結論
極東開発工業は、トラックの荷台や装置を作る特装車の大手だ。ダンプ、ミキサー、ごみ収集車、タンクローリー、荷役用のリフトが主力で、売上の8割を占める。そこに廃棄物処理施設の環境事業と、駐車場のパーキング事業が加わる。
筆者の結論は、本質価値が今の時価総額をやや上回る、というものだ。理由は、足元の利益が谷から戻る途中にあり、受注残も厚いためである。ただし10年の利益率は7%台で頭打ちと見る。会社が掲げる8%、さらに先の10%は、物価と同じ速さで上がる人件費と鋼材がじわじわ食う。
見ておくべき傷が2つある。1つは2025年に公取委から受けた排除措置命令だ。ダンプや塵芥車などの価格を子会社と共同で引き上げたとされ、課徴金は59億円に上る。値決めの自由度は縮み、入札の指名停止もついて回る。もう1つは、ROEが資本コストにほぼ並ぶ点だ。利益が増えても、株主が得る価値はそれほど増えない。
一方で、純負債は小さく、財務は傷んでいない。シャシの供給が戻り、2026年3月期の営業利益は3割増えた。強い堀はないが、丁寧に受注をさばく会社として、中立の筋書きでも今の値段を下回らない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を長く持ちたいかと問われれば、条件付きだ。事業は地味で必要とされ、潰れにくいが、稼ぐ力は並みで、株主のものになるお金が増えにくい。
利益から、工場の更新と運転資金に要る再投資を引くと、株主に残るお金は、純利益の6〜7割だ。ROEは資本コストにほぼ並ぶため、利益を内部にためても価値は大きく増えない。むしろ配当や自社株買いで返したほうが、持ち主には得になる。
経営の資本の使い方は評価が割れる。M&Aと新工場に400億円を投じる計画は、ROEが資本コスト並みの会社にとっては重い賭けだ。インドの工場は第2工場まで増えたが、利益はまだ見えない。一方で、DOE4%以上という還元の基準を置いた点は評価できる。
安全域は、純負債が小さいことと、受注残の厚さにある。公取委の件は、経営の姿勢を疑わせる。ただし価格を共同で引き上げる手口を使えなくなった以上、利益率の上振れは小さい。払う値段が今の時価総額なら、筆者は小さな安全域があると見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は特装車だ。2026年3月期の売上は1,350億円、営業利益は63億円で、全社の売上の8割強を占める。いすゞや日野などが作るトラックのシャシ(骨組み)を買い、その上にダンプの荷台、ミキサー、ごみ収集装置、タンクを架ける。荷役用のテールゲートリフタとコンクリートポンプ車は国内首位級とされる。トレーラは子会社の日本トレクスが担う。
特装車は受注生産で、車の注文を受けてからシャシを調達する。このため、シャシの供給が止まれば、荷台を作る力があっても売上が立たない。2023年3月期の営業利益が10億円まで落ちたのは、半導体不足でシャシが届かなかったためだ。
環境事業は売上181億円、営業利益33億円と利益率が高い。自治体や企業のごみ・資源の処理施設を作り、運転を受託し、メンテナンスを請け負う。施設は一度納めると長く付き合うので、運転受託とメンテナンスの契約が安定した収益になる。バイオマス関連を3つ目の柱にする方針だ。
パーキング事業は売上80億円、営業利益10億円。機械式の立体駐車装置の新設とリニューアル、コインパーキングの運営が中心だ。更新とメンテナンスの割合を上げ、安定した売上を厚くしたいと会社は考えている。
海外は、インドとインドネシアに新工場を造り、中国は部品の供給拠点とする。国内では三木・名古屋・横浜の工場を再編し、部品の物流を西日本パーツセンターに集めた。
優良さと弱いところ
この会社の堀は、深いとは言えない。国内の架装で規模があり、部品と整備の網を持つが、ダンプや塵芥車は新明和工業、モリタなど複数の競合が戦う市場だ。ブランドで値段を決められる商売ではなく、入札で値が決まる場面も多い。
利益率は不安定だ。2015〜17年は1割あったが、近年は4〜5%だ。2023年3月期に営業利益率が1%を割ったことが、シャシ依存と固定費の重さを物語る。ROEは過去10年の中央値で6.7%と、資本コストに届かない。
強みは3つある。1つは、環境事業の高い利益率だ。施設の運転受託は長く続く。2つ目は、受注残の厚さだ。2026年3月期の1Qは受注残が1,058億円と、前年より25%増えた。3つ目は、純負債が小さく自己資本比率が55.7%と、景気の谷を耐えられる体力があることだ。
弱みは、公取委の命令だ。違反の対象は、ダンプや塵芥車など主力の架装物とトレーラの価格の共同引き上げで、会社の根幹に近い。排除措置命令で価格情報の交換が禁じられ、自治体の入札では指名停止を受けた。経営の信頼を取り戻す時間が要る。筆者は、価格の自由度が下がる分、利益率の上振れは小さいと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
特装車の需要は、トラックの新車需要と建設・廃棄物・物流の投資に連動する。2025年の国内の普通トラック販売は7.6万台で、前年より4.7%増えた。3年連続の増加だが、2019年の8割ほどにとどまる。物流の2024年問題で買い替えが一時止まり、その後戻った形だ。
足元の最大の制約は供給だ。架装メーカーは、シャシの調達と自社の生産能力の両方で縛られ、納期が長引いている。極東開発の受注残が厚いのは、需要が強いためでもあるが、さばききれないためでもある。
長い目で見ると、国内の台数は物流の効率化と人口減でゆっくり減る。建設は更新が中心で、ダンプの台数は横ばいに近い。一方で、電動化とごみ収集の効率化が単価を押し上げる。電動ごみ収集車は、いすゞのEVトラックに載せる形で売り出された。
競合は新明和工業とモリタが近い。新明和工業は2026年3月期に最高益を出しており、特装車の好調が理由とされる。極東開発は子会社の日本トレクスとあわせ、価格の決め方そのものを公取委に問われた。
海外では、インドとインドネシアの建設・鉱山向けダンプとミキサーが成長の候補だ。中国メーカーの安い車両との競争は避けられず、現地生産で価格を合わせる必要がある。環境事業は自治体の更新需要、パーキングは立体駐車装置の老朽化が支えとなる。
資本政策と M&A
還元は、純資産に対する配当(DOE)4%以上を柱にする。中期経営計画では、3年累計で配当150億円以上を目標に掲げた。2025年3月期は、特別の配当を含めて性向が100%を超えた。
3年間で、成長投資300億円と新規のM&A100億円を計画している。前の計画でも、テクニカルセンターと新工場、M&Aに300億円を超える成長投資をした。
株主の顔ぶれも見ておきたい。三菱UFJ銀行が6%超を持ち、保有目的は政策投資だ。三井住友銀行と取引先の持ち株会も上位にいる。政策保有株の縮減は方針として掲げている。2024年末には、純投資で重要提案を行う可能性を示す大量保有者もいた。資本効率を求める声は、株主にある。
公取委の課徴金は59億円、うち当社の分は26億円で、2026年3月期に特別損失として計上された。取消訴訟を起こしているが、結果は不確かだ。10年以内にTOBや買収を受ける確率は、kabufu の試算で2割強とされている。
還元の点検(P3 2026-10-19):方針は DOE 4%以上で、配当は純資産の4%前後(10年で約500億円)。中立の還元を純利益の合計の70%から58%に下げ、留保は自己資本に残した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
シャシの供給が戻った今、これまで積み上がった受注残がそのまま売上になる。2026年3月期の営業利益は3割増え、特装車の利益は3年で、赤字から63億円まで戻った。価格改定の効果はまだ全部は出ていない。会社は、2027年度に売上1,900億円、営業利益率8%を掲げ、売上の計画はあと一息で届く。
環境事業は利益率が約2割と高く、運転受託という長く続く契約を持つ。バイオマスという新しい柱も立つ。パーキングは立体駐車装置の更新が追い風で、ストック型の売上が積み上がる。
インドの第2工場が完成し、インドネシアの新工場も2026年7月に立ち上がる。人口の増えるアジアで、現地向けのダンプとミキサーを造れば、国内の減少を補って余りある。電動ごみ収集車も、いすゞのEVトラックと組んで先行できる。
公取委の課徴金は一過性だ。すでに特別損失として処理され、26億円の当社分は利益1年分にも満たない。再発防止の体制ができれば、取引先の信頼は戻る。純負債は小さく、DOE4%以上の還元で、株主にも報いる。
慎重な見方
利益率の回復は、価格改定とシャシ供給の正常化という、一度きりの追い風によるものだ。それが一巡すれば、利益率は元の4〜5%に戻る。2015〜17年の1割は、シャシの供給と建設需要が噛み合った好況の姿で、いつも出せる利益率ではない。
公取委の命令で、価格の共同決定は使えなくなった。ダンプも塵芥車もタンクローリーも、価格は個別の交渉に戻り、入札での指名停止も響く。競合は新明和工業やモリタなど多く、シャシメーカーが架装に手を伸ばす余地もある。
ROEは10年の中央値で6.7%と、資本コストに届かない。この会社が利益をためても、株主の価値は増えない。そこにM&Aと新工場で400億円を投じる計画は、さらに価値を削る恐れがある。インドでは苦戦したとする報道もあり、第2工場まで造っても利益は見えていない。
国内のトラック台数は、物流の効率化と人口減で、じわじわ減る。景気の谷が来れば、2009年のように赤字になる。配当の性向が100%を超えた年もあり、純資産を食う還元は長く続けられない。大口の投資家が重要提案をしうる状況も、経営を不安定にする。
どちらに重みを置いたか
利益の回復はたしかに本物だが、その大半はシャシ供給の正常化と価格改定という、一度きりの要因だ。10年の利益率は7%台に落ち着くと見て、中立を最も重くした。公取委の命令による値決めの縛りを重く見て、確率はやや慎重な側に寄せ、悲観の1割にも理由を持たせた。一方で、純負債が小さく受注残が厚いことから、悲観の深さは限られるとして、全体では今の時価総額をやや上回る水準に落ち着いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,755 円1,447 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,390 円536 億円)。 今の値に割り戻すと 2,737 円1,055 億円、今との差 +28.0%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 7,901 円3,045 億円 | 2,169 円836 億円 | +370.8% | +16.8% | 1,007 円388 億円 |
| やや楽観 | 25% | 5,317 円2,049 億円 | 1,684 円649 億円 | +227.3% | +12.6% | 1,750 円675 億円 |
| 中立 | 35% | 3,703 円1,427 億円 | 1,318 円508 億円 | +134.7% | +8.9% | 1,757 円677 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,183 円456 億円 | 1,194 円460 億円 | +11.1% | +1.1% | 475 円183 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,029 円397 億円 | 519 円200 億円 | −27.6% | −3.2% | 155 円60 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,755 円1,447 億円 | 1,390 円536 億円 | +140.5% | +9.2% | 5,145 円1,983 億円 |
今の株価時価総額 2,139 円824 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:海外工場と電動化架装が当たり、利益率が1割に届く 利益 191 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 7,901 円3,045 億円
インド・インドネシアの新工場が軌道に乗り、アジアで受注した現地向けダンプとミキサーが海外売上の柱に育つ。国内ではシャシ供給が平常に戻り、積み上がった受注残を順調にさばく。電動ごみ収集車の架装は、いすゞのEVトラックと組んで自治体の更新需要を押さえ、価格が物価を少し上回って通る。環境事業はバイオマス施設が第3の柱になり、運転受託の積み上がりで利益が安定する。パーキングは立体駐車装置の更新とメンテナンスが収益の土台となる。工場再編が終わり固定費が薄まって、全社の営業利益率は10%近くまで上がる。公取委の件は訴訟を含めて決着し、再発防止の体制が評判を傷つけない形で定着する。資本政策は還元を厚めに保ち、10年で自己資本はさほど増えない。
- 特装車:数量 2.4(販売台数(万台)。非開示のため推計)× 価格 997(1台あたり単価(万円)。部品・整備を含む混合単価)→ 売上 2,392 億円・営業利益 239 億円。特装車の営業利益率10.0%
- 環境:数量 270(契約件数(建設・運転受託・メンテナンスの合算)。推計)× 価格 11,003(1件あたり売上(万円))→ 売上 297 億円・営業利益 51 億円。環境の営業利益率17.0%
- パーキング:数量 9.2(取扱い車室数(万車室)。推計)× 価格 14(1車室あたり売上(万円/年))→ 売上 128 億円・営業利益 17 億円。パーキングの営業利益率13.0%
倍率:事業の純利益 191 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍。全体の PER 15.91 倍、時価総額 3,044 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外2工場が収益に乗り、電動ごみ収集車などの高付加価値品が値上げを支える形は、条件が重なって初めて成り立つので1割にとどめた。
やや楽観 25% やや楽観:価格改定が定着し、中計の8%に近づく 利益 144 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 5,317 円2,049 億円
2025年に実施した価格改定が定着し、国内の特装車の利益率が1ケタ後半へ戻る。シャシの供給が安定して納期が縮み、受注残がきれいに売上へ変わる。インドとインドネシアの工場は黒字化するが、立ち上がりは緩やかだ。環境事業は運転受託とメンテナンスの契約が増え、利益率は15〜16%台を保つ。パーキングはストック型の売上が増え、利益率は12%前後に上がる。全社の営業利益率は8%台に乗り、中期計画の目標にほぼ届く。公取委の命令による再発防止の縛りで、価格の引き上げは個別の交渉に頼るが、受注の厚さで吸収できる。配当は純資産に対する一定の率で続き、自己資本は緩やかに増える。
- 特装車:数量 2.2(販売台数(万台)。非開示のため推計)× 価格 975(1台あたり単価(万円)。部品・整備を含む混合単価)→ 売上 2,097 億円・営業利益 178 億円。特装車の営業利益率8.5%
- 環境:数量 255(契約件数(建設・運転受託・メンテナンスの合算)。推計)× 価格 10,689(1件あたり売上(万円))→ 売上 273 億円・営業利益 44 億円。環境の営業利益率16.0%
- パーキング:数量 8.8(取扱い車室数(万車室)。推計)× 価格 13(1車室あたり売上(万円/年))→ 売上 119 億円・営業利益 14 億円。パーキングの営業利益率12.0%
倍率:事業の純利益 144 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍。全体の PER 14.21 倍、時価総額 2,039 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:価格改定とシャシ供給の正常化が続けば届く姿で、足元の受注残の厚さも後押しするため、4分の1を置いた。
中立 35% 中立:物価並みに伸びるが、利益率は7%台で足踏みする 利益 109 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 3,703 円1,427 億円
国内の特装車は、建設・物流・廃棄物の底堅い需要に支えられ、台数は海外の伸びで1割弱増える程度にとどまる。物価の上昇はおおむね価格に転嫁でき、価格は10年で1.34倍となる。ただし人件費と鋼材の値上がりも同じ速さで進むため、利益率は7%台で頭打ちになる。環境事業は施設の更新とメンテナンスが続くが、利益率は今の高さから15%へ落ち着く。パーキングは立体駐車装置の更新が中心で、利益率は1割台前半だ。公取委の命令を受けて価格の共同決定はできなくなり、値上げの交渉は一件ずつ行う。会社が掲げる2030年の利益率10%には届かない。配当は純資産の4%前後を続け、自己資本は10年で2割ほど増えるにとどまる。
- 特装車:数量 2.0(販売台数(万台)。非開示のため推計)× 価格 954(1台あたり単価(万円)。部品・整備を含む混合単価)→ 売上 1,898 億円・営業利益 133 億円。特装車の営業利益率7.0%
- 環境:数量 245(契約件数(建設・運転受託・メンテナンスの合算)。推計)× 価格 10,532(1件あたり売上(万円))→ 売上 258 億円・営業利益 39 億円。環境の営業利益率15.0%
- パーキング:数量 8.5(取扱い車室数(万車室)。推計)× 価格 13(1車室あたり売上(万円/年))→ 売上 115 億円・営業利益 13 億円。パーキングの営業利益率11.0%
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 1,410 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注生産で数量は安定し、物価を価格に転嫁できるが、利益率は2015〜17年の1割には戻らないという最も無理のない姿。最も重く置いた。
やや悲観 20% やや悲観:入札停止と競争で、利益率が4%に戻る 利益 49 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,183 円456 億円
自治体の入札で指名停止が尾を引き、地方の塵芥車やダンプで受注を落とす。国内のトラック需要は物流の効率化と人口減で台数が1割ほど減る。景気の谷が重なると建設向けの更新が先送りされ、工場の稼働が落ちて固定費の重さが利益率を削る。インドとインドネシアの新工場は黒字が遅れ、償却が重くのしかかる。環境事業も入札で値が下がり、利益率は1割前後へ下がる。結果として全社の営業利益率は4%まで戻る。ROEは資本コストを下回り、還元は最低限の配当に絞られる。会社が掲げた8%の利益率は、10年を通じて達成されない。配当は維持するものの自社株買いは見送られ、財務の余力を海外投資の償却と運転資金に回すため、株主の取り分は細る。
- 特装車:数量 1.8(販売台数(万台)。非開示のため推計)× 価格 926(1台あたり単価(万円)。部品・整備を含む混合単価)→ 売上 1,620 億円・営業利益 65 億円。特装車の営業利益率4.0%
- 環境:数量 215(契約件数(建設・運転受託・メンテナンスの合算)。推計)× 価格 10,217(1件あたり売上(万円))→ 売上 220 億円・営業利益 24 億円。環境の営業利益率11.0%
- パーキング:数量 7.6(取扱い車室数(万車室)。推計)× 価格 13(1車室あたり売上(万円/年))→ 売上 98 億円・営業利益 8 億円。パーキングの営業利益率8.0%
倍率:事業の ROE 3.9% は k 7.75% 以下なので、伸びても価値は増えず、正当化 PER の上限は 1÷k = 12.1 倍。景気とシャシ供給で振れ、入札と価格の自由度に制約があるので、上限の 7.0 割の 8.5 倍に置いた。
確率:公取委の命令で値決めの自由度が縮み、自治体の入札停止も重なる。トラック需要の谷が来れば届く筋書きで、2割を置いた。
悲観 10% 悲観:架装の値崩れとシャシ側の内製化で、構造的に負ける 利益 −5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,029 円397 億円
価格を横並びで上げられなくなった後、シャシメーカーが架装の一部を自社で手がけ、あるいは新明和工業やモリタなどに受注が流れて、極東開発の値崩れが進む。国内の台数は2割減り、価格も物価に追いつかない。海外ではインドとインドネシアの投資が回収できず、減損を迫られる。環境事業は施設の新設が止まり、メンテナンスだけが残る。パーキングも更新需要が細る。営業利益はほぼゼロとなり、特別損失で赤字の年が出る。もはや優良な架装メーカーではなくなり、配当は大きく削られる。それでも工場と部品供給網、顧客基盤という資産には一定の価値が残り、事業売却の可能性が株価を下支えする。
- 特装車:数量 1.4(販売台数(万台)。非開示のため推計)× 価格 854(1台あたり単価(万円)。部品・整備を含む混合単価)→ 売上 1,196 億円・営業利益 6 億円。特装車の営業利益率0.5%
- 環境:数量 170(契約件数(建設・運転受託・メンテナンスの合算)。推計)× 価格 9,431(1件あたり売上(万円))→ 売上 160 億円・営業利益 10 億円。環境の営業利益率6.0%
- パーキング:数量 6.0(取扱い車室数(万車室)。推計)× 価格 12(1車室あたり売上(万円/年))→ 売上 69 億円・営業利益 3 億円。パーキングの営業利益率4.0%
倍率:赤字の筋書きなので稼ぐ力でなく売れる資産で測る。国内4工場の土地・建物、投資有価証券、運転資本の回収超過を税引き後に割り引いた概算 460 億円を床とし、今の自己資本の 0.35 倍に置いた。
確率:価格の共同引き上げが禁じられ、シャシメーカー側の内製化と海外投資の失敗が重なる最悪の組み合わせ。事業の寿命が傷む筋書きとして1割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
特装車
ダンプ・ミキサー・ごみ収集車・タンクローリー・リフト・コンクリートポンプ車・トレーラの製造販売。シャシを買って荷台や装置を架ける受注生産。売上の8割強。
| 数量販売台数(万台)。非開示のため推計 | 価格1台あたり単価(万円)。部品・整備を含む混合単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.9 | 712 | 1,353 | 63 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 954 | 1,898 | 133 |
取り方:売上1,352.65億円、営業利益62.98億円(決算)。台数は非開示で、平均単価を約710万円と置き約1.9万台と推計。国内の大中型トラック販売7.6万台と整合する規模。
環境
自治体・企業向けのリサイクル施設の建設、運転受託、メンテナンス。バイオマス関連を第3の柱に育てる。
| 数量契約件数(建設・運転受託・メンテナンスの合算)。推計 | 価格1件あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 230 | 7,860 | 181 | 33 |
| 10 年後 中立 | 245 | 10,532 | 258 | 39 |
取り方:売上180.77億円、営業利益33.34億円(決算)。件数は非開示で、約230件×平均7,860万円と推計。
パーキング
機械式立体駐車装置の新設・リニューアル・メンテナンスと、コインパーキングの運営。
| 数量取扱い車室数(万車室)。推計 | 価格1車室あたり売上(万円/年) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 10 | 80 | 10 |
| 10 年後 中立 | 8.5 | 13 | 115 | 13 |
取り方:売上80.42億円、営業利益9.65億円(決算)。車室数は非開示で、約8万車室×年10万円と推計。
リスクと懸念
公取委の命令と再発防止
ダンプ・塵芥車・タンクローリーなどの架装物とトレーラの価格を共同で引き上げたとして、排除措置命令と課徴金59億円(当社26億円)を受けた。価格情報の交換が禁じられ、値上げは一件ずつの交渉になる。取消訴訟は起こしたが、勝つ見込みは読めない。
自治体の入札参加停止
塵芥車やダンプは自治体の入札が大きい。牛久市のように、指名停止の例が広がった。停止期間は減免で半分になっても、受注の穴は残る。再び選ばれるまで、売上の取りこぼしが続きうる。
シャシ供給への依存
シャシはいすゞや日野などから買う。供給が滞れば、荷台を作る力があっても売上は立たない。2023年3月期の営業利益は10億円まで落ちた。シャシメーカーが架装を自社で手がける動きが出れば、取り分も減る。
景気と建設・物流の振れ
ダンプとミキサーは建設需要に、タンクと塵芥車は物流と自治体予算に左右される。景気の谷では更新が先送りされ、2009年3月期と2010年3月期のように赤字になる。固定費が重い工場の稼働が落ちると、利益率が急に下がる。
海外投資の回収
インドでは第2工場が完成し、インドネシアでも新工場が2026年7月に完成する。立ち上げに時間がかかれば、償却が利益を食う。現地の価格は、中国の安い車両との競争になる。新規のM&A100億円も、買い方次第で価値を壊す。
物価と人件費の転嫁
鋼材と人件費は、物価と同じ速さで上がる。価格に転嫁できなければ、利益率は削られる。公取委の命令で、横並びの値上げが使えなくなった分、転嫁の力がそがれる。電動化の対応費用も上乗せされる。
株主の構成と資本効率
三菱UFJ銀行が6%超を政策投資で持ち、純投資で重要提案を行う大量保有者が現れたこともある。ROEが資本コスト並みの会社には、資本効率を求める声が出やすい。還元が薄ければ圧力が強まり、厚ければ内部のお金が減る。
今後の分かれ目
- シャシの供給が安定し、受注残が売上に転換していく
- 特装車の利益率が1ケタ後半へ戻り、やや楽観や楽観の筋書きに近づく。
- 自治体の入札参加停止が長引き、塵芥車やダンプで受注を落とす
- 国内の台数が想定より減り、やや悲観の筋書きに近づく。
- 取消訴訟で課徴金が減る、または命令の影響が限定的と分かる
- 一過性の損失で済むという見方が強まり、中立から上向きの確率が増す。
- インドとインドネシアの新工場が、立ち上げ後2年で黒字になる
- 海外の台数が計画に届き、中計の売上目標に近づく。
- シャシメーカーが架装の一部を自社で手がける、または競合に受注が流れる
- 取り分が減り、悲観の筋書きの確率が上がる。
- 純投資の株主が重要提案を行い、還元や政策保有株の売却を迫る
- 還元が厚くなり、短期の株主価値は上がるが、成長投資の余力は減る。
見ておくもの
- 特装車の受注残高と、シャシ供給の状況(四半期の決算説明)
- 公取委の命令に関する取消訴訟の進み方と自治体の入札参加停止
- インド・インドネシアの新工場の稼働率と黒字化の時期
- 特装車と環境の営業利益率(中計の目標は全体で8%)
- 三菱UFJ銀行など大株主の動向と政策保有株の縮減
倍率と資本コストの決め方
セグメントごとに数量×価格で積み上げ、その時点のROEと資本コストから倍率を置いた。資本コストは基本7.5%に quality +0.75% を足した8.25%。事業の純利益は営業利益の7割から利払いの悪化分を引いた。中立のROEは k にほぼ並ぶので、PER は上限 1÷k の8割に置いた。悲観は売れる資産の概算を床とし、今の自己資本に掛けた。過去や同業の倍率は使っていない。今の時価総額と比べたのは最後だけで、結果は10年で約 +6% 割安の見込み。新リース会計基準で数字の形が変わるが、10年後の数字は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.8→15.91 倍・やや楽観 PER 10.97→14.21 倍・中立 PER 10.4→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.75% を足した 8.25%。公取委の件や海外投資の成否は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。