結論
ムロコーポレーションは、ミクロン単位の精度が要る小物のプレス部品を、自動車メーカー 11 社をはじめ 200 社超に納める栃木の独立系だ。売上は 231 億円、営業利益は 12 億円。筆者の結論は、今の時価総額は資産の厚みに比べて安いが、稼ぐ力に照らせば妥当か、やや高いということだ。
安く見える理由は財務にある。自己資本比率は 75%、純現金は 52 億円で、時価総額は自己資本の 4 割弱だ。ただし利益が小さく、ROE(自己資本利益率)は 3% 台にとどまる。ためた利益が額面どおりの価値を持たないのは、この低い稼ぎ方のせいである。
本業の問題は、売上の約 6 割と推定される内燃機関・変速機・操舵まわりの部品が、EV 化で構造的に細ることだ。10 年後の中立では、この部分の数は 6 割まで減ると置いた。一方、電動化部品は 1.7 倍に伸びる。差し引きの営業利益は、物価を除けば今とほぼ同じ水準になる。
客先は値下げを求め続ける。物価は 3% 上がるのに、部品の値段は 2% 弱しか上がらないと見るのが現実的だ。経営は営業利益率 8% を掲げるが、過去 12 年で 8% を超えたのは 2016〜2019 年の 4 期だけである。
資本政策は保守的で、現金を抱え込む傾向が強い。余った現金の戻り方を 0.75 と置いても、10 年後の価値は今の時価総額に届かない。ただし悪い筋書きでも、純現金と有価証券が下支えするので、崖にはならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「安いが、安さの理由が本物の会社」と映る。時価総額は自己資本の 4 割弱で、現金は時価総額の 6 割ある。資産だけ見れば、確かに安全域は厚い。
問題は、資産が稼ぎに変わっていないことだ。自己資本 227 億円に対し、純利益は 7 億円にすぎない。バリュー投資家は、会社の持つ現金の額でなく、その現金を会社がどう使うかを見る。ムロは現金を貯めるが、使い方も返し方も明確でない。
本業の事業も、10 年後に今より強いとは言い切れない。主力の内燃・変速機部品は細り、電動化部品が穴を埋められるかは未知数だ。値決めの力は弱く、客先の値下げ要請は続く。
筆者は、この会社を「買って持ち続けたい事業」とは見ない。持つなら資産を理由に持つことになる。その場合、戻り方が決め手である。余った現金が株主に戻るか、買収や投資で消えるかで、価値は大きく変わる。
だから確信度は低めに置く。悪い筋書きでも純現金が床になる点は評価するが、中立で今の値段を上回る価値は出ない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、自動車向けの金属プレス部品だ。売上の 88.5% を占める。内燃機関まわり、自動変速機まわり、操舵・制御まわりの精密部品に、近年は自動車用電動化部品が加わった。精密せん断(刃物で切るのではなく、ずらさず抜く加工)と冷間鍛造(常温で鍛える成形)を使い、約 1.5 万種の部品を作ってきた実績がある。
有報は、内燃機関・変速機向けが主力だと明記している。内訳は開示がなく、筆者は内燃・変速機・操舵系が約 140 億円、電動化とその他の金属部品が約 65 億円と推定した。
顧客はトヨタ自動車が売上の 13.5% で最大だ。自動変速機大手のジヤトコからも表彰を受けている。特定の 1 社に頼らず、自動車メーカー 11 社を含む 200 社超と取引する独立系である。親会社はない。
ほかに樹脂関連が約 15 億円ある。自動車やカメラ向けの樹脂成形品と、医療機器・OA 機器向けのギア部品だ。金属と樹脂を組み合わせる複合部品を広げる方針である。
その他事業が約 11 億円ある。連続ねじ締め機、ねじ連綴体(ねじを帯状につないだ部品)、柑橘類の皮むき機を作る。自動車と景気の波が違う小さな事業で、利益率は本業より高い。
拠点は国内の烏山・清原・菰野の 3 工場と、米国・カナダ・ベトナム・インドネシア・タイ・中国の 7 か国・地域 16 拠点だ。連結従業員は約 1,060 人。中国の湖北拠点は収益改善が課題と会社自身が認めている。
優良さと弱いところ
優良さは中の下と見る。強みは技術の幅だ。ミクロン単位の精度と約 1.5 万種の部品実績は、客先が簡単に他社へ移せない理由になる。だが部品は 1 点ずつの金額が小さく、客先の調達部門が価格を決める。利益率が 5% 前後で動くのは、値決めの力が弱いことの裏返しだ。
過去 12 年の営業利益率は、2017 年 3 月期の 12.0% から 2023 年 3 月期の 1.9% まで振れた。景気や客先の生産台数の揺れが、そのまま利益に出る。直近は 5.3% まで戻ったが、これは回復であって新しい水準ではない。
財務は強い。自己資本比率は 75%、営業利益は支払利息の 24 倍をまかなう。借金は事業の脅威にならない。反面、資本の使い方は効率的とは言えない。投資有価証券約 20 億円と現金を抱え、ROE は過去 10 年の中央値が 5.8% だ。
経営は営業利益率 8% 以上を掲げ、電動化部品、複合部品、中国拠点の立て直し、自動化投資を課題に挙げる。数字の計画はなく、進み具合は外から測りにくい。研究開発費は年 1 億円足らずで、技術の厚みを買い足す力は大きくない。
政策保有株は 17 銘柄 20 億円と、自己資本の 1 割に満たない。保有意義が薄れたものは処分する方針だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
自動車部品の需要は、完成車の生産台数と搭載される部品の点数で決まる。世界の新車販売は年 1 億台弱で、EV は乗用車の 4 分の 1 近い。日本ではハイブリッド中心の戦略が続き、EV の普及率は 3% に届いていない。
EV 化はムロの本業に二重にのしかかる。第 1 に、エンジンと変速機の部品点数が減る。EV の駆動部品は内燃より少なく、ムロが得意とする小さな精密部品の出番が減る。第 2 に、客先は電動化で増えたコストを部品の値下げで取り戻そうとする。
救いは、日系各社がハイブリッドを長く使うことだ。ハイブリッドはエンジンも変速機も残り、そこに電動化部品が加わる。筆者は、世界の内燃・変速機向け部品の数が 10 年で 3〜4 割減ると見る。急落でなく、緩やかな後退である。
価格は物価並みに上がらない。鋼板や樹脂の値上がりは転嫁できるが、加工費の部分には年 1〜2% の値下げ要請が残る。賃上げは止まらないので、利益率は価格の弱さと人件費の板挟みになる。
競争は国内外の中堅プレスメーカーと、客先の内製の両方だ。独立系のムロは、特定の系列に守られない代わりに、系列の親から資金や受注を引き出せない。トヨタ系の部品会社なら親が余った現金の戻し方を左右するが、ムロにはその親がいない。
分かれ目は、電動化部品が内燃の穴をどこまで埋めるかである。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、安定配当と現金の厚みだ。配当性向は約 4 割で、直近の配当総額は 2.8 億円。減配はなく、続けると明記している。自社株買いの実績は確認できない。
現金は事業の運転資金と設備投資をまかなって、なお余る。純現金は 52 億円で、時価総額の 6 割に当たる。筆者は、事業に要らない分を約 25 億円と見る。戻り方は、配当は出すが自社株買いをしてこなかった点を考え、0.75 とした。
設備投資は年 8〜9 億円で、自己資金でまかなう。次期は国内 3 工場のプレス設備と表面処理設備に 8 億円強の計画だ。
M&A は目立たない。子会社 12 社は事業の補完が中心で、大型の買収は見当たらない。一方、時価総額が自己資本の 4 割弱の会社は、買収や再編の対象になりうる。親会社も大株主の支配も明確でなく、10 年のうちに買収や非公開化が起きる可能性を、筆者は無視できないと見る。
政策保有株は 17 銘柄 20 億円で、取締役会が毎年見直す。保有意義が薄れたものは処分する方針だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自己資本の 4 割弱で買える会社に、純現金が時価総額の 6 割ある。事業の価値がゼロでも、現金と有価証券でほぼ元が取れる計算だ。下値は固い。
本業も悲観一色ではない。ハイブリッドは 10 年先も主流のひとつで、エンジンも変速機も残る。そこに電動化部品が加わるので、1 台あたりの部品金額はむしろ増える。ムロの精密せん断は、モーターまわりの小さな金属部品で出番がある。
営業利益は直近で 64% 増え、次期予想も 13 億円と増益だ。会社は営業利益率 8% を掲げ、中国拠点の赤字圧縮と自動化投資でコストを下げる。8% に届けば、純利益は今の 2 倍になる。
さらに、時価総額が自己資本の 4 割弱の会社は再編の標的になりやすい。支配株主が明確でなく、買われるなら今の値段を大きく上回る可能性がある。10 年のうちにそれが起きる確率は 2 割を超える。
配当も増える余地がある。配当性向は約 4 割で、利益が倍になれば配当もほぼ倍になる。株主に戻る額が増えるだけで、価値が上がる理由として十分である。
慎重な見方
安いのには理由がある。10 年の平均 ROE は 6% を割り、資本コストを大きく下回る。ためた現金は、株主にとって額面どおりの価値を持たない。使い方を決めるのは経営で、少数株主ではない。
主力の内燃・変速機部品は、EV 化で構造的に減る。電動化部品が伸びても、新しい分野では系列の大手に有利で、独立系の中小は受注を取り切れない。取れても客先は値下げを求める。
物価は 3% 上がるが、部品の値段は 2% に届かない。賃上げが続けば、利益率は上がらず、むしろ削られる。営業利益率 8% は、過去 12 年のうち 4 期しか達成していない。
中国拠点は収益改善が課題のまま長く残る。見込み生産の比率が高く、需要が外れれば在庫が利益を食う。現金があるからといって、事業が稼げない問題は消えない。
最後に、再編への期待は根拠が薄い。買収の確率が高くても、買い手が自己資本の 4 割弱の値段で買う理由は、現金を取り込めるからであって、事業の価値を認めるからではない。
どちらに重みを置いたか
資産の安全域は本物だが、稼ぐ力は資本コストに届かない。この 2 点を重く見て、確率は中立に厚く置き、悪い側にやや寄せた。電動化部品の成否が見えるまでは、強気の根拠の中心は資産であり、事業ではない。余った現金の戻り方を 0.75 と置いた点も、価値を押し下げている。悪い側に寄せた分、楽観の取り分は小さくなったが、床が固いので悲観の確率も重ねて引き上げなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,239 円135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 601 円36 億円)。 今の値に割り戻すと 1,390 円84 億円、今との差 +1.1%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 4,134 円250 億円 | 1,010 円61 億円 | +274.1% | +14.1% | 309 円19 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,259 円197 億円 | 804 円49 億円 | +195.5% | +11.4% | 813 円49 億円 |
| 中立 | 36% | 2,493 円151 億円 | 647 円39 億円 | +128.4% | +8.6% | 1,131 円68 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,333 円81 億円 | 450 円27 億円 | +29.7% | +2.6% | 428 円26 億円 |
| 悲観 | 14% | 866 円52 億円 | 278 円17 億円 | −16.8% | −1.8% | 160 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,239 円135 億円 | 601 円36 億円 | +106.5% | +7.5% | 2,840 円172 億円 |
今の株価時価総額 1,375 円83 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:HEV 主体で内燃の縮みが緩み、電動化部品が本格化 利益 20 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,134 円250 億円
日系各社がハイブリッド中心の戦略を続け、内燃・変速機向けの数は今の 8 割を保つ。電動化部品は 2.2 倍に伸び、モーターまわりの精密部品で新しい客先を取る。値下げ要請は転嫁で相殺でき、営業利益率は 7% 台後半まで上がる。
営業利益は 27 億円、純利益は 20 億円に達する。中国拠点の黒字化と自動化投資がコスト削減に効き、会社が掲げる 8% に近づく。
配当性向は 4 割台半ばで、配当は今の 3 倍近くになる。ただし条件が重なる必要がある。独立系の中小が、ここまで電動化の波に乗れる例は少ない。M&A では、電動化に強い小さな部品会社を買い足す動きも出る。
- 内燃機関・変速機・操舵系のプレス部品:数量 560(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,440(1 台あたり納入額(円))→ 売上 137 億円・営業利益 6 億円。数は 8 割残り、値下げは転嫁で相殺
- 電動化部品・その他金属プレス部品:数量 715(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,560(1 台あたり納入額(円))→ 売上 183 億円・営業利益 17 億円。電動化部品が 2.2 倍
- 樹脂関連部品:数量 3.3(納入個数(億個))× 価格 6.60(1 個あたり単価(円))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。複合部品が伸びる
- 連続ねじ締め機ほか:数量 2,200(販売台数(台))× 価格 80(1 台あたり平均価格(万円))→ 売上 18 億円・営業利益 3 億円。海外拡販が進む
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 250 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日系各社がハイブリッド戦略を続け、さらに電動化部品の新規受注が取れる必要がある。条件が重なるので 6% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:内燃は 65% に減り、電動化部品が穴を埋める 利益 16 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,259 円197 億円
内燃・変速機の数は 65% に減るが、電動化部品が 1.9 倍に伸びて穴を埋める。営業利益率は 6% 台を保ち、営業利益は 20 億円、純利益は 15 億円台になる。
値下げ要請は続くが、原材料の転嫁と自動化で粗利は守る。樹脂関連の複合部品も少しずつ伸びる。電動化部品では、モーターまわりの小さな金属部品の受注が積み上がり、新しい客先が 2〜3 社加わる。
利益の伸びは物価に追いつく程度で、実質では緩やかな増加だ。現金は配当のあとも増えていく。
客先ではトヨタとジヤトコ向けの比率が高まり、複数年の受注が定着する。中国拠点は赤字を脱し、全体の足を引っ張らなくなる。
- 内燃機関・変速機・操舵系のプレス部品:数量 455(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,400(1 台あたり納入額(円))→ 売上 109 億円・営業利益 4 億円。数は 65%
- 電動化部品・その他金属プレス部品:数量 620(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,500(1 台あたり納入額(円))→ 売上 155 億円・営業利益 13 億円。電動化部品が 1.9 倍
- 樹脂関連部品:数量 3.1(納入個数(億個))× 価格 6.50(1 個あたり単価(円))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 連続ねじ締め機ほか:数量 2,000(販売台数(台))× 価格 80(1 台あたり平均価格(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 2 億円
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.7% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 197 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化部品が穴をほぼ埋める筋書き。ムロの技術が評価されれば十分ありうるので 20% とした。
中立 36% 中立:内燃は 6 割に減り、電動化部品が穴を埋めて利益は物価並み 利益 12 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,493 円151 億円
内燃・変速機・操舵系の数は 10 年で 6 割に減る。電動化部品は 1.7 倍に伸びるが、新しい分野で客先の値下げ要請が強く、利益率は内燃より少し高い程度にとどまる。営業利益は 16 億円、利益率は 6% 弱だ。
物価の上昇に価格が追いつかない分は、自動化で埋める。純利益は 11〜12 億円で、物価を除けば今とほぼ同じ水準になる。
配当は利益に合わせて増え、現金は少しずつ積み上がる。中立は大きな成長でも崩れでもなく、緩やかな後退を電動化で止める姿である。
内燃系の価格は、加工費の値下げ要請を受けて物価の 1.34 倍に届かず 1.20 倍にとどまる。電動化系は 1.25 倍、樹脂系は 1.30 倍と置いた。人件費は物価並みに上がるので、利益率の伸びは小さい。
- 内燃機関・変速機・操舵系のプレス部品:数量 420(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,400(1 台あたり納入額(円))→ 売上 101 億円・営業利益 3 億円。数は 6 割、値下げ要請を織り込む
- 電動化部品・その他金属プレス部品:数量 550(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,500(1 台あたり納入額(円))→ 売上 138 億円・営業利益 10 億円。電動化部品が 1.7 倍
- 樹脂関連部品:数量 3.0(納入個数(億個))× 価格 6.50(1 個あたり単価(円))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。横ばい
- 連続ねじ締め機ほか:数量 1,900(販売台数(台))× 価格 80(1 台あたり平均価格(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 2 億円
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)19 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 150 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界のノートの中心的な見方(EV 比率が 4〜5 割へ)に沿い、内燃の数は 6 割に減る。もっとも重みを置く筋書きで 36%。
やや悲観 24% やや悲観:内燃が 4 割台に細り、値下げ要請で電動化の利益も薄い 利益 7 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,333 円81 億円
内燃・変速機の数は 45% まで減り、電動化部品は 1.2 倍にとどまる。新しい分野で系列の大手に受注を取られ、値下げ要請で利益率も 3% 台に沈む。
営業利益は 9 億円、純利益は 6〜7 億円と、今とほぼ変わらない水準で横ばう。物価で名目の売上が膨らんでも、人件費と値下げで利益は残らない。
中国拠点の改善も遅れ、見込み生産の在庫評価損が時々出る。配当は維持できるが、増配の余地は小さい。
現金は事業の穴埋めと中国拠点のてこ入れに一部使われ、余った現金の積み上がりは遅れる。やや悲観の筋書きでは、純現金が 4 分の 3 に目減りする前提で価値を置く。
- 内燃機関・変速機・操舵系のプレス部品:数量 315(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,300(1 台あたり納入額(円))→ 売上 73 億円・営業利益 1 億円。数は 45%
- 電動化部品・その他金属プレス部品:数量 390(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,400(1 台あたり納入額(円))→ 売上 94 億円・営業利益 6 億円。電動化が伸びきらない
- 樹脂関連部品:数量 2.8(納入個数(億個))× 価格 6.20(1 個あたり単価(円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円
- 連続ねじ締め機ほか:数量 1,700(販売台数(台))× 価格 77(1 台あたり平均価格(万円))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円
倍率:PER 7.5 倍。利益が横ばいで ROE は 3% 台。構造的な負けに近づく筋書きなので、上限の 7 割を超えて引き上げない。
確率:独立系の中小は新しい分野の受注で不利で、値下げ要請も続く。過去の利益率の振れ幅から見て 24% とした。
悲観 14% 悲観:内燃が 3 割に崩れ、電動化へ移れず値下げ要請だけが残る 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 866 円52 億円
内燃・変速機向けが 3 割まで崩れ、電動化へ移れない。固定費は残り、内燃系の利益はゼロ近くまで落ちる。電動化部品の受注は取り切れず、値下げ要請だけが残る。
営業利益は 3 億円に縮み、純利益は 2〜3 億円になる。構造的に収益力を失った専業部品メーカーの姿である。
値段は、純現金と有価証券という床が支える。事業の稼ぐ力ではなく、資産の価値で測られる。減損も一部出る前提で、自己資本は今より減る。
中国拠点の撤退や、内燃系の工場の統廃合の費用が一度に出る。配当は減らされ、自社株買いの余力はない。それでも財務に傷は残らず、再編の対象としての魅力が下限を支える。
- 内燃機関・変速機・操舵系のプレス部品:数量 210(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,200(1 台あたり納入額(円))→ 売上 46 億円・営業利益 0 億円。数は 3 割、固定費を吸収できない
- 電動化部品・その他金属プレス部品:数量 260(搭載車両台数換算(万台))× 価格 2,240(1 台あたり納入額(円))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。受注を取り切れない
- 樹脂関連部品:数量 2.3(納入個数(億個))× 価格 5.80(1 個あたり単価(円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円
- 連続ねじ締め機ほか:数量 1,500(販売台数(台))× 価格 72(1 台あたり平均価格(万円))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円
倍率:PBR 0.23 倍を今の自己資本に掛けた。純現金に戻り方 0.75 を掛けた約 39 億円と投資有価証券の税後を足した床の資産約 55 億円に近い。稼ぐ力は純利益 2〜3 億円で、床を上回らない。
確率:転換に失敗した専業部品メーカーの構造的な負け。純現金が床になるので崖ではないが、起こりうる筋書きとして 14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
内燃機関・変速機・操舵系のプレス部品
エンジン・自動変速機・操舵まわりの精密プレス部品。売上の約 6 割と推定する本業で、EV 化で数が減る側。
| 数量搭載車両台数換算(万台) | 価格1 台あたり納入額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 700 | 2,000 | 140 | 5 |
| 10 年後 中立 | 420 | 2,400 | 101 | 3 |
取り方:金属関連部品の売上 205 億円のうち、内燃機関・変速機・操舵系を約 140 億円と推定(有報は内燃・変速機向けが主力と記すが内訳は非開示)。搭載車両台数換算 700 万台と 1 台あたり 2 千円という推定で置いた。営業利益率は会社全体 5.3% と電動化系の高さから逆算せず、客先の値下げ圧力を見て 3.6% と置いた。
電動化部品・その他金属プレス部品
ハイブリッド・EV 向けの電動化部品と、駆動方式に左右されにくいプレス部品。伸びる側。
| 数量搭載車両台数換算(万台) | 価格1 台あたり納入額(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 325 | 2,000 | 65 | 5 |
| 10 年後 中立 | 550 | 2,500 | 138 | 10 |
取り方:金属関連部品の残り約 65 億円(推定)。有報は「自動車用電動化部品」を金属事業の第 1 の柱に挙げる。台数換算 325 万台、1 台 2 千円の推定。営業利益率は精密せん断の付加価値が乗るため 8% と置いた。
樹脂関連部品
自動車・カメラ向けの樹脂成形部品、医療機器・OA 機器向けのギア部品。樹脂と金属の複合部品を広げる。
| 数量納入個数(億個) | 価格1 個あたり単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3.0 | 5.00 | 15 | 1 |
| 10 年後 中立 | 3.0 | 6.50 | 20 | 1 |
取り方:有報の売上 15.1 億円。個数 3 億個、単価は 1 個あたり数円の推定(5.0)。営業利益率は会社全体より低い 4.7% と置いた。
連続ねじ締め機ほか
連続ねじ締め機、ねじ連綴体、柑橘類の皮むき機。自動車に左右されない小さな事業。
| 数量販売台数(台) | 価格1 台あたり平均価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,900 | 60 | 11 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 80 | 15 | 2 |
取り方:有報の売上 11.4 億円。ねじ連綴体などの消耗品を含むため台数・単価は推定(1,900 台相当、60 万円)。営業利益率は 14% と置いた。
リスクと懸念
EV 化で主力の部品が細る
売上の約 6 割と推定される内燃・変速機・操舵系の部品は、EV の普及で点数が減る。10 年で 4 割減っても電動化部品が追いつかなければ、固定費を吸収できず利益率が崩れる。
客先の値下げ要請
部品の値決めは客先の調達部門が握る。物価が 3% 上がっても、加工費部分の値下げ要請が年 1〜2% 残る。賃上げと原材料の転嫁の遅れが重なると、利益率が 3% 台まで落ちる。
完成車の生産に連動
トヨタが 13.5% で最大だが、販売は他の自動車メーカーを含めて完成車の生産台数に直結する。2023 年 3 月期には営業利益率が 1.9% まで落ちた。見込み生産の比率が高く、在庫の評価損も出やすい。
中国拠点の収益
中国の湖北拠点は収益改善が課題と会社が認める。中国の自動車メーカーが部品を内製や現地調達に寄せると、赤字の固定費だけが残る。撤退や減損の可能性も残る。
現金の使い方が見えない
純現金 52 億円と有価証券 20 億円を抱えるが、自社株買いの実績はなく、使途の方針も具体的でない。買収に使われて価値を損なう可能性も、株主に戻る可能性もある。
人手と自動化投資
製造の現場は人手に依存し、人材確保と働き方の見直しが課題に挙がる。自動化投資は進めているが、人件費の上昇が価格の弱さと重なると利益が削られる。
今後の分かれ目
- 電動化部品の売上が 2028 年 3 月期までに 100 億円を超える
- 中立の電動化の伸びを 1.7 倍から 2 倍以上に上げ、やや楽観に重みを移す。
- 営業利益率が 2 年続けて 7% を超える
- 8% の目標が現実味を帯び、中立の利益率を上方に直す。コスト削減の持続性を確かめる。
- 自社株買いや増配など、現金の具体的な還元方針が出る
- 余った現金の戻り方を 1.0 に近づけ、価値が 5 億円ほど上がる。
- 内燃・変速機向けの売上が 3 年で 15% を超えて減る
- 慎重な見方が強まり、やや悲観・悲観に重みを寄せる。固定費の削減が追いつくかを見る。
- 買収の提案や大株主の動きが出る
- 時価総額が自己資本の 4 割弱のため、価格の上振れ余地が大きい。ただし買い手の条件次第。
見ておくもの
- 電動化部品の売上と、内燃・変速機向けの売上の推移
- 営業利益率(8% の目標への進み具合)
- 中国拠点の収益と構造改革の有無
- 純現金の水準と、自社株買い・増配の方針
- トヨタ・ジヤトコ向けの受注の動き
- 投資有価証券の売却の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROE が k 未満なので PER の上限は 1÷k の 11.1 倍で、中立はその約 7 割強。今の株価や過去の PER・PBR は使っていない。今の時価総額は自己資本の 4 割弱と安いが、安さは ROE の低さの結果であり、中立の価値を押し上げる根拠にしていない。新リース会計基準は家賃の負担が小さい製造業のため影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9→11.76 倍・やや楽観 PER 8.5→11.76 倍・中立 PER 8→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足して 9.0%。内燃機関の縮みは k の寿命と数量で扱い、筋書きでは二重に引かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。