結論
東京ラヂエーター製造は、トラックと建設機械のラジエーターを作る熱交換器の専業メーカーだ。筆者の結論は、本質価値が今の時価総額を上回る、つまり割安寄りというものだ。いちばんの理由は、事業の稼ぐ力に比べて、手元の現金が厚いことにある。
売上の約56%はいすゞ自動車向けだ。トラックは台数が減りにくく、ディーゼル向けの冷却部品の需要は10年たっても残る。会社は前の中期計画を1年早く達成し、2030年度に売上500億円、営業利益率9%を掲げた。500億円のうち400億円台前半は受注済みだ。
筆者はこの目標をそのまま信じない。中立の筋書きでは、2036年3月期の売上は約500億円、営業利益率は7%にとどまる。物価が10年で3割強上がるので、売上の伸びの半分近くは値段の分だ。利益率は過去12年の最高と同じ水準を超えないよう抑えた。
弱みは3つある。顧客が偏っていること、電動化が内燃機関向けの需要を削ること、中国が縮んでいることだ。それでも自己資本比率は72%あり、借金はない。配当性向を40%に上げる方針も出た。
株主にとって、この会社の価値は、現金と事業の利益を合わせて見るのが筋だ。筆者の見立てでは、10年後の価値は今の時価総額を2割ほど上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「地味だが、やめにくい事業を持ち、現金を抱える会社」と映る。ディーゼル車の冷却部品は派手さがないが、顧客の車両に合わせて作る分、簡単には乗り換えられない。
オーナーに残る利益は、会計上の利益より小さい。設備の更新に年20億円ほど要り、物価で建築費が上がるからだ。営業利益が伸びても、手元に残る現金は同じペースでは増えない。
経営は変わり始めた。前の中期計画では資本政策の説明が不足していたが、新計画はROE9%以上とPBR1倍水準を明記した。目標を数字で縛ったことを、筆者は前向きに評価する。ただし、約束を守る実績は、これから積む段階だ。
安全域は、現金にある。悲観の筋書きでも、現金と売れる資産で今の時価総額の6割あまりは残る。一方、10年で化ける会社ではない。期待できる成長は、物価分と数量の小さな伸びだ。
見るべき点は2つに絞られる。いすゞ向けの商用車の電動化がどこまで進むか、そして浮いたキャッシュを株主に返し続けるかだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、トラックと建設機械のエンジンを冷やす部品だ。アルミ製のラジエーター、インタークーラー、ATFクーラーを、車両に合わせたひとまとまりのモジュールにして納める。排ガスを冷やすステンレス製のEGRクーラーも主力で、燃料タンクやオイルパンなどの車体製品も手がける。
顧客は国内の商用車メーカーが中心だ。2026年3月期は、いすゞ自動車向けが売上の56%を占めた。ほかに建機・農機メーカーのクボタ、中国の潍柴動力、インドネシアの現地メーカーなどがある。
地域別の売上は、日本が82%、中国が10%、アジアが8%だ。日本が収益の柱で、藤沢の本社工場に約490人が働く。中国には無錫(EGRクーラー)と重慶(ラジエーター)の2拠点がある。インドネシアとタイは、日系メーカーの現地生産に付いていく拠点だ。
製品の種類が多く、1品番あたりの数量が少ない。これが利益率の足かせになってきた。会社はこれを逆手に取り、品番の整理と工場の自動化を進めて、少量でも利益が出る工場を目指している。
新しい領域として、乗用車向けと、カーボンニュートラル関連(燃料電池車のラジエーターなど)を挙げる。2030年度に60億円を目指すが、全体から見れば1割あまりだ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、顧客の車両に合わせて設計し直す力だ。トラックや建機は種類が多く、1台ごとにエンジンの配置が違う。冷却部品はその都度作り込む必要があり、量産の乗用車ほど値段で叩かれにくい。ただ、他社がまねできないほど深い堀、つまり強い競争優位とまでは言えない。
値決めの力は普通だ。顧客は大手メーカーで、いすゞへの依存が大きい。原材料のアルミ価格の上げ下げは、顧客との取り決めで一部を転嫁できる。2022年3月期に赤字になったのは、材料高と台数減が重なったときだった。
資本の使い方は、これから変わる段階にある。自己資本比率が72%で、ROEは8.5%だ。資本コストを安定して上回る水準にはまだ届かない。会社自身も、前の計画で資本政策の説明が足りなかったと認めている。
筆者が評価するのは、ここで姿勢が変わったことだ。キャッシュの使い道を150億円の枠で示し、株主還元に50億円を割り当て、配当性向を40%とした。評価の分かれ目は、この約束を景気の悪い年にも守れるかどうかだ。
競合のティラドは、建機向けで日系メーカーの過半を押さえると会社が見積もる。東京ラヂエーターは建機で首位ではない。国内首位を目標に掲げるのは、まだ手の届かない相手がいるからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の商用車と建機は、台数が横ばいから微減の成熟市場だ。人口が減り、物流の効率化も進む。会社の計画資料も、建機の全体需要は横ばいとみている。電動化は日本では緩やかに進み、内燃機関向けの冷却部品は、2030年に向けて一定の規模で残る。
電動化は中国で最も速い。トラックの電動化が急で、内燃機関向けの需要が縮み、会社の目標も未達だった。会社は中国で、天然ガス車や燃料電池車向けなど、強みを活かせる分野に絞る。
アジアは、インドネシアとタイを中心に商用車の需要が緩やかに伸びる。日系メーカーの現地生産に付いていく形で、売上は2030年度に60億円を目指す。
電動車にも冷却部品は要る。モーターやインバーター、電池を冷やすためだ。ただし単価は内燃機関より下がりやすい。燃料電池車は発熱が大きく、ラジエーターは大型になる。会社はここに商機を見ている。
競合では、ティラドが建機で強く、マレリ、デンソーも熱交換器を手がける。会社は計画資料で、競合環境の変化を背景にシェアを広げる機会があると述べるが、中身は書いていない。10年の勝負は、顧客のいすゞの電動化と、国内シェアを伸ばせるかの2点にかかる。
資本政策と M&A
還元は強まる方向だ。2026年3月期の配当性向は30%だった。2027年3月期は増配を予想し、性向は約41%に上がる。中期計画(2026〜2030年度)では、営業キャッシュフロー150億円のうち、50億円を株主還元に回す。
残りは成長投資に50億円(M&A 20億円を含む)、設備更新などの基盤強化に50億円を使う。買収に使う20億円は、規模からして大型の買収ではない。失敗しても傷は小さいが、成功しても利益への寄与は小さい。
現金は厚い。純現金は57億円で、時価総額の約4割にあたる。ただし、月商が約30億円の会社で、設備投資も年に20億円ほど要るため、全部が余りではない。筆者は半分強の30億円を、事業に要らない現金とみる。
株主構成は動いている。筆頭株主のマレリは持株を12%まで下げ、いすゞが約7%を持つ。マレリの売却が続けば、株の需給が重くなる一方、事業の売却や持分の再編が起きる可能性もある。
設備の償却費は、今ある設備の取得価格のまま増えない。物価で膨らむのは、これから建てる設備の分だ。設備更新の投資額は建築費の上昇で膨らむので、償却より多い分の現金が出ていく。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の商用車と建機で、シェアが上がる余地は大きい。会社は国内首位を掲げ、売上500億円のうち400億円台前半を受注済みと開示した。前の計画は、売上も利益率も1年前倒しで達成している。受注が積み上がっているので、拡販の話は夢物語ではない。
電動化は、トラックでは思ったより遅い。充電設備と価格の壁があり、日本では内燃機関向けの冷却部品が2030年を過ぎても残る。しかも、品番を整理して自動化を進めれば、少量生産でも利益率は上がる。会社が掲げる9%は、2006年3月期の10.5%と比べて届かない水準ではない。
燃料電池車や天然ガス車は、ラジエーターが大きく単価が高い。EGRクーラーのステンレス技術は、電動車の電子部品の冷却にも応用できる。
資本の面でも、変化の途中にある。純現金は時価総額の4割に迫り、配当性向は40%へ上がる。PBR1倍を目標に掲げたので、株主への還元は厚くなる。利益が7割伸びる筋書きなら、株の価値は今の2倍を超えうる。
慎重な見方
いすゞへの依存は、強みの裏返しだ。売上の過半を1社に握られ、値上げ交渉は常に不利になる。いすゞが電動化や燃料電池車への切り替えを急ぎ、冷却部品の設計を変えれば、東京ラヂエーターは仕様ごと失いかねない。
日本の商用車と建機の台数は、人口減で細る。拡販でシェアを取っても、市場そのものが縮めば、伸びは物価分に近づく。中国は電動化で内燃機関向けが縮み、前の計画でも未達だった。
利益率の壁も厚い。多品種少量生産は、品番を整理しても、顧客が個別仕様を求める限り続く。過去12年の営業利益率の最高は6.7%だ。9%に届いたのは2011年3月期が最後で、10%を超えたのは2006年3月期だけだ。
現金も、見かけほど株主のものにならない。設備の更新は建築費の上昇で膨らみ、買収に20億円を使う計画もある。マレリの売却が続けば株価の重しにもなる。悲観の筋書きは、営業利益が出なくなり、残る価値は現金と土地になる。
さらに、顧客が電動化の部品を内製や別の取引先へ移す可能性もある。冷却部品は車の中で占める割合が小さく、仕様変更のたびに調達先の見直しが入りやすい。
どちらに重みを置いたか
受注の積み上げと現金の厚さが確かで、電動化の影響は、国内ではまだ緩やかだ。慎重な見方の中心は、いすゞ依存と利益率の壁だが、これは確率の重みで反映できる。確率は中立に36%、やや悲観に26%、悲観に12%を置き、悲観の側を薄くはしなかった。楽観は、利益率9%を達成する筋書きなので、20%と6%にとどめた。結果として、10年の価値は今の時価総額を2割ほど上回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,524 円339 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,050 円101 億円)。 今の値に割り戻すと 2,257 円217 億円、今との差 +49.8%、 期待の年率 +11.7%(資本コスト 8.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 6,376 円613 億円 | 1,612 円155 億円 | +430.1% | +18.2% | 479 円46 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,160 円496 億円 | 1,300 円125 億円 | +328.7% | +15.7% | 1,292 円124 億円 |
| 中立 | 36% | 4,307 円414 億円 | 1,165 円112 億円 | +263.1% | +13.8% | 1,970 円189 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,700 円163 億円 | 884 円85 億円 | +71.5% | +5.5% | 672 円65 億円 |
| 悲観 | 12% | 978 円94 億円 | 364 円35 億円 | −11.0% | −1.2% | 161 円15 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,524 円339 億円 | 1,050 円101 億円 | +203.5% | +11.7% | 4,574 円440 億円 |
今の株価時価総額 1,507 円145 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:国内首位を取り、利益率9%に近づく 利益 43 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 6,376 円613 億円
会社の中期計画がほぼ実現する。国内の商用車・建機でシェアを取り、乗用車向けと燃料電池車向けも立ち上がる。品番の整理と自動化が進み、少量でも利益の出る工場になる。
日本の営業利益率は9%台半ばまで上がる。アジアは日系メーカーの現地生産に付いて数量が2倍になる。中国は燃料電池車と天然ガス車向けで踏みとどまる。
営業利益は約52億円で、今の2倍強だ。ROEは10%台に乗り、配当性向は40%を超えて自社株買いも加わる。
筆者は、この筋書きが実現するには、国内首位の座に加えて、乗用車向けの量産という新しい経験が要ると見る。簡単な道ではない。
国内首位を取るには、競合が手放した顧客を拾う必要もある。ここは受注の動きで確かめるしかない。
- 国内(トラック・建機向け熱交換器と車体製品):数量 70.0(出荷の数(万台相当))× 価格 6.70(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 469 億円・営業利益 45 億円。国内シェア首位。乗用車・CN関連も加わる
- 中国(無錫・重慶):数量 15.0(出荷の数(万台相当))× 価格 3.25(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 49 億円・営業利益 2 億円。燃料電池車などで数量を維持
- アジア(インドネシア・タイ):数量 28.0(出荷の数(万台相当))× 価格 2.68(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 75 億円・営業利益 5 億円。現地生産で数量が2倍
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 13.51 倍、時価総額 605 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率9%の達成には、シェア拡大と工場の自動化の両方が要る。前の計画は1年前倒しで達成したが、中国は未達だった。重なる確率は低く6%とした。
やや楽観 20% やや楽観:シェアが緩やかに上がり、利益率が8%に乗る 利益 34 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,160 円496 億円
国内の数量は1割ほど増え、売上は500億円台前半になる。品番の整理は進むが、顧客が個別仕様を求める限り、少量生産の重さは残る。
日本の営業利益率は8.6%、全体で約8%まで上がる。会社の目標9%には届かないが、過去の最高を上回る水準だ。アジアは数量が1.2倍に伸び、中国は横ばいで踏みとどまる。
営業利益は約41億円。ROEは9%近くに戻り、配当性向40%も守られる。
今の延長線に近く、新しい事業に賭けない分、実現の可能性は高い。中立との違いは、国内の数量と品番整理の効果の出方だけだ。
売上は10年で約5割増え、うち物価の分が約3割を占める。数量の伸びは小さく、利益の伸びの主役は利益率の改善である。
- 国内(トラック・建機向け熱交換器と車体製品):数量 65.0(出荷の数(万台相当))× 価格 6.70(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 436 億円・営業利益 38 億円。シェアが緩やかに上がる
- 中国(無錫・重慶):数量 13.6(出荷の数(万台相当))× 価格 3.10(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 42 億円・営業利益 1 億円。数量はほぼ維持
- アジア(インドネシア・タイ):数量 17.0(出荷の数(万台相当))× 価格 2.68(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 46 億円・営業利益 3 億円。数量が1.2倍
倍率:事業の純利益 34 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.5% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 12.86 倍、時価総額 462 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の積み上がりと原価改善が効き、目標の7割程度に届く姿を、強めの確率で見た。電動化の遅れが国内で続くことも根拠にした。
中立 36% 中立:数量はほぼ横ばい、値段は物価並み、利益率は7% 利益 29 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 4,307 円414 億円
国内の数量は10年で5%増にとどまり、売上の伸びの大半は物価の分だ。値段は10年で3割強上がる。売上は約500億円で、会社の2030年度の目標を6年ほど遅れて実現するイメージだ。
営業利益率は約7%で、2026年3月期の6.7%から少し上がる。品番整理と自動化の効果が、更新投資の増加と相殺される。中国は現地メーカーとの競争で値段が物価ほど上がらず(10年で約1.24倍)、赤字すれすれが続く。アジアは数量が1.4倍になる。
営業利益は約35億円、純利益は約29億円。ROEは7%台後半で、資本コストに届かない。配当性向は40%台で、10年の還元は約110億円になる。
拡販で積み上がった受注は売上に変わるが、更新投資も増える。会計上の利益ほど現金は残らない。
減価償却費は取得価格のままで物価では増えない。この点だけは、利益率にとって追い風になる。
- 国内(トラック・建機向け熱交換器と車体製品):数量 61.0(出荷の数(万台相当))× 価格 6.70(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 409 億円・営業利益 32 億円。数量は1.05倍。値段は物価並み
- 中国(無錫・重慶):数量 13.0(出荷の数(万台相当))× 価格 3.10(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。数量7%減。値段は1.24倍(現地競争で物価未満)
- アジア(インドネシア・タイ):数量 20.0(出荷の数(万台相当))× 価格 2.68(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 3 億円。数量が1.4倍
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 12.16 倍、時価総額 378 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の積み上がりと国内の電動化の遅れは確かだが、いすゞ依存と中国の縮みは重い。両方を踏まえ、最も確率の高い姿に36%を置いた。
やや悲観 26% やや悲観:いすゞ向けが減り、利益率が5%を割る 利益 15 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 1,700 円163 億円
いすゞなど主要顧客の車種の電動化・燃料電池化が進み、冷却部品の仕様が変わる。国内の数量は1割減る。顧客の値下げ要求が強まり、値段は物価の分も取れない。
日本の営業利益率は5%台まで下がる。中国は数量が3割減り赤字になる。アジアだけが伸びるが、全体を支えるほどではない。
営業利益は約19億円。ROEは4%台に沈み、配当性向40%は守っても、1株の配当は増えない。余った現金は使い道を失い、買収に回る。
悪い状況でも、赤字には沈まない。自己資本比率の高さが、事業の傷を浅くする。
マレリなどの大株主が、この局面で持株を手放す動きに出る可能性も、需給の面では見ておく必要がある。
- 国内(トラック・建機向け熱交換器と車体製品):数量 52.0(出荷の数(万台相当))× 価格 6.40(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 333 億円・営業利益 18 億円。いすゞ向けが減り数量10%減
- 中国(無錫・重慶):数量 10.0(出荷の数(万台相当))× 価格 2.90(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円。数量3割減、赤字
- アジア(インドネシア・タイ):数量 17.0(出荷の数(万台相当))× 価格 2.50(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 1 億円。数量1.2倍。競争で値段は物価未満
倍率:ROEは約4.6%でkを大きく下回る。長く続くROEは6.5%、g4%の正当化PERは約8.7倍で、その約75%の6.5倍に置いた(7割への引き上げはしていない)。
確率:顧客が1社に偏り、電動化は商用車でも進む。国内の数量が1割減る筋書きは十分ありうる。中立に次ぐ26%を置いた。
悲観 12% 悲観:電動化で国内の数量が3割減り、固定費が重くのしかかる 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 978 円94 億円
商用車の電動化が前倒しになり、国内の内燃機関向けの冷却部品が3割減る。いすゞが調達先を絞り、東京ラヂエーターの仕様が外れる車種が出る。
工場の固定費は減らせず、国内の営業利益率は1%まで落ちる。中国は縮小、アジアも利益が出ない。減損も出て、自己資本は200億円に減る。
稼ぐ力は失われ、価値は現金と、売れる土地・設備に頼る。配当は出せても小さく、10年の還元は35億円にとどまる。
自己資本比率の高さは残るが、会社としては小さくなり、買収の標的になる可能性もある。
純現金と土地が下値を支えるので、株主の損失は限られる。ただし、そこから先の価値の回復は、経営の打ち手に左右される。
- 国内(トラック・建機向け熱交換器と車体製品):数量 38.0(出荷の数(万台相当))× 価格 6.00(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 228 億円・営業利益 2 億円。電動化で数量3割減、固定費が残る
- 中国(無錫・重慶):数量 5.6(出荷の数(万台相当))× 価格 2.60(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。事業縮小、赤字
- アジア(インドネシア・タイ):数量 14.0(出荷の数(万台相当))× 価格 2.40(1台相当あたりの単価(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 0 億円。横ばい、利益は出ない
倍率:赤字に近く、稼ぐ力では測れない。純現金の7割と、土地・設備の売却の税後を合わせた約95億円を、今の自己資本241億円に対して0.39倍とした。市場の水準からは置いていない。
確率:構造的に稼げなくなる筋書き。電動化・燃料電池化の加速と、いすゞの調達見直しが重なる必要があり、12%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内(トラック・建機向け熱交換器と車体製品)
いすゞなど国内の商用車・建機メーカー向けのラジエーター、EGRクーラー、燃料タンクなど。収益の柱。
| 数量出荷の数(万台相当) | 価格1台相当あたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 58.0 | 5.00 | 290 | 22 |
| 10 年後 中立 | 61.0 | 6.70 | 409 | 32 |
取り方:開示は地域別の売上割合(日本82%)のみ。売上約290億円を、平均単価5万円で割った58万台相当と推定した。営業利益率は会社全体6.7%の中で、日本が柱であることから7.6%と置いた。
中国(無錫・重慶)
EGRクーラーとアルミ熱交換器を中国で製造・販売。電動化の急進で苦戦している。
| 数量出荷の数(万台相当) | 価格1台相当あたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.0 | 2.50 | 35 | 1 |
| 10 年後 中立 | 13.0 | 3.10 | 40 | 1 |
取り方:中国の売上割合10%(約35億円)を、単価2.5万円で14万台相当と推定。前の計画で目標未達だったので、営業利益率は2%と低く置いた。
アジア(インドネシア・タイ)
日系メーカーの現地生産に付いていくアルミ熱交換器とEGRクーラー。成長の分野。
| 数量出荷の数(万台相当) | 価格1台相当あたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.0 | 2.00 | 28 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 2.68 | 54 | 3 |
取り方:アジアの売上割合8%(約28億円)を、単価2万円で14万台相当と推定。営業利益率は4%程度(約1億円)と置いた。
リスクと懸念
いすゞへの依存
売上の約56%を1社に頼る。いすゞが車種を整理したり、調達先を絞ったりすれば、売上と稼働率に直接響く。値上げ交渉でも、立場は強くない。
商用車の電動化・燃料電池化
内燃機関向けのラジエーターとEGRクーラーが中心だ。国内の電動化は緩やかだが、車種ごとに仕様が変わると、作り込んだ製品が外れる。EGRクーラーは電動車に要らない。
中国事業の縮み
中国の電動化は急で、前の計画の目標は未達だった。無錫のEGRクーラー工場と重慶の拠点は、稼働率が下がると赤字が出やすい。減損の可能性もある。
多品種少量生産の重さ
品番が多く、1品番あたりの数量が少ない。品番整理と自動化が計画どおり進まなければ、営業利益率9%は遠く、6〜7%の水準で止まる。
資本政策の約束を守れるか
配当性向40%とPBR1倍水準は約束したが、実績は浅い。景気が悪化した年に、この方針を守れるか。守れなければ、現金は事業の安全弁にとどまり、株主には戻らない。
株主構成の動き
筆頭株主のマレリは持株を12%に下げた。売却が続けば株の需給が重くなる。取引関係の見直しにつながる可能性もある。時価総額が小さく、売買も薄い。
今後の分かれ目
- いすゞが次期の主力車種で、内燃機関向けの冷却部品の発注を減らしたら
- 国内の数量が減る筋書き(やや悲観・悲観)に確率を移す。売上の約56%が動くので影響は大きい。
- 2028年度までに営業利益率が8%を超え、受注済みの400億円台が売上に変わったら
- 中立からやや楽観へ確率を移す。品番整理と自動化の効果が出たと判断できる。
- 配当性向40%が守られ、自社株買いも実行されたら
- 現金が株主に戻る前提を強められる。余った現金の戻り方の評価が上がる。
- 中国の工場で減損や人員削減が発表されたら
- 中国の事業を縮小する筋書きに寄せる。全社の営業利益への影響は限られるが、経営の判断力の目安になる。
- マレリが持株を一括で売却したら
- 短期的には需給が崩れる。売却先が事業会社なら、提携や再編の可能性として確率を見直す。
- 乗用車向けやカーボンニュートラル関連の売上が、2030年度に60億円に届いたら
- 商用車に偏った収益の構造が変わる。楽観の筋書きの確率を上げる根拠になる。
見ておくもの
- いすゞ向け売上の割合と、主要車種の冷却部品の受注
- 国内の営業利益率(2028年度に8%超えるか)
- 品番数の整理と自動化の進み具合
- 中国の稼働率・損益と減損
- 配当性向40%の維持と、自社株買い
- マレリ・いすゞの持株の動き
- 乗用車・CN関連の売上(2030年度60億円)
倍率と資本コストの決め方
倍率は利益ベースで置き、今の株価・過去や同業のPERは使っていない。中立はROEがkの8.5%に届かないため、RONIC方式の正当化PER(約11.2倍)の8割の9.0倍。楽観は約85%、やや楽観は約80%、やや悲観は約75%。悲観は純現金の7割と土地・設備の売却の税後を、今の自己資本に掛けた。中立の営業利益率7.0%は過去12年の最高6.7%をわずかに上回るが、前計画を1年前倒しで達成した実績と、品番整理・自動化の途中経過がその裏づけ。会社目標の9%は中立に採っていない。減価償却は取得価格のままで、新設備の分だけ増えるとみて、利益率を一定に置いた。新リース会計基準は工場が自社保有のため影響は小さく、10年後の数字は今と同じ形でそろえた。結果は2割ほどの割安だが、株価に寄せて調整してはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.51 倍・やや楽観 PER 9.6→12.86 倍・中立 PER 9→12.16 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質+1.0%を足して8.5%。顧客の偏りと電動化は、確率と筋書きでも表している。