結論
テインは、車高を調整できる足回りの部品「車高調」をつくる、横浜の専業メーカーだ。売上の過半は海外とみられ、車を買ったあとに交換する市場で売る。筆者の結論は、今の値段は10年の価値に対してやや高い、というものだ。
理由は、稼ぐ力と資本の関係にある。自己資本は67億円あるのに、営業利益は3億円台で、ROEは資本コストに届かない。純現金が10億円ほどあるので財務は堅いが、現金は運転資金と新工場の投資に使われ、余っているとは言いにくい。
心配は三つある。米国の関税と中国勢の追い上げ、趣味の消費という景気の波、販売先が上位2社で4分の1を占める偏りだ。
逆に、電動化の影響は小さい。電気自動車でも足回りのダンパーは要り、車の高年式化は交換の需要を支える。配当は自己資本の2%を基準にする算式で、利益が減っても急には減らない。見どころは、タイ工場の稼働と、アジアの合弁販売会社が利益に変わるかだ。この二つが動けば、足元6%の利益率が戻る余地は十分にあり、動かなければ今の水準にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「小さいが堅実なブランド企業」だ。
財務は堅い。純現金があり、借金は小さく、赤字に落ちる危険は低い。配当も算式で決まり、少数株主に配慮した形だ。
問題は、稼ぐ力に比べて資本が大きいことだ。自己資本67億円に対して、営業利益は3億円台で、ROEは資本コストに届かない。ためた利益は額面より小さい価値しかない。
事業の経済性は、ブランドと適合の数に支えられている。競技で鍛えた名前は、中国勢の安い製品が出てきても、簡単には崩れない。ただ、値段で戦う市場でもあり、強い堀とまでは言えない。
筆者は、10年先の稼ぎを、今より少し高く置いた。海外の販売網が育ち、物価の上昇を一部転嫁できるからだ。それでも、結果は今の値段をやや下回る。安全域は小さい。財務の堅さは下値を支えるが、上値を押し上げる材料は、利益率の戻りと海外の伸びの二つしかない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、車の足回りに付けるショックアブソーバー、つまり衝撃を吸収する部品だ。ばねと組み合わせて車高を自由に変えられる「車高調」が主力で、競技用と4x4用もある。
売るのは完成車メーカーではなく、車を買ったあとの交換市場だ。国内は自動車用品店などの小売店を通じて売り、海外は北米・欧州・中国・香港・タイ・オセアニアの子会社が売る。1986年から受託生産も手がけたが、いまは自社ブランドが中心だ。
工場は、横浜の本社工場と、中国の江蘇省にある子会社の二つだ。2025年11月にはタイにも製造会社をつくったが、まだ動いていない。
販売先は偏りがある。米国の販売会社TURN 14が売上の14%、国内のタカマコンペティションプロダクトが10%を占める。
研究開発費は2億円強で、売上の4%にあたる。車種ごとの適合を増やすことと、アジア向けの開発の速さが課題だ。従業員は連結で約400人、本社の平均年収は600万円ほどになる。新製品の開発は、人気車種の発売に合わせた適合の追加が中心で、競技の場での実績を製品に戻す流れを続けている。
優良さと弱いところ
優良さは「ブランドのある専業メーカー」と見る。強みと弱みがはっきりしている。
強みは、車高調の分野でテインの名前が通っていることだ。競技の場で鍛えた製品が、ブランドの信頼を支える。調達から開発、製造、販売まで自社で持ち、車種ごとの適合の数を増やしてきた。財務は純現金で、自己資本比率は76%と厚い。
弱みは三つある。一つ目は、事業の幅の狭さだ。サスペンションだけに頼り、景気や趣味の流行の影響を直接受ける。二つ目は、海外の関税と競争だ。中国工場で作る製品は、米国の対中関税の影響を受ける。三つ目は、利益率の波だ。2021年3月期の営業利益率は20%だったが、今期は6%まで落ちた。
経営は創業家が率い、社長は創業者の子だ。配当は算式で決まるため、経営者の裁量が入りにくい。この点は少数株主に有利だ。ただ、配当以外の資本の使い方、たとえば現金の持ち方や海外への出資は、創業家の判断で決まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
車高調の市場は、車を趣味で楽しむ人が支える。完成車の販売が伸びても、交換の需要が増えるとは限らない。景気がよく、車の改造に使えるお金が増える時期に売上が伸びる。2021年にその波がきて、テインの営業利益率は20%に上がった。
電動化の影響は小さい。電気自動車は重く、足回りの部品は要る。むしろ重い車の乗り心地や車高を調整したいニーズが増える可能性がある。ただ、新型の車種が出るたびに適合の製品を作る必要があり、開発の費用は続く。
車の高年式化は追い風になる。国内の保有台数の平均年齢が上がり、純正の足回りを交換する時期の車が増える。
競合は、国内ではHKSやクスコなど、海外ではKWやBCレーシング、ビルシュタインなどがある。中国勢の安い製品が参入し、価格が崩れるリスクも出てきた。
関税は、米国の対中政策の影響を受ける。会社はタイに工場をつくり、対中関税を避ける体制を整えている。ただ、タイで作る製品の品質と費用が中国並みになるまでには時間がかかり、立ち上げの数年は費用が先に出る。市場全体の規模は開示されておらず、シェアの数字は示せない。
資本政策と M&A
資本政策は、配当が算式で決まる点が特徴だ。期首連結株主資本の2%を基本とし、前期と当期の純利益のそれぞれ7.5%を上乗せする。このため、利益が出れば配当も増え、配当性向は4〜5割と厚い。自社株買いと優待はない。
現金は16億円、有利子負債は6億円で、純現金は10億円ほど。ただし運転資金と、タイ工場の立ち上げや、アジアの合弁販売会社への出資に使う予定があり、余っているとは言えない。分けて足す額はない。
開示に「その他の関係会社」が1社あるが、事業上の関係はない。社長は創業家の一員で、経営は創業家の影響が強いと見られる。買収の確率は、10年で2割強と試算されている。
設備投資は中国工場が中心で、本社工場の土地(帳簿約11億円)は自社所有だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
財務の堅さと、ブランドの強さが両方ある。純現金が10億円あり、借金が小さく、赤字に落ちる危険は低い。配当は自己資本の2%を基準にした算式で、利益が少し落ちても急には減らない。
事業の中身は、電動化に強い。電気自動車でも足回りのダンパーは要り、重い車の車高や乗り心地を調整するニーズは増える。車の高年式化も、交換の需要を支える。
成長の余地は海外にある。アジアで現地パートナーとの合弁販売会社が複数立ち上がり、タイ工場が稼働すれば、米国の対中関税の影響も和らぐ。会社は売上100億円を長期ビジョンに掲げており、足元の56億円から見て、道は遠くない。
利益率は直近の6%から、過去12年の中央値の8%台に戻るだけでも、利益は4割増える。2021年のブームを待たなくても、価値は上がる。さらに、純現金の一部でも自社株買いや増配に回れば、1株あたりの価値は目に見えて高まる。創業家の持分が大きいため、買い取りの提案が出る可能性も、完全には消えない。
慎重な見方
稼ぐ力に比べて、資本が大きすぎる。営業利益は3億円台で、自己資本67億円に対するROEは5%にとどまる。純現金10億円も、運転資金とタイ工場の投資に使われ、株主に戻る額は限られる。
利益率は上下の波が大きい。2021年3月期に20%だった営業利益率は、5年で6%まで落ちた。趣味の消費に支えられる事業なので、景気が悪くなると真っ先に影響を受ける。
販売先は上位2社で4分の1を占める。米国の販売会社が自前のブランドを持てば、売上の1割強が一気に揺らぐ。
関税と競争の問題もある。中国工場の製品は米国の対中関税の影響を受ける。タイ工場は立ち上げ費用が先行し、稼働しても欧米向けの価格競争は続く。中国勢の安い車高調が普及すれば、値段は崩れる。そうなると、ブランドの力で守ってきた利益率は一気に下がる。さらに、足元の6%は、すでに関税と立ち上げ費用で押された水準で、ここからの悪化に備える余裕は大きくない。配当は算式で自動的に減るため、株主の取り分も目減りする。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。財務の堅さとブランドは本物だが、10年の価値を決めるのは稼ぐ力で、それは資本コストに届かない。電動化の影響が小さい点は強気の見方を取り入れ、悲観の確率は4割にとどめた。ただし、強気の見方が頼る海外の伸びと利益率の戻りは、どちらもまだ数字で確認できていない。確認できるまでは、慎重な見方を少し重く置くのが筋だと考えた。結果は、今の値段をやや下回る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 630 円62 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 204 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 439 円43 億円、今との差 −4.3%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,404 円138 億円 | 357 円35 億円 | +283.7% | +14.4% | 106 円10 億円 |
| やや楽観 | 18% | 920 円90 億円 | 275 円27 億円 | +160.5% | +10.0% | 215 円21 億円 |
| 中立 | 36% | 684 円67 億円 | 234 円23 億円 | +100.1% | +7.2% | 331 円32 億円 |
| やや悲観 | 28% | 355 円35 億円 | 153 円15 億円 | +10.6% | +1.0% | 142 円14 億円 |
| 悲観 | 12% | 288 円28 億円 | 51 円5 億円 | −26.1% | −3.0% | 41 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 630 円62 億円 | 204 円20 億円 | +81.8% | +6.2% | 834 円82 億円 |
今の株価時価総額 459 円45 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 海外の販売網が育ち、売上が倍になる 利益 10 億円 · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 1,404 円138 億円
アジアで現地パートナーとの合弁販売会社が複数立ち上がり、中国・タイ・北米・欧州の販売網が一体で動く。タイ工場が稼働し、米国の対中関税の影響を避けて北米の利益率が戻る。
数量は5割増える。電気自動車や新しい車種向けの車高調が加わり、既存車の買い替えが遅れる分、足回りの交換需要も強まる。単価は付加価値の高い競技用とSUV向けの比率が上がって1.38倍になる。
営業利益率は、ブームだった2021年3月期の20%には届かないが、11%まで戻る。
配当は算式どおり増え、自己資本は増えるが、還元も厚い。この筋書きは、海外の販売網、タイ工場、新しい車種の三つが同時にうまく動いた場合にしか成り立たない。
- 車高調整式サスペンション(アフターマーケット向け):数量 105(出荷セット数(千セット、推定))× 価格 1.10(1千セットあたり売上(億円/千セット、名目))→ 売上 116 億円・営業利益 13 億円。営業利益率11.0%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.5 倍。全体の PER 14.51 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アジアの合弁販売会社が立ち上がり、タイ工場が関税を避ける拠点として機能し、電気自動車用の商品も売れる条件が重なる必要がある。会社は売上100億円を長期ビジョンに掲げるが、道のりは遠く6%に置いた。
やや楽観 18% 海外が着実に伸び、国内は横ばい 利益 7 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 920 円90 億円
数量は3割増える。海外の販売会社が現地のショップとの関係を深め、北米・アジアで売上を伸ばす。国内は台数が横ばいで、車の高年式化が交換需要を支える。単価は物価に近い1.35倍まで上がる。
営業利益率は9.5%に戻る。2021年3月期のブームのような高さは見込まないが、過去12年の中央値の8%台を上回る。
配当は算式どおり増え、自己資本の2%と純利益の7.5%を基準とする形が続く。海外の関税の影響は、タイ工場の稼働で一部が和らぐ。海外の販売会社の利益が少しずつ連結に乗り、地道にシェアを伸ばす姿を想定する。
- 車高調整式サスペンション(アフターマーケット向け):数量 91.0(出荷セット数(千セット、推定))× 価格 1.08(1千セットあたり売上(億円/千セット、名目))→ 売上 98 億円・営業利益 9 億円。営業利益率9.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 90 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の売上が順調に伸び、国内は横ばいで、利益率が少し戻る姿。足元の増収増益の流れが10年続くという意味で18%に置いた。
中立 36% 海外が国内の減少を補い、利益率は8%台 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 684 円67 億円
稼ぎの形は今と変わらない。国内の数量は縮むが、海外の販売会社が穴を埋め、全体の数量は1割強増える。単価は競争と原価低減で物価の8割ほどの速さで上がり、10年で1.32倍になる。
営業利益率は8%に戻る。足元の6%は米国の関税とタイ工場の立ち上げ費用で押されている。これらが落ち着けば、過去の中央値に近づく。ただし2021年3月期のブームの利益率は、中立では置かない。
配当は算式で決まる。自己資本の2%と純利益の7.5%が基準なので、利益が伸びれば配当も伸びる。自己資本は少しずつ積み上がる。今の延長線上の姿で、大きな成功も大きな失敗も置かない。海外が国内の縮小を補う前提で、利益率の戻りだけが価値を押し上げる。
- 車高調整式サスペンション(アフターマーケット向け):数量 78.0(出荷セット数(千セット、推定))× 価格 1.05(1千セットあたり売上(億円/千セット、名目))→ 売上 82 億円・営業利益 7 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率の中央値は8%台で、直近は6%。これに戻る形を中立に置いた。海外の関税と中国勢の追い上げが重しになるので、強気にも弱気にも寄せ切らなかった。
やや悲観 28% 関税と競争で利益率が4%台に下がる 利益 3 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 355 円35 億円
米国の対中関税が続き、中国工場で作る製品の北米向けの利益が削られる。タイ工場の立ち上げが遅れ、当面は二重の費用になる。国内は台数が減り、海外も中国勢の安い製品との競争が激しくなる。
数量は5%減り、単価は物価の6割ほどしか上がらない。営業利益率は4%台まで下がる。
配当は算式で下がるが、自己資本の2%は残るので、減り方は小さい。余った現金はもともと少ないが、設備投資を絞るので研究開発が遅れ、競争力が落ちる悪循環に入る。営業利益は2億円台に落ち、ROEは3%台まで下がるが、純現金があるので赤字には落ちない。
- 車高調整式サスペンション(アフターマーケット向け):数量 66.5(出荷セット数(千セット、推定))× 価格 0.96(1千セットあたり売上(億円/千セット、名目))→ 売上 64 億円・営業利益 3 億円。営業利益率4.5%
倍率:稼ぐ力は純利益2.5億円で、kで割っても約30億円。床は売れる資産の税後を使う。今の自己資本67億円に0.49倍を置いた。
確率:米国の関税が続き、中国勢の安い製品との競争が激しくなる姿。過去12年で営業利益率が5%台まで落ちた年が複数あり、悲観側全体を4割に置いた。
悲観 12% 主力商品が値崩れし、販売先を失う 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 288 円28 億円
中国勢の安い製品が米国とアジアで普及し、値段が崩れる。主力の販売先であるTURN 14など米国の販売会社が自前のブランドに切り替え、上位2社の依存が裏目に出る。数量は4割減り、単価も物価の3割ほどしか上がらない。
営業利益率は赤字になり、固定費の重さが利益を押しつぶす。工場の統合と研究開発の縮小に追い込まれ、減損も出る。
価値の拠りどころは売れる資産になる。純現金、本社工場の土地、棚卸資産の一部が中身だが、創業家が経営しているため、少数株主に戻る保証はない。この場合、配当は算式で大きく減り、株価は資産価値を意識した水準まで下がる。再編や減損で、残る価値はさらに削られる。
- 車高調整式サスペンション(アフターマーケット向け):数量 42.0(出荷セット数(千セット、推定))× 価格 0.88(1千セットあたり売上(億円/千セット、名目))→ 売上 37 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-3.0%
倍率:赤字で稼ぐ力はない。床は売れる資産の税後で、今の自己資本67億円に0.42倍を置いた。
確率:中国勢の低価格品に押されて値崩れし、米国の販売会社との取引も縮む構造的な負けの姿。過去20年で赤字は6期あり、2010年から2012年は3期続いた。12%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
車高調整式サスペンション(アフターマーケット向け)
車高を自由に変えられる「車高調」と、競技用・4x4用のショックアブソーバー。車を買ったあとに交換して使う補修・改造向けが中心。
| 数量出荷セット数(千セット、推定) | 価格1千セットあたり売上(億円/千セット、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 70.0 | 0.80 | 56 | 3 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 1.05 | 82 | 7 |
取り方:単一セグメントで売上55.9億円、営業利益3.3億円(利益率6.0%)。地域別・製品別の売上は非開示。1セット(ダンパー4本)の卸値を約8万円と置き、出荷セット数を推定した。開示ではない。
リスクと懸念
米国の関税と中国工場
製品の多くを中国の江蘇省の工場で作っており、米国の対中関税の影響が営業利益に出た。タイ工場は2025年11月に設立したばかりで、稼働は先だ。関税が続けば北米の利益率が下がり、タイ工場の立ち上げ費用も重なる。
中国勢の安い製品との競争
車高調は技術の壁が高くなく、中国や台湾のメーカーが低価格で攻めている。有報も競争の激化をリスクに挙げる。値段が崩れれば、ブランドの力だけでは利益率を守れない。
趣味の消費という景気の波
車の改造は景気がよく、可処分所得が増える時期に伸びる。2021年3月期の営業利益率20%は、その波の頂点だった。今期は6%で、景気が悪化すれば真っ先に影響を受ける。
販売先の偏り
米国の販売会社TURN 14が14%、国内のタカマコンペティションプロダクトが10%で、上位2社で約4分の1を占める。どちらかが取引を減らせば、売上の1割強が揺らぐ。
事業が一つに偏る
売上のほぼ全部がサスペンションで、他の事業がない。新型車の適合の開発費は続き、売れ筋の車種が変わると在庫が滞る。四半期の業績の振れも大きく、通期の予想は下方修正されることもあった。
創業家による支配
社長は創業者の子で、経営に創業家の影響が強い。配当は算式で決まるが、資本の使い方は創業家の判断になる。売上100億円を目指す長期ビジョンも、具体的な数字の道筋は示されていない。
今後の分かれ目
- タイ工場が稼働し、北米向けの利益率が改善したら
- 営業利益率を引き上げ、楽観側へ確率を移す。
- 米国の販売会社が取引を縮小する、または自前のブランドに切り替えたら
- 数量を引き下げ、悲観側へ確率を寄せる。
- アジアの合弁販売会社が黒字化し、海外の売上が2桁成長を続けたら
- 数量の伸びを上げ、中立の売上を引き上げる。
- 中国勢の低価格品が主要市場で急に広がったら
- 単価の伸びを下げ、やや悲観側へ確率を寄せる。
- 自社株買いや特別配当で現金を戻す方針が出たら
- 余った現金の戻り方を見直し、価値を引き上げる。
見ておくもの
- 海外の売上と販売会社の黒字化
- 営業利益率(直近の6%が戻るか)
- タイ工場の稼働と米国の関税
- 上位2社の販売先の動き
- 中国勢との価格競争
- 配当の算式と純現金の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は式の上限(ROE が k 以下の筋書きは 1÷k=12.1 倍)の7〜9割に置き、ROE が k を上回る楽観だけ RONIC 方式で出した。今の株価や同業の PER・PBR は使っていない。悲観側は純現金と売れる資産の税後を、今の自己資本に掛けた。土地の時価は開示がなく、帳簿を使った。純現金は運転資金と新工場の投資に使うので、余った現金としては分けなかった。新リース会計基準でBSの形が変わるが、数字は今と同じ形でそろえた。結果は今の値段をやや下回ったが、計算を株価に寄せる調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.8→14.51 倍・やや楽観 PER 10.3→12.9 倍・中立 PER 9.7→12.9 倍・やや悲観 PBR 0.53→0.49 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +0.75% を足した8.25%。関税や中国勢の競争は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。