結論
田中精密工業は、富山でホンダのエンジン部品を作り続けてきた部品会社だ。売上は 438 億円、営業利益は 24 億円。売上の 6 割がホンダのグループ向けで、主力のロッカーアーム(エンジンの弁を動かす部品)だけで売上の約半分を占める。
筆者の結論は、今の値段はやや割高ということだ。時価総額は純資産の 4 割に満たないので、一見すると割安に映る。だが ROE が 5% 前後で資本コストに届かない会社の純資産は、帳簿どおりの価値にならない。
電動化でエンジン部品は減る。ホンダがハイブリッドを増やす間は踏みとどまるが、10 年では内燃機関系が縮む。そこへ完成車メーカーの値下げ要請が毎年かかる。電動系の部品とソリューション事業が穴を埋めきれるかが分かれ目だ。
2026 年 7 月にホンダが保有分の一部を会社に売り、持株比率は 13% 台に下がった。独立の動きとして意味はあるが、取引先としての力関係は変わらない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は買わない。純資産に対して株価が安いのは事実だが、安い理由がある。ROE が資本コストに届かない会社は、ためた利益が額面どおりの価値を持たない。
事業は買い手のホンダが価格を決める下請けの性格が強い。売上の半分が、電動化で減る一つの部品に集中している。経営者が北米の電気自動車計画を止めた判断は現実的だが、その分だけ設備を捨てた。
評価できる点もある。ホンダ依存を下げ、トヨタ系の仕事を取り、ダイカストで電動系に広げる。公開買付けで株主に資本を返したのは前向きな動きだ。安全域は、売れる資産と運転資本にある。だが悲観の筋書きでは、今の時価総額の半分に届かない。中立の価値は今の値段とほぼ同じで、悪い筋書きの重みを考えると今の値段は少し高い。つまり、ここで払う値段に安全域はない。もう一段安くなってはじめて、売れる資産の裏づけが効いてくる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は部品製造事業で、売上は 329 億円。ホンダの四輪エンジン向けのロッカーアーム、バルブリフター、ピストンピンと、変速機の部品が柱だ。二輪や汎用の部品もある。電動化に向けて、インバーターのケース、モーターカバー、ダイカスト(金属を型に流し込む成形)部品、鋳造金型、航空宇宙部品にも広げている。
製造は富山のほか、米国オハイオ、タイ、ベトナムに拠点がある。米国とタイの子会社は出資が 6 割台で、少数株主の取り分が利益を削る。
ソリューション事業は売上 14 億円と小さいが、利益率は 25% 台と高い。無人搬送車、組立・検査装置、モーター用の接着積層コアの製造装置、IoT と AI のソフトを売る。
モビリティ事業は売上 94 億円。富山でホンダの四輪・二輪・パワープロダクツの販売、レンタル、整備、中古車を扱う。利益率は 3% 台で薄いが、整備が下支えする。
全社の営業利益は 24 億円で、部品製造が 17 億円、ソリューションが 4 億円、モビリティが 3 億円。従業員は連結で約 1,400 人、設備投資は 72 億円と営業利益の 3 倍にのぼる。
優良さと弱いところ
優良さは限られる。ロッカーアームは精度が要る部品で、ホンダと 60 年以上の取引がある。この関係が堀といえば堀だが、値段を決めるのは買い手のホンダだ。営業利益率は過去 12 年で 8.6% を超えず、赤字の年も 6 回ある。
依存の高さは弱みでもある。ホンダ向けは売上の 60.5% で、本田技研工業とその現地法人がほとんどを占める。値下げ要請が通れば利益はすぐ削られる。
資本の使い方は、最近になって変わってきた。2026 年に自己株式の公開買付けを行い、ホンダが応募して持株比率は 24% から 13% 台に下がった。株主に資本を返し、ホンダの支配を弱める一手だ。配当性向は 3 割を目標にしている。ただ、同じ年に北米向けの電気自動車計画を中止して約 8 億円の設備を除却した。投資の見立てが外れた例になる。
研究開発費は年 5 億円で、売上の 1% ほどだ。電動系の受注を広げるには、それを上げる必要が出てくる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車部品の業界は二つの力に挟まれている。一つは電動化だ。電気自動車はエンジンを積まないので、ロッカーアームのような部品は要らなくなる。世界の電気自動車は新車の約 25% まで増えたが、日本は 3% に満たず、ホンダを含む国内メーカーはハイブリッドを軸にしている。この間は田中精密のような部品にも仕事がある。
もう一つは完成車メーカーの値下げ要請だ。毎年のコスト削減の求めを受けて、部品の価格は物価ほど上がらない。原材料の高騰を転嫁できても、遅れた分は利益を削る。
競合は、エンジン・駆動の部品を作る国内の中堅メーカー(エクセディ、武蔵精密工業など)と、海外のメーカーだ。電動系の部品では、ダイカストをもつ会社や、モーター部品に強い電機系の会社が相手になる。
10 年で見ると、電動化で内燃機関系は減るが、新しい部品の仕事も生まれる。どちらが勝つかは、取引先を広げられるかで決まる。会社はトヨタ系とも新規の取引を始めた。熱の管理(熱マネジメント)の領域にも経営資源を寄せる方針だ。日本の自動車部品の出荷額は年 41 兆円規模で、この裾野の広い市場で中堅の座を守れるかが問われる。
資本政策と M&A
資本政策で最大の動きは、2026 年 5 月の自己株式の公開買付けだ。約 1,089 千株、金額で約 10 億円を買い付け、7 月 3 日に決済した。応募したのはホンダで、持株比率は 24.3% から 13.4% に下がり、「その他の関係会社」から外れた。ホンダは引き続き筆頭株主だが、親会社に近い支配は薄れる。これは買収ではなく、上場は続く。
配当性向の目標は 3 割。長期経営計画「Next35」では、2030 年に営業利益 25 億円・ROE 7%、2035 年に営業利益 43 億円・ROE 10% を掲げる。株主資本コストは 7〜9% と自ら認識している。
2024 年末に鋳造金型の米谷製作所を買収した。政策保有株は 14.7 億円で純資産の 4% ほど。配当は利益に入るため、価値を二重に数えない。買付け後は純現金がほぼ 0 になり、余った現金は分けなかった。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の株価は純資産の 4 割に満たない。ホンダが電気自動車の計画を後退させ、ハイブリッドを主力にしたことで、ロッカーアームは当面なくならない。ハイブリッド向けの新規受注がすでに取れており、2026 年 4〜6 月期の純利益は前年の 3 倍になった。
電動系の部品も伸びている。インバーターのケースやダイカスト部品は、トヨタ系も含めて受注が広がる。米谷製作所の買収で金型の自前の技術も得た。ソリューション事業は利益率が 25% と高く、育てば全社の利益率を押し上げる。
ホンダの持株比率が下がり、自己株式の公開買付けで株主還元も始まった。ROE の目標は 2035 年に 10%。会社が資本コストを意識し始めたことは大きい。純資産の割に利益が少ないのは、北米の立ち上げ費用が一時的に重いためで、峠を越えれば営業利益は 40 億円台に戻る。ホンダの値下げ要請も、取引先が広がれば受け流せる。会社が掲げる 2030 年の ROE 7% は、そのときの通過点にすぎない。
慎重な見方
ロッカーアームは売上の約半分を占める。この部品は電気自動車には要らない。ハイブリッドが当面保つとしても、10 年で内燃機関を積む車は確実に減る。ホンダ向けは売上の 6 割で、価格の決定権はホンダにある。毎年の値下げ要請で、価格は物価ほど上がらない。
営業利益率は過去 12 年で 8.6% が最高で、赤字の年も 6 回ある。2026 年 3 月期の純利益は北米の計画中止で 33% 減った。投資の見立てが外れる経営は、これからも繰り返し得る。
ROE は 10 年の中央値で 5% 台と、資本コストに届かない。純資産が厚くても、使い道がなければ価値にならない。2026 年の公開買付けで株主に返したのは約 10 億円で、純資産 260 億円からみれば小さい。電動系の部品も、競合がダイカストや電機系に多く、取れる保証はない。ホンダ向けの比率は下がったものの、まだ 6 割を超える。主力のロッカーアームの比率も、5 割台から 49% に下がっただけだ。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は短期の受注とハイブリッドの追い風を根拠にするが、10 年では電動化の縮みが勝つ。慎重な見方の指摘(ホンダ依存、主力製品の集中、ROE の低さ)は実績で裏づけられる。確率は中立を 4 割に置き、悲観側をやや厚くした。純資産の割安さは、稼ぐ力が資本コストに届かないことで説明がつく。強気の条件(ハイブリッドの長期の継続と電動系の急拡大)は、ホンダの方針に左右される。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,910 円166 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 505 円44 億円)。 今の値に割り戻すと 1,181 円103 億円、今との差 +7.3%、 期待の年率 +8.2%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,179 円276 億円 | 805 円70 億円 | +262.1% | +13.7% | 319 円28 億円 |
| やや楽観 | 17% | 2,569 円223 億円 | 667 円58 億円 | +194.2% | +11.4% | 550 円48 億円 |
| 中立 | 40% | 2,306 円201 億円 | 598 円52 億円 | +164.0% | +10.2% | 1,162 円101 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,022 円89 億円 | 345 円30 億円 | +24.3% | +2.2% | 301 円26 億円 |
| 悲観 | 13% | 552 円48 億円 | 92 円8 億円 | −41.5% | −5.2% | 84 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,910 円166 億円 | 505 円44 億円 | +119.6% | +8.2% | 2,415 円210 億円 |
今の株価時価総額 1,100 円96 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:ハイブリッドが内燃機関の部品を守り、電動系も伸びる 利益 24 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,179 円276 億円
ホンダが電気自動車を絞り、ハイブリッドを主力にし続ける。ハイブリッドも内燃機関を積むので、ロッカーアームなどの部品は台数を保つ。内燃機関系の台数は今とほぼ同じで、価格は値下げ要請を受けながらも 1.30 倍まで通る。
電動系はインバーターのケースやダイカスト部品で受注が広がり、トヨタ系の取引も増えて、10 年で売上は 3 倍強になる。ソリューションは電池・モーター向けの装置で伸びる。
営業利益は 47 億円ほど。会社が掲げる 2035 年の目標(43 億円)を少し上回る。ROE は 7% 近くまで上がる。
- 内燃機関系の部品:数量 400(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.89(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 358 億円・営業利益 25 億円。台数横ばい。HEV で内燃機関の部品が残る
- 電動・熱・鋳造の部品:数量 360(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.55(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 198 億円・営業利益 12 億円。電動向けが 3 倍
- ソリューション:数量 110(受注の件数(件、推定))× 価格 0.27(1 件あたり売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 6 億円。装置が伸びる
- モビリティ:数量 6.0(販売・整備の取り扱い(千台相当、推定))× 価格 20(1 台あたり売上(億円/千台))→ 売上 120 億円・営業利益 4 億円。整備が支える
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 276 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホンダの電動化計画の後退でハイブリッドの比重が高まった今の流れが続く上振れ。ホンダ依存が高く、1 社の方針次第で外れるので薄く置いた。
やや楽観 17% やや楽観:ハイブリッドで内燃機関の落ち込みは緩やか 利益 19 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,569 円223 億円
内燃機関系の台数は 1 割弱減る。ハイブリッド向けの新規受注が穴を埋めるが、完成車メーカーの値下げ要請で価格は 1.28 倍止まり。利益率は 6% 台前半を保つ。電動系は台数が 2.5 倍になり、売上は 160 億円台に乗る。
ソリューションは装置の受注が 3 割ほど増える。モビリティはホンダの販売網の再編で台数が 1 割減る。
営業利益は 38 億円ほど、利益率は 6% 台。純利益は 19 億円で、ROE は 5% 台に上がる。減価償却は新しい設備の分だけが増え、北米の設備の償却は 10 年のうちに軽くなる。
- 内燃機関系の部品:数量 370(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.86(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 318 億円・営業利益 21 億円。台数 9 割強
- 電動・熱・鋳造の部品:数量 300(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.55(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 165 億円・営業利益 9 億円。2.5 倍
- ソリューション:数量 95.0(受注の件数(件、推定))× 価格 0.27(1 件あたり売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 5 億円。1.3 倍
- モビリティ:数量 5.6(販売・整備の取り扱い(千台相当、推定))× 価格 20(1 台あたり売上(億円/千台))→ 売上 113 億円・営業利益 4 億円。9 割
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 223 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホンダのハイブリッド重視は当面続くが、10 年では電動化が進む。会社の目標を下回る程度の伸びに置いた。
中立 40% 中立:内燃機関系は 15% 縮み、電動系が穴を半分埋める 利益 16 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,306 円201 億円
内燃機関系の台数は 10 年で 15% 減る。ハイブリッドは内燃機関を積むため、完全な電気自動車に比べて部品の置き換えは緩やかだ。ただ完成車メーカーの値下げ要請が毎年かかり、物価の上昇分の 3 分の 2 ほどしか価格に転嫁できない。
電動系はインバーターのケースやダイカスト部品で台数が 2 倍になる。売上は 130 億円台になるが、内燃機関系の減り分を全部は埋めない。
営業利益は 32 億円、利益率は 5.8%。減価償却は、新しい設備の分だけが物価上昇込みで増える。北米で立ち上げた設備の償却負担は重く、利益率の上振れを抑える。純利益は 16 億円、ROE は 4% 台。還元は配当性向 3 割を守る。
- 内燃機関系の部品:数量 340(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.86(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 292 億円・営業利益 18 億円。台数 85%。値下げ要請で価格は 1.25 倍止まり(物価 1.34 倍に届かない)
- 電動・熱・鋳造の部品:数量 240(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.55(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 132 億円・営業利益 7 億円。台数 2 倍
- ソリューション:数量 90.0(受注の件数(件、推定))× 価格 0.27(1 件あたり売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 5 億円。1.26 倍
- モビリティ:数量 5.3(販売・整備の取り扱い(千台相当、推定))× 価格 20(1 台あたり売上(億円/千台))→ 売上 107 億円・営業利益 4 億円。台数 85%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 188 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の中心的な見通し(EV 比率が 4 割台)に沿う。ホンダがハイブリッドを維持しつつ電動化を進める前提で、内燃機関系の縮みを電動系が半分埋める。同領域の標準(中立 3〜4 割)より少し厚く置いた。
やや悲観 22% やや悲観:電動化が速く、内燃機関系が 3 割減る 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,022 円89 億円
ホンダが電気自動車へ戻り、内燃機関を積む車の台数が 10 年で 3 割減る。完成車メーカーは減った台数の部品ほど値下げを強く求め、価格は物価の半分ほどしか上がらない。
電動系は台数が 1.5 倍に増えるが、新規の立ち上げ費用で利益率は 3% 台にとどまる。北米の設備は稼働が上がらず、償却が重い。
営業利益は 15 億円ほどと今を下回る。減損も出て、自己資本の伸びは鈍る。物価で費用は 3 割ふくらむので、実質では大きく縮む。配当は性向を保てず、自社株買いも止まる。ホンダは持株をさらに減らし、取引の見直しを進める。
- 内燃機関系の部品:数量 280(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.79(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 221 億円・営業利益 8 億円。台数 7 割。価格は値下げ要請で 1.15 倍
- 電動・熱・鋳造の部品:数量 180(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.50(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 90 億円・営業利益 3 億円。1.5 倍
- ソリューション:数量 75.0(受注の件数(件、推定))× 価格 0.24(1 件あたり売上(億円))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。微増
- モビリティ:数量 5.0(販売・整備の取り扱い(千台相当、推定))× 価格 19(1 台あたり売上(億円/千台))→ 売上 95 億円・営業利益 3 億円。8 割
倍率:ROE は 2.4% で k に遠く届かない。稼ぐ力に見合う PER の上限 1÷k = 10.8 倍の 7 割として 7.5 倍に置いた。
確率:世界の EV 化が業種ノートの中心より速く進む。ホンダが電動化を再び加速すれば、内燃機関の部品は急に減る。値下げ要請が重なる。
悲観 13% 悲観:内燃機関系が半減し、電動系も取れず、構造的に稼げなくなる 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 552 円48 億円
電気自動車が主役になり、ロッカーアームなどエンジンの部品はほぼ要らなくなる。内燃機関系の台数は半分に減り、残った分も値下げで価格が据え置かれる。工場の固定費が重く、内燃機関系は赤字に落ちる。
電動系は取引先の開拓が進まず、新しい受注が取れない。北米の設備は稼働が上がらず、減損が続く。人員の削減と工場の再編が必要になる。ホンダ向けの値下げ要請は強まり、取引の条件は一段と厳しくなる。
営業利益は赤字に近づき、配当は止まる。残るのは運転資本、土地、設備の売却で得られる額で、今の時価総額の半分に届かない。ホンダの持株比率は下がっており、再編の際に支えは期待できない。
- 内燃機関系の部品:数量 200(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.69(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 138 億円・営業利益 −1 億円。台数半減、価格は据え置き、赤字
- 電動・熱・鋳造の部品:数量 120(搭載先の車の生産台数(万台、推定))× 価格 0.45(1 台あたり搭載額(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 1 億円。伸びず
- ソリューション:数量 60.0(受注の件数(件、推定))× 価格 0.22(1 件あたり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。縮小
- モビリティ:数量 4.0(販売・整備の取り扱い(千台相当、推定))× 価格 15(1 台あたり売上(億円/千台))→ 売上 60 億円・営業利益 1 億円。6 割
倍率:赤字の筋書きなので、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。今の自己資本(買付け後で約 249 億円)の 0.2 倍に置いた。減損で自己資本を 240 億円まで減らしている。
確率:構造的な負け筋。ホンダ依存と主力製品の集中が裏目に出る。ホンダの株を手放した後で資本関係の支えも薄い。純現金は買付けで使ったため床は薄い。同領域の標準(15%)よりやや薄くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
内燃機関系の部品
四輪エンジン(VTEC ロッカーアーム、バルブリフター、ピストンピン)と変速機、二輪の部品。ホンダ向けが中心で、ハイブリッド(HEV)にも使われる。
| 数量搭載先の車の生産台数(万台、推定) | 価格1 台あたり搭載額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 400 | 0.69 | 275 | 15 |
| 10 年後 中立 | 340 | 0.86 | 292 | 18 |
取り方:部品製造事業 329 億円のうち、ロッカーアームが売上の約 49%(約 215 億円)。そこに変速機・二輪を足した約 275 億円を内燃機関系とした。台数 400 万台は搭載先の生産台数の推定、営業利益は部品製造 17.4 億円を電動系と分けた推定。
電動・熱・鋳造の部品
インバーターのケース、モーターカバー、ダイカスト部品、鋳造金型(米谷製作所)、航空宇宙部品。電動化で増える側。
| 数量搭載先の車の生産台数(万台、推定) | 価格1 台あたり搭載額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 120 | 0.45 | 54 | 2 |
| 10 年後 中立 | 240 | 0.55 | 132 | 7 |
取り方:部品製造事業のうち、内燃機関系を除いた約 54 億円。米谷製作所の子会社化で増えた。搭載台数 120 万台は推定。営業利益 2.4 億円は部品製造 17.4 億円からの残りで推定。
ソリューション
無人搬送車(AGV)、組立・検査装置、モーター用の接着積層コアの製造装置、IoT・AI のソフト。利益率が高い。
| 数量受注の件数(件、推定) | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 71.5 | 0.20 | 14 | 4 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 0.27 | 24 | 5 |
取り方:売上 14.3 億円・セグメント利益 3.7 億円は開示。1 件 2,000 万円の案件が約 70 件という推定で件数と単価に分けた。
モビリティ
富山でのホンダの四輪・二輪・パワープロダクツの販売、レンタル、整備、中古車。EV 化で車は売れ方が変わるが、整備は続く。
| 数量販売・整備の取り扱い(千台相当、推定) | 価格1 台あたり売上(億円/千台) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.3 | 15 | 94 | 3 |
| 10 年後 中立 | 5.3 | 20 | 107 | 4 |
取り方:売上 94.2 億円・セグメント利益 3.0 億円は開示。1 台あたり 150 万円相当で換算した推定。
リスクと懸念
EV 化でロッカーアームが要らなくなる
ロッカーアームは売上の約 49% を占め、電気自動車には使われない。ハイブリッドが当面保つ間は仕事があるが、ホンダが電動化を速めれば、内燃機関系の台数は 10 年で半分に減る。電動系の部品がそれを埋める保証はない。
ホンダの値下げ要請
ホンダ向けは売上の 60.5% で、価格はホンダが決める。毎年のコスト削減の要請で、物価が 3% 上がっても部品の価格は 2% ほどしか上がらない。原材料の転嫁が遅れる年は、利益が一気に薄くなる。
取引先が 1 社に偏る
ホンダが部品の調達を見直せば、一度に大きな売上が動く。持株比率が下がったことで、系列としての支えも弱まった。トヨタ系の取引は始まったばかりで、まだ売上は小さい。
海外拠点と少数株主
米国とタイの子会社は出資比率が 6 割台で、少数株主の取り分が連結の利益を削る。為替(ドル・バーツ)の変動も業績に響く。北米では EV 計画の中止で約 8 億円を除却しており、米国の事業の立ち上げは重い。
新事業の育成が遅れる
ソリューションと電動系の部品は伸びる分野だが、売上がまだ小さい。研究開発費は売上の 1% ほどで、競合の大手に比べ薄い。育たなければ、内燃機関系の縮みを受け止められない。
AI エージェントの影響
主な事業は金属部品の製造とホンダ製品の販売・整備で、人月や画面操作を売る仕事ではない。AI エージェントによる直接の置き換えは小さい。ソリューション事業のソフト部分には、むしろ追い風になる面がある。
今後の分かれ目
- ホンダが電気自動車の販売目標を引き上げる
- 内燃機関系の台数が 10 年で 3 割減る道筋に近づき、やや悲観の筋書きへ確率を移す。ロッカーアームの代替が見つからなければ悲観に近づく。
- 電動系の部品の売上が 3 年で 2 倍になる
- 内燃機関系の縮みを半分以上埋められる見通しが立ち、楽観側へ確率を寄せる。営業利益 40 億円台が現実味を帯びる。
- ホンダが残りの持株をさらに売却する
- 支配の薄れは自由度を高めるが、取引上の力関係は変わらない。株主構成の変化で値付けが動く可能性はある。
- 北米の工場の稼働が上がり、立ち上げ費用が消える
- 営業利益率が 6% に戻り、純利益は 20 億円に近づく。ROE の 7% 目標(2030 年)が見えてくる。
- 完成車メーカーが部品価格の引き下げ幅を広げる
- 価格が物価の半分しか上がらなくなり、中立の利益率は 4% 台まで下がる。やや悲観の筋書きに近づく。
見ておくもの
- ホンダの電気自動車とハイブリッドの販売計画(内燃機関を積む車の台数)
- ロッカーアームなど内燃機関系の売上比率(49% の推移)
- 電動系・トヨタ系の売上と受注
- 北米の工場の立ち上げ費用と稼働
- ホンダの持株比率の変化と株主還元の継続
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価・過去や同業の PER・PBR は使っていない。中立は ROE 4.7% が k 8.5% に届かないため PER の上限は 1÷k = 10.8 倍で、その 8 割弱の 8.5 倍。楽観・やや楽観はその 8.3〜8.8 割。悲観は売れる資産を今の自己資本に掛けた。k は基本 7.5% に quality +1.75%(寿命 +1.0 が主)。結果は 1 割強の割高だが、PBR 0.4 倍という帳簿の割安さに寄せて引き上げてはいない。公開買付けで純現金がほぼ 0 になり、余った現金は分けていない。新リース会計基準は工場が自社保有中心で影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.76 倍・やや楽観 PER 9→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.75% を足した 9.25%。電動化の縮みは k の寿命で一度だけ見て、悲観の確率はさらに上げていない。ホンダの持株比率低下は筋書きで表し、k には足さない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 9.00%。