結論
TBKは、大型トラックやバスのブレーキを軸にした部品メーカーだ。時価総額は自己資本の3分の1しかないが、筆者は割安とは見ない。自己資本が稼ぐ力に変わっておらず、利益が資本コストに届かないからだ。
2026年3月期の売上は548億円、営業利益は15億円で、利益率は2.7%にとどまる。最終損益は中国などの減損で赤字だった。会社が見込む今期の純利益も6億円と、自己資本の2%に満たない。
強みは、商用車ブレーキで国内の上位に立つ地位と、いすゞなど商用車メーカーとの長い取引だ。弱みは、顧客に値段を決められること、中国が赤字を抜けられないこと、国内の需要が人口とともに細ることだ。
2025年末にインドのブレーキ大手が筆頭株主として加わった。生産もインドの子会社へ寄せており、利益の源泉は日本からアジアに移りつつある。10年の中立の姿は、売上760億円、営業利益25億円。ここまで改善しても、ROEは3%台で資本コストには届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は安く見えるが、持ちたいとは思わない部類に入る。時価総額は自己資本の3分の1だが、その自己資本が稼ぐ力を生んでいない。
株主が自由に使える利益、つまりオーナー利益は、設備更新に食われる。設備投資は毎年30億円前後で、営業利益の2倍にあたる。インフレで更新費用が膨らむのに、償却は取得時の値段のままだ。会計上の利益が見かけ上ふえても、現金は細る。
救いは2つある。安全上外せない部品なので、顧客が簡単に離れないこと。財務が堅く、苦しい年を乗り切る体力があること。
だが10年先の中立の姿でも、ROEは資本コスト8.25%に届かない。ROEが資本コストを下回る会社では、ためた利益は額面を下回る価値しかない。安全域は帳簿の厚みでなく、稼ぐ力で測る。その目で10年の姿を資本コストで割り引くと、今の時価総額には届かない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はブレーキだ。小型車から大型トラック・バスまで、止まる力を担う保安部品を作る。ブレーキのほかに、エンジンの冷却と潤滑に使うウォーターポンプ・オイルポンプ、補助ブレーキのリターダなども手がける。
決算の区分は地域別だ。日本が売上の約56%を占めるが、利益の中心はアジアに移っている。アジアは売上の約3分の1で、セグメント利益では7割強を稼ぐ。中国は売上の1割ほどで、赤字が続く。北米は2026年3月期に子会社を清算し、生産を終えた。
顧客は商用車メーカーに偏る。いすゞが売上の約22%、三菱ふそうが約8%、日野が約4%、建機のコマツが約3%だ。商用車は台数が少なく、1台あたりの部品点数が多い。顧客との結びつきは強いが、1社の事情が数字にそのまま出る。
生産はタイ、中国、インドなどに広がる。北米向けの主力品は、インドの子会社へ移した。人件費の安い拠点へ寄せて、採算を戻している途上にある。
製品の価格は、原材料の鋼材やアルミ、エネルギーの値動きに左右される。日本では2026年3月期に価格転嫁が進み、増収増益になった。
優良さと弱いところ
一言でいえば、止まる部品の専門家だが、値段を決める力は弱い。
商用車のブレーキは、事故に直結する保安部品だ。顧客は供給元を簡単には替えられない。トラック・バス用ではトップシェアと報じられる。この関係の長さが堀、つまり他社がまねしにくい強みの中身だ。ただし堀は薄い。いすゞ、三菱ふそう、日野の3社で売上の3割強を占める。原材料高の転嫁は一部通るが、毎年の原価低減を求められる立場は変わらない。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値はマイナスで、赤字の年が6回ある。2026年3月期は営業利益が6割増えたのに、減損7億円で最終赤字に沈んだ。中国と北米の整理に時間がかかっている。
財務は堅い。自己資本比率は55%で、純有利子負債はほぼゼロだ。ただし現金も借入も約75億円あり、現金に余裕があるわけではない。不採算の拠点を畳んでインドへ寄せる手は打っているが、成果が利益に出るのはこれからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
商用車のブレーキは、トラックとバスの生産台数に動かされる。日本は人口と物流の効率化で、貨物車の台数が緩やかに縮む。ドライバー不足で車の大型化は進むが、台数の減りを止めるほどではない。筆者は日本向けの数量を、10年で5%減とみる。
成長は海外にある。インドは商用車の生産が世界で上位に入り、物流の整備で台数が伸び続ける。東南アジアも底堅いが、タイは需要の低迷が続いている。
電動化の影響は、乗用車ほど大きくない。電気トラックでも、重い車体を止めるブレーキは要る。ただし回生ブレーキを併用すると摩耗が減り、交換部品の需要は細る。エンジン用のポンプ類は、電動化が進めば縮む。この部分は早めに落として見る。
競争は世界規模だ。クノールブレムゼやZFなどの欧州大手に、インドのブレーキズ・インディアや地場勢が並ぶ。中国の商用車は地場メーカーの調達が中心で、日系の入る余地は狭い。日本では日野と三菱ふそうの統合など再編が進み、部品会社への調達見直しの圧力が強まる。
筆者がいちばん気にするのは、日本の商用車メーカーの再編が部品の調達先をどう絞るかだ。
資本政策と M&A
資本政策は、守りから動き始めた段階だ。2025年12月、インドのブレーキズ・インディアに第三者割当で約327万株を割り当て、約11億円を調達した。同社は持株比率10%の筆頭株主になった。資金は次世代の研究開発とアルミ事業の強化に使う。
提携の中身は、購買の共同化、製造の相互委託、技術ライセンス、製品の相互販売、開発協力だ。インドに拠点を広げたい側と、輸出市場を探す側の思惑が合う。この10%が資本関係の深まりにつながるかは、注視したい。ただし支配権が動く事実は今のところない。
株主還元は配当が中心で、年間2.5億円規模を保つ。2026年3月期の配当性向は100%を超えた。利益が戻らない限り、増配の余地は乏しい。自社株買いの実績は見当たらない。
第16次中期経営計画(2025〜27年度)は、2027年3月期の営業利益を11億円と置く控えめな内容だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
アジアの稼ぐ力はすでに本物で、日本と中国の整理が終われば全体の利益率は上がる。アジアのセグメント利益は12億円、利益率は6%を超える。インドの商用車市場は世界でも伸びが速く、生産をインドに寄せたTBKは、その成長を直接取れる位置にいる。
北米の撤退と中国の縮小で、赤字の元は止まった。ブレーキズ・インディアとの提携は、インド国内の販路と規模の経済を同時に与える。購買の共同化で原材料の調達費も下がる。
さらに、自己資本比率は55%あり、自己資本は時価総額の3倍ある。余力のあるうちに生産を最適化すれば、利益率は2015年3月期の6%台に近づける。ブレーキは保安部品で、品質の信用がそのまま価格を守る。
中立より上の姿は、売上810億円・営業利益33億円だ。ここでもROEは5%で資本コストには届かないが、利益が今の2倍以上になる意味は大きい。
仮にアジアの数量が10年で5割近く伸びれば、日本の減少分を補って余りある。会社の計画が控えめなぶん、実績が上振れる余地が大きい。
慎重な見方
この会社は長く、資本コストを超えたことがない。過去10年で赤字の年が6回あり、ROEの中央値はマイナスだ。減損と整理の繰り返しは、構造の問題を示している。
日本の商用車は台数が細り、日野と三菱ふそうの統合で調達の見直しも進む。主要顧客の原価低減の要請が続く限り、日本の利益率は2%の壁を越えにくい。中国は黒字化の見通しが立たず、減損が再発しかねない。
インドへの移管は人件費を下げる半面、現地の価格競争にさらされる。ブレーキズ・インディアは提携先であると同時に競合でもあり、顧客の取り合いに変わる芽もある。
設備投資は営業利益の2倍で、更新投資に追われる。インフレで更新費用が膨らむのに、価格転嫁は遅れる。現金が細り、配当の維持も難しくなる。中立の営業利益25億円ですら、達成は容易でない。
タイの需要低迷も長引いている。アジアの成長を期待しすぎれば、前提が崩れたときの下振れが大きい。
配当性向が100%を超えた年が続けば、株主還元も維持できない。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は、アジアの利益率が実際に高いという事実だ。慎重な見方の根拠は、長く続いた低収益という、さらに長い事実だ。後者のほうが重い。中立の確率は37%に置き、上下の配分は慎重な側に厚くした。最も強気の筋書きでも、ROEは資本コストに届かない。そのため強気の2つを合わせて20%にとどめた。
慎重な側が正しければ、悲観の筋書きでは減損と整理で自己資本が目減りする。その場合の価値は、整理した場合に回収できる資産の額が目安になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 412 円131 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 77 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 239 円76 億円、今との差 −27.7%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 961 円305 億円 | 173 円55 億円 | +243.8% | +13.1% | 57 円18 億円 |
| やや楽観 | 15% | 736 円234 億円 | 126 円40 億円 | +161.3% | +10.1% | 129 円41 億円 |
| 中立 | 37% | 515 円164 億円 | 82 円26 億円 | +80.9% | +6.1% | 221 円70 億円 |
| やや悲観 | 28% | 156 円50 億円 | 60 円19 億円 | −34.7% | −4.2% | 60 円19 億円 |
| 悲観 | 15% | 128 円41 億円 | 19 円6 億円 | −55.4% | −7.7% | 22 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 412 円131 億円 | 77 円25 億円 | +48.3% | +4.0% | 489 円155 億円 |
今の株価時価総額 330 円105 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 5% インドの伸びを取り込み、アジアが利益の柱になる 利益 25 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 961 円305 億円
インドの商用車市場の伸びを取り込み、アジアの数量が10年で4割強増える。中国は縮小の整理が済み、黒字に戻る。ブレーキズ・インディアとの製造・販売の連携が当たり、インドと輸出の販路が開く。アルミ化と軽量化の次世代品が単価を押し上げる。
日本は台数の減りを高付加価値品で相殺し、横ばいを保つ。営業利益率は日本3.5%、アジア7.5%まで改善し、全体で4.9%になる。2015年3月期の6%台には届かない。
売上は860億円、営業利益は42億円、純利益は25億円。配当は利益の2〜3割に増える。ただしROEは6%で、資本コストには届かない。
- 日本:数量 102(日本向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 4.13(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 422 億円・営業利益 15 億円。日本 営業利益率3.5%
- アジア(タイ・インドほか):数量 145(アジア向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 2.48(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 360 億円・営業利益 27 億円。アジ 営業利益率7.5%
- 中国:数量 110(中国向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.73(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 80 億円・営業利益 2 億円。中国 営業利益率3.0%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 305 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アジアの伸び、提携の効果、日本の耐久がすべてそろう筋書き。低収益が長く続いた実績を踏まえ、5%にとどめた。
やや楽観 15% アジアが3割強伸び、中国の赤字が止まる 利益 19 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 736 円234 億円
アジアの数量が3割強伸び、中国の赤字は止まるが、黒字化は小幅にとどまる。日本は商用車メーカーの統合が進んでも、取引は維持される。
原材料高の転嫁が着実に通り、日本の利益率は3%近くまで上がる。全体では売上810億円、営業利益33億円(利益率4.1%)。
純利益は19億円で、自己資本は400億円を超える。配当は少し厚くなるが、設備更新の負担で自社株買いまでは届かない。ROEは5%で、資本コストを下回る。
中国の整理が終わるため、赤字の足かせが外れる。会社の2027年度計画より、利益は上振れる。
日本の再編後も、いすゞ向けの比率は大きく変わらない。インドの現地調達が進み、アジアの原価も下がる。
- 日本:数量 100(日本向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 4.07(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 407 億円・営業利益 11 億円。日本 営業利益率2.8%
- アジア(タイ・インドほか):数量 135(アジア向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 2.46(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 332 億円・営業利益 23 億円。アジ 営業利益率6.8%
- 中国:数量 100(中国向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.71(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 71 億円・営業利益 1 億円。中国 営業利益率2.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 234 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:アジアの数量が伸び、整理が終わって黒字が定着する筋書き。中計は控えめだが、拠点の整理は実際に進んでいるので15%に置いた。
中立 37% 中立:アジアが支え、日本は細りながら耐える 利益 14 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 515 円164 億円
日本の数量は人口と物流の効率化で5%減る。アジアは生産のインド移管と市場の伸びで25%増える。中国は赤字を止め、わずかな黒字になる。
値段は原材料と賃金の転嫁で、日本とアジアが物価並みに近づく。中国は価格競争で届かない。
売上は760億円、営業利益は25億円(3.2%)に育つ。償却は取得時の値段のままだが、更新投資が建築費の上昇で膨らみ、現金は細る。純利益は13億円、ROEは3.5%で、資本コストを下回る。配当は今の水準を保ち、自社株買いはしない。
主要顧客との取引は維持され、シェアは横ばいを保つ。ブレーキズ・インディアとの提携は、購買の共同化で小さな原価低減をもたらす程度にとどまる。
- 日本:数量 95.0(日本向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 4.07(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 387 億円・営業利益 8 億円。日本 営業利益率2.0%
- アジア(タイ・インドほか):数量 125(アジア向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 2.44(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 305 億円・営業利益 18 億円。アジ 営業利益率6.0%
- 中国:数量 95.0(中国向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.70(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 1 億円。中国 営業利益率0.8%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 164 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も重みを置く筋書き。ただし長く続いた低収益を踏まえ、確率は慎重な側に厚く配分した。
やや悲観 28% 日本の再編圧力と中国の赤字が長引く 利益 7 億円 · PER 7.4 倍 · 株価時価総額 156 円50 億円
日本の商用車は統合による再編で調達の見直しが進み、数量が1割減る。アジアの成長はタイの低迷で鈍い。中国は赤字が続く。値段は原価低減の要請で物価に届かない。
営業利益率は日本1.2%、アジア5%。全体で売上680億円、営業利益15億円(2.2%)にとどまる。
純利益は7億円で、配当は減らされる。構造改革の費用がかさみ、ROEは2%に満たない。成長投資の余地はなく、価値は伸びない。
主要顧客の統合後も取引は続くが、価格交渉の力はさらに弱まる。現金は減り、借入が増える。
インドの生産は伸びるが、現地の価格競争で利益率は上がらない。タイの需要は戻りきらない。
- 日本:数量 90.0(日本向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 3.95(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 356 億円・営業利益 4 億円。日本 営業利益率1.2%
- アジア(タイ・インドほか):数量 112(アジア向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 2.37(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 265 億円・営業利益 13 億円。アジ 営業利益率5.0%
- 中国:数量 88.0(中国向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.65(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 57 億円・営業利益 −1 億円。中国 営業利益率-1.0%
倍率:事業のROE 1.9%は k 8.25%を大きく下回る(上限 1÷k = 11.1 倍)。構造的に縮む筋書きで利益の質が低いので、上限の 7 割に満たない 7.4 倍に置いた。評価額は稼ぐ力で測り、売れる資産の床(約40億円、悲観の欄)を上回っている。
確率:日本の調達見直しと中国の赤字が長引く筋書き。過去の低収益に最も近い姿なので、厚めの28%に置いた。
悲観 15% 主要顧客に調達を絞られ、中国から撤退する 利益 −18 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 128 円41 億円
日本の商用車の需要が縮み、統合後の完成車メーカーが調達先を絞る。TBKはシェアを落とし、日本向けの数量が4分の1減る。中国は撤退に追い込まれ、アジアも現地メーカーの低価格に押される。
固定費の重さが利益を消し、営業赤字になる。減損と再編の費用で、最終赤字は18億円前後。インドの提携先とは製造の下請けに近い関係へ寄り、自前の開発力が細る。
売上は520億円、自己資本は減損で230億円まで減る。配当は大きく減る。残る価値は、整理した場合に回収できる額が中心になる。
ブレーキズ・インディアとの提携が深まっても、それは救済に近い形になり、既存株主の持分は薄まる。
- 日本:数量 75.0(日本向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 3.65(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 274 億円・営業利益 −6 億円。日本 営業利益率-2.0%
- アジア(タイ・インドほか):数量 95.0(アジア向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 2.22(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 211 億円・営業利益 4 億円。アジ 営業利益率2.0%
- 中国:数量 60.0(中国向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.58(指数1あたりの売上(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 −2 億円。中国 営業利益率-6.0%
倍率:赤字の筋書きなので、稼ぐ力でなく売れる資産で測る。回収できる資産から負債と整理費用を引いた約 40 億円を床とし、今の自己資本 313.6 億円の 0.13 倍(約 41 億円)に置いた。EV÷営業利益は営業利益が消えるので意味を失う。
確率:主要顧客の調達見直しと中国の撤退が重なる筋書き。財務が堅くすぐには行き詰まらないので、15%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
国内の商用車向けブレーキ・ポンプ類。いすゞ・三菱ふそう・日野・建機向け。
| 数量日本向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 3.04 | 304 | 5 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 4.07 | 387 | 8 |
取り方:日本セグメントの売上は内部取引込みで約325億円。連結売上547.6億円に合わせ、外部向けを約304億円と推定して数量指数100を起点に置いた。国内の商用車台数が細るため中立は0.95倍。価格は原材料と賃金の転嫁を含め物価並みの1.34倍。セグメント利益は5.3億円(開示)。
アジア(タイ・インドほか)
タイ・インドなどでの商用車向けブレーキ・ポンプ類。北米向けの主力品もインドで生産。
| 数量アジア向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.85 | 185 | 12 |
| 10 年後 中立 | 125 | 2.44 | 305 | 18 |
取り方:アジアの売上は内部取引込みで約198億円、外部向けは約185億円と推定。利益は12.3億円(開示)で利益率は6%台。インドへの生産移管と商用車市場の伸びで、中立は1.25倍。価格は現地の物価と値上げ余地を見て1.32倍。
中国
中国での商用車向けブレーキ。地場メーカー中心の市場で赤字が続く。
| 数量中国向けの実質数量指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.58 | 58 | −1 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 0.70 | 66 | 1 |
取り方:中国の売上は内部取引込みで約62億円、外部向けは約58億円と推定。利益は1.1億円の赤字(開示)。地場メーカー中心で数量は伸びず、中立は0.95倍。価格競争で物価に届かず1.20倍。
リスクと懸念
主要顧客への偏りと再編
いすゞ、三菱ふそう、日野の3社で売上の3割強を占める。日野と三菱ふそうの統合で調達の見直しが入れば、数量と単価の両方に直接響く。
中国の赤字と追加の減損
中国は売上の1割で赤字が続く。地場メーカー中心の市場に日系は入りにくく、追加の減損や撤退費用が出るおそれがある。
国内需要の縮小
国内の貨物車は台数が人口とともに細る。主力の日本セグメントの数量が10年で1割以上減れば、固定費を回収しきれない。
更新投資の負担
設備投資は営業利益の2倍で推移している。インフレで更新費用が膨らむ一方、償却は取得時の値段のままで、会計上の利益より現金が細る。
電動化とエンジン部品
ウォーターポンプやオイルポンプなどエンジン部品は、電動化が進むと数量が縮む。ブレーキの伸びで補えるかが分かれ目になる。
提携先との関係
ブレーキズ・インディアは提携先であり、同時に競合でもある。製造委託が進めばTBKが下請けに寄り、自前の開発力と価格決定力が細る可能性がある。
今後の分かれ目
- アジアのセグメント利益が20億円を超え、利益率が7%台に乗ったら
- アジアの利益率の前提を上げ、強気側へ確率を移す。
- 中国の事業が黒字に転じるか、撤退が決まったら
- 赤字の元が止まったとして中立の利益率を上げる。撤退費用が大きければ悲観側を厚くする。
- 日野・三菱ふそうの統合会社が調達先を絞り込んだら
- 日本の数量を下げ、やや悲観側へ確率を移す。
- ブレーキズ・インディアが持株比率を引き上げたら
- 資本関係が深まる兆しとして、買収・再編の筋書きを見直す。
- 営業利益が会社予想の13億円を大きく下回ったら
- 中立の利益率を下げ、悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- アジア・日本・中国のセグメント利益と利益率
- いすゞ・三菱ふそう・日野向けの売上比率
- インドへの生産移管の進み具合と北米撤退後の採算
- 設備投資と営業キャッシュフローの差
- ブレーキズ・インディアとの提携の具体的成果と持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式の上限(ROEが k を下回るので 1÷k = 11.1 倍)の 6.7〜8.5 割に置いた。市場の PER・PBR は使っていない。時価総額が自己資本の3分の1でも、稼ぐ力が資本コストに届かないので割安の根拠にしていない。悲観は回収できる資産から負債を引いた床に、今の自己資本を掛けた。新リース会計基準で BS の形が変わるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に含める形)でそろえた。結果は今の時価総額より低く出たが、計算を株価に寄せる調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.4→12.12 倍・やや楽観 PER 8.9→12.12 倍・中立 PER 8.3→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を足した 9.0%。個別の懸念(主要顧客への偏り・中国の赤字)は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。