新しい客を取るには、価格と実績の両方で戦う必要がある。
外の逆風もある。米国の関税、中国の価格競争、鋼材の値上がりだ。鋼材の値上がりは客先との協議で転嫁を求めるが、時間差で利益が削られることがある。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから「配当を厚くする」方向へ、ようやく動き出した。配当は純資産配当率(DOE)を物差しにし、中期で3%を目指す。2025年度の約2%から、2026年度は増配の計画だ。自己株式の取得も「選択肢」としている。2026〜2027年度の2年間で、営業キャッシュフロー約550億円のうち、設備投資に320億円、研究開発に120億円、株主還元に60億円以上を回す配分だ。
大きな買収は近年ない。2025年に小物部品の子会社を売り、金型を分社し、ブラジルの事業を売却した。中国の精密部品の会社も2026年6月に売る予定だ。M&Aは「買う」より「売る」ほうが多い。
株主では、鋼板の供給元である日本製鉄が約15%、伊藤忠丸紅鉄鋼が約10%を持つ。日本製鉄は2022年に持ち分を減らし、持分法の対象から外して役員の派遣もやめた。日産は大株主に載らない。売上の4分の3を握る客先が株を持たないため、支配の構図は薄い。
畳む拠点の土地や建物は、売却益の源になりうる。ただ、会社は額を開示していない。
点検済み(費用点検):純利益÷営業利益 0.58 は、過去 5 期の中央値が減損の純損失の年(2025・2026/03)で歪むが、黒字の通常年 2023・2024 の 0.66・0.48 の間。減損が続く姿は悲観で置いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
整理の効果は、台数が戻ったときに最も強く出る。拠点は中国で7から3へ、日本の車体で5から2へ減る。従業員は2019年度に比べて約3分の1少ない。同じ売上でも、固定費が軽いので利益は出やすい。2018年3月期には、日産の世界生産が今より大きい時期とはいえ、営業利益率が7.9%に達した。
日産の再建は動き始めている。2026年度の営業利益は2,000億円の計画で、4〜6月期は8四半期ぶりに最終黒字になった。新型リーフ、ローグのプラグインハイブリッド、メキシコ生産のセントラなど、車種の更新も進む。ユニプレスは多くの新型車で部品を受け持つ位置にいる。
新しい客先も広がる。中国のNIOやBYDなど新興EVメーカーも入ってきた。ホットスタンプの大型一体部品やバッテリーケースなど、車体の新しい部品の引き合いも増えている。引き合いの件数は前年度の約3倍だ。
資本面でも変化がある。会社は自らの資本コストを7〜8%と置き、それに届くまで配当と自己株式の取得を強めると明言した。PBRが1倍を下回る状態を、経営が問題視している。台数が戻れば、自己資本利益率は10%台に乗せられる。
慎重な見方
日産の台数は、構造的に細っている。世界販売は315万台で、ピーク時の半分台だ。再建計画は、生産能力をさらに100万台削る前提で組まれている。ユニプレスの売上の4分の3が、縮む会社に結びついている。
整理は終わっていない。日本の車体拠点の閉鎖は、栃木が2026年度、相模が2027年度、追浜が2028年度と続く。移管のたびに工場の稼働が落ち、重複した費用がかさむ。2025年度は日本と欧州で115億円の減損を出し、純損益は赤字だった。減損は一度で終わらない可能性がある。
利益の質も弱い。2025年度の営業利益136億円は、日米の移転価格の調整金で日本が押し上げられた数字だ。2026年度は売上が約11%減り、営業利益は115億円へ下がる計画で、その先の2027年度の目標も「ROE約6%」にとどまる。資本コストには届かない。
客先は強い。日産は新型車ごとに部品のコスト削減を求める。米国の関税で北米の台数が崩れれば、利益の稼ぎ頭である米州が痛む。新しい分野の引き合いは増えたが、売上の目標は2030年度に300億円増と、全体の1割程度だ。大黒柱の穴は埋まらない。
どちらに重みを置いたか
中立をもっとも重くした。日産が今の規模を保ち、会社が整理で利益率を5%前後に戻す形だ。ただ、そこから先の利益は資本コストに届かず、倍率は上がらない。
強気の見方は、固定費を削った効果と、日産の持ち直しを組み合わせた上振れだ。説得力はあるが、会社自身が2028年度以降の数字を置けないほど先が読めていない。慎重な見方は、日産依存と値決め力の弱さを突く。こちらの根拠のほうが具体的で、構造に根ざしている。
そのため、悲観側の確率を同業よりわずかに厚くし、やや悲観を27%、悲観を16%とした。楽観は6%に抑えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,534 円1,135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 892 円399 億円)。 今の値に割り戻すと 1,714 円768 億円、今との差 +35.6%、 期待の年率 +10.5%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,081 円2,724 億円 | 1,518 円680 億円 | +501.1% | +19.6% | 456 円204 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,098 円1,836 億円 | 1,317 円590 億円 | +328.4% | +15.7% | 975 円437 億円 |
| 中立 | 33% | 2,986 円1,338 億円 | 1,116 円500 億円 | +224.5% | +12.5% | 1,354 円606 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,213 円543 億円 | 670 円300 億円 | +48.9% | +4.1% | 508 円228 億円 |
| 悲観 | 16% | 741 円332 億円 | 89 円40 億円 | −34.3% | −4.1% | 133 円60 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,534 円1,135 億円 | 892 円399 億円 | +171.0% | +10.5% | 3,425 円1,535 億円 |
今の株価時価総額 1,264 円566 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:日産が持ち直し、整理の効果が利益に出る 利益 212 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 6,081 円2,724 億円
日産の台数が回復し、固定費を削った効果が利益に直結する。当社が納める台数は今より約6%増え、米州の営業利益率は9%台に上がる。日本は拠点が半分になり、利益率が6%台に乗る。
新しい客先も育つ。ホンダ、三菱、ルノーの比率が上がり、新興EVの受注が積み上がって、日産以外の比率は3割へ届く。ホットスタンプの大型一体部品やバッテリーケースなど、車体の新しい部品が売上に加わる。
会社は配当と自己株式の取得を強め、自己資本利益率は11%まで上がる。それでも10年後は成熟した部品会社の水準で、資本コストを大きく上回る稼ぎにはならない。日産の再建が成功し、新しい客先の取り込みも重なった、うまくいった場合の姿だ。
- 日本(車体・精密・樹脂):数量 95.0(当社の部品が載る国内生産車(万台、推定))× 価格 13(1台あたり部品単価(万円/台、精密・金型・樹脂を含む))→ 売上 1,274 億円・営業利益 79 億円。日本 営業利益率 6.2%
- 米州(メキシコ・米国):数量 165(当社の部品が載る北米生産車(万台、推定))× 価格 12(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 2,006 億円・営業利益 189 億円。米州 営業利益率 9.4%
- 欧州・アジア:数量 185(当社の部品が載る欧州・アジア生産車(万台、推定))× 価格 7.15(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 1,323 億円・営業利益 79 億円。欧州・アジア 営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 212 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.8 倍。全体の PER 12.75 倍、時価総額 2,703 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日産の再建が順調に進み、ユニプレスが多くの新型車を受け持つ。同時にホンダ・三菱・新興EV向けの新規受注も積み上がる、という重なりが必要で、起きる確率は低い。2018年度の営業利益率7.9%を例に、上振れの余地は残した。
やや楽観 18% やや楽観:日産が今より少し持ち直し、利益率が上がる 利益 154 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 4,098 円1,836 億円
日産の台数が今より小幅に増え、整理の効果もそろう。日本と米州の工場稼働が上がり、営業利益率は6%前後に乗る。新しい客先の比率も少し上がる。
客先の値決めの力は変わらない。部品の値段は物価並みに上がるが、利益率の上がり方は限られる。自己資本利益率は9%近くにとどまる。
会社は配当と自己株式の取得を進め、株主還元は目標どおりに積み上がる。ただ、稼ぎが資本コストを超えるほどの水準には届かない。日産が少し持ち直し、ユニプレスの整理の効果が素直に出た場合の姿だ。この筋書きでは、日産以外の客先が全体の3割近くまで増え、日産だけに頼る度合いが少し薄れる。それでも主役は日産のままである。
- 日本(車体・精密・樹脂):数量 90.0(当社の部品が載る国内生産車(万台、推定))× 価格 13(1台あたり部品単価(万円/台、精密・金型・樹脂を含む))→ 売上 1,207 億円・営業利益 60 億円。日本 営業利益率 5.0%
- 米州(メキシコ・米国):数量 150(当社の部品が載る北米生産車(万台、推定))× 価格 12(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 1,824 億円・営業利益 142 億円。米州 営業利益率 7.8%
- 欧州・アジア:数量 168(当社の部品が載る欧州・アジア生産車(万台、推定))× 価格 7.15(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 1,201 億円・営業利益 58 億円。欧州・アジア 営業利益率 4.8%
倍率:事業の純利益 154 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.92 倍、時価総額 1,836 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日産が今の規模から小幅に回復し、整理の効果が出る形。日産が持ち直す方向には根拠(再建の進捗・黒字化)があり、中立より少し重みを下げて置いた。
中立 33% 中立:日産は今の規模を保ち、利益率は5%前後に戻る 利益 113 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,986 円1,338 億円
日産は今の規模を保ち、ユニプレスの台数は整理で出る部分を除いて横ばいになる。中国・タイ・ブラジルの撤退で、納める台数は今より約1割減る。
残る米州と日本の工場は、固定費が軽くなり、営業利益率は5%前後に戻る。新しい客先は少しずつ増えるが、日産の穴を埋めるほどではない。部品の値段は物価並みに上がるが、鋼材の転嫁には時間差が伴う。
自己資本利益率は7%近くで、資本コストには届かない。配当はDOE3%を目安に積み上がる。静かに続く、地味な部品会社の姿である。会社の掲げる、2027年度に営業利益155億円という目標には、10年かけて近づく。日産が落ち込まず、整理も計画どおり進む前提である。
- 日本(車体・精密・樹脂):数量 85.0(当社の部品が載る国内生産車(万台、推定))× 価格 13(1台あたり部品単価(万円/台、精密・金型・樹脂を含む))→ 売上 1,140 億円・営業利益 48 億円。日本 営業利益率 4.2%
- 米州(メキシコ・米国):数量 138(当社の部品が載る北米生産車(万台、推定))× 価格 12(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 1,678 億円・営業利益 111 億円。米州 営業利益率 6.6%
- 欧州・アジア:数量 150(当社の部品が載る欧州・アジア生産車(万台、推定))× 価格 7.15(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 1,072 億円・営業利益 39 億円。欧州・アジア 営業利益率 3.6%
倍率:事業の純利益 113 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 1,329 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日産が今の規模を保ち、会社が拠点整理で利益率を5%前後へ戻す、最も重みを置く筋書き。業種ノートの中立(顧客の生産が横ばい、単価は物価並み)に沿う。確率は慎重な見方の根拠が強いため、同業より少し悲観寄りに置いた。
やや悲観 27% やや悲観:日産の台数が細り、値引きの圧力が続く 利益 51 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,213 円543 億円
日産の台数がさらに細る。再建計画のとおり、日産は工場を減らし、中国以外の生産能力を絞る。ユニプレスの日本と米州の台数は2割前後落ち、固定費が重くなる。
客先は新型車ごとに価格を求め、部品の値段は物価に追いつかない。整理で拠点を減らしても、台数の減少に追いつかず、営業利益率は3%まで落ちる。
減損や整理損が追加で出ることもあり、純利益は小さい。自己資本の積み上げはほとんど進まず、自己資本利益率は資本コストを大きく下回る。それでも黒字と配当は守る、苦しい姿だ。実質無借金の財務が、ここで効く。会社は拠点の整理を急ぎ、利益率を守るために台数の少ない拠点から順に手放していく。
- 日本(車体・精密・樹脂):数量 75.0(当社の部品が載る国内生産車(万台、推定))× 価格 13(1台あたり部品単価(万円/台、精密・金型・樹脂を含む))→ 売上 961 億円・営業利益 24 億円。日本 営業利益率 2.5%
- 米州(メキシコ・米国):数量 118(当社の部品が載る北米生産車(万台、推定))× 価格 12(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 1,370 億円・営業利益 63 億円。米州 営業利益率 4.6%
- 欧州・アジア:数量 125(当社の部品が載る欧州・アジア生産車(万台、推定))× 価格 6.83(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 854 億円・営業利益 13 億円。欧州・アジア 営業利益率 1.5%
倍率:事業のROE約3%はk 8.5%を大きく下回る。稼ぐ力は、事業の純利益÷k(約11倍)が上限になるが、客先に値切られる質を見て、1÷kの約8割の9.0倍に置いた。
確率:日産の生産がさらに1〜2割細り、客先のコスト削減要求が続く形。日産の再建は途上で、2026年度の生産計画が8月に下方修正された事実があるため、厚く置いた。
悲観 16% 悲観:日産と共に縮み、事業の整理が長引く 利益 −48 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 741 円332 億円
ユニプレスが納める台数は、今の約6割へ落ち込む。日産の縮小が計画を超え、客先の再編で調達先も見直される。
ユニプレスは日本と米州の工場を追加で畳み、重複費用や減損で赤字になる。客先は価格を強く求め、部品の値段は物価の6割程度しか上がらない。新しい分野の引き合いは、売上を支えるほど育たない。
会社は配当を最小限に抑え、手元の現金と遊休地の売却で構造改革を続ける。自己資本は減損で3割ほど削れ、利益ではなく、売れる資産が価値を支える。構造的に負けた部品会社の姿である。それでも、実質無借金と畳む拠点の売れる資産が、価値の底を支える。
- 日本(車体・精密・樹脂):数量 55.0(当社の部品が載る国内生産車(万台、推定))× 価格 12(1台あたり部品単価(万円/台、精密・金型・樹脂を含む))→ 売上 661 億円・営業利益 −20 億円。日本 営業利益率 -3.0%
- 米州(メキシコ・米国):数量 90.0(当社の部品が載る北米生産車(万台、推定))× 価格 11(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 980 億円・営業利益 20 億円。米州 営業利益率 2.0%
- 欧州・アジア:数量 90.0(当社の部品が載る欧州・アジア生産車(万台、推定))× 価格 6.40(1台あたり部品単価(万円/台))→ 売上 576 億円・営業利益 −17 億円。欧州・アジア 営業利益率 -3.0%
倍率:赤字の筋書きなので稼ぐ力でなく売れる資産で測る。純現金と、畳む拠点の土地・設備・在庫の売却の税引き後を合わせた約330億円を床とし、今の自己資本の約0.25倍に置いた。
確率:日産が構造的に縮み、新しい客先も取れずに、納める台数が今の約6割に落ちる筋書き。日産の台数が計画を下回り続けると、整理の効果が台数減に追いつかない。単一客先に売上の4分の3を預ける構造から、同業の悲観(約15%)より少し厚く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(車体・精密・樹脂)
日本の工場で作る車体プレス・変速機の精密部品・樹脂部品。日産(追浜・九州・湘南)が中心で、三菱・ホンダ向けもある。
| 数量当社の部品が載る国内生産車(万台、推定) | 価格1台あたり部品単価(万円/台、精密・金型・樹脂を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 90.0 | 10 | 901 | 33 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 13 | 1,140 | 48 |
取り方:決算説明資料の地域別売上 901億円。日産の国内生産(60万台台半ば)に、三菱・ホンダ・スズキ向けの一部を足し、当社が部品を納める車を約90万台と推定。売上÷台数で1台あたり約10万円。営業利益は日米の移転価格調整金で押し上げられた分を除いた形に均して約33億円とした。
米州(メキシコ・米国)
メキシコと米国の工場で作る車体プレス。北米日産・メキシコ日産・ホンダ向けが中心で、全社の利益の稼ぎ頭。
| 数量当社の部品が載る北米生産車(万台、推定) | 価格1台あたり部品単価(万円/台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 150 | 9.07 | 1,361 | 97 |
| 10 年後 中立 | 138 | 12 | 1,678 | 111 |
取り方:決算説明資料の米州売上 1,361億円・営業利益 97億円。北米日産とメキシコ日産の生産に米国・メキシコのホンダ向けを足し、当社が納める車を約150万台と推定。売上÷台数で1台あたり約9.1万円。金型売上を含む。
欧州・アジア
英国など欧州と、中国・インドネシア・インドなどアジアの工場。東風日産・欧州日産・ホンダ・ルノー向けが中心で、利益は薄い。
| 数量当社の部品が載る欧州・アジア生産車(万台、推定) | 価格1台あたり部品単価(万円/台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 180 | 5.33 | 960 | 6 |
| 10 年後 中立 | 150 | 7.15 | 1,072 | 39 |
取り方:決算説明資料の欧州約450億円とアジア約510億円の合計 960億円。欧州日産と東風日産(売上の約8%)、インドネシアのホンダ、インドのルノー・日産向けなどで、当社が納める車を約180万台と推定。部品が小ぶりで単価は約5.3万円。営業利益は欧州の小さな赤字とアジアの小さな黒字を合わせて約6億円。
リスクと懸念
日産への集中
売上の約75%が日産とその関連だ。日産の世界生産が1割落ちれば、ユニプレスの売上はほぼ同じ割合で落ち、固定費の重さで利益は2〜3割落ちる。日産以外は約4分の1で、その比率は前年度より下がった。
日産自身の再建リスク
日産は工場を17から10へ減らし、生産能力を100万台削る計画の途中にいる。計画どおり利益が出なければ、部品の値引き要求がさらに強まる。最悪の場合、日産の提携や再編で調達先が見直される。
米国の関税とメキシコ
全社の利益の稼ぎ頭は米州で、メキシコと米国の工場が中心だ。関税や貿易協定の変更で、北米日産やメキシコ日産の台数が崩れると、利益の大半が一度に失われる。会社も短信で関税の不透明感を挙げている。
拠点整理の実行と追加の減損
日本の車体5拠点を2拠点へ、中国の7拠点を3拠点へ減らす途中だ。移管の間は生産が不安定になり、重複費用や退職金がかさむ。減損や整理損が、想定を超えて出る可能性がある。
価格と鋼材の時間差
車体プレスは、鋼板の値段が原価の大半を占める。客先との協議で転嫁できる場合が多いが、転嫁に時間差があるため、鋼材の急騰期には利益が一時的に削られる。値上げの交渉力は弱い。
新分野の立ち上がりの遅さ
会社は2030年度に300億円、2035年度に800億円の売上増を掲げる。ただ、2028年度以降の定量目標は置かなかった。新分野の実績が出るまでは、日産の台数に変わる柱が見えない。
今後の分かれ目
- 日産の世界生産が2026年度の計画280万台を下回り続けたら
- やや悲観・悲観の確率を厚くする。日本と米州の稼働が落ち、整理の効果が台数減で打ち消される。
- 日産以外の売上比率が、現在の25%から3割に近づいたら
- やや楽観側へ重みを移す。依存の薄まりは、利益の振れ幅と値引き圧力の両方を減らす。
- 営業利益率が2027年度に5%台を超え、その後も保てたら
- 中立の利益率を上方に直す。整理の効果が定着した証拠になる。
- 追浜・湘南の生産移管の後に、追加の減損や整理損が出たら
- 自己資本の積み上げを下げる。悲観の筋書きの重みを増やし、自己資本の見積もりを切り下げる。
- 日本製鉄や商社などの大株主が持ち株を動かし、再編や公開買付けの話が出たら
- 倍率ではなく、売れる資産と稼ぐ力を点検し直す。資本政策が変われば、倍率と還元の前提を変える。
- DOE3%を超える配当や自己株式の取得が実際に出たら
- 還元の合計を上げ、自己資本の積み上げを抑える。ROEは上がるが、利益が増えるわけではない点に注意する。
見ておくもの
- 日産の月次の世界生産と、2026年度の生産計画280万台の達成度
- 日産以外の客先(ホンダ・三菱・ルノー・新興EV)の売上比率
- 営業利益率と、日本・米州・欧州・アジアの地域別利益
- 日本の車体拠点の移管の進み具合(栃木・相模・追浜)と、整理損の追加
- 米国の関税とメキシコの貿易協定の動き
- DOEの引き上げと自己株式の取得の実行
倍率と資本コストの決め方
倍率は式と事業の経済性だけで置いた。10年の中立では自己資本利益率が約7%で資本コスト8.5%に届かないので、PERの上限は1÷k(11.1倍)とし、客先に値段を決められる質を見て8割を当てた。資本コストは基本7.5%にquality +1.5%(循環+0.5・値決め+0.5・寿命+0.5)。同じ領域のタチエスやフタバ産業と同じ水準にそろえた。純有利子負債はほぼゼロで、金利の上昇による利払いの変化は入れていない。工場は自社保有が中心で、リースの約束の影響は小さい。悲観の床は過去のPBRの底でなく、純現金と畳む拠点の売れる資産から置いた。今の株価に合わせて数字を書き直してはいない。結果は10年で約+12%のやや割安だが、境目に近い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→12.75 倍・やや楽観 PER 9.7→11.92 倍・中立 PER 8.9→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality +1.5%を足した9.0%。日産依存や整理の実行リスクはkに足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。