結論
GSKは、帯状疱疹などのワクチンとHIV治療薬を柱に、呼吸器・免疫疾患・がん治療薬を育てる英国の大手製薬会社である。筆者の結論は「適正」だが、長期保有のための安全域は薄い。薬の需要は10年後も消えない一方、主力の特許切れと買収資金の回収が、将来の利益を大きく左右する。
2025年の売上は430.5億ドル、営業利益は108.3億ドル、親会社帰属の純利益は75.3億ドルだった。2026年7〜9月期は特殊医薬品が恒常為替で15%増えたが、ワクチンは2%減った。組織改革費用もあり、報告営業利益は前年同期比で減少した。2031年の売上400億ポンド超という会社目標には、量を伸ばす新薬が必要である。
HIVではドルテグラビルの独占が2028〜2030年に薄れ、ギリアドとの競争が強まる。対照的に、ヌーカラやベンリスタ、新しい肺がん薬には拡大の余地がある。だが2026年に買収したヌバレントだけで約106億ドルを投じ、純負債は増えた。研究開発の成功と会計上の利益が同じ速度で増えるとは限らない。
10年後の中立像は売上約599億ドル、純利益105億ドルである。確率を掛けた10年後の時価総額と正味還元を資本コスト8%で現在に戻すと約1063億ドルとなり、比較対象の2026年10月23日時価総額1045億ドルとの差は約プラス2%である。事業は魅力的だが、今の値段で特許・薬価・買収の三つの不確実性を引き受ける余裕は小さい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、10年後に医師が同じ会社の薬を処方する理由を重く見る。ワクチンには製造の難しさと公費接種の定着があり、HIVには長時間作用型という患者の負担を減らす技術がある。だが、特許が切れた飲み薬の利益が戻らないことも歴史が教える。今の高い利益率を永続の特権として数えない。
オーナー利益は、売上から工場・研究開発・税・金利・少数株主の取り分を払った後に残る現金である。2025年のフリーキャッシュフローは78.5億ドル、純利益75.3億ドルと近かったが、2026年には買収で負債を増やした。新薬開発費を利益から除外せず、買収の無形資産償却も安易に足し戻さない。GSKが利益の再投資で資本コストを超える価値を生むには、ヌバレントの肺がん薬や免疫領域で実際の販売を積み上げる必要がある。
中立の収益力を確かめると、10年後には会社全体で約1470億ドルの時価総額を稼ぎ、10年間の正味還元は約535億ドルとなる。だが10年先のお金には時間の価値があり、重い下振れもある。5つの未来を合わせた今の価値は約1063億ドルで、比較対象の時価総額1045億ドルとほぼ並ぶ。保有し続ける理由はあるが、今日の値段に十分な安全域があるとはいえない。筆者は新薬の承認数より、薬の独占が薄れた後にも純利益と正味還元が増えるかを見たい。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は、特殊医薬品、ワクチン、一般医薬品の三つである。2025年の売上は順に約177億、121億、132億ドルで、特殊医薬品をさらにHIV、呼吸器・免疫、がんに分けて見る。実際の会計上の報告区分は商業事業と研究開発であり、以下の製品群別営業利益は開示された数字ではなく分析用の配賦である。2025年の製品群の営業利益合計131.1億ドルから共通研究費・本社費など22.8億ドルを引くと、台帳の全社営業利益108.3億ドルに一致する。
HIVは子会社ViiVヘルスケアが担う。毎日飲むドバト、チビケイ、トリーメクに加え、長時間作用する注射薬カベヌバと予防薬アプルチュードが成長の中心だ。2025年のHIV売上は約101億ドルで、カベヌバだけで世界の患者約10万人が治療を受けていた。2026年4月の持分再編後もGSKの経済持分は78.3%で、残りは塩野義製薬に属する。連結売上には全額が含まれるが、株主に帰属する利益から少数株主持分を引く。
ワクチンでは、シングリックスが高齢者の帯状疱疹を防ぎ、アレックスビーがRSウイルス感染症を防ぐ。髄膜炎菌向けのベクセロも大きい。2025年のシングリックス売上は約47億ドルだった。米国の推奨対象成人1億2000万人の接種率は44%まで進んだが、海外では公費助成が拡大している。一般医薬品は吸入薬トレレジー、ブレオ、アドベアなどが中心で、既存薬の後発品への移行が売上を削る。
呼吸器・免疫には重症喘息やCOPD向けヌーカラ、全身性エリテマトーデス向けベンリスタ、新製品エクスデンサーがある。がんではジェンパーリ、ブレンレップ、肺がん薬ジデイトロが将来の選択肢となる。2026年10月にはB型肝炎薬ヒブサゴが承認された。薬価は保険者・各国政府と交渉して決まり、患者数が増えても純単価が同じように上がる事業ではない。
優良さと弱いところ
堀、つまり競争相手がすぐには崩せない強みは、製造品質と臨床データ、許認可、販売網にある。シングリックスは世界の高齢者接種事業で先行し、61か国に広がった。ViiVの長時間作用型HIV治療は投与方法そのものを変え、定着した患者が安易に処方を切り替えない利点もある。承認までの試験や製造設備に長い時間と資金が必要なことは、新規参入の壁となる。
ただし企業全体の堀は永久ではない。医薬品の独占は製品ごとの特許に支えられ、期限が来れば後発品と競う。ドルテグラビルは2028〜2030年に独占を失い、ギリアドはビクタルビと半年に一度の予防薬イェズツゴで対抗する。帯状疱疹ワクチンでも米国の未接種層が接種しにくくなり、RSVはファイザーやモデルナの競合に押され始めた。値上げを自分だけの判断で通す力は限定的である。
2025年の自己資本利益率は34.2%だが、過去の減損・事業分離・買戻しで分母が薄くなっている。事業の資本効率は高いものの、将来も同じ率で新しい薬を生めるとは考えない。2026年の大型買収は高い期待を前払いした投資であり、成功前に利益だけを見せるものではない。AIは臨床候補の探索や管理費削減には役立つが、患者への投与、治験、製造許認可は代わらない。人月・席課金をAIエージェントが代替する型の事業には当たらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
大手製薬にとって需要の寿命は長い。高齢化で帯状疱疹・呼吸器疾患の予防と治療が増え、HIVの継続治療も必要になる。だが需要の拡大を、そのまま製薬企業の売上成長と考えるのは危険だ。各国の薬価交渉、米国のメディケア制度、後発薬への切り替えが、患者一人当たりの純売上を抑える。
ワクチンは世界保健機関の2023年の金額シェアでファイザー25%、メルク18%、GSK16%、サノフィ11%の寡占市場だった。2025年のGSKワクチン売上は約121億ドルだが、2026年7〜9月期はシングリックスが5%、アレックスビーが24%減った。帯状疱疹ではGSKが強い一方、RSVはファイザーのアブリスボやモデルナのmRESVIAが競う。米国外の助成制度の普及は数量を支えるが、低価格地域への販売増は平均単価を薄める。
HIVの世界の有償治療・予防薬市場は2025年で概ね350〜400億ドルと推定する。ギリアドのHIV製品売上は208億ドル、そのうちビクタルビは143億ドルで、ViiVの約101億ドルを大きく上回る。GSKの金額シェアは約25〜29%という粗い目安だ。長時間作用型への移行で量を取れても、古い飲み薬が後発品に変わる穴を埋め切れるかが分かれ目となる。
免疫・炎症ではサノフィのデュピクセントが2025年に約157億ユーロを売り、GSKの同領域約50億ドルを上回る。ヌーカラのCOPD適応拡大と新しい食物アレルギー薬で患者を増やせるが、競争は激しい。がん薬市場はIQVIAによると2024年の世界支出が2520億ドルに達した。GSKのがん薬約26億ドルは広い市場の1%程度にすぎず、競合メルク、アストラゼネカ、ロシュからシェアを取る余地も失敗する余地も大きい。既存吸入薬ではアストラゼネカのブレズトリなどが伸びる。成熟薬の特許切れを新薬で補う比率が、十年の収益差を決める。
筆者の2035年の中立市場仮定は、有償HIV薬500億ドル、ワクチン1100億ドル、対象の呼吸器・免疫薬1200億ドル、がん薬6000億ドル、一般吸入薬・既存治療薬1200億ドルである。GSKの売上シェアは順に約20%、15%、10%、2%弱、10%と見る。これらは疾病人口と各国の保険収載、競合の製品売上から組み立てた独自推計であり、開示された市場予測ではない。
資本政策と M&A
株主還元は配当が土台である。2025年の手元データでは配当34.3億ドル、自社株買い18.1億ドルだった。会社は2026年の年間配当を普通株ベース70ペンスと見込み、2024年度に発表した20億ポンドの自社株買い枠は2026年半ばまでに完了した。次の同額の買戻しは約束されていない。過去10年には消費者ヘルスケアのヘイリオン分離、訴訟和解、研究開発の買収が重なり、株主の手元に残る利益は会計利益ほど滑らかではなかった。
新経営陣は買収を一段と強めた。2026年には食物アレルギー薬のラプトを約22億ドル、肺高血圧症の35ファーマを約10億ドル、肺がん薬のヌバレントを約106億ドルで取得した。ヌバレントは2026年7月に買収完了しており、未成立取引として除くものではない。9月末の純負債は約273億ドル相当に増えた。新薬の成功が遅れるほど、借り換え金利がオーナー利益を圧迫する。
会社は2029年までに年間約25億ドル相当の費用節減を目標とし、その大部分を研究開発に回す。2031年売上400億ポンド超も掲げるが、数値目標を達成するためだけの買収には賛成できない。ViiVでは塩野義が21.7%を持ち、優先配当の配分もあるため、GSKの株主がHIV利益を全額得るわけではない。報告純利益はこの少数株主持分を控除する前提とし、将来の正味還元には配当と買戻しから株式報酬・増資の影響を差し引いた額を用いる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
GSKにはワクチンという長寿の事業がある。シングリックスは米国で対象成人の半数以上がなお未接種であり、海外主要市場の接種率は1割程度にとどまる。公費助成と日本での製剤変更が進めば、販売網を持つ企業に数量が集まる。価格が先進国並みに上がらなくても、接種する人の増加で売上を伸ばせる。アレックスビーも高齢者以外の適応と世界各地の予防接種勧告が追い風となりうる。
HIVでは注射薬カベヌバと予防薬アプルチュードの成長が続いている。2026年7〜9月期、長時間作用型はHIV部門の増収の8割を担った。ギリアドのビクタルビが市場を率いていても、服薬負担を減らす別の治療形態で患者を取れる。さらにヌーカラのCOPD向け、ベンリスタ、エクスデンサー、ヒブサゴは患者層を広げる。既存薬の特許切れが訪れても、疾患別の営業網は次の薬に使い回せる。
ヌバレントのジデイトロは既に米国で承認され、次の肺がん候補も当局審査に進んだ。買収金額は大きいが、成功すれば開発に費やす時間を短縮できる。2026年に多くの第3相試験が始まるため、複数の薬が利益貢献する経路がある。研究開発への再投資に回す経費節減も、利益率を守りながら成長させる手段となる。悲観的な見方が売上の停滞を前提にし過ぎるなら、10年後の会社は今よりはるかに大きい。
慎重な見方
GSKの売上は見た目ほど守られていない。2026年7〜9月期のワクチンは減収で、主力アレックスビーは前年同期から24%落ちた。シングリックスの米国接種率44%は大きな実績だが、残る人ほど接種を勧めにくい。海外の公費制度は販売量を増やす代わりに価格を交渉する。ワクチンの技術的な優位が、そのまま名目3.5%の値上げ力になるわけではない。
もっと深刻なのはHIVだ。ドルテグラビルを含む飲み薬は2028〜2030年に独占を失う。ギリアドはビクタルビだけでGSKのHIV事業全体を超える売上を持ち、半年に一度の予防薬でも先行した。長時間作用型が伸びても、切り替えた患者の分だけ古い自社薬が減るなら純増は小さい。ViiVの利益を塩野義と分けるため、売上成長がGSK株主の利益成長を上回りやすい。
ヌバレントへの約106億ドルは、承認前の肺がん候補が複数ある段階で支払った高額の前払いだ。ROS1やALKの変異を持つ患者は肺がん全体の一部に限られ、適応が拡大しなければ買収資金を回収できない。さらに2026年9月末の純負債は前年末より約83億ドル相当増え、研究開発の失敗と金利負担が重なる余地がある。訴訟費用、米国の薬価制度、相次ぐ無形資産の償却も残る。2025年の回復した会計利益を永久に再現できると考えるべきではない。
どちらに重みを置いたか
事業の存続については強い見方が勝つ。多様なワクチンと慢性疾患薬があり、10年後も市場から消える会社ではない。ただし株主が受け取る利益については慎重な見方を重くする。ドルテグラビルの特許切れと、2026年に増えた買収負債は既に確定した事実で、そこから生まれる新薬収入だけがまだ不確実だからだ。確率は楽観側30%、中立31%、悲観側39%とし、左右対称にしなかった。それでも上振れ余地があるため、期待価値は現在とほぼ一致する。従って「適正」であって「安全な割安」ではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 76.33 ドル1,571 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 26.03 ドル536 億ドル)。 今の値に割り戻すと 53.07 ドル1,092 億ドル、今との差 +7.2%、 期待の年率 +8.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 192.81 ドル3,969 億ドル | 49.06 ドル1,010 億ドル | +388.5% | +20.4% | 24.19 ドル498 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 120.23 ドル2,475 億ドル | 36.92 ドル760 億ドル | +217.4% | +14.6% | 31.43 ドル647 億ドル |
| 中立 | 31% | 76.50 ドル1,575 億ドル | 25.99 ドル535 億ドル | +107.0% | +8.9% | 31.77 ドル654 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 29.80 ドル613 億ドル | 17.49 ドル360 億ドル | −4.5% | −0.6% | 12.29 ドル253 億ドル |
| 悲観 | 13% | 11.86 ドル244 億ドル | 8.74 ドル180 億ドル | −58.4% | −10.1% | 2.68 ドル55 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 76.33 ドル1,571 億ドル | 26.03 ドル536 億ドル | +106.8% | +8.9% | 102.36 ドル2,107 億ドル |
今の株価時価総額 49.51 ドル1,019 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:ワクチンの海外普及と新薬の連続成功 利益 210 億ドル · PER 18.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 192.81 ドル3,969 億ドル
新しい肺がん薬と免疫薬が連続して成功し、ヌバレントの買収資金を十分に回収する。肺がんではメルクやアストラゼネカの標準治療に新しい選択肢を示し、がん薬売上は約169億ドルになる。ヌーカラ、エクスデンサーと食物アレルギー薬も保険収載が進み、専門薬の患者数は約75万人に増える。
HIVではギリアドの長期作用型への対抗に勝ち、ViiVは年間約160万人の治療換算を維持する。ドルテグラビルの独占喪失を、投与間隔の長い新薬と予防薬で埋める。ワクチンはアレックスビーの適応拡大とシングリックスの海外普及で接種3億8000万回に増え、世界の主要市場でシェアを守る。一般薬はトレレジーが後発化の損失を補う。
売上は約901億ドル、営業利益約310億ドル、純利益210億ドルに達する。最初の3年間の特許・再編費用による停滞を経て、10年累計の親会社帰属利益は1330億ドル。買収後の財務を整えながら、正味1010億ドルを配当・買戻しで還元する。
- HIV治療・予防薬:数量 160(有償の標準患者年換算(万人。長時間作用型を含む))× 価格 9,200(患者年当たりの世界平均純売上(ドル))→ 売上 147 億ドル・営業利益 65 億ドル。長時間作用型で数量拡大、平均価格は特許切れでなお低下。HIV市場550億ドルの約27%を取る楽観
- 呼吸器・免疫・炎症の専門薬:数量 75.0(標準生物学的製剤の年間治療患者換算(万人))× 価格 29,000(治療患者年当たり純売上(ドル))→ 売上 218 億ドル・営業利益 96 億ドル。COPD・食物アレルギーの適応拡大で患者3.4倍
- がん専門薬:数量 23.5(がん薬の年間標準治療コース換算(万人))× 価格 72,000(標準治療コース当たり純売上(ドル))→ 売上 169 億ドル・営業利益 68 億ドル。肺がん薬・ADCの承認成功で治療コース5.2倍。世界がん薬市場6500億ドルの約2.6%
- ワクチン:数量 380(年間接種・出荷の推定回数(百万回))× 価格 58(1回当たりの世界加重平均純売上(ドル))→ 売上 220 億ドル・営業利益 79 億ドル。海外接種普及とRSV拡大で出荷増。世界ワクチン市場1200億ドルの約18%
- 一般医薬品・吸入薬:数量 4,200(処方・治療の年間標準コース換算(万人))× 価格 350(標準治療コース当たり世界平均純売上(ドル))→ 売上 147 億ドル・営業利益 34 億ドル。トレレジーが成熟薬の減少を相殺
倍率:g=4.0%は2035年以降の疾病対象人口・接種の実質数量成長約2.0%、GSKの新薬シェア変化約0%、混合純価格の名目上昇約2.0%の合計。2035年ROEは210÷540.3=38.9%。通常の堀の残存割合1/2よりRONIC=8.0%+(38.9%-8.0%)×1/2=23.4%。正当化PER=(1-4.0%/23.4%)/(8.0%-4.0%)×1.04=21.56倍。臨床・製造の優位は強いが特許が消耗するため上限の約88%に当たる18.9倍。純利益はIFRS報告利益に近い親会社株主帰属の額で無形償却・研究開発を戻さず、ViiV少数持分を控除。
確率:長時間作用型HIVが特許切れを上回り、ヌバレントの肺がん薬など複数の新薬が世界展開に成功する場合。承認と保険収載の連鎖が10年必要なため約1割に抑える。
やや楽観 20% やや楽観:専門薬の成長が特許切れを補う 利益 150 億ドル · PER 16.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 120.23 ドル2,475 億ドル
シングリックスの海外接種は続くが、米国では未接種者の開拓が遅い。ワクチンの出荷は約3億4500万回に増え、世界の金額シェアはおおむね保つ。アレックスビーはファイザーとの競争で平均価格を上げきれず、髄膜炎菌など定期接種が支える。
ViiVの長時間作用型はギリアドに一定の患者を取られつつも拡大し、患者年は140万人となる。ドルテグラビル後発品による値下げを受け、HIVの売上増は緩やかだ。免疫ではヌーカラのCOPD治療が伸び、サノフィのデュピクセントとの競争にも耐える。がんではジデイトロとブレンレップが商業化し、買収の回収に道筋がつく。
売上は約732億ドル、営業利益は約230億ドルまで拡大する。10年の利益累計は1090億ドルとし、前半に特許切れと買収償却があることを反映する。配当中心の正味還元は760億ドル。買収資金の返済と研究開発を両立できるが、利益率は新薬の成功と薬価交渉の間に揺れる。
- HIV治療・予防薬:数量 140(有償の標準患者年換算(万人。長時間作用型を含む))× 価格 8,500(患者年当たりの世界平均純売上(ドル))→ 売上 119 億ドル・営業利益 49 億ドル。長時間作用型が既存経口薬の減収を大半補う。HIV市場530億ドルの約22%
- 呼吸器・免疫・炎症の専門薬:数量 60.0(標準生物学的製剤の年間治療患者換算(万人))× 価格 26,000(治療患者年当たり純売上(ドル))→ 売上 156 億ドル・営業利益 66 億ドル。免疫治療60万人、価格は物価に届かない
- がん専門薬:数量 19.0(がん薬の年間標準治療コース換算(万人))× 価格 68,000(標準治療コース当たり純売上(ドル))→ 売上 129 億ドル・営業利益 49 億ドル。肺がん薬が商業化するが適応は限定的
- ワクチン:数量 345(年間接種・出荷の推定回数(百万回))× 価格 55(1回当たりの世界加重平均純売上(ドル))→ 売上 190 億ドル・営業利益 65 億ドル。海外ワクチン接種で数量+38%。ワクチン市場1120億ドルの約17%
- 一般医薬品・吸入薬:数量 4,000(処方・治療の年間標準コース換算(万人))× 価格 345(標準治療コース当たり世界平均純売上(ドル))→ 売上 138 億ドル・営業利益 28 億ドル。既存薬の特許切れをトレレジーが緩和
倍率:g=3.8%は2035年後の対象市場の実質数量+1.9%、シェア変化0%、実現純価格の名目+1.9%。ROE=150÷550.3=27.3%、通常の堀としてRONIC=8.0%+(27.3%-8.0%)×1/2=17.6%。正当化PER=(1-3.8%/17.6%)/(8.0%-3.8%)×1.038=19.39倍。特許切れ、薬価交渉と買収償却を見込み、その約85%の16.5倍。IFRS報告基準の親会社帰属利益を使用し、調整後利益を倍率に用いない。
確率:ヌーカラのCOPD適応と肺がんの買収薬の一部が成功し、シングリックス海外接種も進むが、特許切れの穴はすべて埋まらない。実現性は楽観より高く、2割。
中立 31% 中立:既存薬の穴を専門薬が埋め、緩やかに拡大 利益 105 億ドル · PER 14.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 76.50 ドル1,575 億ドル
10年後の主役は、過去の錠剤ではなく長時間作用型HIV、呼吸器免疫薬、肺がん薬に変わる。ドルテグラビルの特許切れでViiVの売上は横ばいにとどまり、ギリアドに対する広いHIV市場の金額シェアは下がる。販売患者は125万人と増えるが、平均純単価は2025年を下回る。
シングリックスは海外の公費接種で伸び、アレックスビーはファイザーとモデルナとの競争にさらされる。接種回数の増加を低価格国への販売が一部打ち消す。免疫薬はヌーカラとエクスデンサーが患者数を広げ、がんではヌバレント由来の肺がん薬が黒字化する。ただしサノフィやアストラゼネカの既存治療から取れるシェアは限定的だ。一般医薬品は後発化と安い吸入薬への置き換えで縮む。
全社売上は約599億ドル、営業利益約161億ドル、純利益105億ドルに至る。初期の買収負担と2029年前後のHIVの落ち込みを含む累計利益は860億ドルで、配当を中心に正味535億ドルを戻す。利益の増分は資本コストを上回るが、新薬の成功率は並外れて高くない。
- HIV治療・予防薬:数量 125(有償の標準患者年換算(万人。長時間作用型を含む))× 価格 8,000(患者年当たりの世界平均純売上(ドル))→ 売上 100 億ドル・営業利益 38 億ドル。患者数+19%、DTG特許失効で純単価-17%。2035年の有償HIV市場500億ドルに対するシェア約20%
- 呼吸器・免疫・炎症の専門薬:数量 48.0(標準生物学的製剤の年間治療患者換算(万人))× 価格 24,000(治療患者年当たり純売上(ドル))→ 売上 115 億ドル・営業利益 44 億ドル。重症喘息・COPD・免疫で患者48万人へ。対象の免疫・呼吸器薬市場1200億ドルの約10%
- がん専門薬:数量 15.0(がん薬の年間標準治療コース換算(万人))× 価格 68,200(標準治療コース当たり純売上(ドル))→ 売上 102 億ドル・営業利益 35 億ドル。買収済み肺がん薬は黒字化するが市場シェアは約2%以下。がん薬市場6000億ドルの約1.7%
- ワクチン:数量 315(年間接種・出荷の推定回数(百万回))× 価格 51(1回当たりの世界加重平均純売上(ドル))→ 売上 161 億ドル・営業利益 51 億ドル。海外普及で接種+26%、平均単価は+6%どまり。ワクチン市場1100億ドルの約15%
- 一般医薬品・吸入薬:数量 3,600(処方・治療の年間標準コース換算(万人))× 価格 337(標準治療コース当たり世界平均純売上(ドル))→ 売上 121 億ドル・営業利益 22 億ドル。患者コース-10%、後発品で平均単価ほぼ横ばい。対象の一般治療薬市場1200億ドルの約10%
倍率:g=3.2%は2035年以降の世界の予防・治療数量の実質+1.6%、旧薬を失うGSKのシェア変化-0.4%、純価格の名目+2.0%を合算したもの。物価3.5%の全額を価格に転嫁できない。ROE=105÷545.3=19.3%。通常の堀でRONIC=8.0%+(19.3%-8.0%)×1/2=13.6%。正当化PER=(1-3.2%/13.6%)/(8.0%-3.2%)×1.032=16.45倍。特許切れ・大きな買収費用と値上げ力の限界を織り込んで上限の85%に当たる14.0倍とする。純利益は研究開発・株式報酬・無形資産償却とViiV非支配持分の控除後の報告ベース。
確率:会社の2031年売上400億ポンド超を大きくは超過せず、2028〜2030年のHIV特許切れを免疫・がん薬と海外接種で補う、最も連続性の高い姿。確率は31%。
やや悲観 26% やや悲観:HIVの穴を埋める新薬が不足 利益 46 億ドル · PER 10.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 29.80 ドル613 億ドル
HIVでドルテグラビルを含む経口薬の後発化が想定以上に速く進む。ギリアドのビクタルビと長時間作用型予防薬に処方を奪われ、ViiVの患者年は88万人へ縮む。新しい長時間作用型だけでは独占喪失を埋められず、平均純価格も下がる。塩野義への少数株主利益配分が残り、連結売上より株主利益が細る。
ワクチンは米国のシングリックス接種が頭打ちとなり、アレックスビーがファイザーとの競争で数量と価格を失う。海外の販売は増えても公費調達の低価格が響き、接種回数は約2億7500万回にとどまる。ヌーカラやベンリスタの新適応もサノフィとの競争が厳しく、ヌバレントの肺がん薬では売上の伸びが買収額に届かない。一般医薬品の後発化は加速する。
売上は約402億ドル、営業利益は約75億ドル、純利益は46億ドルに下がる。累計純利益550億ドルには開発資産の約30億ドルの減損を含める。配当の成長は止まり、正味還元は360億ドルにとどまる。研究開発と負債返済の両立が難しくなり、利益の持続性に対する評価も弱まる。
- HIV治療・予防薬:数量 88.0(有償の標準患者年換算(万人。長時間作用型を含む))× 価格 7,000(患者年当たりの世界平均純売上(ドル))→ 売上 62 億ドル・営業利益 20 億ドル。DTGの後発化とギリアドの長期予防薬に敗れる。HIV市場480億ドルの約13%
- 呼吸器・免疫・炎症の専門薬:数量 36.0(標準生物学的製剤の年間治療患者換算(万人))× 価格 20,500(治療患者年当たり純売上(ドル))→ 売上 74 億ドル・営業利益 21 億ドル。適応拡大が小さく患者数は36万人に低迷
- がん専門薬:数量 10.0(がん薬の年間標準治療コース換算(万人))× 価格 56,000(標準治療コース当たり純売上(ドル))→ 売上 56 億ドル・営業利益 12 億ドル。肺がんの新薬売上が買収対価に届かない
- ワクチン:数量 275(年間接種・出荷の推定回数(百万回))× 価格 43(1回当たりの世界加重平均純売上(ドル))→ 売上 118 億ドル・営業利益 30 億ドル。RSV競争と接種鈍化で平均価格低下。ワクチン市場1000億ドルの約12%
- 一般医薬品・吸入薬:数量 3,300(処方・治療の年間標準コース換算(万人))× 価格 280(標準治療コース当たり世界平均純売上(ドル))→ 売上 92 億ドル・営業利益 13 億ドル。吸入薬後発化で収益性が低下
倍率:g=2.0%は2035年後の実質対象需要+1.0%、競合へのシェア流出-0.5%、純単価の名目+1.5%の合算。ROE=46÷410.3=11.2%、通常の堀のRONIC=8.0%+(11.2%-8.0%)×1/2=9.6%。正当化PER=(1-2.0%/9.6%)/(8.0%-2.0%)×1.02=13.46倍だが、成長薬の不発、減損、借り換え負担でその約79%の10.7倍にする。中立14.0倍より明確に低く、帳簿のROEが高く見えるように自己資本を削っていない。
確率:DTG後発化とワクチン接種鈍化はかなり現実的で、買収薬の販売が予定より遅れる確率も小さくない。利益率の縮小と減損を併せて26%。
悲観 13% 悲観:特許切れと買収失敗で競争力が低下 利益 22 億ドル · PER 11.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 11.86 ドル244 億ドル
ViiVの主力経口薬は後発品に置き換わり、ギリアドの予防薬も普及する。長時間作用型の次世代製品が十分に育たず、HIVの患者年と価格が同時に下がる。帯状疱疹では未接種者の開拓に失敗し、RSVはファイザーやモデルナに負ける。海外ワクチンの売上増も公費調達の値下げで相殺され、製造拠点の固定費が残る。
ヌバレントの肺がん薬は限定的な患者群の域を出ず、ラプトと35ファーマの新薬も商業化が遅れる。研究開発した薬の資産価値が減り、2026年以降の10年間には新旧の開発資産の減損を累計約155億ドル織り込む。一般医薬品ではトレレジーを含む高価格薬が後発品に侵食され、販売網と研究費の固定負担で利益率が縮む。
売上は約278億ドル、営業利益は約38億ドル、純利益は22億ドルに落ちる。減損前の累計利益約465億ドルから減損を引いた期間純利益は310億ドルで、配当を大幅に縮め正味還元は180億ドルとなる。ワクチンと医薬品の事業売却回収価値を別途175億ドルと見積もるが、残る稼ぐ力の価値はそれを上回る。会社自体は存続しても、以前の優良さは失われる。
- HIV治療・予防薬:数量 65.0(有償の標準患者年換算(万人。長時間作用型を含む))× 価格 5,500(患者年当たりの世界平均純売上(ドル))→ 売上 36 億ドル・営業利益 9 億ドル。経口薬の競争力を失い数量-38%。HIV市場430億ドルの約8%
- 呼吸器・免疫・炎症の専門薬:数量 27.0(標準生物学的製剤の年間治療患者換算(万人))× 価格 17,000(治療患者年当たり純売上(ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 10 億ドル。免疫新薬の不発で患者年低下
- がん専門薬:数量 6.5(がん薬の年間標準治療コース換算(万人))× 価格 50,000(標準治療コース当たり純売上(ドル))→ 売上 33 億ドル・営業利益 4 億ドル。肺がん買収薬の償却・減損が続く
- ワクチン:数量 240(年間接種・出荷の推定回数(百万回))× 価格 37(1回当たりの世界加重平均純売上(ドル))→ 売上 89 億ドル・営業利益 17 億ドル。RSV・帯状疱疹の浸透鈍化と価格下落。ワクチン市場950億ドルの約9%
- 一般医薬品・吸入薬:数量 3,000(処方・治療の年間標準コース換算(万人))× 価格 250(標準治療コース当たり世界平均純売上(ドル))→ 売上 75 億ドル・営業利益 8 億ドル。後発薬へ移行して売上も利益も縮小
倍率:g=1.0%は2035年後の病人数・接種数量の実質+0.5%、競合に負けるシェア-0.5%、ネット薬価+1.0%の合算。ROE=22.2÷350.3=6.3%で資本コスト8.0%に届かないためPERの上限は1/k=12.5倍。稼ぐ力は製品更新が難しく、企業価値を過大評価しない11.0倍。通常の堀でも超過ROEはゼロ以下であり永久に正の追加利潤を仮定しない。市場の過去の谷の倍率は参照しない。
確率:ViiVの後発化、RSVワクチン競争、肺がんと免疫の買収資産の失敗が重なる構造的敗北。単発の不況ではなく複数の科学的・政策的失敗を要するので13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
HIV治療・予防薬
ViiVヘルスケアのドバト、チビケイ、トリーメク、長時間作用型カベヌバ、アプルチュード。GSK連結売上に全額含むが、少数株主の取り分は純利益で控除する。
| 数量有償の標準患者年換算(万人。長時間作用型を含む) | 価格患者年当たりの世界平均純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 105 | 9,650 | 101 | 43 |
| 10 年後 中立 | 125 | 8,000 | 100 | 38 |
取り方:GSK 2025年のHIV売上£7,687mを、factsの全社売上430.5億ドル÷会社開示£32,667m=1.318ドル/ポンドで約101.3億ドルに直す。カベヌバ利用者10.3万人、アプルチュードの米国利用者約2.8万人というGSK年報実績を起点に、残る経口療法の患者年を約92万人相当と逆算した分析用の105万人であり実患者数の開示ではない。単価は売上÷患者年で約9650ドル。GSKの長時間作用型は成長、ギリアドHIV薬売上208億ドル(2025年)が最大の競争基準。2035年の価格はDTG特許切れ2028〜30年と後発化により、物価1.41倍に反して下がる。出典:GSK 2025 20-F、ギリアド2025年決算。
呼吸器・免疫・炎症の専門薬
ヌーカラ、ベンリスタ、エクスデンサー、買収済みの食物アレルギー薬候補など。重症喘息、COPD、自己免疫疾患の患者へ投与する。
| 数量標準生物学的製剤の年間治療患者換算(万人) | 価格治療患者年当たり純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 22.0 | 22,818 | 50 | 18 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 24,000 | 115 | 44 |
取り方:2025年Respiratory, Immunology & Inflammation £3,810mをfactsの換算係数で50.2億ドル。主力ヌーカラ£2.0bn、ベンリスタ£1.8bnに占める患者の年額純売上を約2万〜3万ドルと仮定し、平均22万人の年換算で整合させた推定。会社は患者年総数を開示しない。競争はサノフィのデュピクセント(2025年€15.714bn)、アストラゼネカのファセンラ。新しいCOPD・アレルギー治療は患者数を増やすが、保険者交渉で価格上昇は物価を下回る。
がん専門薬
ジェンパーリ、ゼジュラ、ブレンレップと、2026年7月に買収完了したヌバレントのジデイトロ等の肺がん薬。
| 数量がん薬の年間標準治療コース換算(万人) | 価格標準治療コース当たり純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.5 | 58,000 | 26 | 5 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 68,200 | 102 | 35 |
取り方:2025年Oncology £1,977m×1.318=約26.1億ドル。ジェンパーリ、ゼジュラ、オジャーラなど適応と治療期間の異なる薬を4.5万標準コースに換算した推定で、実処方数ではない。2026年に買収したヌバレントの当時未販売薬は2025年の数量に含めないが2035年の新薬シェアに入れる。世界がん薬支出はIQVIAによると2024年2520億ドルで、GSK売上は広い市場の約1%規模。単価は製品ミックス・薬価交渉により物価より遅く伸びる。
ワクチン
シングリックス、髄膜炎菌ワクチン、アレックスビー、既存の小児・感染症ワクチン。投与回数が数量、製品・国ごとの卸売純単価が価格を決める。
| 数量年間接種・出荷の推定回数(百万回) | 価格1回当たりの世界加重平均純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 250 | 48 | 121 | 35 |
| 10 年後 中立 | 315 | 51 | 161 | 51 |
取り方:GSKのワクチン売上2025年£9,157m×1.318=120.7億ドル。WHOの世界ワクチン市場報告のGSK年間出荷規模は2023年に約2.5億回の図示値であり、2025年の会社の用量総数は未開示。2.5億回を価格ミックスの代理数量とし、売上から1回48.28ドルを逆算。高単価シングリックスと低単価小児定期接種の混合単価で、個別製品の価格ではない。WHOの2023年金額シェアGSK16%、ファイザー25%、メルク18%。2035年の単価は低所得国・公費調達の比率増とRSVの競争でインフレ未満とする。
一般医薬品・吸入薬
トレレジー、ブレオ、アドベア、ベントリン、アノーロ、抗菌薬など。慢性呼吸器治療と広い一次診療市場を扱う。
| 数量処方・治療の年間標準コース換算(万人) | 価格標準治療コース当たり世界平均純売上(ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,000 | 331 | 132 | 30 |
| 10 年後 中立 | 3,600 | 337 | 121 | 22 |
取り方:2025年General Medicines £10,036m×1.318=約132.2億ドル。うちトレレジー£2,986m、呼吸器製品計£7,068mをGSKは開示するが、全体の処方・箱数は非開示。慢性吸入薬の複数回処方と低価格の抗菌薬をならした4000万標準コースで逆算した純単価330.5ドルを用いる。患者の実数ではない。アストラゼネカのブレズトリ、シムビコートなどとの競争と特許切れで、10年価格はインフレ1.41倍を下回る。
リスクと懸念
ドルテグラビルの特許切れとHIVの競争
HIVは現時点の稼ぎ頭だが、2028〜2030年にドルテグラビル製剤が独占を失う。ギリアドのビクタルビや半年投与の予防薬が先行し、カベヌバとアプルチュードの伸びだけでは失う経口薬の利益を補えないおそれがある。ViiVのGSK持分は78.3%であり、少数株主の取り分が利益の回復をさらに限定する。
大型買収の回収と純負債
2026年にヌバレントを約106億ドル、ラプトを約22億ドル、35ファーマを約10億ドルで買った。新薬の承認は売上の証明ではない。予想適応が狭く、価格が保険者に削られると買収額を回収できず、無形資産減損が出る。9月末の純負債は約273億ドル相当まで増え、借り換え金利が高い環境では追加の開発費が配当余力を圧迫する。
ワクチンの接種率の壁と新規競争
シングリックスの米国推奨対象の接種率は44%で、未接種者は多いが接種の勧奨が難しい層へ移っている。アレックスビーは2026年7〜9月期に24%減収となった。ファイザーのアブリスボやモデルナのmRESVIA、各国公費の価格交渉が、接種回数と純単価の双方を弱める。高採算の成人向けから低単価の定期接種へ販売構成が変わる危険もある。
免疫・腫瘍領域の臨床試験と保険収載
ヌーカラのCOPD適応、エクスデンサー、ジデイトロ、ブレンレップ、ヒブサゴなどは市場を広げる一方、対象患者の条件や安全性警告が細かい。サノフィ、アストラゼネカ、メルク、ロシュとの比較試験で明確な効能差を示せなければ保険収載や処方拡大が遅れる。承認数だけを数えて売上に変換することはできない。
薬価制度・後発薬・地政学
米国のメディケア交渉と最恵国待遇の政策、製造品への関税、欧州の薬価審査、中国の入札は全製品の平均純単価を左右する。物価が年3.5%でも、GSKの成熟薬はインフレを転嫁しにくい。ワクチンの海外公費調達が増えるほど数量は増えても価格構成は弱まり、為替を一定にした試算でも利益率が低下しうる。
訴訟・IFRS調整利益と株主への取り分
過去のザンタック訴訟などの法務費用、2026年の組織改革費用、買収した無形資産の償却はコア利益と報告利益に差を生む。配当や買戻しは実際の現金からしか払えないため、調整後EPSだけを見てオーナー利益を大きく見積もると危険だ。株式報酬やViiVの非支配持分も株主の手取りを減らす。
今後の分かれ目
- 2028〜2030年のHIV既存薬の後発化後もカベヌバ・アプルチュードが年20%以上で伸び、HIV全体の減収を止めたら
- 長時間作用型の差別化を実証する。HIVの患者年・シェアをやや楽観に寄せ、純利益を見直す。
- ヌバレント由来の肺がん薬が複数承認され、2030年前後に年30億ドル以上の合計売上と明確な営業黒字を示したら
- 約106億ドルの買収対価を回収する見込みが強まる。がん領域の数量と利益率を楽観側へ改める。
- シングリックスの米国外接種率が主要10市場で20%を超え、ワクチン部門が2年続けて数量増となったら
- 米国接種の頭打ちを海外で埋める証拠となる。ワクチンの長期数量を上げる。
- アレックスビーの年間売上が再び20%以上減少し、RSVの米国シェアが急減したら
- ワクチンの平均単価と採算が悪化する。やや悲観・悲観への重みを増やす。
- 純負債が2026年9月末水準からさらに増え、フリーキャッシュフローの大部分が利息・買収支出に吸われたら
- 正味還元額を引き下げ、将来のROEと買収利益の質を再評価する。
- 2029年の費用節減が計画の年約25億ドル相当に達し、研究開発再投資後も報告営業利益率が上昇したら
- 削減効果が単なる調整後利益ではなくオーナー利益に残ると判断し、中立の営業利益率を上げる。
見ておくもの
- ViiVのドルテグラビル製品の減収額と長時間作用型の増収額、塩野義への分配
- シングリックスの米国外接種率とアレックスビーの販売数量・シェア
- ヌバレント由来の肺がん薬の実売上、各適応の承認と買収対価の回収
- ヌーカラのCOPD患者数、エクスデンサーと食物アレルギー薬の有効性
- 2026年9月末からの純負債・利払い・報告純利益・フリーキャッシュフロー
- 2029年のAccelerate Growth節減額と2031年売上400億ポンド超の進捗
倍率と資本コストの決め方
2025年の全社実績430.5億ドルと108.3億ドルを動かさず、製品群の売上を会社開示のポンド比率で区分し、非開示の患者年・接種回数だけを明示的な代理数量として置いた。2026年の成立済み買収は将来のがん・免疫患者に含めたが、未成立の案件は足していない。倍率は株式市場の現在・過去・同業のPERを参照せず、k8%、成熟後の市場数量・シェア・名目価格によるg、再投資ROE、残る堀の割合から正当化した。中立14倍は上限16.45倍の約85%である。10年間の利益累計と配当・自社株買いから自己資本をつなぎ、ViiVの少数持分は純利益側で一度だけ控除した。比較対象1044.7億ドルと最後に突き合わせると価値は約1063億ドルで、差は約2%。ADR1口は普通株2株で、株数はADR換算になっている。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の共通資本コスト8.0%+品質補正0.0%+存続危機の上乗せ0.0%=8.0%。2026年の買収・訴訟・薬価規制による個別不確実性は倍率と将来の利益・確率に反映しており、kへ二重加算しない。