結論
エランコは、犬猫向けの寄生虫予防薬や皮膚炎薬と、牛・鶏・豚向けの医薬品やワクチンを世界で販売する動物薬大手である。筆者の結論は割高だ。新薬の販売拡大は確認できるものの、買収で膨らんだ自己資本に見合うGAAP利益を長期にわたって稼げるか、まだ十分な証拠がない。
2025年の売上は47.1億ドル、台帳基準の営業利益は2.5億ドル、純損失は2.3億ドルだった。純有利子負債は36億ドルと重い。ただし事業の流れは変わり始めている。2026年4~6月期の売上は前年同期比10%増、GAAP純利益は0.54億ドルの黒字となった。犬の皮膚炎薬ゼンレリアと寄生虫薬クレデリオ・クアトロが、獣医師の採用と競合からのシェア獲得を進めている。
この成長は単なる期待ではない。ゼンレリアは米国の約1万8,000診療施設で使われ、クレデリオ・クアトロは米国の動物病院の半数超に浸透した。会社は2026年の売上見通しを50.9~51.4億ドルへ引き上げた。これまで研究と買収に投じてきた資金が、ようやく製品売上として戻り始めている。
それでも、売上の伸びと株主価値の伸びは別物だ。2025年の自己資本65.5億ドルの大部分は買収に由来するのれんと無形資産に支えられる。製品の販売網には価値があるが、買収代金を十分に回収できなければ増分資本利益率は資本コストに届かない。2035年の中立では売上約80億ドル、純利益8.1億ドルまでの回復を想定するが、自己資本利益率は約7.3%にとどまる。
5つの筋書きの確率を反映し、資本コスト8.5%で現在価値に直した本質価値は約40.8億ドルとなる。基準時価総額111.8億ドルとの差は約マイナス64%である。動物薬の需要は10年先も残るし、新薬の成功による上振れも大きい。しかし今の評価は、利益率の回復と資本配分の改善をかなり前払いしている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エランコを10年間必要とされる事業と、10年間持ち続けて高い収益を得られる株式に分けて考える。前者については肯定的だ。犬猫はこれからも病気になり、家畜には感染症の予防が欠かせない。承認薬と製造品質、獣医師の信頼を築くには時間がかかる。事業そのものがAIや新しい販売手段で消えるとは考えにくい。
ただし、競争上の強みが長続きすることと、株主が高い利回りを得られることは同じではない。エランコには大きな買収の歴史があり、取得したブランドや販売網に払った価格が重い。過去ののれん減損と低いROEは、資本配分の成績がまだ十分でない証拠である。新薬が好調でも、利益をさらに成長させるために研究開発、製造設備、販売促進へ多くの資本を投じ続ければ、株主の手元には思ったほど現金が戻らない。
一方、改善の余地も大きい。2026年の新薬販売は実績を伴い、借金も減少傾向にある。過去の買収無形資産の償却負担は時間とともに軽くなる見込みだ。これらが営業利益率とGAAP純利益を改善させるなら、エランコはようやく規模の利益を回収する段階に入る。
筆者が要求したいのは、売上高成長率ではなく増分投下資本利益率の改善である。中立の2035年ROEは7%台で、株主資本コスト8.5%を下回る。新製品の成長が資本コストを超える利益に変わり、借金を減らした後に正味の還元が始まるまでは、強い堀を持つ成熟企業と同じ値段を払う理由が薄い。優れた製品を持つ会社だが、株主価値を生み出す企業への転換はまだ道半ばである。
何で稼ぐ会社か
エランコの本業は、病気を予防・治療する動物薬を開発し、製造し、販売することである。約200のブランドを持ち、90か国以上で販売する。人の医薬品とは異なり、犬猫の飼い主、獣医師、畜産農家、食肉生産企業などが実質的な支払い手となる。販売は動物病院、卸売業者、一般小売、電子商取引、農場への直接販売にまたがる。
ペットヘルスは2025年売上23.0億ドルで、全社の49%を占めた。寄生虫予防のセレスト、アドバンテージ、アドタブ、クレデリオ系列に加え、犬の皮膚炎薬ゼンレリアが新しい稼ぎ頭である。さらに2026年には抗IL31抗体のベフレナが米国で発売された。皮膚炎は繰り返し治療する病気なので、獣医師からの信頼を得れば患者の継続使用が売上の安定につながる。ただしゾエティスのアポクエル、サイトポイント、シンパリカ・トリオとの競争は激しい。
畜産向けは2025年売上23.6億ドルだった。牛向け11.25億ドル、鶏向け8.58億ドル、豚向け3.79億ドルに分かれる。牛では寄生虫、呼吸器疾患、飼料効率、乳牛の生産性を扱い、エクスペリオールやボヴェアーなどを売る。鶏ではワクチンと腸管衛生、豚では感染症予防や栄養改善が中心である。生産者が買う理由は、薬を使うことで死亡率や飼料費を抑え、肉や乳の生産効率を改善できるからだ。
両事業の経済性は違う。ペット薬は新製品の効果を医師と飼い主に納得してもらえれば比較的高い付加価値を生む。畜産薬は1頭当たりの支出が厳しく管理され、治療の効果を生産性で示さなければ売れない。大規模農場への販売では、価格だけでなく安定供給や複数製品をまとめて提供する能力が効く。
会社は会計上、動物薬を単一の報告セグメントとして管理している。製品別の営業利益は開示していないため、本分析の事業別利益は推定である。契約製造・その他の売上は2025年に0.53億ドルだったが、その一部には将来受取権を売却済みのロイヤルティーが含まれる。会計上の売上を、そのまま株主に帰属する現金と考えてはいけない。
優良さと弱いところ
エランコの堀、つまり競合が簡単にまねできない強みは、製品の承認、販売網、獣医師との関係、複数の動物種を扱う品ぞろえである。動物薬は安全性と有効性の試験が必要で、製造設備にも品質管理の負担がある。この参入障壁は10年後も残る。90か国以上の販売網と約200ブランドを持つことも、小規模な新興企業にはない強みだ。
堀が深まり始めた証拠もある。2026年4~6月期のペット事業は数量が前年同期比9%、価格が2%伸びた。ゼンレリアは米国のJAK阻害薬市場でシェアを前年比9ポイント伸ばし、一部の欧州市場では40%超のシェアに達した。クレデリオ・クアトロも動物病院への採用を広げている。研究成果が実際の数量とシェアに結びついた点は評価できる。
しかし、値決め力はまだ限定的である。2025年と2026年上半期の全社的な価格上昇率は約2%で、想定物価上昇率3.5%を下回る。新製品は売れても、古い寄生虫薬や畜産薬は競争にさらされる。顧客には複数メーカーの薬を併用する選択肢があり、エランコの製品に一度切り替えれば他社へ戻れないわけではない。
資本効率は最大の弱点だ。2025年の自己資本利益率はマイナス3.5%、過去10年の中央値もマイナス2.3%だった。2020年のバイエル動物薬買収で大きな販売網を獲得した一方、借金、のれん、無形資産償却も増えた。2025年末ののれんは47.79億ドル、その他無形資産は34.08億ドルであり、資産を多く保有していても現金を高い利回りで生み出せているとは言い難い。
堀の強さは普通と判定する。ゾエティスの2025年売上は約94.7億ドル、GAAP純利益は約27億ドルで、規模と利益の厚さに明確な差がある。エランコも新薬でこの差を縮められるが、今の段階で同じ強い堀を認めるのは早い。なお、動物薬・ワクチン・抗体という物理的な製品が価値の中心であり、AIエージェントによる人月業務や席課金ソフトの代替類型には該当しない。AIは研究開発や販売の効率を変えるが、承認薬そのものの需要を直接置き換えるものではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の動物薬市場は、景気だけでなくペットの高齢化、治療の高度化、食肉需要、疾病予防によって拡大する。エランコの市場資料では、世界のペット薬市場は2026年時点で約180億ドル、畜産薬市場は約250億ドルとされる。合計約430億ドルの市場に対し、2025年のエランコ売上は約47億ドルで、全体シェアは概算11%となる。市場の定義と基準年が完全には一致しないため、これは厳密な監査済みシェアではない。
ペット向けの主要競合はゾエティス、メルク・アニマルヘルス、ベーリンガーインゲルハイムである。ゾエティスの2025年ペット売上は65.87億ドルで、180億ドル市場に対して約37%に相当する。メルクの同事業は約24.58億ドルで約14%、エランコは約13%となる。ゾエティスは皮膚炎薬のアポクエルとサイトポイント、寄生虫薬のシンパリカ・トリオを持ち、エランコは後発の新製品でこの地位を崩そうとしている。
皮膚炎は魅力的な市場だ。エランコによれば米国の犬の皮膚炎治療市場だけで約13億ドルある。慢性的なかゆみを繰り返す犬には継続治療が必要で、薬効と安全性の差が処方を左右する。ベフレナの投与間隔は6~8週間で、競合製品に対する利便性を訴求できる。ただし新薬がすべて高い価格を維持できるわけではなく、獣医師は安全性と費用の両方を比較する。
畜産薬ではメルクが2025年に約38.96億ドル、ゾエティスが約27.64億ドルの売上を持つ。エランコの23.62億ドルに対し、メルクは買収した水産事業を含む大きな競合である。牛・鶏・豚の内訳市場は公表資料だけでは確定できないため、合計250億ドルの市場を牛115億ドル、鶏80億ドル、豚55億ドルと仮に分ける。この推定ではエランコの各市場シェアは約10%、11%、7%となる。
今後10年はペット向けで実質数量の増加が続く一方、畜産では地域差が大きい。鶏肉需要は比較的伸びやすいが、豚はアフリカ豚熱などの疾病、牛は飼料価格と畜産農家の採算に左右される。抗生物質使用の抑制は予防ワクチンに追い風となる半面、既存製品には逆風となる。ボヴェアーのような環境対策製品は、補助金よりも農場自身の経済効果が普及を決める。
中立ではペット市場の実質需要が10年で約1.25倍になり、エランコの数量シェアが約13%から14%へ上がると見る。畜産では牛・鶏がわずかにシェアを伸ばし、豚はやや失う。業界ノートの動物薬売上年6%成長に近いが、エランコの価格転嫁を物価より低めに見て、全社の売上成長は年5%強にとどめる。
資本政策と M&A
資本配分の歴史は、規模の拡大が必ずしも株主利益につながらないことを示している。エランコは2018年に上場し、2019年にイーライリリーから完全に独立した。2020年にはバイエルの動物薬事業を約69億ドルで買収し、現金約52億ドルと新株約17億ドルを使った。ペット薬の販売網は大きくなったが、買収後は負債が膨らみ、減損や償却が続いた。
2024年には水産事業をメルクに約12.94億ドルで売却し、借入返済を進めた。2025年には将来の一部ロイヤルティーをブラックストーン系に2.95億ドルで売却した。この取引は短期の資金を生むが、将来の現金収入を先取りするもので、通常の営業キャッシュフローと同じ価値ではない。2026年4月には牛向け製品を強化するためAHVインターナショナルの買収を完了した。支払済み0.76億ドルに加え、将来の確定支払い1億ドルと最大1.4億ドルの条件付き支払いがある。
現在の優先順位は配当や自社株買いではなく、借金の返済、新薬の販売、製造効率の改善である。会社は当面の配当を予定しておらず、2025年時点で大きな自社株買い枠の数字の約束も確認できない。2025年の株式報酬は約0.7億ドルであり、正味の株主還元はほとんどない。
2025年12月の投資家説明会では、売上の有機成長率を年率一桁台半ば、調整後EBITDA成長率を一桁台後半とする方針を示した。2026~2028年の累計フリーキャッシュフローは10億ドル以上、純負債倍率は2027年に3倍未満、長期で2.0~2.5倍を目指す。2030年までのエランコ・アセンド計画は調整後EBITDAで年2.0~2.5億ドルの費用削減を狙う。正式な長期配当性向や自社株買い額の約束はない。今後は買収よりも、既存製品から得た現金を借金の削減と高利回りの研究開発に振り向けられるかが問われる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新薬の成功が、長く停滞していたエランコの経済性を変え始めている。ゼンレリアは発売から短期間で米国の多数の動物病院に広まり、JAK阻害薬市場でシェアを獲得した。クレデリオ・クアトロも診療施設への浸透を加速させている。これは古いブランドの値上げだけによる成長ではなく、実際に獣医師が新しい製品を選んだ結果である。
さらにベフレナは、長期作用型の皮膚炎治療抗体として販売が始まった。ゼンレリアとベフレナを合わせれば、経口薬と注射薬の両方でゾエティスのアポクエル、サイトポイントに挑める。寄生虫薬ではセレストやアドバンテージの一般小売網と、新しい動物病院向け製品の両方を使える。ペット向け事業の世界シェアが現在の約13%から10年で17%台まで伸びても不自然ではない。
畜産向けにも強みがある。エクスペリオールは2025年に2億ドル超の売上となり、牛向け事業の成長を支えた。AHVの買収で乳牛や反芻動物の健康管理製品が加わり、既存の販売網を使った拡販が可能になる。鶏向けワクチンや栄養製品も拡大すれば、畜産事業は安定した収益基盤となる。
業績改善の効果は売上以上に大きい。2025年の営業利益率は台帳基準で5%台にとどまったが、買収償却の減少、製造拠点の合理化、高利益率の新薬比率上昇が重なれば、2035年には20%台の営業利益率も射程に入る。ゾエティスほど高い利益率に届かなくても、現在の低い水準からの回復幅は大きい。製造・研究基盤にすでに投じた資本が生む利益は急増し、借入返済後には自社株買いの余地も生まれる。
慎重な見方
新薬の好調は認めるが、10年先に同じ競争優位が続く保証はない。ゼンレリアはゾエティスのアポクエルと争う薬であり、医師が薬効だけでなく長期安全性やワクチン接種との関係を比較する。米食品医薬品局は2025年に致死的なワクチン誘発疾患に関する警告文言を削除したものの、ワクチンへの免疫応答が不十分になるリスクと投与中断の注意は残した。安全性の条件が処方の制約となる可能性は無視できない。
ベフレナもゾエティスのサイトポイントという定着した競合に挑戦する。抗体薬は製造が難しく、需要が強くても生産能力が追いつかないと販売機会を失う。2026年の発売時点で同社は供給増強を進めていた。新薬を増やすほど、研究開発と製造設備への追加投資も必要になる。
畜産向けはさらに競争が厳しい。メルクとベーリンガーインゲルハイムは幅広いワクチンと医薬品を持ち、大規模農場には調達を集約する力がある。豚熱や鳥インフルエンザが広がれば、薬の需要が増える前に家畜の飼育頭数そのものが減ることもある。ボヴェアーの普及は政策支援の弱まりで予定より遅く、環境関連製品の将来売上を過大に見積もるべきではない。
財務は最も深刻な問題だ。2020年のバイエル動物薬買収は規模を拡大したが、その後の自己資本利益率は低い。2025年末にはのれんと無形資産の合計が自己資本を上回っていた。2023年には10億ドル超ののれん減損も計上した。調整後EBITDAが改善しても、借金、償却、将来ロイヤルティーの売却、株式報酬を無視すれば株主利益を大きく見誤る。新製品が競合に追いつかれる前に十分な資金を回収できなければ、10年後も低い資本効率にとどまる。
どちらに重みを置いたか
需要の持続性では強気の見方が優勢である。動物薬市場は長く続き、2026年の新製品の伸びも実際の数量とシェアに表れている。しかし株主価値の判断では慎重な見方を重く取る。2025年までの資本効率は低く、利益率の改善が株主にどこまで届くか不確実だからだ。
確率は楽観10%、やや楽観20%、中立35%、やや悲観24%、悲観11%とし、慎重側を合計35%とした。これは事業の消滅を予測するものではない。新薬の競争、製造負担、買収の回収不足によって、事業が残っても資本コスト以下の利益しか生まない可能性を表す。中立の改善が実現しても現在の評価には安全域が乏しく、総合判定は割高となる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 18.15 ドル90 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 0.28 ドル1 億ドル)。 今の値に割り戻すと 8.22 ドル41 億ドル、今との差 −64.4%、 期待の年率 −2.2%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 47.94 ドル238 億ドル | 3.02 ドル15 億ドル | +121.0% | +8.6% | 5.10 ドル25 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 28.38 ドル141 億ドル | 1.41 ドル7 億ドル | +29.2% | +2.7% | 5.96 ドル30 億ドル |
| 中立 | 35% | 16.53 ドル82 億ドル | 0.20 ドル1 億ドル | −27.4% | −3.2% | 5.86 ドル29 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 5.77 ドル29 億ドル | −1.01 ドル−5 億ドル | −79.4% | −13.7% | 1.14 ドル6 億ドル |
| 悲観 | 11% | 4.69 ドル23 億ドル | −1.21 ドル−6 億ドル | −84.9% | −15.7% | 0.38 ドル2 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 18.15 ドル90 億ドル | 0.28 ドル1 億ドル | −20.1% | −2.2% | 18.43 ドル92 億ドル |
今の株価時価総額 23.06 ドル114 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:新薬が主要領域で勝ち、規模の利益を回収する 利益 18 億ドル · PER 13.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 47.94 ドル238 億ドル
2035年、ペット事業はゼンレリアとベフレナで皮膚炎治療の地位を築き、クレデリオ・クアトロも寄生虫薬の主要製品となる。ペット向けの実効数量は2025年比1.70倍、平均単価は1.44倍となり、売上は56億ドルに達する。世界市場が実質で拡大することに加え、ゾエティスやメルクからシェアを獲得する。ペット市場の数量シェアは約17%まで高まる。
牛向けではAHVとエクスペリオールが普及し、鶏向けでも新しいワクチンと栄養関連製品が伸びる。畜産薬の売上は約48億ドルとなり、全社売上は約105億ドルへ拡大する。製造能力の拡張が成功し、既存販売網による規模の利益も現れる。調整後ではなく台帳基準の営業利益率は約24%、GAAP純利益は17.8億ドルになる。
買収償却の負担が徐々に減り、借入返済による金利費用も軽くなる。2035年までのGAAP純利益累計は86億ドル、正味の株主還元は15億ドルとなる。これは自社株買い約25億ドルから株式報酬による持分希薄化相当約10億ドルを差し引いた想定であり、会社が約束した枠ではない。借金を大幅に減らしてから還元を再開できる。新製品への増分投資が資本コストを超える収益を生み、堀は現在より広がる。
- ペットヘルス:数量 39.1(2025年固定価格で評価した世界ペット薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.44(製品構成を含む平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 56 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場の実質拡大に加え、シェア約13%から約17%へ上昇。新薬構成比上昇により単価は物価以上。
- 牛・反芻動物向け:数量 16.4(2025年固定価格で評価した世界の牛・反芻動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.38(牛向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 23 億ドル・営業利益 7 億ドル。AHV、エクスペリオール、疾病予防薬が成功し、牛市場のシェアを大きく伸ばす。
- 鶏向け:数量 13.3(2025年固定価格で評価した世界鶏向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.37(鶏向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 18 億ドル・営業利益 4 億ドル。鶏肉需要の増加とワクチンのシェア獲得が重なる。
- 豚向け:数量 5.2(2025年固定価格で評価した世界豚向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.32(豚向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。疾病リスクに対応する予防製品が浸透し、競争上の地位が改善。
- 契約製造・その他:数量 0.6(2025年固定価格の契約製造・その他取引量(億ドル換算))× 価格 1.16(取引当たり実現単価指数(2025年=1))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約製造の成長とロイヤルティー受取権の回復を限定的に反映。
倍率:事業ROEは17.8÷136.5=13.04%。買収による成長が必要な会社なので、過去ののれんを分母から恣意的に除かない。k=8.5%、moatはnormal、残存割合1/2よりRONIC=10.77%。10年目以降のg=4.0%は、実質市場数量増約1%、シェア維持・小幅拡大約0%、価格上昇約3%の合計である。正当化PER=(1−0.04÷0.1077)÷(0.085−0.04)×1.04=約14.53倍。新薬で利益の質が改善するが競争は残るため、この上限の約92%で13.37倍とする。GAAP純利益17.8億ドルに掛け、時価総額は237.99億ドル。調整後利益や無形資産償却の再加算は用いない。
確率:ゼンレリア、クレデリオ・クアトロ、ベフレナが競合から大きくシェアを奪い、次の研究開発品も成功する。畜産でもAHV統合と新製品が広く普及し、収益性改善と借入返済が同時に進む展開。ただしゾエティスの強い既存製品と販売網を大きく崩す必要があるため、確率は10%にとどめる。
やや楽観 20% やや楽観:新薬の定着と合理化が進み、利益率が大幅改善 利益 12 億ドル · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28.38 ドル141 億ドル
2035年、ペットの皮膚炎と寄生虫薬で新製品の販売が続き、エランコの世界シェアは15%台まで上がる。ゾエティスが優位を保つものの、ゼンレリア、クレデリオ・クアトロ、ベフレナは主要な選択肢として定着する。既存のアドバンテージやセレストの縮小も新薬で補う。ペット事業は約49億ドルの売上となる。
畜産では牛・鶏が着実に伸びる。AHVの統合は成功し、エクスペリオールが収益を支える一方、ボヴェアーの普及は限定的にとどまる。豚は数量を増やすが、競争のため高い利益率にはならない。全社売上は約92億ドル、営業利益は18.55億ドル、GAAP純利益は12.4億ドルとなる。研究開発費を維持しながらも、製品構成の改善と工場合理化で収益性が高まる。
2026年から2035年までのGAAP純利益累計は67億ドル、正味の還元は7億ドルとする。買収関連償却の減少と借金返済による利払い軽減は進むが、新たな研究開発や設備投資に資金を要する。仮定上、自社株買い16億ドルから株式報酬相当9億ドルを差し引いた範囲で還元できる。資本効率は改善するものの、ゾエティスに匹敵する堀にはならない。
- ペットヘルス:数量 35.3(2025年固定価格で評価した世界ペット薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.39(製品構成を含む平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 49 億ドル・営業利益 17 億ドル。新薬の採用拡大により数量1.53倍、単価1.39倍。ペット市場シェアは15%台。
- 牛・反芻動物向け:数量 15.1(2025年固定価格で評価した世界の牛・反芻動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.35(牛向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 20 億ドル・営業利益 6 億ドル。牛向け疾病予防とAHV製品の販売が想定以上に伸びる。
- 鶏向け:数量 12.2(2025年固定価格で評価した世界鶏向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.33(鶏向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。世界鶏肉生産の拡大を上回るシェア獲得。
- 豚向け:数量 4.7(2025年固定価格で評価した世界豚向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.29(豚向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。感染症予防の利用は増えるが価格競争は続く。
- 契約製造・その他:数量 0.6(2025年固定価格の契約製造・その他取引量(億ドル換算))× 価格 1.17(取引当たり実現単価指数(2025年=1))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約製造は小幅成長。
倍率:ROE=12.4÷125.5=9.88%。k8.5%、通常の堀で残存割合1/2のRONICは9.19%。長期g4.0%は実質需要約1.1%、シェアの小幅増約0.2%、価格約2.7%に分解した。正当化PERは約13.05倍であり、新薬の競争と取得資産の更新負担を考慮して上限の約87%で11.36倍とする。12.4億ドル×11.36倍=140.86億ドル。GAAP純利益を使い、償却の足し戻しはしない。
確率:既存のBig 6製品の大半が定着し、追加パイプラインの一部が承認される展開。新薬によるシェア獲得とコスト削減は2026年の実績で裏付けられつつあるが、競合との差は依然大きいため、楽観より現実的な成功確率を20%とした。
中立 35% 中立:売上は年5%強で伸びるが、資本効率はなお低い 利益 8 億ドル · PER 10.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 16.53 ドル82 億ドル
2035年、エランコは動物薬大手として存続し、ペット事業を中心に売上を伸ばす。世界のペット薬市場の実質需要は10年で約1.25倍、エランコの数量シェアは約13%から14%へ上がる。新製品は育つが、ゾエティスのアポクエル、サイトポイント、シンパリカ・トリオも強い地位を守る。ペット事業の数量は2025年比1.38倍、平均単価は1.34倍となり、売上は42.53億ドルになる。
牛向けはAHVの買収と既存の疾病予防薬が伸び、鶏向けも市場とともに増加する。豚向けは価格競争でシェアをやや失う。全社売上は約80.1億ドルで、10年間の名目成長率は年約5.4%。研究開発と販売促進を続けながら製造効率を改善し、営業利益は12.4億ドル、GAAP純利益は8.1億ドルに回復する。
利益率の改善は、2025年の大きな再編費用が平常化すること、2030年までの費用削減、古い買収無形資産の償却負担が徐々に減ることに依存する。2026年以降の利益は段階的に回復し、10年間のGAAP純利益累計を47億ドルと見込む。自社株買い約10億ドルから株式報酬相当9億ドルを差し引いた正味の還元は1億ドルにとどまる。大半の現金を借金返済と成長投資に使い、自己資本は111.5億ドルとなる。ROEは約7.3%で資本コストを下回るため、売上成長がそのまま高い株主価値を生む段階には届かない。
- ペットヘルス:数量 31.7(2025年固定価格で評価した世界ペット薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.34(製品構成を含む平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 43 億ドル・営業利益 13 億ドル。世界市場の実質需要約1.25倍とシェア約12.8%から14.1%への上昇。単価は物価1.41倍を下回る。
- 牛・反芻動物向け:数量 13.6(2025年固定価格で評価した世界の牛・反芻動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.30(牛向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 18 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質市場成長とAHV製品による小幅シェア獲得。単価は飼育農家の採算制約で物価以下。
- 鶏向け:数量 11.0(2025年固定価格で評価した世界鶏向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.28(鶏向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。鶏肉需要の増加とワクチン普及。価格上昇は物価を下回る。
- 豚向け:数量 4.2(2025年固定価格で評価した世界豚向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.24(豚向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。市場数量は増えるが、メルクなどとの競争で実効シェアは約6.9%から6%台前半へ低下。
- 契約製造・その他:数量 0.5(2025年固定価格の契約製造・その他取引量(億ドル換算))× 価格 1.18(取引当たり実現単価指数(2025年=1))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。ロイヤルティーの会計上の認識と受取現金の違いを考慮し小さく扱う。
倍率:GAAP純利益8.1億ドル÷自己資本111.5億ドル=ROE7.26%。買収に依存した成長歴があり、のれんを成長に不要な資産として除外しない。k8.5%、moat normalでRONIC=8.5%+1/2×(7.26%−8.5%)=7.88%。長期g3.5%はペット・家畜市場の実質数量約1.0%、シェア約0%、製品価格約2.5%から出したもので、ROEから逆算していない。正当化PER=(1−0.035÷0.0788)÷(0.085−0.035)×1.035=約11.51倍。ROEが資本コスト以下なので1÷kの上限も守る。継続的な買収更新費用と利益の質を考慮し、式の約88%で10.13倍とした。8.1億ドル×10.13倍=82.05億ドル。市場のPERは参照していない。
確率:動物薬市場の長期成長、ペット新薬の販売実績、畜産での一定の競争力を認める一方、強い価格決定力や大幅なシェア獲得は前提にしない。2026年の実績を出発点に利益率の改善を認めるが、買収資産の回収には慎重である。事業が存続しながら平均的な収益性に近づく筋書きを中心の35%とした。
やや悲観 24% やや悲観:新薬の競争が激しく、売上成長が利益に結びつかない 利益 4 億ドル · PER 7.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5.77 ドル29 億ドル
2035年、ペット向け市場は拡大しているものの、ゾエティスとメルクが製品改良と新薬発売を続け、エランコのシェアは低下する。ゼンレリアの採用は一巡し、ベフレナもサイトポイントから十分に患者を奪えない。セレストやアドバンテージの旧製品は低価格品との競争が厳しくなる。ペット事業の売上は約31億ドルで、物価上昇を考えれば実質的な成長は乏しい。
牛向けではエクスペリオールとAHVが一定の売上を保つが、ボヴェアーの普及は進まない。鶏は市場成長の一部を取り込むものの、メルクやベーリンガーインゲルハイムとの競争で単価を上げられない。豚は病気による飼育頭数の変動と価格競争に苦しむ。全社売上は約60億ドルまで伸びるが、営業利益は6.79億ドル、GAAP純利益は3.65億ドルにとどまる。
借金は一部返済できるが、買収で取得した製品と販売網に見合う利益が生まれない。製造施設と研究開発を簡単には縮小できず、固定費が利益を圧迫する。期間のGAAP純利益累計は18億ドル、株式報酬相当7億ドルに対し自社株買いは2億ドルとし、正味の還元はマイナス5億ドルとなる。自己資本は88.5億ドル、ROEは約4.1%に低下する。新薬を持つ会社ではあるが、利益を生み出す堀は現在より狭くなる。
- ペットヘルス:数量 26.0(2025年固定価格で評価した世界ペット薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.19(製品構成を含む平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 31 億ドル・営業利益 8 億ドル。市場成長の大部分を競合に奪われ、実効数量シェア低下。単価は物価を大きく下回る。
- 牛・反芻動物向け:数量 11.3(2025年固定価格で評価した世界の牛・反芻動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.20(牛向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 14 億ドル・営業利益 3 億ドル。牛向け需要は残るが、AHVの拡販効果と価格転嫁は限定的。
- 鶏向け:数量 9.7(2025年固定価格で評価した世界鶏向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.16(鶏向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 11 億ドル・営業利益 2 億ドル。需要成長に対してシェア低下。値上げの一部しか通らない。
- 豚向け:数量 3.5(2025年固定価格で評価した世界豚向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.12(豚向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。豚熱、農場の統合、価格競争で数量が縮小。
- 契約製造・その他:数量 0.4(2025年固定価格の契約製造・その他取引量(億ドル換算))× 価格 1.00(取引当たり実現単価指数(2025年=1))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約製造が縮小し単価も停滞。
倍率:ROE=3.65÷88.5=4.12%でk8.5%を大きく下回る。残存割合1/2のRONICは約6.31%。長期gは、実質数量横ばい、シェア約マイナス0.5%、価格約3%から2.5%とする。正当化PER上限は約10.32倍だが、資本コスト以下の増分投資が続く可能性と利益の不安定さから約76%の7.84倍とする。3.65億ドル×7.84倍=28.62億ドル。中立の10.13倍より低い。
確率:ペット市場そのものは成長するが、ゼンレリア、ベフレナ、寄生虫薬の競争が激しくなりシェアを失う。畜産向けでも価格転嫁が進まず、固定費負担が残る展開。市場の成長と会社の利益成長が乖離する可能性が高いため、24%を配分する。
悲観 11% 悲観:主力新薬が競争に負け、買収資産の価値が傷む 利益 −1 億ドル · PBR 0.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 4.69 ドル23 億ドル
2035年、エランコの新薬群は発売当初の勢いを保てなかった。ゾエティスの皮膚炎薬と長期作用型製品、メルクの寄生虫薬が強い地位を維持する。ゼンレリアは安全性とワクチン接種の注意事項が処方上の制約となり、ベフレナも製造費と競争の負担が残る。ペット事業の数量シェアは約8%へ下がり、売上は約19億ドルまで縮小する。
牛向けではAHVとエクスペリオールへの投資が十分に回収できず、鶏と豚でも価格競争が続く。全社売上は約39億ドルとなり、2025年の水準を下回る。工場閉鎖や研究開発費削減を進めても、売上の縮小に対して固定費が重い。営業利益は約3億ドルに残るが、利払いと再編費用を含むGAAP純損失は0.7億ドルとなる。
2026年の初期改善後、製品の競争力低下と減損で赤字が生じ、2035年までのGAAP純利益累計はマイナス6億ドルとなる。配当や自社株買いを行う余裕がなく、株式報酬相当のマイナス6億ドルを正味還元として反映する。自己資本は65.5億ドルにとどまるが、その帳簿額には回収が難しいのれんが含まれる。事業を完全清算するより、残る承認薬・ブランド・販売網を他社へ譲渡する道を選ぶ可能性が高い。株主価値は大きく損なわれ、もはや優良企業とは言えない。
- ペットヘルス:数量 17.7(2025年固定価格で評価した世界ペット薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.08(製品構成を含む平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 19 億ドル・営業利益 4 億ドル。シェアは約13%から約8%へ低下。価格上昇は10年間でわずか8%。
- 牛・反芻動物向け:数量 8.5(2025年固定価格で評価した世界の牛・反芻動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.06(牛向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。AHVの投資回収が難航し、牛向けシェアを失う。
- 鶏向け:数量 7.8(2025年固定価格で評価した世界鶏向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.06(鶏向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。競争と価格抑制で実質売上が縮小。
- 豚向け:数量 2.7(2025年固定価格で評価した世界豚向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア)× 価格 1.00(豚向け製品の平均販売単価指数(2025年=1))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。飼育頭数の不安定化と低価格競争で数量が落ちる。
- 契約製造・その他:数量 0.2(2025年固定価格の契約製造・その他取引量(億ドル換算))× 価格 1.00(取引当たり実現単価指数(2025年=1))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。契約製造が縮小し利益貢献を失う。
倍率:2035年のGAAP純利益が赤字のためPERは使用しない。現在の帳簿自己資本65.5億ドルにはのれん47.79億ドルとその他無形資産34.08億ドルが含まれ、帳簿全額が株主の回収可能価値ではない。過去の市場PBRの底値は参照せず、残存する承認薬・商標・製造設備・販売網を継続企業として売却する価値を保守的に考える。現時点の自己資本に対し0.35倍を適用し、65.5億ドル×0.35=23.27億ドル。別途推定した税後資産処分価値18億ドルを上回る。
確率:ゼンレリアとベフレナが競争・安全性・販売制約で伸び悩み、寄生虫薬も他社の新しい製剤に置き換えられる。畜産事業の数量シェアと価格も低下し、さらなる減損や資産売却が必要になる構造的な敗北である。市場自体は存続するため倒産を中心に置かず、11%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ペットヘルス
犬猫向けの寄生虫予防、皮膚炎、ワクチン、疼痛治療。ゼンレリア、クレデリオ・クアトロ、ベフレナ、セレスト、アドバンテージなどが中心。
| 数量2025年固定価格で評価した世界ペット薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア | 価格製品構成を含む平均販売単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 23.0 | 1.00 | 23 | 6 |
| 10 年後 中立 | 31.7 | 1.34 | 43 | 13 |
取り方:2025年売上23.0億ドルは会社10-Kの開示値。2026年9月の会社資料が世界ペット薬市場を約180億ドルとするため、2025年価格の市場規模を近似して実効シェア12.8%を逆算した。数量23.0は180億ドル×12.8%の固定価格需要に相当する。会社は製品ごとの年間処方数、販売用量、正味単価を網羅的に開示していないため、物理的な投薬数ではなく市場の実質需要×シェアを数量代理変数とする。2026年Q2にはゼンレリアが約1万8,000米国診療施設に浸透し、クレデリオ・クアトロは米国動物病院の半数超で採用された。営業利益5.75億ドルは製品別の販売直接費を配賦した推定寄与額であり会社の開示値ではない。2025年の全社営業利益との差は共通費・償却等の調整で扱う。市場規模出典:https://investor.elanco.com/news-releases/news-release-details/expanding-tick-and-itch-season-supports-momentum-elanco
牛・反芻動物向け
肉牛と乳牛の疾病予防、寄生虫、飼料効率、乳房炎予防など。エクスペリオール、ボヴェアー、AHV製品を含む。
| 数量2025年固定価格で評価した世界の牛・反芻動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア | 価格牛向け製品の平均販売単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11.3 | 1.00 | 11 | 2 |
| 10 年後 中立 | 13.6 | 1.30 | 18 | 4 |
取り方:2025年牛向け売上11.25億ドルは会社10-Kの開示値。世界畜産薬市場約250億ドルを牛115億ドル、鶏80億ドル、豚55億ドルに分けるのは分析上の推定であり、会社公表の種別市場規模ではない。牛市場115億ドルに対する数量シェアは約9.8%。数量は市場規模×シェアによる固定価格需要で、治療頭数や投与回数の実測値ではない。2025年のエクスペリオール売上は2億ドル超で前年比約80%増。2026年4月に取得したAHVは基準年の数量には含めず、将来の数量増とシェア獲得に反映する。営業利益は製品別費用を配賦した推定値。
鶏向け
ブロイラー・採卵鶏向けのワクチン、感染症予防、腸管衛生、栄養関連製品。
| 数量2025年固定価格で評価した世界鶏向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア | 価格鶏向け製品の平均販売単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8.6 | 1.00 | 9 | 1 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 1.28 | 14 | 3 |
取り方:2025年鶏向け売上8.58億ドルは会社10-Kの開示値。世界鶏向け市場を約80億ドルとするのは、世界畜産薬市場250億ドルから牛・豚を推定分離した分析上の仮定である。この仮定に対するエランコのシェアは10.7%。生産羽数、ワクチン接種回数、製剤別単価は開示されていないので、実質市場需要×数量シェアを代理数量とする。2025年は売上前年比8%、2026年上半期はワクチン等の需要が伸びた。営業利益1.12億ドルは推定の直接寄与利益である。
豚向け
豚の感染症予防、ワクチン、栄養・腸管衛生、飼育効率改善製品。
| 数量2025年固定価格で評価した世界豚向け動物薬需要(億ドル)×エランコの実効数量シェア | 価格豚向け製品の平均販売単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.8 | 1.00 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4.2 | 1.24 | 5 | 1 |
取り方:2025年豚向け売上3.79億ドルは会社10-Kの開示値。世界の豚向け動物薬市場を55億ドルとするのは分析上の推定で、実効シェアは約6.9%。販売量の物理単位は非開示のため、市場の2025年固定価格需要×シェアを代理数量とする。アフリカ豚熱による飼育頭数の変動と、大手農場の価格交渉力を考慮する。2026年Q2の有機・為替一定成長率はマイナス4%。営業利益0.30億ドルは推定値である。
契約製造・その他
他社向け製造とロイヤルティー収入。売却済みの将来ロイヤルティーの会計上の認識を含む。
| 数量2025年固定価格の契約製造・その他取引量(億ドル換算) | 価格取引当たり実現単価指数(2025年=1) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.5 | 1.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 1.18 | 1 | 0 |
取り方:2025年の開示売上0.53億ドルを基準とする。このうち0.19億ドルはブラックストーン系に将来受取権を売却したロイヤルティーであり、GAAPでは売上認識されるが会社に同額の現金が残るわけではない。取引件数や単価の内訳は非開示のため、固定価格の取引額を数量代理変数とする。2033年までの権利売却期間とその後の収益回復可能性を含めて、10年先の売上は小さく見積もる。営業利益は推定値である。
リスクと懸念
ゾエティスとのペット薬競争
ゼンレリア、ベフレナ、クレデリオ・クアトロの成長は、既存の有力製品からシェアを奪うことに依存する。ゾエティスはアポクエル、サイトポイント、シンパリカ・トリオなどを持ち、獣医師との長い取引関係を築いている。新製品の初期採用が一巡した後にエランコのシェアが頭打ちになれば、ペット向けの数量成長と利益率は想定を下回る。
ゼンレリアの安全性と規制
ゼンレリアはFDAから2024年に承認されたが、ワクチン接種時の免疫応答不足への注意が必要な薬である。2025年に致死的なワクチン誘発疾患に関する警告文言は削除された一方、ワクチン接種前後の投与中断と感染症監視の警告は残る。長期使用データや安全性問題により獣医師の選択が変われば、皮膚炎薬の成長期待が損なわれる。
買収のれんと低い投下資本利益率
2025年末ののれんとその他無形資産の合計は約82億ドルで、自己資本65.5億ドルを上回る。2020年のバイエル動物薬買収は規模を拡大したが、資本効率は低いままだ。2023年には10億ドル超ののれん減損を計上した。新製品が期待を下回り、追加の減損や研究開発投資が必要になれば、売上が増えても株主の持分価値は大きく伸びない。
借金・借換え・ロイヤルティー売却
2025年末の純有利子負債は36億ドルで、2026年6月末の会社公表の純負債倍率も調整後EBITDAの3.1倍だった。借金の借換えを約5.75%で見込むと、成長投資に使える現金は利払いに削られる。2025年の将来ロイヤルティー売却は資金調達としての性格もあり、会計上の売上がそのまま現金化しない。収益悪化時には財務の自由度が急速に小さくなる。
動物薬の製造能力と品質管理
抗体薬やワクチンは生産設備と品質管理の難易度が高い。ベフレナは2026年の発売時点で需要が想定を上回り、供給増強を進めていた。生産能力の拡張が遅れると販売機会を失い、設備投資を急ぎすぎれば後に過剰能力となる。製造不良、製品回収、承認遅延は販売量だけでなくブランドの信用にも影響する。
畜産需要・疾病・政策の変化
畜産向けの売上は飼育頭数と農家の採算に左右される。鳥インフルエンザやアフリカ豚熱の流行は疾病予防の重要性を高める半面、飼育頭数そのものを減らす。ボヴェアーのような環境関連製品は補助制度や農場の費用対効果が採用の分かれ目となる。抗生物質使用規制や国際的な家畜生産の集約も、製品ごとの勝ち負けを広げる。
還元の遅れと株式報酬
同社は当面配当を予定しておらず、負債削減を優先している。2025年の株式報酬は約0.7億ドルで、株主は経営者や従業員への持分移転を負担する。利益が改善しても、その現金を低収益の買収や増設へ再投資すれば、株主還元は始まらない。買収により売上が増えることより、正味の還元と増分投下資本利益率が改善することが重要である。
今後の分かれ目
- ゼンレリアの米国JAK市場シェアがさらに年間5ポイント以上上昇し、複数年で維持されたら
- 新薬が一時的な発売効果ではなく継続的に競合から数量を奪っている証拠となる。ペット事業の数量と営業利益率を引き上げ、やや楽観側の確率を増やす。
- ベフレナの供給が安定し、米国の採用診療施設が広がり続けたら
- ゾエティスのサイトポイントに対する競争力が確認できる。ペット向けの販売数量と新製品構成比を上方修正する。ただし生産設備の追加投資と増分資本利益率も確認する。
- 会社の純負債倍率が2027年に3倍未満へ下がり、その後2.5倍以下に定着したら
- 利払い負担と財務制約が小さくなり、自由現金の一部を株主還元に回せる。営業利益から純利益への転換率と正味の還元額を上方に見直す。
- 2030年のエランコ・アセンドによる年間費用削減が2億ドル未満にとどまったら
- 経営計画の収益性改善が不足していると判断する。中立の営業利益率を引き下げ、買収資産に対するROEと正当化PERを再計算する。
- ボヴェアーの普及が停滞し、牛向けの実質販売数量が2年以上連続で減少したら
- 畜産薬の成長前提を見直し、AHV統合で獲得すると期待したシェアを削る。価格競争の深まりと買収代金の回収遅れをやや悲観に反映する。
- 2030年時点でもGAAP純利益が継続的に黒字化せず、追加の大型買収やのれん減損が発生したら
- 2026年の改善が持続的な価値創造に結びつかなかったと判断する。ROEの回復を弱め、悲観側の確率を引き上げ、資産処分価値の見積もりも再検証する。
見ておくもの
- ゼンレリアの処方拡大、米国・欧州JAK市場シェア、ワクチン関連の安全性情報
- クレデリオ・クアトロの動物病院浸透率と寄生虫薬市場シェア
- ベフレナの採用診療施設数、供給能力、ゾエティスのサイトポイントとの競争状況
- ペットヘルスの数量成長率と価格成長率を分けた四半期開示
- 牛・鶏・豚別の数量、価格、有機・為替一定売上成長率
- AHV買収の売上貢献と条件付き支払い、エクスペリオール・ボヴェアーの販売状況
- エランコ・アセンドの累計費用削減、GAAP営業利益、調整後利益との差
- 純有利子負債、純負債倍率、借入金利、将来ロイヤルティー売却関連負債
- GAAP純利益、フリーキャッシュフロー、株式報酬控除後の正味株主還元
- 自己資本利益率、増分投下資本利益率、追加の買収・減損・製造設備投資
倍率と資本コストの決め方
現在の株価や市場PERを倍率の根拠には使っていない。2025年の事業別売上を会社の開示に合わせ、世界の動物薬市場規模と推定シェアから実質数量を組み立てた。数量と価格を別々に伸ばし、競合とのシェア争いを各筋書きに反映したうえで、研究開発費、買収償却、利払いを含むGAAP利益を推計した。10年目の正当化PERはk8.5%、長期g、ROEから求めるRONIC、通常の堀の残存割合1/2による。中立の10.13倍は式の上限約11.51倍の88%であり、過去や同業の取引倍率から採っていない。
自己資本は2025年末の65.5億ドルに各筋書きの10年間のGAAP純利益累計を足し、正味還元を差し引いて一致させた。悲観のPBR0.35倍は過去の市場の谷からではなく、利益が赤字になる場合の資産譲渡価値を考えるためのものである。2025年の貸借対照表には米国基準によるリース負債がすでに反映され、2035年も同じ会計の考え方で比較する。最後に現在時価総額111.8億ドルと照合した結果、確率加重の10年後時価総額は約90.1億ドル、正味還元の加重平均は1.39億ドル、資本コストで割り引いた現在価値は約40.8億ドルとなった。差はマイナス約63.5%であり、結論を市場価格に合わせる調整はしていない。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にqualityプラス0.5ポイントを加え、資本コストを8.5%とした。βや市場のPERは使わない。赤字と負債のリスクは大きいが、2026年上半期にGAAP利益は黒字となり、事業継続や借換えが差し迫って不可能な状況ではないため、存続危機の上乗せはしない。ゾエティスの8.0%より0.5ポイント高く、ヴィアトリスの9.5%より1.0ポイント低い。動物薬の需要の寿命は長い一方、資本効率と負債負担でゾエティスに劣るためである。