結論
コーセプト・セラピューティックスは、ストレスホルモンのコルチゾールが体に及ぼす作用を抑える薬に特化した米国の製薬会社である。筆者の結論は「やや割高」。卵巣がん薬の承認によって一本足の事業から脱し始めたが、現在の時価総額は、未承認の内分泌薬と複数の新しい適応症が成功することまで相当程度期待している。
2025年の売上は7.6億ドルで、全額がクッシング症候群の治療薬コルリムとその自社認可ジェネリックによる。2026年3月には卵巣がん薬リフィオルリが米国で承認され、4〜6月期だけで約0.48億ドルを売り上げた。両事業の成長によって会社は2026年の売上見通しを11〜12億ドルへ引き上げた。さらにクッシング症候群向けレラコリラントの審査結果が2026年12月に控えている。
強みは、希少疾患の診断を広める専門営業網と、コルチゾール受容体に関する長年の研究蓄積だ。2025年は研究開発と販売網の拡大で営業利益率が約6%まで低下したが、既存薬の粗利益率は高く、新薬の販売数量が増えれば固定費を吸収できる。しかし既存薬にはテバの後発品があり、2025年の平均販売価格は製品構成の変化で低下した。希少疾患薬だから永久に高い薬価を維持できるわけではない。
2035年の中立では、コルリム系が緩やかに縮み、内分泌向け新薬とリフィオルリが利益の中心になる。売上は約27億ドル、純利益は約7.9億ドルを見込む。研究開発の成功が重なる楽観では利益が大きく伸びるが、承認の遅延、後発品、薬価競争が重なると価値は急減する。5つの筋書きの加重価値は現在換算で約66億ドルとなり、添付の基準時価総額90.5億ドルを約27%下回る。医薬品の可能性は大きいが、長期保有に必要な安全域はまだ十分ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い薬を持つことと良い株を持つことは同じではない。大切なのは、10年後も患者から必要とされ、競合の参入後も株主に残る利益を生み続けられるかである。コーセプトの研究基盤と専門医のネットワークには価値がある。リフィオルリがすでに承認されていることも、単なる開発型バイオ企業とは異なる。しかしコルリムには後発品が入り、新薬の特許にも期限がある。今の高い利益を永続する独占から生まれたものとして扱えない。
オーナー利益を見ると、2025年の純利益は約1億ドル、フリーキャッシュフローは約1.4億ドルだった。研究開発費と株式報酬を費用として差し引いた後の数字である。研究開発のかなりの部分は将来の成長投資だが、それを足し戻せば株主の利益が増えるわけではない。承認に失敗すれば回収できない支出だからだ。将来の売上が増えても、そのために毎年必要な臨床試験費用と販売費を先に払う必要がある。
会社の優れた部分は、クッシング症候群の患者を発見して継続治療につなぐ仕組みと、同じ薬理作用を異なる病気に展開できる可能性である。反面、後発品と競合する旧薬の価格決定力は弱まりつつある。既存薬の数量が増えるほど平均価格が下がる局面では、売上成長だけを見てはいけない。
筆者は、2026年から2030年に新しい内分泌薬とリフィオルリの販売が順調に伸び、研究費を吸収する展開を中立に含める。それでも現在の時価総額を支えるには、さらに複数の適応症が成功する必要がある。上振れは大きいが、臨床試験と特許訴訟の結果は読みにくい。安全域を求める長期株主には、事業の魅力より先に失敗時の損失の深さを確認する必要がある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、体内のコルチゾール作用を抑える医薬品である。コルリムは内因性クッシング症候群に伴う高血糖を治療する飲み薬で、2012年から米国で販売している。手術が効かなかった患者や手術を受けられない患者に使われる。2024年には自社の認可ジェネリックも発売し、先発薬と後発薬を合わせて患者を維持する戦略を取った。専門薬局を通じて患者に届けるため、処方医との関係、服薬管理、保険請求の支援が欠かせない。
この内分泌事業の売上は、治療を続ける患者数と患者1人当たり年間純売上で決まる。2025年9月末の有料治療患者は約3,250人と会社が説明しており、年間平均を約3,100人と推定すると、年間純売上は患者当たり約24.6万ドルとなる。これは会社が開示した患者別売上ではなく、先発薬と自社ジェネリック、投与量、服薬期間、保険値引きを混ぜた逆算値である。2025年は販売数量が37%増えた一方、平均価格は17.7%下がった。数量の増加がそのまま利益の増加にはならない。
次の柱はレラコリラントである。コルリムの有効成分ミフェプリストンと異なり、プロゲステロン受容体への作用を避ける設計で、子宮内膜などへの副作用を軽減する狙いがある。クッシング症候群向けには2025年末にFDAから追加の有効性証拠を求められたが、2026年6月に承認申請を再提出した。承認されれば既存患者の切り替えと新規患者の獲得を期待できる。ただし既存薬の売上を食う部分もあるため、全額を純増とは考えない。
卵巣がんでは同じ成分をリフィオルリとして販売している。化学療法薬ナブパクリタキセルとの併用で、プラチナ製剤に抵抗性を示す患者の生存期間を改善した。ROSELLA試験では死亡リスクを35%下げ、2026年3月に米国で承認された。発売後約3か月で1,300人超が治療を開始している。欧州では2026年9月に承認を勧告する意見が出たが、欧州委員会の正式決定は別に必要である。
研究段階には、他の婦人科がんや膵臓がん、前立腺がんなどへの適応拡大、ALS向けダズコリラント、脂肪肝炎向けミリコリラントがある。これらはまだ売上のある事業ではない。共通の研究基盤から多くの薬を生み出せる可能性がある反面、臨床試験に失敗すれば長年の費用は回収できない。2025年の研究開発費は約2.55億ドル、販売管理費は約4.49億ドルに達している。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手が容易にまねできない強みは、薬そのものの特許だけではない。コルチゾール受容体に作用する化合物を1,000種類以上発見してきた研究蓄積と、希少疾患の専門医に診断と治療の情報を届ける仕組みがある。患者が症状を改善し、医師が副作用を管理できていれば、治療薬を理由なく変更する誘因は小さい。診断されていない患者を見つける活動も、潜在市場を実際の処方に変える力となる。
薬価を決める力には実績と限界の両方がある。コルリムは2025年8月に価格を引き上げたが、同年の平均純価格は17.7%下がった。安い認可ジェネリックの比率が上がったためである。テバは2024年に競合ジェネリックを発売し、2026年2月には特許非侵害の判決が控訴審でも維持された。これは既存薬の独占がすでに完全ではないことを示す。新薬の特許が2030年代後半まで残っていても、承認された競合薬や将来の特許争いを無視できない。
資本効率は過去に高かった。2018〜2021年の営業利益率は30%台で、近年のROEもおおむね20%台だった。しかし2025年には営業利益率が約6%まで落ち、研究開発費と販売体制の増強が利益を圧迫した。新薬の承認後に患者数が増え、販売管理費が売上より遅く伸びれば、追加投資の利回りは資本コストを上回る。逆に、別の適応症を次々に試験しながら売上が育たなければ、高い過去のROEは再現できない。
リフィオルリは生存期間の改善を第3相試験で示しており、単なる研究構想より確かな資産となった。ただし卵巣がんではアッヴィのエラヒアなどが競合し、治療対象や安全性によって処方が分かれる。会社全体を強い独占企業と呼ぶには早い。堀は内分泌では一部削られ、がん領域ではこれから形成される段階である。
AIエージェント代替の指定業態には当たらない。収益は人月や席課金ではなく医薬品の販売から生まれる。ただしAIによって競合の創薬や臨床試験が速まる可能性はあり、特許と臨床上の優位を長く維持できる保証はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
クッシング症候群は、過剰なコルチゾールが糖尿病、高血圧、肥満、筋力低下などを引き起こす疾患である。米国の内因性クッシング症候群の有病率は人口100万人当たり約40〜70人という推計があり、患者数にすると1万数千〜2万人台となる。クッシング病だけの市場調査では、米国の診断済み患者を2024年に約2万人とする推計もある。定義と診断率が異なるため、これらをそのまま足すことはできない。多くの患者は手術が第一選択となり、全員が長期服薬の対象でもない。
市場拡大の鍵は患者の発見である。会社のCATALYST試験では、血糖管理が難しい糖尿病患者1,057人のうち23.8%に高コルチゾール血症が見つかった。これは選別された試験集団の割合であり、全糖尿病患者に掛けて市場規模を膨らませるべきではない。2026年10月の糖尿病診療の合意文書でも難治例への検査が推奨され、診断が増える方向は明確になった。一方、陽性の患者が全員高価な受容体拮抗薬を必要とするわけではない。
競合する治療薬は、レコルダティのイスツリサとシグニフォー、ゼリス・バイオファーマのレコルレブ、テバのミフェプリストン後発品である。2025年のイスツリサの世界売上は約2.63億ユーロ、レコルレブの売上は約1.39億ドルだった。コーセプトの内分泌売上7.6億ドルは大きいが、地域も適応症も異なるため、これらの合計から厳密な世界シェアは求められない。患者数で見れば、同社の約3,000人強は米国の診断済み患者の一部にすぎない。10年後の数量は診断の普及と競合への流出を別々に考える必要がある。
卵巣がんでは、プラチナ抵抗性になり新しい治療を始める候補者が米国で年間約2万人、欧州でも同程度いるという会社の推計がある。この約4万人を広い患者母集団とし、承認条件、先行治療、医師の選択で実際の対象を絞る。米国ではリフィオルリがすでに承認され、欧州でも審査が進む。ただしアッヴィのエラヒアは葉酸受容体α陽性患者を対象とする強い競合であり、抗体薬物複合体などの新薬も続く。卵巣がん市場全体を独占できる想定は採らない。
2026年10月に公表されたBELLA第2相試験では、リフィオルリと化学療法、ベバシズマブの3剤併用で有望な結果が示された。ただし95人の非比較試験で、別試験との数値比較から新しい標準治療の優位を確定することはできない。今後の第3相試験と適応拡大が分かれ目となる。
業界ノートでは希少疾患薬の中立成長を数量年5%、価格年2%としている。コーセプトでは、旧コルリムは後発品で価格が低下し、新薬は上市初期に患者数が急増するため、一律の成長率は当てはめない。10年後は患者を増やす力が残っても、成熟薬の純価格が物価3.5%に追いつかないと見る。
資本政策と M&A
配当はなく、自社株買いが株主還元の中心である。2021年には約3億ドル、2023年には約1.5億ドル、2025年には約1.7億ドルの買い戻しを行った。2025年の株式報酬費用は約0.8億ドルであり、買い戻し額のすべてが既存株主への正味還元になったわけではない。2024年に承認された2億ドルの買い戻し枠は、2026年6月末時点で残り約0.11億ドルとなった。追加の長期還元額や配当性向について、会社から数字の約束はない。
研究開発は自前の化合物が中心で、大型買収に頼って製品群を増やしてきた会社ではない。コルリムが生んだ現金を研究、専門医への営業、製薬体制に振り向けた判断は、リフィオルリの承認という成果につながった。ただし2025年には営業利益を大きく上回る研究開発費を使っており、今後も臨床試験が増えると資金需要は大きい。2026年6月末の現金・有価証券は約5.45億ドルだった。
経営陣と取締役の実質保有株式は2026年7月時点で約20%と開示されている。長期の研究開発と利害が一致する半面、外部株主が経営の判断を変えにくい。買収防衛的な定款条項もあり、他社による買収提案が必ず株主に届くとは限らない。調査時点で非公開化や買収の合意済み案件は確認できない。将来の買収を既存事業の価値に先取りして加えていない。
筆者は新薬の利益が増えた後の資本配分を重視する。増分投資の利回りが高い領域には再投資し、患者数が十分に増えない開発計画からは撤退すべきである。還元の予測はすべて、株式報酬や将来の増資払い込みを差し引いた正味の金額とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
コーセプトは、1つの薬で稼ぐ希少疾患企業から、複数の承認薬を持つ専門製薬会社に変わり始めている。リフィオルリは卵巣がんの第3相ROSELLA試験で生存期間を明確に改善し、発売直後から患者が集まった。がん領域は内分泌より患者数が多く、米国で年間約2万人、欧州でも同程度のプラチナ抵抗性卵巣がん患者が次の治療を必要とする。承認条件に合う患者を着実に獲得すれば、この薬だけで長期的に10億ドルを超える売上を維持できる可能性がある。
BELLA試験は、ベバシズマブとの3剤併用にも可能性があることを示した。次の試験で優位が確認されれば、現在の承認条件より広い患者に使われる。さらに子宮内膜がん、膵臓がん、前立腺がんにも同じ薬理作用を応用できる。1つの研究基盤が複数の市場に届くなら、個々の薬をゼロから開発する会社より資本効率が高くなる。
内分泌では、レラコリラントがクッシング症候群向けに承認されれば、既存のコルリムにはない副作用面の特徴で新しい患者を増やせる。CATALYSTで高コルチゾール血症が従来考えられていたより見つかりやすいことが示され、検査の普及も追い風となる。従来の希少疾患市場が、未診断患者の発見によって広がる可能性は大きい。
製造原価が比較的小さい経口薬では、患者数が増えると追加売上の多くを研究開発と株主還元に回せる。2025年の利益率低下は、将来の販売網を先に整えた結果と解釈できる。開発薬が数本当たり、販売管理費の伸びが落ち着けば、営業利益率は再び30%台に戻り、株主に戻る現金は大幅に増える。現在の株価は成長の可能性をすべて表しているわけではない。
慎重な見方
コルリムの強みは、すでに後発品によって削られ始めている。2025年の販売数量は37%増えたのに、平均販売価格は17.7%下がった。2024年からテバが後発品を販売し、2026年2月には特許非侵害の判断が控訴審で維持された。これは特許の数だけで独占を保証できないことを示す。レコルダティのイスツリサやゼリスのレコルレブも患者を獲得しており、診断が増えた市場をコーセプトが独り占めすることはできない。
次世代薬レラコリラントのクッシング症候群向け申請は、2025年12月にFDAから承認を拒まれた。会社は追加解析を提出したが、再審査でも有効性の証拠が不足すると判断される可能性がある。承認が遅れれば、既存薬の価格下落を新薬で補う計画が崩れる。承認されたとしても、患者の切り替えはコルリムからの売上移転を伴い、全額が新規売上になるわけではない。
リフィオルリの卵巣がんでの承認は本物の成果だが、プラチナ抵抗性卵巣がんの市場は競争が厳しい。アッヴィのエラヒアや新しい抗体薬物複合体、治験中の薬が続く。治療費が高く、投与期間が短い患者も多いため、発売直後の開始患者数を長期の継続収益と同一視できない。BELLA試験の追加結果も、非比較試験である以上、新たな承認を保証しない。
会社は高い研究開発費と販売費を負担している。2025年は売上が伸びても営業利益率が約6%まで下がった。ALSやMASH、他のがんに広げる試験が失敗すれば、その費用だけが残る。テバとの反トラスト訴訟や保険者との訴訟は、損害賠償と販売方法の変更という別の危険を持つ。株式報酬も増えており、自社株買いの額ほど既存株主の取り分が増えない。研究の成果は魅力的でも、10年先の利益を高い確信で約束できる会社ではない。
どちらに重みを置いたか
すでに承認されたリフィオルリと、内分泌市場における専門営業網は強い見方を支える。一方、レラコリラントの内分泌向け承認は未確定で、旧薬への後発品競争と継続的な研究開発費の重さは慎重な見方を支える。したがって確率は楽観とやや楽観を合わせて33%、中立を30%、やや悲観と悲観を合わせて37%とした。同じ領域の開発型バイオより上振れの余地を認めるが、既存薬の価格低下と法的リスクが同時に現れる危険も厚く見る。加重した本質価値は約66億ドルで、現在の時価総額から約27%低い。結論はやや割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 118.88 ドル125 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 15.05 ドル16 億ドル)。 今の値に割り戻すと 62.58 ドル66 億ドル、今との差 −22.8%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 334.14 ドル352 億ドル | 36.06 ドル38 億ドル | +356.4% | +17.8% | 44.42 ドル47 億ドル |
| やや楽観 | 21% | 218.51 ドル230 億ドル | 25.62 ドル27 億ドル | +201.0% | +12.6% | 51.27 ドル54 億ドル |
| 中立 | 30% | 97.36 ドル103 億ドル | 16.13 ドル17 億ドル | +39.9% | +3.7% | 34.05 ドル36 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 14.22 ドル15 億ドル | 1.90 ドル2 億ドル | −80.1% | −15.5% | 4.03 ドル4 億ドル |
| 悲観 | 12% | 1.11 ドル1 億ドル | 0.19 ドル0 億ドル | −98.4% | −34.8% | 0.16 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 118.88 ドル125 億ドル | 15.05 ドル16 億ドル | +65.1% | +5.5% | 133.93 ドル141 億ドル |
今の株価時価総額 81.12 ドル85 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% 楽観:内分泌の次世代薬と複数のがん適応が成功 利益 23 億ドル · PER 15.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 334.14 ドル352 億ドル
内分泌向けレラコリラントが2026年末に承認され、その後も臨床データを積み上げている。検査の普及でクッシング症候群の治療患者が増え、旧コルリム系は後発品と競争しながらも4,500人を維持する。新薬は8,000人に浸透し、従来の薬で治療できなかった患者も取り込む。レコルダティとゼリスの製品は残るが、同社の研究成果と医師の関係が競争上の優位になる。
リフィオルリは米国と欧州で使用され、卵巣がん患者の年間治療開始数が2万4,000人に増える。BELLAの結果を別の比較試験で確認し、ベバシズマブとの併用や治療線の拡大が進む。アッヴィのエラヒアとは患者集団を分け合いながらも、新薬が卵巣がんの主要な治療選択肢となる。さらに子宮内膜がんや膵臓がんへの適応が増え、その他の固形がんで年間1万4,000人が治療を受ける。
ALSとMASHでも少なくとも一部の開発が成功する。複数製品の販売によって専門営業と研究の固定費が吸収され、営業利益率は約37%になる。GAAP純利益は22.5億ドルとなり、10年間の純利益累計115億ドルから正味38億ドルを株主へ戻す。自己資本は83.5億ドル、余剰現金は10億ドルとなる。事業の堀が複数領域に広がり、長期の成長余地が残る筋書きである。
- コルリムと自社認可ジェネリック:数量 4,500(年間平均の有料治療患者数(人))× 価格 210,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 8 億ドル。患者数は増えるが後発品により2025年より低単価。
- レラコリラントの内分泌用途:数量 8,000(年間平均治療患者数(人))× 価格 220,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 18 億ドル・営業利益 16 億ドル。承認後に既存患者を切り替え、未診断患者の獲得が進む。
- リフィオルリの卵巣がん治療:数量 24,000(年間治療開始患者数(人))× 価格 100,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 22 億ドル。欧州と新たな併用療法で対象患者が広がる。
- その他の固形がん適応拡大:数量 14,000(年間治療開始患者数(人))× 価格 120,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 14 億ドル。複数の固形がん適応が承認される。
- ALS・MASH等の研究薬:数量 30,000(年間治療患者数(人))× 価格 25,000(患者1人当たり年間の加重平均純売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 5 億ドル。MASHの数量拡大にALSの希少疾患売上が加わる。
倍率:kは8.5%。事業用自己資本は83.5−10.0=73.5億ドル、事業ROEは22.5÷73.5=30.6%。堀は通常の残存割合1/2なので、RONIC=8.5%+0.5×(30.6%−8.5%)=19.6%。2035年以降のgは3.5%で、内訳は患者母集団の実質増加約1%、診断普及とシェア変化約0.5%、純価格と製品構成約2%。正当化PERは来年利益基準で約16.4倍、当年利益換算で約17.0倍。その90%に当たる15.3倍を採用する。GAAP純利益は株式報酬を費用として差し引き、余剰現金利息の二重計上を避ける。時価総額=(22.5−10×0.014)×15.3+10=352.11億ドル。
確率:リフィオルリは承認済みであり、がん市場への展開には実績がある。しかし内分泌向けレラコリラントの承認、他の固形がんへの適応拡大、ALS・MASHの開発が複数同時に成功する必要がある。全条件がそろう可能性は限定的として12%とする。
やや楽観 21% やや楽観:内分泌と卵巣がんが成長し、追加適応は一部成功 利益 15 億ドル · PER 14.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 218.51 ドル230 億ドル
レラコリラントの内分泌向け承認が得られ、既存患者の一部が副作用面の違いを評価して新薬へ移る。旧コルリム系はテバの後発品に押されるが、治療患者4,000人を維持する。新薬は6,000人に使われ、患者の発見が進んだ分だけ内分泌市場全体が拡大する。競合のイスツリサとレコルレブも伸びるため、純価格には一定の値引きが残る。
リフィオルリは年間1万8,000人に使われる。米国での販売が定着し、欧州の承認も得るが、エラヒアなどの競合薬が市場を分け合う。BELLAの追加試験で適応が広がるものの、期待した患者の全員が治療対象にはならない。その他の固形がんでは年間8,000人が治療を受ける。ALSかMASHでは一部の成果が得られるが、巨大な売上の柱にはならない。
製品が複数に分かれたことで営業基盤の効率が改善する。研究開発費も高水準で維持するが、売上ほどは増えない。全社売上は約45億ドル、営業利益は約18.8億ドル、純利益は15.4億ドルとなる。10年間の累計純利益75億ドルから正味27億ドルを還元し、自己資本は54.5億ドルとなる。新薬の成長が株主価値を大きく引き上げるが、すべての適応症が成功するほどの優位は得られていない。
- コルリムと自社認可ジェネリック:数量 4,000(年間平均の有料治療患者数(人))× 価格 180,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 6 億ドル。患者維持と引き換えに平均純価格が下がる。
- レラコリラントの内分泌用途:数量 6,000(年間平均治療患者数(人))× 価格 205,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 12 億ドル・営業利益 11 億ドル。新薬が内分泌の主力に育つ。
- リフィオルリの卵巣がん治療:数量 18,000(年間治療開始患者数(人))× 価格 88,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 14 億ドル。米国と欧州で安定した治療選択肢となる。
- その他の固形がん適応拡大:数量 8,000(年間治療開始患者数(人))× 価格 100,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 7 億ドル。追加のがん適応の一部が承認される。
- ALS・MASH等の研究薬:数量 10,000(年間治療患者数(人))× 価格 20,000(患者1人当たり年間の加重平均純売上(ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。ALSまたはMASHで限定的な事業化に成功する。
倍率:事業用自己資本54.5−7.0=47.5億ドルに対するROEは15.4÷47.5=32.4%。k8.5%、通常の堀の残存割合1/2からRONICは約20.5%。gは3.5%で、患者母集団の実質増加約1%、シェアの純増約0.5%、純価格と製品構成の増加約2%から求める。正当化PERは当年利益換算で約17.2倍となる。追加適応の競争と薬価の圧力を考慮し、その85%の14.59倍を採用する。GAAP純利益を使い、現金の利息を二重計上しない。時価総額=(15.4−7×0.014)×14.59+7=約230.26億ドル。
確率:すでに承認された卵巣がん薬が患者を増やし、内分泌向けレラコリラントも承認される展開は十分考えられる。ただし新しいがん適応とALS・MASHのすべてが成功するわけではないため、楽観より高い21%とする。
中立 30% 中立:卵巣がんと内分泌の新薬が育つが、旧薬は縮小 利益 8 億ドル · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 97.36 ドル103 億ドル
内分泌向けレラコリラントは承認されるが、発売後は競合薬との違いを患者と医師に示す必要がある。コルリム系はテバの後発品や自社の新薬への切り替えで単価が下がり、患者3,500人、年間純価格15.5万ドルとなる。新薬レラコリラントは4,200人に使われる。診断普及で治療患者の母集団は増えるが、レコルダティとゼリスも市場を拡大しており、シェアを取り続けることはできない。
リフィオルリは米国と欧州で年間1万3,000人に使われる。現在の承認された患者集団で普及が進み、追加の併用療法も一部で成功する。エラヒアや新たな抗体薬物複合体との競争を受け、患者当たり純売上は7.8万ドルとなる。その他のがんでは一部の適応が承認されるが、ALSとMASHは大きな利益源にはならない。
全社売上は約26.8億ドルとなる。研究開発と販売管理の共通費は年間12.75億ドルまで増えるものの、売上の伸びに対して固定費の増加が緩やかになり、営業利益率は約37%へ回復する。GAAP純利益は7.9億ドルとなる。期間中の純利益累計42億ドルから、株式報酬を差し引いた正味17億ドルを株主に還元し、自己資本は31.5億ドルへ増える。事業の質は現在より改善するが、完全な独占ではなく、新しい薬の特許期限が近づけば再び開発が必要になる。
- コルリムと自社認可ジェネリック:数量 3,500(年間平均の有料治療患者数(人))× 価格 155,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 4 億ドル。患者数は横ばい圏だが、後発品と新薬への切り替えで単価が低下する。
- レラコリラントの内分泌用途:数量 4,200(年間平均治療患者数(人))× 価格 190,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 7 億ドル。承認後に一定のシェアを獲得する。
- リフィオルリの卵巣がん治療:数量 13,000(年間治療開始患者数(人))× 価格 78,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 9 億ドル。米欧の対象患者約4万人のうち、承認条件に合う約1万3,000人へ浸透する。
- その他の固形がん適応拡大:数量 3,500(年間治療開始患者数(人))× 価格 85,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 2 億ドル。追加適応の一部だけが事業化に成功する。
- ALS・MASH等の研究薬:数量 1,500(年間治療患者数(人))× 価格 20,000(患者1人当たり年間の加重平均純売上(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。ALS・MASHの寄与は小さい。
倍率:事業用自己資本31.5−4.0=27.5億ドルに対する事業ROEは7.9÷27.5=28.7%。k8.5%、堀の残存割合1/2なのでRONIC=8.5%+0.5×(28.7%−8.5%)=約18.6%。2035年以降のgは3.0%で、患者母集団の実質増加約1%、シェア変化はおおむね0%、純価格と製品構成の増加約2%から求める。正当化PERは当年利益換算で約15.7倍。特許の期限と追加適応の研究開発費を踏まえ、その80%の12.57倍を採用する。GAAP純利益に株式報酬を含め、現金の受取利息は控除してから余剰現金を加える。時価総額=(7.9−4×0.014)×12.57+4=約102.60億ドル。
確率:卵巣がん薬は承認済みであり、長期売上の柱になる確からしさが高い。内分泌向け新薬も再審査に進んだが、価格競争と既存薬からの切り替えがあるため、利益を過大に見込まない。研究中の追加適応は一部しか成功しない落としどころを最大確率の30%とする。
やや悲観 25% やや悲観:旧薬が値下がりし、新薬の普及も鈍る 利益 2 億ドル · PER 8.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 14.22 ドル15 億ドル
内分泌向けレラコリラントは承認が遅れ、発売されても医師と患者への普及に時間がかかる。コルリム系は後発品との価格競争に巻き込まれ、年間治療患者2,400人、純価格12万ドルに縮小する。新しい内分泌薬は1,800人に使われるが、競合のイスツリサとレコルレブが診断普及の利益を相当程度獲得する。コーセプトの専門営業網は残るものの、かつての価格決定力は戻らない。
卵巣がんでは、リフィオルリが承認された患者集団に使われ続けるが、新たな抗体薬物複合体や併用療法が普及する。年間治療開始患者は7,000人、治療期間中の純売上は6万ドルにとどまる。追加のがん適応は少数の患者に限定され、ALSとMASHは事業化に失敗する。研究計画は縮小するが、専門営業と臨床試験の費用はすぐには消えない。
全社売上は約10.7億ドルとなり、営業利益は約2億ドル、純利益は1.65億ドルにとどまる。初期の成長と後半の停滞を合わせて10年間の純利益累計は17億ドルだが、正味の還元は2億ドルに抑え、自己資本は21.5億ドルとなる。稼ぐ力が資本コストにほぼ届かなくなり、蓄積した自己資本を高い価値で評価できない状態である。
- コルリムと自社認可ジェネリック:数量 2,400(年間平均の有料治療患者数(人))× 価格 120,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 2 億ドル。テバ後発品と低価格の治療選択肢がシェアを奪う。
- レラコリラントの内分泌用途:数量 1,800(年間平均治療患者数(人))× 価格 165,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 2 億ドル。承認遅延と競合で患者の切り替えが進まない。
- リフィオルリの卵巣がん治療:数量 7,000(年間治療開始患者数(人))× 価格 60,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 3 億ドル。競合抗がん剤に押され、数量と純価格が伸び悩む。
- その他の固形がん適応拡大:数量 1,000(年間治療開始患者数(人))× 価格 60,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。適応拡大は小規模なものだけ成功する。
- ALS・MASH等の研究薬:数量 0.0(年間治療患者数(人))× 価格 0.00(患者1人当たり年間の加重平均純売上(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。ALS・MASHの承認が得られず売上は発生しない。
倍率:事業用自己資本21.5−2=19.5億ドルに対するROEは1.65÷19.5=8.46%で、k8.5%にほぼ等しい。2035年以降のgは1.0%に低下し、市場数量のわずかな増加がシェア低下で相殺され、純価格もほぼ横ばいとなる。資本コストを稼げない事業のPER上限は1÷8.5%=11.76倍である。競争が続き新規投資の利回りが低いため8.0倍とする。事業の純利益による価値は約19.1億ドルで、現金2億ドルを足した稼ぐ力の上限は約21.1億ドル。床の資産3億ドルより大きく、時価総額14.98億ドルはこの上限を超えない。
確率:テバの後発品がすでに販売され、既存薬の平均単価は下がっている。レラコリラントの承認に遅れが出たり、卵巣がん市場で競合薬が伸びたりする可能性は大きい。承認済みリフィオルリの売上は残るため、全面崩壊とは分けて25%を置く。
悲観 12% 悲観:後発品と承認失敗で事業が大幅に縮小 利益 0 億ドル · PER 8.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1.11 ドル1 億ドル
内分泌向けレラコリラントはFDAから追加試験を求められ、費用と時間を使っても承認されない。コルリム系ではテバの後発品とレコルダティ、ゼリスの治療薬が患者を奪う。治療患者は1,300人まで減り、1人当たりの純価格は10万ドルになる。診断が広まっても、コーセプトの製品に患者が集まるとは限らない。かつての専門医との関係は残るが、値上げできる独占は失われる。
リフィオルリは既承認薬として一部の患者に使われ続ける。しかし卵巣がんの新しい抗体薬物複合体や別の併用療法に押され、年間治療開始患者は2,000人にとどまる。追加の固形がん適応は承認されず、ALSとMASHの開発も失敗する。会社は研究所と販売組織を縮小し、収益性の低い開発計画から撤退する。
売上は約2.2億ドル、営業利益は約0.12億ドルに落ち込む。純利益は0.08億ドルと小さい黒字を維持するが、資本を増やして成長する力はほぼ失う。10年間には初期の営業黒字がある一方、承認失敗後の研究費、訴訟対応、開発資産の減損による赤字が重なる。累計純損失を2.5億ドルとし、初期の正味還元0.2億ドルを差し引くと自己資本は3.8億ドルになる。事業は存続するが優良企業ではなくなり、残る価値は小さな利益と換金可能な資産に限られる。
- コルリムと自社認可ジェネリック:数量 1,300(年間平均の有料治療患者数(人))× 価格 100,000(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 1 億ドル。後発品に敗れ、治療患者と単価が大幅に減る。
- レラコリラントの内分泌用途:数量 0.0(年間平均治療患者数(人))× 価格 0.00(患者1人当たり年間純売上(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。内分泌用途は未承認のまま事業化できない。
- リフィオルリの卵巣がん治療:数量 2,000(年間治療開始患者数(人))× 価格 45,000(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 1 億ドル・営業利益 1 億ドル。承認薬として残るが、競合新薬に市場を奪われる。
- その他の固形がん適応拡大:数量 0.0(年間治療開始患者数(人))× 価格 0.00(患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。追加がん適応の開発は失敗する。
- ALS・MASH等の研究薬:数量 0.0(年間治療患者数(人))× 価格 0.00(患者1人当たり年間の加重平均純売上(ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。ALS・MASHの試験に失敗し開発を中止する。
倍率:事業用自己資本は3.8−0.6=3.2億ドルであり、事業ROEは0.08÷3.2=2.5%に低下する。k8.5%を大きく下回るため、PERは1÷k=11.76倍を超えてはならない。患者数の縮小と低価格化が続くので2035年以降のgは0%とする。追加投資に超過利益を認めず、PER8.0倍とする。現金の受取利息を除いた事業の純利益は0.08−0.6×0.014=0.0716億ドル。稼ぐ力の上限は0.0716÷0.085+0.6=約1.44億ドルで、売れる資産の床は1.0億ドル。時価総額1.17億ドルは両者の大きい方を超えない。
確率:内分泌向けレラコリラントが承認されず、テバの後発品が患者を奪い、リフィオルリも競合薬に押される構造的な敗北である。2026年に卵巣がん薬が承認された事実は残るため、すべての薬が消える可能性は低いが、複数の失敗が重なる12%の筋書きとする。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
コルリムと自社認可ジェネリック
クッシング症候群に伴う高血糖の治療薬。患者数は診断の普及で増えるが、後発品との競争で患者当たり純売上が低下する。
| 数量年間平均の有料治療患者数(人) | 価格患者1人当たり年間純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,100 | 245,600 | 8 | 7 |
| 10 年後 中立 | 3,500 | 155,000 | 5 | 4 |
取り方:添付factsの2025年売上約7.6億ドルを、2025年9月末の有料治療患者約3,250人という会社説明から推定した年間平均3,100人で割り、患者当たり約24.6万ドルと逆算した。会社は患者別の年間純売上を開示していない。数量には投与期間と投与量の変動も含む。2025年の売上原価約0.13億ドルを控除した製品粗利益をop_okuとし、共通の研究開発費と販売管理費は全社調整で扱う。2025年は錠数が37%増えたが、先発薬と認可ジェネリックの構成変化で平均純価格が17.7%低下した。
レラコリラントの内分泌用途
次世代のコルチゾール受容体調節薬。クッシング症候群の既存患者の切り替えと、新規に診断された患者の治療を狙う。
| 数量年間平均治療患者数(人) | 価格患者1人当たり年間純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4,200 | 190,000 | 8 | 7 |
取り方:2025年末時点で内分泌用途は未承認で販売実績がないため、数量・実現単価・売上はすべて0とする。2025年12月のFDA追加証拠要求後、2026年6月に申請を再提出し、審査期限は2026年12月17日。将来の価格はコルリムの推定患者当たり純売上を起点に、副作用面の差別化と競争薬による値引きを考慮した独自推定であり、会社の提示価格ではない。
リフィオルリの卵巣がん治療
プラチナ抵抗性卵巣がんに対するレラコリラントとナブパクリタキセルの併用治療。2026年3月に米国で承認された。
| 数量年間治療開始患者数(人) | 価格患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 13,000 | 78,000 | 10 | 9 |
取り方:2025年は未発売のため実績0。2026年4〜6月期の実績は、治療開始患者1,300人超、売上0.4756億ドルである。単純に売上を開始患者で割ると約3.7万ドルだが、発売初期の不完全な治療期間を含むため、1治療コースの純価格ではない。将来の価格は投与期間、保険償還、競合治療を考慮して推定する。市場の数量上限は米国年間約2万人と欧州同程度の新規治療候補を基準とし、実際の承認条件に合う患者だけを取り込む。
その他の固形がん適応拡大
子宮内膜がん、膵臓がん、前立腺がんなどに対して、レラコリラントや他のコルチゾール受容体調節薬を試験する開発群。
| 数量年間治療開始患者数(人) | 価格患者1人当たりの治療期間中の純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3,500 | 85,000 | 3 | 2 |
取り方:2025年時点で該当する承認製品の売上はなく、数量と価格は0。TRIDENT、STELLA、その他の試験は市場性の検証段階にある。将来の数量は既存のがん患者全体ではなく、薬効が確認され承認される適応症のうち実際に処方される患者を想定する。将来の患者当たり純売上6万〜12万ドルは、複数のがん治療での投与期間と保険償還を考えた分析上の仮定であり、実績価格ではない。
ALS・MASH等の研究薬
ALS向けダズコリラント、脂肪肝炎向けミリコリラントなど。患者数は大きくなる可能性があるが、適応拡大には追加の有効性試験が必要である。
| 数量年間治療患者数(人) | 価格患者1人当たり年間の加重平均純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 0.00 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,500 | 20,000 | 0 | 0 |
取り方:2025年には販売製品がなく、数量、実現単価、売上は0。MASHの患者母集団は大きいが、治療候補には既存薬や開発中の新薬が多い。ALSは患者数が少なく希少疾患薬の単価を設定し得るが、第2相試験は主要評価項目を達成していない。将来単価2万〜2.5万ドルは、MASHの低単価・多数患者とALSの高単価・少数患者を合わせた分析上の仮定である。承認されない筋書きでは売上を0とする。
リスクと懸念
後発品競争とコルリムの薬価下落
テバは2024年からミフェプリストン後発品を販売し、2026年2月の控訴審でも特許非侵害の判断が維持された。自社の認可ジェネリックも単価を押し下げている。2025年の錠数は37%増えたが平均純価格は17.7%下がった。数量が増えても価格低下がそれを上回れば利益は減る。2030年代に特許がさらに満了すれば、この危険は強まる。
内分泌向けレラコリラントの承認不確実性
2025年12月にFDAは有効性の追加証拠を求め、承認申請を認めなかった。2026年6月の再提出後、審査期限は12月17日となったが、再度の追加試験要求や承認遅延はあり得る。新薬が販売できなければ、コルリムの後発品による価格低下を埋める計画が弱くなる。承認された場合でも、旧薬からの患者移行による売上の食い合いが生じる。
卵巣がん治療における競争と適応制限
リフィオルリは第3相で生存期間を改善し承認されたが、投与対象は先行治療などの条件で限定される。アッヴィのエラヒアや新しい抗体薬物複合体が別の患者集団を獲得する可能性がある。2026年のBELLAは有望な結果だが単群試験で、別試験と直接比較した数値だけで適応拡大を確実視できない。新しい併用療法が失敗すれば市場の拡大余地は狭まる。
臨床試験の失敗と研究開発費の回収
ALS向けダズコリラントの第2相試験は主要評価項目を達成していない。生存期間に有望な兆候があっても、追加の比較試験で再現できる保証はない。MASH向けミリコリラントや他の固形がん向け開発薬も同様である。2025年の研究開発費は約2.55億ドルに達しており、試験を拡大した後に失敗すれば、数年間の利益と現金が失われる。
特許訴訟・反トラスト訴訟とガバナンス
テバはコルリム市場に関する反トラスト訴訟を起こしており、保険会社側の訴訟もある。会社は争っているが、損害賠償、和解費用、販売条件の変更が生じる可能性を排除できない。経営陣と取締役の保有割合も高く、買収防衛条項によって外部株主が経営判断に影響しにくい。個別の訴訟結果を資本コストに上乗せせず、悲観の利益と確率に反映した。
株式報酬と自社株買いの効率
2025年の自社株買いは約1.7億ドルだったが、同年の株式報酬費用は約0.8億ドルだった。研究者と販売人員の採用に伴う株式報酬が増えれば、買い戻しが発行済株数を減らすとは限らない。利益がまだ小さい時期に高い株価で買い戻すと、研究開発へ投じる現金も減る。評価では株式報酬をGAAP費用とし、還元額も正味で扱う。
専門薬局と保険償還への依存
2025年には専門薬局の供給能力の制約と切り替えに伴う混乱があり、需要に十分応えられなかった。希少疾患薬は患者支援、保険の事前承認、薬の継続配送が販売数量を左右する。販売体制を拡張しても、保険者が支払条件を厳しくすれば患者数と純価格の双方が悪化する。高額薬への政策的な価格圧力も、物価並みの値上げを妨げる。
今後の分かれ目
- 2026年12月17日の審査でレラコリラントのクッシング症候群向け承認が得られたら
- 中立とやや楽観の内分泌患者数を維持し、承認後の処方開始数と旧薬からの移行率を確認する。新規患者の増加が旧薬の売上減少を十分に上回れば、やや楽観の確率を上げる。
- FDAが追加の第3相試験を要求し、内分泌向け承認が数年遅れたら
- レラコリラントの内分泌売上を大きく引き下げ、研究開発費の追加を織り込む。やや悲観と悲観の確率を上げ、旧コルリムの後発品による価格下落を重く見る。
- リフィオルリの年間売上が10億ドルを超え、競合薬の参入後も維持されたら
- 卵巣がんにおける数量と販売価格の実績が中立を裏付ける。追加のがん適応が承認されれば、やや楽観と楽観の確率を引き上げる。
- テバとの反トラスト訴訟で多額の支払いまたは販売方法の制限が決まったら
- 確定した損害額と将来の営業費用を反映し、内分泌の利益率を引き下げる。損失が現金で賄えないほど大きい場合は、株式発行による資金調達も想定する。
- BELLAに続く比較試験が成功し、ベバシズマブとの併用や他の婦人科がんで承認が広がったら
- リフィオルリとその他の固形がんの治療開始患者数を増やす。単群試験の結果だけでは変更せず、承認と保険償還の実績を確認してから価値を見直す。
- コルリム系の販売数量が増えても平均純価格の下落率が年10%を超える状態が続いたら
- 診断の普及が利益に結びついていないと判断する。旧薬の将来売上と利益率を下げ、新薬への切り替えによる純増分だけを評価する。
- ALSまたはMASHの後期臨床試験で有効性が再現され、販売承認が得られたら
- 現在は小さく見積もっている研究薬の売上を増やす。ただし患者母集団、実際に治療を受ける割合、保険償還単価を確認し、疾病全体の市場規模をそのまま売上にはしない。
見ておくもの
- 2026年12月17日の内分泌向けレラコリラントFDA審査結果
- コルリムと自社認可ジェネリックの販売数量増加率、平均純価格の変化率
- レラコリラント承認後の新規治療患者数とコルリムからの移行率
- リフィオルリの四半期売上、治療開始患者数、患者当たり純売上
- 欧州でのリフィオルリ正式承認と保険償還、欧州販売の立ち上がり
- BELLA関連の追加試験、TRIDENT、STELLAなどの比較試験結果
- ALSの後期臨床試験とMASHのMONARCH試験結果
- テバとの反トラスト訴訟、保険会社側訴訟の進展
- 研究開発費・販売管理費の対売上比率、GAAP営業利益率
- 自社株買い額から株式報酬と増資払い込みを差し引いた正味還元額
倍率と資本コストの決め方
評価は現在の株価や市場のPERから始めず、コルリム、内分泌向けレラコリラント、リフィオルリ、その他のがん、ALS・MASHの5群について治療患者数と患者当たり純売上を先に考えた。2025年に販売したのはコルリム系だけで、未承認薬の2025年売上は0とした。2035年の中立では売上約26.8億ドル、GAAP純利益7.9億ドルとし、事業ROE・RONIC・k8.5%・g3%から求めた正当化PERの80%を採用した。今の市場の倍率や過去の谷の倍率は使っていない。2026年10月23日の基準時価総額90.5億ドルと比較したのは最後である。10月23日の大幅な株価下落について確定した事業上の原因は確認できず、価格変動そのものを将来利益に反映していない。5つの筋書きの時価総額と正味還元を10年間、資本コスト8.5%で現在価値に戻した加重価値は約65.95億ドルで、基準時価総額との差は約−27%となる。悲観の時価総額1.17億ドルは、稼ぐ力約1.44億ドルと換金可能資産1.0億ドルの大きい方を超えない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に事業の質による+0.5%を加え、資本コストを8.5%とする。株価のβ、現在のPER、同業の市場評価は使用しない。2025年に利益率は低下したが黒字であり、2026年6月末には十分な現金と有価証券を持つ。継続企業の前提に疑いがある状態ではないため存続危機の上乗せは行わない。製品ごとの承認・競争・訴訟リスクは数量、価格、利益率、確率で扱う。