結論
日本精機は、車のメーターと HUD(フロントガラスに速度や道案内を映す装置)の専業メーカーだ。二輪車用メーターにも強い。筆者の結論は、今の値段は利益の質に見合っていて、安全域は薄い、というものだ。10 年の中立では今の時価総額をやや下回る。
稼ぎの中身は二極に分かれる。二輪メーターは新興国の需要を受けて利益率が二桁に乗る。四輪は売上の過半を占めるのに、利益はほとんど残らない。ホンダなど完成車メーカーが値段を握り、中国では日系・欧州系の車が負けているからだ。
2026 年 10 月、会社は東洋電装を約 500 億円で買い、ホンダ向けスイッチの事業を取り込んだ。全額借入で、実質無借金の財務は実質の借金に変わった。売上は 3 割増えるが、ホンダへの寄りかかりも深まる。8 月にはデンソーの HUD 事業を譲り受ける契約も結んでいる。
最大の懸念は、メーターそのものが車の電子化の中で独立した部品でなくなる恐れだ。メーターが車内の統合コンピューターに吸収されれば、専業の居場所は狭まる。HUD はその代わりになりうるが、まだ競争が激しい。
強気の筋書きでは、HUD の量産と二輪の伸びで利益が 4〜5 倍になる。ただ、その確率は 1 割に満たない。中立は利益が 2 倍強、それでも ROE は資本コストに届かず、倍率は伸ばせない。筆者はこの会社を、安く買える優良株ではなく、実行を見極めてから評価すべき会社と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社はオーナーとして長く持ちたい事業ではない。理由は 3 つある。
1 つ目は、稼ぐ力が資本コストに届かないこと。ROE は過去 10 年で見ると 3% 未満が中央値で、株主のお金を増やす力は弱かった。2 つ目は、値段を自分で決められないこと。堀が浅い事業に、高い倍率は払えない。3 つ目は、10 年先の姿を描きにくいこと。メーターの形が変わる時代に、専業がどこまで居場所を保てるかは読み切れない。
一方で、経営が変わり始めたのは事実だ。政策保有株を売り、還元を厚くし、利益率を上げる計画を持つ。二輪と HUD は伸びる分野に置いている。
安全域の見方は単純だ。中立の筋書きでは、10 年で稼ぐ利益に対し、今の値段は少し高い。悲観の筋書きでは、元本が半分以下になりうる。上振れの確率は低く、払う値段に対する余裕は小さい。実行が数字に出るのを見てからでも遅くない会社だ。
何で稼ぐ会社か
会社は 1 本の柱と 2 本の補助線でできている。柱は車載の計器で、運転席の速度計や警告灯、液晶のメーター、HUD を自動車メーカーに納める。売上の約 8 割が車載部品だ。
二輪車用メーターは別の顔を持つ。ホンダ、ヤマハなどに納め、インド・ASEAN・南米の二輪需要を受けて伸びている。売上は四輪の 5 分の 1 ほどだが、利益率は四輪より明らかに高い。会社は中期計画で、二輪計器の売上を 10 年ほどで 2 倍以上に増やす目標を置く。
計器以外には、自動車販売の子会社、樹脂コンパウンド、民生向けの小さな事業がある。合わせて売上の約 3 割、利益は薄い。
顧客の偏りは大きい。ホンダが売上の約 3 割で、増えてきた。ヤマハも増えた。一方 BMW や GM 向けは減っている。HUD は、トヨタの新型 RAV4 に初めて採用され、2027 年 3 月期から供給が本格化する。
2026 年 10 月に買収を終えた東洋電装は、四輪・二輪・汎用機向けのスイッチや操作系の部品を手がける。売上は約 1,000 億円で、ホンダ向けが 8 割を超える。日本精機のメーターと東洋電装のスイッチを組み合わせ、運転席まわりをまとめて提案するのが狙いだ。
優良さと弱いところ
事業の質を正直に言えば、堀は浅い。堀とは、他社がまねできず、値段を守ってくれる強みのことだ。
強みはある。計器は安全に関わる部品で、自動車メーカーの認定を通すには年月がかかる。HUD は光学とソフトウェアの積み上げがものを言う。世界の HUD 市場でも、日本精機は採用実績の多い一角にいる。一度採用されれば、車種の寿命の間は供給が続く。
弱みは値段だ。メーターは完成車メーカーが値段を決める部品で、毎年の原価低減を求められる。しかも車の電子化が進むと、メーターが車内の中心コンピューターに取り込まれ、専業の出番が減りかねない。
財務は 3 月末まで堅かった。自己資本比率は 6 割台後半、実質無借金だった。ただ、10 月の買収で借入が増え、この強みは当面薄れる。資本の使い方には、ほめられる点もある。2025 年 3 月期に政策保有株 7 銘柄を売り、アルプスアルパインとの資本提携も解消した。総還元性向 80% の方針も出している。
筆者が気にするのは、利益率の低さだ。過去 10 年の ROE の中央値は 2.6%。資本コストを継続して稼げた期は少ない。経営の規律が株主に届くのは、利益率が上がってからになる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の新車生産は 2025 年に約 1 億台。台数の伸びは年 1% 前後の成熟市場で、日本精機が伸びるには、1 台あたりの搭載価値を上げるか、シェアを取るしかない。
搭載価値は上がる方向にある。メーターは針式から液晶へ移り、HUD を積む車が増えている。会社は液晶メーターの構成比を、2026 年度の 18% から 2030 年度に 22% へ引き上げる計画だ。同じ 1 台から取れる金額は物価を超えて増える。
競争は厳しい。メーターの世界では欧米の電装大手と戦う。HUD ではパナソニックオートモーティブシステムズ、デンソー、コンチネンタルが並ぶ。中国では地場のメーカーが安さと開発の速さで、日系・欧州系の車ごと市場を奪っている。会社も 2027 年 3 月期に中国の落ち込みを織り込み、中期計画の営業利益目標を 165 億円から 140 億円に下げた。
再編の動きもある。会社は 2026 年 8 月、デンソーの HUD 事業の譲り受けを発表した。事業は赤字だが、顧客と技術を取り込み、HUD の原価を下げる狙いだ。HUD の競合が 1 社減るのは、価格競争の緩和という点では前向きだ。
二輪は別の世界だ。インド、ASEAN、南米で台数が伸び、液晶メーターの採用も進む。会社の計画では、二輪の売上は 2035 年に 850 億円。筆者はそこまでは届かないと見るが、成長の中心は二輪だ。
資本政策と M&A
資本政策は、ここ数年で明らかに変わった。政策保有株は 2025 年 3 月期に 7 銘柄を売り、純資産比で 10% を割った。アルプスアルパインとの資本業務提携も解消し、株は順次売る。
株主還元は、安定配当から総還元性向 80% に切り替えた。配当は 2026 年 3 月期に増え、2027 年 3 月期はさらに増やす予定だ。自社株買いも選択肢に入れる。大株主はホンダで、持ち分は約 6.5% だ。
大きな買い物が 2 件ある。1 件目は東洋電装で、取得額は約 500 億円、全額借入。契約は 2026 年 4 月、完了は 10 月 1 日。2 件目はデンソーの HUD 事業で、対価は非開示だが連結純資産の 1% 以下、2027 年 2 月に移る予定だ。
筆者は、東洋電装の買収を高くも安くもないと見る。利益は推定で売上の 5% 前後だ。500 億円を 3.5% 前後で借りると、利息が利益を食う。うまくいけば、スイッチと計器の組み合わせでホンダ向けの取引が深まる。失敗すれば、減損と借金の重さが残る。次の中期計画は 2027 年 5 月に出る。
還元は方針(総還元性向80%)どおりで、中立は純利益の合計の約78%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本精機は、売上が横ばいでも利益を増やせる場所に立っている。二輪メーターは新興国の二輪の増加と液晶化で売上が伸び、利益率は 11% 台へ上がる計画だ。HUD は 2024 年 3 月期に約 560 億円まで育ち、新型 RAV4 への採用で 2027 年 3 月期から供給が増える。デンソーの HUD 事業を取り込めば、HUD の競合が 1 社減り、量産効果で原価も下がる。
東洋電装の買収は、ホンダ向けの取引を一気に広げる。メーター、HUD、スイッチを 1 台分まとめて提案できれば、1 台あたりの金額が増え、乗り換えにくくなる。売上は 7,000 億円近くまで伸び、営業利益率は 7% を超える筋書きも見える。
株主還元の姿勢も変わった。政策保有株を売り、総還元性向 80% を掲げた。自己資本は厚く、利益が回復すれば還元の増え方も大きい。利益率が過去最高の 10% 台に近づけば、今の時価総額は小さく見える。
慎重な見方
日本精機の利益率は、過去 10 年のほとんどで 3% を超えなかった。値段は完成車メーカーが決め、毎年の原価低減が前提だ。会社は 2027 年 3 月期の営業利益目標を 165 億円から 140 億円に下げたばかりで、目標の達成力そのものが疑われる。
四輪は中国で日系・欧州系の車が負けるとそのまま減収になる。欧州事業は赤字が続き、固定費の削減はまだ途中だ。さらに、車の電子化でメーターが統合コンピューターに吸収されれば、専業の存在理由が揺らぐ。HUD は伸びるが、デンソーが赤字で手放した事業でもある。競争は価格に出る。
東洋電装は売上の 8 割以上がホンダ向けだ。日本精機のホンダ依存はさらに深まり、ホンダの方針ひとつで両方の事業が同時に揺れる。500 億円の借入は、利益の薄い会社には重い。実質無借金だった余裕を使い切り、谷の年の耐久力は落ちた。上振れより下振れの形のほうが具体的だ。
株価を支える材料も乏しい。政策保有株は純資産の 1 割を切るまで減らし、アルプスアルパイン株も順次売る方針で、含み益のクッションは厚くない。谷の年に頼れるのは、本業の稼ぐ力と事業の売却価値だけだ。
どちらに重みを置いたか
強気の根拠は二輪と HUD で、確かに利益は伸びる。ただ、四輪の薄利と、買収で深まったホンダ依存、メーターの吸収という構造リスクのほうが具体的で、重いと見る。確率は慎重な側に寄せ、やや悲観と悲観を合わせて 4 割強にした。
中立は利益が 2 倍強に増える筋書きだが、それでも ROE は資本コストに届かず、倍率は上限の約 7 割にとどまる。結果は、今の値段を少し下回る。上に振れる余地はあるが、その確率は低い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,404 円1,957 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,567 円901 億円)。 今の値に割り戻すと 2,595 円1,492 億円、今との差 +9.5%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 8,972 円5,158 億円 | 3,125 円1,796 億円 | +410.4% | +17.7% | 726 円417 億円 |
| やや楽観 | 18% | 6,127 円3,522 億円 | 2,463 円1,416 億円 | +262.5% | +13.7% | 1,546 円889 億円 |
| 中立 | 34% | 3,913 円2,250 億円 | 1,815 円1,044 億円 | +141.7% | +9.2% | 1,948 円1,120 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,177 円677 億円 | 942 円541 億円 | −10.6% | −1.1% | 572 円329 億円 |
| 悲観 | 15% | 765 円440 億円 | 435 円250 億円 | −49.4% | −6.6% | 180 円104 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,404 円1,957 億円 | 1,567 円901 億円 | +109.8% | +7.7% | 4,972 円2,858 億円 |
今の株価時価総額 2,370 円1,362 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 6% HUD とスイッチ、二輪が同時に当たる 10 年 利益 367 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 8,972 円5,158 億円
HUD の売上は 1,000 億円を超え、量産効果と原価の削減が利益に出る。デンソーの HUD 事業の取り込みで競合は減り、価格も落ち着く。二輪メーターはインドと ASEAN の伸びと液晶化で、売上が今の 2 倍台に乗る。東洋電装はホンダ以外にも納入先が増え、メーターとの共同提案で採用が深まる。営業利益率は 7% を超え、2008 年 3 月期の水準に近づく。欧州事業は黒字になり、中国はそこそこ踏みとどまる。還元は総還元性向 80% を保ち、自己資本はあまり増えない。それでも、ROE は 13% 台に乗る。メーター専業の評価が変わり、HUD と HMI の会社として見直される 10 年になる。
- 四輪車用計器・HUD:数量 893(搭載台数(万台))× 価格 3.45(1台あたり売上(万円。HUDを含む))→ 売上 3,078 億円・営業利益 231 億円。営業利益率 7.5%
- 二輪車用計器:数量 2,240(搭載台数(万台))× 価格 0.40(1台あたり売上(万円))→ 売上 886 億円・営業利益 106 億円。営業利益率 12.0%
- 東洋電装(スイッチ・HMI):数量 2,750(納入先の生産台数(万台。四輪・二輪・汎用機の合計換算))× 価格 0.58(1台あたり売上(万円))→ 売上 1,596 億円・営業利益 120 億円。営業利益率 7.5%
- 自動車販売:数量 8,100(販売台数(台))× 価格 442(1台あたり売上(万円))→ 売上 358 億円・営業利益 18 億円。営業利益率 5.0%
- 車載のその他部品・樹脂・民生:数量 800(国内自動車生産台数(万台。代理の指標))× 価格 1.53(1台あたり売上(万円))→ 売上 1,223 億円・営業利益 67 億円。営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 367 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.0 倍。全体の PER 14.05 倍、時価総額 5,158 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:HUD・二輪・スイッチの 3 つがそろって当たる必要がある筋書き。メーターの吸収リスクとホンダ依存を考えると、1 割に満たない確率に置いた。
やや楽観 18% 中期計画に近い形で利益率が戻る 利益 272 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 6,127 円3,522 億円
会社の計画に近いが、少し遅れて届く。HUD は 800 億円台まで伸び、二輪メーターは中期計画の 8 割ほどまで売上を伸ばす。東洋電装の取り込みは順調で、利益率は 6% に上がる。四輪計器の利益率は 6% 程度まで戻るが、中国の苦戦は続き、欧州は収支がとんとんになる。ホンダ依存は深いまま、ただホンダの二輪・四輪が堅調なので表面化しない。営業利益率は 6% 台で、総還元性向 80% は守られる。ROE は 10% を超え、資本コストをようやく上回る。倍率は上限の 8 割台半ばに置ける、地味だが前向きな 10 年になる。
- 四輪車用計器・HUD:数量 850(搭載台数(万台))× 価格 3.17(1台あたり売上(万円。HUDを含む))→ 売上 2,697 億円・営業利益 162 億円。営業利益率 6.0%
- 二輪車用計器:数量 2,100(搭載台数(万台))× 価格 0.38(1台あたり売上(万円))→ 売上 807 億円・営業利益 89 億円。営業利益率 11.0%
- 東洋電装(スイッチ・HMI):数量 2,625(納入先の生産台数(万台。四輪・二輪・汎用機の合計換算))× 価格 0.56(1台あたり売上(万円))→ 売上 1,480 億円・営業利益 89 億円。営業利益率 6.0%
- 自動車販売:数量 7,650(販売台数(台))× 価格 429(1台あたり売上(万円))→ 売上 328 億円・営業利益 15 億円。営業利益率 4.5%
- 車載のその他部品・樹脂・民生:数量 776(国内自動車生産台数(万台。代理の指標))× 価格 1.50(1台あたり売上(万円))→ 売上 1,163 億円・営業利益 56 億円。営業利益率 4.8%
倍率:事業の純利益 272 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.95 倍、時価総額 3,522 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げた計画の 7〜8 割が実現する筋書き。直近の計画の下方修正を考えると、中立より低めの確率とした。
中立 34% 二輪と HUD は伸びるが、四輪の薄利は残る 利益 186 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 3,913 円2,250 億円
二輪メーターは新興国の台数増と液晶化で売上が 9 割ほど増える。HUD も採用車種が増えて伸びるが、値段は完成車メーカーに抑えられ、四輪計器の営業利益率は 4% にとどまる。東洋電装は、スイッチの共同提案で少しずつ利益率を上げる。デンソーの HUD 事業の統合は、当初は重荷だが、数年で黒字にする。中国のシェア低下は続き、欧州は黒字化まで時間がかかる。営業利益率は 5% 弱。会社の計画(7%)にはとどかない。総還元性向は 8 割弱を保つが、利益が小さいので自己資本は厚いままで、ROE は 7% 台にとどまる。成長はするが、資本コストを継続して超える会社にはならない 10 年になる。
- 四輪車用計器・HUD:数量 825(搭載台数(万台))× 価格 3.03(1台あたり売上(万円。HUDを含む))→ 売上 2,502 億円・営業利益 100 億円。営業利益率 4.0%
- 二輪車用計器:数量 1,960(搭載台数(万台))× 価格 0.39(1台あたり売上(万円))→ 売上 764 億円・営業利益 73 億円。営業利益率 9.5%
- 東洋電装(スイッチ・HMI):数量 2,500(納入先の生産台数(万台。四輪・二輪・汎用機の合計換算))× 価格 0.55(1台あたり売上(万円))→ 売上 1,382 億円・営業利益 69 億円。営業利益率 5.0%
- 自動車販売:数量 7,650(販売台数(台))× 価格 422(1台あたり売上(万円))→ 売上 323 億円・営業利益 13 億円。営業利益率 4.0%
- 車載のその他部品・樹脂・民生:数量 760(国内自動車生産台数(万台。代理の指標))× 価格 1.46(1台あたり売上(万円))→ 売上 1,106 億円・営業利益 47 億円。営業利益率 4.2%
倍率:事業の純利益 186 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 2,250 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:二輪・HUD の伸びと、四輪の薄利、ホンダ依存、買収の統合のコストを織り込んだ最頻値。強気と慎重の議論の落としどころ。
やや悲観 27% 中国と欧州の不振で、利益は今のまま横ばい 利益 85 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,177 円677 億円
中国で日系・欧州系の車が地場メーカーに押され、四輪計器の数量が 1 割強減る。メモリーなど部品の高騰を価格に転嫁しきれず、四輪計器の利益率は 1% 台に沈む。HUD は競争が激しく、デンソー事業の取り込みで広がった赤字の幅が縮まらない。二輪は伸びるが、為替と競争で利益率は 8% にとどまる。東洋電装はホンダの生産調整を直接受け、利益率は 3% 台に落ちる。営業利益は今とほぼ同じ水準で、物価で目減りした分だけ実質は後退する。還元は縮小し、自己資本は積み上がる。ROE は 3% 台、資本コストの半分以下。稼いだ利益が利益を生まない、冴えない 10 年になる。
- 四輪車用計器・HUD:数量 748(搭載台数(万台))× 価格 2.76(1台あたり売上(万円。HUDを含む))→ 売上 2,064 億円・営業利益 31 億円。営業利益率 1.5%
- 二輪車用計器:数量 1,680(搭載台数(万台))× 価格 0.36(1台あたり売上(万円))→ 売上 613 億円・営業利益 49 億円。営業利益率 8.0%
- 東洋電装(スイッチ・HMI):数量 2,250(納入先の生産台数(万台。四輪・二輪・汎用機の合計換算))× 価格 0.54(1台あたり売上(万円))→ 売上 1,206 億円・営業利益 42 億円。営業利益率 3.5%
- 自動車販売:数量 7,200(販売台数(台))× 価格 402(1台あたり売上(万円))→ 売上 289 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 3.0%
- 車載のその他部品・樹脂・民生:数量 720(国内自動車生産台数(万台。代理の指標))× 価格 1.41(1台あたり売上(万円))→ 売上 1,017 億円・営業利益 31 億円。営業利益率 3.0%
倍率:事業の ROE 3.2% は k 8.25% 以下なので、ためた利益は帳簿の額より小さな価値で、正当化 PER の上限は 1÷k = 11.4 倍。利益率が薄く、実行にも不確実さが残るので、上限の 7.0 割ほどの 8.0 倍に置いた。
確率:中国の不振とメモリー高、欧州の赤字が続く筋書き。直近の下方修正と、過去 10 年の利益率の低さを根拠に厚めの確率を置いた。
悲観 15% メーターが統合コンピューターに吸収され、専業の居場所が狭まる 利益 −40 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 765 円440 億円
車の電子化が進み、メーターは車内の中心コンピューターの一機能になる。専業が納めるのは画面や部品だけになり、値段は大きく下がる。中国の地場メーカーが HUD にも進出し、世界で価格競争が起きる。四輪計器は赤字になり、欧州は撤退を迫られる。ホンダが調達方針を変えれば、東洋電装も同時に揺れる。買収ののれんは減損され、固定費の重い工場の統廃合が続く。二輪だけが黒字を保つが、それだけで全体は支えられない。配当は大きく削られ、不足分は事業や保有株の売却でまかなう。工場の統廃合と人員削減で、会社の姿は今より小さくなる。ここまで来ると、評価は稼ぐ力でなく、売れる資産で決まる。
- 四輪車用計器・HUD:数量 612(搭載台数(万台))× 価格 2.20(1台あたり売上(万円。HUDを含む))→ 売上 1,348 億円・営業利益 −27 億円。営業利益率 -2.0%
- 二輪車用計器:数量 1,400(搭載台数(万台))× 価格 0.35(1台あたり売上(万円))→ 売上 495 億円・営業利益 30 億円。営業利益率 6.0%
- 東洋電装(スイッチ・HMI):数量 1,875(納入先の生産台数(万台。四輪・二輪・汎用機の合計換算))× 価格 0.50(1台あたり売上(万円))→ 売上 933 億円・営業利益 14 億円。営業利益率 1.5%
- 自動車販売:数量 6,300(販売台数(台))× 価格 381(1台あたり売上(万円))→ 売上 240 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 1.0%
- 車載のその他部品・樹脂・民生:数量 640(国内自動車生産台数(万台。代理の指標))× 価格 1.31(1台あたり売上(万円))→ 売上 838 億円・営業利益 13 億円。営業利益率 1.5%
倍率:赤字の筋書きなので稼ぐ力でなく売れる資産で測る。二輪計器・東洋電装の売却と政策保有株の税引き後から純有利子負債を引いた約 440 億円を床とし、今の自己資本約 2,316 億円の 0.19 倍に置いた。
確率:メーターの吸収、ホンダ依存、買収の失敗が重なる最悪の組み合わせ。成立には構造変化が速く進む必要があるが、買収で借金が増えた分、傷が深くなりやすい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
四輪車用計器・HUD
ガソリン車からEVまで、運転席のメーターと、フロントガラスに速度や道案内を映すHUDをつくる。会社の屋台骨。
| 数量搭載台数(万台) | 価格1台あたり売上(万円。HUDを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 850 | 2.06 | 1,750 | 30 |
| 10 年後 中立 | 825 | 3.03 | 2,502 | 100 |
取り方:四輪計器の売上は約1,750億円(決算の報道値)。世界の自動車生産9,980万台のうち、日本精機製が積まれる台数を約850万台と推定し(世界の計器大手の一角として約9%)、売上÷台数で1台あたり約2.06万円とした。営業利益は車載部品全体85億円から二輪・その他を引いた残りとして約30億円と推定(会社は四輪だけの利益を開示していない)。
二輪車用計器
ホンダ・ヤマハ向けの二輪メーター。インド・ASEAN・南米の需要が伸び、会社でいちばん利益率が高い。
| 数量搭載台数(万台) | 価格1台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,400 | 0.28 | 390 | 35 |
| 10 年後 中立 | 1,960 | 0.39 | 764 | 73 |
取り方:会社の説明資料で二輪計器・センサーの売上は24/3期350億円、27/3期見込み380億円。2026/03期を約390億円と置いた。世界の二輪生産は年6,000万台前後で、そのうち約1,400万台に積まれると推定し、1台あたり約0.28万円とした。営業利益率は24/3期の8.6%から27/3期に11.6%へ上げる計画で、今期は約9%と置いて35億円。
東洋電装(スイッチ・HMI)
四輪・二輪・汎用機向けのスイッチや操作系の部品。2026年10月に買収を終えた。ホンダ向けが8割超。いま報告している利益には入っていない参考値。
| 数量納入先の生産台数(万台。四輪・二輪・汎用機の合計換算) | 価格1台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,500 | 0.41 | 1,031 | 50 |
| 10 年後 中立 | 2,500 | 0.55 | 1,382 | 69 |
取り方:東洋電装の2026/03期の連結売上は約1,031億円(報道)。ホンダの四輪・二輪・汎用機の生産規模から、納入先の生産台数を約2,500万台と推定し、1台あたり約0.41万円とした。営業利益は開示が確認できず、スイッチ専業の一般的な水準から売上の約5%(50億円)と推定。日本精機の2026/03期の決算にはまだ入っておらず、参考として並べた。
自動車販売
国内の自動車販売子会社。売上は2割に満たないが安定した小さな事業。
| 数量販売台数(台) | 価格1台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,000 | 300 | 270 | 13 |
| 10 年後 中立 | 7,650 | 422 | 323 | 13 |
取り方:セグメント売上約270億円、営業利益約13億円。1台あたり約300万円と置き、販売台数を約9,000台と推定した(開示は金額のみ)。万円×台を億円にするため係数は0.0001。
車載のその他部品・樹脂・民生
計器以外の車載部品、樹脂コンパウンド、民生向け照明などの寄せ集め。本社費もここに含める。
| 数量国内自動車生産台数(万台。代理の指標) | 価格1台あたり売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 800 | 1.09 | 869 | 38 |
| 10 年後 中立 | 760 | 1.46 | 1,106 | 47 |
取り方:全社売上3,279億円から上の4つ(東洋電装を除く)を引いた約870億円。取引先は多岐にわたるため、国内の自動車生産台数(約800万台)を代理の数量に置き、1台あたり約1.09万円とした。営業利益38億円は全社116億円からの差し引きで、本社費を含む。
リスクと懸念
ホンダ依存が買収でさらに深まる
ホンダは日本精機の売上の約 3 割で、大株主でもある。東洋電装は売上の 8 割以上がホンダ向けで、買収後は両方が 1 つの顧客の生産と調達方針に左右される。二輪と四輪が同時に落ちれば、分散の効果はない。
メーターが統合コンピューターに吸収される
車の電子化が進み、メーターの機能が車内の中心コンピューターに取り込まれると、専業が納めるのは画面や部品だけになる。値段は下がり、数量は完成車メーカーの内製や大手電装メーカーに移りうる。10 年の最大の構造リスクだ。
中国で日系・欧州系の車が負ける
2027 年 3 月期の計画でも中国の落ち込みを織り込んだ。地場メーカーが車の安さと開発の速さで市場を奪い、日本精機の主要顧客の車が売れないと四輪計器の数量がそのまま減る。メモリーなど部品の高騰も、価格転嫁が遅れれば利益を削る。
買収の借入と実行リスク
東洋電装の約 500 億円は全額借入で、実質無借金から純借金に変わった。利益が推定で売上の 5% 前後なら、利息が利益の相当部分を削る。統合がうまくいかなければ、ホンダ向けの取引の深まりも減損も、会社の自己資本に響く。
HUD の競争と投資回収
HUD は成長分野だが、デンソーが赤字で手放した事業を取り込むことが示すように、競争は価格に出る。約 150 億〜200 億円の成長投資と、デンソー事業の統合費用が重くなれば、四輪計器の利益率の改善が遅れる。
欧州事業の赤字が止まらない
中期計画では欧州の赤字縮小が収益改善の柱だったが、2025 年 3 月期は赤字がむしろ拡大した。固定費の削減と不採算機種の原価改善を進めているが、BMW 向けの減少が続けば、リストラ費用がかさむ。
二輪の伸びが新興国の景気に左右される
二輪計器は会社でいちばん利益率が高い。ただ需要の中心がインド、ASEAN、南米で、為替・景気・規制の影響を受けやすい。中国メーカーの新興国進出が進めば、二輪メーターにも価格競争が及ぶ。
今後の分かれ目
- 二輪計器の売上が計画(2027 年 3 月期に 380 億円)を超えて伸びたら
- 強気側に重みを移す。二輪の利益率が 11% を超えるかが見どころ。
- 東洋電装の利益率が 5% を超えて上がったら
- 買収は実を結んでいる。借入の返済が進む速度とあわせて、中立から強気側へ見直す。
- 中国の四輪計器が計画以上に落ち込んだら
- 10 年の筋書きをやや悲観側に寄せる。四輪計器の数量前提を下げる。
- ホンダが調達の方針や車種計画を大きく変えたら
- 東洋電装と二輪計器を同時に見直す。悲観側の確率を上げる。
- HUD の売上が 1,000 億円に向けて伸びたら
- 四輪計器の利益率が上がる理由として、強気側へ移す。デンソー事業の統合の損益も確かめる。
- 次の中期計画(2027 年 5 月予定)で営業利益目標が下がったら
- 会社の実行力への評価を下げ、慎重側の確率を上げる。
見ておくもの
- 二輪計器と HUD の売上の伸びと利益率
- 東洋電装の連結後の売上・利益と、借入の返済
- ホンダ向けの売上比率
- 中国と欧州の四輪計器の数量
- デンソー HUD 事業の統合後の損益(2027 年 2 月以降)
- 次の中期経営計画(2027 年 5 月予定)
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と資本コスト 8.25% から式で決めた。中立は ROE÷k(0.81)×0.9 の 7.3 割、悲観側は ROE が資本コストを下回るので上限 1÷k の 7 割前後。強気側は正当化 PER の 8.5 割。今の株価や過去の倍率は使っていない。金利は、会社が 3 月末まで純現金だったので受取利息の増えで年 5 億円ほどの利益増と見たが、10 月の買収で純有利子負債約 250 億円になるため、10 年の純利益では金融収支を年 10 億円のマイナスとして入れた。東洋電装の損益は開示が確認できず、売上の約 5% の営業利益と推定した。結果は 10 年で今の時価総額をやや下回る。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→14.05 倍・やや楽観 PER 10.1→12.95 倍・中立 PER 8.37→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25% を足して 8.75%。同じ領域では東海理化・トヨタ紡織(1.2%)と同じ水準。ホンダ依存と買収の実行リスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.25%。